特開2019-120192(P2019-120192A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2019-120192(P2019-120192A)
(43)【公開日】2019年7月22日
(54)【発明の名称】配管の継手構造
(51)【国際特許分類】
   F01N 13/08 20100101AFI20190701BHJP
   F16L 23/026 20060101ALI20190701BHJP
   F16L 58/08 20060101ALI20190701BHJP
   F02M 26/14 20160101ALI20190701BHJP
   F02M 26/11 20160101ALI20190701BHJP
【FI】
   F01N13/08 E
   F16L23/026
   F16L58/08
   F02M26/14
   F02M26/11 301
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2018-612(P2018-612)
(22)【出願日】2018年1月5日
(71)【出願人】
【識別番号】391002498
【氏名又は名称】フタバ産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】石川 嘉信
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 聡
【テーマコード(参考)】
3G004
3G062
3H016
3H024
【Fターム(参考)】
3G004AA01
3G004BA07
3G004DA12
3G004FA04
3G004GA01
3G004GA06
3G062ED01
3G062ED10
3H016AA02
3H016AD05
3H024EA04
3H024ED09
3H024EE02
3H024EF17
3H024EF19
(57)【要約】
【課題】排気ガスによるフランジの腐食を抑制しつつ、継手構造のコストを低減できる配管の継手構造を提供する。
【解決手段】本開示の一態様は、配管を取り付けるための継手構造である。継手構造は、フランジと、カラーとを備える。フランジは、相手側フランジとガスケットを挟んで締結可能であると共に、開口と中央領域とを有する。開口は、配管が挿通可能である。中央領域は、開口から径方向外側に延びると共に、フランジの厚み方向へ凹む。カラーは、フランジを構成する金属よりも耐腐食性が高い金属で構成されると共に、筒状部とリング部とを有する。筒状部は、配管の外周面の全周を覆う形状を有すると共に、一端側において配管の外周面の全周に接合可能である。リング部は、筒状部の他端から連続し、少なくともガスケットの開口部よりも径方向外側へ延びると共に、中央領域においてフランジと接合される。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関から排出される排気ガスの流路を構成する配管を取り付けるための継手構造であって、
フランジと、
カラーと、
を備え、
前記フランジは、相手側フランジとガスケットを挟んで締結可能に構成されると共に、開口と中央領域とを有し、
前記開口は、前記配管が挿通可能であり、
前記中央領域は、前記開口から径方向外側に延びると共に、前記フランジの厚み方向へ凹み、
前記カラーは、前記フランジを構成する金属よりも耐腐食性が高い金属で構成されると共に、筒状部とリング部とを有し、
前記筒状部は、前記配管の外周面の全周を覆う形状を有すると共に、一端側において前記配管の外周面の全周に接合可能に構成され、
前記リング部は、前記筒状部の他端から連続し、少なくとも前記ガスケットの開口部よりも径方向外側へ延びるように構成されると共に、前記中央領域において前記フランジと接合される、配管の継手構造。
【請求項2】
請求項1に記載の配管の継手構造であって、
前記配管は、排気再循環流路を構成する、配管の継手構造。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の配管の継手構造であって、
前記カラーは、前記リング部から前記配管の径方向外側に突出する少なくとも1つの耳部をさらに有し、
前記少なくとも1つの耳部には、それぞれ貫通孔が設けられる、配管の継手構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、配管の継手構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の内燃機関から排出される排気ガス流路を構成する配管は、例えばステンレス鋼等の耐食性の高い金属で構成される。また、この配管は、フランジを備える継手構造によって他の配管と接続される(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−250338号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
継手構造において、特許文献1のようにフランジを鉄又は鋼で構成すると、配管の接続部分における隙間から漏れた排気ガスによって、フランジが腐食するおそれがある。しかしながら、配管の接続部分における隙間を無くすように加工を行うと、生産性が著しく低下する。
【0005】
一方で、フランジをステンレス鋼で構成すれば腐食を抑制することができるが、フランジには一定の厚みが求められるため、フランジにステンレス鋼を用いると継手構造の材料費が著しく増加せざるを得ない。
【0006】
本開示の一局面は、排気ガスによるフランジの腐食を抑制しつつ、継手構造のコストを低減できる配管の継手構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様は、内燃機関から排出される排気ガスの流路を構成する配管を取り付けるための継手構造である。継手構造は、フランジと、カラーと、を備える。フランジは、相手側フランジとガスケットを挟んで締結可能に構成されると共に、開口と中央領域とを有する。開口は、配管が挿通可能である。中央領域は、開口から径方向外側に延びると共に、フランジの厚み方向へ凹む。カラーは、フランジを構成する金属よりも耐腐食性が高い金属で構成されると共に、筒状部とリング部とを有する。筒状部は、配管の外周面の全周を覆う形状を有すると共に、一端側において配管の外周面の全周に接合可能に構成される。リング部は、筒状部の他端から連続し、少なくともガスケットの開口部よりも径方向外側へ延びるように構成されると共に、中央領域においてフランジと接合される。
【0008】
このような構成によれば、フランジを低コストの金属材料で形成しつつ、フランジの排気ガスが接触し得る部分を耐腐食性の高いカラーで覆うことで腐食を抑制できる。カラーは、フランジと異なり、厚みを小さくしやすい。そのため、フランジの腐食を抑制しつつ、継手構造のコストを低減できる。
【0009】
また、カラーがフランジに接合されることで、継手構造の相手部材への取り付け時においてフランジが遊動することが抑制できる。その結果、フランジの締結における作業性が向上する。また、フランジによって発生する面圧をカラーに均等に伝達できるので、シール性が向上する。
【0010】
本開示の一態様では、配管は、排気再循環流路を構成してもよい。このような構成によれば、湿度や温度の高い排気ガスが断続的に流れることに起因して温度変化が激しく、結露により腐食が発生しやすい排気再循環流路(EGR)において、フランジの腐食を効果的に抑制しつつ、継手構造のコストを低減できる。
【0011】
本開示の一態様では、カラーは、リング部から配管の径方向外側に突出する少なくとも1つの耳部をさらに有してもよい。少なくとも1つの耳部には、それぞれ貫通孔が設けられてもよい。このような構成によれば、カラーのフランジに対する位置決めを容易に行うことができるため、作業工数を低減できると共に、位置精度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、実施形態における配管の継手構造を用いた排気マニホールドの模式的な説明図である。
図2図2Aは、実施形態における配管の継手構造の模式的な正面図であり、図2Bは、図2Aの配管の継手構造の模式的な背面図である。
図3図3は、図2BのIII−III線での模式的な断面図である。
図4図4は、図3とは異なる実施形態における配管の継手構造の模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本開示が適用された実施形態について、図面を用いて説明する。
[1.第1実施形態]
[1−1.構成]
図1及び図2A,2Bに示す配管の継手構造(以下、単に「継手構造」ともいう。)1は、内燃機関から排出される排気ガスの流路を構成する配管同士の接続に用いられる。図1に示すように、継手構造1は、排気マニホールド10に設けられている。また、図2A,2Bに示すように、継手構造1は、配管2と、フランジ3と、カラー4と、を備える。
【0014】
<配管>
配管2は、内燃機関から排出される排気ガスの流路を構成している。配管2は、高温の排気ガスによる腐食に対する耐性を有する金属、例えばステンレス鋼で形成されている。
【0015】
本実施形態では、配管2は、自動車の内燃機関から排出される排気ガスの一部を内燃機関に吸気させるEGRを構成している。つまり、継手構造1は、内燃機関の吸気経路を構成する配管の継手に接続される。
【0016】
<フランジ>
フランジ3は、配管2の端部に配置され、配管2の径方向外側に突出する部材である。フランジ3は、相手側フランジとガスケットを挟んで締結可能に構成されている。
【0017】
フランジ3には、配管2の端部が挿通される開口3Aが形成されている。本実施形態では開口3Aの径は、配管2の外径よりも大きく、開口3Aと配管2との間に、後述するカラー4の筒状部4Bが存在している。
【0018】
フランジ3は、図3に示すように、継手構造1が接続される相手配管A1に設けられた相手フランジA2と締結される。フランジ3は、カラー4を構成する金属よりも耐腐食性及びコストの低い、鉄や鋼等の金属で構成されている。
【0019】
図3に示すように、フランジ3は、締結面(つまり、相手フランジA2との突合せ面)において、開口3Aの周囲の中央領域3Bが、中央領域3Bよりも配管2の径方向外側の端部領域3Cよりも配管2に向かって(つまり締結面と反対側の面に向かってフランジの厚み方向へ)凹んでいる。つまり、中央領域3Bにおけるフランジ3の厚みは、端部領域3Cにおけるフランジ3の厚みよりも小さい。
【0020】
本実施形態では、図2Bに示すように、端部領域3Cは、中央領域3B及び配管2の中心軸を挟むように配置されている。なお、フランジ3の端部領域3Cには、締結用の複数の貫通孔3Dが形成されている。
【0021】
また、本実施形態では、フランジ3は、後述するカラー4を介して配管2に固定されている一方で、配管2とは直接接合されていない。ただし、フランジ3は、配管2に溶接等によって直接接合されていてもよい。
【0022】
<カラー>
カラー4は、配管2とフランジ3との双方に接合された部材である。カラー4は、フランジ3を構成する金属よりも耐腐食性が高い金属で構成される。カラー4を構成する金属としては、例えばステンレス鋼が挙げられる。
【0023】
カラー4は、図2A,2B及び図3に示すように、リング部4Aと、筒状部4Bと、2つの耳部4Cとを有する。リング部4A、筒状部4B及び耳部4Cは、一枚の金属板の加工によって形成されている。
【0024】
(リング部)
リング部4Aは、筒状部4Bの配管2との接合端とは反対側の端から連続し、少なくともガスケット6の開口部よりも径方向外側へ延びるように構成されている。具体的には、リング部4Aは、フランジ3の締結面のうち、中央領域3Bに重ね合わされている。リング部4Aは、図2Bに示すように、フランジ3の厚み方向から視て、フランジ3の開口3Aを取り囲むように配置されている。
【0025】
リング部4Aは、フランジ3の中央領域3Bに、プロジェクション溶接されている。本実施形態では、リング部4Aは、4つの溶接部5においてプロジェクション溶接されている。
【0026】
4つの溶接部5は、継手構造1を締結する際にカラー4と相手フランジA2との間に配置されるガスケット6と重ならない位置に設けられている。また、4つの溶接部5のうち、2つの溶接部5と、残り2つの溶接部5とが互いに近接して配置されている。近接して配置された2つの溶接部5からなる組は、配管2の中心について対称な位置に配置されている。
【0027】
本実施形態では、4つの溶接部5は、後述する耳部4Cとリング部4Aとの接続部分の近傍に設けられている。つまり、リング部4Aは、耳部4Cの近傍でフランジ3に溶接されている。
【0028】
なお、溶接部5の数は4に限定されず、少なくとも1つの溶接部5が存在すればよい。ただし、強度の観点から、配管2の中心を挟んで配置された少なくとも2つの溶接部5が設けられることが好ましい。
【0029】
(筒状部)
筒状部4Bは、配管2の外周面の全周を覆う形状を有すると共に、一端側において配管2の外周面の全周に接合可能に構成されている。具体的には、筒状部4Bは、図3に示すように、配管2の端部に外側から軸方向に挿入され、その内周面が配管2の外周面に例えば溶接により接合されている。
【0030】
筒状部4Bは、リング部4Aと連続しており、リング部4Aの内縁から配管2の軸方向に延出している。リング部4A及び筒状部4Bは、開口を設けた金属板をバーリング加工することによって形成されている。
【0031】
本実施形態では、筒状部4Bと配管2とは、配管2の周方向に沿ったアーク溶接によって結合されている。ただし、筒状部4Bと配管2との溶接方法は、アーク溶接に限定されない。
【0032】
また、本実施形態では、筒状部4Bはフランジ3と離間して配置されている。つまり、フランジ3の開口3Aを構成する側面と、筒状部4Bの外周面との間には空隙が設けられている。
【0033】
(耳部)
2つの耳部4Cは、それぞれ、リング部4Aから配管2の径方向外側に突出している。また、2つの耳部4Cにおいて、フランジ3よりも配管2の径方向外側に突出した領域には、それぞれ貫通孔4Dが設けられている。
【0034】
カラー4のフランジ3へのプロジェクション溶接時において、2つの貫通孔4Dにそれぞれピンを挿入することで、カラー4とフランジ3との位置決めを容易かつ確実に行うことができる。
【0035】
[1−2.効果]
以上詳述した実施形態によれば、以下の効果が得られる。
(1a)フランジ3を低コストの金属材料で形成しつつ、フランジ3の排気ガスが接触し得る部分(つまり中央領域3B)を耐腐食性の高いカラー4で覆うことで腐食が抑制できる。カラー4は、フランジと異なり、厚みを小さくしやすい。そのため、フランジ3の腐食を抑制しつつ、継手構造1のコストを低減できる。
【0036】
(1b)カラー4がフランジ3に溶接されることで、継手構造1の相手部材への取り付け時においてフランジ3が遊動することが抑制できる。その結果、フランジ3の締結における作業性が向上する。また、フランジ3によって発生する面圧をカラー4に均等に伝達できるので、シール性が向上する。
【0037】
(1c)カラー4は、そのリング部4Aにおいて、入熱量がアーク溶接に比べて小さいプロジェクション溶接によってフランジ3に接合されるので、リング部4Aの締結面の歪を低減して平面度を高めることができる。また、プロジェクション溶接の採用によってカラー4の厚みを小さくできるため、カラー4の厚みと配管2の肉厚とを近づけることができる。その結果、カラー4と配管2との溶接部分における亀裂の発生が抑制され、カラー4と配管2との溶接強度を高められる。
【0038】
(1d)湿度や温度の高い排気ガスが断続的に流れることに起因して温度変化が激しく、結露により腐食が発生しやすいEGRにおいて、フランジ3の腐食を効果的に抑制しつつ、継手構造1のコストを低減できる。
【0039】
(1e)貫通孔4Dがそれぞれ設けられた2つの耳部4Cによって、カラー4のフランジ3に対する位置決めを容易に行うことができる。その結果、作業工数を低減できると共に、位置精度を高めることができる。
【0040】
具体的には、カラー4とフランジ3との溶接時に、複数のピンが立てられた台座を用いる。台座のピンにカラー4の貫通孔4Dを挿通し、フランジ3の貫通孔3Dにフランジ固定用のピンを通して、溶接を行う。これにより、カラー4の回転が防止され、フランジ3に対するカラー4の位置が精度よく決められる。
【0041】
[2.他の実施形態]
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は、上記実施形態に限定されることなく、種々の形態を採り得ることは言うまでもない。
【0042】
(2a)上記実施形態の配管の継手構造1において、プロジェクション溶接の代わりに、スポット溶接を用いてカラー4をフランジ3に接合してもよい。また、溶接以外の手段でカラー4をフランジ3に接合してもよい。
【0043】
(2b)上記実施形態の配管の継手構造1は、EGR以外の排気ガスの流路を構成する配管にも適用できる。つまり、継手構造1は、図1の排気マニホールドの任意の配管に適用できる。
【0044】
(2c)上記実施形態の配管の継手構造1において、カラー4は、1つ又は3つ以上の耳部4Cを有していてもよい。また、カラー4は、必ずしも耳部4Cを有していなくてもよい。
【0045】
(2d)上記実施形態の配管の継手構造1において、図4に示すように、ガスケットは、厚み方向両側に突出する凸部6Aを有してもよい。凸部6Aは、ガスケットの径方向中央領域に円環状に設けられている。また、図4では、リング部4Aは、凸部6Aよりも径方向外側まで延伸している。フランジ締結時にリング部4Aによって凸部6Aが押しつぶされることで、シール性が向上する。
【0046】
(2e)上記実施形態における1つの構成要素が有する機能を複数の構成要素として分散させたり、複数の構成要素が有する機能を1つの構成要素に統合したりしてもよい。また、上記実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上記実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加、置換等してもよい。なお、特許請求の範囲に記載の文言から特定される技術思想に含まれるあらゆる態様が本開示の実施形態である。
【符号の説明】
【0047】
1…継手構造、2…配管、3…フランジ、3A…開口、3B…中央領域、
3C…端部領域、3D…貫通孔、4…カラー、4A…リング部、4B…筒状部、
4C…耳部、4D…貫通孔、5…溶接部、6…ガスケット、10…排気マニホールド。
図1
図2
図3
図4