【課題】パターン部材の離反に伴ってシート基材の一方面のうち押圧樹脂が存在していた部分のみの繊維を立設させる等して、立設する繊維で「緻密な図柄」などを実現する立毛シートの製造方法の提供。
【解決手段】シート基材2から立設する繊維3を有した立毛シートの製造方法であって、繊維3を一方面に有したシート基材2の一方面に、熱可塑性の押圧樹脂4が一方面の少なくとも一部分に存在するパターン部材5の一方面を押圧する押圧工程と、押圧工程で押圧したパターン部材5をシート基材2から離反させる際に、このパターン部材5の離反に伴って、シート基材2の一方面のうち押圧樹脂4が存在していた部分のみの繊維3を立設させる立設工程を有する立毛シートの製造方法。
前記押圧工程(P1)の前に、前記シート基材(2)の少なくとも一方面に熱可塑性の付着樹脂(6)を付着させる付着工程(P0)も有していることを特徴とする請求項1に記載の立毛シートの製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0017】
<立毛シートの製造方法の全体構成>
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
図1、2には、本発明に係る立毛シートの製造方法が示されており、この立毛シートの製造方法は、後述するシート基材2に、押圧樹脂4が少なくとも一部分に存在するパターン部材5を押圧する押圧工程P1と、パターン部材5の離反に伴って押圧樹脂4が押圧されていた部分のみの繊維3を立設させる立設工程P2を有している(
図1(a)の第1実施形態参照)。
【0018】
又、立毛シートの製造方法は、押圧工程P1の前に、シート基材2に付着樹脂6を付着させる付着工程P0を有していても良い(
図1(b)の第2実施形態参照)。
このような方法にて製造される立毛シート1について、まず述べる
【0019】
<立毛シート1>
図3〜9に示したように、立毛シート1は、立設する繊維3を有したシート状物であって、この繊維3は、シート基材2(例えば、シート基材2の表面2aなど)から立設しているとも言える。
又、立毛シート1は、立設領域Rに、平面視で非立設領域R’に挟まれた挟立設部7が設けられているとも言える。
【0020】
尚、立毛シート1の「表面1a」とは、自動車等のオーナメント(ドアトリムなど)やアームレスト、インパネ(instrument panel)等の内装材、シート(椅子)を覆うシートカバーなどに対して立毛シート1を使用する時に露出する側の面であるとも言える。
又、立毛シート1の「表面1a」とは、繊維3が立設している面であるとも言え、これら立設した繊維3が図柄を形成していれば、図柄のある面が表面であるとも言える。
【0021】
逆に、立毛シート1の「裏面1b」とは、オーナメントやアームレスト、インパネなどに対して立毛シート1を使用する時に露出しない側の面であるとも言える。
又、立毛シート1の「裏面1b」とは、繊維3が立設していない面や、繊維3自体を有していない面であるとも言える。
尚、立毛シート1の表裏両面で繊維3が立設している場合(更に、表裏両面で立設した繊維3が図柄を形成している場合)には、その両面が表面1aであるとも言え、この場合は、立毛シート1は、自動車等の内装材やシートカバーなどとして用いずに、両面図柄付きの眼鏡拭きなどのシート状物として用いることも出来る。
【0022】
立毛シート1の厚さ1hは、何れの値でも良いが、例えば、0.06mm以上11.00mm以下、好ましくは0.15mm以上5.50mm以下、更に好ましくは0.60mm以上3.30mm以下であっても良い。
立毛シート1の目付も、特に限定はないが、例えば、100g/m
2 以上900g/m
2 以下、好ましくは200g/m
2 以上800g/m
2 以下、更に好ましくは300g/m
2 以上700g/m
2 以下であっても良い。
【0023】
立毛シート1は、所望により、酸化チタン、炭酸カルシウム等の体質顔料やフィラー(充填材)を任意に添加したり、消臭剤、抗菌剤、防カビ剤、難燃剤、撥水剤、防汚剤、着色剤、香料、発泡剤等を添加した素材を用いても良い。
このような立毛シート1を構成するシート基材2について、以下に述べる。
【0024】
<シート基材2(繊維3)>
図3〜9に示したように、シート基材2は、上述した立毛シート1の基材となる部材であり、シート基材2の少なくとも表面2a側には、立設する(立設可能な)繊維3を有している(設けられている)。ここで、「立設可能な繊維3」とは、実際に立設した繊維3だけでなく、後述する起毛加工などをすれば、立設することが出来る繊維3も含む。
尚、シート基材2の「表面2a」とは、自動車等のオーナメント(ドアトリムなど)やアームレスト、インパネ(instrument panel)等の内装材、シート(椅子)を覆うシートカバーなどに、立毛シート1として使用する時に露出する側の面であり、又、シート基材2の「表面2a」とは、立設可能な繊維3を有している面であるとも言える。
【0025】
逆に、シート基材2の「裏面2b」とは、オーナメントやアームレスト、インパネなどに、立毛シート1として使用する時に露出しない側の面であり、又、シート基材2の「裏面2b」とは、立設可能な繊維3を有していない面であるとも言える。
【0026】
尚、シート基材2の表裏両面で立設可能な繊維3を有している場合(後述する被覆樹脂が塗布されず、両面が起毛されている場合など)には、その両面が表面2aであるとも言える。
ここで、シート基材2の「一方面」とは、上述したように、シート基材2が立設可能な繊維3を有した表面2aと立設可能な繊維3を有しない裏面2bを持つ場合には、表面2aのみを意味し、シート基材2の表裏両面で立設可能な繊維3を有している場合には、シート基材2の表裏両面のうち、何れか一方の面を意味する。
【0027】
シート基材2の厚さ2hも、何れの値でも良いが、例えば、0.05mm以上10.00mm以下、好ましくは0.10mm以上5.00mm以下、更に好ましくは0.50mm以上3.00mm以下であっても良い。
シート基材2の構成・素材についても、立設可能な繊維3を有していれば、特に限定はないが、例えば、経編地の両面(ニードルループ面及びシンカーループ面)を、起毛針を有した針布(ロール状であれば、起毛ロール)による針布起毛加工や、湿潤状態・乾燥状態でのエメリー部材(サンドペーパーや、エメリーロールなど)によるエメリー起毛加工にて起毛し、当該経編地のニードルループ面の起毛された繊維3でパイル層を形成する(パイル層以外の部分は基材層となる)と共に、当該経編地における基材層内にある繊維3などの表面に樹脂(基材樹脂)を付着させた後に、当該経編地のシンカーループ面を被覆樹脂で覆って被覆層を形成したものを、シート基材2の素材としても良い。
【0028】
この場合、シート基材2は、基材層の一方面(ニードルループ面)に起毛されて立設した繊維3(パイル層)を有し、基材層の他方面(シンカーループ面)に被覆層を有した(スエード調の)合皮シート材であるとも言える。
この合皮シート材については、まず当該合皮シート材(シート基材2)の元となる(シート基材2を構成する)経編地について述べてから、その後、基材樹脂や被覆樹脂について言及する。
【0029】
シート基材2の元となる編組織は、例えば、トリコット編地(デンビー編)であっても良く、この場合、経編地の一方面側にニードルループ面を有し、他方面側にシンカーループ面を有している。
シート基材2の元となる経編地は、編成され得るのであれば、何れの経編機を用いても良く、経編機は、複数の筬(例えば、2枚〜6枚や、7枚以上など)を有しているが、編成される経編地のニードルループ面の最も近くに位置する筬を第1筬とし、以下、この第1筬よりシンカーループ面側に位置する第1筬以外の筬を、ニードルループ面側に近い順に第2筬、第3筬、第4筬、第5筬・・・とする。
【0030】
つまり、シート基材2の元となる経編地は、少なくとも2枚の筬で編成されるとも言える。
尚、この経編地は、経編機における第1筬、第2筬、第3筬、第4筬、第5筬・・・のうち、第1筬をとばして第2、3、4筬の3枚の筬で編成されたり、第2筬をとばして第1、3、4、5筬の4枚の筬で編成されるなど、何れかの筬をとばして編成されても良い。
以下、シート基材2の元となる経編地は、トリコット編機における3枚の筬(第1筬(バック筬とも言う)、第2筬(ミドル筬とも言う)、第3筬(フロント筬とも言う))で編成されたものとして、主に述べる。
【0031】
<繊維3>
シート基材2の元となる経編地は、第1筬に通す経糸を第1編糸(バック編糸とも言う)、第2筬に通す経糸を第2編糸(ミドル編糸とも言う)、フロント筬に通す経糸を第3編糸(フロント編糸とも言う)として、各編糸は、ニードルループとシンカーループを有している。
これら各編糸のうち、合皮シート材(シート基材2)のパイル層を構成する第3編糸は、少なくともシート基材2における立設可能な繊維3であり、又、第2編糸もパイル層を構成するのであれば、シート基材2における立設可能な繊維3であると言える。
【0032】
シート基材2の元となる経編地を編成する各編糸は、それぞれの筬によって1針振り又は多針(2針以上)振りのシンカーループを形成して編み込まれている。
この経編地の具体的な編組織も、特に限定はないが、上述した各編糸(各筬)の様々な振りに従って、例えば、第1編糸を編組織パターン1−0/1−2(1針振り)で編成し、第2編糸を編組織パターン1−0/1−2(1針振り)で編成し、第3編糸を編組織パターン1−0/2−3(3針振り)で編成しても良い。
その他、このような経編地の編組織の例としては、第1編糸を編組織パターン1−0/1−2(1針振り)で編成し、第2編糸を編組織パターン1−0/3−4(3針振り)で編成し、第3編糸を編組織パターン1−0/3−4(3針振り)で編成したものであったり、各編糸を2針振りや4針振り以上を交えたものなど、何れの編組織であっても良い。
【0033】
尚、シート基材2の元となる経編地のウェール方向における糸の密度(ウェール密度)や、コース方向における糸の密度(コース密度)も、何れの値でも良いが、例えば、ウェール密度であれば、10ウェール/インチ(=ウェール/25.4mm)以上80ウェール/インチ以下、好ましくは20ウェール/インチ以上70ウェール/インチ以下、更に好ましくは30ウェール/インチ以上60ウェール/インチ以下であっても良い。
又、コース密度は、例えば、50コース/インチ(=コース/25.4mm)以上120コース/インチ以下、好ましくは60コース/インチ以上110コース/インチ以下、更に好ましくは70コース/インチ以上100コース/インチ以下であっても良い。
【0034】
シート基材2の元となる経編地を編成する各編糸のうち、少なくとも第1編糸と第2編糸でシート基材2における基材層を構成し、特に、少なくとも第2編糸は、その一部(特に、シンカーループ)が起毛されることによって嵩高となり、基材層のクッション部分(弾性を有した部分)を構成するとも言える。
又、少なくとも第3編糸(特に、ニードルループ)が起毛されることで、シート基材2におけるパイル層を構成し、同様に、第2編糸も、その一部(ニードルループなど)が起毛されることでパイル層を構成しても良い。
【0035】
シート基材2の元となる経編地において、各編糸(経糸)を構成する繊維(シート基材2において立設可能な繊維3(後の立毛シート1において立設する繊維3))は、経編地を編成(シート基材2を構成)できるのであれば、何れの素材・構成・繊度等でも良いが、まず素材について、第1編糸は、例えば、熱可塑性の素材であるポリエチレンテレフタレート(PET)や、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等のポリエステル繊維、ナイロン(ポリアミド)繊維、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン系繊維、レーヨン繊維、キュプラ繊維、アセテート繊維、ポリアクリロニトリル(PAN)を主成分とするアクリル繊維、ポリビニルアルコール(PVA)繊維(ビニロン繊維)、ポリウレタン(PU)繊維などの合成繊維でも良く、その他、ガラス繊維、羊毛、絹などであり、これらを単独又は組み合わせて用いられても良い。
このような第1編糸は、シート基材2における基材層の強度保持に関係するとも言える。
【0036】
一方、シート基材2の元となる経編地における第2編糸や第3編糸の素材としても、例えば、熱可塑性の素材であるポリエチレンテレフタレート(PET)や、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等のポリエステル繊維、ナイロン(ポリアミド)繊維、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン系繊維、レーヨン繊維、キュプラ繊維、アセテート繊維、ポリアクリロニトリル(PAN)を主成分とするアクリル繊維、ポリビニルアルコール(PVA)繊維(ビニロン繊維)、ポリウレタン(PU)繊維などの合成繊維でも良く、その他、ガラス繊維、羊毛、絹などであり、これらを単独又は組み合わせて用いられても良い。
このような第2編糸は、上述したように、シート基材2における基材層の弾性を有した部分を構成するとも言える。
又、第3編糸は、上述したように、シート基材2におけるパイル層(つまり、シート基材2において立設可能な繊維3(後の立毛シート1において立設する繊維3))を構成することから、シート基材2(後の立毛シート1)の風合いに関係するとも言える。
【0037】
次に、シート基材2の元となる経編地における各編糸(経糸)である繊維の構成としては、マルチフィラメントやモノフィラメント、スパン(紡績糸)など何れであっても良い。
各編糸(特に、第3編糸)のうち、立設可能な繊維3がマルチフィラメントである場合には、その立設可能な繊維3として、断面視で溶解除去し得る成分と溶解除去し得ない成分が混在する複合繊維が用いられても良い。
【0038】
この複合繊維について述べれば、例えば、アルカリ割繊フィラメントなどであって、溶解除去し得る成分を海または鞘部分とする海島または芯鞘断面構造の複合繊維や、溶解除去し得る成分と溶解除去し得ない成分が交互に放射状に並んでいる放射状断面構造の複合繊維であっても良い。
これらの複合繊維は、シート基材2の元となる経編地の編成後に、例えば、減量処理を施してその溶解成分を溶解除去し、その複合繊維を複数本の各繊維に分割しても良い。
【0039】
又、シート基材2の元となる経編地における各編糸には、熱収縮繊維が用いられていても良く、この熱収縮繊維は、経編地の編成後で且つ起毛前に行う工程(例えば、減量工程や染色工程など)において顕現させれば良い。
以下、各編糸(経糸)は、主にマルチフィラメントとして述べる。
【0040】
シート基材2の元となる経編地における各編糸(経糸)の繊度についても、特に限定はないが、まずは第1編糸について述べれば、例えば、総繊度で、5dtex以上500dtex以下、好ましくは10dtex以上200dtex以下、更に好ましくは20dtex以上100dtex以下であっても良い。
又、第1編糸がマルチフィラメントの場合、その各フィラメントの単繊維繊度も、特に限定はないが、例えば、0.1dtex以上50.0dtex以下、好ましくは0.5dtex以上30.0dtex以下、更に好ましくは1.0dtex以上20.0dtex以下であっても良い。
更に、1本の第1編糸におけるフィラメントの本数も、特に限定はないが、例えば、2本以上100本以下、好ましくは3本以上70本以下、更に好ましくは5本以上50本以下であっても良い。
そして、第1編糸は、当該第1編糸を構成する繊維の熱収縮率も、特に限定はないが、例えば、10.0%以上50.0%以下、好ましくは12.0%以上40.0%以下、更に好ましくは15.0%以上30.0%以下で、所謂、高熱収縮繊維で構成されていても良い。
【0041】
次に、シート基材2の元となる経編地における第2編糸について述べれば、その総繊度は、例えば、1dtex以上500dtex以下、好ましくは5dtex以上200dtex以下、更に好ましくは10dtex以上100dtex以下であっても良い。
又、第2編糸がマルチフィラメントの場合、その各フィラメント(立設可能な繊維3)の単繊維繊度も、特に限定はないが、例えば、0.05dtex以上40.00dtex以下、好ましくは0.10dtex以上20.00dtex以下、更に好ましくは0.50dtex以上10.0dtex以下であっても良い(言わば、極細繊維であっても良い)。
更に、1本の第2編糸におけるフィラメントの本数も、特に限定はないが、例えば、2本以上200本以下、好ましくは3本以上140本以下、更に好ましくは5本以上100以下であっても良い。
そして、第2編糸も、当該第2編糸である立設可能な繊維3の熱収縮率は、特に限定はないが、例えば、10.0%以上50.0%以下、好ましくは12.0%以上40.0%以下、更に好ましくは15.0%以上30.0%以下で、所謂、高熱収縮繊維で構成されていても良い。
【0042】
続いて、シート基材2の元となる経編地における第3編糸について述べれば、その総繊度は、例えば、5dtex以上500dtex以下、好ましくは10dtex以上200dtex以下、更に好ましくは20dtex以上100dtex以下であっても良い。
又、第3編糸がマルチフィラメントの場合、その各フィラメント(立設可能な繊維3)の単繊維繊度も、特に限定はないが、例えば、0.01dtex以上10.00dtex以下、好ましくは0.05dtex以上5.00dtex以下、更に好ましくは0.10dtex以上1.00dtex以下であっても良い。
更に、1本の第3編糸におけるフィラメントの本数も、特に限定はないが、例えば、2本以上2000本以下、好ましくは10本以上1000本以下、更に好ましくは50本以上700本以下であっても良い。
そして、第3編糸も、当該第3編糸である立設可能な繊維3の熱収縮率は、特に限定はないが、例えば、1.0%以上10.0%未満、好ましくは2.0%以上9.0%以下、更に好ましくは3.0%以上8.0%以下で、上述した第1、2編糸11、12の高熱収縮繊維より熱収縮率が低い繊維(所謂、低熱収縮繊維)で構成されていても良い。
尚、第3編糸は、低熱収縮繊維だけでなく、この低熱収縮繊維より熱収縮率が高い高熱収縮繊維も含んでいても良く、この第3編糸における高熱収縮繊維の熱収縮率も、特に限定はないが、例えば、10.0%以上50.0%以下、好ましくは12.0%以上40.0%以下、更に好ましくは15.0%以上30.0%以下であっても良い。
又、第3編糸が低熱収縮繊維と高熱収縮繊維を含んでいる場合、低熱収縮繊維は、上述した総繊度で、マルチフィラメントであれば、上述した単繊維繊度・本数であっても良い。
一方、高熱収縮繊維は、その総繊度は、例えば、1dtex以上500dtex以下、好ましくは5dtex以上200dtex以下、更に好ましくは10dtex以上100dtex以下であっても良く、当該高熱収縮繊維がマルチフィラメントの場合、その各フィラメントの単繊維繊度も、特に限定はないが、例えば、0.10dtex以上50.00dtex以下、好ましくは1.00dtex以上20.00dtex以下、更に好ましくは2.00dtex以上10.0dtex以下であったり、フィラメントの本数も、特に限定はないが、例えば、2本以上200本以下、好ましくは3本以上140本以下、更に好ましくは5本以上100以下であっても構わない。
更に、第3編糸が低熱収縮繊維と高熱収縮繊維を含んでいる場合、第3編糸における高熱収縮繊維が占める質量比率も、特に限定はないが、例えば、その質量比率は、20質量%以上60質量%以下、好ましくは20質量%以上50質量%以下、更に好ましくは20質量%以上40質量%以下であっても良い。
【0043】
シート基材2の元となる経編地における各編糸をまとめると、主にシート基材2のパイル層を構成する第3編糸の総繊度は、主にシート基材2の基材層を構成する第2編糸の総繊度より太くても良い。
第2、3編糸が共にマルチフィラメントである場合には、第3編糸の単繊維繊度(特に、低熱収縮繊維の単繊維繊度)は、第2編糸の単繊維繊度より細かったり、第3編糸の熱収縮率(特に、低熱収縮繊維の熱収縮率)は、第2編糸の熱収縮率より低く、好ましくは、第2編糸の熱収縮率より5%以上低くても構わない。
又、第3編糸の総繊度は、シート基材2の基材層を構成する第1編糸の総繊度より太くても良い。
シート基材2の元となる経編地における第1、3編糸が共にマルチフィラメントである場合には、第3編糸の単繊維繊度(特に、低熱収縮繊維の単繊維繊度)は、第1編糸の単繊維繊度より細かったり、第3編糸の熱収縮率(特に、低熱収縮繊維の熱収縮率)は、第1編糸の熱収縮率より低く、好ましくは、第1編糸の熱収縮率より5%以上低くても構わない。
シート基材2の元となる経編地における第3編糸が、熱収縮率の異なる高熱収縮繊維と低熱収縮繊維によって構成され、好ましくは、第3編糸の低熱収縮繊維の熱収縮率は、第3編糸の高熱収縮繊維の熱収縮率より5%以上低くても良い。
更に、第3編糸がマルチフィラメントである場合には、第3編糸の高熱収縮繊維の単繊維繊度が2dtex以上であり、第3編糸の低熱収縮繊維の単繊維繊度が1dtex以下であっても構わない。
【0044】
<シート基材2の基材層における基材樹脂>
上述したように、シート基材2の元となる基材層(経編地)に含まれる立設可能な繊維3(第2、3編糸)の表面や、第1編糸の表面には、基材樹脂が付着している。
この基材樹脂は、後述する被覆層の被覆樹脂とは別の位置(つまり、経編地のシンカーループ面を覆う位置ではなく、基材層(経編地)内部の第1編糸の表面や、基材層(シート基材2)の表面2a)において立設可能な繊維3(第2、3編糸)の表面に付着していると言える。
【0045】
基材樹脂の素材は、特に限定はないが、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)や、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等のポリエステル樹脂であったり、その他、ポリアクリロニトリル(PAN)を主成分とするアクリル樹脂や、ポリウレタン(PU)樹脂、シリコーン樹脂、ナイロン(ポリアミド)樹脂、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン系樹脂、アセテート樹脂、ポリビニルアルコール(PVA)樹脂(ビニロン樹脂)などの合成樹脂でも良く、これらを単独又は組み合わせて用いられても良い。
基材樹脂は、後述する被覆層の被覆樹脂とは異なる素材であっても良い。
【0046】
又、この基材樹脂は、シート基材2の元となる経編地の基材層内部の第1編糸の表面や、基材層の表面2aにおいて立設可能な繊維3(第2、3編糸)の表面に付着できるのであれば、何れの構成であっても良いが、例えば、水や溶剤などで希釈したエマルジョン状態の基材樹脂の中に、経編地全体を浸漬(DIP−NIP)しても良い。
尚、シート基材2の元となる基材層(経編地)の立設可能な繊維3の表面や、第1編糸の表面に付着している基材樹脂は、複数の繊維3や第1編糸に亘って付着していても良いが、1本の繊維3や第1編糸の表面に付着していても構わない。
基材層(経編地)の立設可能な繊維3や第1編糸の表面に付着している基材樹脂の大きさも、特に限定はないが、例えば、付着した基材樹脂の長手方向に沿った長さで、30μm以上500μm以下、好ましくは50μm以上300μm以下、更に好ましくは70μm以上200μm以下であっても良い。
その他、基材樹脂は、基材層(経編地)において、被覆樹脂が付着している位置以外の全体に亘って付着していても良い。
【0047】
<シート基材2の被覆層における被覆樹脂>
上述したように、シート基材2の元となる経編地の被覆層は、当該経編地のシンカーループ面(裏面)2bを、被覆樹脂で覆って形成される。
被覆層における被覆樹脂の素材も、特に限定はないが、例えば、ポリアクリロニトリル(PAN)を主成分とするアクリル樹脂や、ポリウレタン(PU)樹脂、シリコーン樹脂等であったり、その他、ポリエチレンテレフタレート(PET)や、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等のポリエステル樹脂、ナイロン(ポリアミド)樹脂、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン系樹脂、アセテート樹脂、ポリビニルアルコール(PVA)樹脂(ビニロン樹脂)などの合成樹脂でも良く、これらを単独又は組み合わせて用いられても良い。
【0048】
又、この被覆樹脂は、シート基材2の元となる経編地のシンカーループ面を覆う(シンカーループ面に付着する)のであれば、何れの構成であっても良いが、例えば、被覆樹脂を、水や溶剤などで希釈したエマルジョン状態で経編地のシンカーループ面に塗布(コーティング)しても良い。
被覆樹脂の塗布量(付着量)も、何れの値でも良いが、例えば、乾燥状態で、30g/m
2 以上180g/m
2 以下、好ましくは40g/m
2 以上170g/m
2 以下、更に好ましくは50g/m
2 以上160g/m
2 以下であっても良い。
【0049】
このような被覆樹脂は、シート基材2の元となる経編地のシンカーループ面において起毛された繊維3(第2、3編糸であって、言わば、起毛毛羽)の先に付着して、被覆層を形成しているとも言える。
被覆樹脂は、経編地のシンカーループ面において立設した繊維3(第3編糸)の起毛毛羽には少なくとも付着しており、また別の立設した繊維3(第2編糸)の起毛毛羽に付着していても良い。
【0050】
つまり、被覆樹脂は、シート基材2の元となる経編地のシンカーループ面においては、第1編糸には接触することなく、シンカーループ面の最表面側に位置し且つ起毛されて立設した繊維3(第3編糸)のシンカーループの起毛毛羽を覆って、被覆層を形成しているとも言える。
尚、被覆樹脂が経編地のシンカーループ面を覆う際、被覆樹脂が直接、経編地を構成する第2編糸や第1編糸(特に第2編糸)に付着しても良いが、基材層に付着した基材樹脂越しに、被覆樹脂が基材層を覆う部分があっても良い。
【0051】
<シート基材2のパイル層(立設する繊維3)>
上述したように、シート基材2の元となる経編地のパイル層は、上述した基材層の一方面(シート基材2としては表面2a)側の層であって、基材層である経編地のニードルループ面にて起毛された繊維3(第2、3編糸であって、起毛毛羽)で形成される。
パイル層の厚さも、何れの値でも良いが、例えば、0.01mm以上1.00mm以下、好ましくは0.05mm以上0.50mm以下、更に好ましくは0.10mm以上0.30mm以下であっても良い。
【0052】
ここで、シート基材2の元となる経編地の「パイル層の厚さ」とは、起毛された繊維3が基材層の表面(シート基材2の表面2a)に略沿っているものが存在する部分(略層状となっている部分)において、基材層の表面から最も遠い位置までの高さ(距離)を意味し、立毛シート1において立設する繊維3の立設高さ3hに略等しいとも言える(
図9等参照)。
又、立設高さ3hも、パイル層の厚さと同様に、何れの値でも良いが、例えば、0.01mm以上1.00mm以下、好ましくは0.05mm以上0.50mm以下、更に好ましくは0.10mm以上0.30mm以下であっても良い。
パイル層の起毛された繊維3のうち、平面視で所定方向に略沿う繊維3は、平面視で当該所定方向に沿わない繊維3より多くても良い。
【0053】
又、シート基材2の元となる経編地のパイル層における糸の密度(パイル糸密度とも言える)は、特に限定はないが、例えば、上述した経編地におけるウェール密度とコース密度を掛けた値としても良く、そのパイル糸密度は、500本/インチ
2 (=本/(25.4mm)
2 )以上9600本/インチ
2 、好ましくは1200本/インチ
2 以上7700本/インチ
2 、更に好ましくは2100本/インチ
2 以上6000本/インチ
2 でも構わない。
尚、パイル糸密度は、上述のようになるが、第3編糸がマルチフィラメントである場合などは、実際の起毛された繊維3の密度は、パイル糸密度より当然大きくなると言える。
【0054】
<その他のシート基材2、繊維3>
シート基材2は、立設可能な繊維3を有するのであれば、上述した合皮シート材のうち、基材樹脂が、基材層(経編地)に含まれる立設可能な繊維3(第2、3編糸)の表面や、第1編糸の表面に付着していない合皮シート材であっても良い。
その他、シート基材2は、立設可能な繊維3を有するのであれば、例えば、経編地の一方面(ニードルループ面又はシンカーループ面)だけを起毛し、当該経編地の起毛された繊維3でパイル層を形成すると共に、当該経編地のうち起毛していない面を被覆樹脂で覆って被覆層を形成したものを、シート基材2の素材としても良い。
【0055】
ここまで述べたシート基材2の元となる経編地は、トリコット編地(デンビー編地)であったが、それ以外に、ラッシェル編や、ダブルラッシェル編、バンダイク編(アトラス編)、コード編などの経編地であっても良く、その他、平編(天竺編)、ゴム編(リブ編)、パール編などの緯編地など、それぞれ何れの編組織の編地であっても構わない。
又、シート基材2の元となる経編地などの代わりに、平織地を用いても良く、この場合も、平織地の一方面だけ又は両面を起毛し、当該平織地の起毛された繊維3でパイル層を形成すると共に、当該平織地のうち起毛していない面を被覆樹脂で覆って被覆層を形成したものを、シート基材2の素材としても良い。
更に、シート基材2の元となる経編地などの代わりには、不織布を用いても良く、この場合も、不織布の一方面だけ又は両面を起毛し、当該不織布の起毛された繊維3でパイル層を形成すると共に、当該不織布のうち起毛していない面を被覆樹脂で覆って被覆層を形成したものを、シート基材2の素材としても良い。
【0056】
シート基材2の元となるものとしては、上述した経編地や平織地など以外に、モケット織地(表織地と裏織地を連結する連結糸を、センターカット等してパイル糸とするパイル織地の1種)であっても良く、このモケット織地におけるパイルは、その総繊度は、例えば、1dtex以上500dtex以下、好ましくは5dtex以上200dtex以下、更に好ましくは10dtex以上100dtex以下であっても良い。
又、モケット織地のパイルがマルチフィラメントの場合、その各フィラメント(繊維3)の単繊維繊度も、特に限定はないが、例えば、0.01dtex以上40.00dtex以下、好ましくは0.05dtex以上5.00dtex以下、更に好ましくは0.10dtex以上1.00dtex以下であっても良い(言わば、極細繊維であっても良い)。
更に、モケット織地の1本のパイルにおけるフィラメントの本数も、特に限定はないが、例えば、2本以上200本以下、好ましくは3本以上140本以下、更に好ましくは5本以上100以下であっても良い。
【0057】
これら以外に、シート基材2の元となるものとしては、天然皮革の少なくとも一方の面を起毛したものなどであっても良い。
以下、シート基材2は、主に、経編地の両面(ニードルループ面及びシンカーループ面)を起毛し、当該経編地のニードルループ面の起毛された繊維3でパイル層を形成すると共に、当該経編地の基材層内にある繊維3などの表面に基材樹脂を付着させた後に、当該経編地のシンカーループ面を被覆樹脂で覆って被覆層を形成した合皮シート材として述べる。
【0058】
<挟立設部7、立設領域R、非立設領域R’>
図3〜9に示されたように、挟立設部7は、上述してきた立毛シート1における立設領域Rのうち、平面視で、非立設領域R’に挟まれた部分である。
尚、本発明における「立設領域R」とは、上述した繊維3が所定数で隣接して立設した領域であって、隣接して立設する繊維3の所定数とは、少なくとも2本以上であれば良く、又、互いに隣接して立設する繊維3の間の距離とは、立設した繊維3の根元間の距離(立設距離)であって、何れの値でも良いが、例えば、例えば、上述したシート基材2の元となる経編地のコース密度などをふまえた場合には、0.21mm以上0.51mm以下(50コース/インチ以上120コース/インチ以下より)などであったり、立設する繊維3がマルチフィラメントの場合には、その単繊維繊度をふまえて、1μm以上500μm以下(=0.001mm以上0.500mm以下(0.1dtex以上50.0dtex以下より))であっても良い。
【0059】
ここで、本発明における「立設する」とは、上述したように、繊維3が、シート基材2の何れか一方の面(例えば、表面2a)に対して略90°に起立している状態だけでなく、
図9等に示したように、シート基材2の表面2a等に対して略90°に起立していなくとも、立設領域Rにおけるシート基材2の表面2a等からの繊維3の立設高さ3hが、非立設領域R’におけるシート基材2の表面2a等より高い位置にある状態や、シート基材2の表面2a等から突出していれば、シート基材2の表面2a等に対して、0°より大きく90°以下の角度を成している状態や、繊維3がアーチ形状を成す等によってシート基材2の表面2a等に対してして0°の角度を成している部分を持つ状態なども含む(
図9等参照)。
一方、本発明における「非立設領域R’」とは、立毛シート1において、繊維3が立設していない領域(例えば、繊維3とシート基材2の表面2a等に対する角度が略0°である(繊維3がシート基材2の表面2a等に略沿っている)領域や、繊維3がシート基材2の表面2a等から突出していない領域)であって、非立設領域R’の平面視において、当該領域内で確保できる直線長さが、上述した立設距離(例えば、0.51mm)よりも長くなっていても良い(
図9等参照)。
【0060】
尚、この非立設領域R’の表面が、シート基材2の表面2aであるとも言え、この非立設領域R’の表面2aから、隣接して立設している繊維3の先端(パイル層の上端)までが、立設する繊維3の立設高さ3hであるとも言える(
図9等参照)。
本発明における立設領域Rが「平面視で、非立設領域R’に挟まれる」状態とは、立毛シート1の平面視において、立設領域Rが非立設領域R’に単純に挟まれている状態(例えば、立設領域Rが平面視で長細く、この長細い立設領域Rを非立設領域R’で文字通り挟む状態)だけでなく、立設領域Rが非立設領域R’に囲まれる状態(例えば、立設領域Rが平面視で多角形であり、この多角形である立設領域Rを非立設領域R’で囲む状態))も含む(
図4〜8参照)。
【0061】
このような立設領域Rと非立設領域R’を設けることによって、立設した繊維3による「緻密な図柄」が形成されるとも言える。
立設領域Rと非立設領域R’を設けて形成される図柄そのものは、特に限定はないが、幾何学模様や梨地模様、風景画や人物画、画像(写真)、漫画など何れの図柄(パターン)であっても構わない。
【0062】
尚、立毛シート1において、立設領域Rと非立設領域R’で形成される図柄は、後述するパターン部材5の一方面の少なくとも一部分に存在する押圧樹脂4が描く図柄(パターン)と同じものであっても良い。
又、非立設領域R’には、パターン部材5の一部が、後述する立設工程P2においてシート基材2から離反される際に残って付着していても良い。
【0063】
立設領域Rと非立設領域R’は、色が同じであったり、異なっていても良く、例えば、立設領域Rは、後述する押圧樹脂4に含まれた顔料が移った色(立設する繊維3の表面に顔料が付着した色)であったり、非立設領域R’は、シート基材2そのものの色であっても構わない。
尚、立設領域Rが押圧樹脂4に含まれた顔料の色である場合には、顔料によっては、例えば、黒色や赤色などの単色や、部分的に2色以上であったり、色の三原色(シアン、マゼンタ、イエロー)の各色そのものや各色の混合色、色の三原色と黒色の各色そのものや各色の混合色であっても構わない。
【0064】
<第1〜4実施形態>
ここで、第1〜4実施形態について言及する。
図4、5に示す立毛シート1の第1、2実施形態は、立設領域Rと非立設領域R’の色が同じであり、第1実施形態の図柄は幾何学模様であり、一方、第2実施形態の図柄はグラデーションが入った幾何学模様であるとも言え、「緻密な図柄」が形成されていることがわかる。
図6、7に示す立毛シート1の第3、4実施形態は、立設領域Rと非立設領域R’の色が異なっており(立設領域Rが黒で、非立設領域R’が赤)、第3実施形態は第1実施形態と同じ図柄であり、第4実施形態は第2実施形態と同じ図柄であり、立設領域Rでは押圧樹脂4に含まれた顔料が移ったり、この顔料の色と、シート基材2そのもの(非立設領域R’)の色が異なっていても、「緻密な図柄」が形成されていることがわかる。
このような「緻密な図柄」を形成する際に必要とも言える、立設領域Rの一部である挟立設部7の幅7Wについて、以下で詳しく述べる。
【0065】
<挟立設部7の幅7Wと、その最小値7Wminなど>
本発明における挟立設部7の「幅7W」とは、上述した長細い等の立設領域Rが非立設領域R’に単純に挟まれている状態であれば、文字通り、立設領域Rの幅(立設領域Rの長手方向に略直交する方向に沿った立設領域Rの長さ)であり、上述した多角形等である立設領域Rが非立設領域R’に囲まれている状態であれば、囲まれた立設領域Rにおいて、非立設領域R’との境界から、また別の非立設領域R’との境界までの長さが最も長い位置での「長さ」を意味する。
挟立設部7の幅7Wは、その最小値(最小幅)7Wminと、その最大値(最大幅)7Wmaxを有することとなる。
【0066】
挟立設部7の幅7Wのうち、最小値(最小幅)7Wminは、1.0mm以下であると言え、好ましくは0.8mm以下、更に好ましくは0.5mm以下であっても良い。
この最小幅7Wminは、1.0mm以下であれば、何れの値でも良いが、例えば、立毛シート1の平面視において、隣接して立設した繊維3が2本である部分における幅であっても良く、この場合の最小幅7Wminは、立設する繊維3間の距離=1μm以上(=0.001mm以上)であっても良い。
【0067】
一方、挟立設部7の幅7Wのうち、最大値(最大幅)7Wmaxは、特に限定はないが、例えば、上述した長細い等の立設領域Rが非立設領域R’に単純に挟まれている状態であれば、最大幅7Wmaxは最小幅7Wminに略等しく、上述した多角形等である立設領域Rが非立設領域R’に囲まれている状態であれば、囲まれた立設領域Rにおいて、非立設領域R’との境界から、また別の非立設領域R’との境界までの長さが最も長い位置での「長さ」である。
このように、挟立設部7は、その幅7Wの最小値7Wminが、1.0mm以下であるため、幅狭部7であるとも言える。
【0068】
<樹脂小片8>
図8、9に示されたように、樹脂小片8は、熱可塑性の樹脂であって、上述した立設領域Rにおける繊維3(立設する繊維3)に付着していても良い。
樹脂小片8は、複数の立設する繊維3に亘って付着していても良いが、1本の繊維3の表面に付着していても構わない。
【0069】
樹脂小片8は、立設する繊維3に付着できるのであれば、何れの素材等でも良いが、例えば、熱可塑性の素材であるポリエチレンテレフタレート(PET)や、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等のポリエステル樹脂、ポリアクリロニトリル(PAN)を主成分とするアクリル樹脂、ポリスチレン(PS)樹脂や、ポリウレタン(PU)繊維などの他、ナイロン(ポリアミド)樹脂、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン系樹脂、ポリビニルアルコール(PVA)樹脂などの合成樹脂でも良い。
【0070】
樹脂小片8の大きさも、特に限定はないが、例えば、付着した樹脂小片8の長手方向に沿った長さで、1μm以上300μm以下、好ましくは10μm以上100μm以下、更に好ましくは20μm以上80μm以下であっても良い。
樹脂小片8は、立設領域R内で立設している繊維3のうち、平面視で、非立設領域R’寄り(非立設領域R’により近い側)に位置する繊維3の方に、より多く付着しているとも言える。
【0071】
その他、樹脂小片8は、シート基材2が上述した合皮シート材であれば、上述の被覆樹脂や基材樹脂などが付着している位置以外に付着していても良い。
樹脂小片8は、後述する押圧工程P1における押圧樹脂4であっても(押圧樹脂4が残っていても)良い。
【0072】
又、樹脂小片8は、後述する付着工程P0にて付着する付着樹脂6であっても良い。
その他、立設領域Rにおいて立設する繊維3に付着した樹脂小片8の樹脂量は、非立設領域R’における繊維に付着した熱可塑性の樹脂(後述する付着樹脂6など)の樹脂量より少なくても良い。
ここまで述べた立毛シート1について、その製造方法における各工程(付着工程P0、押圧工程P1、立設工程P2など)を、以下に詳解する。
【0073】
<付着工程P0、付着樹脂6>
図1に示したように、付着工程P0は、上述したシート基材2の少なくとも一方面(表面2a等)に、熱可塑性の付着樹脂6を付着させる工程であって、立毛シートの製造方法において、後述する押圧工程P1の前に設けられていても良い。
付着工程P0において、付着樹脂6が付着される位置は、シート基材2の表面2a以外であっても良く、例えば、立設する繊維3の表面であったり、その他、シート基材2が上述した合皮シート材であれば、シート基材2の基材層内であっても良い。
【0074】
付着工程P0では、付着樹脂6をシート基材2の少なくとも一方面(表面2a等)に付着できるのであれば、何れの方法を用いても良いが、例えば、水や溶剤などで希釈したエマルジョン状態の付着樹脂6に、シート基材2全体を浸漬(DIP−NIP)したり、シート基材2の表面2aなどに、付着樹脂6を、水や溶剤などで希釈したエマルジョン状態で塗布(刷毛等による塗布や、スプレー塗布など)しても良い。
付着工程P0にて用いられる付着樹脂6も、熱可塑性であり、シート基材2の少なくとも一方面に付着するのであれば、何れの素材等でも良いが、例えば、熱可塑性の素材であるポリエチレンテレフタレート(PET)や、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等のポリエステル樹脂、ポリアクリロニトリル(PAN)を主成分とするアクリル樹脂、ポリスチレン(PS)樹脂や、ポリウレタン(PU)繊維などの他、ナイロン(ポリアミド)樹脂、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン系樹脂、ポリビニルアルコール(PVA)樹脂などの合成樹脂でも良い。
【0075】
尚、付着樹脂6は、後述する押圧工程P1における押圧樹脂4や、上述した合皮シート材における基材樹脂、被覆樹脂などとは異なる素材であっても良い。
このような付着工程P0を押圧工程P1の前に設けることによって、非立設領域R’では後述する立設工程P2において繊維3が立設し難くなり、立設領域Rと非立設領域R’との間で更にメリハリがつき、立設する繊維3によって、より鮮明で「緻密な図柄」を実現できる。
【0076】
<押圧工程P1、押圧樹脂4、パターン部材5>
図1、2(a)に示したように、押圧工程P1は、上述した立設する繊維3を有するシート基材2の一方面(表面2a等)に対して、熱可塑性の押圧樹脂4が少なくとも一部分に存在するパターン部材5の一方面を押圧する工程である。
押圧工程P1における押圧は、加熱押圧でも良い。
【0077】
押圧工程P1では、シート基材2の表面2a等に、熱可塑性の押圧樹脂4が少なくとも一部分に存在するパターン部材5を押圧できるのであれば、何れの素材・構成・条件などでも良いが、例えば、熱可塑性の押圧樹脂4であれば、ポリエチレンテレフタレート(PET)や、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等のポリエステル樹脂、ポリアクリロニトリル(PAN)を主成分とするアクリル樹脂、ポリスチレン(PS)樹脂や、ポリウレタン(PU)繊維などの他、ナイロン(ポリアミド)樹脂、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン系樹脂、ポリビニルアルコール(PVA)樹脂などの合成樹脂でも良い。
押圧樹脂4は、上述した付着樹脂6や、合皮シート材における基材樹脂、被覆樹脂などとは異なる素材であっても良い。
【0078】
押圧樹脂4は、顔料を含有していても良く、この顔料の色についても限定はないが、例えば、黒色や赤色などの単色や、部分的に2色以上であったり、色の三原色(シアン、マゼンタ、イエロー)の各色そのものや各色の混合色、色の三原色と黒色の各色そのものや各色の混合色であっても良い。
この他、押圧樹脂4は、ワックス(オイル)、帯電制御剤、添加剤、別途合成樹脂をコーテングした金属粒子(鉄やフェライト等)、染料などを含有していても良く、コピー機等のトナーであっても構わない。尚、押圧樹脂4が染料を含有している場合にも、当該染料の色が、立設領域Rに移っても良い。
【0079】
押圧樹脂4は、後述するように、粉末状であっても構わない。
尚、押圧樹脂4が粉末状である場合、その大きさも、特に限定はないが、例えば、粉末状の押圧樹脂4の長手方向に沿った長さで、1μm以上20μm以下、好ましくは3μm以上10μm以下、更に好ましくは5μm以上8μm以下であっても良い。
【0080】
又、パターン部材5についても、どのような素材・構成・形状などでも良いが、例えば、パターン部材5の素材であれば、熱可塑性でない素材(非熱可塑性の素材)で、より具体的には、紙(セルロース)、木材、天然皮革などの他、熱硬化性の樹脂などであったり、熱可塑性の素材であっても、後述する押圧温度よりも、ガラス転移温度や軟化温度が高い素材(例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)のフィルム等)であっても良い。
尚、パターン部材5の構成・形状については、例えば、フラット状(シート状、フィルム状、板状、直方体状など)であったり、ロール状であっても良い。
以下、パターン部材5は、主に、シート状の紙であるとして述べる。
【0081】
又、パターン部材5は、その一方面の少なくとも一部分に、上述した押圧樹脂4が存在しているが、押圧樹脂4が存在する側の面は、押圧面(又は、パターン面)5aであると言える。
パターン部材5の押圧面5aは、略平坦でも、凹凸を有していても良いが、以下、主に、略平坦であるとして述べる。
【0082】
ここで、本発明における「パターン部材5の一方面の少なくとも一部分に、押圧樹脂4が存在する」状態とは、 押圧樹脂4が紙等のパターン部材5の一方面の少なくとも一部分に定着した(例えば、圧力や熱をかけることでパターン部材5に染みこんだ)状態の他、プラスの電荷を帯びた紙等のパターン部材5の一方面の少なくとも一部分に、マイナスの電荷を帯びたトナーなどの押圧樹脂4が吸着した状態も含む。
以下、パターン部材5の一方面に押圧樹脂4が「存在する」状態とは、「定着した」状態であるとして述べる。
【0083】
<押圧装置10、プレス部材11>
図2に示すように、押圧装置10は、シート基材2の表面2a等にパターン部材5の押圧面5aを押圧する装置である。
押圧装置10は、シート基材2の表面2a等にパターン部材5の押圧面5aを押圧するのであれば、何れの構成であっても良いが、例えば、一対のプレス部材11の間に、シート基材2とパターン部材5を表面2a等と押圧面5aが向かい合った状態で重ねて挟み、所定の温度(押圧温度)で、所定の時間(押圧時間)だけ、シート基材2とパターン部材5が互いに近接する方向に、所定の圧力(押圧力)をかける構成であっても良い。
【0084】
押圧装置10におけるプレス部材11について詳解すれば、プレス部材11は、シート基材2とパターン部材5に所定の押圧力をかける押し部材11aと、シート基材2とパターン部材5にかかる押圧力を受ける受け部材11bを備えている。
これら押し部材11aと受け部材11bの形状は、それぞれがフラット状(押しフラット部材11a・受けフラット部材11b)であったり、それぞれがロール状(押しロール部材11a・受けロール部材11b)であっても良い。
【0085】
一対のプレス部材11が押しフラット部材11aと受けフラット部材11bである場合、シート基材2と、押圧樹脂4が存在するパターン部材5は、何れもが所定大きさの略矩形状など(長尺状ではない形状)となり、その平面視形状は、押しフラット部材11a・受けフラット部材11bの平面視形状と略相似しているとも言える。
一対のプレス部材11が押しロール部材11aと受けロール部材11bである場合、シート基材2と、押圧樹脂4が存在するパターン部材5は、何れもが長尺状となるとも言える。尚、この場合、上述した押圧時間とは、長尺状のシート基材2とパターン部材5の移動速度(巻出部からの巻出速度、又は、巻取部への巻取速度など)を意味するとも言え、押圧時間を長くするには、シート基材2やパターン部材5の移動速度を遅くし、押圧時間を短くするには、シート基材2やパターン部材5の移動速度を速くすれば良いとも言える。
【0086】
一対のプレス部材11の素材は、押し部材11aと受け部材11bのそれぞれが、同じ素材であったり、異なる素材であっても良い。
押し部材11aと受け部材11bが同じ素材である場合には、例えば、所定の押圧温度に設定し所定の押圧力に耐え得るように、押し部材11a・受け部材11bの何れも鉄等の金属製であっても良い。
又、押し部材11aと受け部材11bが異なる素材である場合には、例えば、押し部材11aは、金属製であるが、受け部材11bは、芯材を織布等の布帛で覆ったクッション性を有した素材(押し部材11aがアイロンなどで、受け部材11bがアイロン台など)であっても良い。
【0087】
尚、
図1は、プレス部材11が、フラット状の押しフラット部材11aと受けフラット部材11bである場合を示す。
又、パターン部材5の一部が、上述した立毛シート1の非立設領域R’などに残っていても(付着していても)良い。
【0088】
<立設工程P2>
図1、2(b)に示したように、立設工程P2は、上述した押圧工程P1で押圧したパターン部材5をシート基材2から離反させるのに伴って、シート基材2の一方面(表面2a等)のうち押圧樹脂4が存在していた部分のみの繊維3を立設させる工程である。
立設工程P2では、シート基材2の離反に伴って、シート基材2の表面2a等のうち押圧樹脂4が存在していた部分のみの繊維3を立設できるのであれば、何れの装置構成などでも良いが、例えば、シート基材2とパターン部材5が略矩形状など(長尺状ではない形状)である場合には、単純に、シート基材2からパターン部材5を離反する(特に、パターン部材5がシート状やフィルム状であれば剥離する)装置によって剥離等をさせる構成であっても良い。
【0089】
又、シート基材2とパターン部材5が長尺状である場合には、それぞれが別の位置で巻き取られること等によって、シート基材2とパターン部材5が、それぞれの巻取部に近づくにつれて剥離等をする構成であっても良い。
更には、一方の手でシート基材と、他方の手でパターン部材5を把持して剥離等をするものでも良い。
よって、立設工程P2は、剥離工程であるとも言え、又、剥離等をする際、シート基材2とパターン部材5は、上述した押圧工程P1で用いた押圧装置10における一対のプレス部材11の間から出して剥離等をさせても良い(
図2(b)参照)が、所定の押圧時間を経過し、押圧力を下げるために一対のプレス部材11を互いに離反させるのに伴って、シート基材2とパターン部材5を剥離等させても構わない。
【0090】
<試験>
ここからは、まず立毛シートの実施例1〜6や比較例1〜4について言及する。
これらの実施例1〜6と比較例1〜4を用いて、後述する試験を行う。
【0091】
<実施例1>
実施例1では、スエード調の合皮シート材をシート基材とし、上述した付着工程P0・押圧工程P1・立設工程P2の順で3つの工程を経て、その表面に立設する繊維を有した立毛シートを作成した。
尚、実施例1の付着工程P0における付着樹脂はポリエステル樹脂であり、押圧工程P1における押圧樹脂もポリエステル樹脂で、且つ、パターン部材はシート状の紙である。
又、実施例1の付着工程P0では、濃度約5%に水で希釈したエマルジョン状態の付着樹脂に、シート基材全体を浸漬(DIP−NIP)しており、実施例1の押圧工程P1で用いた押圧装置10におけるプレス部材11は押し部材11a・受け部材11bの何れもがフラット状であり、その平面視形状は略矩形状で、その大きさは、310mm×400mmである。
更に、実施例1の押圧工程P1における押圧温度は120℃で、押圧時間は60秒、押圧力は15g/cm
2 である。
【0092】
<実施例2>
実施例1において、押圧工程P1の押圧温度を160℃とし、押圧時間を10秒、押圧力を500g/cm
2 として、実施例2の立毛シート1とした。
【0093】
<実施例3>
実施例1において、押圧工程P1の押圧温度を160℃とし、押圧時間を30秒、押圧力を500g/cm
2 として、実施例3の立毛シート1とした。
【0094】
<実施例4>
実施例1において、押圧時間は60秒のままだが、押圧工程P1の押圧温度を160℃とし、押圧力を500g/cm
2 として、実施例4の立毛シート1とした。
【0095】
<実施例5>
実施例1において、押圧時間は60秒のままだが、押圧工程P1の押圧温度を180℃とし、押圧力を500g/cm
2 として、実施例5の立毛シート1とした。
【0096】
<実施例6>
実施例1において、押圧工程P1の押圧温度を200℃とし、押圧時間を10秒、押圧力を500g/cm
2 として、実施例6の立毛シート1とした(
図3(a)参照)。
【0097】
<比較例1>
実施例1において、押圧時間は60秒で、押圧力は15g/cm
2 のままだが、押圧工程P1の押圧温度を80℃として、比較例1のシートとした。
【0098】
<比較例2>
実施例1において、押圧時間は60秒で、押圧力は15g/cm
2 のままだが、押圧工程P1の押圧温度を100℃として、比較例2のシートとした。
【0099】
<比較例3>
実施例1において、押圧工程P1の押圧温度を200℃とし、押圧時間を30秒、押圧力を500g/cm
2 として、比較例3のシートとした。
【0100】
<比較例4>
実施例1において、押圧時間は60秒のままだが、押圧工程P1の押圧温度を200℃とし、押圧力を500g/cm
2 として、比較例4のシートとした(
図3(b)参照)。
【0101】
<試験(押圧温度・押圧時間・押圧力と立設有無の評価試験)>
試験では、上述した実施例1〜6と比較例1〜4のシートにおいて、立設する繊維3を有するか否かの評価をした。
この立設有無の評価の結果と共に、実施例1〜6と比較例1〜4における押圧温度・押圧時間・押圧力を、以下の表1に示す。
尚、表1中の立設有無の評価は、立設する繊維3を有していれば「○」、立設する繊維3を有していなければ「×」としている。
【0103】
<試験1の評価(押圧温度・押圧時間・押圧力と立設有無の評価)>
表1や
図3で示されたように、実施例1〜6と比較例1〜4より、押圧工程P1において、押圧温度が低すぎても高すぎても繊維を立設させることが出来ず、押圧温度が若干低くても押圧時間を長くすることで繊維を立設させることが出来、逆に、押圧温度が高くても押圧時間を短くすることで繊維を立設させることが出来るとも言える。
又、押圧工程P1における押圧温度に注目すれば、その下限値は、比較例2と実施例1をふまえれば、立設有無の評価が「×」から「○」に変わる押圧温度が「100℃」と「120℃」の間に存在し、押圧温度の下限値は「110℃」であると言え、押圧温度の上限値は、実施例6と比較例3をふまえれば、立設有無の評価が「○」から「×」に変わっていることから、適切な押圧時間等においては、押圧温度の上限値は「200℃」であるとも言える。
更に、押圧工程P1における押圧時間に注目すれば、その下限値は、実施例2、6から、適切な押圧温度等においては、「10秒」であると言え、押圧時間の上限値は、実施例1、4、5から、適切な押圧温度等においては、「60秒」であるとも言える。
そして、押圧工程P1における押圧力に注目すれば、その下限値は、実施例1から、適切な押圧時間・押圧温度においては、「15g/cm
2 」であると言え、押圧力の上限値は、実施例2〜6から、適切な押圧時間・押圧温度においては、「500g/cm
2 」であるとも言える。
尚、比較例1、2は、押圧温度が低いため、パターン部材である紙に定着させた(印刷した)押圧樹脂であるポリエステル樹脂が熱軟化せず、シート基材であるスエード調の合皮シート材における表面の繊維を立設させることが出来なかったと言え、比較例3、4は、押圧温度が高い、且つ、押圧時間が長いため、押圧工程P1における押圧によって、シート基材であるスエード調の合皮シート材における表面の繊維が熱成形されて、繊維を立設させることが出来なかったと言える(
図3(b)参照)。
【0104】
<その他>
本発明は、前述した実施形態に限定されるものではない。立毛シートの製造方法、立毛シート1等の各構成又は全体の構造、形状、寸法などは、本発明の趣旨に沿って適宜変更することが出来る。
立毛シートの製造方法の第2実施形態においては、付着工程P0と、押圧工程P1の間に、シート基材2のみを押圧するプレス工程を有していても良い。
立毛シート1におけるシート基材2は、何れか一方の面(例えば、シート基材2の元となる経編地におけるシンカーループ面など)に、被覆樹脂が塗布されていなくとも良く、又、シート基材2の一部(例えば、基材層)の繊維3表面に樹脂(上述した基材樹脂など)が付着していなくとも構わない。
押圧工程P1の押圧装置10におけるプレス部材11の押し部材11aと受け部材11bの形状は、それぞれがフラット状やロール状である以外に、押し部材11aのみがロール状(押しロール部材11a)で、受け部材11bは、押しロール部材11aの軸方向側面視において、押しロール部材11aの周面に略沿う凹部を有した形状(受け凹部材11b)であっても良い。