【解決手段】下面24に環状凹部25を有するアッパーケース2と、上面32にアッパーケース2の環状凹部5に挿入されて環状空間5を形成する環状凸部33を有するロワーケース3と、環状空間5に配置されてアッパーケース2およびロワーケース3間の相対的な回動を実現するセンタープレート4と、環状空間5に繋がる隙間を塞ぐダストシール6と、を備える。ダストシール6の外側シール部60は、ロワーケース3の環状凸部33から軸O方向上方に延びてアッパーケース2の環状凹部25の底面26と当接するリップ部603を有している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1に記載の滑り軸受において、ダストシールは、リップ部がロワーケースの環状凸部の外周面側から径方向外方に延びてアッパーケースの環状凹部の側壁と当接することにより、環状空間に繋がる隙間を塞いでいる。このため、ストラット式サスペンションを介して車体から滑り軸受に伝わる振動や滑り軸受に加わるラジアル方向の荷重により、滑り軸受のラジアル方向において、アッパーケースおよびロワーケースが相対的に反対方向に移動した場合でも、ダストシールのリップ部がアッパーケースの環状凹部の側壁と確実に当接するようにするために、アッパーケースの環状凹部の側壁とロワーケースの環状凸部の外周面との隙間に対して、ダストシールのリップ部を十分に長めに形成する必要がある。
【0007】
しかしながら、アッパーケースの環状凹部の側壁とロワーケースの環状凸部の外周面との隙間に対して、ダストシールのリップ部を長くしすぎると、アッパーケースをダストシールが一体的に形成されたロワーケースと組み合わせる際に大きな力が必要となり、滑り軸受の組み立ての作業性が悪化する。また、アッパーケースの環状凹部の側壁に対するダストシールのリップ部の圧接力が大きくなり、アッパーケースおよびロワーケース間の円滑な回動が阻害される。
【0008】
加えて、リップ部を径方向に弾性変形可能とするために、アッパーケースの環状凹部の側壁とロワーケースの環状凸部の外周面との隙間をある程度大きくする必要があり、その分、滑り軸受の径方向のサイズが大きくなる。
【0009】
さらには、ダストシールの軸方向に相対的に移動する上下型でダストシールを形成する際、リップ部が上下型の移動方向とは異なる方向(径方向)に延びているので、ダストシールを金型から引き抜くときにリップ部が変形し易いという問題もある。
【0010】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、ダストシールを有しつつも、組み立て作業性に優れ、小型化を図ることができ、かつ摺動性能に優れた滑り軸受を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明では、アッパーケースの下面に形成された環状凹部の底面およびロワーケースの環状上面が対面して形成される環状空間に繋がる隙間を塞ぐダストシールに、ロワーケースの環状上面側から軸方向上方に延びてアッパーケースの環状凹部の底面と当接するリップ部を設けている。
【0012】
例えば、本発明は、
荷重を支持する滑り軸受であって、
下面に環状凹部を有するアッパーケースと、
前記アッパーケースの前記環状凹部の底面と対面して環状空間を形成する環状上面を有するロワーケースと、
前記環状空間に配置されて前記アッパーケースおよび前記ロワーケース間の相対的な回動を実現するセンタープレートと、
前記環状空間に繋がる隙間を塞ぐダストシールと、を備え、
前記ダストシールは、
前記ロワーケースの前記環状上面から軸方向上方に延びて前記アッパーケースの前記環状凹部の前記底面と当接するリップ部を有する。
【発明の効果】
【0013】
本発明では、ダストシールのリップ部がロワーケースの環状上面側から軸方向上方に延びてアッパーケースの環状凹部の底面と当接することにより、環状空間に繋がる隙間を塞いでいるので、アッパーケースの環状凹部の底面とロワーケースの環状上面との隙間に対して、ダストシールのリップ部を必要以上に長めに形成しなくても、滑り軸受にスラスト方向の荷重が加わることで、ダストシールのリップ部がアッパーケースの環状凹部の底面と確実に当接する。このため、アッパーケースをダストシールが取り付けられたロワーケースと組み合わせる際に大きな力は不要であり、滑り軸受の組み立ての作業性が向上する。また、アッパーケースの環状凹部の底面に対するダストシールのリップ部の圧接力の増加を抑制でき、これにより、アッパーケースおよびロワーケース間の円滑な回動が阻害されるのを防止することができる。さらには、ダストシールのリップ部がアッパーケースの環状凹部の底面との摺動により摩耗した場合でも、滑り軸受にスラスト方向の荷重が加わることで、ダストシールのリップ部をアッパーケースの環状凹部の底面と確実に当接させることができ、シール性が低下しないため、アッパーケースの環状凹部とダストシールとのシメシロを小さくすることができ、これにより、アッパーケースおよびロワーケース間の回動性を向上させることができる。
【0014】
加えて、リップ部は軸方向に弾性変形可能であればよいので、アッパーケースの環状凹部の側壁とロワーケースの環状凸部の外周面との隙間を大きくする必要がなく、その分、滑り軸受の径方向のサイズを小さくすることができる。
【0015】
さらには、ダストシールの軸方向に相対的に移動する上下型でダストシールを形成する際、リップ部が上下型の移動方向と同じ方向に延びているので、ダストシールを金型から引き抜くときに生じるリップ部の変形を抑制して、ダストシールの性能を安定させることができる。
【0016】
したがって、本発明によれば、ダストシールを有しつつも、組み立て作業性に優れ、小型化を図ることができ、かつ摺動性能に優れた滑り軸受を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の一実施の形態について説明する。
【0019】
図1(A)、
図1(B)および
図1(C)は、本実施の形態に係る滑り軸受1の平面図、底面図および正面図であり、
図1(D)は、
図1(A)に示す滑り軸受1のA−A矢視断面図である。また、
図2(A)は、
図1(D)に示す滑り軸受1のB部拡大図であり、
図2(B)は、
図1(D)に示す滑り軸受1のC部拡大図である。
【0020】
本実施の形態に係る滑り軸受1は、車両のサスペンション(例えばストラット式サスペンション)のショックアブソーバ(不図示)を収容するための収容孔10を備え、この収容孔10に収容されたショックアブソーバの回動を許容しつつ、サスペンションに加わる車体の荷重を支持する。
【0021】
図示するように、滑り軸受1は、アッパーケース2と、アッパーケース2と回動自在に組み合わされて、アッパーケース2との間に環状空間5を形成するロワーケース3と、この環状空間5に配置された環状のセンタープレート4および摺動シート8と、この環状空間5を密閉して、塵埃等の異物が環状空間5に侵入するのを防止する環状のダストシール6と、図示していないが、環状空間5に充填された潤滑グリースと、を備えている。
【0022】
アッパーケース2は、必要に応じて潤滑油を含浸して摺動特性を向上させたポリアセタール樹脂、ポリアミド樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂等の合成樹脂で形成され、サスペンションのショックアブソーバが挿入された状態で、サスペンションの車体への取付機構であるアッパーマウント(不図示)に取り付けられる。
【0023】
図3(A)、
図3(B)および
図3(C)は、アッパーケース2の平面図、底面図および正面図であり、
図3(D)は、
図3(A)に示すアッパーケース2のD−D断面図である。
【0024】
図示するように、アッパーケース2は、ショックアブソーバを挿入するための挿入孔20を備えた環状のアッパーケース本体21と、アッパーケース本体21の上面22に形成され、滑り軸受1をアッパーマウントに取り付けるための取付面23と、ロワーケース3に対向するアッパーケース本体21の下面24に形成され、ロワーケース3と回動自在に組み合わされることにより環状空間5を形成する環状凹部25と、を備えている。
【0025】
環状凹部25の底面26には、環状空間5の天井を構成する荷重伝達面27が形成されている。荷重伝達面27は、サスペンションに加わる車体の荷重を摺動シート8およびセンタープレート4に伝達する。また、環状凹部25の内周側壁面251には、段差面252が形成されている。
【0026】
ロワーケース3は、ポリアセタール樹脂、ポリアミド樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂等の合成樹脂を用いた樹脂成形体に、補強材であるスチールプレート7が埋め込まれたインサート成形品であり、サスペンションのショックアブソーバが挿入された状態でサスペンションのコイルスプリング(不図示)の上端部を支持するアッパースプリングシート(不図示)に取り付けられる。
【0027】
図4(A)、
図4(B)および
図4(C)は、ロワーケース3の平面図、底面図および正面図であり、
図4(D)は、
図4(A)に示すロワーケース3のE−E断面図である。
【0028】
図示するように、ロワーケース3は、ショックアブソーバを挿入するための挿入孔30を備えた筒状のロワーケース本体31と、アッパーケース2に対向するロワーケース本体31の上面32に形成され、ロワーケース3がアッパーケース2と回動自在に組み合わされた場合に、アッパーケース2のアッパーケース本体21の下面24に形成された環状凹部25に挿入されて環状空間5を形成する環状凸部33と、ロワーケース本体31の側面34から径方向外方に張り出したフランジ35と、を備えている。
【0029】
環状凸部33の上面(環状上面)330には、センタープレート4を載置するための載置面331が形成され、さらに、この載置面331の外周側には、載置面331に載置されたセンタープレート4の回転を防止するための回止め332が円周方向に等間隔で複数形成されている。
【0030】
フランジ35は、ロワーケース本体31の上面32側において、ロワーケース本体31の外周側の側面34から径方向外方に張り出しており、フランジ35の下面350がアッパースプリングシートに取り付けられる。
【0031】
ダストシール6は、必要に応じてPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、潤滑油、シリコーン等の潤滑剤が添加された、ポリオレフィン樹脂系エラストマー、ポリアミド樹脂系エラストマー、ポリエステル樹脂系エラストマー、ポリスチレン樹脂系エラストマー、ポリウレタン樹脂系エラストマー等の合成樹脂のエラストマーで形成され、二色成形あるいはインサート成形によりロワーケース3のロワーケース本体31の環状凸部33に取り付けられる(
図4参照)。
図2(A)および
図2(B)に示すように、ダストシール6は、環状凸部33の外周側壁面333とアッパーケース2の環状凹部25の外周側壁面250との隙間を塞ぐ外側シール部60と、環状凸部33の内周側壁面334とアッパーケース2の環状凹部25の内周側壁面251との隙間を塞ぐ内側シール部61と、を備えている。
【0032】
外側シール部60は、環状凸部33の外周側壁面333に接合された筒状の外側シール本体601と、外側シール本体601から軸O方向上方(アッパーケース2側)に向かって径方向外方に傾斜しながら延びて、アッパーケース2の環状凹部25の底面26に撓みながら接触する環状のリップ部602と、を有している。
【0033】
内側シール部61は、環状凸部33の内周側壁面334に接合された筒状の内側シール本体611と、内側シール本体611から軸O方向上方に向かって径方向内方に傾斜しながら延びて、環状凹部25の内周側壁面251に形成された段差面252に撓みながら接触する環状のリップ部612と、を有している。
【0034】
センタープレート4は、必要に応じてPTFE、潤滑油、シリコーン等の潤滑剤が添加されたポリオレフィン樹脂、ポリアミド樹脂等の摺動特性に優れた合成樹脂で形成され、ロワーケース3のロワーケース本体31に設けられた環状凸部33の載置面331に固定され、センタープレート4とアッパーケース2の環状凹部25の荷重伝達面27との間に配置された摺動シート8と摺接する。これにより、アッパーケース2およびロワーケース3間の回動を許容しつつ、アッパーケース2の環状凹部25の荷重伝達面27および摺動シート8を介して、サスペンションに加わる車体の荷重を支持する(
図2参照)。
【0035】
図5(A)、
図5(B)および
図5(C)は、センタープレート4の平面図、底面図および正面図であり、
図5(D)は、
図5(A)に示すセンタープレート4のF−F断面図である。
【0036】
図示するように、センタープレート4は、環状のセンタープレート本体40と、センタープレート本体40の上面41に形成されたスラスト軸受面42と、センタープレート本体40の下面43の内周側から軸O方向に沿って下方向に張り出して形成された環状リブ44と、円周方向に等間隔に形成され、センタープレート本体40の下面43から径方向外側に突き出す複数の回止め45と、を備えている。
【0037】
スラスト軸受面42は、アッパーケース2の環状凹部25の荷重伝達面27および摺動シート8を介して加わるスラスト方向の荷重を支持しつつ、摺動シート8と摺接する。スラスト軸受面42には、潤滑グリースを保持するための潤滑グリース溝46が周方向に沿って環状に形成されている。
【0038】
環状リブ44は、センタープレート本体40の下面43とロワーケース3のロワーケース本体31に設けられた環状凸部33の載置面331とが接触するようにして、センタープレート4がロワーケース3上に載置された場合に、この環状凸部33の内側に挿入される。環状リブ44の内周面47には、アッパーケース2を介して加わるラジアル方向の荷重を支持しつつ、アッパーケース2の環状凹部25の内周側壁面251と摺接するラジアル軸受面48が形成されている。
【0039】
回止め45は、センタープレート本体40の下面43とロワーケース3のロワーケース本体31に設けられた環状凸部33の載置面331とが接触するようにして、センタープレート4がロワーケース3上に載置された場合に、この環状凸部33に設けられた回止め332同士の隙間335と円周方向に係合することにより、センタープレート4がロワーケース3に対して相対的に回転するのを防止する。
【0040】
摺動シート8は、環状空間5において、センタープレート4のスラスト軸受面42とアッパーケース2の荷重伝達面27との間に配置された摺動部材である。摺動シート8は、PTFE、TFE(テトラフルオロエチレン)に他原料(コモノマー)を微量共重合させた変性PTFE等のフッ素樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂等の合成樹脂で形成され、必要に応じてPTFE(ただし、熱可塑性プラスチックがPTFE、変性PTFEの場合を除く)、潤滑油、シリコーン、黒鉛等の潤滑剤を添加して摺動特性を向上させている。また、必要に応じてアラミド繊維、ガラス繊維、炭素繊維等の補強材を添加して強度を向上させている。あるいは、摺動シート8は、黄銅合金等の摺動特性に優れた金属で形成されていてもよい。
【0041】
図6(A)は、摺動シート8の平面図であり、
図6(B)は、
図6(A)に示す摺動シート8のG−G断面図である。
【0042】
図示するように、摺動シート8は、軸O方向の断面形状が平板状に形成された環状体であり、アッパーケース2の環状凹部25の荷重伝達面27と接触する接触面80と、接触面80の反対側に位置し、センタープレート4のスラスト軸受面42と摺接する摺動面81と、を備えている。摺動シート8の摺動面81がセンタープレート44のスラスト軸受面42と摺接することにより、アッパーケース2およびロワーケース3間の自在な回動が可能となる。
【0043】
上記構成を有する本実施の形態に係る滑り軸受1において、センタープレート4は、ロワーケース3のロワーケース本体31の上面32に形成された環状凸部33の載置面331に固定され、センタープレート4のスラスト軸受面42がこのスラスト軸受面42とアッパーケース2の荷重伝達面27との間に配置された摺動シート8の摺動面81と摺接する。このため、センタープレート4は、アッパーケース2およびロワーケース3間の回動を許容しつつ、アッパーマウントを介してアッパーケース4に伝達されたサスペンションに加わる車体の荷重を支持する。
【0044】
以上、本発明の一実施の形態について説明した。
【0045】
本実施の形態では、ダストシール6の外側シール部60のリップ部602がロワーケース2の環状凸部33側から軸O方向上方に延びてアッパーケース2の環状凹部25の底面26と当接することにより、環状空間5に繋がる隙間を塞いでいるので、アッパーケース2の環状凹部25の底面26とロワーケース3の環状凸部33との隙間に対して、外側シール部60のリップ部602を必要以上に長めに形成しなくても、滑り軸受1にスラスト方向の荷重が加わることで、外側シール部60のリップ部61がアッパーケース2の環状凹部25の底面26と確実に当接する。また、ダストシール6の内側シール部61のリップ部612がロワーケース2の環状凸部33側から軸O方向上方に延びてアッパーケース2の環状凹部25の内周側壁面251に形成された段差面252と当接することにより、環状空間5に繋がる隙間を塞いでいるので、アッパーケース2の環状凹部25の内周側壁面251に形成された段差面252とロワーケース3の環状凸部33との隙間に対して、内側シール部61のリップ部612を必要以上に長めに形成しなくても、滑り軸受1にスラスト方向の荷重が加わることで、内側シール部61のリップ部612がアッパーケース2の環状凹部25の内周側壁面251に形成された段差面252と確実に当接する。
【0046】
このため、アッパーケース2をダストシール6が取り付けられたロワーケース3と組み合わせる際に大きな力は不要であり、滑り軸受1の組み立ての作業性が向上する。また、アッパーケース2の環状凹部25の底面26および段差面252に対するダストシール6のリップ部602、612の圧接力の増加を抑制して、アッパーケース2およびロワーケース3間の円滑な回動が阻害されるのを防止することができる。さらには、ダストシール6のリップ部602、612がアッパーケース2の環状凹部25の底面26との摺動により摩耗した場合でも、滑り軸受1にスラスト方向の荷重が加わることで、ダストシール6のリップ部602、612をアッパーケース2の環状凹部25の底面26および段差面252と確実に当接させることができ、シール性が低下しないため、アッパーケース2の環状凹部25とダストシール6とのシメシロを小さくすることができ、これにより、アッパーケース2およびロワーケース3間の回動性を向上させることができる。
【0047】
加えて、リップ部602は軸O方向に弾性変形可能であればよいので、アッパーケース2の環状凹部25の外周側壁面251とロワーケース3の環状凸部33の外周面333との隙間を大きくする必要がなく、その分、滑り軸受1の径方向のサイズを小さくすることができる。
【0048】
さらには、ダストシール6の軸O方向に相対的に移動する上下型でダストシール6を形成する際、リップ部602、612が上下型の移動方向と同じ方向に延びているので、ダストシール6を金型から引き抜くときに生じるリップ部602、612の変形を抑制して、ダストシール6の性能を安定させることができる。
【0049】
したがって、本実施の形態によれば、ダストシール6を有しつつも、組み立て作業性に優れ、小型化を図ることができ、かつ摺動性能に優れた滑り軸受1を提供することができる。
【0050】
なお、本発明は、上記の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で数々の変形は可能である。
【0051】
例えば、上記実施の形態において、ダストシール6の外側シール部60のリップ部602を二重化してもよい。
【0052】
図7は、本発明の一実施の形態に係る滑り軸受1の変形例1Aを説明するための図であり、
図2(B)の部分拡大図に相当する図である。
【0053】
この変形例1Aが本実施の形態に係る滑り軸受1と異なる点は、ダストシール6の外側シール部60において、環状のリップ部603を追加したことである。リップ部603は、外側シール本体601から軸O方向上方に向かって径方向内方に傾斜しながら延びて、アッパーケース2の環状凹部25の底面26に撓みながら接触している。外側シール部60に二重化されたリップ部602、603を設けることにより、ダストシール6のシール性が向上し、異物の環状空間5への侵入をより確実に防止することができる。
【0054】
また、上記の実施の形態では、センタープレート4をロワーケース3とは別体としているが、二色成形あるいはインサート成形により、センタープレート4をロワーケース3と一体的に形成してもよい。この場合、センタープレート4とダストシール6に同じ材料を用いることにより、センタープレート4とダストシール6とを一体化してもよい。
【0055】
また、上記の実施の形態では、センタープレート4において、内周面47にラジアル軸受面48が形成された環状リブ44を、センタープレート本体40の下面43の内周側から軸O方向に沿って下方向に張り出すように形成しているが、本発明はこれに限定されない。環状リブ44は、センタープレート4とは別個の部品としてもよい。あるいは、環状リブ44を省略してもよい。
【0056】
また、上記の実施の形態では、センタープレート4の上面41にスラスト軸受面42を設けるとともに、環状空間5において、センタープレート4のスラスト軸受面42とアッパーケース2の荷重伝達面27との間に摺動シート8を配置しているが、本発明はこれに限定されない。センタープレート4の下面43にスラスト軸受面42を設け、センタープレート4のスラスト軸受面42とロワーケース3の載置面331との間に摺動シート8を配置してもよい。この場合、ロワーケース3およびセンタープレート4間の回動を可能とするため、ロワーケース3、センタープレート4から回止め332、回止め45を省略する。あるいは、この摺動シート8を省略して、センタープレート4のスラスト軸受面42をアッパーケース2の荷重伝達面27あるいはロワーケース3の載置面331と直接摺接させてもよい。なお、センタープレート4のスラスト軸受面42をロワーケース3の載置面331と直接摺接させる場合も、ロワーケース3およびセンタープレート4間の回動を可能とするため、ロワーケース3、センタープレート4から回止め332、回止め45を省略する。
【0057】
また、上記の実施の形態では、ロワーケース3のロワーケース本体31の上面32に環状凸部33を設け、この環状凸部33をアッパーケース2のアッパーケース本体21の下面24に形成された環状凹部25に挿入することにより、環状空間5を形成しているが、本発明はこれに限定されない。ロワーケース3のロワーケース本体31の環状上面がアッパーケース2のアッパーケース本体21の下面24に形成された環状凹部25の底面26と対面することにより環状空間5を形成するものであればよい。
【0058】
図8は、本発明の一実施の形態に係る滑り軸受1の変形例1Bを説明するための図であり、
図2(B)の部分拡大図に相当する図である。
【0059】
図示するように、この変形例1Bが本実施の形態に係る滑り軸受1と異なる点は、ロワーケース3、センタープレート4、およびダストシール6に代えて、ロワーケース3a、センタープレート4a、およびダストシール6aを用いたことである。
【0060】
ロワーケース3aは、筒状のロワーケース本体31と、アッパーケース2のアッパーケース本体21の下面24に形成された環状凹部25の底面26と対面して環状空間5を形成する環状上面36を有し、ロワーケース本体31の側面から径方向外方に張り出したフランジ35と、環状上面36に形成され、センタープレート4aを収容するための環状溝37と、を備えている。
【0061】
センタープレート4aは、ロワーケース3aの環状上面36に形成された環状溝37に収容可能な環状体であり、摺動シート8と摺接するスラスト軸受面42と、スラスト軸受面42に形成され、潤滑グリースを保持するための環状の潤滑グリース溝46と、を備えている。
【0062】
ダストシール6aは、ロワーケース3aのフランジ35の側面とアッパーケース2の環状凹部25の外周側壁面250との隙間を塞ぐ外側シール部60を備えており、外側シール部60は、ロワーケース3aのフランジ35の側面に接合された筒状の外側シール本体601と、外側シール本体601から軸O方向上方(アッパーケース2側)に向かって径方向外方に傾斜しながら延びて、アッパーケース2の環状凹部25の底面26に撓みながら接触する環状のリップ部602と、を有している。
【0063】
なお、ロワーケース3a、センタープレート4a、およびダストシール6aには、それぞれ、ロワーケース3、センタープレート4、およびダストシール6と同様の材料が用いられる。
【0064】
また、上記の実施の形態では、インサート成形によりロワーケース3に補強材であるスチールプレート7を埋め込んでいるが、スチールプレート7は省略してもかまわない。
【0065】
本発明は、車両のサスペンションを含む様々な機構において、荷重を支持する滑り軸受に広く適用可能である。