【解決手段】ズームレンズは物体側から順に、正の第1レンズ群G1、負の第2レンズ群G2、負の第3レンズ群G3及び正の後群G4とから構成され、レンズ群間の空気間隔を変化させることで広角端から望遠端へ変倍し、第3レンズ群G3は負の屈折力を有する単レンズ1枚からなり、前記第3レンズ群G3を光軸方向に移動させることで、無限遠物体から近接物体に合焦し、所定の条件を満足させる。また、撮像装置にズームレンズを備えさせる。
物体側から順に、正の屈折力を有する第1レンズ群と、負の屈折力を有する第2レンズ群と、負の屈折力を有する第3レンズ群と、正の屈折力を有する後群とから構成され、
前記第1レンズ群と前記第2レンズ群との間の空気間隔を増大させ、前記第3レンズ群と前記後群との間の空気間隔を減少させるようにレンズ群間の空気間隔を変化させることで広角端から望遠端へ変倍し、
前記第3レンズ群は、負の屈折力を有する単レンズ1枚からなり、当該第3レンズ群を光軸方向に移動させることで、無限遠物体から近接物体に合焦し、
以下の条件を満足することを特徴とするズームレンズ。
(1) 55.0 < νd3 < 98.0
(2)32.0 < νd2nmin < 50.0
但し、
νd3:前記第3レンズ群を構成する負の屈折力を有する単レンズのd線におけるアッベ数
νd2nmin:前記第2レンズ群に含まれる負の屈折力を有するレンズの中で最もd線におけるアッベ数が小さいレンズのd線におけるアッベ数
請求項1から請求項14のいずれか一項に記載のズームレンズと、当該ズームレンズの像側に、当該ズームレンズによって形成された光学像を電気的信号に変換する撮像素子とを備えたことを特徴とする撮像装置。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本件発明に係るズームレンズ及び撮像装置の実施の形態を説明する。但し、以下に説明する当該ズームレンズ及び撮像装置は本件発明に係るズームレンズ及び撮像装置の一態様であって、本件発明に係るズームレンズ及び撮像装置は以下の態様に限定されるものではない。
【0012】
1.ズームレンズ
1−1.ズームレンズの光学構成
まず、本実施の形態のズームレンズの光学構成を説明する。本実施の形態のズームレンズは、物体側から順に、正の屈折力を有する第1レンズ群と、負の屈折力を有する第2レンズ群と、負の屈折力を有する第3レンズ群と、正の屈折力を有する後群とから構成され、第1レンズ群と第2レンズ群との間の空気間隔を増大させ、第3レンズ群と後群との間の空気間隔を減少させるようにレンズ群間の空気間隔を変化させることで広角端から望遠端へ変倍し、第3レンズ群は、負の屈折力を有する単レンズ1枚からなり、当該第3レンズ群を光軸方向に移動させることで、無限遠物体から近接物体に合焦する。
【0013】
(1)第1レンズ群
第1レンズ群は、正の屈折力を有する限りその具体的なレンズ構成は特に限定されるものではない。例えば、正レンズと負レンズとを接合した接合レンズから構成すれば、少ないレンズ枚数で良好な収差補正を実現することができるため、当該ズームレンズの光学性能を高く維持すると共に、当該ズームレンズの小型化及び軽量化を図ることができる。
【0014】
(2)第2レンズ群
第2レンズ群についても、負の屈折力を有する限りその具体的なレンズ構成は特に限定されるものではない。例えば、1枚から3枚の負レンズを含む構成とし、第2レンズ群に強い負の屈折力を配置することで、変倍率の高いズームレンズを実現することができる。ここで、第2レンズ群は、正の屈折力を有するレンズとを少なくとも1枚有することが好ましい。当該第2レンズ群に、負の屈折力を有するレンズと共に、少なくとも1枚の正の屈折力を有するレンズを配置することにより、色収差等を良好に補正することができ、光学性能の高いズームレンズを実現することができる。
【0015】
当該ズームレンズでは、第1レンズ群に収束作用を持たせ、第2レンズ群に発散作用を持たせたテレフォト型のパワー配置を採用している。そのため、望遠端において、当該ズームレンズの光学全長を焦点距離に比して短くすることが容易になり、当該ズームレンズの大型化を抑制しつつ、望遠化することができる。すなわち、標準系ズームレンズに適した屈折力配置とすることができる。
【0016】
(3)第3レンズ群(フォーカス群)
当該ズームレンズにおいて、第3レンズ群はフォーカス群として機能する。すなわち、当該ズームレンズでは、第3レンズ群を光軸方向に移動させることで、無限遠物体から近接物体に合焦する。
【0017】
上述のとおり、第3レンズ群は負の屈折力を有する単レンズ1枚からなる。ここで、単レンズには球面レンズ及び非球面レンズが含まれる。非球面レンズの場合、表面に非球面フィルムが貼設されたいわゆる複合非球面レンズも含まれる。なお、複数枚の単レンズが接合されて一体化されたいわゆる接合レンズは本件発明にいう単レンズには該当しない。
【0018】
当該ズームレンズは、単レンズ1枚からなる第3レンズ群をフォーカス群とし、第3レンズ群に空気間隔が含まれない構成とすることで、第3レンズ群の小型化及び軽量化を図ることができる。そのため、合焦時に第3レンズ群を光軸方向に移動させるためのメカ部材(以下、「フォーカス駆動機構」と称する。)の小型化及び軽量化を図ることができ、当該ズームレンズユニット全体の小型化及び軽量化を図ることができる。なお、ズームレンズユニットには、当該ズームレンズの他、変倍時に各レンズ群を相対的に移動させるための駆動機構(以下、ズーム駆動機構)や上記フォーカス駆動機構の他、これらを収容する鏡筒等が含まれるものとする。
【0019】
また、正の屈折力を有する後群の物体側に単レンズ1枚からなる第3レンズ群を空気間隔を介して配置することで、フォーカス群のいわゆるピント敏感度を高くすることができる。なお、ピント敏感度とは、合焦の際のフォーカス群の光軸方向における移動量に対する結像面の光軸方向における移動量の比をいう。ピント敏感度を高くすることで、合焦の際の第3レンズ群の移動量を削減することができる。また、上述のとおり、第3レンズ群の小型化及び軽量化が図られているため、迅速なオートフォーカスを実現することができる。
【0020】
さらに、第3レンズ群を単レンズ1枚のみから構成することで、第3レンズ群を複数枚の単レンズを空気間隔を介して配置した構成と比較すると、偏芯誤差や、単レンズ間の空気間隔の誤差等、種々の製造誤差を小さくすることができる。そのため、製造誤差に起因する光学性能の低下を小さくすることができ、製品毎の性能のバラツキを小さくすることができる。従って、光学性能の高いズームレンズを歩留まりよく製造することができる。第3レンズ群を複数枚の単レンズを接合した接合レンズから構成することも製造誤差を低減する上では、好ましい。しかしながら、第3レンズ群を単レンズ1枚のみで構成した方が製造誤差をより低減することができ、且つ、フォーカス群の軽量化を図る上でも好ましい。
【0021】
当該ズームレンズでは、第3レンズ群の像側に、後群が配置される。そのため、第3レンズ群の前後に配置される第2レンズ群と後群を支持するレンズ枠に対して、第3レンズ群を支持するレンズ枠を吊軸などにより移動可能に連結し、第3レンズ群を支持するレンズ枠をアクチュエータ等により吊軸に沿って移動させるようなフォーカス駆動機構を採用することが容易になる。すなわち、前後に配置された他のレンズを支持するレンズ枠に、フォーカス群を移動可能に連結することで、フォーカス群の移動を安定的に支持することが可能になる。
【0022】
(4)後群
当該ズームレンズにおいて、後群は、第3レンズ群と撮像素子との間に配置される全てのレンズ群(ズーム群)の総称である。すなわち、当該ズームレンズがn個のレンズ群を備える場合、第3レンズ群よりも像側に配置された(n−3)個のレンズ群全てを指して後群と称する。また、当該実施の形態において、一つのレンズ群は、単レンズ1枚、又は互いに隣接する複数枚の単レンズから構成され、一つのレンズ群に含まれる単レンズは、変倍時及び合焦時の光学方向における移動の向き及び移動量が全て同じであるものとする。なお、各レンズ群は複数枚の単レンズが接合された接合レンズを含んでいてもよい。また、互いに隣接するレンズ群は、変倍時における光軸方向における移動の向き及び/又は移動量がそれぞれ異なるものとし、一つのレンズ群が1枚の単レンズから構成される場合もある。
【0023】
後群を構成するレンズ群の数は、1以上4以下であることが好ましく、2以上3以下であることが当該ズームレンズの小型化及び軽量化を図る上で好ましい。
【0024】
例えば、後群は、正の屈折力を有する第4レンズ群からなる例、正の屈折力を有する第4レンズ群、正の屈折力を有する第5レンズ群及び負の屈折力を有する第6レンズ群からなる例などが挙げられるが、後群の構成はこれらに限定されるものではない。その他、正の屈折力を有する第4レンズ群及び正の屈折力を有する第5レンズ群からなる例等、種々の構成を採用することができる。
【0025】
後群全体として正の屈折力を有する限り、後群を構成するレンズ群の数や後群内における屈折力配置などは適宜変更することができる。フォーカス群よりも像側に正の合成屈折力を有する後群を配置することで、Fナンバーの小さい明るい光学系を実現することが容易になる。
【0026】
(5)開口絞り
当該ズームレンズにおいて、開口絞りの配置は特に限定されるものではない。但し、ここでいう開口絞りは、当該ズームレンズの光束径を規定する開口絞り、すなわち当該ズームレンズのFnoを規定する開口絞りをいう。
【0027】
しかしながら、開口絞りを第4レンズ群内、又は第4レンズ群の物体側或いは像側に空気間隔を隔てて隣接配置することが、合焦域全域において良好な光学性能を得る上で好ましい。有限距離物体に合焦する場合、物体距離によらず開口絞りの近傍では光線高さは略一定となる。そのため、フォーカス群と空気間隔を隔てて物体側又は像側に開口絞りを配置することで、合焦時における収差変動を抑制することができる。また、有限距離物体に合焦する際に発生する球面収差や像面湾曲の補正を行う上でも当該位置に開口絞りを配置することが有効である。
【0028】
1−2.動作
(1)変倍時の動作
当該ズームレンズにおいて、広角端から望遠端への変倍に際して、第1レンズ群と第2レンズ群との間の空気間隔は増大し、第3レンズ群と後群との間の空気間隔が減少するようにレンズ群間の空気間隔を変化させる。
【0029】
ここで、後群が複数のレンズ群を備える場合、第1レンズ群と第2レンズ群との間の空気間隔が増大し、第3レンズ群と後群に配置される最も物体側のレンズ群(すなわち、第4レンズ群)との間の空気間隔が減少していればよい。すなわち、第2レンズ群と第3レンズ群との間の空気間隔の増減、後群を構成する各レンズ群間の空気間隔の増減については特に規定されるものではない。
【0030】
各レンズ群間の空気間隔が上述のように変化する限り、変倍に際して当該ズームレンズを構成する全てのレンズ群を光軸方向に移動させてよいし、一部のレンズ群を光軸方向に固定し、残りのレンズ群を光軸方向に移動させてもよく、個々のレンズ群の移動の有無及び移動の方向は特に限定されるものではない。
【0031】
ここで、広角端から望遠端への変倍に際して、第1レンズ群を物体側に移動させるようにすれば、広角端における当該ズームレンズの光学全長を短くすることができる。この場合、鏡筒を外筒部分に対して内筒部分を繰り出し可能に収容した入れ子状の構造とし、広角端から望遠端への変倍時に例えば内筒部分を繰り出して第1レンズ群を物体側に移動させ、望遠端から広角端への変倍時に内筒部分が外筒部分に収容されるようにすれば、広角端状態における鏡筒長を短くすることができ、当該ズームレンズユニットの小型化を図ることができる。
【0032】
(2)合焦時の動作
当該ズームレンズにおいて、第3レンズ群がフォーカス群となり、合焦の際には当該第3レンズ群が光軸方向に移動する。合焦時における第3レンズ群の移動の方向は特に限定されるものではないが、例えば、無限遠から近接物体に合焦する際に像側に移動することが好ましい。
【0033】
ここで、当該ズームレンズでは、フォーカス群を単レンズ1枚から構成することにより、望遠端における最短撮像距離と、広角端における最短撮像距離とを異なる距離にすることができる。例えば、望遠端における最短撮像距離と比べ、広角端における最短撮像距離を短くすることができる。但し、最短撮像距離(最短撮影距離)とは、結像面から被写体までの最短の距離をいう。
【0034】
また、当該ズームレンズでは、物体側から順に正の屈折力を有する第1レンズ群と、負の屈折力を有する第2レンズ群と、負の屈折力を有する第3レンズ群とを有する。このような屈折力配置のズームレンズにおいて、第3レンズ群をフォーカス群とする場合、近接被写体撮像時における軸上色収差の発生量や球面収差の発生量は広角端の方が望遠端より少ない。そのため、望遠端における最短撮像距離よりも広角端における最短撮像距離を短くしても広角端における上記収差の各発生量は少ない。従って、望遠端における最短撮像距離に対して、広角端における最短撮像距離を短くすることにより、被写体との距離や被写体の大きさに合わせて、撮像画角を適宜選択することができ、当該ズームレンズにより撮像可能な撮像シーンが拡大する。
【0035】
1−2.条件式
当該ズームレンズでは、上述した構成を採用すると共に、次に説明する条件式を少なくとも1つ以上満足することが好ましい。
【0036】
1−2−1.条件式(1)
(1) 55.0 < νd3 < 98.0
但し、
νd3:前記第3レンズ群を構成する負の屈折力を有する単レンズのd線におけるアッベ数
【0037】
上記条件式(1)は、第3レンズ群を構成する負の屈折力を有する単レンズのアッベ数を規定するための式である。条件式(1)を満足する場合、色収差の補正が良好になり、光学性能の高いズームレンズを実現することがより容易になる。また、条件式(1)を満足する硝材は、比較的比重の小さい硝材が多く、フォーカス群の軽量化を図る上でも効果的である。
【0038】
ここで、条件式(1)の数値が上限値以上である場合、当該フォーカス群を構成する負の屈折力を有する単レンズの色分散が小さくなるため、色収差を補正する上では好ましい。しかしながら、アッベ数の大きい硝材はアッベ数の小さい硝材と比較すると高価である。アッベ数が上限値以上の硝材を用いた場合、色収差の補正に関する効果はあるものの、費用対効果を考えるとその効果は小さい。そのため、条件式(1)の数値が上限値以上になることはコスト的な観点から好ましくない。一方、条件式(1)の数値が下限値以下になると、フォーカス群を構成する負の屈折力を有する単レンズの色分散が大きく、有限距離物体への合焦時における軸上色収差の補正が困難となり好ましくない。
【0039】
これらの効果を得る上で、条件式(1)の下限値は58.0であることが好ましく、60.0であることがより好ましい。また条件式(1)の上限値は96.0であることが好ましく、83.0であることがより好ましく、79.0であることがさらに好ましく、76.0であることが一層好ましく、73.0であることがより一層好ましい。
【0040】
1−2−2.条件式(2)
(2)32.0 < νd2nmin < 50.0
νd2nmin:第2レンズ群に含まれる負の屈折力を有するレンズの中で最もd線におけるアッベ数が小さいレンズのd線におけるアッベ数
【0041】
条件式(2)は、第2レンズ群に含まれる負の屈折力を有するレンズの中で最もd線におけるアッベ数が小さいレンズのアッベ数を規定するための式である。当該ズームレンズでは、第3レンズ群が負の屈折力を有する単レンズ1枚から構成される。当該第3レンズは分散の小さな硝材を用いることが好ましい。そのため、条件式(2)を満足させることにより、色収差の補正が良好になり光性能なズームレンズを実現することができる。
【0042】
これに対して、条件式(2)の数値が上限値以上になると、すなわち第2レンズ群に含まれる負の屈折力を有するレンズの中で最もd線におけるアッベ数が小さいレンズのアッベ数が大きくなると、望遠端において長波長側の光線の軸上色収差が大きくなるため好ましくない。一方、条件式(2)の数値が下限値以下になると、すなわち第2レンズ群に含まれる負の屈折力を有するレンズの中で最もd線におけるアッベ数が小さいレンズのアッベ数が小さくなると、望遠端では短波長側の光線の軸上色収差が大きくなるとともに、広角端では倍率色収差が大きくなるため好ましくない。
【0043】
上記効果を得る上で、条件式(2)の下限値は33.0であることが好ましく、34.0であることがより好ましく、35.0であることがさらに好ましい。また条件式(2)の上限値は48.5であることが好ましく、47.0であることがより好ましい。
【0044】
1−2−3.条件式(3)
(3) −0.40 < β2w×β3w < −0.10
但し、
β2w: 広角端における第2レンズ群の無限遠合焦時の横倍率
β3w: 広角端における第3レンズ群の無限遠合焦時の横倍率
【0045】
上記条件式(3)は、広角端における第2レンズ群及び第3レンズ群の無限遠合焦時の合成横倍率を規定する式である。条件式(3)を満足する場合、少ないレンズ枚数で像面湾曲、コマ収差、歪曲収差等の収差補正を良好に行うことができ、光学性能の高いズームレンズを小型に構成することができる。
【0046】
これに対して、条件式(3)の数値が上限値以上になると、広角端における第2レンズ群及び第3レンズ群の無限遠合焦時の合成横倍率が小さくなり、第2レンズ群及び第3レンズ群による広画角化効果が強くなりすぎる。そのため、像面湾曲、コマ収差、歪曲収差等の収差補正が困難となり、光学性能の高いズームレンズを実現するためには収差補正のためにレンズ枚数を増加する必要がある。そのため、当該ズームレンズの小型化を図ることが困難になり、好ましくない。一方、条件式(3)の数値が下限値以下になると、広角端における第2レンズ群の無限遠合焦時の横倍率が大きくなり、広角端において短い焦点距離を達成することが困難になる。そのため、広角端における画角の広いズームレンズを得ることが困難になり、好ましくない。
【0047】
これらの効果を得る上で、条件式(3)の下限値は−0.35であることがより好ましく、−0.30であることがさらに好ましく、−0.28であることが一層好ましい。また条件式(3)の上限値は−0.12であることがより好ましく、−0.13であることがさらに好ましく、−0.14であることが一層好ましい。
【0048】
1−2−4.条件式(4)
(4) −3.70 <(Cr3f+Cr3r)/(Cr3f−Cr3r)< 0.00
但し、
Cr3f:第3レンズ群の最も物体側の面の曲率半径
Cr3r:第3レンズ群の最も像側の面の曲率半径
【0049】
上記条件式(4)は、フォーカス群である第3レンズ群を構成する単レンズの形状を規定するための式である。条件式(4)の範囲を満足する場合、フォーカス群である第3レンズ群を構成する単レンズが物体側に強い曲率を有する形状となる。第3レンズ群を構成する単レンズの形状が上記条件式(4)に規定される形状とすることで、球面収差の補正を良好に行うことが可能になり、近接被写体に合焦する際の収差変動を小さくすることができ、合焦域全域において光学性能の高いズームレンズを実現することができる。
【0050】
これらの効果を得る上で、条件式(4)の下限値は−3.30であることがより好ましく、−3.00であることがさらに好ましく、−2.80であることが一層好ましく、−2.50であることがより一層好ましい。また条件式(4)の上限値は−0.10であることがより好ましく、−0.30であることがさらに好ましく、−0.50であることが一層好ましく、−0.60であることがより一層好ましい。
【0051】
1−2−5.条件式(5)
(5) −2.00 < f3/ft < −0.20
但し、
f3 :第3レンズ群の焦点距離
ft :望遠端における当該ズームレンズの焦点距離
【0052】
上記条件式(5)は、フォーカス群である第3レンズ群の焦点距離と望遠端における当該ズームレンズの焦点距離との比を規定するための式である。条件式(5)を満足する場合、近接被写体に合焦する際に軸上色収差、球面収差、像面湾曲などの発生を抑制し、合焦域全域において光学性能の高いズームレンズを実現することができる。また、条件式(5)を満足する場合、フォーカス群の屈折力が適正な範囲内となるため、いわゆるピント敏感度を適切な範囲内にすることができる。ここで、ピント敏感度は、フォーカス群が単位量移動したときの結像面の移動量を表す。ピント敏感度が適切な範囲内であると、無限遠物体から近接物体への合焦時におけるフォーカス群の移動量を適切な範囲内とすることができ、迅速なオートフォーカスを実現すると共に、当該ズームレンズの小型化を図ることが容易になる。
【0053】
これに対して、条件式(5)の数値が下限値以下になると、第3レンズ群の焦点距離が望遠端における当該ズームレンズの焦点距離に対して小さくなる。すなわち、フォーカス群の屈折力が強くなりすぎる。この場合、近接被写体合焦時における軸上色収差や球面収差や像面湾曲が大きくなるため、合焦域全域において高い光学性能を維持することが困難になるため好ましくない。また、この場合、フォーカス群のピント敏感度が高くなりすぎる。そのため、合焦位置の位置ずれを補正するための第3レンズ群の移動量が小さくなりすぎるため、高精度の位置制御が必要となり好ましくない。一方、条件式(5)の数値が上限値以上になると、第3レンズ群の焦点距離が望遠端における当該ズームレンズの焦点距離に対して大きくなる。この場合、フォーカス群のピント敏感度が低くなりすぎるため、近接被写体合焦時の第3レンズ群の移動量が大きくなる。この場合、第3レンズ群を移動するための空気間隔を確保する必要があるため、当該ズームレンズの光学全長の大型化を招き好ましくない。
【0054】
これらの効果を得る上で、条件式(5)の下限値は−1.80であることがより好ましく、−1.60であることがさらに好ましく、−1.30であることが一層好ましい。また条件式(5)の上限値は−0.25であることがより好ましく、−0.30であることがさらに好ましく、−0.35であることが一層好ましい。
【0055】
1−2−6.条件式(6)
(6) 0.30<{1−(β3t×β3t)}×β4tr×β4tr<15.00
但し、
β3t :第3レンズ群の望遠端における無限遠合焦時の横倍率
β4tr:当該ズームレンズにおいて、第3レンズ群より像側に配置された全レンズの望遠端における無限遠合焦時の合成横倍率
【0056】
条件式(6)は、第3レンズ群のピント敏感度、すなわちフォーカス群のピント敏感度を規定するための式である。ピント敏感度は上述したとおりである。条件式(6)を満足する場合、無限遠物体から近接物体への合焦時におけるフォーカス群の移動量を適切な範囲内とすることができ、迅速なオートフォーカスを実現すると共に、当該ズームレンズの小型化を図ることが容易になる。
【0057】
これに対して、条件式(6)の数値が上限値以上になると、フォーカス群としての第3レンズ群のピント敏感度が小さくなりすぎる。そのため、無限遠物体から近接物体への合焦時における第3レンズ群の移動量が大きくなり、光学全長が長くなるため、当該ズームレンズの小型化が困難になり好ましくない。また条件式(6)の数値が下限値以下になると、第3レンズ群のピント敏感度が高くなりすぎる。そのため、合焦位置の位置ずれを補正するための第3レンズ群の移動量が小さくなりすぎるため、高精度の位置制御が必要となり好ましくない。
【0058】
なお、条件式(6)を満足する場合、条件式(6)の値は正であることから、無限遠物体から近接物体への合焦時におけるフォーカス群の移動方向は物体側である。
【0059】
上記効果を得る上で、条件式(6)の下限値は0.50であることがより好ましく、1.00であることがさらに好ましく、1.50であることが一層好ましく、1.80であることがより一層好ましく、2.10であることがさらに一層好ましい。また条件式(6)の上限値は13.00であることがより好ましく、11.00であることがさらに好ましく、9.00であることが一層好ましく、8.00であることがより一層好ましい。
【0060】
1−2−7.条件式(7)
(7) 0.20 < f2/f3 < 1.50
但し、
f2 :第2レンズ群の焦点距離
f3 :第3レンズ群の焦点距離
【0061】
上記条件式(7)は、第2レンズ群の焦点距離と第3レンズ群の焦点距離との比を規定するための式である。条件式(7)を満足する場合、第2レンズ群の焦点距離が第3レンズ群の焦点距離に対して適正な範囲内となり、第2レンズ群による広画角化効果が適正な範囲内となる。そのため、当該ズームレンズにおいて最も物体側に配置されるレンズ、すなわち前玉の径を小さくすることができ、当該ズームレンズの小型化を図ることがより容易になる。これと同時に、少ないレンズ枚数で像面湾曲、コマ収差、歪曲収差等の収差補正を良好に行うことができ、光学性能の高いズームレンズを小型に構成することができる。
【0062】
これに対して、条件式(7)の数値が上限値以上になると、第2レンズ群の焦点距離が第3レンズ群の焦点距離に対して長くなりすぎ、第2レンズ群による広画角化効果が弱くなる。そのため、広角端において広画角を達成するには、前玉径を大きくする必要があるため、当該ズームレンズの小型化を図ることが困難になる。一方、条件式(7)の数値が下限値以下になると、第2レンズ群の焦点距離が第3レンズ群の焦点距離に対して短くなりすぎ、像面湾曲、コマ収差、歪曲収差等の収差補正が困難となる。そのため、光学性能の高いズームレンズを実現するためには収差補正のためにレンズ枚数を増加する必要があり、当該ズームレンズの小型化を図ることが困難になり、好ましくない。
【0063】
これらの効果を得る上で、条件式(7)の下限値は0.24であることがより好ましく、0.28であることがさらに好ましく、0.31であることが一層好ましい。また条件式(7)の上限値は1.30であることがより好ましく、1.20であることがさらに好ましく、1.10であることが一層好ましい。
【0064】
1−2−8.条件式(8)
当該ズームレンズにおいて、広角端から望遠端に変倍する際に第1レンズ群が物体側に移動することが上述のとおり好ましい。この場合、以下の条件式(7)を満足することが好ましい。
【0065】
(8) 0.15 < |X1|/ft < 0.65
但し、
X1 :広角端から望遠端に変倍する際における第1レンズ群の物体側への移動量
ft :望遠端における当該ズームレンズの焦点距離
【0066】
上記条件式(8)は、広角端から望遠端に変倍する際の第1レンズ群の物体側への移動量を規定するための式である。条件式(8)を満足する場合、第1レンズ群の屈折力が適正であり、且つ、変倍時における当該移動量が適正な範囲内となる。そのため、所定のズーム比を確保しつつ、広角端における当該ズームレンズの光学全長を短くすることができ、当該ズームレンズの小型化を図ることができる。
【0067】
これに対して、条件式(8)の数値が下限値以下になると、変倍時における第1レンズ群の上記移動量が小さくなる。この場合、所定の変倍比を確保するには、各レンズ群の屈折力を強くする必要がある。各レンズ群の屈折力を強くすると、軸上色収差や球面収差等の収差補正の為に多くのレンズ枚数が必要となり、当該ズームレンズの小型化を図ることが困難になる。また、条件式(8)の数値が上限値以上になると、変倍時における第1レンズ群の上記移動量が大きくなる。すなわち、広角端における光学全長と望遠端における光学全長の差が大きくなる。この場合、鏡筒を外筒部分に内筒部分を収容した入れ子状の構造とした場合、広角端における光学全長に合わせて鏡筒長を設計すると、内筒部分を2重にして外筒部分に収容する必要が生じるなど、鏡筒の構造が複雑となり、鏡筒の外径も大きくなるため好ましくない。
【0068】
これらの効果を得る上で、条件式(8)の下限値は0.19であることがより好ましく、0.25であることがさらに好ましく、0.35であることが一層好ましく、0.38であるとさらに一層好ましい。また条件式(8)の上限値は0.60であることがより好ましく、0.55であることがさらに好ましく、0.50であることが一層好ましく、0.46であるとさらに一層好ましい。
【0069】
1−2−9.条件式(9)
(9) −0.60 < Cr3f/ft < −0.15
但し、
Cr3f:第3レンズ群の最も物体側の面の曲率半径
ft :望遠端における当該ズームレンズの焦点距離
【0070】
上記条件式(9)は、フォーカス群としての第3レンズ群を構成する単レンズの最も物体側の面の曲率半径と、望遠端における当該ズームレンズの焦点距離との比を規定するための式である。条件式(9)の範囲を満足する場合、第3レンズ群を構成する単レンズの最も物体側の面の曲率半径が望遠端における当該ズームレンズの焦点距離に対して適正な範囲内となり、球面収差とコマ収差の補正バランスが良好になる。
【0071】
これらの効果を得る上で、条件式(9)の下限値は−0.58であることがより好ましく、−0.55であることがさらに好ましく、−0.50であることが一層好ましい。また条件式(9)の上限値は−0.18であることがより好ましく、−0.20であることがさらに好ましく、−0.22であることが一層好ましい。
【0072】
1−2−10.条件式(10)
(10) 0.30 < (−f123w+D34w)/FBw < 1.50
但し、
f123w:広角端における前記第1レンズ群、前記第2レンズ群及び前記第3レンズ群の合成焦点距離
D34w:広角端における第3レンズ群の最も像側の面と後群の最も物体側の面との間の光軸上の距離
FBw :広角端における当該ズームレンズの最も像側面から結像面までの空気換算長
【0073】
条件式(10)は、広角端における後群に入射する光束の集光点と後群から射出する光束の集光点との比を規定するための式である。条件式(10)において、分子は後群に入射する光束の集光点から後群の最も物体側の面までの光軸上の距離を表し、分母はいわゆるバックフォーカスであり、後群から射出する光束の集光点と後群の最も像側面との光軸上の距離を表している。条件式(10)を満足することで、交換レンズシステムに好適な適切なバックフォーカスを確保しつつ、当該ズームレンズの小型化を図ることができる。
【0074】
これに対して、条件式(10)の数値が上限値以上になると、交換レンズシステムに適したバックフォーカスを確保することが困難になる。また、条件式(10)の数値が上限値以上であることは、後群に入射する光束の集光点が遠いことを意味する。すなわち、後群に入射する光束の集光点が物体側になり広角端における光学全長が長くなるため、当該ズームレンズの小型化を図ることが困難となる。これらのことから、条件式(10)の数値は上限値未満であることが好ましい。一方、条件式(10)の数値が下限値以下になると、広角端におけるバックフォーカスが長くなるため、交換レンズシステムに適したバックフォーカスを確保することは容易になる。しかしながら、バックフォーカスが長くなりすぎると、広角端における光学全長が長くなる。よって、この場合も当該ズームレンズの小型化を図ることが困難になる。これらのことから、条件式(10)の数値は下限値よりも大であることが好ましい。
【0075】
このとき、広角端における第1レンズ群の最も像側の面と第2レンズ群の最も物体側の面との間の光軸上の距離は、広角端における当該ズームレンズの最も像側の面から結像面までの空気換算長の二分の一以下であることが好ましい。この構成を有することで、広角端における全長の小型化を図ることができる。
【0076】
これらの効果を得る上で、条件式(10)の下限値は0.35であることが好ましく、0.40であることがより好ましく、0.45であることがさらに好ましい。また条件式(10)の上限値は1.45であることが好ましく、1.40であることがより好ましく、1.35であることがさらに好ましい。
【0077】
1−2−11.条件式(11)
(11) 0.03 < D23t/ft < 0.20
但し、
D23t:望遠端における無限遠合焦時の第2レンズ群の最も像側面と第3レンズ群の最も物体側との光軸上の距離
ft :望遠端における当該ズームレンズの焦点距離
【0078】
条件式(11)は、第2レンズ群と第3レンズ群との間隔(光軸上の距離)を規定するための式である。条件式(11)を満足する場合、望遠端において第3レンズ群の軸上光線の光線高さを低くすることができ、球面収差の誤差感度を適正な範囲内とすることができる。そのため、製造誤差を生じにくくすることができる。また、第3レンズ群はフォーカス群として機能する。条件式(11)を満足させることにより、合焦時に第3レンズ群が物体側に移動するための間隔を確保することができ、最短撮像距離を短くすることが可能になる。特に、条件式(11)を満足させることは、広角端における最短撮像距離を短くする上で有効である。
【0079】
これに対して、条件式(11)の数値が上限値以上になると、すなわち第2レンズ群と、第3レンズ群と間隔が大きくなると、望遠端において第3レンズ群の軸上光線の光線高さが高くなり、球面収差の誤差感度が高くなる。そのため、球面収差の誤差感度が大きくなり、製造誤差が生じやすくなるため、好ましくない。一方、条件式(11)の数値が下限値以下になると、すなわち第2レンズ群と、第3レンズ群との間隔が小さくなると、合焦時にフォーカス群としての第3レンズ群が移動するための間隔を確保することができ、最短撮像距離を短くすることができなくなり、好ましくない。
【0080】
これらの効果を得る上で、条件式(11)の下限値は0.04であることがより好ましく、0.05であることがさらに好ましく、0.06であることが一層好ましい。また、条件式(11)の上限値は0.18であることがより好ましく、0.16であることがさらに好ましく、0.15であることが一層好ましく、0.14であることがより一層好ましく、0.12であることがさらに一層好ましい。
【0081】
1−2−12.条件式(12)
(12) 2.00 < Cr2f/fw < 50.00
但し、
Cr2f:第2レンズ群の最も物体側の面の曲率半径
fw :広角端における当該ズームレンズの焦点距離
【0082】
条件式(12)は、第2レンズ群の最も物体側面の曲率半径と前記ズームレンズの広角端における焦点距離の比を規定するための式である。条件式(12)の値が正であることは、第2レンズ群の最も物体側の面が物体側に凸の形状であることを意味する。条件式(12)を満足することで、第2レンズ群の最も物体側面の曲率半径が広角端における当該ズームレンズの焦点距離に対して適正な範囲内となり、歪曲収差とコマ収差とをバランスよく補正することができる。
【0083】
上記効果を得る上で、条件式(12)の下限値は2.05であることがより好ましく、2.10であることがさらに好ましく、2.15であることが一層好ましい。また条件式(12)の上限値は30.00であることがより好ましく、25.00であることがさらに好ましく、18.00であることが一層好ましい。
【0084】
1−2−13.条件式(13)
(13)15.0 < νd2p < 27.0
但し、
νd2p:第2レンズ群に含まれる正の屈折力を有するレンズの中のいずれか一のレンズのd線におけるアッベ数
【0085】
条件式(13)は、第2レンズ群に含まれる正の屈折力を有するレンズの中のいずれか一のレンズのアッベ数を規定するための式である。なお、第2レンズ群に含まれる正の屈折力を有するレンズが1枚であれば、その正の屈折力を有するレンズが上記条件式(13)を満足することが求められる。条件式(13)を満足させることにより、色収差の補正が良好になり光性能なズームレンズを実現することができる。ここで、上述した条件式(2)と(13)を共に満足することで、広角端と望遠端における軸上色収差と倍率色収差とをバランスよく補正することができるため、より高性能なズームレンズを実現することができる。
【0086】
これに対して、条件式(13)の数値が上限値以上になると、すなわち第2レンズ群に含まれる正の屈折力を有するレンズの中のいずれか一のレンズのアッベ数が大きくなると、望遠端では短波長側の光線の軸上色収差が大きくなるとともに、広角端では倍率色収差が大きくなるため好ましくない。一方、条件式(13)の数値が下限値以下になると、すなわち第2レンズ群に含まれる正の屈折力を有するレンズの中のいずれか一のレンズのアッベ数が小さくなると、望遠端における軸上色収差が大きくなるため好ましくない。
【0087】
上記効果を得る上で、条件式(13)の下限値は16.0であることが好ましく、16.8であることがより好ましく、17.8であることがさらに好ましく、19.0であることが一層好ましい。また条件式(13)の上限値は25.6であることが好ましい。
【0088】
2.撮像装置
次に、本件発明に係る撮像装置について説明する。本件発明に係る撮像装置は、上記本件発明に係るズームレンズと、当該ズームレンズの像面側に設けられた、当該ズームレンズによって形成された光学像を電気的信号に変換する撮像素子とを備えたことを特徴とする。
【0089】
ここで、撮像素子等に特に限定はなく、CCD(Charge Coupled Device)センサやCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)センサなどの固体撮像素子等も用いることができる。本件発明に係る撮像装置は、デジタルカメラやビデオカメラ等のこれらの固体撮像素子を用いた撮像装置に好適である。また、当該撮像装置は、レンズが筐体に固定されたレンズ固定式の撮像装置であってもよいし、一眼レフカメラやミラーレス一眼カメラ等のレンズ交換式の撮像装置であってもよいのは勿論である。特に、本件発明に係るズームレンズは交換レンズシステムに好適なバックフォーカスを確保することができる。そのため、光学式ファインダーや、位相差センサ、これらに光を分岐するためのリフレックスミラー等を備えた一眼レフカメラ等の撮像装置に好適である。
【0090】
本発明の撮像装置は、撮像素子により取得した撮像画像データを電気的に加工して、撮像画像の形状を変化させる画像処理部や、当該画像処理部において撮像画像データを加工するために用いる画像補正データ、画像補正プログラム等を保持する画像補正データ保持部等を有することがより好ましい。ズームレンズを小型化した場合、結像面において結像された撮像画像形状の歪み(歪曲)が生じやすくなる。その際、画像補正データ保持部に予め撮像画像形状の歪みを補正するための歪み補正データを保持させておき、上記画像処理部において、画像補正データ保持部に保持された歪み補正データを用いて、撮像画像形状の歪みを補正することが好ましい。このような撮像装置によれば、ズームレンズの小型化をより一層図ることができ、秀麗な撮像画像を得ると共に、撮像装置全体の小型化を図ることができる。
【0091】
さらに、本件発明に係る撮像装置において、上記画像補正データ保持部に予め倍率色収差補正データを保持させておき、上記画像処理部において、画像補正データ保持部に保持された倍率色収差補正データを用いて、当該撮像画像の倍率色収差補正を行わせることが好ましい。画像処理部により、倍率色収差、すなわち、色の歪曲収差を補正することで、光学系を構成するレンズ枚数を削減することが可能になる。そのため、このような撮像装置によれば、ズームレンズの小型化をより一層図ることができ、秀麗な撮像画像を得ると共に、撮像装置全体の小型化を図ることができる。
【0092】
次に、実施例を示して本件発明を具体的に説明する。但し、本件発明は以下の実施例に限定されるものではない。以下に挙げる各実施例のズームレンズは、デジタルカメラ、ビデオカメラ、銀塩フィルムカメラ等の撮像装置(光学装置)に適用可能である。また、各レンズ断面図において、図面に向かって左方が物体側、右方が結像面側である。
【実施例1】
【0093】
(1)ズームレンズの光学構成
図1は、本件発明に係る実施例1のズームレンズの広角端における無限遠合焦時のレンズ構成を示すレンズ断面図である。当該ズームレンズは、物体側から順に、正の屈折力を有する第1レンズ群G1と、負の屈折力を有する第2レンズ群G2と、負の屈折力を有する第3レンズ群G3と、正の屈折力を有する第4レンズ群G4とから構成されている。無限遠物体から近接物体への合焦の際、第3レンズ群G3が光軸に沿って物体側に移動する。開口絞りSは第4レンズ群G4中に配置されている。本実施例では後群は、第4レンズ群G4からなる。
【0094】
以下、各レンズ群の構成を説明する。第1レンズ群G1は、物体側から順に、物体側凸形状の負メニスカスレンズL1と凸レンズL2とが接合された接合レンズから構成される。
【0095】
第2レンズ群G2は、物体側から順に、物体側凸形状の負メニスカスレンズL3と、凹レンズL4と、凸レンズL5とから構成されている。
【0096】
第3レンズ群G3は、物体側凹形状の負メニスカスレンズL6から構成されている。すなわち、負の屈折力を有する単レンズ1枚から構成されている。
【0097】
第4レンズ群G4は、物体側から順に、両凸レンズL7と、開口絞りSと、凸レンズL8及び凹レンズL9が接合された接合レンズと、両凸レンズL10及び両凹レンズL11が接合された接合レンズと、凸レンズL12とから構成されている。両凸レンズL10の物体側面は非球面である。
【0098】
実施例1のズームレンズでは広角端から望遠端への変倍時に像面に対して、第1レンズ群G1が物体側に移動し、第2レンズ群G2が像側凸の軌跡で移動し、第3レンズ群G3が物体側に移動し、第4レンズ群G4が物体側に移動する。
【0099】
また、撮像時の手振れ等に起因する像ブレ発生時には、当該ズームレンズを構成するレンズのうち、少なくとも1枚のレンズを防振群とし、当該防振群を偏芯させることで像ブレ補正を行うことが好ましい。
【0100】
また、
図1に示す「IMG」は結像面であり、具体的にはCCDセンサ、CMOSセンサ等の固体撮像素子の撮像面、或いは、銀塩フィルムのフィルム面等を表す。また、結像面IMGの物体側にはカバーガラスCG等の実質的な屈折力を有さない平行平板を備える。これらの点は、他の実施例で示す各レンズ断面図においても同様であるため、以下では説明を省略する。
【0101】
(2)数値実施例
次に、当該ズームレンズの具体的数値を適用した数値実施例について説明する。表1に当該ズームレンズの面データを示す。表1において、「面番号」は物体側から数えたレンズ面の順番、「r」はレンズ面の曲率半径、「d」はレンズ面の光軸上の間隔、「Nd」はd線(波長λ=587.6nm)に対する屈折率、「νd」はd線に対するアッベ数、「H」は有効半径を示している。また、面番号の次の欄に表示する「ASP」は当該レンズ面が非球面であることを表し、「S」は開口絞りを表している。さらに、レンズ面の光軸上の間隔の欄に、「D3」、「D9」等と示すのは、当該レンズ面の光軸上の間隔が変倍時又は合焦時に変化する可変間隔であることを意味する。なお、各表中の長さの単位は全て「mm」であり、画角の単位は全て「°」である。また、曲率半径の「0」は平面を意味する。なお、表1における第23面及び第24面はカバーガラスCGの面データである。
【0102】
表2は、当該ズームレンズの緒元表である。当該緒元表には、無限遠合焦時における当該ズームレンズの焦点距離「f」、Fナンバー「Fno.」、半画角「ω」、像高「Y」、光学全長「TL」を示す。但し、表2には、左側から順に、広角端、中間焦点距離状態、望遠端におけるそれぞれの値を示している。
【0103】
表3に、変倍時における当該ズームレンズの光軸上の可変間隔を示す。表3において、左側から順に、広角端、中間焦点距離状態、望遠端における無限遠合焦時におけるそれぞれの値を示している。なお、表中「INF」は「∞(無限大)」であることを示す。
【0104】
表4に、合焦時における当該ズームレンズの光軸上の可変間隔を示す。表4には、広角端、中間焦点距離状態、望遠端において、それぞれ撮影距離(撮像距離)が280.00mm、300.00mm、300.00mmのときの値を示している。これらの撮影距離が各焦点距離における最短撮像距離である。
【0105】
表5は、当該ズームレンズを構成する各レンズ群の焦点距離を示している。
【0106】
表6は、各非球面の非球面係数である。当該非球面係数は、各非球面形状を下記式で定義したときの値である。また、表19に、各条件式(1)〜条件式(13)の値を示す。
【0107】
X(Y)= (Y
2/r)/[1+(1-ε・Y
2/r
2)
1/2]+A4・Y
4+A6・Y
6+A8・Y
8+A10・Y
10+A12・Y
12
【0108】
但し、表6において、「E−a」は「×10
−a」を示す。また、上記式において、「X」は光軸方向の基準面からの変位量、「r」は近軸曲率半径、「Y」は光軸に垂直な方向の光軸からの高さ、「ε」は円錐係数、「An」はn次の非球面係数とする。
これらの表に関する事項は他の実施例で示す各表においても同様であるため、以下では説明を省略する。
【0109】
【表1】
【0110】
【表2】
【0111】
【表3】
【0112】
【表4】
【0113】
【表5】
【0114】
【表6】
【0115】
また、
図2〜
図4に当該実施例1のズームレンズの広角端、中間焦点距離状態、望遠端における無限遠合焦時の縦収差図をそれぞれ示す。各図に示す縦収差図は、図面に向かって左側から順に、それぞれ球面収差(mm)、非点収差(mm)、歪曲収差(%)である。球面収差を表す図では、縦軸は開放F値との割合、横軸にデフォーカスをとり、実線がd線(波長λ=587.6nm)、点線がg線(波長λ=435.8nm)における球面収差を示す。非点収差を表す図では、縦軸は像高、横軸にデフォーカスをとり、実線がd線に対するサジタル像面(ds)、点線がd線に対するメリジオナル像面(dm)を示す。歪曲収差を表す図では、縦軸は像高、横軸に%をとり、歪曲収差を表す。これらの縦収差図に関する事項は、他の実施例で示す縦収差図においても同様であるため、以下では説明を省略する。
【0116】
また、当該ズームレンズの広角端における無限遠合焦時のバックフォーカス「fb」は以下のとおりである。但し、以下の値は、カバーガラス(Nd=1.5168)を含まない値であり、他の実施例に示すバックフォーカスも同様である。
fb= 37.320(mm)
【実施例2】
【0117】
(1)ズームレンズの光学構成
図5は、本件発明に係る実施例2のズームレンズの広角端における無限遠合焦時のレンズ構成を示すレンズ断面図である。当該ズームレンズは、物体側から順に、正の屈折力を有する第1レンズ群G1と、負の屈折力を有する第2レンズ群G2と、負の屈折力を有する第3レンズ群G3と、正の屈折力を有する第4レンズ群G4と、正の屈折力を有する第5レンズ群G5と、負の屈折力を有する第6レンズ群G6とから構成されている。無限遠物体から近接物体への合焦の際、第3レンズ群G3が光軸に沿って像側に移動する。開口絞りSは第4レンズ群G4の最も物体側に配置されている。本実施例では後群は、第4レンズ群G4、第5レンズ群G5及び第6レンズ群G6からなる。
【0118】
以下、各レンズ群の構成を説明する。第1レンズ群G1は、物体側から順に、物体側凸形状の負メニスカスレンズL1及び両凸レンズL2が接合された接合レンズと、物体側凸形状の正メニスカスレンズL3とから構成されている。
【0119】
第2レンズ群G2は、物体側から順に、物体側凸形状の負メニスカスレンズL4と、両凹レンズL5と、両凸レンズL6とから構成されている。負メニスカスレンズL4は、物体側面が非球面である複合非球面レンズである。
【0120】
第3レンズ群G3は、両面が非球面である物体側凹形状の負メニスカスレンズL7から構成されている。すなわち、負の屈折力を有する単レンズ1枚から構成されている。
【0121】
第4レンズ群G4は、物体側から順に、開口絞りSと、両面が非球面である両凸レンズL8と、凹レンズL9とから構成されている。
【0122】
第5レンズ群G5は、凸レンズL10と、物体側凸形状の負メニスカスレンズL11及び両凹レンズL12が接合された接合レンズとから構成されている。
【0123】
第6レンズ群G6は、凸レンズL13及び凹レンズL14が接合された接合レンズと、凹レンズL15と、両凸レンズL16と、両面が非球面である凸レンズL17と、両凹レンズL18及び両凸レンズL19が接合された接合レンズとから構成されている。
【0124】
実施例2のズームレンズでは広角端から望遠端への変倍時に像面に対して、第1レンズ群G1が物体側に移動し、第2レンズ群G2が物体側に移動し、第3レンズ群G3が像側凸の軌跡で移動し、第4レンズ群G4が物体側に移動し、第5レンズ群G5が物体側に移動し、第6レンズ群G6が物体側に移動する。
【0125】
また、撮像時の手振れ等に起因する像ブレ発生時には、当該ズームレンズを構成するレンズのうち、少なくとも1枚のレンズを防振群とし、当該防振群を偏芯させることで像ブレ補正を行うことが好ましい。例えば、第6レンズ群G6の最も物体側に配置される凸レンズL13及び凹レンズL14が接合された接合レンズを防振群とし、当該接合レンズを光軸と垂直な方向に動かすことで像ブレ補正を行うことが好ましい。
【0126】
(2)数値実施例
次に、当該ズームレンズの具体的数値を適用した数値実施例について説明する。表7に、当該ズームレンズの面データを示し、表8に当該ズームレンズの緒元表を示す。なお、表7における第37面及び第38面はカバーガラスCGの面データである。
【0127】
表9に、変倍時における当該ズームレンズの光軸上の可変間隔を示し、表10に、合焦時における当該ズームレンズの光軸上の可変間隔を示す。なお、表10には、広角端、中間焦点距離状態、望遠端において、それぞれ撮影距離(撮像距離)が380.00mm、400.00mm、400.00mmのときの値を示している。これらの撮影距離が各焦点距離における最短撮像距離である。
【0128】
表11は、当該ズームレンズを構成する各レンズ群の焦点距離を示している。表12は、各非球面の非球面係数である。また、表19に各条件式(1)〜条件式(13)の値を示す。
【0129】
また、
図6〜
図8に、当該実施例2のズームレンズの広角端、中間焦点距離状態、望遠端における無限遠合焦時の縦収差図をそれぞれ示す。
【0130】
さらに、当該ズームレンズの広角端における無限遠合焦時のバックフォーカスは以下のとおりである。
fb= 39.824(mm)
【0131】
【表7】
【0132】
【表8】
【0133】
【表9】
【0134】
【表10】
【0135】
【表11】
【0136】
【表12】
【実施例3】
【0137】
(1)ズームレンズの光学構成
図9は、本件発明に係る実施例3のズームレンズの広角端における無限遠合焦時のレンズ構成を示すレンズ断面図である。当該ズームレンズは、物体側から順に、正の屈折力を有する第1レンズ群G1と、負の屈折力を有する第2レンズ群G2と、負の屈折力を有する第3レンズ群G3と、正の屈折力を有する第4レンズ群G4と、正の屈折力を有する第5レンズ群G5と、負の屈折力を有する第6レンズ群G6と、正の屈折力を有する第7レンズ群G7とから構成されている。無限遠物体から近接物体への合焦の際、第3レンズ群G3が光軸に沿って像側に移動する。開口絞りSは第4レンズ群G4の最も物体側に配置されている。本実施例では後群は、第4レンズ群G4、第5レンズ群G5、第6レンズ群G6及び第7レンズ群G7からなる。
【0138】
以下、各レンズ群の構成を説明する。第1レンズ群G1は、物体側から順に、物体側凸形状の負メニスカスレンズL1及び両凸レンズL2が接合された接合レンズと、物体側凸形状の正メニスカスレンズL3とから構成されている。
【0139】
第2レンズ群G2は、物体側から順に、物体側凸形状の負メニスカスレンズL4と、両凸レンズL5とから構成されている。負メニスカスレンズL4は、物体側面が非球面である複合非球面レンズである。両凸レンズL5の両面は非球面である。
【0140】
第3レンズ群G3は、物体側凹形状の負メニスカスレンズL7から構成されている。すなわち、負の屈折力を有する単レンズ1枚から構成されている。
【0141】
第4レンズ群G4は、物体側から順に、開口絞りSと、両面が非球面である両凸レンズL8から構成されている。
【0142】
第5レンズ群G5は、物体側凸形状の負メニスカスレンズL9及び両凸レンズL10が接合された接合レンズと、両凸レンズL11とから構成されている。
【0143】
第6レンズ群G6は、凸レンズL12及び凹レンズL13が接合された接合レンズから構成される。
【0144】
第7レンズ群G7は、両面が非球面である両凸レンズL14と、凸レンズL15と、両凹レンズL16とから構成されている。
【0145】
実施例3のズームレンズでは広角端から望遠端への変倍時に像面に対して、第1レンズ群G1が物体側に移動し、第2レンズ群G2が像側凸の軌跡で移動し、第3レンズ群G3が像側凸の軌跡で移動し、第4レンズ群G4が物体側に移動し、第5レンズ群G5が物体側に移動し、第6レンズ群G6が物体側に移動し、第7レンズ群G7が物体側に移動する。
【0146】
また、撮像時の手振れ等に起因する像ブレ発生時には、当該ズームレンズを構成するレンズのうち、少なくとも1枚のレンズを防振群とし、当該防振群を偏芯させることで像ブレ補正を行うことが好ましい。例えば、第6レンズ群G6を構成する凸レンズL12及び凹レンズL13が接合された接合レンズを防振群とし、当該接合レンズを光軸と垂直な方向に動かすことで像ブレ補正を行うことが好ましい。
【0147】
(2)数値実施例
次に、当該ズームレンズの具体的数値を適用した数値実施例について説明する。表13に、当該ズームレンズの面データを示し、表14に当該ズームレンズの緒元表を示す。なお、表13における第32面及び第33面はカバーガラスCGの面データである。
【0148】
表15に、変倍時における当該ズームレンズの光軸上の可変間隔を示し、表16に、合焦時における当該ズームレンズの光軸上の可変間隔を示す。なお、表16には、広角端、中間焦点距離状態、望遠端において、それぞれ撮影距離(撮像距離)が380.00mm、400.00mm、400.00mmのときの値を示している。これらの撮影距離が各焦点距離における最短撮像距離である。
【0149】
表17は、当該ズームレンズを構成する各レンズ群の焦点距離を示している。表18は、各非球面の非球面係数である。また、表19に各条件式(1)〜条件式(13)の値を示す。
【0150】
また、
図10〜
図12に、当該実施例3のズームレンズの広角端、中間焦点距離状態、望遠端における無限遠合焦時の縦収差図をそれぞれ示す。
【0151】
さらに、当該ズームレンズの広角端における無限遠合焦時のバックフォーカスは以下のとおりである。
fb= 45.497(mm)
【0152】
【表13】
【0153】
【表14】
【0154】
【表15】
【0155】
【表16】
【0156】
【表17】
【0157】
【表18】
【0158】
【表19】