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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2019-124290(P2019-124290A)
(43)【公開日】2019年7月25日
(54)【発明の名称】滑り軸受
(51)【国際特許分類】
   F16C 33/74 20060101AFI20190704BHJP
   F16C 17/04 20060101ALI20190704BHJP
   F16J 15/3232 20160101ALI20190704BHJP
   B60G 15/06 20060101ALI20190704BHJP
【FI】
   F16C33/74 Z
   F16C17/04 Z
   F16J15/3232 201
   B60G15/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2018-5206(P2018-5206)
(22)【出願日】2018年1月16日
(71)【出願人】
【識別番号】000103644
【氏名又は名称】オイレス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104570
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 光弘
(72)【発明者】
【氏名】今川 圭介
(72)【発明者】
【氏名】森重 晃一
【テーマコード(参考)】
3D301
3J006
3J011
3J016
【Fターム(参考)】
3D301AA60
3D301AA68
3D301AA75
3D301AA79
3D301AA89
3D301CA09
3D301DB02
3D301DB17
3J006AE24
3J006AE38
3J006AE49
3J006AF01
3J006CA01
3J011AA12
3J011BA08
3J011KA03
3J011MA12
3J011PA03
3J011RA02
3J011SC01
3J011SC03
3J011SC04
3J011SC13
3J016AA03
3J016BB03
(57)【要約】
【課題】異物の侵入および潤滑グリースの漏れを防止して、長期に亘り摺動性能を維持することができる滑り軸受を提供する。
【解決手段】アッパーケース2の環状凹部25に、ロワーケース3の環状凸部33が挿入されて形成される環状空間5に繋がる隙間を塞ぐダストシール6に、ロワーケース3の環状凸部33側から延びてアッパーケース2の環状凹部25と当接する第一リップ部602および第二リップ部603を設けている。そして、第一リップ部602の延びる方向と異物侵入経路とのなす角αが狭角となるように第一リップ部602を設定するとともに、第二リップ部603の延びる方向と潤滑グリース移動経路Soutとのなす角βが狭角となるように第二リップ部603を設定している。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷重を支持する滑り軸受であって、
下面に環状凹部を有するアッパーケースと、
前記アッパーケースの前記環状凹部の底面と対面して環状空間を形成する環状上面を有するロワーケースと、
前記環状空間に配置されて前記アッパーケースおよび前記ロワーケース間の相対的な回動を実現するセンタープレートと、
前記環状空間に繋がる隙間を塞ぐダストシールと、を備え、
前記環状空間内には、潤滑グリースが充填され、
前記ダストシールは、
前記ロワーケースの前記環状上面側から延びて前記アッパーケースの前記環状凹部と当接する第一リップ部および第二リップ部を有し、
前記第一リップ部は、
当該第一リップ部の延びる方向と、前記アッパーケースの前記環状凹部と前記ロワーケースの前記環状上面との隙間を介して外部から前記環状空間に向かう異物侵入方向とのなす角が狭角となるように設定されており、
前記第二リップ部は、
当該第二リップ部の延びる方向と、前記アッパーケースの前記環状凹部と前記ロワーケースの前記環状上面との隙間を介して前記環状空間から外部に向かう潤滑グリース移動方向とのなす角が狭角となるように設定されている
ことを特徴とする滑り軸受。
【請求項2】
請求項1に記載の滑り軸受であって、
前記第一リップ部は、
前記ロワーケースの前記環状上面の外周側から径方向外方に向けて軸方向下方に傾斜しながら延びて前記アッパーケースの前記環状凹部の外周側壁面と当接し、
前記第二リップ部は、
前記ロワーケースの前記環状上面の外周側から軸方向上方に向けて径方向内方に傾斜しながら延びて前記アッパーケースの前記環状凹部の底面と当接する
ことを特徴とする滑り軸受。
【請求項3】
請求項1に記載の滑り軸受であって、
前記第一リップ部は、
前記ロワーケースの前記環状上面の外周側から径方向外方に向けて軸方向下方に傾斜しながら延びて前記アッパーケースの前記環状凹部の外周側壁面と当接し、
前記第二リップ部は、
前記ロワーケースの前記環状上面の外周側から径方向外方に向けて軸方向上方に傾斜しながら延びて前記アッパーケースの前記環状凹部の側面と当接する
ことを特徴とする滑り軸受。
【請求項4】
請求項1に記載の滑り軸受であって、
前記第一リップ部は、
前記ロワーケースの前記環状上面の外周側から軸方向上方に向けて径方向外方に傾斜しながら延びて前記アッパーケースの前記環状凹部の底面と当接し、
前記第二リップ部は、
前記ロワーケースの前記環状上面の外周側から軸方向上方に向けて径方向内方に傾斜しながら延びて前記アッパーケースの前記環状凹部の底面と当接する
ことを特徴とする滑り軸受。
【請求項5】
請求項1に記載の滑り軸受であって、
前記第一リップ部は、
前記ロワーケースの前記環状上面の内周側から径方向内方に向けて軸方向下方に傾斜しながら延びて前記アッパーケースの前記環状凹部の内周側壁面と当接し、
前記第二リップ部は、
前記ロワーケースの前記環状上面の内周側から径方向内方に向けて軸方向上方に傾斜しながら延びて前記アッパーケースの前記環状凹部の内周側壁面と当接する
ことを特徴とする滑り軸受。
【請求項6】
請求項1に記載の滑り軸受であって、
前記第一リップ部は、
前記ロワーケースの前記環状上面の内周側から軸方向上方に向けて径方向内方に傾斜しながら延びて前記アッパーケースの前記環状凹部の内周側壁面に形成された段差面と当接し、
前記第二リップ部は、
前記ロワーケースの前記環状上面の内周側から軸方向上方に向けて径方向外方に傾斜しながら延びて前記アッパーケースの前記環状凹部の内周側壁面に形成された前記段差面と当接する
ことを特徴とする滑り軸受。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれか一項に記載の滑り軸受であって、
前記ダストシールは、
前記ロワーケースに一体成形されている
ことを特徴とする滑り軸受。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれか一項に記載の滑り軸受であって、
前記センタープレートと前記アッパーケースの前記環状凹部の底面あるいは前記ロワーケースの前記環状上面との間に配置された環状の摺動シートを、さらに備える
ことを特徴とする滑り軸受。
【請求項9】
請求項1ないし8のいずれか一項に記載の滑り軸受であって、
前記滑り軸受は、軸部材の回動を許容しつつ、当該軸部材に加わる荷重を支持し、
前記アッパーケースは、前記軸部材が挿入された状態で前記軸部材の支持対象に取り付けられ、
前記ロワーケースは、前記軸部材が挿入された状態で前記アッパーケースに組み合わされ、
前記センタープレートは、前記軸部材が挿入された状態で、前記環状空間に配置されて、前記アッパーケースおよび前記ロワーケース間の相対的な回動を実現する
ことを特徴とする滑り軸受。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、荷重を支持する滑り軸受に関し、特に、車両のサスペンション等の軸部材に加わる荷重を支持する滑り軸受に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の前輪に用いられるストラット式サスペンションは、ピストンロッド、ショックアブソーバ、およびコイルスプリングを組み合わせた構造を有しており、ステアリング操作によってショックアブソーバがコイルスプリングとともに回動する。このため、ショックアブソーバおよびコイルスプリングの円滑な回動を許容しつつ、ストラット式サスペンションに加わる荷重を支持するべく、通常、ストラット式サスペンションの車体への取付機構であるアッパーマウントとコイルスプリングの上端部を支持するばね座であるアッパースプリングシートとの間に、軸受が配置されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、ストラット式サスペンション用の滑り軸受が開示されている。この滑り軸受は、アッパーケースと、アッパーケースと組み合わされて環状空間を形成するロワーケースと、環状空間に配置されてアッパーケースおよびロワーケース間の回動を実現するセンタープレートと、環状空間に繋がる隙間を塞ぐダストシールと、環状空間内に充填された潤滑グリースと、を備えている。
【0004】
ここで、アッパーケースの下面には、環状凹部が形成されており、ロワーケースの上面には、アッパーケースと組み合わされることにより、アッパーケースの環状凹部に挿入されて、環状空間を形成する環状凸部が形成されている。また、ダストシールは、ロワーケースと一体的に形成され、ロワーケースの環状凸部の外周面側から径方向外方に延びてアッパーケースの環状凹部の側壁と当接するリップ部を有している。
【0005】
特許文献1に記載の滑り軸受において、ダストシールのリップ部は、ロワーケースの環状凸部の外周面側から径方向外方に向けて下方(ロワーケース側)に傾斜している。このため、アッパーケースの環状凹部とロワーケースの環状凸部との隙間を介して外部から環状空間に向かう異物侵入方向とダストシールのリップ部の延びる方向とのなす角が狭角となり、リップ部は、異物侵入方向の力に対して大きな反力を発生させてシール性を維持することができるので、異物の環状空間への侵入を効果的に防止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2017−44226号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、特許文献1に記載の滑り軸受において、スラスト方向の荷重が印加されると、環状空間内の潤滑グリースが押圧されて環状空間からこの環状空間に繋がるロワーケースの環状凸部とアッパーケースの環状凹部との隙間に移動する。しかしながら、アッパーケースの環状凹部とロワーケースの環状凸部との隙間を介して環状空間から外部に向かう潤滑グリース移動方向とダストシールのリップ部の延びる方向とのなす角が広角となるので、リップ部は、潤滑グリース移動方向の力に対して小さな反力しか発生させることができず、シール性を維持することができない。このため、環状空間に充填された潤滑グリースの外部への漏れを効果的に防止することができず、長期に亘り摺動性能を維持できない可能性がある。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、異物の侵入および潤滑グリースの漏れを防止して、長期に亘り摺動性能を維持することができる滑り軸受を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明では、アッパーケースの環状凹部の底面およびロワーケースの環状上面が対面して形成される環状空間に繋がる隙間を塞ぐダストシールに、ロワーケースの環状上面側から延びてアッパーケースの環状凹部と当接する第一リップ部および第二リップ部を設けている。そして、第一リップ部の延びる方向と異物侵入経路とのなす角が狭角となるように第一リップ部を設定するとともに、第二リップ部の延びる方向と潤滑グリース移動経路とのなす角が狭角となるように第二リップ部を設定している。
【0010】
例えば、本発明は、
荷重を支持する滑り軸受であって、
下面に環状凹部を有するアッパーケースと、
前記アッパーケースの前記環状凹部の底面と対面して環状空間を形成する環状上面を有するロワーケースと、
前記環状空間に配置されて前記アッパーケースおよび前記ロワーケース間の相対的な回動を実現するセンタープレートと、
前記環状空間に繋がる隙間を塞ぐダストシールと、を備え、
前記環状空間内には、潤滑グリースが充填され、
前記ダストシールは、
前記ロワーケースの前記環状上面側から延びて前記アッパーケースの前記環状凹部と当接する第一リップ部および第二リップ部を有し、
前記第一リップ部は、
当該第一リップ部の延びる方向と、前記アッパーケースの前記環状凹部と前記ロワーケースの前記環状上面との隙間を介して外部から前記環状空間に向かう異物侵入方向とのなす角が狭角となるように設定されており、
前記第二リップ部は、
当該第二リップの延びる方向と、前記アッパーケースの前記環状凹部と前記ロワーケースの前記環状上面との隙間を介して前記環状空間から外部に向かう潤滑グリース移動方向とのなす角が狭角となるように設定されている。
【発明の効果】
【0011】
本発明では、環状空間に繋がる隙間を塞ぐダストシールに、ロワーケースの環状上面側から延びてアッパーケースの環状凹部と当接する第一リップ部および第二リップ部を設けている。そして、第一リップの延びる方向と異物侵入方向とのなす角が狭角となるように第一リップ部を設定しているので、第一リップ部は、異物侵入方向の力に対して大きな反力を発生させてシール性を維持することができ、これにより、異物の環状空間への侵入を効果的に防止することができる。また、第二リップの延びる方向と潤滑グリース移動方向とのなす角が狭角となるように第二リップ部を設定しているので、第二リップ部は、潤滑グリース移動方向の力に対して大きな反力を発生させて、シール性を維持することができ、これにより、環状空間に充填された潤滑グリースの外部への漏れを効果的に防止することができる。したがって、本発明によれば、異物の侵入および潤滑グリースの漏れを防止して、長期に亘り摺動性能を維持することができる滑り軸受を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1(A)、図1(B)および図1(C)は、本発明の一実施の形態に係る滑り軸受1の平面図、底面図および正面図であり、図1(D)は、図1(A)に示す滑り軸受1のA−A断面図である。
図2図2(A)は、図1(D)に示す滑り軸受1のB部拡大図であり、図2(B)は、図1(D)に示す滑り軸受1のC部拡大図である。
図3図3(A)、図3(B)および図3(C)は、アッパーケース2の平面図、底面図および正面図であり、図3(D)は、図3(A)に示すアッパーケース2のD−D断面図である。
図4図4(A)、図4(B)および図4(C)は、ロワーケース3の平面図、底面図および正面図であり、図4(D)は、図4(A)に示すロワーケース3のE−E断面図である。
図5図5(A)、図5(B)および図5(C)は、センタープレート4の平面図、底面図および正面図であり、図5(D)は、図5(A)に示すセンタープレート4のF−F断面図である。
図6図6(A)は、摺動シート8の平面図であり、図6(B)は、図6(A)に示す摺動シート8のG−G断面図である。
図7図7は、本発明の一実施の形態に係る滑り軸受1の機能を説明するための図であり、図2(B)の部分拡大図である。
図8図8は、本発明の一実施の形態に係る滑り軸受1の変形例1Aを説明するための図であり、図7に相当する図である。
図9図9は、本発明の一実施の形態に係る滑り軸受1の変形例1Bを説明するための図であり、図7に相当する図である。
図10図10は、本発明の一実施の形態に係る滑り軸受1の変形例1Cを説明するための図であり、図7に相当する図である。
図11図11は、本発明の一実施の形態に係る滑り軸受1の変形例1Dを説明するための図であり、図7に相当する図である。
図12図12は、本発明の一実施の形態に係る滑り軸受1の変形例1Eを説明するための図であり、図7に相当する図である。
図13図13は、本発明の一実施の形態に係る滑り軸受1の変形例1Fを説明するための図であり、図7に相当する図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施の形態について説明する。
【0014】
図1(A)、図1(B)および図1(C)は、本実施の形態に係る滑り軸受1の平面図、底面図および正面図であり、図1(D)は、図1(A)に示す滑り軸受1のA−A矢視断面図である。また、図2(A)は、図1(D)に示す滑り軸受1のB部拡大図であり、図2(B)は、図1(D)に示す滑り軸受1のC部拡大図である。
【0015】
本実施の形態に係る滑り軸受1は、車両のサスペンション(例えばストラット式サスペンション)のショックアブソーバ(不図示)を収容するための収容孔10を備え、この収容孔10に収容されたショックアブソーバの回動を許容しつつ、サスペンションに加わる車体の荷重を支持する。
【0016】
図示するように、滑り軸受1は、アッパーケース2と、アッパーケース2と回動自在に組み合わされて、アッパーケース2との間に環状空間5を形成するロワーケース3と、この環状空間5に配置された環状のセンタープレート4および摺動シート8と、この環状空間5を密閉して、塵埃等の異物が環状空間5に侵入するのを防止する環状のダストシール6と、図示していないが、環状空間5に充填された潤滑グリースと、を備えている。
【0017】
アッパーケース2は、必要に応じて潤滑油を含浸して摺動特性を向上させたポリアセタール樹脂、ポリアミド樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂等の合成樹脂で形成され、サスペンションのショックアブソーバが挿入された状態で、サスペンションの車体への取付機構であるアッパーマウント(不図示)に取り付けられる。
【0018】
図3(A)、図3(B)および図3(C)は、アッパーケース2の平面図、底面図および正面図であり、図3(D)は、図3(A)に示すアッパーケース2のD−D断面図である。
【0019】
図示するように、アッパーケース2は、ショックアブソーバを挿入するための挿入孔20を備えた環状のアッパーケース本体21と、アッパーケース本体21の上面22に形成され、滑り軸受1をアッパーマウントに取り付けるための取付面23と、ロワーケース3に対向するアッパーケース本体21の下面24に形成され、ロワーケース3と回動自在に組み合わされることにより環状空間5を形成する環状凹部25と、を備えている。
【0020】
環状凹部25の底面26には、環状空間5の天井を構成する荷重伝達面27が形成されている。荷重伝達面27は、サスペンションに加わる車体の荷重を摺動シート8およびセンタープレート4に伝達する。また、環状凹部25の内周側壁面251には、段差面252が形成されている。
【0021】
ロワーケース3は、ポリアセタール樹脂、ポリアミド樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂等の合成樹脂を用いた樹脂成形体に、補強材であるスチールプレート7が埋め込まれたインサート成形品であり、サスペンションのショックアブソーバが挿入された状態でサスペンションのコイルスプリング(不図示)の上端部を支持するアッパースプリングシート(不図示)に取り付けられる。
【0022】
図4(A)、図4(B)および図4(C)は、ロワーケース3の平面図、底面図および正面図であり、図4(D)は、図4(A)に示すロワーケース3のE−E断面図である。
【0023】
図示するように、ロワーケース3は、ショックアブソーバを挿入するための挿入孔30を備えた筒状のロワーケース本体31と、アッパーケース2に対向するロワーケース本体31の上面32に形成され、ロワーケース3がアッパーケース2と回動自在に組み合わされた場合に、アッパーケース2のアッパーケース本体21の下面24に形成された環状凹部25に挿入されて環状空間5を形成する環状凸部33と、ロワーケース本体31の側面34から径方向外方に張り出したフランジ35と、を備えている。
【0024】
環状凸部33の上面(環状上面)330には、センタープレート4を載置するための載置面331が形成され、さらに、この載置面331の外周側には、載置面331に載置されたセンタープレート4の回転を防止するための回止め332が円周方向に等間隔で複数形成されている。
【0025】
フランジ35は、ロワーケース本体31の上面32側において、ロワーケース本体31の外周側の側面34から径方向外方に張り出しており、フランジ35の下面350がアッパースプリングシートに取り付けられる。
【0026】
ダストシール6は、必要に応じてPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、潤滑油、シリコーン等の潤滑剤が添加された、ポリオレフィン樹脂系エラストマー、ポリアミド樹脂系エラストマー、ポリエステル樹脂系エラストマー、ポリスチレン樹脂系エラストマー、ポリウレタン樹脂系エラストマー等の合成樹脂のエラストマーで形成され、二色成形あるいはインサート成形によりロワーケース3のロワーケース本体31の環状凸部33に取り付けられる(図4参照)。図2(A)および図2(B)に示すように、ダストシール6は、環状凸部33の外周側壁面333とアッパーケース2の環状凹部25の外周側壁面250との隙間を塞ぐ外側シール部60と、環状凸部33の内周側壁面334とアッパーケース2の環状凹部25の内周側壁面251との隙間を塞ぐ内側シール部61と、を備えている。
【0027】
外側シール部60は、環状凸部33の外周側壁面333に接合された筒状の外側シール本体601と、外側シール本体601から径方向外方に向かって軸O方向下方(フランジ35側)に傾斜しながら延びて、アッパーケース2の環状凹部25の外周側壁面250に撓みながら接触する環状の第一リップ部602と、外側シール本体601から軸O方向上方(アッパーケース2側)に向かって径方向内方に傾斜しながら延びて、アッパーケース2の環状凹部25の底面26に撓みながら接触する環状の第二リップ部603と、を有している。
【0028】
内側シール部61は、環状凸部33の内周側壁面334に接合された筒状の内側シール本体611と、内側シール本体611から径方向内方に向かって軸O方向上方に傾斜しながら延びて、環状凹部25の内周側壁面251に形成された段差面252に撓みながら接触する環状のリップ部612と、を有している。
【0029】
センタープレート4は、必要に応じてPTFE、潤滑油、シリコーン等の潤滑剤が添加されたポリオレフィン樹脂、ポリアミド樹脂等の摺動特性に優れた合成樹脂で形成され、ロワーケース3のロワーケース本体31に設けられた環状凸部33の載置面331に固定され、センタープレート4とアッパーケース2の環状凹部25の荷重伝達面27との間に配置された摺動シート8と摺接する。これにより、アッパーケース2およびロワーケース3間の回動を許容しつつ、アッパーケース2の環状凹部25の荷重伝達面27および摺動シート8を介して、サスペンションに加わる車体の荷重を支持する(図2参照)。
【0030】
図5(A)、図5(B)および図5(C)は、センタープレート4の平面図、底面図および正面図であり、図5(D)は、図5(A)に示すセンタープレート4のF−F断面図である。
【0031】
図示するように、センタープレート4は、環状のセンタープレート本体40と、センタープレート本体40の上面41に形成されたスラスト軸受面42と、センタープレート本体40の下面43の内周側から軸O方向に沿って下方向に張り出して形成された環状リブ44と、円周方向に等間隔に形成され、センタープレート本体40の下面43から径方向外側に突き出す複数の回止め45と、を備えている。
【0032】
スラスト軸受面42は、アッパーケース2の環状凹部25の荷重伝達面27および摺動シート8を介して加わるスラスト方向の荷重を支持しつつ、摺動シート8と摺接する。スラスト軸受面42には、潤滑グリースを保持するための潤滑グリース溝46が周方向に沿って環状に形成されている。
【0033】
環状リブ44は、センタープレート本体40の下面43とロワーケース3のロワーケース本体31に設けられた環状凸部33の載置面331とが接触するようにして、センタープレート4がロワーケース3上に載置された場合に、この環状凸部33の内側に挿入される。環状リブ44の内周面47には、アッパーケース2を介して加わるラジアル方向の荷重を支持しつつ、アッパーケース2の環状凹部25の内周側壁面251と摺接するラジアル軸受面48が形成されている。
【0034】
回止め45は、センタープレート本体40の下面43とロワーケース3のロワーケース本体31に設けられた環状凸部33の載置面331とが接触するようにして、センタープレート4がロワーケース3上に載置された場合に、この環状凸部33に設けられた回止め332同士の隙間335と円周方向に係合することにより、センタープレート4がロワーケース3に対して相対的に回転するのを防止する。
【0035】
摺動シート8は、環状空間5において、センタープレート4のスラスト軸受面42とアッパーケース2の荷重伝達面27との間に配置された摺動部材である。摺動シート8は、PTFE、TFE(テトラフルオロエチレン)に他原料(コモノマー)を微量共重合させた変性PTFE等のフッ素樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂等の合成樹脂で形成され、必要に応じてPTFE(ただし、熱可塑性プラスチックがPTFE、変性PTFEの場合を除く)、潤滑油、シリコーン、黒鉛等の潤滑剤を添加して摺動特性を向上させている。また、必要に応じてアラミド繊維、ガラス繊維、炭素繊維等の補強材を添加して強度を向上させている。あるいは、摺動シート8は、黄銅合金等の摺動特性に優れた金属で形成されていてもよい。
【0036】
図6(A)は、摺動シート8の平面図であり、図6(B)は、図6(A)に示す摺動シート8のG−G断面図である。
【0037】
図示するように、摺動シート8は、軸O方向の断面形状が平板状に形成された環状体であり、アッパーケース2の環状凹部25の荷重伝達面27と接触する接触面80と、接触面80の反対側に位置し、センタープレート4のスラスト軸受面42と摺接する摺動面81と、を備えている。摺動シート8の摺動面81がセンタープレート44のスラスト軸受面42と摺接することにより、アッパーケース2およびロワーケース3間の自在な回動が可能となる。
【0038】
上記構成を有する本実施の形態に係る滑り軸受1において、センタープレート4は、ロワーケース3のロワーケース本体31の上面32に形成された環状凸部33の載置面331に固定され、センタープレート4のスラスト軸受面42がこのスラスト軸受面42とアッパーケース2の荷重伝達面27との間に配置された摺動シート8の摺動面81と摺接する。このため、センタープレート4は、アッパーケース2およびロワーケース3間の回動を許容しつつ、アッパーマウントを介してアッパーケース4に伝達されたサスペンションに加わる車体の荷重を支持する。
【0039】
以上、本発明の一実施の形態について説明した。
【0040】
本実施の形態では、ダストシール6の外側シール部60に、それぞれ環状の第一リップ部602および第二リップ部603を設けている。ここで、第一リップ部602は、外側シール本体601から径方向外方に向かって軸O方向下方に傾斜しながら延びて、アッパーケース2の環状凹部25の外周側壁面250に撓みながら接触している。このため、図7に示すように、第一リップ部602の延びる方向と、ロワーケース3の環状凸部33の外周面333とアッパーケース2の環状凹部25の外周側壁面250との隙間を介して外部から環状空間5に向かう異物侵入方向Sinとのなす角αが狭角(10度〜45度が好ましい)となるので、第一リップ部602は、異物侵入方向Sinの力に対して大きな反力を発生させてシール性を維持することができ、これにより、異物の環状空間5への侵入を効果的に防止できる。
【0041】
また、第二リップ部603は、外側シール本体601から軸O方向上方に向かって径方向内方に傾斜しながら延びて、アッパーケース2の環状凹部25の底面26に撓みながら接触している。このため、図7に示すように、第二リップ部603の延びる方向と、ロワーケース3の環状凸部33の外周面333とアッパーケース2の環状凹部25の外周側壁面250との隙間を介して環状空間5から外部に向かう潤滑グリース移動方向Soutとのなす角βが狭角(50度〜80度が好ましい)となるので、第二リップ部603は、潤滑グリース移動方向Soutの力に対して大きな反力を発生させて、シール性を維持することができ、これにより、環状空間5に充填された潤滑グリースの外部への漏れを効果的に防止できる。
【0042】
したがって、本実施の形態によれば、異物の侵入および潤滑グリースの漏れを防止して、長期に亘り摺動性能を維持することができる。
【0043】
ここで、ダストシール6の外側シール部60において、第二リップ部603とアッパーケース2の環状凹部25とのシメシロを、第一リップ部602とアッパーケース2の環状凹部25とのシメシロよりも小さくすることが好ましい。第二リップ部603とアッパーケース2の環状凹部25とのシメシロを小さくすることにより、ダストシール6とアッパーケース2の環状凹部25との当接によるトルク上昇を抑制してアッパーケース2およびロワーケース3間の回動性を向上させることができる。なお、第二リップ部603とアッパーケース2の環状凹部25とのシメシロを小さくすることによって、環状空間5に充填された潤滑グリースが第二リップ部603から僅かに漏れた場合でも、第一リップ部602がこの漏れた潤滑グリースをシールするので、潤滑グリースの外部への漏れをより確実に防止することができる。
【0044】
また、本実施の形態では、ダストシール6の内側シール部61に、環状のリップ部612を設けている。ここで、リップ部612は、内側シール本体611から径方向内方に向かって軸O方向上方に傾斜しながら延びて、環状凹部25の内周側壁面251に形成された段差面252に撓みながら接触している。このため、図7に示すように、リップ部612の延びる方向と、ロワーケース3の環状凸部33の内周面334とアッパーケース2の環状凹部25の内周側壁面251との隙間を介して環状空間5から外部に向かう潤滑グリース移動方向Routとのなす角γが狭角(10度〜45度が好ましい)となるので、リップ部612は、潤滑グリース移動方向Routの力に対して大きな反力を発生させて、シール性を維持することができ、これにより、環状空間5に充填された潤滑グリースの外部への漏れをさらに効果的に防止できる。
【0045】
また、リップ部612は、リップ部612の延びる方向と、ロワーケース3の環状凸部33の内周面334とアッパーケース2の環状凹部25の内周側壁面251との隙間を介して外部から環状空間5に向かう異物侵入方向Rinとのなす角σが広角(例えば135度〜170度)となるが、リップ部612の先端が環状凹部25の内周側壁面251に形成された段差面252に接触しているので、リップ部612は、異物侵入方向Rinの力に対して大きな反力を発生させてシール性を維持することができ、これにより、異物の環状空間5への侵入をさらに効果的に防止できる。
【0046】
また、本実施の形態では、センタープレート4のスラスト軸受面42に潤滑グリース溝46を形成しているので、スラスト軸受面42上により多くの潤滑グリースを保持することができる。このため、スラスト軸受面42を潤滑グリース膜で覆うことができ、より長期に亘り、摺動性能を維持することができる。
【0047】
なお、本発明は、上記の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で数々の変形は可能である。
【0048】
例えば、上記実施の形態では、ダストシール6の外側シール部60において、第一リップ部602を、外側シール本体601から径方向外方に向かって軸O方向下方に傾斜しながら延びて、アッパーケース2の環状凹部25の外周側壁面250に撓みながら接触させるとともに、第二リップ部603を、外側シール本体601から軸O方向上方に向かって径方向内方に傾斜しながら延びて、アッパーケース2の環状凹部25の底面26に撓みながら接触させている。しかしながら、本発明はこれに限定されない。第一リップ部602は、第一リップ部602の延びる方向と、異物侵入方向Sinとのなす角αが狭角となるように設定されていればよく、また、第二リップ部603は、第二リップ部603の延びる方向と、潤滑グリース移動方向Soutとのなす角βが狭角となるように設定されていればよい。
【0049】
図8は、本実施の形態に係る滑り軸受1の変形例1Aを説明するための図であり、図7に相当する図である。
【0050】
この変形例1Aが本実施の形態に係る滑り軸受1と異なる点は、ダストシール6の外側シール部60において、第二リップ部603に代えて第二リップ部603aを設けたことである。第二リップ部603aは、外側シール本体601から径方向外方に向かって軸O方向上方に傾斜しながら延びて、アッパーケース2の環状凹部25の外周側壁面250に撓みながら接触している。この場合でも、第二リップ部603aの延びる方向と、ロワーケース3の環状凸部33の外周面333とアッパーケース2の環状凹部25の外周側壁面250との隙間を介して環状空間5から外部に向かう潤滑グリース移動方向Soutとのなす角βが狭角(10度〜45度が好ましい)となるので、第二リップ部603aは、潤滑グリース移動方向Soutの力に対して大きな反力を発生させて、シール性を維持することができる。
【0051】
図9は、本実施の形態に係る滑り軸受1の変形例1Bを説明するための図であり、図7に相当する図である。
【0052】
この変形例1Bが本実施の形態に係る滑り軸受1と異なる点は、ダストシール6の外側シール部60において、第一リップ部602に代えて第一リップ部602aを設けたことである。第一リップ部602aは、外側シール本体601から軸O方向上方に向かって径方向外方に傾斜しながら延びて、アッパーケース2の環状凹部25の底面26に撓みながら接触している。この場合でも、第一リップ部602aの延びる方向と、ロワーケース3の環状凸部33の外周面333とアッパーケース2の環状凹部25の外周側壁面250との隙間を介して外部から環状空間5に向かう異物侵入方向Sinとのなす角αが狭角(50度〜80度が好ましい)となるので、第一リップ部602aは、異物侵入方向Sinの力に対して大きな反力を発生させて、シール性を維持することができる。
【0053】
また、上記の実施の形態において、ダストシール6の外側シール部60の第一リップ部602および第二リップ部603と同様に、ダストシール6の内側シール部61も、リップ部を二重化してもよい。
【0054】
図10は、本実施の形態に係る滑り軸受1の変形例1Cを説明するための図であり、図7に相当する図である。
【0055】
この変形例1Cが本実施の形態に係る滑り軸受1と異なる点は、ダストシール6の内側シール部61に代えて内側シール部61aを設けたことである。また、内側シール部61aが内側シール部61と異なる点は、環状のリップ部612に代えて、それぞれ環状の第一リップ部613および第二リップ部614を設けたことである。第一リップ部613は、内側シール本体611から径方向内方に向かって軸O方向下方に傾斜しながら延びて、環状凹部25の内周側壁面251に撓みながら接触している。また、第二リップ部614は、内側シール本体611から径方向内方に向かって軸O方向上方に傾斜しながら延びて、環状凹部25の内周側壁面251に撓みながら接触している。
【0056】
この変形例1Cでは、第一リップ部613の延びる方向と、ロワーケース3の環状凸部33の内周面334とアッパーケース2の環状凹部25の内周側壁面251との隙間を介して外部から環状空間5に向かう異物侵入方向Rinとのなす角σが狭角(10度〜45度が好ましい)となるので、第一リップ部613は、異物侵入方向Rinの力に対して大きな反力を発生させて、シール性を維持することができる。また、第二リップ部614の延びる方向と、ロワーケース3の環状凸部33の内周面334とアッパーケース2の環状凹部25の内周側壁面251との隙間を介して環状空間5から外部に向かう潤滑グリース移動方向Routとのなす角γが狭角(50度〜80度が好ましい)となるので、第二リップ部614は、潤滑グリース移動方向Routの力に対して大きな反力を発生させて、シール性を維持することができる。
【0057】
図11は、本実施の形態に係る滑り軸受1の変形例1Dを説明するための図であり、図7に相当する図である。
【0058】
この変形例1Dが本実施の形態に係る滑り軸受1と異なる点は、ダストシール6の内側シール部61に代えて内側シール部61bを設けたことである。また、内側シール部61bが内側シール部61と異なる点は、環状のリップ部612に代えて、それぞれ環状の第一リップ部613aおよび第二リップ部614aを設けたことである。第一リップ部613は、内側シール本体611から軸O方向上方に向かって径方向内方に傾斜しながら延びて、環状凹部25の内周側壁面251の段差面252に撓みながら接触している。また、第二リップ部614aは、内側シール本体611から軸O方向上方に向かって径方向外方に傾斜しながら延びて、環状凹部25の内周側壁面251の段差面252に撓みながら接触している。
【0059】
この変形例1Dでも、第一リップ部613aの延びる方向と、ロワーケース3の環状凸部33の内周面334とアッパーケース2の環状凹部25の内周側壁面251との隙間を介して外部から環状空間5に向かう異物侵入方向Rinとのなす角σが狭角(50度〜80度が好ましい)となるので、第一リップ部613aは、異物侵入方向Rinの力に対して大きな反力を発生させて、シール性を維持することができる。また、第二リップ部614aの延びる方向と、ロワーケース3の環状凸部33の内周面334とアッパーケース2の環状凹部25の内周側壁面251との隙間を介して環状空間5から外部に向かう潤滑グリース移動方向Routとのなす角γが狭角(50度〜80度が好ましい)となるので、第二リップ部614aは、潤滑グリース移動方向Routの力に対して大きな反力を発生させて、シール性を維持することができる。
【0060】
また、上記の実施の形態では、センタープレート4をロワーケース3とは別体としているが、二色成形あるいはインサート成形により、センタープレート4をロワーケース3と一体的に形成してもよい。この場合、センタープレート4とダストシール6に同じ材料を用いることにより、センタープレート4とダストシール6とを一体化してもよい。
【0061】
また、上記の実施の形態では、センタープレート4において、内周面47にラジアル軸受面48が形成された環状リブ44を、センタープレート本体40の下面43の内周側から軸O方向に沿って下方向に張り出すように形成しているが、本発明はこれに限定されない。環状リブ44は、センタープレート4とは別個の部品としてもよい。あるいは、環状リブ44を省略してもよい。
【0062】
また、上記の実施の形態では、センタープレート4の上面41にスラスト軸受面42を設けるとともに、環状空間5において、センタープレート4のスラスト軸受面42とアッパーケース2の荷重伝達面27との間に摺動シート8を配置しているが、本発明はこれに限定されない。センタープレート4の下面43にスラスト軸受面42を設け、センタープレート4のスラスト軸受面42とロワーケース3の載置面330との間に摺動シート8を配置してもよい。この場合、ロワーケース3およびセンタープレート4間の回動を可能とするため、ロワーケース3、センタープレート4から回止め332、回止め45を省略する。あるいは、この摺動シート8を省略して、センタープレート4のスラスト軸受面42をアッパーケース2の荷重伝達面27あるいはロワーケース3の載置面330と直接摺接させてもよい。なお、センタープレート4のスラスト軸受面42をロワーケース3の載置面330と直接摺接させる場合も、ロワーケース3およびセンタープレート4間の回動を可能とするため、ロワーケース3、センタープレート4から回止め332、回止め45を省略する。
【0063】
また、上記の実施の形態では、ロワーケース3のロワーケース本体31の上面32に環状凸部33を設け、この環状凸部33をアッパーケース2のアッパーケース本体21の下面24に形成された環状凹部25に挿入することにより、環状空間5を形成しているが、本発明はこれに限定されない。ロワーケース3のロワーケース本体31の環状上面がアッパーケース2のアッパーケース本体21の下面24に形成された環状凹部25の底面26と対面することにより環状空間5を形成するものであればよい。
【0064】
図12は、本実施の形態に係る滑り軸受1の変形例1Eを説明するための図であり、図7に相当する図である。
【0065】
図示するように、この変形例1Eが本実施の形態に係る滑り軸受1と異なる点は、ロワーケース3、センタープレート4、およびダストシール6に代えて、ロワーケース3a、センタープレート4a、およびダストシール6aを用いたことである。
【0066】
ロワーケース3aは、筒状のロワーケース本体31と、アッパーケース2のアッパーケース本体21の下面24に形成された環状凹部25の底面26と対面して環状空間5を形成する環状上面36を有し、ロワーケース本体31の側面から径方向外方に張り出したフランジ35と、環状上面36に形成され、センタープレート4aを収容するための環状溝37と、を備えている。
【0067】
センタープレート4aは、ロワーケース3aの環状上面36に形成された環状溝37に収容可能な環状体であり、摺動シート8と摺接するスラスト軸受面42と、スラスト軸受面42に形成され、潤滑グリースを保持するための環状の潤滑グリース溝46と、を備えている。
【0068】
ダストシール6aは、ロワーケース3aのフランジ35の側面とアッパーケース2の環状凹部25の外周側壁面250との隙間を塞ぐ外側シール部60を備えており、外側シール部60は、ロワーケース3aのフランジ35の側面に接合された筒状の外側シール本体601と、外側シール本体601から軸O方向上方(アッパーケース2側)に向かって径方向外方に傾斜しながら延びて、アッパーケース2の環状凹部25の底面26に撓みながら接触する環状の第一リップ部602aと、外側シール本体601から軸O方向上方に向かって径方向内方に傾斜しながら延びて、アッパーケース2の環状凹部25の底面26に撓みながら接触する環状の第二リップ部603と、を有している。
【0069】
なお、ロワーケース3a、センタープレート4a、およびダストシール6aには、それぞれ、ロワーケース3、センタープレート4、およびダストシール6と同様の材料が用いられる。
【0070】
図13は、本実施の形態に係る滑り軸受1の変形例1Fを説明するための図であり、図7に相当する図である。
【0071】
図示するように、この変形例1Fが図12に示す滑り軸受1の変形例1Eと異なる点は、ダストシール6aに代えてダストシール6bを用いたことである。ダストシール6bは、ロワーケース3aのフランジ35の側面とアッパーケース2の環状凹部25の外周側壁面250との隙間を塞ぐ外側シール部60を備えており、外側シール部60は、ロワーケース3aのフランジ35の側面に接合された筒状の外側シール本体601と、外側シール本体601から径方向外方に向かって軸O方向下方に傾斜しながら延びて、アッパーケース2の環状凹部25の外周側壁面250に撓みながら接触する環状の第一リップ部602と、外側シール本体601から径方向外方に向かって軸O方向上方に傾斜しながら延びて、アッパーケース2の環状凹部25の外周側壁面250に撓みながら接触する環状の第二リップ部603aと、を有している。なお,ダストシール6bには、ダストシール6、6aと同様の材料が用いられる。
【0072】
また、上記の実施の形態では、インサート成形によりロワーケース3に補強材であるスチールプレート7を埋め込んでいるが、スチールプレート7は省略してもかまわない。
【0073】
本発明は、車両のサスペンションを含む様々な機構において、荷重を支持する滑り軸受に広く適用可能である。
【符号の説明】
【0074】
1,1A,1B,1C,1D,1E,1F:滑り軸受 2:アッパーケース 3,3a:ロワーケース 4,4a:センタープレート 5:環状空間 6,6a,6b:ダストシール 7:スチールプレート 8:摺動シート 10:滑り軸受1の収容孔 20:アッパーケース2の挿入孔 21:アッパーケース本体 22:アッパーケース本体21の上面 23:アッパーケース本体21の取付面 24:アッパーケース本体21の下面 25:アッパーケース本体21の環状凹部 26:環状凹部25の底面 27:アッパーケース2の荷重伝達面 30:ロワーケース3の挿入孔 31:ロワーケース本体 32:ロワーケース本体31の上面 33:ロワーケース本体31の環状凸部 34:ロワーケース本体31の側面 35:ロワーケース本体31のフランジ 36:環状上面 37:環状溝 40:センタープレート本体 41:センタープレート本体40の上面 42:スラスト軸受面 43:センタープレート本体40の下面 44:環状リブ 45:センタープレート本体40の回止め 46:スラスト軸受面42の潤滑グリース溝 47:環状リブ44の内周面 48:ラジアル軸受面 60:ダストシール6の外側シール部 61:ダストシール6の内側シール部 80:摺動シート8の接触面 81:摺動シート8の摺動面 250:環状凹部25の外周側壁面 251:環状凹部25の内周側壁面 252:内周側壁面251の段差面 330:環状凸部33の上面 331:環状凸部33の載置面 332:環状凸部33の回止め 333:環状凸部33の外周側壁面 334:環状凸部33の内周側壁面 335:回止め332同士の隙間 350:フランジ35の下面 601:外側シール本体 602,602a:外側シール部60の第一リップ部 603,603a:外側シール部60の第二リップ部 611:内側シール本体 612:内側シール部61のリップ部 613,613a:内側シール部61の第一リップ部 614,614a:内側シール部61の第二リップ部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13