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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2019-119172(P2019-119172A)
(43)【公開日】2019年7月22日
(54)【発明の名称】プログラム及び情報処理装置
(51)【国際特許分類】
   B29C 45/76 20060101AFI20190701BHJP
【FI】
   B29C45/76
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2018-1853(P2018-1853)
(22)【出願日】2018年1月10日
(71)【出願人】
【識別番号】391013069
【氏名又は名称】池上金型工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】特許業務法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】東海林 武弥
【テーマコード(参考)】
4F206
【Fターム(参考)】
4F206AP03
4F206AP05
4F206AP07
4F206JA07
4F206JP01
4F206JP11
4F206JP13
4F206JP14
4F206JP22
(57)【要約】
【課題】成形品が良品であるか不良品であるかを判別可能な指標を容易に設定すること。
【解決手段】プログラムは、コンピュータに、射出成形機において成形品を生成するために規定回数実行されるショットを識別するためのショット番号と、センサ装置によって測定された測定値とを含む測定データを取得し、ユーザの操作に応じて、生成された成形品が良品であることを示す第1のタグまたは当該成形品が不良品であることを示す第2のタグのどちらかを含むタグデータを取得し、取得された測定データと取得されたタグデータとをショット番号により関連づけ、取得された規定回数分の測定データを、測定値にしたがって並び替え、並び替えられた規定回数分の測定データから、第1のタグを含むタグデータと関連づけられた測定データが並んで形成される測定データ群を抽出し、抽出された測定データ群に基づいて指標を設定することを実行させる。
【選択図】 図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
射出成形機と、前記射出成形機に設置されたセンサ装置とを含む射出成形システムにおいて、前記センサ装置と通信可能に接続される情報処理装置のコンピュータによって実行されるプログラムであって、
前記コンピュータに、
前記射出成形機において成形品を生成するために規定回数実行されるショットを識別するためのショット番号と、前記ショット番号によって識別されるショット時に前記センサ装置によって測定された測定値とを含む測定データを取得する第1の取得ステップと、
ユーザの操作に応じて、所定のショット時に生成された成形品が良品であることを示す第1のタグまたは当該成形品が不良品であることを示す第2のタグのどちらかを含むタグデータを取得する第2の取得ステップと、
前記取得された測定データと前記取得されたタグデータとを前記ショット番号により関連づける関連づけステップと、
前記取得された規定回数分の測定データを、前記各測定データによって示される測定値にしたがって並び替えるソートステップと、
前記並び替えられた規定回数分の測定データから、前記第1のタグを含むタグデータと関連づけられた測定データが連続して並んで形成される測定データ群を抽出する抽出ステップと、
前記抽出された測定データ群に含まれる複数の測定データによって示される測定値のうちの最大値を上限とし、最小値を下限とした指標を設定する設定ステップと
を実行させるためのプログラム。
【請求項2】
前記センサ装置は、
前記射出成形機にセットされた金型内の樹脂圧力、樹脂温度及び樹脂の先端速度を測定可能なセンサ装置であり、
前記設定ステップは、
前記樹脂圧力に関する第1の指標、前記樹脂温度に関する第2の指標、及び前記樹脂の先端速度に関する第3の指標をそれぞれ設定することを含む、請求項1に記載のプログラム。
【請求項3】
前記コンピュータに、
前記規定回数以降に実行されるショットの測定データによって示される樹脂圧力が前記第1の指標を満たしているか否か、樹脂温度が前記第2の指標を満たしているか否か、樹脂の先端速度が前記第3の指標を満たしているか否かを判定する判定ステップと、
前記第1乃至第3の指標の全てを満たしていると判定された場合、当該ショット時に生成された成形品を良品と判別し、前記第1乃至第3の指標の全てを満たしていないと判定された場合、当該ショット時に生成された成形品を不良品と判別し、前記第1乃至第3の指標のうちの1つまたは2つの指標を満たしていると判定された場合、当該ショット時に生成された成形品を良品の可能性がある成形品と判別する判別ステップと、
前記良品の可能性がある成形品と判別された成形品を生成したショットのショット番号を前記ユーザに対して通知する通知ステップと、
前記通知されたショット番号に関するタグデータの入力を受け付け、当該タグデータが前記第1のタグを含んでいる場合、当該ショット番号によって識別されるショット時に測定された測定データの測定値を、対象となる指標に加えて、当該指標を更新する更新ステップと
をさらに実行させる、請求項2に記載のプログラム。
【請求項4】
前記抽出ステップは、
前記並び替えられた規定回数分の測定データから、前記測定データ群に加えて、連続して並んでいないものの前記第1のタグを含むタグデータと関連づけられた測定データを抽出し、
前記測定データ群とは別に抽出された前記測定データによって示されるショット番号を前記ユーザに通知することを含み、
前記設定ステップは、
前記通知されたショット番号に関する前記タグデータの入力を受け付け、当該タグデータが前記第1のタグを含んでいる場合、前記測定データ群によって設定される指標とは別に、当該ショット番号を含む測定データの測定値を指標として設定することを含む、請求項1に記載のプログラム。
【請求項5】
前記設定ステップは、
前記取得された測定データによって示される測定値と、前記取得されたタグデータに含まれる第1のタグまたは第2のタグとを教師データとして、前記測定データによって示される測定値に応じて、成形品が良品であるか、不良品であるかを判別するための統計モデルを生成することを含む、請求項1に記載のプログラム。
【請求項6】
射出成形機と、前記射出成形機に設置されたセンサ装置とを含む射出成形システムにおいて、前記センサ装置と通信可能に接続される情報処理装置であって、
前記射出成形機において成形品を生成するために規定回数実行されるショットを識別するためのショット番号と、前記ショット番号によって識別されるショット時に前記センサ装置によって測定された測定値とを含む測定データを取得する第1の取得手段と、
ユーザの操作に応じて、所定のショット時に生成された成形品が良品であることを示す第1のタグまたは当該成形品が不良品であることを示す第2のタグのどちらかを含むタグデータを取得する第2の取得手段と、
前記取得された測定データと前記取得されたタグデータとを前記ショット番号により関連づける関連づけ手段と、
前記取得された規定回数分の測定データを、前記各測定データによって示される測定値にしたがって並び替えるソート手段と、
前記並び替えられた規定回数分の測定データから、前記第1のタグを含むタグデータと関連づけられた測定データが連続して並んで形成される測定データ群を抽出する抽出手段と、
前記抽出された測定データ群に含まれる複数の測定データによって示される測定値のうちの最大値を上限とし、最小値を下限とした指標を設定する設定手段と
を具備する情報処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本実施形態は、プログラム及び情報処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、決まった形状の物体(以下、「成形品」と表記する)を大量生産する場合、当該形状に合った金型が作成され、当該金型を用いて成形品の大量生産が行われる。
【0003】
成形品を大量生産した際には、生成された成形品が不良品でないかをチェックする作業が必要となる。このチェック作業は、生産する成形品の数に比例して、手間がかかる作業となる。
【0004】
このため、近年では、成形品が良品であるか、不良品であるかを自動的に判別可能なシステムが開発されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−76177号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記したシステムでは、成形品が良品であるか、不良品であるかを判別可能な具体的な指標(例えば、成形品生産時の温度の上限値と下限値、等)を予め設定しておく必要がある。しかしながら、この設定作業は、例えば温度が成形品にどのような影響を及ぼすかを理解した上で行う必要があり、成形品が不良品でないかを見た目では判別可能な作業員にとっても困難であるという不都合がある。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされており、成形品が良品であるか、不良品であるかを判別可能な指標を容易に設定可能なプログラム及び情報処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の1つの態様によれば、プログラムは、射出成形機と、前記射出成形機に設置されたセンサ装置とを含む射出成形システムにおいて、前記センサ装置と通信可能に接続される情報処理装置のコンピュータによって実行されるプログラムである。前記プログラムは、前記コンピュータに、前記射出成形機において成形品を生成するために規定回数実行されるショットを識別するためのショット番号と、前記ショット番号によって識別されるショット時に前記センサ装置によって測定された測定値とを含む測定データを取得する第1の取得ステップと、ユーザの操作に応じて、所定のショット時に生成された成形品が良品であることを示す第1のタグまたは当該成形品が不良品であることを示す第2のタグのどちらかを含むタグデータを取得する第2の取得ステップと、前記取得された測定データと前記取得されたタグデータとを前記ショット番号により関連づける関連づけステップと、前記取得された規定回数分の測定データを、前記各測定データによって示される測定値にしたがって並び替えるソートステップと、前記並び替えられた規定回数分の測定データから、前記第1のタグを含むタグデータと関連づけられた測定データが連続して並んで形成される測定データ群を抽出する抽出ステップと、前記抽出された測定データ群に含まれる複数の測定データによって示される測定値のうちの最大値を上限とし、最小値を下限とした指標を設定する設定ステップとを実行させる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、成形品が良品であるか、不良品であるかを判別可能な指標を容易に設定することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】第1の実施形態に係る射出成形システムの概略構成例を示す図。
図2】同実施形態に係る情報処理装置のハードウェア構成例を示す図。
図3】同実施形態に係る情報処理装置の機能構成例を示すブロック図。
図4】同実施形態に係る情報処理装置の動作の一例を示すフローチャート。
図5】同実施形態に係る情報処理装置の別の動作の一例を示すフローチャート。
図6】第2の実施形態に係る情報処理装置の動作の一例を示すフローチャート。
図7】第3の実施形態に係る情報処理装置の動作の一例を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して実施形態を説明する。
<第1の実施形態>
図1は、第1の実施形態に係る射出成形システムの概略構成例を示す図である。図1に示す射出成形システムは、射出成形機10と、射出成形機10の各部に設けられる複数のセンサ装置20と、情報処理装置30とを含んでいる。
【0012】
射出成形機10は、一般的な射出成形機であり、次のような一連の動作を実行する。まず、ホッパーにペレット状の樹脂が投入されると、シリンダーの中で当該樹脂を暖めて液状にすることで射出の準備を整える動作を実行する。その後、ノズルから液状の材料を射出することで、液状の材料を、セットされた金型内のスプルー及びランナーを通じて成形部分に流し込む動作を実行する。そして、成形部分に流し込まれた樹脂を冷やして固化させた後に、金型を開き、成形品を外部に排出する動作を実行する。上記した一連の動作を実行可能であれば、本システムには、任意の射出成形機が適用可能である。
【0013】
複数のセンサ装置20は、射出成形機10の各部にそれぞれ設置される。本実施形態では、複数のセンサ装置20として、圧力センサ20a、樹脂温度センサ20b、流速センサ20cが射出成形機10の各部にそれぞれ設置されている場合を想定する。
【0014】
圧力センサ20aは、1ショット毎に、射出成形機10にセットされる金型内の樹脂圧力(以下、「型内圧力」と表記する)の値を測定可能なセンサ装置である。
【0015】
樹脂温度センサ20bは、1ショット毎に、射出成形機10にセットされる金型内の樹脂温度(以下、「型内温度」と表記する)の値を測定可能であって、光ファイバ赤外線方式により金型内の温度変化を追従可能なセンサ装置であり、例えばキャビティ近辺に設置される。
【0016】
流速センサ20cは、1ショット毎に、可視光を樹脂に放射し、反射光を検出することで、樹脂のフローフロント(先端)速度(以下、「型内流速」と表記する)の値を測定可能なセンサ装置であり、例えばキャビティ近辺に設置される。
【0017】
なお、本実施形態では、射出成形機10の各部に設置される複数のセンサ装置20として、圧力センサ20a、樹脂温度センサ20b、流速センサ20cを例示したが、これに限定されず、射出成形時の金型内の状態がわかる値を測定可能なセンサ装置であれば、任意のセンサ装置が上記したセンサ装置に代えてまたは上記したセンサ装置に加えて設置されても良い。例えば、表面温度センサが射出成形機10にさらに設置されても良い。表面温度センサは、1ショット毎に、キャビティ表面から1mm金型側の部分の温度を測定可能なセンサ装置であり、例えばキャビティ表面と面一の状態で設置される。
【0018】
情報処理装置30は、各センサ装置20によって測定される各種測定データを取得し、取得された各種測定データに基づいて、生成された成形品が良品であるか、不良品であるかを判別する。
【0019】
以下では、情報処理装置30についてより詳しく説明する。
【0020】
図2は、図1に示した情報処理装置30のハードウェア構成例を示している。図2に示すように、情報処理装置30においては、バス31に、不揮発性メモリ32、CPU(Central Processing Unit)33、メインメモリ34及び通信部35、等が接続されている。不揮発性メモリ32及びメインメモリ34は、情報処理装置30の記憶装置を構成する。なお、本実施形態では、情報処理装置30がパーソナルコンピュータ(PC)である場合を想定するが、これに限定されず、情報処理装置30は、タブレット端末やスマートフォン、各種ウェアラブルデバイス等であっても良い。
【0021】
不揮発性メモリ32は、例えばオペレーティングシステム(OS)や各種アプリケーションプログラム、各センサ装置20から取得される測定データを格納(記憶)する。アプリケーションプログラムには、各センサ装置20が設置された射出成形機10によって生成された成形品が良品であるか、不良品であるかを判別するためのプログラムP(以下、「良/不良判別プログラム」と表記する)が含まれる。
【0022】
CPU33は、例えば不揮発性メモリ32に格納されている各種アプリケーションプログラムを実行するプロセッサである。CPU33は、情報処理装置30に含まれる各部の制御も行う。
【0023】
メインメモリ34は、例えばCPU33が各種アプリケーションプログラムを実行する際に必要とされるワークエリアとして使用される。各センサ装置20から取得される各種測定データは、不揮発性メモリ32だけでなく、当該メインメモリ34にも格納されていても良い。
【0024】
なお、図2においては、情報処理装置30に含まれる記憶装置として、不揮発性メモリ32及びメインメモリ34だけが示されているが、情報処理装置30は、HDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)等、他の記憶装置をさらに備えていても良い。
【0025】
通信部35は、各センサ装置20と有線または無線により接続され、各センサ装置20から各種測定データを取得する際に使用される。
【0026】
続いて、図3の機能ブロック図を参照して、CPU33が良/不良判別プログラムPを実行することによって実現される情報処理装置30の主となる機能構成について説明する。なお、この良/不良判別プログラムPは、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体に予め格納して頒布可能であるものとする。また、このプログラムPは、例えばインターネット等のネットワークを介して情報処理装置にダウンロードされても良い。
【0027】
図3に示すように、情報処理装置30は、データ取得部301、データソート部302、並び順判定部303、良品範囲設定部304、良/不良判別部305、通知部306及び良品範囲更新部307、等を備えている。なお、図3に示す記憶装置は、不揮発性メモリ32及びメインメモリ34によって構成されている。
【0028】
本実施形態においては、各部301〜307は、CPU33が良/不良判別プログラムPを実行すること(つまり、ソフトウェア)によって実現されるものとして説明するが、これに限定されず、各部301〜307は、ハードウェアによって実現されても良いし、ソフトウェア及びハードウェアの組み合わせによって実現されても良い。
【0029】
データ取得部301は、1ショット毎に、各センサ装置20a〜20cによって測定される測定値を示す各種測定データを通信部35を介して取得する。具体的には、データ取得部301は、1ショット毎に、圧力センサ20aによって測定される型内圧力の値を示す圧力データと、樹脂温度センサ20bによって測定される型内温度の値を示す温度データと、流速センサ20cによって測定される型内流速の値を示す流速データとを、通信部35を介して取得する。
【0030】
なお、射出成形機10は、セットした金型に対応した成形品を大量生産することを目的としているため、予め決められたショット数(例えば100ショット)だけ、ショットを繰り返すのが一般的である。以下では、この予め決められたショット数を規定ショット数と称して説明する。なお、規定ショット数は、ユーザ(管理者、作業員)が任意に設定・変更可能な値である。
【0031】
圧力データは、上記した規定ショット数のうちの何ショット目であるかを示すショット番号と、型内圧力の値とが関連づけられたデータである。同様に、温度データは、上記したショット番号と、型内温度の値とが関連づけられたデータである。また、流速データは、上記したショット番号と、型内流速の値とが関連づけられたデータである。
【0032】
データ取得部301は、上記したショット番号と、当該ショット番号により示されるショットによって生成された成形品が良品であることを示す良タグ(第1のタグ)あるいは当該ショット番号により示されるショットによって生成された成形品が不良品であることを示す不良タグ(第2のタグ)と、が関連づけられたタグデータを取得する。
【0033】
このタグデータは、情報処理装置30を操作するユーザが、生成された成形品を自身の目でチェックし、当該情報処理装置30に備え付けられているキーボード等の入力インタフェースを用いて入力するデータである。なお、タグデータは、情報処理装置30とは異なる端末(例えばユーザが所持する携帯端末等)から入力されても良く、この場合、データ取得部301は、通信部35を介して、当該端末からタグデータを取得する。
【0034】
データ取得部301は、ショット番号が同一の圧力データとタグデータとを紐づけて(関連づけて)、上記した記憶装置に格納(記憶)する。同様に、データ取得部301は、ショット番号が同一の温度データとタグデータとを紐づけて、上記した記憶装置に格納する。また、データ取得部301は、ショット番号が同一の流速データとタグデータとを紐づけて、上記した記憶装置に格納する。
【0035】
データソート部302は、記憶装置に格納された各種測定データを、測定値に基づいて、昇順または降順にてソートする(並び替える)。具体的には、データソート部302は、記憶装置に格納された複数の圧力データ(規定ショット数分の圧力データ)を、各圧力データが示す型内圧力の各値に基づいて、昇順または降順にてソートする。同様に、データソート部302は、記憶装置に格納された複数の温度データを、各温度データが示す型内温度の各値に基づいて、昇順または降順にてソートする。また、データソート部302は、記憶装置に格納された複数の流速データを、各流速データが示す型内流速の各値に基づいて、昇順または降順にてソートする。
【0036】
並び順判定部303は、データソート部302によるソートの結果を参照して、成形品が良品であることを示す良タグを含んだタグデータと紐づいている各種測定データが連続して並んでいる箇所を全て抽出する。具体的には、並び順判定部303は、良タグを含んだタグデータと紐づいている圧力データが連続して並んで形成される圧力データ群を全て抽出する。さらには、並び順判定部303は、抽出された圧力データ群のうちで、圧力データの数が最も多い圧力データ群(以下、「対象圧力データ群」と表記する)を抽出する。
【0037】
同様に、並び順判定部303は、データソート部302によるソートの結果を参照して、良タグを含んだタグデータと紐づいている温度データが連続して並んで形成される温度データ群を全て抽出する。また、並び順判定部303は、抽出された温度データ群のうちで、温度データの数が最も多い温度データ群(以下、「対象温度データ群」と表記する)を抽出する。
【0038】
また、並び順判定部303は、データソート部302によるソートの結果を参照して、良タグを含んだタグデータと紐づいている流速データが連続して並んで形成される流速データ群を全て抽出する。並び順判定部303は、抽出された流速データ群のうちで、流速データの数が最も多い流速データ群(以下、「対象流速データ群」と表記する)を抽出する。
【0039】
良品範囲設定部304は、並び順判定部303によって抽出された各種対象データ群に基づき、生成された成形品を良品とみなすための良品範囲(指標)を設定する。具体的には、良品範囲設定部304は、並び順判定部303によって抽出された対象圧力データ群に含まれる複数の圧力データによって示される型内圧力の各値のうちの最小値を下限とし、最大値を上限とした範囲を、型内圧力の観点から、生成された成形品を良品とみなすことが可能な第1の良品範囲(第1の指標)として設定する。
【0040】
同様に、良品範囲設定部304は、並び順判定部303によって抽出された対象温度データ群に含まれる複数の温度データによって示される型内温度の各値のうちの最小値を下限とし、最大値を上限とした範囲を、型内温度の観点から、生成された成形品を良品とみなすことが可能な第2の良品範囲(第2の指標)として設定する。
【0041】
また、良品範囲設定部304は、並び順判定部303によって抽出された対象流速データ群に含まれる複数の流速データによって示される型内流速の各値のうちの最小値を下限とし、最大値を上限とした範囲を、型内流速の観点から、生成された成形品を良品とみなすことが可能な第3の良品範囲(第3の指標)として設定する。
【0042】
なお、各良品範囲を示す情報は、良品範囲設定部304により上記した記憶装置に格納される。
【0043】
良/不良判別部305は、上記した各良品範囲を示す情報が上記した記憶装置に格納されている状態、つまり、上記した各良品範囲が既に設定されている状態で、データ取得部301によって取得された各種測定データを対象にして、各種測定データによって示される測定値が各良品範囲に含まれているか否かを判定する。良/不良判別部305は、この判定結果に基づき、生成された成形品が良品であるか、不良品であるか、または良品の可能性がある成形品であるかを判別する。
【0044】
なお、良/不良判別部305は、各種測定データによって示される各測定値(つまり、型内圧力、型内温度、型内流速の各値)がいずれも良品範囲に含まれていると判定された場合、当該ショットにより生成された成形品は良品であるものと判定する。また、良/不良判別部305は、各種測定データによって示される各測定値がいずれも良品範囲に含まれていないと判定された場合、当該ショットにより生成された成形品は不良品であるものと判定する。さらに、良/不良判別部305は、各種測定データによって示される各測定値のうちの少なくとも1つの測定値は良品範囲に含まれているものの、少なくとも1つの他の測定値は良品範囲に含まれていないと判定された場合、当該ショットにより生成された成形品は良品の可能性がある成形品であるものと判別する。
【0045】
通知部306は、良/不良判別部305による所定のショット時に生成された成形品に対する判別の結果が、良品の可能性がある成形品であった場合、当該所定のショットのショット番号をユーザに対して通知する。
【0046】
なお、通知部306は、ユーザによってオン/オフを切り替え可能な機能であるものとする。例えば、ユーザは、後述する良品範囲更新処理がもう必要ないと判断した時点で(つまり、良/不良判別部305による判定の結果として、良品の可能性がある成形品が生じないと判断した時点で)、当該機能をオンからオフに切り替えても良い。
【0047】
良品範囲更新部307は、情報処理装置30に備え付けられた入力インタフェースからのタグデータの入力にしたがって、第1〜第3の良品範囲を更新する良品範囲更新処理を実行する。詳細については、図5のフローチャートと共に後述するが、良品範囲更新部307は、通知部306によってユーザに通知されたショット番号と、当該ショット番号によって示されるショットにより生成された成形品が良品であることを示す良タグとを含んだタグデータの入力を受け付けた場合に、更新対象である良品範囲を更新する。
[良品範囲設定処理]
次に、図4のフローチャートを参照して、第1〜第3の良品範囲が設定されるまでの情報処理装置30の動作の一例について説明する。
【0048】
所定の金型に対応する良品範囲を示す情報が上記した記憶装置に格納されていない場合、当該金型に対応する良品範囲を設定するために、ユーザは、当該金型を射出成形機10にセットし、規定ショット数分のショットを射出成形機10に実行させる。これによれば、所定の金型に対応した規定ショット数分の成形品が生成される。
【0049】
データ取得部301は、規定ショット数分の成形品が生成される際の1ショット毎の圧力データ、温度データ及び流速データを各センサ装置20a〜20cから取得する(ステップS1)。取得される各種測定データは、上記したように、ショット番号と、各センサ装置20a〜20cによって測定された測定値とを含んだデータである。
【0050】
なお、データ取得部301による各種測定データの取得が完了すると、通知部306は、データの取得が完了したことをユーザに通知する。ユーザは、当該通知を受けると、射出成形機10によって生成された規定ショット数分の成形品が、良品であるか、不良品であるかを判別する(仕分ける)チェック作業を行う。具体的には、ユーザは、成形品を自身の目でチェックし、当該成形品が良品であるか、不良品であるかを判別し、その後、情報処理装置30に備え付けられている入力インタフェースを介して、上記したタグデータを入力し、どのショットにより生成された成形品が良品であり、どのショットにより生成された成形品が不良品であるかを情報処理装置30に教え込む。
【0051】
次に、データ取得部301は、ユーザによって入力されたタグデータを取得すると、取得されたタグデータと、ステップS1の処理において取得された各種測定データとを紐づけて記憶装置に格納する(ステップS2)。具体的には、データ取得部301は、同一のショット番号を含む各種測定データとタグデータとを紐づける処理を実行する。
【0052】
続いて、データソート部302は、ステップS1において取得された各種測定データのうちの圧力データを対象にして、取得された規定ショット数分の圧力データを、各圧力データによって示される型内圧力の各値にしたがって並び替える処理を実行する(ステップS3)。
【0053】
並び順判定部303は、ステップS3の処理において並び替えられた規定ショット数分の圧力データを対象にして、生成された成形品が良品であることを示す良タグを含んだタグデータと紐づいている圧力データが連続して並んで形成される圧力データ群を全て抽出する。その後、並び順判定部303は、抽出された圧力データ群のうちで、連続して並んでいる圧力データの数が最も多い圧力データ群、つまり、対象圧力データ群を抽出する(ステップS4)。
【0054】
次に、良品範囲設定部304は、ステップS4の処理において抽出された対象圧力データ群に含まれる複数の圧力データによって示される型内圧力の各値のうちの最小値を下限とし、最大値を上限とした範囲を、型内圧力の観点から、成形品を良品とみなすことが可能な第1の良品範囲として設定し、当該第1の良品範囲を示す情報を記憶装置に格納する(ステップS5)。
【0055】
上記したステップS3〜S5の処理が実行されると、各部302〜304は、ステップS1において取得された温度データを対象にして同様な処理を実行し、型内温度の観点から、成形品を良品とみなすことが可能な第2の良品範囲を設定し、当該第2の良品範囲を示す情報を記憶装置に格納する(ステップS6〜S8)。
【0056】
また、上記したステップS6〜S8の処理が実行されると、各部302〜304は、ステップS1において取得された流速データを対象にして同様な処理を実行し、型内流速の観点から、成形品を良品とみなすことが可能な第3の良品範囲を設定し、当該第3の良品範囲を示す情報を記憶装置に格納する(ステップS9〜S11)。
【0057】
以上説明した図4に示す一連の処理によれば、生成された成形品を良品とみなすための良品範囲を、型内圧力、型内温度及び型内流速のそれぞれについて設定することができる。
[良品範囲更新処理]
次に、図5のフローチャートを参照して、上記した良品範囲を更新する際の情報処理装置30の動作の一例について説明する。
【0058】
なお、以下では、図4に示した一連の処理により、所定の金型に関し、型内圧力の観点から見た良品範囲と、型内温度の観点から見た良品範囲と、型内流速の観点から見た良品範囲とが既に設定されている場合、つまり、第1〜第3の良品範囲を示す情報が、上記した記憶装置に既に格納されている場合を想定する。
【0059】
所定の金型に関し、第1〜第3の良品範囲が設定された状態で、当該所定の金型が射出成形機10にセットされ、ショットが実行されると、データ取得部301は、当該ショット時に各センサ装置20a〜20cによって測定された各種測定データを取得する(ステップS21)。
【0060】
次に、良/不良判別部305は、ステップS21の処理において取得された各種測定データのうちの圧力データを対象にして、当該圧力データによって示される型内圧力の値が、型内圧力に関して設定された第1の良品範囲に含まれるか否かを判定する。
【0061】
同様に、良/不良判別部305は、ステップS21の処理において取得された各種測定データのうちの温度データを対象にして、当該温度データによって示される型内温度の値が、型内温度に関して設定された第2の良品範囲に含まれるか否かを判定する。
【0062】
さらに、良/不良判別部305は、ステップS21の処理において取得された各種測定データのうちの流速データを対象にして、当該流速データによって示される型内流速の値が、型内流速に関して設定された第3の良品範囲に含まれるか否かを判定する(ステップS22)。
【0063】
続いて、良/不良判別部305は、ステップS22の処理において、型内圧力、型内温度及び型内流速の全てに関し、測定値が良品範囲に含まれていたか否かを判定する。つまり、良/不良判別部305は、型内圧力の値が第1の良品範囲に含まれ、型内温度の値が第2の良品範囲に含まれ、型内流速の値が第3の良品範囲に含まれていたか否かを判定する(ステップS23)。
【0064】
なお、型内圧力、型内温度及び型内流速の全てに関し、測定値が良品範囲に含まれていたと判定された場合(ステップS23のYES)、良/不良判別部305は、当該ショット時に生成された成形品を「良品」と判別し(ステップS24)、ここでの処理を終了させる。
【0065】
一方で、型内圧力、型内温度及び型内流速の全てに関し、測定値が良品範囲に含まれていた訳ではないと判定された場合(ステップS23のNO)、良/不良判別部305は、型内圧力、型内温度及び型内流速の全てに関し、測定値が良品範囲に含まれていなかったか否かを判定する。つまり、良/不良判別部305は、型内圧力の値が第1の良品範囲に含まれず、型内温度の値が第2の良品範囲に含まれず、型内流速の値が第3の良品範囲に含まれていなかったか否かを判定する(ステップS25)。
【0066】
なお、型内圧力、型内温度及び型内流速の全てに関し、測定値が良品範囲に含まれていないと判定された場合(ステップS25のYES)、良/不良判別部305は、当該ショット時に生成された成形品を「不良品」と判別し(ステップS26)、ここでの処理を終了させる。
【0067】
一方で、型内圧力、型内温度及び型内流速の全てに関し、測定値が良品範囲に含まれていない訳ではないと判定された場合(ステップS24のNO)、良/不良判別部305は、当該ショット時に生成された成形品を「良品の可能性がある成形品」と判別する(ステップS27)。
【0068】
通知部306は、ステップS27の処理により、生成された成形品が「良品の可能性がある成形品」であると判別された場合、当該成形品を生成したショットのショット番号をユーザに対して通知する(ステップS28)。
【0069】
通知部306からの通知を受けると、ユーザは、通知されたショット番号によって示されるショットにより生成された成形品を自身の目でチェックする。ユーザは、チェックの結果を、情報処理装置30に備え付けられた入力インタフェースを介して入力する。具体的には、ユーザは、チェックした成形品を生成したショットのショット番号(つまり、通知されたショット番号)と、当該成形品が良品であることを示す良タグまたは不良品であることを示す不良タグとを含むタグデータを入力する。
【0070】
良品範囲更新部307は、入力インタフェースからのタグデータの入力を受けると、当該タグデータに良タグが含まれているか否かを判定する(ステップS29)。なお、良タグが含まれていない、つまり、不良タグが含まれていたと判定された場合(ステップS29のNO)、良品範囲更新部307は、良品範囲の更新を行わずに、ここでの処理を終了させる。
【0071】
一方で、良タグが含まれていると判定された場合(ステップS29のYES)、良品範囲更新部307は、更新対象の良品範囲を更新する。具体的には、良品範囲更新部307は、ステップS25の処理において良品範囲に含まれていないと判定された測定値を、当該良品範囲に加えることで、良品範囲を更新し(ステップS30)、ここでの処理を終了させる。
【0072】
例えば、ステップS25の処理において、型内圧力及び型内温度の値は、各々第1及び第2の良品範囲に含まれているものの、型内流速の値だけが、第3の良品範囲に含まれていなかった場合、良品範囲更新部307は、当該第3の良品範囲を更新対象とし、当該型内流速の値を、第3の良品範囲に加える(つまり、第3の良品範囲と当該型内流速の値とを、新たな第3の良品範囲とする)ことで良品範囲を更新する。
【0073】
以上説明した第1の実施形態によれば、情報処理装置30は、データ取得部301、データソート部302、並び順判定部303及び良品範囲設定部304を備えているので、最初の規定ショット数分の成形品に対するタグデータの入力さえユーザによって行われれば、後は、測定値にしたがって各種測定データを並び替え、良品範囲を自動的に設定することが可能なため、ユーザにかかる手間を低減させることができる。
【0074】
なお、タグデータの入力は、見た目から成形品が良品であるか、不良品であるかを判別可能なユーザであれば誰でも可能なため、専門的な知識を有していないユーザであっても良品範囲の設定を容易に行うことが可能となる。
【0075】
また、情報処理装置30は、良/不良判別部305及び通知部306を備えているので、良品の可能性がある成形品をユーザに対して通知することが可能であり、良品を誤って不良品として廃棄してしまうような事態を防止することができる。また、ユーザは、通知部306からの通知があった場合にのみ、自身でチェックを行えば良いため、ユーザにかかる手間を低減させることができる。
【0076】
さらに、情報処理装置30は、通知部306及び良品範囲更新部307を備えているので、ユーザによるチェックの末に、良品の可能性がある成形品が良品であると判別された場合、当該成形品が生成された際の測定値を、良品範囲に加えて新たな良品範囲とすることが可能であり(換言すると、当該成形品が生成された際の測定値を加えた良品範囲を新たな良品範囲として学習させることが可能であり)、良/不良判別部305によって以降に実行される判別処理の精度を高めることができる。
<第2の実施形態>
次に、第2の実施形態について説明する。上記した第1の実施形態では、最初に狭めの良品範囲を設定し、順に良品範囲を拡大していく構成について説明したが、本実施形態では、最初から広めに(細かく)良品範囲を設定し、その後の更新処理にかかる手間を低減可能な構成について説明する。
【0077】
なお、以下では、第1の実施形態と同様な機能を有する機能部には同一の符号を付して、詳細な説明を省略するものとする。すなわち、以下では、第1の実施形態と異なる部分についてのみ説明するものとする。
【0078】
図6のフローチャートを参照して、第2の実施形態に係る情報処理装置30の動作の一例について説明する。図6では、各種測定データのうちの圧力データにフォーカスして説明するが、温度データ及び流速データについても同様な処理が実行される。
【0079】
まず、図4に示したステップS1〜S3の処理と同様な処理が圧力データについて実行される(ステップS41〜S43)。
【0080】
その後、並び順判定部303は、ステップS43の処理において並び替えられた規定ショット数分の圧力データを対象にして、生成された成形品が良品であることを示す良タグを含んだタグデータと紐づいている圧力データが連続して並んで形成される圧力データ群があるか否かを判定する(ステップS44)。
【0081】
ステップS44の判定の結果、上記した圧力データ群があると判定された場合(ステップS44のYES)、並び順判定部303は、良タグを含んだタグデータと紐づく全ての圧力データが連続して並んでいるか否かを判定する(ステップS45)。
【0082】
ステップS45の判定の結果、良タグを含んだタグデータと紐づく全ての圧力データが連続して並んでいると判定された場合(ステップS45のYES)、並び順判定部303は、これら全ての圧力データを対象圧力データ群として抽出し、良品範囲設定部304は、当該対象圧力データ群に含まれる複数の圧力データによって示される型内圧力の各値のうちの最小値を下限とし、最大値を上限とした範囲を、型内圧力の観点から、成形品を良品とみなすことが可能な第1の良品範囲として設定し、当該第1の良品範囲を示す情報を記憶装置に格納する(ステップS46)。
【0083】
一方で、ステップS45の判定の結果、良タグを含んだタグデータと紐づく全ての圧力データが連続して並んでいる訳ではないと判定された場合(ステップS45のNO)、並び順判定部303は、良タグを含んだタグデータと紐づく圧力データが連続して並んで形成される圧力データ群のうちで、連続して並んでいる圧力データの数が最も多い圧力データ群を、対象圧力データ群として抽出する(ステップS47)。なお、連続して並んでいる圧力データの数が最も多い圧力データ群が複数ある場合、並び順判定部303はそれら全てを対象圧力データ群として抽出する。
【0084】
続いて、良品範囲設定部304は、抽出された対象圧力データ群に含まれる複数の圧力データによって示される型内圧力の各値のうちの最小値を下限とし、最大値を上限とした範囲を、型内圧力の観点から、成形品を良品とみなすことが可能な仮の第1の良品範囲として設定し、当該仮の第1の良品範囲を示す情報を記憶装置に格納する(ステップS48)。
【0085】
良品範囲設定部304は、対象圧力データ群として抽出されなかったものの、良タグを含んだタグデータと紐づく圧力データによって示されるショット番号をユーザに対して通知する(ステップS49)。ユーザは、当該通知を受けると、通知を受けたショット番号によって示されるショットにより生成された成形品を自身の目で再度チェックし、チェックの結果(新たなタグデータ)を、情報処理装置30に備え付けられた入力インタフェースを介して入力する。なお、ここでは、良品範囲設定部304がショット番号の通知を行うとしたが、当該ショット番号の通知は、通知部306によって行われても良い。
【0086】
データ取得部301は、入力インタフェースからのタグデータの入力を受けると、入力されたタグデータのうち、良タグを含んだ全てのタグデータを良品範囲設定部304に転送する(ステップS50)。良品範囲設定部304は、データ取得部301によって転送された全てのタグデータによってそれぞれ示される各ショット番号と同一のショット番号を含む各圧力データの型内圧力の各値を、ステップS48の処理において設定した第1の良品範囲に加え、これを正式な第1の良品範囲として設定する。正式な第1の良品範囲を示す情報は、仮の第1の良品範囲を示す情報に上書きされる形で格納される(ステップS51)。
【0087】
ステップS44の判定の結果、上記した圧力データ群がないと判定された場合(ステップS44のNO)、上記したステップS49〜S51の処理が実行されることで、第1の良品範囲を設定する。
【0088】
上記したように、温度データ及び流速データについても同様な処理が実行され、第2及び第3の良品範囲が設定される。
【0089】
以上説明した第2の実施形態によれば、最初から良品範囲を細かく設定することができるので、良品範囲更新処理時に実行されるユーザへのショット番号の通知回数を減らすことが可能となる。つまり、初期設定以降にユーザにかかる手間を低減させることが可能となる。
<第3の実施形態>
次に、第3の実施形態について説明する。上記した第1及び第2の実施形態では、情報処理装置30からのショット番号の通知が来る度に、ユーザは自身の目で成形品をチェックし、当該成形品が良品であるか、不良品であるかを当該ユーザが情報処理装置30に教え込む場合について説明したが、本実施形態では、良品範囲設定部304が良/不良判別に関し、機械学習機能を有している場合について説明する。
【0090】
図7は、第3の実施形態に係る情報処理装置30の動作の一例を説明するためのフローチャートである。
【0091】
上記した図4に示すステップS1及びS2の処理が実行されると(ステップS61及びS62)、良品範囲設定部304は、記憶装置に格納された各種測定データのうちの圧力データと、圧力データに紐づけられたタグデータとを教師データとして、統計分類手法により、型内圧力に関する第1のモデルを生成する(ステップS63)。生成された第1のモデルを示す情報は、記憶装置に格納される。
【0092】
なお、ここでは、統計分類手法としては、決定木、SVM、ロジスティック回帰等が使用されるものとする。
【0093】
良品範囲設定部304は、温度データ及び流速データについても同様な処理を実行し、型内温度に関する第2のモデルと、型内流速に関する第3のモデルとを生成する(ステップS64及びS65)。生成された第2及び第3のモデルを示す情報は、第1のモデルを示す情報と同様に、記憶装置に格納される。
【0094】
以降のショットにおいては、良/不良判別部305は、各センサ装置20a〜20cによって測定された測定値と、記憶装置に格納された第1〜第3のモデルとに基づいて良/不良判別を行う。つまり、良/不良判別部305は、各センサ装置20a〜20cによって測定された測定値に対して、良タグまたは不良タグを出力する。
【0095】
以上説明した第3の実施形態によれば、最初に測定される規定ショット数分の測定値と、最初に入力される規定ショット数分のタグデータとを教師データとして、機械学習を実行可能な機械学習機能をさらに備えているので、ユーザは、良品範囲の設定に際し、最初に教師データとなるタグデータを入力すれば良いだけとなる。つまり、ユーザにかかる手間を大幅に低減させることが可能となる。
【0096】
なお、良品範囲設定部304は、第1〜第3のモデル生成後に、各センサ装置20a〜20cによって測定された測定値と、当該測定値を入力とした判別の結果とを記憶装置に格納しておき、この判定の結果を新たな教師データとして、第1〜第3のモデルの更新処理を適宜実行するとしても良い。
【0097】
以上説明した少なくとも1つの実施形態によれば、成形品が良品であるか、不良品であるかを判別可能な指標を容易に設定することが可能となる
上記した実施形態に記載した手法は、コンピュータに実行させることのできるプログラムとして、磁気ディスク(フロッピー(登録商標)ディスク、ハードディスクなど)、光ディスク(CD−ROM、DVDなど)光磁気ディスク(MO)、半導体メモリなどの記憶媒体に格納して頒布することもできる。
【0098】
また、この記憶媒体としては、プログラムを記憶でき、かつコンピュータが読み取り可能な記憶媒体であれば、その記憶形式は何れの形態であってもよい。
【0099】
また、記憶媒体からコンピュータにインストールされたプログラムの指示に基づきコンピュータ上で稼働しているOS(オペレーティングシステム)や、データベース管理ソフト、ネットワークソフト等のMW(ミドルウェア)等が本実施形態を実現するための各処理の一部を実行してもよい。
【0100】
更に、本発明における記憶媒体は、コンピュータと独立した媒体に限らず、LANやインターネット等により伝送されたプログラムをダウンロードして記憶または一時記憶した記憶媒体も含まれる。
【0101】
また、記憶媒体は1つに限らず、複数の媒体から本実施形態における処理が実行される場合も本発明における記憶媒体に含まれ、媒体構成は何れの構成であってもよい。
【0102】
なお、本発明におけるコンピュータは、記憶媒体に記憶されたプログラムに基づき、本実施形態における各処理を実行するものであって、パソコン等の1つからなる装置、複数の装置がネットワーク接続されたシステム等の何れの構成であってもよい。
【0103】
また、本発明におけるコンピュータとは、パソコンに限らず、情報処理機器に含まれる演算処理装置、マイコン等も含み、プログラムによって本発明の機能を実現することが可能な機器、装置を総称している。
【0104】
なお、本願発明は、上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組合せにより種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。更に、異なる実施形態に亘る構成要素を適宜組合せてもよい。
【符号の説明】
【0105】
10…射出成形機、20…センサ装置、20a…圧力センサ、20b…樹脂温度センサ、20c…流速センサ、30…情報処理装置、31…バス、32…不揮発性メモリ、33…CPU、34…メインメモリ、35…通信部、301…データ取得部、302…データソート部、303…並び順判定部、304…良品範囲設定部、305…良/不良判別部、306…通知部、307…良品範囲更新部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7