【実施例】
【0023】
以下、実施例によって本発明を説明する。
[実施例1]
(A)材料
以下の材料を用いた。
a)白色セメント(太平洋セメント社製、ブレーン比表面積:3,840cm
2/g)
b)炭酸カルシウム粉末(炭酸カルシウムの含有率:99質量%以上、太平洋プレコン社が製造した試作の工業製品、1.8〜2.3μmの粒度を有する粒子を90質量%以上の割合で含むもの)
c)細骨材(川砂、0.075〜5.0mmの粒度を有するものを95質量%以上の割合で含むもの、単位容積質量:1.66g/リットル、実積率:65.7%)
d)粗骨材(砕石、5〜20mmの粒度を有するものを95質量%以上の割合で含むもの、単位容積質量:1.59g/リットル、実積率:60.2%)
e)セメント混和剤(ポリカルボン酸系の高性能減水剤、商品名:マスターグレニウム SP8HU、製造元:BASF社、液状物)
f)水
【0024】
(B)コンクリートの調製
コンクリート1m
3当たり、白色セメントの量が538kg、炭酸カルシウム粉末の量が220kg、細骨材の量が622kg、粗骨材の量が1049kg、水の量が107kgとなり、かつ、セメント混和剤の原液の量が、白色セメントと炭酸カルシウム粉末の合計量100質量部に対して2.7質量部(白色セメント100質量部に対して3.8質量部)となるように、これらの材料を混合し混練して、コンクリートを調製した。
なお、このコンクリートは、水/(白色セメント+炭酸カルシウム粉末)の質量比が0.141で、水/白色セメントの質量比が0.199で、炭酸カルシウム粉末/(白色セメント+炭酸カルシウム粉末)の体積割合が32.5%のものであった。
このコンクリートの単位粗骨材かさ容積は、0.66m
3/m
3であった。また、このコンクリートを構成する全材料から粗骨材を除くモルタル部分における単位細骨材かさ容積は、0.62m
3/m
3であった。
【0025】
(C)コンクリートのスランプフロー値の測定
調製したコンクリートについて、「JIS A 1150:2014(コンクリートのスランプフロー試験方法)」に準じて、スランプフロー値(練上がり直後のコンクリートを対象にした値)を測定した。
その結果、スランプフロー値は、608mmであった。
なお、上述の「(B)コンクリートの調製」において、粗骨材の量(1049kg)を小さくして、単位粗骨材かさ容積(0.66m
3/m
3)を小さくした場合、スランプフロー値は、608mmよりも大きくなる。
【0026】
(D)コンクリートの圧縮強度の測定
調製したコンクリートについて、「JIS A 1108:2006(コンクリートの圧縮強度試験方法)」に準じて、材齢1日、7日及び56日の各圧縮強度を測定した。
その結果、材齢1日、7日及び56日の圧縮強度は、各々、58N/mm
2、95N/mm
2、及び、111N/mm
2であった。
【0027】
(E)コンクリートの透気係数の測定
調製したコンクリートの耐久性を評価するために、コンクリート表層部の透気係数を測定した。
具体的には、ダブルチャンバー(トレント)式による透気性試験を行い、コンクリート(材齢:7日)の表層部分の透気係数を測定した。
その結果、透気係数は、気中養生と水中養生のいずれにおいても、測定限界値以下(測定表示最小値目盛り:0.001×10
−16m
2)であった。
この結果は、調製したコンクリートが、優れた耐久性(鉄筋コンクリートにおける鉄筋の腐食等が生じにくいこと)を有することを示している。
【0028】
(F)コンクリートの凍結融解試験
調製したコンクリートの耐久性を評価するために、コンクリートの凍結融解試験を行った。
具体的には、人工海水中で、コンクリート(材齢:7日、寸法:10cm×10cm×40cm)について、凍結融解試験(凍結融解繰返しサイクル:600回)を行い、凍結融解繰返しサイクルが0回の場合(凍結融解を行わない場合)と、凍結融解繰返しサイクルが600回の場合について、相対動弾性係数(凍結融解繰返しサイクルが0回の場合の相対動弾性係数を基準(100%)としたときの百分率)及び質量減少率の各々の値を測定した。
その結果、凍結融解繰返しサイクルが増加しても、相対動弾性係数及び質量は増加する傾向を示し、凍結融解繰返しサイクルを600回与えた場合でも、劣化は認められなかった。これらの結果は、調製したコンクリートが、優れた耐久性(凍結融解抵抗性に優れていること)を有することを示している。
【0029】
[実施例2]
(A)材料
以下の材料を用いた。
a)普通ポルトランドセメント(太平洋セメント社製、ブレーン比表面積:3,340cm
2/g)
b)炭酸カルシウム粉末(実施例1と同じもの)
c)細骨材(川砂、0.075〜5.0mmの粒度を有するものを95質量%以上の割合で含むもの、単位容積質量:1.55g/リットル、実積率:59.8%)
d)粗骨材(砕石、5〜15mmの粒度を有するものを90質量%以上の割合で含むもの、単位容積質量:1.58g/リットル、実積率:59.8%)
e)セメント混和剤(実施例1と同じもの)
f)水(実施例1と同じもの)
【0030】
(B)コンクリートの調製
炭酸カルシウム粉末/(普通ポルトランドセメント+炭酸カルシウム粉末)の体積割合は、33.5%に定めた。コンクリートを構成する全材料から粗骨材を除くモルタル部分における単位細骨材かさ容積は、0.61m
3/m
3に定めた。水/普通ポルトランドセメントの質量比は、0.192に定めた。セメント混和剤の原液の量は、普通ポルトランドセメントと炭酸カルシウム粉末の合計量100質量部に対して2.5質量部となる量に定めた。
以上の条件下で、単位粗骨材かさ容積の値を、0.63m
3/m
3、0.64m
3/m
3、0.65m
3/m
3、0.66m
3/m
3、0.67m
3/m
3、0.68m
3/m
3と変えて、これら各値を有するコンクリート(6種類)を調製した。
【0031】
(C)コンクリートのスランプフロー値の測定
調製したコンクリート(6種類)について、実施例1と同じ方法で、スランプフロー値を測定した。
その結果、単位粗骨材かさ容積が0.63m
3/m
3、0.64m
3/m
3、0.65m
3/m
3、0.66m
3/m
3、0.67m
3/m
3、0.68m
3/m
3であるコンクリートのスランプフロー値は、各々、650mm、675mm、673mm、660mm、645mm、585mmであった。
この結果から、単位粗骨材かさ容積が0.67m
3/m
3を超えると、ワーカビリティが急激に低下することがわかる。ただし、単位粗骨材かさ容積が0.68m
3/m
3であっても、スランプフロー値は、585mmであり、本発明で規定する「550mm以上」を満たしている。
【0032】
(D)コンクリートの圧縮強度の測定
調製したコンクリート(6種類)について、実施例1と同じ方法で、材齢1日及び2日の各圧縮強度を測定した。
その結果、調製したコンクリート(6種類)間で大きな差は見られず、調製したコンクリート(6種類)の平均値として、材齢1日及び2日の各圧縮強度は、各々、60N/mm
2、及び、73N/mm
2であった。
【0033】
(E)コンクリートの透気係数の測定
調製したコンクリート(6種類)について、実施例1と同じ方法で、コンクリート表層部の透気係数を測定した。
その結果、コンクリート(6種類)の透気係数は、気中養生と水中養生のいずれにおいても、測定限界値以下(測定表示最小値目盛り:0.001×10
−16m
2)であった。
【0034】
(F)コンクリートの凍結融解試験
調製したコンクリート(6種類)について、実施例1と同じ方法で、コンクリートの凍結融解試験を行った。
その結果、調製したコンクリート(6種類)について、実施例1と同じ傾向が見られた。このことは、調製したコンクリートが、優れた耐久性(凍結融解抵抗性に優れていること)を有することを示している。
【0035】
[実施例3]
白色セメントをエコセメントに変更し、炭酸カルシウム粉末/(エコセメント+炭酸カルシウム粉末)の体積割合を31%に定め、コンクリートを構成する全材料から粗骨材を除くモルタル部分における単位細骨材かさ容積を0.61m
3/m
3に定め、水/エコセメントの質量比を0.203に定め、単位粗骨材かさ容積を0.65m
3/m
3または0.66m
3/m
3に定めた以外は実施例1と同様にして、コンクリート(2種類)を調製した。
調製したコンクリート(2種類)について、実施例1と同じ方法(ただし、練上がり直後の値に加えて、40分後及び60分後の各値も測定)で、スランプフロー値、及び、材齢1日の圧縮強度を測定した。
【0036】
その結果、単位粗骨材かさ容積が0.65m
3/m
3である場合、スランプフロー値は、練上がり直後で685mm、40分後で670mm、60分後で580mmであった。
また、単位粗骨材かさ容積が0.66m
3/m
3である場合、スランプフロー値は、練上がり直後で650mm、40分後で648mm、60分後で590mmであった。
これらの結果から、単位粗骨材かさ容積が0.65〜0.66m
3/m
3であっても、練上がり時から60分後のスランプフロー値として、580〜590mmという大きな値を得ていることがわかる。
また、材齢1日の圧縮強度は、単位粗骨材かさ容積が0.65m
3/m
3、0.66m
3/m
3の各場合について、各々、13.2N/mm
2、9.7N/mm
2であった。
【0037】
[実施例4]
単位粗骨材かさ容積を0.65m
3/m
3に定め、水/普通ポルトランドセメントの質量比を0.195、0.205または0.215に定めた以外は実施例2と同様にして、コンクリート(3種類)を調製した。
調製したコンクリート(3種類)について、実施例2と同じ方法(ただし、練上がり直後の値に加えて、30分後及び60分後の各値も測定)で、スランプフロー値、及び、材齢1日の圧縮強度を測定した。
水/普通ポルトランドセメントの質量比が0.195、0.205、0.215である場合のスランプフロー値は、練上がり直後で、各々、680mm、735mm、800mmであり、30分後で、各々、605mm、730mm、740mmであり、60分後で、各々、485mm、630mm、620mmであった。
【0038】
これらの結果から、単位粗骨材かさ容積が0.65m
3/m
3であり、かつ、水/普通ポルトランドセメントの質量比が0.195〜0.215であっても、練上がり時から30分後のスランプフロー値として、605〜740mmという大きな値を得ていることがわかる。特に、水/普通ポルトランドセメントの質量比が0.205〜0.215の場合には、練上がり時から60分後のスランプフロー値として、620〜630mmという大きな値を得ていることがわかる。
また、材齢1日の圧縮強度は、調製した3種類のコンクリートのいずれにおいても、16〜35N/mm
2の範囲内であった。
【0039】
[実施例5]
単位粗骨材かさ容積を0.65m
3/m
3に定め、水/普通ポルトランドセメントの質量比を0.215に定め、コンクリートを構成する全材料から粗骨材を除くモルタル部分における単位細骨材かさ容積を0.59m
3/m
3に定めた以外は実施例2と同様にして、コンクリート(1種類)を調製した。
調製したコンクリートについて、実施例2と同じ方法で、スランプフロー値を測定した。その結果、スランプフロー値は、820mmであった。
このコンクリートを用いて、30mm×600mm×600mmの鉄筋コンクリート平板を作製したところ、材料分離もなく、材齢1日の圧縮強度が17N/mm
2である鉄筋コンクリート平板を脱型して得ることができた。
なお、実施例1〜5におけるコンクリートの調製時に、材料分離は見られなかった。