【解決手段】アッパーケース2の環状凹部25に、ロワーケース3の環状凸部33が挿入されて形成される環状空間5に繋がる隙間を塞ぐダストシール6に、ロワーケース3の環状凸部33側から延びてアッパーケース2の環状凹部25と当接する第一リップ部602および第二リップ部603を設けている。そして、第一リップ部602の延びる方向と異物侵入経路とのなす角αが狭角となるように第一リップ部602を設定するとともに、第二リップ部603の延びる方向と潤滑グリース移動経路Soutとのなす角βが狭角となるように第二リップ部603を設定している。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施の形態について説明する。
【0014】
図1(A)、
図1(B)および
図1(C)は、本実施の形態に係る滑り軸受1の平面図、底面図および正面図であり、
図1(D)は、
図1(A)に示す滑り軸受1のA−A矢視断面図である。また、
図2(A)は、
図1(D)に示す滑り軸受1のB部拡大図であり、
図2(B)は、
図1(D)に示す滑り軸受1のC部拡大図である。
【0015】
本実施の形態に係る滑り軸受1は、車両のサスペンション(例えばストラット式サスペンション)のショックアブソーバ(不図示)を収容するための収容孔10を備え、この収容孔10に収容されたショックアブソーバの回動を許容しつつ、サスペンションに加わる車体の荷重を支持する。
【0016】
図示するように、滑り軸受1は、アッパーケース2と、アッパーケース2と回動自在に組み合わされて、アッパーケース2との間に環状空間5を形成するロワーケース3と、この環状空間5に配置された環状のセンタープレート4および摺動シート8と、この環状空間5を密閉して、塵埃等の異物が環状空間5に侵入するのを防止する環状のダストシール6と、図示していないが、環状空間5に充填された潤滑グリースと、を備えている。
【0017】
アッパーケース2は、必要に応じて潤滑油を含浸して摺動特性を向上させたポリアセタール樹脂、ポリアミド樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂等の合成樹脂で形成され、サスペンションのショックアブソーバが挿入された状態で、サスペンションの車体への取付機構であるアッパーマウント(不図示)に取り付けられる。
【0018】
図3(A)、
図3(B)および
図3(C)は、アッパーケース2の平面図、底面図および正面図であり、
図3(D)は、
図3(A)に示すアッパーケース2のD−D断面図である。
【0019】
図示するように、アッパーケース2は、ショックアブソーバを挿入するための挿入孔20を備えた環状のアッパーケース本体21と、アッパーケース本体21の上面22に形成され、滑り軸受1をアッパーマウントに取り付けるための取付面23と、ロワーケース3に対向するアッパーケース本体21の下面24に形成され、ロワーケース3と回動自在に組み合わされることにより環状空間5を形成する環状凹部25と、を備えている。
【0020】
環状凹部25の底面26には、環状空間5の天井を構成する荷重伝達面27が形成されている。荷重伝達面27は、サスペンションに加わる車体の荷重を摺動シート8およびセンタープレート4に伝達する。また、環状凹部25の内周側壁面251には、段差面252が形成されている。
【0021】
ロワーケース3は、ポリアセタール樹脂、ポリアミド樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂等の合成樹脂を用いた樹脂成形体に、補強材であるスチールプレート7が埋め込まれたインサート成形品であり、サスペンションのショックアブソーバが挿入された状態でサスペンションのコイルスプリング(不図示)の上端部を支持するアッパースプリングシート(不図示)に取り付けられる。
【0022】
図4(A)、
図4(B)および
図4(C)は、ロワーケース3の平面図、底面図および正面図であり、
図4(D)は、
図4(A)に示すロワーケース3のE−E断面図である。
【0023】
図示するように、ロワーケース3は、ショックアブソーバを挿入するための挿入孔30を備えた筒状のロワーケース本体31と、アッパーケース2に対向するロワーケース本体31の上面32に形成され、ロワーケース3がアッパーケース2と回動自在に組み合わされた場合に、アッパーケース2のアッパーケース本体21の下面24に形成された環状凹部25に挿入されて環状空間5を形成する環状凸部33と、ロワーケース本体31の側面34から径方向外方に張り出したフランジ35と、を備えている。
【0024】
環状凸部33の上面(環状上面)330には、センタープレート4を載置するための載置面331が形成され、さらに、この載置面331の外周側には、載置面331に載置されたセンタープレート4の回転を防止するための回止め332が円周方向に等間隔で複数形成されている。
【0025】
フランジ35は、ロワーケース本体31の上面32側において、ロワーケース本体31の外周側の側面34から径方向外方に張り出しており、フランジ35の下面350がアッパースプリングシートに取り付けられる。
【0026】
ダストシール6は、必要に応じてPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、潤滑油、シリコーン等の潤滑剤が添加された、ポリオレフィン樹脂系エラストマー、ポリアミド樹脂系エラストマー、ポリエステル樹脂系エラストマー、ポリスチレン樹脂系エラストマー、ポリウレタン樹脂系エラストマー等の合成樹脂のエラストマーで形成され、二色成形あるいはインサート成形によりロワーケース3のロワーケース本体31の環状凸部33に取り付けられる(
図4参照)。
図2(A)および
図2(B)に示すように、ダストシール6は、環状凸部33の外周側壁面333とアッパーケース2の環状凹部25の外周側壁面250との隙間を塞ぐ外側シール部60と、環状凸部33の内周側壁面334とアッパーケース2の環状凹部25の内周側壁面251との隙間を塞ぐ内側シール部61と、を備えている。
【0027】
外側シール部60は、環状凸部33の外周側壁面333に接合された筒状の外側シール本体601と、外側シール本体601から径方向外方に向かって軸O方向下方(フランジ35側)に傾斜しながら延びて、アッパーケース2の環状凹部25の外周側壁面250に撓みながら接触する環状の第一リップ部602と、外側シール本体601から軸O方向上方(アッパーケース2側)に向かって径方向内方に傾斜しながら延びて、アッパーケース2の環状凹部25の底面26に撓みながら接触する環状の第二リップ部603と、を有している。
【0028】
内側シール部61は、環状凸部33の内周側壁面334に接合された筒状の内側シール本体611と、内側シール本体611から径方向内方に向かって軸O方向上方に傾斜しながら延びて、環状凹部25の内周側壁面251に形成された段差面252に撓みながら接触する環状のリップ部612と、を有している。
【0029】
センタープレート4は、必要に応じてPTFE、潤滑油、シリコーン等の潤滑剤が添加されたポリオレフィン樹脂、ポリアミド樹脂等の摺動特性に優れた合成樹脂で形成され、ロワーケース3のロワーケース本体31に設けられた環状凸部33の載置面331に固定され、センタープレート4とアッパーケース2の環状凹部25の荷重伝達面27との間に配置された摺動シート8と摺接する。これにより、アッパーケース2およびロワーケース3間の回動を許容しつつ、アッパーケース2の環状凹部25の荷重伝達面27および摺動シート8を介して、サスペンションに加わる車体の荷重を支持する(
図2参照)。
【0030】
図5(A)、
図5(B)および
図5(C)は、センタープレート4の平面図、底面図および正面図であり、
図5(D)は、
図5(A)に示すセンタープレート4のF−F断面図である。
【0031】
図示するように、センタープレート4は、環状のセンタープレート本体40と、センタープレート本体40の上面41に形成されたスラスト軸受面42と、センタープレート本体40の下面43の内周側から軸O方向に沿って下方向に張り出して形成された環状リブ44と、円周方向に等間隔に形成され、センタープレート本体40の下面43から径方向外側に突き出す複数の回止め45と、を備えている。
【0032】
スラスト軸受面42は、アッパーケース2の環状凹部25の荷重伝達面27および摺動シート8を介して加わるスラスト方向の荷重を支持しつつ、摺動シート8と摺接する。スラスト軸受面42には、潤滑グリースを保持するための潤滑グリース溝46が周方向に沿って環状に形成されている。
【0033】
環状リブ44は、センタープレート本体40の下面43とロワーケース3のロワーケース本体31に設けられた環状凸部33の載置面331とが接触するようにして、センタープレート4がロワーケース3上に載置された場合に、この環状凸部33の内側に挿入される。環状リブ44の内周面47には、アッパーケース2を介して加わるラジアル方向の荷重を支持しつつ、アッパーケース2の環状凹部25の内周側壁面251と摺接するラジアル軸受面48が形成されている。
【0034】
回止め45は、センタープレート本体40の下面43とロワーケース3のロワーケース本体31に設けられた環状凸部33の載置面331とが接触するようにして、センタープレート4がロワーケース3上に載置された場合に、この環状凸部33に設けられた回止め332同士の隙間335と円周方向に係合することにより、センタープレート4がロワーケース3に対して相対的に回転するのを防止する。
【0035】
摺動シート8は、環状空間5において、センタープレート4のスラスト軸受面42とアッパーケース2の荷重伝達面27との間に配置された摺動部材である。摺動シート8は、PTFE、TFE(テトラフルオロエチレン)に他原料(コモノマー)を微量共重合させた変性PTFE等のフッ素樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂等の合成樹脂で形成され、必要に応じてPTFE(ただし、熱可塑性プラスチックがPTFE、変性PTFEの場合を除く)、潤滑油、シリコーン、黒鉛等の潤滑剤を添加して摺動特性を向上させている。また、必要に応じてアラミド繊維、ガラス繊維、炭素繊維等の補強材を添加して強度を向上させている。あるいは、摺動シート8は、黄銅合金等の摺動特性に優れた金属で形成されていてもよい。
【0036】
図6(A)は、摺動シート8の平面図であり、
図6(B)は、
図6(A)に示す摺動シート8のG−G断面図である。
【0037】
図示するように、摺動シート8は、軸O方向の断面形状が平板状に形成された環状体であり、アッパーケース2の環状凹部25の荷重伝達面27と接触する接触面80と、接触面80の反対側に位置し、センタープレート4のスラスト軸受面42と摺接する摺動面81と、を備えている。摺動シート8の摺動面81がセンタープレート44のスラスト軸受面42と摺接することにより、アッパーケース2およびロワーケース3間の自在な回動が可能となる。
【0038】
上記構成を有する本実施の形態に係る滑り軸受1において、センタープレート4は、ロワーケース3のロワーケース本体31の上面32に形成された環状凸部33の載置面331に固定され、センタープレート4のスラスト軸受面42がこのスラスト軸受面42とアッパーケース2の荷重伝達面27との間に配置された摺動シート8の摺動面81と摺接する。このため、センタープレート4は、アッパーケース2およびロワーケース3間の回動を許容しつつ、アッパーマウントを介してアッパーケース4に伝達されたサスペンションに加わる車体の荷重を支持する。
【0039】
以上、本発明の一実施の形態について説明した。
【0040】
本実施の形態では、ダストシール6の外側シール部60に、それぞれ環状の第一リップ部602および第二リップ部603を設けている。ここで、第一リップ部602は、外側シール本体601から径方向外方に向かって軸O方向下方に傾斜しながら延びて、アッパーケース2の環状凹部25の外周側壁面250に撓みながら接触している。このため、
図7に示すように、第一リップ部602の延びる方向と、ロワーケース3の環状凸部33の外周面333とアッパーケース2の環状凹部25の外周側壁面250との隙間を介して外部から環状空間5に向かう異物侵入方向Sinとのなす角αが狭角(10度〜45度が好ましい)となるので、第一リップ部602は、異物侵入方向Sinの力に対して大きな反力を発生させてシール性を維持することができ、これにより、異物の環状空間5への侵入を効果的に防止できる。
【0041】
また、第二リップ部603は、外側シール本体601から軸O方向上方に向かって径方向内方に傾斜しながら延びて、アッパーケース2の環状凹部25の底面26に撓みながら接触している。このため、
図7に示すように、第二リップ部603の延びる方向と、ロワーケース3の環状凸部33の外周面333とアッパーケース2の環状凹部25の外周側壁面250との隙間を介して環状空間5から外部に向かう潤滑グリース移動方向Soutとのなす角βが狭角(50度〜80度が好ましい)となるので、第二リップ部603は、潤滑グリース移動方向Soutの力に対して大きな反力を発生させて、シール性を維持することができ、これにより、環状空間5に充填された潤滑グリースの外部への漏れを効果的に防止できる。
【0042】
したがって、本実施の形態によれば、異物の侵入および潤滑グリースの漏れを防止して、長期に亘り摺動性能を維持することができる。
【0043】
ここで、ダストシール6の外側シール部60において、第二リップ部603とアッパーケース2の環状凹部25とのシメシロを、第一リップ部602とアッパーケース2の環状凹部25とのシメシロよりも小さくすることが好ましい。第二リップ部603とアッパーケース2の環状凹部25とのシメシロを小さくすることにより、ダストシール6とアッパーケース2の環状凹部25との当接によるトルク上昇を抑制してアッパーケース2およびロワーケース3間の回動性を向上させることができる。なお、第二リップ部603とアッパーケース2の環状凹部25とのシメシロを小さくすることによって、環状空間5に充填された潤滑グリースが第二リップ部603から僅かに漏れた場合でも、第一リップ部602がこの漏れた潤滑グリースをシールするので、潤滑グリースの外部への漏れをより確実に防止することができる。
【0044】
また、本実施の形態では、ダストシール6の内側シール部61に、環状のリップ部612を設けている。ここで、リップ部612は、内側シール本体611から径方向内方に向かって軸O方向上方に傾斜しながら延びて、環状凹部25の内周側壁面251に形成された段差面252に撓みながら接触している。このため、
図7に示すように、リップ部612の延びる方向と、ロワーケース3の環状凸部33の内周面334とアッパーケース2の環状凹部25の内周側壁面251との隙間を介して環状空間5から外部に向かう潤滑グリース移動方向Routとのなす角γが狭角(10度〜45度が好ましい)となるので、リップ部612は、潤滑グリース移動方向Routの力に対して大きな反力を発生させて、シール性を維持することができ、これにより、環状空間5に充填された潤滑グリースの外部への漏れをさらに効果的に防止できる。
【0045】
また、リップ部612は、リップ部612の延びる方向と、ロワーケース3の環状凸部33の内周面334とアッパーケース2の環状凹部25の内周側壁面251との隙間を介して外部から環状空間5に向かう異物侵入方向Rinとのなす角σが広角(例えば135度〜170度)となるが、リップ部612の先端が環状凹部25の内周側壁面251に形成された段差面252に接触しているので、リップ部612は、異物侵入方向Rinの力に対して大きな反力を発生させてシール性を維持することができ、これにより、異物の環状空間5への侵入をさらに効果的に防止できる。
【0046】
また、本実施の形態では、センタープレート4のスラスト軸受面42に潤滑グリース溝46を形成しているので、スラスト軸受面42上により多くの潤滑グリースを保持することができる。このため、スラスト軸受面42を潤滑グリース膜で覆うことができ、より長期に亘り、摺動性能を維持することができる。
【0047】
なお、本発明は、上記の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で数々の変形は可能である。
【0048】
例えば、上記実施の形態では、ダストシール6の外側シール部60において、第一リップ部602を、外側シール本体601から径方向外方に向かって軸O方向下方に傾斜しながら延びて、アッパーケース2の環状凹部25の外周側壁面250に撓みながら接触させるとともに、第二リップ部603を、外側シール本体601から軸O方向上方に向かって径方向内方に傾斜しながら延びて、アッパーケース2の環状凹部25の底面26に撓みながら接触させている。しかしながら、本発明はこれに限定されない。第一リップ部602は、第一リップ部602の延びる方向と、異物侵入方向Sinとのなす角αが狭角となるように設定されていればよく、また、第二リップ部603は、第二リップ部603の延びる方向と、潤滑グリース移動方向Soutとのなす角βが狭角となるように設定されていればよい。
【0049】
図8は、本実施の形態に係る滑り軸受1の変形例1Aを説明するための図であり、
図7に相当する図である。
【0050】
この変形例1Aが本実施の形態に係る滑り軸受1と異なる点は、ダストシール6の外側シール部60において、第二リップ部603に代えて第二リップ部603aを設けたことである。第二リップ部603aは、外側シール本体601から径方向外方に向かって軸O方向上方に傾斜しながら延びて、アッパーケース2の環状凹部25の外周側壁面250に撓みながら接触している。この場合でも、第二リップ部603aの延びる方向と、ロワーケース3の環状凸部33の外周面333とアッパーケース2の環状凹部25の外周側壁面250との隙間を介して環状空間5から外部に向かう潤滑グリース移動方向Soutとのなす角βが狭角(10度〜45度が好ましい)となるので、第二リップ部603aは、潤滑グリース移動方向Soutの力に対して大きな反力を発生させて、シール性を維持することができる。
【0051】
図9は、本実施の形態に係る滑り軸受1の変形例1Bを説明するための図であり、
図7に相当する図である。
【0052】
この変形例1Bが本実施の形態に係る滑り軸受1と異なる点は、ダストシール6の外側シール部60において、第一リップ部602に代えて第一リップ部602aを設けたことである。第一リップ部602aは、外側シール本体601から軸O方向上方に向かって径方向外方に傾斜しながら延びて、アッパーケース2の環状凹部25の底面26に撓みながら接触している。この場合でも、第一リップ部602aの延びる方向と、ロワーケース3の環状凸部33の外周面333とアッパーケース2の環状凹部25の外周側壁面250との隙間を介して外部から環状空間5に向かう異物侵入方向Sinとのなす角αが狭角(50度〜80度が好ましい)となるので、第一リップ部602aは、異物侵入方向Sinの力に対して大きな反力を発生させて、シール性を維持することができる。
【0053】
また、上記の実施の形態において、ダストシール6の外側シール部60の第一リップ部602および第二リップ部603と同様に、ダストシール6の内側シール部61も、リップ部を二重化してもよい。
【0054】
図10は、本実施の形態に係る滑り軸受1の変形例1Cを説明するための図であり、
図7に相当する図である。
【0055】
この変形例1Cが本実施の形態に係る滑り軸受1と異なる点は、ダストシール6の内側シール部61に代えて内側シール部61aを設けたことである。また、内側シール部61aが内側シール部61と異なる点は、環状のリップ部612に代えて、それぞれ環状の第一リップ部613および第二リップ部614を設けたことである。第一リップ部613は、内側シール本体611から径方向内方に向かって軸O方向下方に傾斜しながら延びて、環状凹部25の内周側壁面251に撓みながら接触している。また、第二リップ部614は、内側シール本体611から径方向内方に向かって軸O方向上方に傾斜しながら延びて、環状凹部25の内周側壁面251に撓みながら接触している。
【0056】
この変形例1Cでは、第一リップ部613の延びる方向と、ロワーケース3の環状凸部33の内周面334とアッパーケース2の環状凹部25の内周側壁面251との隙間を介して外部から環状空間5に向かう異物侵入方向Rinとのなす角σが狭角(10度〜45度が好ましい)となるので、第一リップ部613は、異物侵入方向Rinの力に対して大きな反力を発生させて、シール性を維持することができる。また、第二リップ部614の延びる方向と、ロワーケース3の環状凸部33の内周面334とアッパーケース2の環状凹部25の内周側壁面251との隙間を介して環状空間5から外部に向かう潤滑グリース移動方向Routとのなす角γが狭角(50度〜80度が好ましい)となるので、第二リップ部614は、潤滑グリース移動方向Routの力に対して大きな反力を発生させて、シール性を維持することができる。
【0057】
図11は、本実施の形態に係る滑り軸受1の変形例1Dを説明するための図であり、
図7に相当する図である。
【0058】
この変形例1Dが本実施の形態に係る滑り軸受1と異なる点は、ダストシール6の内側シール部61に代えて内側シール部61bを設けたことである。また、内側シール部61bが内側シール部61と異なる点は、環状のリップ部612に代えて、それぞれ環状の第一リップ部613aおよび第二リップ部614aを設けたことである。第一リップ部613は、内側シール本体611から軸O方向上方に向かって径方向内方に傾斜しながら延びて、環状凹部25の内周側壁面251の段差面252に撓みながら接触している。また、第二リップ部614aは、内側シール本体611から軸O方向上方に向かって径方向外方に傾斜しながら延びて、環状凹部25の内周側壁面251の段差面252に撓みながら接触している。
【0059】
この変形例1Dでも、第一リップ部613aの延びる方向と、ロワーケース3の環状凸部33の内周面334とアッパーケース2の環状凹部25の内周側壁面251との隙間を介して外部から環状空間5に向かう異物侵入方向Rinとのなす角σが狭角(50度〜80度が好ましい)となるので、第一リップ部613aは、異物侵入方向Rinの力に対して大きな反力を発生させて、シール性を維持することができる。また、第二リップ部614aの延びる方向と、ロワーケース3の環状凸部33の内周面334とアッパーケース2の環状凹部25の内周側壁面251との隙間を介して環状空間5から外部に向かう潤滑グリース移動方向Routとのなす角γが狭角(50度〜80度が好ましい)となるので、第二リップ部614aは、潤滑グリース移動方向Routの力に対して大きな反力を発生させて、シール性を維持することができる。
【0060】
また、上記の実施の形態では、センタープレート4をロワーケース3とは別体としているが、二色成形あるいはインサート成形により、センタープレート4をロワーケース3と一体的に形成してもよい。この場合、センタープレート4とダストシール6に同じ材料を用いることにより、センタープレート4とダストシール6とを一体化してもよい。
【0061】
また、上記の実施の形態では、センタープレート4において、内周面47にラジアル軸受面48が形成された環状リブ44を、センタープレート本体40の下面43の内周側から軸O方向に沿って下方向に張り出すように形成しているが、本発明はこれに限定されない。環状リブ44は、センタープレート4とは別個の部品としてもよい。あるいは、環状リブ44を省略してもよい。
【0062】
また、上記の実施の形態では、センタープレート4の上面41にスラスト軸受面42を設けるとともに、環状空間5において、センタープレート4のスラスト軸受面42とアッパーケース2の荷重伝達面27との間に摺動シート8を配置しているが、本発明はこれに限定されない。センタープレート4の下面43にスラスト軸受面42を設け、センタープレート4のスラスト軸受面42とロワーケース3の載置面330との間に摺動シート8を配置してもよい。この場合、ロワーケース3およびセンタープレート4間の回動を可能とするため、ロワーケース3、センタープレート4から回止め332、回止め45を省略する。あるいは、この摺動シート8を省略して、センタープレート4のスラスト軸受面42をアッパーケース2の荷重伝達面27あるいはロワーケース3の載置面330と直接摺接させてもよい。なお、センタープレート4のスラスト軸受面42をロワーケース3の載置面330と直接摺接させる場合も、ロワーケース3およびセンタープレート4間の回動を可能とするため、ロワーケース3、センタープレート4から回止め332、回止め45を省略する。
【0063】
また、上記の実施の形態では、ロワーケース3のロワーケース本体31の上面32に環状凸部33を設け、この環状凸部33をアッパーケース2のアッパーケース本体21の下面24に形成された環状凹部25に挿入することにより、環状空間5を形成しているが、本発明はこれに限定されない。ロワーケース3のロワーケース本体31の環状上面がアッパーケース2のアッパーケース本体21の下面24に形成された環状凹部25の底面26と対面することにより環状空間5を形成するものであればよい。
【0064】
図12は、本実施の形態に係る滑り軸受1の変形例1Eを説明するための図であり、
図7に相当する図である。
【0065】
図示するように、この変形例1Eが本実施の形態に係る滑り軸受1と異なる点は、ロワーケース3、センタープレート4、およびダストシール6に代えて、ロワーケース3a、センタープレート4a、およびダストシール6aを用いたことである。
【0066】
ロワーケース3aは、筒状のロワーケース本体31と、アッパーケース2のアッパーケース本体21の下面24に形成された環状凹部25の底面26と対面して環状空間5を形成する環状上面36を有し、ロワーケース本体31の側面から径方向外方に張り出したフランジ35と、環状上面36に形成され、センタープレート4aを収容するための環状溝37と、を備えている。
【0067】
センタープレート4aは、ロワーケース3aの環状上面36に形成された環状溝37に収容可能な環状体であり、摺動シート8と摺接するスラスト軸受面42と、スラスト軸受面42に形成され、潤滑グリースを保持するための環状の潤滑グリース溝46と、を備えている。
【0068】
ダストシール6aは、ロワーケース3aのフランジ35の側面とアッパーケース2の環状凹部25の外周側壁面250との隙間を塞ぐ外側シール部60を備えており、外側シール部60は、ロワーケース3aのフランジ35の側面に接合された筒状の外側シール本体601と、外側シール本体601から軸O方向上方(アッパーケース2側)に向かって径方向外方に傾斜しながら延びて、アッパーケース2の環状凹部25の底面26に撓みながら接触する環状の第一リップ部602aと、外側シール本体601から軸O方向上方に向かって径方向内方に傾斜しながら延びて、アッパーケース2の環状凹部25の底面26に撓みながら接触する環状の第二リップ部603と、を有している。
【0069】
なお、ロワーケース3a、センタープレート4a、およびダストシール6aには、それぞれ、ロワーケース3、センタープレート4、およびダストシール6と同様の材料が用いられる。
【0070】
図13は、本実施の形態に係る滑り軸受1の変形例1Fを説明するための図であり、
図7に相当する図である。
【0071】
図示するように、この変形例1Fが
図12に示す滑り軸受1の変形例1Eと異なる点は、ダストシール6aに代えてダストシール6bを用いたことである。ダストシール6bは、ロワーケース3aのフランジ35の側面とアッパーケース2の環状凹部25の外周側壁面250との隙間を塞ぐ外側シール部60を備えており、外側シール部60は、ロワーケース3aのフランジ35の側面に接合された筒状の外側シール本体601と、外側シール本体601から径方向外方に向かって軸O方向下方に傾斜しながら延びて、アッパーケース2の環状凹部25の外周側壁面250に撓みながら接触する環状の第一リップ部602と、外側シール本体601から径方向外方に向かって軸O方向上方に傾斜しながら延びて、アッパーケース2の環状凹部25の外周側壁面250に撓みながら接触する環状の第二リップ部603aと、を有している。なお,ダストシール6bには、ダストシール6、6aと同様の材料が用いられる。
【0072】
また、上記の実施の形態では、インサート成形によりロワーケース3に補強材であるスチールプレート7を埋め込んでいるが、スチールプレート7は省略してもかまわない。
【0073】
本発明は、車両のサスペンションを含む様々な機構において、荷重を支持する滑り軸受に広く適用可能である。