特開2019-123039(P2019-123039A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2019-123039(P2019-123039A)
(43)【公開日】2019年7月25日
(54)【発明の名称】穴あけ装置
(51)【国際特許分類】
   B26F 1/24 20060101AFI20190704BHJP
   G01N 35/02 20060101ALI20190704BHJP
   B26D 3/00 20060101ALI20190704BHJP
【FI】
   B26F1/24
   G01N35/02 B
   B26D3/00 601B
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2018-4921(P2018-4921)
(22)【出願日】2018年1月16日
(71)【出願人】
【識別番号】594162412
【氏名又は名称】株式会社平山製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100092978
【弁理士】
【氏名又は名称】真田 有
(72)【発明者】
【氏名】吉永 千佳士
【テーマコード(参考)】
2G058
3C060
【Fターム(参考)】
2G058CA01
2G058CA02
2G058CC02
3C060AA04
3C060AA17
3C060BA06
3C060BB19
3C060BC04
(57)【要約】
【課題】マイクロプレートの各ウェルの密閉状態を簡単に効率よく解放する。
【解決手段】複数のウェル4を持つマイクロプレート1に貼着されて複数のウェル4を密閉するシール材5に対しウェル4ごとに貫通孔を形成する穴あけ装置には、穴あけ部品10が設けられる。穴あけ部品10は、マイクロプレート1におけるシール材5側の平面に重ね合わされる平面部11と、平面部11から突設されるとともに先端が針状に形成された複数の突起部12と、を有する。突起部12は、穴あけ部品10がマイクロプレート1に重ね合わされたときに、少なくとも各ウェル4に一つ配置されるように設けられている。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のウェルを持つマイクロプレートに貼着されて前記複数のウェルを密閉するシール材に対し前記ウェルごとに貫通孔を形成する穴あけ装置であって、
前記マイクロプレートにおける前記シール材側の平面に重ね合わされる平面部と、前記平面部から突設されるとともに先端が針状に形成された複数の突起部と、を有する穴あけ部品を備え、
前記突起部は、前記穴あけ部品が前記マイクロプレートに重ね合わされたときに、少なくとも各々の前記ウェルに一つ配置されるように設けられている
ことを特徴とする、穴あけ装置。
【請求項2】
前記突起部は、前記平面部からの突出長さが一定ではない
ことを特徴とする、請求項1記載の穴あけ装置。
【請求項3】
前記穴あけ部品は、規則的に配置された前記複数のウェルを持つ二種以上の前記マイクロプレートに共用される
ことを特徴とする、請求項2記載の穴あけ装置。
【請求項4】
前記穴あけ部品は、最多ウェル数の前記マイクロプレートの前記最多ウェル数と同数の前記突起部を有し、
前記突起部は、前記最多ウェル数を2以上の整数で除した所定数の前記ウェルごとに前記貫通孔を形成するように、前記突出長さが段階的に設定されている
ことを特徴とする、請求項3記載の穴あけ装置。
【請求項5】
前記突起部は、前記突出長さが8段階に設定されており、最も長い前記突起部と二番目に長い前記突起部とにより96個の前記ウェルを持つ前記マイクロプレートの前記シール材に前記貫通孔を形成し、全ての前記突起部により384個の前記ウェルを持つ前記マイクロプレートの前記シール材に前記貫通孔を形成する
ことを特徴とする、請求項4記載の穴あけ装置。
【請求項6】
前記マイクロプレートを収容保持する空間を持ち、前記穴あけ部品とともに前記マイクロプレートを挟む台座部品を備えた
ことを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の穴あけ装置。
【請求項7】
前記突起部は、前記先端に向かって先細となる円錐形状に形成されている
ことを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載の穴あけ装置。
【請求項8】
前記穴あけ部品は、前記平面部の四隅において前記突起部の突出方向と同一方向に立設され、各内側面が前記マイクロプレートの四隅の外側面にそれぞれ接するように形成された位置決め用の壁部を有する
ことを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1項に記載の穴あけ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のウェルを持つマイクロプレートに貼着された密閉用のシール材に対し、ウェルごとに貫通孔を形成する穴あけ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
規則的に配置された複数のウェルを持つマイクロプレートは、マルチウェルプレートやマイクロウェルプレート等とも呼ばれ、医学,薬学,生化学等の分野において実験用や検査用器具として広く用いられている。マイクロプレートは、各ウェル内の試薬や反応液等が蒸発したり隣接するウェル間で混ざり合ったりしないよう、各ウェルの開口がシール材により密閉されるのが一般的である(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017−173025号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、使用済みのマイクロプレートを滅菌して廃棄する場合、各ウェルの密閉状態を解放する必要がある。しかしながら、ウェルを密閉しているシール材をマイクロプレートから剥がすことで密閉状態を解放したのでは、作業効率が悪い。言い換えると、滅菌作業の効率化を図るためには、簡単に効率よく各ウェルの密閉状態を解放できる装置の開発が望まれる。
【0005】
本件の穴あけ装置は、このような課題に鑑み案出されたもので、マイクロプレートの各ウェルの密閉状態を簡単に効率よく解放することを目的の一つとする。なお、この目的に限らず、後述する発明を実施するための形態に示す各構成により導かれる作用効果であって、従来の技術によっては得られない作用効果を奏することも本件の他の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)ここで開示する穴あけ装置は、複数のウェルを持つマイクロプレートに貼着されて前記複数のウェルを密閉するシール材に対し前記ウェルごとに貫通孔を形成する穴あけ装置であって、前記マイクロプレートにおける前記シール材側の平面に重ね合わされる平面部と、前記平面部から突設されるとともに先端が針状に形成された複数の突起部と、を有する穴あけ部品を備え、前記突起部は、前記穴あけ部品が前記マイクロプレートに重ね合わされたときに、少なくとも各々の前記ウェルに一つ配置されるように設けられている。
【0007】
(2)前記突起部は、前記平面部からの突出長さが一定ではないことが好ましい。
(3)前記穴あけ部品は、規則的に配置された前記複数のウェルを持つ二種以上の前記マイクロプレートに共用されることが好ましい。
(4)前記穴あけ部品は、最多ウェル数の前記マイクロプレートの前記最多ウェル数と同数の前記突起部を有し、前記突起部は、前記最多ウェル数を2以上の整数で除した所定数の前記ウェルごとに前記貫通孔を形成するように、前記突出長さが段階的に設定されていることが好ましい。
【0008】
(5)前記突起部は、前記突出長さが8段階に設定されており、最も長い前記突起部と二番目に長い前記突起部とにより96個の前記ウェルを持つ前記マイクロプレートの前記シール材に前記貫通孔を形成し、全ての前記突起部により384個の前記ウェルを持つ前記マイクロプレートの前記シール材に前記貫通孔を形成することが好ましい。
(6)前記穴あけ装置は、前記マイクロプレートを収容保持する空間を持ち、前記穴あけ部品とともに前記マイクロプレートを挟む台座部品を備えていることが好ましい。
【0009】
(7)前記突起部は、前記先端に向かって先細となる円錐形状に形成されていることが好ましい。
(8)前記穴あけ部品は、前記平面部の四隅において前記突起部の突出方向と同一方向に立設され、各内側面が前記マイクロプレートの四隅の外側面にそれぞれ接するように形成された位置決め用の壁部を有することが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
開示の穴あけ装置によれば、複数のウェルのそれぞれに対し少なくとも一つの突起部が配置される穴あけ部品をマイクロプレートに重ね合わせて押圧することで、一度に複数の貫通孔をあけることができるため、マイクロプレートの各ウェルの密閉状態を簡単に効率よく解放することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施形態に係る穴あけ装置の穴あけ部品を示す斜視図である。
図2】実施形態に係る穴あけ装置の台座部品を示す斜視図である。
図3】実施形態に係る穴あけ装置に用いられるマイクロプレートの一例を示す図であり、(a)は96穴マイクロプレートの斜視図、(b)は96穴マイクロプレートの平面図、(c)は384穴マイクロプレートの平面図であり、(d)は二種類のマイクロプレートのウェルの位置関係を説明する図である。
図4】(a)は384穴マイクロプレートの上面部に図1の穴あけ部品の平面部を重ね合わせたときのウェルと突起部との位置関係を説明するための模式図であり、(b)は図4(a)のE−E矢視断面図である。
図5】(a)は96穴マイクロプレートの上面部に図1の穴あけ部品の平面部を重ね合わせたときのウェルと突起部との位置関係を説明するための模式図であり、(b)は図5(a)のF−F矢視断面図である。
図6】実施形態に係る穴あけ装置によりマイクロプレートに貫通孔を形成するときの状態を示す平面図であり、ウェル及び突起部は一部のみを示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図面を参照して、実施形態としての穴あけ装置について説明する。以下に示す実施形態はあくまでも例示に過ぎず、以下の実施形態で明示しない種々の変形や技術の適用を排除する意図はない。本実施形態の各構成は、それらの趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。また、必要に応じて取捨選択することができ、あるいは適宜組み合わせることができる。
【0013】
[1.構成]
本実施形態に係る穴あけ装置は、図1に示す穴あけ部品10と、図2に示す台座部品20とから構成される。穴あけ装置は、図3(a)〜(c)に示すような、複数のウェル4を持つマイクロプレート1に貼着されて複数のウェル4を密閉するシール材5に対しウェル4ごとに貫通孔を形成するものである。すなわち、穴あけ装置によってシール材5における各ウェル4を被覆する部分に孔をあけることで、シール材5を剥がすことなく各ウェル4の密閉状態を解放する。
【0014】
図3(a)及び(b)は、96個(8行×12列)のウェル4Aが縦横に規則的に配置された96穴マイクロプレート1Aの斜視図及び平面図であり、図3(c)は384個(16行×24列)のウェル4Bが縦横に規則的に配置された384穴マイクロプレート1Bの平面図である。これらのマイクロプレート1A,1Bは、ウェル4A,4Bの個数とその容積及び形状とが互いに異なるものの、同様の構成を有することから、以下の説明でこれらを区別しない場合には、末尾のA,Bを省略して示す。
【0015】
図3(a)〜(c)に示すように、マイクロプレート1は、略矩形の平面状の上面部2と、上面部2の周縁部から下方に垂設された枠部3と、複数のウェル4とを有する。複数のウェル4は全て同一形状であり、上面部2に形成された円形の開口4cと、上面部2から下方に向かって突出した容器部4dとから構成される。各ウェル4は、上面部2の平面に貼着されたシール材5によって密閉される。本実施形態のシール材5は、透明なフィルムで構成され、ウェル4内の試薬や反応液等の漏れや蒸発等を防止する。なお、本実施形態のマイクロプレート1の枠部3は、四隅のうちの二つの角部が斜めに切り欠かれた形状をなしているが、枠部3の形状はこれに限らない。
【0016】
本実施形態の穴あけ装置は、規則的に配置された複数のウェル4を持つ二種類のマイクロプレート1A,1Bに共用される。これらのマイクロプレート1A,1Bの上面部2は略合同に形成される。また、384穴マイクロプレート1Bは、96穴マイクロプレート1Aのウェル4Aの四倍の個数のウェル4Bを有する。つまり、本実施形態では、384穴マイクロプレート1Bが「最多ウェル数のマイクロプレート」となる。なお、図3(d)は、二種類のマイクロプレート1A,1Bを重ねた場合のウェル4A,4Bの位置関係を示す模式図であり、図中実線はウェル4Aを示し、図中破線はウェル4Bを示す。図3(d)に示すように、ウェル4Aは、縦横二つずつ並んだ四つのウェル4Bのうちの一つと完全に重なるように配置される。
【0017】
穴あけ装置は、各ウェル4の開口4cを塞ぐシール材5に孔をあけ、ウェル4の密閉状態を解放する穴あけ部品10と、穴あけ作業時にマイクロプレート1の位置がずれないようマイクロプレート1を収容保持する台座部品20とを備える。なお、穴あけ装置は、少なくとも穴あけ部品10を備えていればよく、台座部品20は省略可能である。
【0018】
図1に示すように、穴あけ部品10は、マイクロプレート1におけるシール材5側の平面(すなわち、上面部2の平面)に重ね合わされる平面部11と、平面部11から突設されるとともに先端が針状に形成された複数の突起部12とを有する。なお、図1では、穴あけ部品10の構造がわかりやすくなるよう、突起部12が平面部11の上になる向きで示しているが、マイクロプレート1に重ね合わせるときには、突起部12の先端がシール材5側を向くように(すなわち、平面部11の下方に突起部12が位置するように)穴あけ部品10を裏返す。
【0019】
本実施形態の平面部11は薄板状であり、マイクロプレート1の上面部2と略合同に形成される。本実施形態の穴あけ部品10は、平面部11の四隅において突起部12の突出方向と同一方向に立設された壁部13を有する。四つの壁部13の各内側面は、図6に示すように、マイクロプレート1の四隅の外側面にそれぞれ接するように形成されている。これにより、各壁部13の内側面をマイクロプレート1の四隅の外側面に沿わせるだけで、マイクロプレート1に対する穴あけ部品10の位置が決まる。すなわち、壁部13はマイクロプレート1に対する穴あけ部品10の位置を決める機能を有する。以下、位置決め用の壁部13を「位置決め壁部13」と呼ぶ。
【0020】
本実施形態のマイクロプレート1は、枠部3の四隅のうち二つの角部が斜めに切り欠かれた形状に形成されているため、図1に示すように、位置決め壁部13が二つの形状に形成されている。一方の位置決め壁部13は、直角の角部を挟んで二方向に所定距離だけ延在する連続した二つの縦壁から構成される。他方の位置決め壁部13は、枠部3の斜めに切り欠かれた角部に対応するように、中央に配置された一つの縦壁とその両側に配置された中央の縦壁よりも短い二つの縦壁とから構成される。
【0021】
複数の突起部12は、いずれも先端に向かって先細となる円錐形状に形成されており、その先端は、上面部2に貼着されたシール材5を突き破れる程度の剛性を有するとともに鋭利な形状に形成される。突起部12は、穴あけ部品10がマイクロプレート1に重ね合わされたときに、少なくとも各ウェル4に一つ配置されるように設けられている。本実施形態の穴あけ部品10には、最多ウェル数の384穴マイクロプレート1Bのウェル数と同数の384個(16行×24列)の突起部12が縦横に規則的に配置されている。
【0022】
すなわち、図4(a)に示すように、384穴マイクロプレート1Bに穴あけ部品10を重ね合わせたときに、一つのウェル4Bに一つの突起部12が配置されるように突起部12の位置が設定される。なお、図4(a)は、384穴マイクロプレート1Bの上面部2に穴あけ部品10の平面部11を重ね合わせたときのウェル4Bと突起部12との位置関係を説明するための模式図であり、図中破線はウェル4Bを示し、図中実線は突起部12を示す。また、図4(b)は、図4(a)のE−E矢視断面図である。図4(a)及び(b)では、複数の突起部12のそれぞれに#11,#12,#13等の番号を付し、例えば「突起部#11」とも表記する。
【0023】
また、図5(a)及び(b)は、96穴マイクロプレート1Aの上面部2に穴あけ部品10の平面部11を重ね合わせたときのウェル4Aと突起部12との位置関係を説明するための模式図であり、図4(a)及び(b)のそれぞれに対応する。図5(a)に示すように、本実施形態の穴あけ部品10を96穴マイクロプレート1Aに重ね合わせると、一つのウェル4Aに少なくとも一つの突起部12が配置される。すなわち、本実施形態の穴あけ部品10であれば、ウェル数の異なる二種類のマイクロプレート1のシール部材5に対し、ウェル4ごとに貫通孔を形成することが可能である。
【0024】
本実施形態の突起部12は、図4(b)及び図5(b)に示すように、平面部11からの突出長さL(平面部11の表面から突起部12の先端までの垂直長さ)が一定ではない。具体的には、図5(a)及び図5(b)に示すように、ウェル数の少ない96穴マイクロプレート1Aのウェル4Aと突起部12の先端とが重なる位置の突起部12(例えば#11,#13)の突出長さLが、ウェル4Aと突起部12の先端とが重ならない位置の突起部12(例えば#12,#14)の突出長さLよりも長い。
【0025】
これにより、穴あけ部品10を96穴マイクロプレート1Aに重ねて押圧したときに、突出長さLの長い突起部#11,#13によって、各ウェル4Aを封止するシール材5に貫通孔が形成される。また、突出長さLの短い突起部#12,#14の先端が96穴マイクロプレート1Aの上面部2に押圧されることがないため、これらの先端の変形や摩耗等が防止される。一方で、突起部12は384個あるため、384穴マイクロプレート1Bに重ねて押圧することで全てのウェル4Bの密閉状態を解放できる。つまり、穴あけ部品10は、二種のマイクロプレート1A,1Bに共用されるよう突起部12の突出長さLが異なるように設定されている。
【0026】
さらに本実施形態の穴あけ部品10は、ウェル4Aを封止するシール材5に孔をあける突起部#11,#13の突出長さLが互いに異なるように形成されている。なお、断面図は省略しているが、例えば、突起部#11,#31の突出長さLが互いに同一に形成され、突起部#13,#33の突出長さLが互いに同一に形成される。すなわち、突起部12の突出長さLは、所定数ごと(例えば48個ごと)に異なる。これにより、突起部#11,#31と突起部#13,#33とがシール材5に孔をあけるタイミングがずれるため、四つの突起部#11,#13,#31,#33の突出長さLが全て同一である場合と比べて、シール材5に孔をあけるときに必要となる力(押圧力)が小さくなる。
【0027】
また、本実施形態の穴あけ部品10は、図4(b)に示すように、突起部#12,#14の突出長さLも互いに異なる。さらに本実施形態の穴あけ部品10は、図4(a)に示すように、8つの突起部#11,#12,#13,#14,#21,#22,#23,#24の突出長さLが全て異なるように形成されており、これらの4列×2行の突起部12(8段階)のセットが48セット設けられる。すなわち、穴あけ部品10は、同一の突出長さLに形成された48個ずつの突起部12(計384個)を有する。なお、1セットを構成する8つの突起部12の突出長さLは、突起部#11が最も長く、突起部#13が二番目に長ければよく、他の6つの突起部12の長さ関係は特に限らない。
【0028】
言い換えると、突起部12は、最多ウェル数(本実施形態では384個)を2以上の整数で除した所定数(本実施形態では48個)のウェル4ごとに貫通孔を形成するように、その突出長さLが段階的に設定されている。本実施形態では、突出長さLが8段階に設定されており、最も長い突起部12(#11と同一長さの突起部12)と二番目に長い突起部12(#13と同一長さの突起部)とにより96穴マイクロプレート1Aのシール材5に貫通孔を形成し、全ての突起部12により384穴マイクロプレート1Bのシール材5に貫通孔を形成する。このように、突起部12が8段階の突出長さLに設定されることで、384穴マイクロプレート1Bのシール材5に孔をあけるときに必要となる力(押圧力)も小さくなる。
【0029】
一方、図2に示すように、穴あけ装置の台座部品20は、マイクロプレート1が載置される底面部21と、底面部21の側縁に立設された側壁部22と、マイクロプレート1を収容保持する空間23とを有し、穴あけ部品10とともにマイクロプレート1を挟む部品である。なお、空間23は、マイクロプレート1の枠部3よりもやや大きく、底面部21と側壁部22とで囲まれて形成される。
【0030】
本実施形態の台座部品20は、底面部21の四隅における側壁部22が他部よりも高く形成されている。図6に示すように、側壁部22の四隅の部位(以下「角壁部22a」という)の内側を向く面と、穴あけ部品10の壁部13の外側の面とは対向するように形成され、台座部品20に収容されたマイクロプレート1に対する穴あけ部品10の位置決め及び押圧動作を補助する機能を持つ。台座部品20は、マイクロプレート1の種類ごとに設けられてもよいし、二種以上のマイクロプレート1の共用品として設けられてもよい。なお、台座部品20を共用品にする場合には、側壁部22の高さ寸法を、多種のマイクロプレート1のうち最も高さ寸法が大きいものに合わせればよい。
【0031】
[2.作用,効果]
ここで、上述した穴あけ装置により、マイクロプレート1のシール材5における各ウェル4を被覆する部分に貫通孔を形成する手順を説明する。まず、台座部品20の空間23に、上面部2が上になるようにマイクロプレート1をセットする。次いで、突起部12が平面部11よりも下に位置する向きで、穴あけ部品10をマイクロプレート1の上面部2に重ね合わせる。このとき、図6に示すように、穴あけ部品10の位置決め壁部13を、台座部品20の角壁部22aよりも内側に配置しながらマイクロプレート1の四隅に接触させることで、マイクロプレート1に対する穴あけ部品10の位置を決める。そして、穴あけ部品10をマイクロプレート1に向かって押圧する。これにより、突出長さLの長い突起部12から順にシール材5に接触して貫通孔を形成する。
【0032】
つまり、上述した穴あけ装置であれば、複数のウェル4のそれぞれに対し少なくとも一つの突起部12が配置される穴あけ部品10をマイクロプレート1に重ね合わせて押圧することで、一度に複数の貫通孔をあけることができる。したがって、上述した穴あけ装置によれば、マイクロプレート1の各ウェル4の密閉状態を簡単に効率よく解放することができる。このため、使用済みのマイクロプレート1を滅菌器で滅菌する場合に、滅菌作業の作業効率を高めることができる。
【0033】
上述した突起部12は、突出長さLが一定ではないことから、穴あけ部品10をマイクロプレート1に重ね合わせたときの、突起部12の先端がシール材5に接するタイミングをずらすことができる。このため、全ての突起部12で同時に孔をあける場合と比べて、小さな力でシール材5に孔をあけることができ、各ウェル4の密閉状態をより簡単に解放することができる。
【0034】
上述した穴あけ部品10は、二種のマイクロプレート1A,1Bに共用される。言い換えると、一つの穴あけ部品10で二種のマイクロプレート1A,1Bの穴あけ作業ができるため、作業効率をより高めることができる。また、穴あけ部品10を共用品とすることで、穴あけ部品10を製造するためのコストを抑制できる。
【0035】
上述した穴あけ部品10は、最多ウェル数のマイクロプレート1Bのウェル数と同数の突起部12を有し、これら突起部12は、所定数のウェル4ごとに貫通孔を形成するように突出長さLが段階的に設定されている。つまり、段階的に設定された突起部12によって、シール材5に対し、所定数のウェル4ごとに孔をあけることができため、小さな力かつ一定の力で各ウェル4の密閉状態を解放することができる。このため、例えば作業者が穴あけ装置を手で扱う場合には容易に孔をあけることができ、穴あけ装置を機械に組み込んで自動化する場合には、制御性を高めることができる。
【0036】
特に、上述した穴あけ部品10は、突出長さLが8段階に設定されており、最も長い突起部12と二番目に長い突起部12とで96穴マイクロプレート1Aの全てのウェル4Aに貫通孔を形成でき、全ての突起部12で384穴マイクロプレート1Bの全てのウェル4Bに貫通孔を形成できる。また、突出長さLの短い突起部12の先端は、96穴マイクロプレート1Aの上面部2に押圧されることがないため、これらの先端の変形や摩耗等を防止できる。
【0037】
上述した穴あけ装置は、マイクロプレート1が収容保持される台座部品20を備えているため、台座部品20にセットしたマイクロプレート1を穴あけ部品10とともに挟むだけで、シール材5に対して容易に貫通孔を形成でき、マイクロプレート1の各ウェル4の密閉状態を簡単に効率よく解放することができる。
【0038】
上述した突起部12は、先端に向かって先細となる円錐形状に形成されていることから、突起部12の剛性を高めることができる。これにより、穴あけ部品10を押圧したときに、突起部12がシール材5を突き破りやすくなり、シール材5に対してより簡単に貫通孔を形成できる。
【0039】
上述した穴あけ部品10には、平面部11の四隅に位置決め壁部13が設けられているため、マイクロプレート1に対する穴あけ部品10の位置を簡単に精度よく合わせることができる。これにより、突起部12によって各ウェル4の密閉状態を確実に解放することができる。また、作業者が穴あけ装置を手で扱う場合には、四隅の位置決め壁部13を把持して穴あけ部品10を扱うことができるため、操作性を向上させることもできる。さらに、平面部11の外周のうち、四隅を高くして他の部位と高さを変えることで、突起部12で密閉状態を解放したウェル4内に蒸気が進入しやすくなり、滅菌効果を高めることができる。
【0040】
[3.その他]
上述した穴あけ装置は一例であって、上述した構成に限られない。穴あけ部品10の突起部12は、少なくとも先端が針状に形成されていればよく、例えば角錐形状や棒状であってもよいし、プラスドライバーやマイナスドライバーの先端のような十字形状や一文字形状、あるいは、星形状であってもよい。このように、突起部の先端を針状にしつつ、平面部11から先端までの形状を十字形状や星形状等にすることで、シール材5を突き破った後にウェル4内に蒸気が進入しやすくなり、滅菌効果を高めることができる。また、一つのウェル4に対して二つ以上の突起部12が配置されるように穴あけ部品10が形成されていてもよい。
【0041】
上述した実施形態では、穴あけ部品10の四隅全てに位置決め壁部13が設けられているが、四隅のうちの一部に壁部が設けられていてもよいし、平面部11の全周に亘って壁部が設けられていてもよい。また、平面図11の全周に亘って壁部を設ける場合(すなわち、穴あけ部品の外形状を箱型にする場合)、例えばU字状の溝を周囲の壁部に複数配置することで、突起部12で密閉状態を解放したウェル4内に蒸気が進入しやすくなり、滅菌効果を高めることができる。さらに、上述した実施形態のように、穴あけ部品と台座部品とでマイクロプレートを挟む場合は、穴あけ部品の壁部の溝と対向するように、台座部品の側壁部にも同様に溝を設けることで、突起部12で密閉状態を解放したウェル4内に蒸気が進入しやすくなり、滅菌効果を高めることができる。なお、穴あけ部品10が位置決め壁部13を有していなくてもよい。位置決め壁部13を省略した場合には、マイクロプレート1に対する穴あけ部品10の位置を定める構造を設けることが好ましい。
【0042】
上述した実施形態では、突起部12の突出長さLが8段階に設定される場合を例示したが、段階数はこれに限らず、2段階や4段階といった少ない回数にしてもよいし、9段階以上に増やしてもよい。また、上述した96穴マイクロプレート1Aと384穴マイクロプレート1Bとに共用する穴あけ部品10において、96穴マイクロプレート1Aのシール材5に対して2段階の突起部12で孔をあけ、384穴マイクロプレート1Bのシール材5に対して4段階や6段階の突起部12で孔をあけてもよい。
【0043】
また、所定数(上記実施形態では48個)のウェル4ごとに密閉状態が解放されるように突起部12を設定する必要もなく、例えば、最初は20個、次は25個、その次は30個、というように、異なるウェル数ずつ密閉状態が解放されるように突起部12を設定してもよい。なお、突起部12の突出長さLが全て同一(すなわち一定)であってもよい。この場合であっても、マイクロプレート1の各ウェル4の密閉状態を簡単に効率よく解放することができる。
【0044】
上述した実施形態では、96穴マイクロプレート1A及び384穴マイクロプレート1Bを例に挙げ、これら二種のマイクロプレート1A,1Bに共用される穴あけ部品10を例示したが、穴あけ部品が1種類のマイクロプレートの専用品であってもよい。この場合の穴あけ部品は、そのマイクロプレートのウェル数と同数の突起部を有していればよく、これらの突起部の突出長さは一定であってもよいし一定でなくてもよい。反対に、穴あけ部品が三種以上のマイクロプレートに共用される形状に形成されていてもよい。この場合の穴あけ部品は、最多ウェル数のマイクロプレートのウェル数と同数の突起部を有していることが好ましく、突起部は、最多ウェル数を2以上の整数で除した所定数のウェルごとに貫通孔を形成するようにその突出長さが段階的に設定されていることがより好ましい。
【符号の説明】
【0045】
1 マイクロプレート
1A 96穴マイクロプレート(マイクロプレート)
1B 384穴マイクロプレート(マイクロプレート)
2 上面部
4,4A,4B ウェル
5 シール材
10 穴あけ部品
11 平面部
12 突起部
13 位置決め壁部(壁部)
20 台座部品
23 空間
L 突出長さ
図1
図2
図3
図4
図5
図6