【解決手段】航空機用ガスタービンは、ロータと、動翼24と、ケーシングと、静翼26と、ガイド部材53とを備える。動翼24は、動翼本体41と、動翼本体41の先端41aに設けられた動翼シュラウド42と、動翼シュラウド42の外周面42aから突出するフィン43と、を有する。静翼26は、静翼シュラウド51と静翼本体52とを備える。静翼シュラウド51は、動翼24の下流側でケーシングに固定されて、少なくとも動翼シュラウド42及びフィン43とともにキャビティCtを形成する。ガイド部材53は、キャビティCt内に設けられて、径方向外側から内側に向かって延びて、径方向内側の内側端部53aが動翼シュラウド42の外周面42aに間隔をあけて対向している。
前記ガイド部材は、前記内側端部から径方向外側に向かうにつれて前記軸線の延びる方向において前記静翼に近づくように傾斜する傾斜部を備える請求項1又は2に記載の航空機用ガスタービン。
前記内側端部と前記動翼シュラウドの外周面との間の隙間は、前記フィンと前記ケーシングとの間の隙間よりも大きく形成されている請求項1から3の何れか一項に記載の航空機用ガスタービン。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の航空機用ガスタービンは、シール構造の隙間を通過した燃焼ガスの流れが、動翼と静翼との間に形成されるキャビティから径方向内側に向かって流れる場合が有る。このシール構造の隙間を通過した燃焼ガスの流れる向きは、動翼を通過した主流の流れる向きと大きく異なる。そのため、シール構造の隙間を通過した燃焼ガスが主流に衝突・混合されることによって、混合損失が増加する可能性が有る。
【0006】
この発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、シール構造の隙間を通過した燃焼ガスが動翼を通過した主流に衝突・混合される際の混合損失を低減して出力を向上できる航空機用ガスタービン及び航空機用ガスタービンの動翼を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために以下の構成を採用する。
この発明の第一態様によれば、航空機用ガスタービンは、軸線回りに回転するロータと、前記ロータから径方向外側に向かって延びる動翼本体、前記動翼本体の先端に設けられた動翼シュラウド、及び、前記動翼シュラウドの外周面から突出するフィン、を有する動翼と、前記ロータ及び前記動翼を外周側から囲うとともに前記フィンとの間に隙間を形成するケーシングと、前記動翼の下流側で前記ケーシングに固定されて、少なくとも前記動翼シュラウド及び前記フィンとともにキャビティを形成する静翼シュラウドと、前記静翼シュラウドから径方向内側に向かって延びる静翼本体と、を有する静翼と、前記キャビティ内に設けられて、径方向外側から内側に向かって延びて、径方向内側の内側端部が前記動翼シュラウドの外周面に間隔をあけて対向するガイド部材と、を備える。
【0008】
このように構成することで、ケーシングとフィンとの間に形成された隙間を通過した燃焼ガスは、動翼シュラウドと、フィンと、静翼シュラウドとによって形成されるキャビティに流入する。その際、燃焼ガスGは、軸線を中心とした径方向にそれぞれ離間して配置されているガイド部材の内側端部と動翼シュラウドの外周面との間を通過する。そのため、燃焼ガスGがキャビティから軸線方向に吹き出される。つまり、キャビティから吹き出される燃焼ガスの流れの向きと、主流の流れる向きとを揃えることができる。
したがって、キャビティから吹き出された燃焼ガスが主流に合流する際に、主流の流れを阻害することを抑制できる。
【0009】
さらに、ケーシングとフィンとの間の隙間を通過してキャビティに流入した燃焼ガスの流れを、ガイド部材によって径方向内側に導くことができる。そのため、ガイド部材の内側端部と動翼シュラウドの外周面との間に流入しようとする燃焼ガスに対して、この燃焼ガスの流れと交差する方向から燃焼ガスを衝突させることができる。
したがって、ガイド部材の内側端部と動翼シュラウドの外周面との間に流入しようとする燃焼ガスの流れを縮流させて、キャビティから主流に合流する燃焼ガスの流量を低減することができる。
【0010】
この発明の第二態様によれば、第一態様に係る航空機用ガスタービンにおいて、前記内側端部に対向する前記動翼シュラウドの外周面が、前記軸線と平行に形成されていてもよい。
このように構成することで、動翼シュラウドがガイド部材に対して軸線方向へ変位した場合であっても、ガイド部材と動翼シュラウドとの接触を抑制できる。
【0011】
この発明の第三態様によれば、第一又は第二態様に係るガイド部材は、前記内側端部から径方向外側に向かうにつれて前記軸線の延びる方向において前記静翼に近づくように傾斜する傾斜部を備えていてもよい。
このように構成することで、ガイド部材の内側端部と動翼シュラウドの外周面との間に流入しようとする燃焼ガスの流れをより一層縮流させることができる。
【0012】
この発明の第四態様によれば、第一から第三態様の何れか一つの態様に係る航空機用ガスタービンにおいて、前記内側端部と前記動翼シュラウドの外周面との間の隙間が、前記フィンと前記ケーシングとの間の隙間よりも大きく形成されていてもよい。
このように構成することで、ガイド部材の内側端部と動翼シュラウドの外周面との間に形成される燃焼ガスの流路面積を大きくすることができる。そのため、キャビティから吹き出す燃焼ガスの流速を低下させることができる。
したがって、キャビティから吹き出す燃焼ガスが、主流の流れに影響を及ぼすことをより一層抑制できる。
【0013】
この発明の第五態様によれば、第一から第四態様の何れか一つの態様に係る航空機用ガスタービンにおいて、前記ガイド部材の前記内側端部は、前記静翼シュラウドの内周面よりも径方向内側に配置されていてもよい。
このように構成することで、キャビティから流出する燃焼ガスが、静翼シュラウドに衝突することを抑制できる。そのため、キャビティから流出する燃焼ガスが、主流の流れに対して、当該主流の流れと交差する方向から合流することを抑制できる。
【0014】
この発明の第六態様によれば、航空機用ガスタービンの動翼は、軸線回りに回転するロータと、前記ロータを外周側から囲うケーシングと、前記ケーシングに固定される静翼シュラウドと、前記静翼シュラウドから径方向内側に向かって延びる静翼本体と、を有する静翼と、径方向外側から内側に向かって延びるガイド部材と、を備えた航空機用ガスタービンの動翼であって、前記ロータから径方向外側に向かって延びる動翼本体と、前記動翼本体の先端に設けられた動翼シュラウドと、前記動翼シュラウドの外周面から突出するフィンと、を備え、前記動翼シュラウド及び前記フィンは、前記動翼本体の下流側で少なくとも前記静翼シュラウドとともにキャビティを形成し、前記キャビティ内に設けられた前記ガイド部材の径方向内側の端部が対向する前記動翼シュラウドの外周面は、前記軸線と平行に形成されている。
このようにすることで、燃焼ガスはケーシングとフィンとの間に形成された隙間を通過し、動翼シュラウドと、フィンと、ケーシングと、静翼シュラウドとによって形成されるキャビティに流入する。キャビティに流入した燃焼ガスGは、軸線を中心とした径方向にそれぞれ離間して配置されているガイド部材の内側端部と、軸線と平行に形成された動翼シュラウドの外周面との間を通過して吹出される。そのため、燃焼ガスGはキャビティから軸線方向に吹き出される。つまり、キャビティから吹き出される燃焼ガスの流れの向きと、主流の流れる向きとを揃えることができる。したがって、キャビティから吹き出された燃焼ガスが主流に合流する際に、主流の流れを阻害することを抑制できる。さらに、動翼シュラウドがガイド部材に対して軸線方向へ変位した場合であっても、ガイド部材と動翼シュラウドとの接触を抑制できる。
【発明の効果】
【0015】
上記航空機用ガスタービン及び航空機用ガスタービンの動翼によれば、シール構造の隙間を通過した燃焼ガスが動翼を通過した主流に衝突・混合される際の混合損失を低減して出力を向上できる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、この発明の実施形態における航空機用ガスタービン及び航空機用ガスタービンの動翼を図面に基づき説明する。
図1は、この発明の実施形態の航空機用ガスタービンの概略構成を示す構成図である。
図1に示すように、この第一実施形態に係る航空機用のガスタービン100は、航空機の推力を得るためのものである。このガスタービン100は、主に、圧縮機1と、燃焼室2と、タービン3と、を備えている。
【0018】
圧縮機1は、吸気ダクト10から取り込まれた空気を圧縮することで高圧空気を生成する。この圧縮機1は、圧縮機ロータ11と、圧縮機ケーシング12と、を備えている。圧縮機ケーシング12は、圧縮機ロータ11を外周側から覆っており、軸線Amに沿って延びている。
【0019】
圧縮機ロータ11の外周面には、軸線Am方向に間隔をあけて配列された複数の圧縮機動翼段13が設けられている。これら圧縮機動翼段13は、複数の圧縮機動翼14をそれぞれ備えている。各圧縮機動翼段13の圧縮機動翼14は、圧縮機ロータ11の外周面上で軸線Amの周方向に間隔をあけて配列されている。
【0020】
圧縮機ケーシング12の内周面には、軸線Am方向に間隔をあけて配列された複数の圧縮機静翼段15が設けられている。これら圧縮機静翼段15は、軸線Am方向で上記圧縮機動翼段13と交互に配置されている。これら圧縮機静翼段15は、複数の圧縮機静翼16をそれぞれ備えている。各圧縮機静翼段15の圧縮機静翼16は、圧縮機ケーシング12の内周面上で軸線Amの周方向に間隔をあけて配列されている。
【0021】
燃焼室2は、圧縮機1で生成された高圧空気に燃料Fを混合して燃焼させることで、燃焼ガスGを生成する。燃焼室2は、圧縮機ケーシング12とタービン3のタービンケーシング(ケーシング)22との間に設けられている。この燃焼室2によって生成された燃焼ガスGは、タービン3に供給される。
【0022】
タービン3は、燃焼室2で生成された高温高圧の燃焼ガスGによって駆動する。より具体的には、タービン3は、高温高圧の燃焼ガスGを膨張させて、燃焼ガスGの熱エネルギーを、回転エネルギーに変換する。このタービン3は、タービンロータ21と、タービンケーシング22と、を備えている。
【0023】
タービンロータ21は、軸線Amに沿って延びている。このタービンロータ21の外周面には、軸線Am方向に間隔をあけて配列された複数のタービン動翼段23が設けられている。これらタービン動翼段23は、複数のタービン動翼24をそれぞれ備えている。各タービン動翼段23のタービン動翼24は、タービンロータ21の外周面上で軸線Amの周方向に間隔をあけて配列されている。
【0024】
タービンケーシング22は、タービンロータ21を外周側から覆っている。このタービンケーシング22の内周面には、軸線Am方向に間隔をあけて配列された複数のタービン静翼段25が設けられている。タービン静翼段25は、軸線Am方向で上記タービン動翼段23と交互に配置されている。これらタービン静翼段25は、複数のタービン静翼26をそれぞれ備えている。各タービン静翼段25のタービン静翼26は、タービンケーシング22の内周面上で軸線Amの周方向に間隔をあけて配列されている。
【0025】
圧縮機ロータ11とタービンロータ21とは、軸線Am方向に一体に接続されている。これら圧縮機ロータ11とタービンロータ21とによって、ガスタービンロータ91が構成されている。同様に、圧縮機ケーシング12とタービンケーシング22とは、軸線Amに沿って一体に接続されている。これら圧縮機ケーシング12とタービンケーシング22とによってガスタービンケーシング92が構成されている。
ガスタービンロータ91は、ガスタービンケーシング92の内部で軸線Am回りに一体に回転可能とされている。
【0026】
上述した構成の航空機用のガスタービン100を運転するに当たっては、まず外部の駆動源によって圧縮機ロータ11(ガスタービンロータ91)を回転駆動する。圧縮機ロータ11の回転に伴って外部の空気が順次圧縮され、高圧空気が生成される。この高圧空気は、圧縮機ケーシング12を通じて燃焼室2内に供給される。燃焼室2内では、この高圧空気に燃料が混合されたのち燃焼され、高温高圧の燃焼ガスが生成される。燃焼ガスは、タービンケーシング22を通じてタービン3内に供給される。
【0027】
タービン3内では、タービン動翼段23、及びタービン静翼段25に燃焼ガスが順次衝突することで、タービンロータ21(ガスタービンロータ91)に対して回転駆動力が与えられる。この回転エネルギーは、主に、圧縮機1の駆動に利用される。タービン3を駆動した燃焼ガスGは、排気ノズル4により流速が増加されて推力を生む噴流となり、噴射口27から外部に排出される。なお、この実施形態においては、航空機用ガスタービンとして1軸のターボジェットエンジンを一例にして説明した。しかし、1軸のターボジェットエンジンに限られず、航空機用ガスタービンであれば如何なる形態であっても良い。
【0028】
図2は、この発明の実施形態における動翼の端部付近を拡大した部分断面図である。
図2に示すように、タービン3のタービン動翼24は、動翼本体41と、動翼シュラウド42と、フィン43と、を有している。動翼本体41は、タービンロータ21から径方向外側に向かって延びている。動翼シュラウド42は、動翼本体41の先端41a、より具体的には、軸線Amを中心とした径方向Drの外側(以下、単に径方向外側Droと称する)の動翼本体41の先端41aに設けられている。動翼シュラウド42は、軸線Amを中心とした周方向Dc(
図1参照)に並んで配置されたタービン動翼24の全ての先端41aに形成されている。これら動翼シュラウド42は、周方向Dcで隣り合うタービン動翼24の動翼シュラウド42同士が隣接して配置されることで環状を成している。なお、動翼シュラウド42は、周方向Dcで一体に形成されていても良い。
【0029】
この
図2に示す動翼シュラウド42は、軸線Amに対して主流Mの下流側に向かうにつれて径方向Drの外側に配置されるように傾斜している場合を示している。しかし、この動翼シュラウド42の傾斜の角度は、一例であって、動翼シュラウド42は、軸線Amと平行に形成されていても良い。
【0030】
フィン43は、動翼シュラウド42の外周面42aから突出している。この実施形態で例示するフィン43は、軸線Amの延びる方向(以下、単に軸線方向Daと称する)に間隔をあけて2つ設けられている。なお、以下の説明では、二つのフィン43を、それぞれフィン43A、フィン43Bと称する。
【0031】
フィン43A、フィン43Bは、タービン動翼24と、このタービン動翼24の径方向Dr外側のタービンケーシング22との隙間を塞ぐように延びている。また、これらフィン43A、フィン43Bは、動翼シュラウド42と同様に、タービン動翼24毎に設けられ、周方向Dcで隣り合うタービン動翼24のフィン43A同士及びフィン43B同士が隣接して配置されることで、周方向Dcに連続する環状を成している。
【0032】
フィン43A、フィン43Bのそれぞれの先端43aは、タービンケーシング22の内周面(より具体的には、ダンパシール22cの内周面22ca,22cb)に対して僅かなクリアランスC1を介して配置されている。これらクリアランスC1は、例えば、熱変形や振動等によりタービンケーシング22の内周面に接触しない範囲で、できるだけ小さく形成されている。なお、この実施形態で例示するフィン43A、フィン43Bは、動翼シュラウド42の外周面42aに対して、実質的に垂直に延びているが、外周面42aに対するフィン43A、フィン43Bの傾斜角度は垂直に限られない。また、フィン43の数は、二つに限られない。例えば、フィン43の数は、一つや、三つ以上であってもよい。
【0033】
ここで、タービンケーシング22は、ケーシング本体(図示せず)と、翼環(図示せず)と、遮熱環(図示せず)と、分割環22bと、ダンパシール22cと、を備えている。ケーシング本体(図示せず)は、上述したタービンロータ21及びタービン動翼24を外周側から囲う筒状に形成され、その内周側で翼環(図示せず)を支持している。翼環(図示せず)は、軸線Amを中心とした環状に形成され、複数の分割環22b及びタービン静翼26の径方向外側Droに配置されている。遮熱環(図示せず)は、径方向Drで翼環(図示せず)と分割環22bとの間、及び翼環(図示せず)とタービン静翼26との間にそれぞれ配置され、翼環(図示せず)と分割環22b、及び翼環(図示せず)とタービン静翼26とを接続している。
【0034】
ダンパシール22cは、主流Mの一部がフィン43Aとタービンケーシング22との間、及びフィン43Bとタービンケーシング22との間にそれぞれの形成された隙間を通過することを抑制する。この実施形態におけるダンパシール22cは、フィン43A及びフィン43Bと共に非接触のシール構造を構成する。このダンパシール22cは、分割環22bの内周面22biに固定されている。ダンパシール22cとしては、例えば、径方向内側Driに開口するハニカム構造の部材を用いることができる。
【0035】
この実施形態で例示するダンパシール22cは、フィン43A、フィン43Bのそれぞれの先端43aに対向する二つの内周面22ca,22cbを有している。これら内周面22ca,22cbは、ダンパシール22cが配置される箇所においてタービンケーシング22の内周面を構成している。つまり、ダンパシール22cの内周面22caとフィン43Aとの隙間と、内周面22cbとフィン43との隙間は、同一のクリアランスC1とされている。
【0036】
また、この実施形態におけるダンパシール22cの内周面22ca,22cbは、それぞれ軸線方向Daと平行に形成され、径方向Drの位置がそれぞれ異なっている。言い換えれば、ダンパシール22cは、階段状に形成されている。なお、ダンパシール22cの形状は、この実施形態で例示した形状に限られない。また、タービンケーシング22においてダンパシール22cを省略し、フィン43A,43Bの先端43aを分割環22bの内周面22biと対向配置するようにしても良い。
【0037】
タービン静翼26は、静翼シュラウド51と、静翼本体52と、を少なくとも備えている。
静翼シュラウド51は、動翼シュラウド42及びフィン43BとともにキャビティCtを形成する。この静翼シュラウド51は、タービン動翼24よりも主流Mの流れる方向における下流側(以下、単に下流側と称する)に配置され、タービンケーシング22に固定されている。
【0038】
この実施形態における静翼シュラウド51は、主流Mの流れる方向における上流側(以下、単に上流側と称する)にフック部51aを備えている。静翼シュラウド51は、このフック部51aにより分割環22bの下流側の端部22baに固定されている。また、この静翼シュラウド51は、軸線Amを中心とした周方向Dcに連続する環状に形成されている。この静翼シュラウド51の径方向内側Driに主流Mの流路が形成される。
【0039】
静翼本体52は、静翼シュラウド51から径方向内側Driに向かって延びている。タービン静翼26は、この静翼シュラウド51を介してタービンケーシング22に固定されている。
【0040】
上述したタービン3は、キャビティCt内にガイド部材53を更に備えている。
ガイド部材53は、径方向外側Droから径方向内側Driに向かって延びている。このガイド部材53は、周方向Dcに連続する環状に形成されている。ここで、ガイド部材53は、動翼シュラウド42と同様に、一体成形して環状を成すようにしたり、複数のセグメント(言い換えれば、弧状の部材)を組み合わせて環状を成すようにしたりしても良い。
ガイド部材53の径方向内側Driの内側端部53aは、動翼シュラウド42の外周面42aに隙間を介して対向している。
【0041】
より具体的には、ガイド部材53の内側端部53aは、動翼シュラウド42の外周面42aのうち最も下流側に位置する下流側端部42atに対して径方向Drで対向するように配置されている。そして、この実施形態における内側端部53aは、下流側端部42atと平行な面を有している。
【0042】
これら内側端部53aと下流側端部42atとの間に形成された隙間のクリアランスC2は、上述したクリアランスC1よりも大きく形成され、且つ、径方向Drにおける静翼シュラウド51の内周面51bと動翼シュラウド42の外周面42aとの距離C3よりも小さく形成されている。言い換えれば、ガイド部材53の内側端部53aは、静翼シュラウド51の内周面51bよりも径方向内側Driに配置されている。なお、
図2においては、内側端部53aが、下流側端部42atと平行に形成される場合を例示した。しかし、内側端部53aは、下流側端部42atと平行な面を有さないようにすることもできる。
【0043】
動翼シュラウド42の下流側端部42atは、軸線Amと平行に延びている。ここで、この実施形態における動翼シュラウド42は、上述したように軸線Amに対して下流側ほど径方向外側Droに離間するように傾斜している。そのため、動翼シュラウド42の下流側端部42atが形成されている部分は、軸線方向Daで下流側に向かうほど径方向Drの厚さが漸次小さくなっている。なお、
図2に示す動翼シュラウド42において、下流側端部42atの形成されている部分が、軸線方向Daの下流側に向かって尖っている場合を例示したが、必ずしも尖っている必要はない。
【0044】
さらに、ガイド部材53は、傾斜部54を備えている。この傾斜部54は、上述した内側端部53aから径方向外側Droに向かうにつれて下流側、すなわち軸線方向Daにおいてタービン静翼26に近づくように傾斜している。この実施形態におけるガイド部材53は、その径方向外側Droの端部である外側端部53bが静翼シュラウド51の上流側端部51cに固定されている。そのため、傾斜部54の傾斜角度は、静翼シュラウド51の上流側端部51cと、動翼シュラウド42の下流側端部42atとの位置関係に応じた傾斜角度となっている。なお、
図2中、傾斜部54の傾斜角度が一定の角度である場合を例示しているが、傾斜部54の傾斜角度は、一定の角度でなくてもよい。また、ガイド部材53の外側端部53bの形状は、
図2の形状に限られない。この外側端部53b形状は、この外側端部53bが固定される箇所の形状に応じて適宜変更してもよい。
【0045】
この実施形態のガスタービン100は、上述した構成を備えている。次に、上述したガスタービン100の作用について
図2を参照しながら説明する。
まず、燃焼ガスGの主流Mの一部が、フィン43A,43BのクリアランスC1を通過してキャビティCtに流入する。この際、キャビティCtに流入した燃焼ガスG1は、ダンパシール22cの内周面22cbに沿うように流れる。その後、この燃焼ガスG1の流れは、ガイド部材53によって径方向内側Driに向かうように案内される。
【0046】
その一方で、ガイド部材53と下流側端部42atとの隙間には、キャビティCtから流出する燃焼ガスG2が軸線方向Daに流れている。キャビティCtから流出する燃焼ガスG2は、ガイド部材53によって径方向内側Driに向かうように案内された燃焼ガスG1によって縮流され、その流量が抑えられる。
【0047】
そして、縮流された燃焼ガスG2は、キャビティCtから流出する際、このクリアランスC1よりも大きいクリアランスC2の隙間を通過することで、圧力回復される。つまり、燃焼ガスGは、主流Mに合流する前に流速が抑制される。そして、燃焼ガスG2は、キャビティCtから軸線Amに沿って下流側に吹出されてから主流Mに合流する。
【0048】
したがって、上述した実施形態によれば、ダンパシール22cとフィン43Bとの間を通過した燃焼ガスG1は、動翼シュラウド42と、フィン43Bと、静翼シュラウド51とによって形成されるキャビティCtに流入する。そして、キャビティCtに流入した燃焼ガスG1は、径方向Drにそれぞれ離間して配置されたガイド部材53の内側端部53aと動翼シュラウド42の外周面42aとの間を燃焼ガスG2として通過する。そのため、燃焼ガスG2がキャビティCtから軸線方向Daに吹き出される。つまり、キャビティCtから吹き出される燃焼ガスG2の流れであるキャビティフローの向きと、主流Mの流れる向きとを揃えて、キャビティフローを主流Mに円滑に合流させることができる。その結果、キャビティCtから吹き出された燃焼ガスG2が主流Mに合流する際に、主流Mの流れを阻害することを抑制できる。
【0049】
さらに、ダンパシール22cとフィン43Bとの間を通過してキャビティCtに流入した燃焼ガスG1の流れを、ガイド部材53によって径方向内側Driに導くことができる。そのため、ガイド部材53の内側端部53aと動翼シュラウド42の外周面42aとの隙間に流入しようとする燃焼ガスG2に対して、この流れと交差する方向から燃焼ガスG1を衝突させることができる。その結果、ガイド部材53の内側端部53aと動翼シュラウド42の外周面42aとの隙間に流入しようとする燃焼ガスG2の流れを縮流させて、キャビティCtから吹き出す燃焼ガスG2であるキャビティフローの流量を低減することができる。
その結果、キャビティフローがタービン動翼24を通過した主流Mの流れに衝突・混合される際の混合損失を低減することができ、ガスタービン100の出力を向上させることができる。
【0050】
また、上記実施形態では、内側端部53aに対向する動翼シュラウド42の外周面42aのうち下流側端部42atが、軸線Amと平行に形成されている。これにより、動翼シュラウド42がガイド部材53に対して軸線方向Daへ変位した場合に、ガイド部材53と動翼シュラウド42との接触を抑制できる。
【0051】
さらに、上記実施形態では、ガイド部材53が傾斜部54を備えることで、ガイド部材53の内側端部53aと動翼シュラウド42の外周面42aとの間に流入しようとする燃焼ガスG2の流れをより一層縮流させることができる。
【0052】
また、クリアランスC1よりもクリアランスC2が大きいことで、内側端部53aと動翼シュラウド42の外周面42aとの間に形成される流路の断面積を大きくすることができる。そのため、内側端部53aと動翼シュラウド42の外周面42aとの間の隙間を流れる燃焼ガスG2の流速を低下させることができる。その結果、主流Mの流れに影響を及ぼすことをより一層抑制できる。
【0053】
さらに、ガイド部材53の内側端部53aは、静翼シュラウド51の内周面51bよりも径方向内側Driに配置されている。そのため、キャビティCtから吹き出すキャビティフローが、静翼シュラウド51に衝突することを抑制できる。そのため、キャビティフローが静翼シュラウド51に衝突して向きを変えて主流Mと交差する方向から主流Mに合流することを抑制できる。
【0054】
以下、上述した実施形態の変形例を
図3に基づき説明する。なお、この実施形態の変形例は、上述した実施形態とガイド部材の構成が異なるだけである。そのため、上述した実施形態と同一部分に同一符号を付し、重複する説明を省略する。
図3は、この発明の実施形態の各変形例における
図2に相当する部分断面図である。
【0055】
(第一変形例)
上述した実施形態においては、ガイド部材53が静翼シュラウド51に固定されている場合について説明した。しかし、ガイド部材53の固定位置は、静翼シュラウド51に限られない。例えば、
図3において実線で示すガイド部材153のように分割環22bの内周面22biに固定されていても良い。
【0056】
(第二変形例)
さらに、
図3に破線で示すように、ガイド部材253の固定位置は、ダンパシール22cの下流側の側面22dであっても良い。
【0057】
これら第一変形例及び第二変形例においても、上述した実施形態と同様に、キャビティCtから流出する燃焼ガスG2の縮流効果が得られ、さらにキャビティCtから流出する燃料ガスG2の流速低減を図ることができる。そのため、キャビティフローが主流Mの流れに衝突・混合される際の混合損失を低減することができる。したがって、ガスタービン100の出力を向上させることができる。
なお、第二変形例のガイド部材253の傾斜する向きは、上述した実施形態のガイド部材53や第一変形例のガイド部材153の傾斜する向きと逆になっている場合を例示した。このように傾斜した第二変形例では、上述した実施形態や第一変形例と比較して縮流効果は低下して、ガイド部材253と下流側端部42atとのクリアランスC2による燃焼ガスG2の漏れ流量低減効果が支配的となる。
【0058】
この発明は上述した実施形態や各変形例の構成に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で設計変更可能である。
例えば、上述した実施形態や各変形例では、動翼シュラウド42の外周面42aの下流側端部42atが、軸線Amと平行に形成される場合について説明したが、下流側端部42atは、軸線Amと平行に形成されるものに限られない。
【0059】
また、上述した実施形態や各変形例では、ガイド部材53,153,253が傾斜部54,154,254を備える場合について説明したが、傾斜部54,154,254を備えていなくても良い。つまり、ガイド部材53は、例えば、径方向Drに延びるように形成しても良い。
【0060】
さらに、上述した実施形態では、クリアランスC2がクリアランスC1よりも大きい場合について説明したが、これに限られない。例えば、クリアランスC2は、クリアランスC1と同等又は僅かに小さくするようにしてもよい。
また、上述した実施形態においては、航空機用ガスタービンとして1軸のターボジェットエンジンを一例に説明した。しかし、この発明は、多軸のターボファンエンジンやヘリコプタ用のターボシャフトエンジン等にも適用可能である。
さらに、上述した実施形態では、圧縮機1として軸流圧縮機を例示したが、圧縮機1は、軸流圧縮機に限られるものではない。