特開2019-124425(P2019-124425A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 三浦工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特開2019124425-台数制御方法、および台数制御装置 図000003
  • 特開2019124425-台数制御方法、および台数制御装置 図000004
  • 特開2019124425-台数制御方法、および台数制御装置 図000005
  • 特開2019124425-台数制御方法、および台数制御装置 図000006
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2019-124425(P2019-124425A)
(43)【公開日】2019年7月25日
(54)【発明の名称】台数制御方法、および台数制御装置
(51)【国際特許分類】
   F22B 35/00 20060101AFI20190704BHJP
【FI】
   F22B35/00 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2018-6574(P2018-6574)
(22)【出願日】2018年1月18日
(71)【出願人】
【識別番号】000175272
【氏名又は名称】三浦工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100142365
【弁理士】
【氏名又は名称】白井 宏紀
(72)【発明者】
【氏名】松木 繁昌
【テーマコード(参考)】
3L021
【Fターム(参考)】
3L021AA05
3L021CA06
3L021DA02
3L021FA12
3L021FA21
(57)【要約】
【課題】乾き度が低い蒸気が供給されてしまうことを抑制できる台数制御方法および台数制御装置を提供することである。
【解決手段】個々に高燃焼状態、中燃焼状態、低燃焼状態、および燃焼停止状態のうちのいずれかの燃焼状態に制御可能な複数台のボイラ各々の燃焼状態を制御する台数制御装置であって、予測される蒸気使用量を特定し、当該よそくされる蒸気使用量において中燃焼状態から高燃焼状態に制御される回数が少ない制御パターンを予め記憶された複数の制御パターンから設定し、設定された制御パターンに基づいて複数台のボイラ各々の燃焼状態を制御する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
個々に高燃焼、中燃焼、低燃焼、および燃焼待機のうちのいずれかの燃焼状態に制御可能な複数台のボイラ各々の燃焼状態を制御する台数制御方法であって、
予測される蒸気負荷を特定するステップと、
所定期間の前記蒸気負荷において、前記中燃焼から前記高燃焼に制御される回数が少ない制御パターンを予め記憶された複数の制御パターンから設定するステップと、
設定された制御パターンに基づいて前記複数台のボイラ各々の燃焼状態を制御するステップとを備える、台数制御方法。
【請求項2】
前記特定するステップは、蒸気の使用場所が含まれる地域の気温、蒸気を使用する設備に関する情報、および蒸気を使用する時間帯のうちの少なくともいずれかを含む特定用情報に基づいて蒸気負荷を特定する、請求項1に記載の台数制御方法。
【請求項3】
実際に使用された蒸気使用量に基づいて前記特定用情報を更新するステップを備える、請求項2に記載の台数制御方法。
【請求項4】
前記設定するステップは、前記所定期間を複数の期間に分割し、分割された期間のそれぞれにおいて、前記中燃焼から前記高燃焼に制御される回数が少ない制御パターンを前記複数の制御パターンから設定する、請求項1または2に記載の台数制御方法。
【請求項5】
個々に高燃焼、中燃焼、低燃焼、および燃焼待機のうちのいずれかの燃焼状態に制御可能な複数台のボイラ各々の燃焼状態を制御する台数制御装置であって、
予測される蒸気負荷を特定する特定手段と、
前記複数台のボイラ各々の燃焼状態と、これらの優先順位とを規定した複数の制御パターンを記憶する記憶手段と、
所定期間の前記蒸気負荷において、前記中燃焼から前記高燃焼に制御される回数が少ない制御パターンを前記記憶手段に記憶された前記複数の制御パターンから設定する設定手段と、
設定された制御パターンに基づいて前記複数台のボイラ各々の燃焼状態を制御する制御手段とを備える、台数制御装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、個々に高燃焼、中燃焼、低燃焼、および燃焼待機のうちのいずれかの燃焼状態に制御可能な複数台のボイラ各々の燃焼状態を制御する台数制御方法、および台数制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、複数台のボイラから発生した蒸気を蒸気ヘッダに集合させる多缶設置ボイラにおいて、複数台のボイラの燃焼状態を制御する台数制御装置を備えるものがあった。このような台数制御装置は、優先順位や蒸気ヘッダの蒸気圧力値などに基づいて、複数台のボイラの燃焼量を高燃焼・中燃焼・低燃焼のいずれかに制御するものがあった(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015−117840号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一方、台数制御装置により制御されるボイラは、短期間において中燃焼から高燃焼への移行が繰り返された場合、例えばセパレータ内における水位上昇などの影響により、供給される蒸気の乾き度が低下する虞がある。このため、ボイラにおける上記不具合を考慮していない従来の台数制御装置においては、予測される蒸気負荷(蒸気使用量)によっては複数台のボイラのうちのいずれかが中燃焼から高燃焼への移行を繰り返してしまう。その結果、乾き度が低い蒸気を供給してしまう虞があった。
【0005】
本発明は、かかる実情に鑑み考え出されたものであり、その目的は、乾き度が低い蒸気が供給されてしまうことを抑制できる台数制御方法および台数制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明のある局面に従う台数制御方法は、個々に高燃焼、中燃焼、低燃焼、および燃焼待機のうちのいずれかの燃焼状態に制御可能な複数台のボイラ各々の燃焼状態を制御する台数制御方法であって、予測される蒸気負荷を特定するステップと、所定期間の前記蒸気負荷において、前記中燃焼から前記高燃焼に制御される回数が少ない制御パターンを予め記憶された複数の制御パターンから設定するステップと、設定された制御パターンに基づいて前記複数台のボイラ各々の燃焼状態を制御するステップとを備える。
【0007】
上記の構成によれば、特定された蒸気負荷に対応する蒸気を所定期間に亘り生成するに際して、中燃焼から高燃焼に制御される回数が少ない制御パターンに基づいて複数台のボイラ各々の燃焼状態が制御される。このため、乾き度が低い蒸気を供給してしまうことを抑制できる。
【0008】
好ましくは、前記特定するステップは、蒸気の使用場所が含まれる地域の気温、蒸気を使用する設備に関する情報、および蒸気を使用する時間帯のうちの少なくともいずれかを含む特定用情報に基づいて蒸気負荷を特定する。
【0009】
上記の構成によれば、蒸気を実際に使用する環境に応じて蒸気負荷をより正確に特定できる。
【0010】
好ましくは、実際に使用された蒸気使用量に基づいて前記特定用情報を更新するステップを備える。
【0011】
上記の構成によれば、実際に使用された蒸気使用量がフィードバックされた特定用情報に基づいて蒸気負荷を特定することができる。
【0012】
好ましくは、前記設定するステップは、前記所定期間を複数の期間に分割し、分割された期間のそれぞれにおいて、前記中燃焼から前記高燃焼に制御される回数が少ない制御パターンを前記複数の制御パターンから設定する。
【0013】
上記の構成によれば、所定期間を分割した複数の期間各々において、中燃焼から高燃焼に制御される回数が少ない制御パターンが設定される。つまり、複数の期間各々における蒸気負荷に応じた制御パターンが設定される。このため、所定期間において制御パターンが設定されるものよりも、乾き度が低い蒸気を供給してしまうことをより一層抑制できる。
【0014】
上記目的を達成するために、本発明のある局面に従う台数制御方法は、個々に高燃焼、中燃焼、低燃焼、および燃焼待機のうちのいずれかの燃焼状態に制御可能な複数台のボイラ各々の燃焼状態を制御する台数制御装置であって、予測される蒸気負荷を特定する特定手段と、前記複数台のボイラ各々の燃焼状態と、これらの優先順位とを規定した複数の制御パターンを記憶する記憶手段と、所定期間の前記蒸気負荷において、前記中燃焼から前記高燃焼に制御される回数が少ない制御パターンを前記記憶手段に記憶された前記複数の制御パターンから設定する設定手段と、設定された制御パターンに基づいて前記複数台のボイラ各々の燃焼状態を制御する制御手段とを備える。
【0015】
上記の構成によれば、特定された蒸気負荷に対応する蒸気を所定期間に亘り生成するに際して、中燃焼から高燃焼に制御される回数が少ない制御パターンに基づいて複数台のボイラ各々の燃焼状態が制御される。このため、乾き度が低い蒸気を供給してしまうことを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】ボイラシステムの概略構成を説明するための図である。
図2】特定用情報の一例を説明するための図である。
図3】複数の制御パターンの一例を説明するための図である。
図4】台数制御処理の一例を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
<概略構成について>
以下に、図面を参照しつつ、本発明の実施形態について説明する。まず、図1を参照して、本実施の形態に係るボイラシステム1の概略構成について説明する。ボイラシステム1は、図1に示すように、複数(例えば3台)のボイラ2と、複数のボイラ2各々と蒸気配管3を介して接続される蒸気ヘッダ4と、蒸気ヘッダ4内部の圧力値(以下「ヘッダ圧力値」ともいう)を測定する蒸気圧センサ5と、複数のボイラ2各々の燃焼状態を制御する台数制御装置8とを備えている。
【0018】
複数のボイラ2は、各々、燃料を燃焼させて蒸気を生成するボイラ本体2aと、ボイラ本体2aにおける燃焼量(負荷率)が段階的に異なる複数の燃焼状態のうちのいずれかを設定する制御部2bとを備えている。複数の燃焼状態としては、高燃焼状態、中燃焼状態、低燃焼状態、および燃焼停止状態(燃焼待機)が設けられている。本実施の形態におけるボイラ本体2aは、例えば、1台の最大蒸発量(最大蒸気生成量)が3000kg/hであり、低燃焼状態であるときの負荷率が20%(600kg/h)、中燃焼状態であるときの負荷率が50%(1500kg/h)、高燃焼状態であるときの負荷率が100%(3000kg/h)となるように設計されている。よって、3台から構成されるボイラシステム1全体における最大総蒸発量は、9000kg/hとなる。なお、ボイラ本体2aの性能はこれに限るものではない。また、複数のボイラ本体2a各々が同じ性能のものに限らず、異なる性能を有するボイラを含むものであってもよい。複数のボイラ2各々により生成された蒸気は、蒸気配管3を介して蒸気ヘッダ4へ送られる。
【0019】
蒸気ヘッダ4は、複数のボイラ2各々で生成された蒸気を集合させて、当該蒸気を使用する使用設備11に供給管10を介して供給する。蒸気圧センサ5は、測定したヘッダ圧力値を特定するための蒸気圧信号を、信号線6を介して台数制御装置8に送信する。また、使用設備11からは、実際に使用された蒸気量を特定するための蒸気使用量信号を、信号線12を介して台数制御装置8に送信する。
【0020】
台数制御装置8は、信号線9を介して複数のボイラ2各々を制御するための制御信号を送信する。複数のボイラ2各々の制御部2bは、受信した制御信号から特定される燃焼状態を設定し、当該燃焼状態となるように対応するボイラ本体2aを制御する。
【0021】
台数制御装置8は、記憶部8a、入力部8b、および制御部8cなどを備えている。記憶部8aには、複数のボイラ2各々を制御するためのプログラムや、特定用情報、複数の制御パターンなどが記憶されている。また、記憶部8aにおいては、現在の日時が管理・更新される。特定用情報は、時間帯や、曜日、気温などから、使用設備11において使用することが予測される蒸気負荷(蒸気使用量)を特定するための情報である。複数の制御パターンは、複数のボイラ2各々の燃焼順序および燃焼状態の移行順序などを特定するための情報である。また、入力部8bからは、インターネット回線などを介して取得される気温(使用設備11が設置されている地域の気温)や、作業者からの操作に応じて特定用情報が入力される。
【0022】
制御部8cは、特定用情報から予測される蒸気負荷(以下、予測蒸気使用量、あるいは予測蒸気負荷ともいう)を特定し、当該予測蒸気使用量に対応する制御パターンを設定して、当該制御パターンに基づいて複数のボイラ2各々の燃焼状態を制御するための台数制御処理を実行する。制御部8cは、蒸気圧信号から特定されるヘッダ圧力値が予測蒸気使用量に対応する圧力値となるように、複数のボイラ2各々の燃焼状態を制御することにより、予測蒸気使用量に対応する蒸気を供給する。ここで、図2および図3を参照して、記憶部8aに記憶される特定用情報および複数の制御パターンの一例を説明する。
【0023】
<特定用情報について>
図2は、記憶部8aに記憶されている特定用情報の一例を説明するための図である。特定用情報に相当する値は、例えば、使用設備11が置かれている環境や使用設備数等に応じて、作業者等が入力部8bを操作することにより入力される。図2(a)は、予測蒸気使用量を特定するための第1特定用情報の一例を説明するための図である。図2(a)に示す第1特定用情報の例では、月曜日〜金曜日の平日であるか土曜日あるいは日曜日の休日であるかといったように、1日のうちの時間帯に応じて異なる値が記憶されている。つまり、1週間が平日か休日かによって大きく分割され、さらに時間帯によって分割された複数の期間毎に第1特定用情報が記憶されている。なお、第1特定用情報は、さらに例えば1年間が季節(何月か)によって分割されており、当該分割された期間毎に平日か休日かおよびいずれの時間帯であるかに応じて異なる値が設定されるものであってもよい。
【0024】
また、図2(a)に示す第1特定用情報の例では、平日であるときの方が休日であるときよりも多くの蒸気が必要であり、かつ昼間(特に午後)の方が夜間よりも多くの蒸気が必要となる環境に使用設備11が置かれている場合を想定しているものとする。このため、月曜日〜金曜日の平日であるときの方が、土曜日および日曜日の休日であるときよりも多い蒸気使用量が記憶され、さらに、12時〜18時の時間帯が最も多い蒸気使用量が記憶され、6時〜12時、18時〜24時、0時〜6時の順に少ない蒸気使用量が記憶されている。これにより、曜日や時間帯に応じて予測蒸気使用量を特定することができる。
【0025】
また、実際に必要となる蒸気使用量は、蒸気を使用する使用環境(気温、湿度等)に応じて変動する。一般的に、気温が高いときには、蒸気使用量が少なくなり、気温が低いときには、蒸気使用量が多くなることが予想される。このため、本実施の形態では、使用環境に応じて予測蒸気使用量を補正する。図2(b)は、第1特定用情報から特定された蒸気使用量を使用環境に応じて補正するための第2特定用情報の一例を説明するための図である。例えば、第1特定用情報から蒸気使用量として「5500」が特定されたときであって、気温が0度未満のときには、5500×(100%+8%)=5940に補正された値が予測蒸気使用量として特定され、気温が26度のときには、5500×(100%−4%)=5280に補正された値が予測蒸気使用量として特定される。これにより、蒸気を実際に使用する使用環境に応じて予測蒸気使用量を特定(補正)することができる。
【0026】
<制御パターンについて>
図3は、記憶部8aに記憶されている複数の制御パターンの一例を説明するための図である。複数の制御パターンは、予測蒸気使用量に応じて定められている。図3(a)は、予測蒸気使用量が「3600未満」であるときに設定される制御パターンである。図3に示す制御パターンからは、蒸気使用量に対応して複数のボイラ2各々について制御すべき燃焼状態が特定可能となる。図3のボイラ欄における「L」「M」「H」は、各々、低燃焼状態、中燃焼状態、高燃焼状態を示し、「OFF」は燃焼停止状態を示している。
【0027】
例えば、予測蒸気使用量が「500」のときには、蒸気使用量「500」に対応するヘッダ圧力値となるように、「1」のボイラを燃焼停止状態と低燃焼状態とに繰り返し移行させる制御パターンが特定される。また、予測蒸気使用量が「3000」のときには、「1」のボイラを中燃焼状態とし、「3」のボイラを低燃焼状態とした上で、蒸気使用量「3000」に対応するヘッダ圧力値となるように、「2」のボイラを低燃焼状態と中燃焼状態とに繰り返し移行させる制御パターンが特定される。なお、蒸気使用量に対応するヘッダ圧力値を特定するためのテーブルは、記憶部8aに予め記憶されており、当該テーブルを参照することにより蒸気使用量に対応するヘッダ圧力値を特定する。
【0028】
図3(b)は、予測蒸気使用量が「3600以上6000未満」であるときに設定される制御パターンである。例えば、予測蒸気使用量が「4300」のときには、「1」のボイラを高燃焼状態とし、「3」のボイラを低燃焼状態とした上で、蒸気使用量「4300」に対応するヘッダ圧力値となるように、「2」のボイラを低燃焼状態と中燃焼状態とに繰り返し移行させる制御パターンが特定される。また、予測蒸気使用量が「5500」のときには、「1」のボイラを高燃焼状態とし、「2」のボイラを中燃焼状態とした上で、蒸気使用量「5500」に対応するヘッダ圧力値となるように、「3」のボイラを低燃焼状態と中燃焼状態とに繰り返し移行させる制御パターンが特定される。
【0029】
図3(c)は、予測蒸気使用量が「6000以上」であるときに設定される制御パターンである。例えば、予測蒸気使用量が「6500」のときには、「1」および「2」のボイラを高燃焼状態とした上で、蒸気使用量「6500」に対応するヘッダ圧力値となるように、「3」のボイラを燃焼停止状態と低燃焼状態とに繰り返し移行させる制御パターンが特定される。また、予測蒸気使用量が「7400」のときには、「1」および「2」のボイラを高燃焼状態とした上で、蒸気使用量「7400」に対応するヘッダ圧力値となるように、「3」のボイラを低燃焼状態と中燃焼状態とに繰り返し移行させる制御パターンが特定される。
【0030】
本実施の形態では、特定用情報から特定される予測蒸気使用量に応じた制御パターンを設定し、当該制御パターンに基づいて複数のボイラ2が制御される。また、図3において示すように、予測蒸気使用量が7500以下であるときには、中燃焼状態と高燃焼状態とに繰り返し移行させる制御パターンを特定することがない。また、図2で示した特定用情報では、通常運転時(操作によって強制的に燃焼状態を設定して運転するような突発的な場合を除く)において、予測蒸気使用量として7500を超える値が特定されることはない。このため、通常運転時においては、中燃焼状態と高燃焼状態とに繰り返し移行させることなく、予測蒸気使用量に相当する蒸気を生成することができる。その結果、乾き度が低い蒸気を供給してしまうことを抑制できる。また、缶水持ち出し(飽和水)による熱量廃棄を抑制できる。
【0031】
<台数制御処理について>
台数制御装置8の制御部8cは、台数制御処理を実行することにより、特定用情報から予測蒸気使用量を特定し、当該予測蒸気使用量に対応する制御パターンを設定して、当該制御パターンに基づいて複数のボイラ2各々の燃焼状態を制御する。図4は、台数制御処理(台数制御方法)の一例を説明するためのフローチャートである。台数制御装置8の制御部8cは、台数制御処理を一定期間(例えば0.2秒)毎に実行する。
【0032】
ステップS01では、入力部8bから特定用情報が入力されたか否かを判定する。ステップS01において特定用情報が入力されたと判定されなかったときには、そのままS03へ移行する。一方、ステップS01において特定用情報が入力されたと判定されたときには、ステップS02において入力された特定用情報を記憶部8aに記憶する。これにより、使用環境などに応じて図2に一例を示した特定用情報を記憶・更新することができる。
【0033】
ステップS03では、時間帯あるいは曜日が変化しているか否かが判定される。つまり、ステップS03では、図2で示したように異なる蒸気使用量が定められている区画に変化(平日から休日になったとき、11時59分から12時00分になったときなど)したか否かが判定される。なお、台数制御処理による運転を開始するときにも制御パターンを特定するために、ステップS03においてYESと判定される。
【0034】
ステップS03において時間帯および曜日のいずれについても変化していると判定されなかったときには、ステップS08において気温が変化しているか否かが判定される。ステップS08において気温が変化していると判定されなかったときには、ステップS07へ移行する。なお、ステップS08では、異なる割合(補正値)が定められている区画に変化(0度未満から1度になったときなど)したか否かを判定するものであってもよい。
【0035】
一方、ステップS03において時間帯あるいは曜日が変化していると判定されたときや、ステップS08において気温が変化していると判定されたときには、ステップS04において第1特定用情報から時間帯および曜日に応じた蒸気使用量を特定する(図2(a)参照)。また、ステップS05では、特定された蒸気使用量に対して、現在の気温に対応する第2特定用情報(図2(b)参照)から特定される割合を掛け合わせて、予測蒸気使用量を特定する。このように、1週間が曜日や時間帯に基づいて分割された複数の期間毎に蒸気使用量が特定され、さらに実際の使用環境(気温)に応じて補正されるため、より正確に予測蒸気使用量を特定できる。
【0036】
ステップS06では、予測蒸気使用量に対応する制御パターンを特定する(図3参照)。このように、ステップS04およびS05において予測蒸気使用量が特定される毎に、対応する制御パターンが特定する台数制御方法を採用しているため、乾き度が低い蒸気が供給されてしまうことをより一層抑制できる。また、ステップS07では、予測蒸気使用量に対応するヘッダ圧力値となるように、特定した制御パターンに基づいて複数のボイラ2を制御するための制御信号を送信して、台数制御処理を終了する。これにより、複数のボイラ2により予測された蒸気使用量に相当する蒸気を生成し供給することができる。
【0037】
本発明は、上記の実施の形態に限られず、種々の変形、応用が可能である。以下、本発明に適用可能な上記の実施の形態の変形例などについて説明する。
【0038】
上記実施の形態において、図2で示した第1特定用情報および第2特定用情報は、使用設備11が置かれている環境や使用設備数等に合せて、作業者等が入力部8bを操作して値を入力することにより記憶される例について説明した。しかし、作業者等が値を入力するものに限らず、例えば、使用設備11に含まれる製品の品番等を入力することにより、インターネット回線などを介して自動的に当該製品の蒸気負荷(蒸気使用量)を取得して記憶するものであってもよい。
【0039】
また、図2で示した第1特定用情報および第2特定用情報は、使用設備11において実際に使用された蒸気量に応じて自動的に記憶・更新されるものであってもよい。例えば、台数制御装置8の制御部8cは、使用設備11から信号線12を介して入力される蒸気使用量信号に基づいて実際に使用された蒸気量を特定し、現在の特定用情報から特定される予測蒸気使用量との差分を算出して、その差分が所定の閾値以上であるときに実際に使用された蒸気量に近づくように特定用情報を更新するようにしてもよい。これにより、実際に使用された蒸気使用量がフィードバックされた特定用情報に基づいて蒸気負荷を特定することができる。また、特定用情報を更新する際には、人工知能等を利用して実際の使用環境に応じて最適な予測蒸気使用量が特定されるように機械学習することにより自動調整できるようにしてもよい。なお、蒸気ヘッダ4から供給管10に供給された蒸気量を流量計によって計測し、当該流量計からの蒸気使用量信号に基づく蒸気量(計測された流量)を実際に使用された蒸気量とみなして、特定用情報にフィードバックするものであってもよい。
【0040】
また、図2で示した第1特定用情報および第2特定用情報は、使用設備11における蒸気負荷を事前に分析し、当該分析結果に基づく値がデフォルトとして入力されているものであってもよい。この場合においても、作業者等による入力部8bへの操作や、実際に使用された蒸気量などに応じて事後的に随時更新可能となるようにしてもよい。また、上記実施の形態では、時間帯や曜日、気温などに応じて予測蒸気使用量が特定される例について説明したが、これに限らず、運転開始毎に作業者等により予測蒸気使用量を入力させて、図4のS06においては、当該入力された予測蒸気使用量に対応する制御パターンを特定するものであってもよい。
【0041】
上記実施の形態においては、予測蒸気使用量が所定値(7501以上、複数のボイラ全てをHにする必要が生じる値)未満であるときには、中燃焼状態と高燃焼状態とに繰り返し移行させる制御パターンを特定することがない例について説明した。しかし、ボイラシステム1を構成するボイラの台数や、当該ボイラの負荷率・性能などによっては、予測蒸気使用量が所定値未満であるときであっても、特定範囲の予測蒸気使用量においては中燃焼状態と高燃焼状態とに繰り返し移行させる必要が生じ得る場合もある。このような場合、所定値未満の予測蒸気使用量となる範囲のうち、特定範囲の予測蒸気使用量が占める割合が50%未満となるように、複数の制御パターンを設定してもよい。つまり、所定値未満の予測蒸気使用量全体として、中燃焼状態と高燃焼状態とに繰り返し移行される回数が少なくなるように複数の制御パターンが設けられているものであればよい。
【0042】
上記実施の形態においては、ボイラシステム1が、低燃焼状態、中燃焼状態、高燃焼状態、および燃焼停止状態のいずれかに制御可能となるいわゆる四位置制御ボイラにより構成される例について説明した。しかし、ボイラシステム1を構成するボイラは、これに限らず、例えば、四位置制御ボイラに加えて、低燃焼状態、高燃焼状態、および燃焼停止状態のいずれかに制御可能となるいわゆる三位置制御ボイラを一部に含むものであってもよい。この場合、予測蒸気使用量に応じて、低燃焼状態と高燃焼状態とに繰り返し移行される回数が少なくなる制御パターンに基づき複数のボイラが制御されるものであればよい。また、ボイラシステム1を構成するボイラは、例えば、負荷率20%〜50%まで比例制御可能な比例制御状態と、比例制御状態よりも負荷率が高い高燃焼状態とに制御可能となるようなボイラを含むものであってもよい。この場合、予測蒸気使用量に応じて、比例制御状態と高燃焼状態とに繰り返し移行される回数が少なくなる制御パターンに基づき複数のボイラが制御されるものであればよい。
【0043】
上記実施の形態においては、予測蒸気使用量に応じて中燃焼状態と高燃焼状態とに繰り返し移行される回数が少なくなるように複数の制御パターンが予め定められている例について説明した。しかし、制御パターンが予め定められているものに限らず、予測蒸気使用量に応じて中燃焼状態と高燃焼状態とに繰り返し移行される回数が少なくなるように制御パターンを生成するものであってもよい。例えば、台数制御装置8の制御部8cは、特定された蒸気使用量に相当する蒸気の生成に際して、中燃焼状態と高燃焼状態とに繰り返し移行される回数が少なくなるように制御パターンを生成して記憶し、当該制御パターンに基づいて複数のボイラ各々の制御を行うものであってもよい。
【0044】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものでないと考えられるべきである。この発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0045】
1 ボイラシステム
2 ボイラ
2a ボイラ本体
2b 制御部
3 蒸気配管
4 蒸気ヘッダ
5 蒸気圧センサ
6 信号線
8 台数制御装置
8a 記憶部
8b 入力部
8c 制御部
9 信号線
10 供給管
11 使用設備
12 信号線
図1
図2
図3
図4