【解決手段】半導体装置1は、n型のエピタキシャル層6と、エピタキシャル層6に選択的に形成されたp型のp型半導体領域12と、エピタキシャル層6においてp型半導体領域12の周囲に形成されたp型のガードリング21と、エピタキシャル層6上に形成され、n型部分16との間にショットキー接合部17を形成するショットキーメタル14とを含み、pn接合部23は、ツェナーダイオード22のツェナー電圧V
前記半導体層の表面からの深さ方向に関して、前記周辺不純物領域の濃度勾配が、前記第2導電型領域の濃度勾配よりも緩やかである、請求項1〜6のいずれか一項に記載の半導体装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、通信ライン保護用の素子として、TVS(Transient Voltage Suppressor)ダイオードが知られている。TVSダイオードは、たとえば、プラスマイナスのサージを吸収可能な双方向ツェナーダイオードとして通信ラインに組み込まれ、静電気放電(ESD:Electro Static Discharge)によって通信ラインに瞬間的に高電圧が印加された場合に、終端回路への出力電圧を所定電圧値以下にクランプ(制限)する。
【0005】
しかしながら、一般的なツェナー構造(pn接合部)は逆回復時間trrが比較的長いため、入力電圧(入力信号)の極性反転のタイミングで遅延が生じやすい。この遅延の課題は、処理する信号が高速になればなるほど、より顕在化する。
この点、特許文献1のようなショットキーバリアダイオードをTVSダイオードとして使用すれば、逆回復時間trrを速くすることができるが、背反として、ダイオードのESD耐量が低下する場合がある。
【0006】
本発明の目的は、逆回復時間trrを短くできつつ、ESD耐量の低下を抑制でき、しかも所望のツェナー特性を実現することができる半導体装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一実施形態に係る半導体装置は、第1導電型の半導体層と、前記半導体層に選択的に形成された第2導電型領域と、前記半導体層において前記第2導電型領域の周囲に形成された第2導電型の周辺不純物領域と、前記半導体層上に形成され、前記半導体層の第1導電型部分との間にショットキー接合部を形成するショットキー電極とを含み、前記周辺不純物領域および前記半導体層の第1導電型部分のpn接合部は、前記第2導電型領域および前記半導体層の第1導電型部分のpn接合部によるツェナーダイオードのツェナー電圧V
Zよりも高い耐圧を有している。
【0008】
この構成によれば、ショットキー接合部を介して順方向電流を流すことができるので、pn接合部を介して順方向電流を流す場合に比べて、当該ショットキー接合部に逆方向電圧が印加された場合の逆回復時間trrを短くすることができる。一方で、pn接合領域として、相対的に低い耐圧の第2導電型領域と、第2導電型領域よりも相対的に高い耐圧の周辺不純物領域とが、互いに独立して形成されている。これにより、逆方向電圧が印加された場合に、ツェナーダイオードによって出力電圧を所定電圧値以下にクランプ(制限)することができながら、周辺不純物領域によって、高いESD耐量を保持することができる。すなわち、ショットキー接合部を有する半導体層において、ツェナー電圧Vzを担うpn接合部(第2導電型領域)およびESD耐量を担うpn接合部(周辺不純物領域)の2種の領域を設けることによって、逆回復時間trr、ツェナー電圧VzおよびESD耐量の3特性の要求を満たす半導体装置を実現することができる。
【0009】
本発明の一実施形態に係る半導体装置では、前記半導体層の表面を基準にして、前記周辺不純物領域が前記第2導電型領域よりも深く形成されていてもよい。
本発明の一実施形態に係る半導体装置では、前記周辺不純物領域の深さが1.8μm〜4.2μmであり、前記第2導電型領域の深さが0.6μm〜1.4μmであってもよい。
【0010】
本発明の一実施形態に係る半導体装置では、前記半導体層の前記第1導電型部分の直列抵抗が、0.09Ω・cm〜0.14Ω・cmであってもよい。
本発明の一実施形態に係る半導体装置では、前記周辺不純物領域の深さが3.6μm〜4.5μmであり、前記第2導電型領域の深さが0.9μm〜2.5μmであってもよい。
【0011】
本発明の一実施形態に係る半導体装置では、前記半導体層の前記第1導電型部分の直列抵抗が、0.14Ω・cm〜0.2Ω・cmであってもよい。
本発明の一実施形態に係る半導体装置では、前記半導体層の表面からの深さ方向に関して、前記周辺不純物領域の濃度勾配が、前記第2導電型領域の濃度勾配よりも緩やかであってもよい。
【0012】
本発明の一実施形態に係る半導体装置では、前記周辺不純物領域が1×10
18cm
−3〜5×10
19cm
−3の不純物濃度を有し、前記第2導電型領域が5×10
18cm
−3〜1×10
20cm
−3の不純物濃度を有していてもよい。
本発明の一実施形態に係る半導体装置では、前記第2導電型領域が、平面視でドット状に配列されており、前記周辺不純物領域が、前記ドット状の第2導電型領域を取り囲むガードリングを含んでいてもよい。
【0013】
本発明の一実施形態に係る半導体装置では、前記第2導電型領域が、平面視でストライプ状に配列されており、前記周辺不純物領域が、前記ストライプ状の第2導電型領域を取り囲むガードリングを含んでいてもよい。
本発明の一実施形態に係る半導体装置では、前記半導体層は、0.2mm〜0.45mm角の平面サイズを有していてもよい。
【0014】
本発明の一実施形態に係る半導体装置は、通信用回路に組み込まれる双方向ツェナーダイオードを含んでいてもよい。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下では、本発明の実施の形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る半導体装置1の模式的な平面図である。
図2は、
図1のII−II切断線における断面図である。
図3Aは、p型半導体領域12の濃度勾配を示す図である。
図3Bは、ガードリング21の濃度勾配を示す図である。なお、
図1では、アノード電極13および表面絶縁膜18は、非表示となっている。
【0017】
半導体装置1は、たとえば平面視正方形のチップ状であり、
図1の紙面における上下左右方向の長さがそれぞれ0.2mm〜0.45mmであってもよい。
半導体装置1は、本発明の半導体層の一例としてのn
+型のSiからなる基板2(Si基板)を備えている。基板2の厚さは、たとえば、50μm〜300μmであってもよい。なお、基板2に含有されるn型不純物としては、たとえば、N(窒素)、P(リン)、As(ひ素)、Sb(アンチモン)などを使用できる。
【0018】
基板2の裏面3には、その全域を覆うようにオーミック電極としてのカソード電極4が形成されている。カソード電極4は、n型Siとオーミック接触する金属(たとえば、Au、Ag)からなる。カソード電極4の厚さは、たとえば、0.3μm〜2.0μmであってもよい。
基板2の表面5には、本発明の半導体層の一例としてのn型Siからなるエピタキシャル層6が形成されている。
【0019】
エピタキシャル層6の表面7には、エピタキシャル層6の一部を活性領域8として露出させるコンタクトホール9を有し、当該活性領域8を取り囲む外周領域10を覆うフィールド絶縁膜11が形成されている。フィールド絶縁膜11は、たとえば、SiO
2(酸化シリコン)からなる。また、フィールド絶縁膜11の厚さは、たとえば、0.5μm〜3μmである。
【0020】
活性領域8においてエピタキシャル層6の表面7側には、p型のp型半導体領域12が選択的に形成されている。これにより、エピタキシャル層6には、p型のp型半導体領域12およびn型部分16のpn接合によるツェナーダイオード22が形成されている。p型半導体領域12は、エピタキシャル層6の表面7から深さ方向に、略一定の幅で形成され、断面視において略曲面状の底部を有している。p型半導体領域12は、この実施形態では、
図1に示すように、平面視で複数のドットとして行列状に配列されている。これにより、エピタキシャル層6の表面7には、平面視で格子状のn型部分16が露出している。なお、p型半導体領域12に含有されるp型不純物としては、たとえば、B(ホウ素)、Al(アルミニウム)、Ar(アルゴン)などを使用できる。
【0021】
フィールド絶縁膜11上には、アノード電極13が形成されている。アノード電極13は、ショットキーメタル14と、コンタクトメタル15との2層構造を有していてもよい。
ショットキーメタル14は、フィールド絶縁膜11のコンタクトホール9内でエピタキシャル層6のn型部分16に接合されて、n型部分16との間にショットキー接合部17を形成している。ショットキーメタル14は、フィールド絶縁膜11のコンタクトホール9に埋め込まれると共に、フィールド絶縁膜11におけるコンタクトホール9の周縁部を上から覆うように、当該コンタクトホール9の外方へフランジ状に張り出している。
【0022】
ショットキーメタル14としては、n型部分16との間にショットキー接合部17を形成できる金属であれば特に制限されないが、この実施形態では、Pt(白金)を使用することが好ましい。Ptは、n型半導体等の間に比較的高いショットキー障壁を形成することができる。したがって、たとえば、p型半導体領域12とn型部分16との間にツェナーダイオード22を形成するためにエピタキシャル層6のn型不純物濃度を高くして抵抗を下げた場合でも、Ti等を使用する場合に比べて、リーク電流の発生を確実に抑えることができる。むろん、エピタキシャル層6の濃度によっては、Tiを使用することも可能である。
【0023】
コンタクトメタル15は、ショットキーメタル14に積層され、ショットキーメタル14と同様に、フィールド絶縁膜11におけるコンタクトホール9の周縁部を上から覆うように、当該コンタクトホール9の外方へフランジ状に張り出している。コンタクトメタル15は、たとえば、Al(アルミニウム)等で構成されていてもよい。
半導体装置1の最表面には、表面絶縁膜18が形成されている。表面絶縁膜18は、たとえば、SiN(窒化シリコン)からなる。また、表面絶縁膜18の厚さは、たとえば、0.2μm〜2.0μmである。表面絶縁膜18は、コンタクトメタル15におけるフィールド絶縁膜11に乗り上がったフランジ部分19を覆う一方、当該フランジ部分19で取り囲まれ、フランジ部分19よりも凹んだコンタクトメタル15の中央部20をパッドとして露出させている。この露出した中央部20には、たとえば、ボンディングワイヤ等の接合部材が接合される。
【0024】
外周領域10においてエピタキシャル層6の表面7側には、本発明の周辺不純物領域の一例としてのガードリング21が形成されている。これにより、エピタキシャル層6には、p型のガードリング21およびn型部分16のpn接合によるpn接合部23が形成されている。ガードリング21は、エピタキシャル層6の表面7から深さ方向にp型半導体領域12よりも深くまで、略一定の幅で形成され、断面視において略曲面状の底部を有している。ガードリング21は、この実施形態では、
図1に示すように、平面視でフィールド絶縁膜11のコンタクトホール9の内外に跨るように(活性領域8および外周領域10に跨るように)、当該コンタクトホール9の輪郭に沿ってp型半導体領域12を取り囲むように形成されている。したがって、ガードリング21は、コンタクトホール9の内方へ張り出す内側部分と、コンタクトホール9の外方へ張り出す外側部分とを含んでいる。ガードリング21の内側部分は、コンタクトホール9内のアノード電極13(ショットキーメタル14)の終端部に接している。ガードリング21の外側部分は、フィールド絶縁膜11の周縁部を挟んでアノード電極13に対向している。
【0025】
そして、この実施形態に係る半導体装置1では、p型半導体領域12とn型部分16との間のツェナーダイオード22で良好にツェナー降伏させ、ガードリング21によって優れたESD耐量を発現できるように、半導体装置1の各部の物理量や物性値のパラメータが適宜設定されている。
たとえば、ツェナーダイオード22のツェナー電圧Vz=16V〜18V、pn接合部23の耐圧(降伏電圧)=24〜30Vと設計される場合を考える。
【0026】
この場合、ガードリング21およびp型半導体領域12の深さに関して、ガードリング21が、たとえば1.2μm〜4.2μmの深さD
2を有し、p型半導体領域12が、たとえば0.6μm〜1.4μmの深さD
1を有していてもよい。
一方、ガードリング21およびp型半導体領域12の不純物濃度に関して、
図3Aおよび
図3Bに示すように、エピタキシャル層6の表面7からの深さ方向に関して、ガードリング21の濃度勾配が、p型半導体領域12の濃度勾配よりも緩やかであってもよい。また、具体的な不純物濃度としては、ガードリング21が、たとえば1×10
18cm
−3〜5×10
19cm
−3の不純物濃度を有し、p型半導体領域12が、たとえば5×10
18cm
−3〜1×10
20cm
−3の不純物濃度を有していてもよい。
【0027】
また、エピタキシャル層6のn型部分16の直列抵抗が、たとえば0.09Ω・cm〜0.14Ω・cmであってもよい。n型部分16の直列抵抗は、たとえば、エピタキシャル層6の厚さおよびショットキー接合部17の平面面積を適切な範囲に設定することによって調整することができる。ショットキー接合部17は、
図1に示すように、エピタキシャル層6においてp型半導体領域12およびガードリング21以外の領域なので、たとえば、
図2に示すp型半導体領域12のピッチP(互いに隣り合うp型半導体領域12の中央間の距離、p型半導体領域12の幅W
1、およびガードリング21の幅W
2の変更によって、ショットキー接合部17の平面面積を調整することができる。具体的な物理量としては、たとえば、エピタキシャル層6の厚さが、ガードリング21の深さD
2以上7μm以下であり、p型半導体領域12のピッチPが4.0μm〜12.0μmであり、p型半導体領域12の幅W
1が1.0μm〜7.0μmであり、ガードリング21の幅W
2が10μm〜40μmであってもよい。
【0028】
次に、ツェナーダイオード22のツェナー電圧Vz=24V〜27V、pn接合部23の耐圧(降伏電圧)=35〜40Vと設計される場合を考える。
この場合、ガードリング21およびp型半導体領域12の深さに関して、ガードリング21が、たとえば3.6μm〜4.5μmの深さD
2を有し、p型半導体領域12が、たとえば0.9μm〜2.5μmの深さD
1を有していてもよい。
【0029】
一方、ガードリング21およびp型半導体領域12の不純物濃度に関して、
図3Aおよび
図3Bに示すように、エピタキシャル層6の表面7からの深さ方向に関して、ガードリング21の濃度勾配が、p型半導体領域12の濃度勾配よりも緩やかであってもよい。また、具体的な不純物濃度としては、ガードリング21が、たとえば1×10
18cm
−3〜5×10
19cm
−3の不純物濃度を有し、p型半導体領域12が、たとえば5×10
18cm
−3〜1×10
20cm
−3の不純物濃度を有していてもよい。
【0030】
また、エピタキシャル層6のn型部分16の直列抵抗が、たとえば0.14Ω・cm〜0.2Ω・cmであってもよい。具体的な物理量としては、たとえば、エピタキシャル層6の厚さが、ガードリング21の深さD
2以上7μm以下であり、p型半導体領域12のピッチPが4.0μm〜12.0μmであり、p型半導体領域12の幅W
1が1.0μm〜7.0μmであり、ガードリング21の幅W
2が10μm〜40μmであってもよい。
【0031】
なお、p型半導体領域12のピッチP(後述するストライプ状の場合も含む)は、活性領域8におけるpn接合部23およびショットキー接合部17の面積比率を調整するために、上記のような範囲とされる。たとえば、活性領域8においてショットキー接合部17の面積比率は20〜50%であることが好ましく、この面積比率とするために適したp型半導体領域12のピッチPの範囲が上記の通りである。ショットキー接合部17の面積比率を上記範囲とすることによって、逆回復時間trrを効果的に低減でき、ESD耐量を効果的に向上させることができる。
【0032】
図4は、半導体装置1が組み込まれた通信システムの一例を示す図である。
通信システム30は、たとえば車両用のCAN(Controller Area Network)データ通信が採用されたシステムである。
通信システム30は、ハイサイドライン31Hおよびローサイドライン31Lを有しており、これらのライン31H,31Lを介して、互いに通信可能に接続された電子制御装置(ECU)32,33を備えている。
【0033】
また、ハイサイドライン31Hおよびローサイドライン31Lには、たとえば、抵抗40,41およびキャパシタ42を含む終端回路43が接続されている。
また、ハイサイドライン31Hおよびローサイドライン31Lには、保護素子として、前述の半導体装置1が、双方向ツェナーダイオード49,50として接続されている。
このような通信システム30では、ECU32,33は、通信ラインを介して互いに接続されており、当該通信ラインを介して通信データを送受信する。そして、受信したデータに基づいて、各ECU32,33に割り当てられた制御が行われる。
【0034】
一方、通信システム30の動作中、静電気放電(ESD:Electro Static Discharge)等によって、通信システム30に瞬間的に高電圧が印加されることがある。このような場合でも、双方向ツェナーダイオード49,50によって、終端回路43への出力電圧が所定電圧値以下にきちんとクランプ(制限)されていれば、終端回路43への影響(たとえば、素子破壊等)を低減することができる。
【0035】
しかしながら、近年では通信速度が高速化しているため、当該出力電圧の遅延を防止しながら、しかも、電圧のクランプを確実に行う必要がある。そこで、保護用の双方向ツェナーダイオード49,50として使用される半導体装置1では、ショットキー接合部17を備え、かつ、ツェナーダイオード22および当該ツェナーダイオード22のツェナー電圧Vzよりも耐圧が高いpn接合部23をガードリング21の位置に備えている。
【0036】
この構成による効果は、たとえば、BCI(Bulk Current Injection)試験によって実証することができる。
BCI試験による効果を説明するにあたって、半導体装置1と比較される構成として、
図5(第1参考例)、
図6(第2参考例)および
図7(第3参考例)に係る半導体装置51,61,71が挙げられる。
【0037】
図5の半導体装置51は、エピタキシャル層6の活性領域8の表面7側の全体にわたってp型半導体領域12が形成されており、ショットキー接合部17およびガードリング21が形成されていない点で、半導体装置1と異なっている。
図6の半導体装置61は、ショットキー接合部17およびガードリング21が形成されているが、p型半導体領域12が形成されておらず、また、ガードリング21の深さがp型半導体領域12と同程度の深さとなっている点で、半導体装置1と異なっている。
【0038】
図7の半導体装置71は、ショットキー接合部17およびガードリング21(p型半導体領域12よりも深いガードリング)が形成されているが、p型半導体領域12が形成されていない点で、半導体装置1と異なっている。
そして、BCI試験では、たとえば、
図4に示すように、ハイサイドライン31Hおよびローサイドライン31Lの途中部にインジェクションプローブ52が設置され、当該インジェクションプローブ52からノイズ電流が注入される。
【0039】
図8は、BCI試験における入力電圧の波形(入力波形53)を示す図である。
図9Aおよび
図9Bは、第1参考例に係る半導体装置51を双方向ツェナーダイオード49,50として組み込んだ場合の通信ラインの出力電圧の波形(ハイサイド側の出力波形54およびローサイド側の出力波形56)を示す図である。
図10Aおよび
図10Bは、半導体装置1を双方向ツェナーダイオード49,50として組み込んだ場合の通信ラインの出力電圧の波形(ハイサイド側の出力波形55およびローサイド側の出力波形58)を示す図である。
【0040】
図9Aおよび
図9Bに示すように、半導体装置51では、入力電圧±30Vに対して、ツェナーダイオード22が正常に機能しており、ハイサイド側の出力波形54およびローサイド側の出力波形56のいずれにおいても、±20Vにクランプ(制限)されて出力されている。一方で、ショットキー接合部17が形成されていないため、入力電圧の極性反転のタイミングで、ツェナーダイオード22の逆回復時間trrに起因する遅延57が生じている。
【0041】
これに対し、
図10Aおよび
図10Bに示すように、半導体装置1では、半導体装置51と同様に、入力電圧±30Vに対して、ツェナーダイオード22が正常に機能しており、ハイサイド側の出力波形55およびローサイド側の出力波形58のいずれにおいても、±20Vにクランプ(制限)されて出力されている。しかも、ショットキー接合部17が形成されているため、ショットキー接合部17を介して順方向電流を流すことができる。そのため、半導体装置51のようにツェナーダイオード22を介して順方向電流を流す場合に比べて逆回復時間trrを短くすることができ、遅延57が生じず、理想的な電圧波形で出力されていることが分かる。
【0042】
さらに、半導体装置1では、pn接合領域として、相対的に低い耐圧のp型半導体領域12と、p型半導体領域12よりも相対的に高い耐圧のガードリング21とが、互いに独立して形成されている。これにより、逆方向電圧が印加された場合に、ツェナーダイオード22によって出力電圧を所定電圧値以下にクランプ(制限)することができながら、ガードリング21によって、高いESD耐量を保持することができる。すなわち、ショットキー接合部17を有するエピタキシャル層6において、ツェナー電圧Vzを担うpn接合部(p型半導体領域12)およびESD耐量を担うpn接合部(ガードリング21)の2種の領域を設けることによって、逆回復時間trr、ツェナー電圧VzおよびESD耐量の3特性の要求を満たす半導体装置を実現することができる。
【0043】
この実施形態の構成によるESD耐量の向上効果は、
図11および
図12を参照して説明することができる。
ESD耐量の向上効果を説明するにあたって、半導体装置1と比較される構成として、
図12(第4参考例)に係る半導体装置81が挙げられる。
図8の半導体装置81は、ガードリング21の深さがp型半導体領域12と同程度の深さとなっている点で、半導体装置1と異なっている。
【0044】
そして、
図11のシミュレーション結果から、半導体装置1の構成であれば、半導体装置81の構成に比べて、ESD耐量が約10%も改善できることが分かった。
なお、BCI試験およびESD耐量のシミュレーションの対象とはなっていないが、半導体装置61では、ショットキー接合部17が形成されているため遅延57は小さくできると考えられるが、pn接合領域として、比較的浅いガードリング21しか形成されておらず、しかも半導体装置51に比べてpn接合領域の面積が減少しているため、ESD耐量の低下が予想される。一方、半導体装置71では、半導体装置61に比べてガードリング21が深くなり、ESD耐量の向上が期待されるが、背反として、ツェナー電圧Vzが高くなり、
図9A,9Bおよび
図10A,10Bの波形54,55とは異なり、出力電圧を所定電圧値以下にクランプ(制限)することができないおそれがある。
【0045】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、他の形態で実施することもできる。
たとえば、前述の実施形態では、複数のp型半導体領域12が活性領域8にドット状に配列された例を説明したが、複数のp型半導体領域12は、
図13に示すように、ストライプ状に配列されていてもよい。この場合、ストライプ状のp型半導体領域12のピッチPは、たとえば、3.0μm〜13.0μmであってもよい。
【0046】
また、前述の実施形態では、p型半導体領域12は、複数個形成され、その全てがガードリング21から間隔を空けて(接しないように)形成されていたが、
図14に示すように、ガードリング21に接するように(一部がオーバーラップするように)1つだけ形成されていてもよい。図示しないが、むろん、1つのp型半導体領域12が、ガードリング21から間隔を空けて形成されていてもよい。
【0047】
また、前述の実施形態では、半導体基板の一例としてシリコン基板2が用いられているが、シリコン基板2に代えて、SiC(シリコンカーバイド)などのシリコン以外の半導体材料からなる基板が用いられてもよい。
また、前述の実施形態では、半導体装置1の用途として、通信システム30に組み込まれた保護用ダイオード(双方向ツェナーダイオード)を一例として取り上げたが、半導体装置1は、他の用途で使用することもできる。
【0048】
その他、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。