【解決手段】原反からシート状ベルト8bを製造し、シート状ベルト8bを成型ドラムに巻き付けて円筒状ベルトとする製造方法において、シート状ベルト8bの長さを測定する工程と、シート状ベルト8bの長さの合否を判定する工程とを含み、シート状ベルト8bの長さの合否を判定する工程において合格と判定した場合にのみそのシート状ベルト8bを巻き取り筒50で巻き取り、成型ドラムへの貼り付け場所へ搬送する。
平行に並んだ複数のベルトコードがゴムで被覆されて形成された原反からシート状ベルトを製造し、前記シート状ベルトを成型ドラムに巻き付けて円筒状ベルトとするタイヤ用ベルトの製造方法において、
前記シート状ベルトの長さを測定する工程と、
前記シート状ベルトの長さの合否を判定する工程とを含み、
前記シート状ベルトの長さの合否を判定する工程において合格と判定した場合にのみ前記シート状ベルトを巻き取り筒で巻き取り、前記成型ドラムへの貼り付け場所へ搬送させる、タイヤ用ベルトの製造方法。
平行に並んだ複数のベルトコードがゴムで被覆されて形成された原反からシート状ベルトを製造し、前記シート状ベルトを成型ドラムに巻き付けて円筒状ベルトとするタイヤ用ベルトの製造装置において、
前記シート状ベルトが載せられるベルト用テーブルと、
前記ベルト用テーブル上の前記シート状ベルトの長さを測定する測定装置と、
前記ベルト用テーブル上の前記シート状ベルトを巻き取って前記成型ドラムへの貼り付け場所へ搬送するための巻き取り筒と、
前記測定装置による前記シート状ベルトの長さの測定結果の合否を判定し、合格と判定した場合にのみ前記シート状ベルトを前記巻き取り筒で巻き取る制御部とが設けられた、
タイヤ用ベルトの製造装置。
【発明を実施するための形態】
【0011】
実施形態について図面に基づき説明する。なお、実施形態は一例に過ぎず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更されたものについては、本発明の範囲に含まれるものとする。また図面は、説明のために、大きさや形状等が誇張されて描かれたり、模式的に描かれたりする場合がある。しかしこのような図面はあくまでも一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。
【0012】
1.空気入りタイヤ1全体の構造及び製造方法
(1)空気入りタイヤ1全体の構造
空気入りタイヤ1の一例を
図1に示す。この空気入りタイヤ1は、例えば、トラックやバス等に使用される重荷重用のラジアルタイヤである。
【0013】
空気入りタイヤ1の幅方向両側にはビード部2が設けられている。ビード部2は、環状に巻かれた鋼線からなるビードコア2aと、ビードコア2aの径方向外側に設けられたゴム製のビードフィラー2bとからなる。タイヤ幅方向両側のビード部2にはカーカスプライ5が架け渡されている。カーカスプライ5はタイヤ周方向に直交する方向に並べられた多数のプライコードがゴムで被覆されたシート状の部材である。カーカスプライ5は、タイヤ幅方向両側のビード部2の間で空気入りタイヤ1の骨格形状を形成するとともに、ビード部2の周りでタイヤ幅方向内側から外側に折り返されることによりビード部2を包んでいる。カーカスプライ5の内側には空気の透過性の低いゴム層を有するシート状のインナーライナー6が貼り付けられている。
【0014】
カーカスプライ5のタイヤ径方向外側には複数のベルト8が設けられている。ベルト8の構造については後述する。ベルト8のタイヤ径方向外側には接地面を有するトレッドゴム3が設けられている。また、カーカスプライ5のタイヤ幅方向両側にはサイドウォールゴム4が設けられている。これらの部材の他にも、空気入りタイヤ1の機能上の必要に応じて、ベルト下パッドやチェーハー等の部材が設けられている。
【0015】
(2)空気入りタイヤ1全体の製造方法
以上の構造の空気入りタイヤ1の製造方法の一例について簡単に説明する。まず、空気入りタイヤ1を構成する上記の各部材が準備される。ここで、最終的に空気入りタイヤ1におけるベルト8となる部材として、後述するように、原反8aから切り出されたシート状ベルト8bが準備される。
【0016】
次に、準備されたシート状ベルト8bが成型ドラム64(
図2参照)に巻き付けられて円筒状ベルト8c(
図2参照)が製造される。空気入りタイヤ1は複数のベルト8を有するため、複数のシート状ベルト8bが成型ドラム64に順次巻き付けられて、複数の円筒状ベルト8cが重なったものが製造される。次に、円筒状ベルト8cの外径側にトレッドゴム3が貼り付けられる。これにより、複数の円筒状ベルト8c及びトレッドゴム3からなる円筒状のトレッドリングが完成する。
【0017】
また、別の円筒ドラム上にシート状のインナーライナー6及びシート状のカーカスプライ5が貼り付けられて、一次ケースと呼ばれる円筒体が完成する。次に、環状のビード部2が一次ケースの軸方向両側にセットされる。
【0018】
次に、両側のビード部2の間で一次ケースをその外径側へ膨らませてトロイダル状にするシェーピングが行われる。そして、一次ケースのトロイダル状に膨らんだ部分の外径側に、上記のトレッドリングが貼り付けられる。また、シェーピング時にカーカスプライ5をビード部2の周りで折り返すターンアップも行われる。また、一次ケースのトロイダル状に膨らんだ部分の軸方向両側からサイドウォールゴム4が貼り付けられる。以上のようにして未加硫タイヤが完成する。
【0019】
次に、未加硫タイヤが金型内で加硫成型されて空気入りタイヤ1が完成する。上記の円筒状ベルト8cは加硫されることにより空気入りタイヤ1におけるベルト8となる。
【0020】
なお、製造方法についての以上の説明はあくまで一例としての説明であり、以上の説明に対して一部の順序の入れ替え等の変更を適宜行うことが可能である。例えば、一次ケースにビード部2がセットされターンアップされた後、所定の位置にサイドウォールゴム4が貼り付けられ、その後シェーピングが行われても良い。
【0021】
(3)ベルト8の構造及び製造方法の概略
ベルト8はタイヤ周方向に対して斜めに延びる複数のベルトコード9(
図2参照)がゴムで被覆されて形成されたものである。なお本実施形態ではベルトコード9はスチール製のものとするが、有機繊維製のものもあり得る。空気入りタイヤ1が有する複数のベルト8のうち少なくとも1枚は、以下で説明する原反8a及びシート状ベルト8bから製造されたものである。
【0022】
原反8aは、
図2(a)に示すように、平行に並んだ複数のベルトコード9が未加硫ゴムで被覆されて形成されたものである。ベルトコード9の延長方向は原反8aの長手方向と一致する。
【0023】
原反8aがその長手方向に対して斜めに切断されることにより、
図2(b)に示すシート状ベルト8bが切り出される。原反8aの切断跡である切断辺部7dはシート状ベルト8bの幅方向両辺部となる。切断辺部7dの延長方向はシート状ベルト8bの長手方向と一致する。また原反8aの幅方向の両辺だった部分はシート状ベルト8bの長手方向に対する傾斜辺部7aとなる。傾斜辺部7aはベルトコード9と平行である。
【0024】
シート状ベルト8bの長手方向とベルトコード9とのなす角度(この角度は、シート状ベルト8bの長手方向と傾斜辺部7aとのなす角度と一致し、また原反8aの長手方向に対する切断角度とも一致する)は小さく、例えば6°以上9°以下である。このようにシート状ベルト8bの長手方向とベルトコード9とのなす角度が小さい場合、完成したベルト8のタイヤ径方向の拘束力が高くなる。
【0025】
なお、原反8aの幅Wは、原反8aの長手方向に対する前記原反8aの切断角度をθ、切断辺部7dの長さをLとすると、W=L×sinθが成立するように設定される。
【0026】
図2(c)に示すように、このシート状ベルト8bが成型ドラム64に巻き付けられて円筒状ベルト8cとなる。
【0027】
2.タイヤ用ベルトの製造装置
ここではタイヤ用ベルトすなわち空気入りタイヤ1に用いられる円筒状ベルト8cを製造する装置について説明する。
【0028】
(1)全体構造
タイヤ用ベルトの製造装置の全体構造を
図3に示す。タイヤ用ベルトの製造装置は、上に原反8aが配置される原反用テーブル10と、原反用テーブル10に隣接して原反用テーブル10から送り出された原反8aを受け入れるベルト用テーブル14と、原反用テーブル10からベルト用テーブル14へ原反8aを送り出す第1ハンド30及び第2ハンド40と、原反用テーブル10とベルト用テーブル14との間で原反8aを切断してベルト用テーブル14上にシート状ベルト8bを切り出す切断装置70とを有する。
【0029】
さらに、タイヤ用ベルトの製造装置は、ベルト用テーブル14上のシート状ベルト8bを巻き取る巻き取り筒50(ボビンとも呼ばれる)と、シート状ベルト8bを巻き取った巻き取り筒50が運搬されて装着される貼り付け装置60と、貼り付け装置60に装着された巻き取り筒50から引き出されたシート状ベルト8bが貼り付けられて円筒状ベルト8cに成型される成型ドラム64とを有する。
【0030】
このタイヤ用ベルトの製造装置の各部分の詳細な構造について以下に説明する。
【0031】
(2)原反用テーブル10の構造
原反用テーブル10には原反8aが配置される。
図4に示すように、原反用テーブル10の長手方向は、
図4中に矢印Gで示す原反8aの送り出し方向と一致し、
図4中に矢印Hで示すベルト用テーブル14の長手方向に対して傾斜している。そして、原反用テーブル10のベルト用テーブル14と隣接する縁11は、原反用テーブル10の長手方向に対して傾斜し、ベルト用テーブル14の長手方向と同方向に延びている。原反用テーブル10の長手方向に対する縁11の傾斜角度は、原反8aの長手方向に対する切断角度と一致する。
【0032】
原反用テーブル10の送り出し方向側の場所には、縁11に平行に1列又は複数列に並んだ複数のブロー用孔12が形成されている。ブロー用孔12は原反用テーブル10の下方の不図示の配管に接続されており、配管は不図示の空気供給装置に接続されている。そして、空気供給装置から供給された空気が配管を通ってブロー用孔12から上に向かって吹き出す構造になっている。
【0033】
(3)第1ハンド30及び第2ハンド40の構造
第1ハンド30は、原反用テーブル10からベルト用テーブル14へ原反8aを送り出すときに、原反8aの送り出し方向の前方部を保持する装置である。
図3に示すように、ベルト用テーブル14の上方に、原反8aの送り出し方向に伸びる第1ハンド用レール32が設けられている。第1ハンド30は、この第1ハンド用レール32に沿って、原反用テーブル10の上方とベルト用テーブル14の上方との間を移動できる。
【0034】
図5に示すように、第1ハンド30は、昇降装置としてのエアシリンダ31と、エアシリンダ31に取り付けられた1枚の水平な上部プレート33と、上部プレート33の下面に取り付けられた2つのハンド部30a、30bとを有する。2つのハンド部30a、30bは原反8aの送り出し方向に並んでいる。エアシリンダ31の動作により、上部プレート33及び2つのハンド部30a、30bが、エアシリンダ31と上部プレート33との間のガイド38にガイドされつつ一体となって昇降する。
【0035】
ハンド部30aは、上部プレート33の下方に上部プレート33と間隔を空けて配置された当接プレート36を有する。当接プレート36は、上部プレート33に対して固定されており、エアシリンダ31の動作により上部プレート33と一体となって昇降する。当接プレート36には原反8aの送り出し方向に並ぶ複数の磁石用孔37が形成されている。
【0036】
さらにハンド部30aは、上部プレート33に取り付けられ当接プレート36よりも上方にある昇降装置としての1つのエアシリンダ34と、エアシリンダ34に取り付けられた複数の吸着手段としての磁石35とを有する。複数の磁石35は原反8aの送り出し方向に並んでいる。エアシリンダ34が動作すると、複数の磁石35が一体となって昇降する。複数の磁石35は、エアシリンダ34の動作により下降したときは当接プレート36の磁石用孔37に入り、エアシリンダ34の動作により上昇したときは当接プレート36の上方に上がる。
【0037】
もう1つのハンド部30bは以上で説明したハンド部30aと同じ構造を有する。
【0038】
以上の構造のため、エアシリンダ31の動作により当接プレート36が下降し原反用テーブル10上の原反8aに接近し、さらにエアシリンダ34の動作により磁石35が下降して当接プレート36の磁石用孔37に入ると、スチール製のベルトコード9を有する原反8aが磁石35に吸着される。このように第1ハンド30は原反8aを吸着して原反用テーブル10及びベルト用テーブル14から浮かせて保持する。
【0039】
また、第1ハンド30が原反8aを保持している状態から、エアシリンダ34の動作により磁石35が上昇すると、又は磁石35が上昇した後さらにエアシリンダ31の動作により当接プレート36も上昇すると、原反8aが第1ハンド30から離れて落ちる。このようにして第1ハンド30は原反8aを離す。
【0040】
第2ハンド40は、原反用テーブル10からベルト用テーブル14へ原反8aを送り出すときに、原反8aの後方部(前記前方部よりも送り出し方向の後方の部分)を保持する装置である。
図3に示すように、原反用テーブル10の上方に、原反8aの送り出し方向に伸びる第2ハンド用レール42が設けられている。第2ハンド40は、この第2ハンド用レール42に沿って移動できる。
【0041】
第2ハンド40は、昇降装置としてのエアシリンダ41と、エアシリンダ41に取り付けられた1枚の水平な上部プレート43と、上部プレート43の下面に取り付けられた3つのハンド部40a、40b、40cとを有する。3つのハンド部40a、40b、40cは原反8aの送り出し方向に並んでいる。エアシリンダ41の動作により、上部プレート43及び3つのハンド部40a、40b、40cが、エアシリンダ41と上部プレート43との間のガイド49にガイドされつつ一体となって昇降する。
【0042】
図6に示すように、各ハンド部40a、40b、40cは第1ハンド30のハンド部30aと同じ構造を有する。すなわち、各ハンド部40a、40b、40cは、上部プレート43に対して固定され複数の磁石用孔47が形成された当接プレート46と、上部プレート43に取り付けられたエアシリンダ44と、エアシリンダ44に取り付けられた複数の磁石45とを有する。
【0043】
このような構造のため、エアシリンダ41の動作により当接プレート46が下降し原反用テーブル10上の原反8aに接近し、さらにエアシリンダ44の動作により磁石45が下降して当接プレート46の磁石用孔47に入ると、原反8aが磁石45に吸着される。このように第2ハンド40は原反8aを吸着して原反用テーブル10から浮かせて保持する。
【0044】
また、第2ハンド40が原反8aを保持している状態から、エアシリンダ44の動作により磁石45が上昇すると、又は磁石45が上昇した後さらにエアシリンダ41の動作により当接プレート46も上昇すると、原反8aが第2ハンド40から離れて落ちる。このようにして第2ハンド40は原反8aを離す。
【0045】
さらに、第2ハンド40は、第2ハンド40に対して原反8aが滑ったときにそのことを検出する滑り検出器48を有する。滑り検出器48が設けられる場所は、例えば、2つのハンド部40a、40bの間の場所である。
【0046】
図7に示すように、滑り検出器48は、ローラ48aと、ロータリーエンコーダ48bと、ローラ48a及びロータリーエンコーダ48bの回転軸となるシャフト48cとからなる。そして、ローラ48aが、ハンド部40bの当接プレート46よりも僅かに下方に出るように設けられている。
【0047】
このような構造のため、第2ハンド40が原反8aを保持すると滑り検出器48のローラ48aが原反8aに接触する。そして原反8aがハンド部40bの当接プレート46に対して滑ると、ローラ48aが回転し、その回転をロータリーエンコーダ48bが検出する。
【0048】
なお、エアシリンダ31、34、41、44の代わりに、油圧シリンダ等の他の昇降装置が用いられても良い。また、磁石35、45の代わりに、空気を吸引する吸引装置等の、原反8aを吸着できる他の吸着手段が用いられても良い。また滑り検出器48は第1ハンド30に設けられていても良い。
【0049】
(4)ベルト用テーブル14の構造
ベルト用テーブル14は、原反8aのうち原反用テーブル10から送り出された部分が載るテーブルであり、原反8aの切断後は原反8aから切り出されたシート状ベルト8bが載るテーブルである。原反8aからシート状ベルト8bが切り出された時に、ベルト用テーブル14の長手方向とシート状ベルト8bの長手方向とが一致しているものとする。ベルト用テーブル14の長手方向両側のうち、原反8aの送り出し方向側の部分を前部14a、その反対側の部分を後部14bとする。
【0050】
図8に示すように、ベルト用テーブル14の少なくとも幅方向両側には、それぞれ複数の磁石用孔16が、ベルト用テーブル14の長手方向に並んでいる。
図9に示すように、各磁石用孔16の下にはそれぞれエアシリンダ17が配置されており、各エアシリンダ17にはそれぞれ磁石15が取り付けられている。エアシリンダ17が動作すると、磁石15が上昇して磁石用孔16に入ったり、磁石15が磁石用孔16の下に下降したりする。磁石15は、磁石用孔16に入ったときに、ベルト用テーブル14上の原反8a及びシート状ベルト8bを吸着することができる。各磁石15の上昇及び下降は個別に制御可能である。なお、磁石15の代わりに、空気を吸引する吸引装置等の、原反8a及びシート状ベルト8bを吸着できる他の吸着手段が用いられても良い。
【0051】
ベルト用テーブル14の後部14bは、後述する巻き取り筒50によるシート状ベルト8bの巻き取りのときに巻き取り始め側となる部分である。この後部14bの原反用テーブル10側の縁に切欠き18が形成されている。
図9に示すように、切欠き18の下にはエアシリンダ19が配置されており、エアシリンダ19には突き上げ棒20が取り付けられている。エアシリンダ19が動作すると、突き上げ棒20がベルト用テーブル14の上面より上まで上昇したり、ベルト用テーブル14の下に下降したりする。突き上げ棒20がベルト用テーブル14の上面より上まで上昇したとき、ベルト用テーブル14上のシート状ベルト8bを突き上げることができる。
【0052】
また、ベルト用テーブル14の後部14bの別の場所には磁石用孔16とは別のセンサ用孔21が開いている。そしてセンサ用孔21の下には、ベルト用テーブル14上にシート状ベルト8bがある場合にそのことを検出する近接センサ等のベルト検出センサ22が設けられている。
【0053】
以上で説明したエアシリンダ17、磁石15、エアシリンダ19、突き上げ棒20、ベルト検出センサ22は、次に説明する構造によりベルト用テーブル14と一体となって移動することができる。
【0054】
(5)ベルト用テーブル14を移動させるための構造
ベルト用テーブル14は、原反用テーブル10の縁11に接触又は近接する位置であるベルト切り出し位置と、ベルト切り出し位置よりも原反用テーブル10から離れた位置であるベルト巻き取り位置との間を、ベルト用テーブル14の長手方向に対して直交する方向に移動することができる。ベルト切り出し位置は原反8aからシート状ベルト8bが切り出されるときのベルト用テーブル14の位置で、ベルト巻き取り位置はシート状ベルト8bが巻き取り筒50で巻き取られるときのベルト用テーブル14の位置である。
図8において、実線で示すベルト用テーブル14の位置がベルト切り出し位置で、二点鎖線で示すベルト用テーブル14の位置がベルト巻き取り位置である。
【0055】
図10に示すように、ベルト用テーブル14の下方には、ベルト切り出し位置からベルト巻き取り位置にかけて、移動装置としてのロッドレスシリンダ23が設けられている。これらのロッドレスシリンダ23の可動部23aがベルト用テーブル14の長手方向に対して直交する方向に移動することができる。ベルト用テーブル14は可動部23aに固定されることによってベルト用テーブル14の長手方向に対して直交する方向に移動可能となっている。なお
図10では、ベルト切り出し位置にあるときのベルト用テーブル14が実線で、ベルト巻き取り位置にあるときのベルト用テーブル14が二点鎖線で、描かれている。
【0056】
ロッドレスシリンダ23はベルト用テーブル14の長手方向の複数箇所(例えば2箇所)に設けられている。そして、各ロッドレスシリンダ23の可動部23aが同期して移動することにより、ベルト用テーブル14が姿勢を保ったまま平行移動する。
図8に示すように、ベルト切り出し位置にあるときのベルト用テーブル14とベルト巻き取り位置にあるときのベルト用テーブル14とは平行である。
【0057】
また
図11に示すように、ベルト切り出し位置及びベルト巻き取り位置に、ベルト用テーブル14が移動してきたときの衝撃を緩和する緩衝装置24がそれぞれ固定されている。緩衝装置24は例えばロッド24a及びケース24bを有するもので、ロッド24aを押す方向の衝撃が加わった場合にケース24b内の構造によりその衝撃を緩和するものである。そして、ベルト切り出し位置の緩衝装置24のロッド24aはベルト巻き取り位置へ向かって突出し、ベルト巻き取り位置の緩衝装置24のロッド24aはベルト切り出し位置へ向かって突出している。なお
図11では、ベルト切り出し位置にあるときのベルト用テーブル14が実線で、ベルト巻き取り位置にあるときのベルト用テーブル14が二点鎖線で、描かれている。
【0058】
図8に示すように、このような緩衝装置24がベルト用テーブル14の長手方向の複数の位置に設けられている。緩衝装置24はベルト用テーブル14の下方に固定されている。
【0059】
ベルト用テーブル14には、その長手方向の緩衝装置24と対応する位置に、下方に向かって突出したストッパー25が固定されている。そのため、ベルト用テーブル14がベルト切り出し位置又はベルト巻き取り位置へ移動すると、ベルト用テーブル14のストッパー25がその位置の緩衝装置24に当たり、それにより衝撃が緩和される。緩衝装置24はベルト用テーブル14を決められた位置で停止させるための停止装置としても機能する。
【0060】
(6)切断装置70の構造及び原反8aを切断するための構造
図12に示すように、切断装置70は、原反8aを切断する円形の刃71と、刃71を保持する装置本体73とを有する。また、原反用テーブル10とベルト用テーブル14との間には、原反用テーブル10の縁11に沿って不図示の長尺下刃が設けられている。刃71及び装置本体73は、ベルト用テーブル14の上方に設けられたレール74に沿って、原反8aの切断方向であるベルト用テーブル14の長手方向に移動する。その移動中に、刃71が長尺下刃に接触して走行することで回転して原反8aを切断していく。それによりベルト用テーブル14上にシート状ベルト8bが切り出される。
【0061】
また、原反用テーブル10のベルト用テーブル14側の縁11の上方には、複数の押さえ部材76が縁11に沿って並んでいる。押さえ部材76は、下面が原反用テーブル10の上面に平行な板状部材であり、エアシリンダ77によりそれぞれ上下動される。押さえ部材76は下降したときに原反用テーブル10上の縁11に沿う位置で原反8aを押さえる。
【0062】
切断装置70による原反8aの切断時には、原反8aにおける切断位置よりも原反用テーブル10側の部分を複数の押さえ部材76が押さえるとともに、原反8aにおける切断位置よりもベルト用テーブル14側の部分を複数の磁石15が吸着する。
【0063】
(7)巻き取り筒50の構造
図13に示すように、巻き取り筒50の外径面には、軸方向一方側ほど小径で軸方向他方側ほど大径となるよう段差54が設けられて径差が付けられている。段差54の高さは、巻き取り筒50で巻き取るシート状ベルト8bの厚みと等しい。
【0064】
段差54の数は次のように決められている。まず
図2(b)に示すように、シート状ベルト8bは、傾斜辺部7aを有し先細りとなっている領域である傾斜領域7bと、傾斜辺部7aを有さずその幅が最大幅となっている領域である最大幅領域7cとを有する。傾斜領域7bはシート状ベルト8bの長手方向両側にある。これらのうち一方の傾斜領域7b全体を完全に巻き取るために必要な巻き取り筒50の回転数(整数、小数点以下切り上げ)から1を引いた数が、段差54の数となっている。段差54の数をこのように決めると、一方の傾斜領域7b全体を完全に巻き取るために必要な巻き取り筒50の回転数(整数、小数点以下切り上げ)と同じ数の径差の異なる面が、巻き取り筒50に形成される。
【0065】
このような巻き取り筒50によるシート状ベルト8bの巻き取りの様子については後述する。
【0066】
巻き取り筒50の小径部分51aにはベルト先端挿入孔52が開いている。ベルト先端挿入孔52は、巻き取り筒50でシート状ベルト8bを巻き取り始めるときに、シート状ベルト8bの先端を挿入するための孔である。ベルト先端挿入孔52の形状としては、
図13(a)に示すように、巻き取り筒50周方向の両側が巻き取り筒50軸方向に延びる辺52a、52bとなった形状が望ましい。また、巻き取り筒50の回転軸の位置には、後述する巻き取り装置80の回転軸81や貼り付け装置60の回転軸61を挿入するための回転軸用孔53が開いている。
【0067】
巻き取り筒50は例えば樹脂で出来ており、樹脂としては例えばABS樹脂やナイロンが用いられる。また巻き取り筒50は中が空洞である。
【0068】
なお以上の巻き取り筒50の変更例として、
図14に示すように外径面が段差の無い1つの曲面である巻き取り筒150が、シート状ベルト8bの巻き取りに用いられても良い。この変更例の巻き取り筒150にも上記と同じベルト先端挿入孔52が開いていることが望ましい。
【0069】
(8)巻き取り筒50でシート状ベルト8bを巻き取るための構造
巻き取り筒50は
図15及び
図16に示す巻き取り装置80に装着される。巻き取り装置80は、巻き取り筒50の回転軸用孔53に挿入される回転軸81と、回転軸81を回転させるサーボモータ82と、回転軸81とサーボモータ82の回転部とのそれぞれに固定されたプーリー同士を連結するタイミングベルト83とからなる回転駆動部84を有する。サーボモータ82が稼働するとその動力をタイミングベルト83が回転軸81に伝え、回転軸81と一体となって巻き取り筒50が回転する。
【0070】
なお、回転軸81はベルト用テーブル14の長手方向に対して直交する方向かつベルト用テーブル14の上面に平行に延びている。そして、巻き取り筒50が回転軸81に装着されると、巻き取り筒50の回転軸の方向もベルト用テーブル14の長手方向に対して直交する方向かつベルト用テーブル14の上面に平行となる。そのため、ベルト用テーブル14の長手方向とその上に載せられたシート状ベルト8bの長手方向が一致していれば、巻き取り筒50の周方向(すなわち回転方向)とそこに巻き取られるシート状ベルト8bの長手方向とが一致する。
【0071】
図17に示すように、回転軸81は、巻き取り筒50の移動方向である前後方向の両側からエアシリンダ57によって保持されている。それぞれのエアシリンダ57のピストンロッド57aには回転軸81に向かって一定の圧がかけられている。このような構造のため、回転軸81に装着された巻き取り筒50に前後方向に所定以上の大きさの力が加わると、ピストンロッド57aが変位して回転軸81が前後方向にずれ、巻き取り筒50に加わった力が逃がされる。なお
図15及び
図16ではエアシリンダ57が図示省略されている。
【0072】
また巻き取り装置80は回転駆動部84を昇降させるボールネジ89と、ボールネジ89を駆動させるサーボモータ85とを有する。サーボモータ85が稼働することによりボールネジ89のナットに連結された回転駆動部84が昇降する。
【0073】
さらに巻き取り装置80は、サーボモータ85及び回転駆動部84を一体としてベルト用テーブル14の長手方向に移動させる移動装置を有する。巻き取り装置80の移動装置は、ベルト巻き取り位置にあるベルト用テーブル14の横でベルト用テーブル14の長手方向に延びるラック86と、ラック86と噛み合うピニオン87と、ピニオン87を回転させるサーボモータ88とを有する。サーボモータ88はピニオン87を回転させつつサーボモータ85及び回転駆動部84と一体となってラック86に沿って移動する。これにより、回転駆動部84の回転軸81に装着された巻き取り筒50が、ラック86に沿ってベルト用テーブル14の長手方向に移動する。ラック86はベルト用テーブル14に対して高精度で平行になっている。
【0074】
巻き取り装置80に装着された巻き取り筒50は、ベルト用テーブル14の前部14a側の位置を待機位置として待機している。シート状ベルト8bを載せたベルト用テーブル14がベルト巻き取り位置へ移動してくると、サーボモータ88が稼働して、ベルト用テーブル14の長手方向に、巻き取り筒50がベルト用テーブル14の後部14b側の巻き取り開始位置へ移動する。巻き取り筒50にシート状ベルト8bを巻き取る場合は、サーボモータ82とサーボモータ88とが稼働することにより、巻き取り筒50が回転しながら巻き取り開始位置から待機位置へ移動し、シート状ベルト8bを巻き取っていく。
【0075】
巻き取り装置80には回転軸81と同方向に突出させてレーザ変位センサ56が固定されている。レーザ変位センサ56は、巻き取り筒50と一体となってベルト用テーブル14の長手方向に移動可能であり、その移動中にベルト用テーブル14上のシート状ベルト8bの上を通過する。レーザ変位センサ56は、シート状ベルト8bの上を通過しながらシート状ベルト8bの長手方向の両端(正確には、ベルト用テーブル14の表面とシート状ベルト8bの表面との間に出来ている段差)を検出する。制御部90は、レーザ変位センサ56がシート状ベルト8bの長手方向の一端を検出してから他端を検出するまでの回転駆動部84の走行距離から、シート状ベルト8bの長さを求めることができる。従って、レーザ変位センサ56はベルト用テーブル14上のシート状ベルト8bの長さを測定する測定装置として機能する。なおレーザ変位センサ56はシート状ベルト8bの幅方向中央の位置を検出するようセットされていることが望ましい。また、レーザ変位センサ56の代わりに、ベルト用テーブル14上のシート状ベルト8bの長さを測定できる別の測定装置が設けられていても良い。
【0076】
上記の待機位置では、作業者が巻き取り筒50を巻き取り装置80に装着したり、シート状ベルト8bの巻き取りが終わった巻き取り筒50を巻き取り装置80から取り外したりする。このように作業者は待機位置に立ったままで作業できる。
【0077】
(9)貼り付け装置60及び成型ドラム64の構造
図18に示す貼り付け装置60及び成型ドラム64は、巻き取り筒50からシート状ベルト8bを引き出して円筒状ベルト8cを成型するための装置である。
【0078】
貼り付け装置60は、巻き取り筒50からシート状ベルト8bを引き出すときに巻き取り筒50が装着される装置である。貼り付け装置60は回転自在な回転軸61を有する。この回転軸61が巻き取り筒50の回転軸用孔53に挿入されることにより、巻き取り筒50が貼り付け装置60へ装着される。貼り付け装置60に装着された巻き取り筒50は回転自在となる。
【0079】
成型ドラム64は、円筒状ベルト8cを成型する装置であり、貼り付け装置60の回転軸61と対向して配置されている。成型ドラム64は円筒形であり、その回転軸が貼り付け装置60の回転軸61と平行になっている。成型ドラム64は不図示の駆動装置に接続されており、その駆動装置が稼働すると回転する。成型ドラム64が回転して巻き取り筒50からシート状ベルト8bを巻き取り始めると、巻き取り筒50は従動してシート状ベルト8bを送り出し始める。
【0080】
貼り付け装置60及び成型ドラム64は、原反用テーブル10、ベルト用テーブル14、及び巻き取り装置80から離れた場所に配置されていても良い。
【0081】
(10)製造装置を制御する構造
以上のタイヤ用ベルトの製造装置は
図19に示す制御部90によって制御される。制御部90は、本製造装置を動作させるための各部と電気的に接続されており、それらの各部を制御可能である。さらに、制御部90は、少なくとも滑り検出器48、ベルト検出センサ22、及びレーザ変位センサ56と電気的に接続されており、少なくともそれらのセンサ類の検出結果に基づき上記の各部を制御可能である。
図19には制御部90と電気的に接続されているものの一部を示す。制御部90による制御で次に説明するタイヤ用ベルトの製造方法を実行することができる。
【0082】
3.タイヤ用ベルトの製造方法
ここではタイヤ用ベルトすなわち空気入りタイヤ1に用いられる円筒状ベルト8cの製造方法について説明する。この製造方法には上記のタイヤ用ベルトの製造装置が用いられるものとして説明する。
【0083】
(1)原反8aの送り出し
まず原反用テーブル10に原反8aが配置される。以下で説明する原反8aの送り出しの開始前において、原反8aの送り出し方向の前端部は原反用テーブル10の縁11に沿っており原反8aの長手方向に対して傾斜しているものとする。
【0084】
次に、第1ハンド30及び第2ハンド40が、原反用テーブル10に配置された原反8aを、ベルト切り出し位置のベルト用テーブル14へ送り出す。この送り出しは、短距離の送り出しと停止とを複数回繰り返すことにより行われる。
【0085】
すなわち、まず、第1ハンド30が原反8aの前方部を保持し、第2ハンド40が原反8aの後方部を保持する。第1ハンド30及び第2ハンド40は磁石35、45で原反8aを吸着するので、原反8aが原反用テーブル10から浮く。
【0086】
次に、第1ハンド30及び第2ハンド40が、
図20(a)に示すように同時に同速度で送り出し方向へ短距離移動し、それによって原反8aを短距離だけ送り出す。次に、第1ハンド30及び第2ハンド40が停止する。次に、第1ハンド30が原反8aを保持した状態で停止している間に、
図20(b)に示すように第2ハンド40が原反8aを離して送り出し方向の後方へ移動し、
図20(c)に示すように再び原反8aを保持する。次に、
図20(d)に示すように第1ハンド30及び第2ハンド40が再び同時に同速度で送り出し方向へ短距離移動し、それによって原反8aを短距離だけ送り出す。
【0087】
第1ハンド30及び第2ハンド40が以上の動作を繰り返すことによって、原反8aの送り出し方向前方の1枚のシート状ベルト8bとなる範囲をベルト用テーブル14に送り出す。1枚のシート状ベルト8bとなる範囲がベルト用テーブル14に載ると送り出しが終了する。以上の送り出しの開始から終了までの間、第1ハンド30は原反8aの前方部を保持し続けている。
【0088】
原反8aが移動している間、空気供給装置が稼働して原反用テーブル10のブロー用孔12から上方に向かって空気が吹き出す。この空気により原反用テーブル10上の原反8aに対して浮かせる力が働く。
【0089】
ところで、第1ハンド30及び第2ハンド40が原反8aを保持しているときに、例えばトラブル等で原反8aに対し送り出し方向後方へ引っ張る力が働いたような場合に、原反8aが第1ハンド30及び第2ハンド40に対して滑ることがあり得る。このように原反8aが滑った場合、
図21(a)に示すように滑り検出器48のローラ48aが回転してそのことを検出し、制御部90が警報を発したり原反8aの送り出しを停止したりする。
【0090】
なお、滑り検出器48が第1ハンド30に設けられている場合は、第1ハンド30のみが原反8aを保持しているときに原反8aが滑った場合にも、そのことを検出することができる。
【0091】
また、原反8aが原反用テーブル10上で撓んで部分的に浮くことがあり得る。その場合、第2ハンド40が原反8aの送り出しの動作中に原反8aを離して送り出し方向の後方へ移動する途中で、
図21(b)に示すように滑り検出器48のローラ48aが原反8aの浮いている部分に接触して回転する。そのようにして滑り検出器48が原反8aが浮いていることを検出し、制御部90が警報を発したり原反8aの送り出しを停止したりする。
【0092】
原反8aのベルト用テーブル14への送り出しが終了すると、第1ハンド30及び第2ハンド40が原反8aを離す。それと同時にベルト用テーブル14の磁石15が上昇して原反8aの幅方向両側をベルト用テーブル14上に吸着する。
【0093】
(2)シート状ベルト8bの切り出し及びベルト巻き取り位置への移動
原反8aのうち1枚のシート状ベルト8bとなる範囲がベルト用テーブル14に送り出されると、原反8aが1回切断されて1枚のシート状ベルト8bが切り出される。この1枚のシート状ベルト8bがタイヤ1周分のシート状ベルト8bである。
【0094】
切断のために、まず複数の押さえ部材76が原反用テーブル10のベルト用テーブル14側の縁11の上から下降してきて、
図22(a)に示すように原反8aの切断位置よりも原反用テーブル10側の部分を押さえる。これにより原反8aを、切断位置より原反用テーブル10側の複数の押さえ部材76と、切断位置よりベルト用テーブル14側の複数の磁石15とで、ずれないように固定することになる。
【0095】
次に、
図22(b)に示すように、押さえ部材76と磁石15とで原反8aを固定したままの状態で、切断装置70が原反用テーブル10とベルト用テーブル14との間で原反8aを切断する。切断は原反用テーブル10の縁11に沿ってベルト用テーブル14の長手方向に行われる。これにより、原反8aのベルト用テーブル14上に載っていた部分が、タイヤ1周分となる1枚のシート状ベルト8bとして切り出される。
【0096】
次に、
図22(c)に示すように、ロッドレスシリンダ23が動作して、ベルト用テーブル14が1枚のシート状ベルト8bを載せたままベルト切り出し位置からベルト巻き取り位置へ移動する。この移動は、切り出された1枚のシート状ベルト8bを磁石15でベルト用テーブル14上に吸着して固定したまま行われる。従って、原反8aの切断前から継続して磁石15が原反8a又はシート状ベルト8bをベルト用テーブル14上に吸着し続けていることになる。ベルト用テーブル14がベルト巻き取り位置に到着するとき、上記の緩衝装置24によってベルト用テーブル14に加わる衝撃が緩和される。
【0097】
(3)シート状ベルト8bの測長
ベルト用テーブル14がシート状ベルト8bを載せてベルト巻き取り位置へ移動してきたとき、
図23(a)に示すように巻き取り装置80は巻き取り筒50が装着された状態で待機位置にある。ベルト用テーブル14がベルト巻き取り位置へ移動してきた後、巻き取り装置80は、巻き取り筒50によるシート状ベルト8bの巻き取りを開始するために、待機位置から巻き取り開始位置へ移動する。この移動中、巻き取り筒50はベルト用テーブル14及びシート状ベルト8bから浮いている。
【0098】
図23(b)に示すこの移動中に、巻き取り装置80に固定されたレーザ変位センサ56がベルト用テーブル14上のシート状ベルト8bの上を通過しながら、シート状ベルト8bの長さを測定する。この測定はシート状ベルト8bの幅方向中央の直線上で行われることが望ましい。
【0099】
レーザ変位センサ56がシート状ベルト8bの長さを測定し終えると、制御部90はシート状ベルト8bの長さの合否を判定する。例えば、制御部90は、測定されたシート状ベルト8bの長さが基準寸法に対する許容差(例えば±20mm)以内の場合は合格と判定し、その範囲を超えた場合は不合格と判定する。
【0100】
巻き取り装置80は巻き取り開始位置へ移動して一旦停止する。そして、制御部90がシート状ベルト8bの長さを合格と判定した場合は、次に説明するシート状ベルト8bの巻き取り筒50による巻き取りが開始される。一方、制御部90が不合格と判定した場合は、巻き取り装置80は巻き取り開始位置で停止したままになり、不合格品が発生したことが報知される。
【0101】
なお、ベルト用テーブル14がベルト巻き取り位置へ移動した後も、磁石15は、次に説明するように吸着を解除するまでの間、シート状ベルト8bをベルト用テーブル14上に吸着して固定し続けている。
【0102】
(4)シート状ベルト8bの巻き取り
巻き取り装置80に装着された巻き取り筒50が巻き取り開始位置へ移動し、シート状ベルト8bの長さが合格と判定された場合、まず
図24(a)に示すように、突き上げ棒20がベルト用テーブル14の下から上昇してきてシート状ベルト8bの傾斜領域7bの巻き取り始め側の端部(「巻き始め端」とする)を突き上げる。
【0103】
次に
図24(b)に示すように、巻き取り筒50が待機位置へ向かって短距離前進することにより、シート状ベルト8bの巻き始め端が巻き取り筒50のベルト先端挿入孔52に挿入される。これにより、シート状ベルト8bの巻き始め端を巻き取り筒50にほぼ固定することができ、巻き取り筒50でシート状ベルト8bを巻き取り始めることが可能となる。
【0104】
次に
図24(c)に示すように、巻き取り筒50が巻き取り装置80の回転軸81を中心に回転しながらベルト用テーブル14の長手方向(すなわちシート状ベルト8bの長手方向)へ移動し、それによってシート状ベルト8bを巻き取っていく。この巻き取りのとき巻き取り筒50は巻き取り開始位置から待機位置へ向かって移動する。巻き取り筒50はベルト用テーブル14から浮いた状態で移動し、シート状ベルト8bを上方へ巻き取っていく。始めはシート状ベルト8bはその長手方向に並ぶ複数の磁石15によってベルト用テーブル14上に吸着されているが、巻き取り筒50が移動してきた位置の磁石15から順次吸着が解除されていく(具体的には順次磁石15が下降していく)。それにより、シート状ベルト8bの吸着が解除された部分から順に、ベルト用テーブル14から離れて巻き取り筒50へ巻き取られていく。
【0105】
シート状ベルト8bは巻き取り筒50に複数周巻かれて巻き取られる。巻き取りが進むに従い、先に巻き取られたシート状ベルト8bの厚みの分だけ巻き取りの径が大きくなっていく。そこで、制御部90は、巻き取りが進むに従い、巻き取り筒50の回転の角速度を遅くするか、巻き取り筒50の移動速度を速くし、ベルト用テーブル14上のシート状ベルト8bが巻き取り筒50に強く引っ張られることのないようにする。
【0106】
巻き取り筒50がシート状ベルト8bの傾斜領域7bの巻き取り終わり側の端部(「巻き終わり端」とする)の位置まで来ると、それまでベルト用テーブル14から浮いていた巻き取り筒50が
図25に示すように下降してシート状ベルト8bの巻き終わり端に押し付けられる。それによりシート状ベルト8bの巻き終わり端が巻き取り筒50側に密着し、シート状ベルト8bの巻き取り筒50への巻き取りが終了する。
【0107】
なお、シート状ベルト8bの巻き始め端のベルト先端挿入孔52への挿入が失敗した場合、巻き取り筒50が回転しながら待機位置へ向かって移動し始めても、シート状ベルト8bの巻き始め端がベルト用テーブル14上に残る。そこで、巻き取り筒50が所定位置まで移動したときにシート状ベルト8bの巻き始め端がベルト用テーブル14上にあることをベルト検出センサ22が検出した場合、シート状ベルト8bの巻き始め端のベルト先端挿入孔52への挿入が失敗したと判断できるので、制御部90は巻き取り筒50の移動を停止させて異常が起こったことを報知する。
【0108】
(5)巻き取り筒50によるシート状ベルト8bの巻き取りの具体的な様子
ここで、巻き取り筒50によるシート状ベルト8bの巻き取りの具体的な様子を
図26で説明する。ここでは例として、巻き取り筒50に、2つの段差54が形成され、軸方向一方の小径部分51aと、軸方向他方の大径部分51cと、小径部分51aと大径部分51cとの中間の径を有する中径部分51bとが形成されているものとする。小径部分51aはシート状ベルト8bを巻き取り始める部分である。
【0109】
まず、巻き取り筒50が有する段差54の数に1を足した回数(すなわち径の異なる面の数)だけ巻き取り筒50を回転させて、シート状ベルト8bの巻き始め端側の傾斜領域7b全体を完全に巻き取る。
【0110】
具体的には
図26(a)に示すように、1周目の巻き取りにおいて、シート状ベルト8bの傾斜領域7bの巻き始め端に近い細い部分が、巻き取り筒50の小径部分51aに巻き取られる。小径部分51aに巻き付いたシート状ベルト8bの外径は、中径部分51bの外径と一致する。
【0111】
シート状ベルト8bの巻き始め端側の傾斜領域7bの2周目以降の巻き取りでは、巻き取り筒50に先に巻き付いたシート状ベルト8bと、巻き取り筒50のより径の大きい部分とからなる部分に、シート状ベルト8bが巻き取られていく。
【0112】
具体的には
図26(b)に示すように、2周目の巻き取りにおいて、先に小径部分51aに巻き付いたシート状ベルト8bと巻き取り筒50の中径部分51bとからなる部分(この部分を「2周目巻き取り面」とする)の上にシート状ベルト8bが巻き取られる。先に小径部分51aに巻き付いたシート状ベルト8bと中径部分51bとは径が一致しているため、これらからなる2周目巻き取り面の上に巻き付いたシート状ベルト8bには皺が寄りにくい。2周目巻き取り面に巻き付いたシート状ベルト8bの外径は、大径部分51cの外径と一致する。
【0113】
次に
図26(c)に示すように、3周目の巻き取りにおいて、先に2周目巻き取り面に巻き付いたシート状ベルト8bと巻き取り筒50の大径部分51cとからなる部分(この部分を「3周目巻き取り面」とする)の上にシート状ベルト8bが巻き取られる。先に2周目巻き取り面に巻き付いたシート状ベルト8bと大径部分51cとは径が一致しているため、これらからなる3周目巻き取り面の上に巻き付いたシート状ベルト8bには皺が寄りにくい。この例では3周目の巻き取り中に巻き始め端側の傾斜領域7bの巻き取りが終わる。
【0114】
シート状ベルト8bの巻き始め端側の傾斜領域7b全体が完全に巻き取られた後、引き続き最大幅領域7c及び巻き終わり端側の傾斜領域7bが巻き取られる。最大幅領域7cは、先に3周目巻き取り面に巻き付いたシート状ベルト8bの上に巻き取られる。その次に巻き取られる巻き終わり端側の傾斜領域7bは、シート状ベルト8bの先に巻き取られた部分の上に巻き取られていく。
【0115】
具体的には
図26(d)に示すように、
図26(c)の続きの4周目以降の巻き取りでは、シート状ベルト8bの先に巻き付いた部分と幅がほぼ同じ又はそれより幅が狭い部分が巻き付けられることとなる。そのため、4周目以降の巻き取りでは、必然的にほぼ平坦又は平坦な面にシート状ベルト8bが巻き付くこととなり、シート状ベルト8bに皺が寄りにくい。
【0116】
以上のように、上記の高さ及び数の段差54を有する巻き取り筒50でシート状ベルト8bを巻き取ることにより、常にほぼ平坦又は平坦な部分にシート状ベルト8bを巻き取ることができる。
【0117】
(6)円筒状ベルト8cの成型
次に、1枚のシート状ベルト8bを巻き取った巻き取り筒50が、巻き取り装置80から取り外されて運搬され、貼り付け装置60に装着される。
【0118】
次に、貼り付け装置60に装着された巻き取り筒50からシート状ベルト8bの先端が引き出されて成型ドラム64に貼り付けられる。そしてその状態から
図27に示すように成型ドラム64が回転し始め、巻き取り筒50からシート状ベルト8bを巻き取っていく。
【0119】
ここで、シート状ベルト8bの長手方向とそのシート状ベルト8bを巻き取った巻き取り筒50の周方向とが一致しており、かつ、貼り付け装置60の回転軸61と成型ドラム64の回転軸とが平行である。そのため、巻き取り筒50から引き出されたシート状ベルト8bは、その長手方向が成型ドラム64の周方向と一致するように成型ドラム64に巻き取られていく。
【0120】
成型ドラム64がシート状ベルト8bの後端まで巻き取るとシート状ベルト8bの成型ドラム64への貼り付けが終わる。シート状ベルト8bの後端まで巻き取るために、成型ドラム64は例えば2周弱(すなわち、先端側の傾斜領域7bと最大幅領域7cとを巻き取るための1周と、後端側の傾斜領域7bを巻き取るための1周弱)回る。貼り付けが終わった時、
図2(c)に示すようにもとのシート状ベルト8bの長手方向両側の傾斜辺部7a同士が成型ドラム64上の同一線上で一致しているか、両傾斜辺部7aの間に非常に狭い隙間(例えば傾斜辺部7aに直交する方向に5mm以下の隙間)が空いている。以上のようにして1枚のシート状ベルト8bから1つの円筒状ベルト8cが成型される。
【0121】
4.効果
以上のように、本発明は、シート状ベルト8bの長さを測定する工程と、シート状ベルト8bの長さの合否を判定する工程とを含み、シート状ベルト8bの長さの合否を判定する工程において合格と判定された場合にのみ、そのシート状ベルト8bが巻き取り筒50で巻き取られ成型ドラム64への貼り付け場所へ搬送される。このように長さが合格だったシート状ベルト8bだけが成型工程へ搬送されるので、成型工程ではシート状ベルト8bの長手方向両側の傾斜辺部7a同士が成型ドラム64上の同じ位置で誤差なく一致するかほぼ一致することができる。
【0122】
ここで、シート状ベルト8bの長手方向両側の先端近傍は跳ねたり動いたりしやすいため、シート状ベルト8bの幅方向端部近傍でシート状ベルト8bの長さを測定すると、正確な長さを測定できないおそれがある。しかし、シート状ベルト8bの幅方向中央での長さを測定すれば、シート状ベルト8bの長手方向両側の先端近傍が跳ねたり動いたりしてもその影響を受けずに正確な長さを測定することができる。
【0123】
また、レーザ変位センサ56を巻き取り筒50と共に移動するように設けておき、巻き取り筒50がシート状ベルト8bの長手方向一端側となる待機位置から他端側となる巻き取り開始位置まで移動するときにレーザ変位センサ56でシート状ベルト8bの長さを測定するようにすれば、効率良く測定できる。
【0124】
ここで、巻き取り前のシート状ベルト8bはベルト用テーブル14に載っており、かつシート状ベルト8bの長手方向とベルト用テーブル14の長手方向とが一致している。そして、巻き取り筒50は、待機位置から巻き取り開始位置まで移動するときに、ベルト用テーブル14の長手方向に移動する。そのため、巻き取り筒50と共に移動するレーザ変位センサ56は、シート状ベルト8bの長手方向に移動することとなり、シート状ベルト8bの長手方向の長さを正確に測定することができる。
【0125】
また、原反8aの幅には不可避的な製造上の誤差が生じてしまう。しかし、原反8aがその長手方向に対して非常に小さい角度(例えば6°以上9°以下)で斜めに1回だけ切断されてシート状ベルト8bが製造される場合、原反8aの幅の僅かな誤差がシート状ベルト8bの長手方向の長さの大きな誤差となってしまう。このようなシート状ベルト8bについては、上記の工程で長さの全数検査がなされることの意義が大きい。