【解決手段】排気熱回収装置は、排気と冷却流体との間で熱交換を行う熱交換器を備える。また、熱交換器は、複数のプレートと、内側シェルと、外側シェルと、を備える。内側シェルは、排気管を外側から囲み、排気管との間に、複数のプレートが配置される熱交換空間を形成する。また、外側シェルは、排気を内燃機関の吸気系へ再循環させるEGR管に接続されるEGR開口を有し、内側シェルとの間に、EGR開口に繋がる外側空間を形成する。そして、内側シェルは、熱交換空間と外側空間とを連通する少なくとも1つの調整用開口部を有する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に記載された技術では、熱交換器の内部において、再循環流路に繋がる開口から遠い領域では、開口から近い領域に比べ、複数のプレートの周辺を排気が流下する際に発生する圧力損失が大きくなっていた。なお、圧力損失とは、換言すれば、流体が流下する際に受ける抵抗である。これにより、熱交換器の内部で排気の流れに偏りが生じ、熱交換の効率が低下していた。
【0006】
内燃機関の吸気系へと再循環させる排気を効率良く冷却することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様は、内燃機関からの排気の流路に設けられた排気熱回収装置であって、排気管と、熱交換器と、を備える。排気管は、排気が流下する。熱交換器は、排気管から流入した排気と冷却流体との間で熱交換を行う。また、熱交換器は、複数のプレートと、内側シェルと、外側シェルと、を備える。プレートは、内部に冷却流体の流路が設けられた環状の部位であって、排気管を外側から囲んだ状態で、直線状に延びる軸線方向に沿って並ぶ部位である。また、内側シェルは、排気管を外側から囲み、排気管との間に、複数のプレートが配置される熱交換空間を形成する。また、外側シェルは、排気を内燃機関の吸気系へ再循環させるEGR管に接続されるEGR開口を有し、内側シェルの少なくとも一部を外側から覆うことで、内側シェルとの間に、EGR開口に繋がる外側空間を形成する。
【0008】
ここで、EGR開口から排気管に向かい、且つ、軸線方向に直交する方向を、基準方向とする。また、熱交換空間における基準方向の中央を通過し、且つ、基準方向に直交する平面を、基準面とする。また、熱交換空間における基準面のEGR開口側に位置する部分を第1空間とし、他の部分を第2空間とする。内側シェルは、熱交換空間と外側空間とを連通する少なくとも1つの調整用開口部を有する。そして、少なくとも1つの調整用開口部における第2空間と外側空間とを連通する部分の面積は、第1空間と外側空間とを連通する部分の面積よりも大きい。
【0009】
上記構成によれば、少なくとも1つの調整用開口部における第2空間と外側空間とを連通する部分(以後、第2開口部)の総面積は、第1空間と外側空間とを連通する部分(以後、第1開口部)の総面積よりも大きい。このため、排気が第2開口部を通過する際の圧力損失が、排気が第1開口部を通過する際の圧力損失よりも小さくなるよう促される。これにより、排気が第2空間からEGR開口に至るまでの圧力損失と、排気が第1空間からEGR開口に至るまでの圧力損失との差が抑制される。
【0010】
その結果、第2空間から外側空間への排気の流出が促進され、熱交換空間における排気の流れの偏りが抑制される。したがって、EGR開口から内燃機関の吸気系へと再循環させる排気を、効率良く冷却することができる。
【0011】
本開示の一態様では、内側シェルは、複数の調整用開口部を有しても良い。また、調整用開口部から流出した排気がEGR開口に至るまでに外側空間を流下する平均的な距離を、流下距離としてもよい。また、複数の調整用開口部の各々は、流下距離が長くなるに従い面積が大きくなってもよい。
【0012】
調整用開口部の流下距離が長くなるに従い、調整用開口部を通過した排気がEGR開口に到達するまでの圧力損失が大きくなる。これに対し、上記構成によれば、流下距離が長くなるに従い調整用開口部の面積が大きくなる。このため、調整用開口部の流下距離が長くなるに従い、排気が調整用開口部を通過する際の圧力損失が小さくなるよう促される。その結果、流下距離の長い調整用開口部から外側空間への排気の流出が促進され、熱交換空間における排気の流れの偏りが、より抑制される。したがって、EGR開口から内燃機関の吸気系へと再循環させる排気を、より一層効率良く冷却することができる。
【0013】
本開示の一態様は、内燃機関からの排気の流路に設けられた排気熱回収装置であって、排気管と、熱交換器と、を備える。排気管は、排気が流下する。また、熱交換器は、排気管から流入した排気と冷却流体との間で熱交換を行う。また、熱交換器は、複数のプレートと、内側シェルと、外側シェルと、を備える。プレートは、内部に冷却流体の流路が設けられた環状の部位であって、排気管を外側から囲んだ状態で、直線状に延びる軸線方向に沿って並ぶ部位である。また、内側シェルは、排気管を外側から囲み、排気管との間に、複数のプレートが配置される熱交換空間を形成する。また、外側シェルは、排気を内燃機関の吸気系へ再循環させるEGR管に接続されるEGR開口を有し、内側シェルの少なくとも一部を外側から覆うことで、内側シェルとの間に、EGR開口に繋がる外側空間を形成する。
【0014】
ここで、EGR開口から排気管に向かい、且つ、軸線方向に直交する方向を、基準方向とする。また、熱交換空間における基準方向の中央を通過し、且つ、基準方向に直交する平面を、基準面とする。内側シェルは、当該内側シェルにおける基準面と交差する交差部分に設けられ、熱交換空間と外側空間とを連通する少なくとも1つの調整用開口部を有する。
【0015】
なお、上述したものと同様、第1空間とは、熱交換空間において、基準面(換言すれば、基準方向の中央)よりもEGR開口側に位置する部分であり、第2空間とは、熱交換空間の他の部分である。
【0016】
上記構成によれば、内側シェルにおける基準面との交差部分に、少なくとも1つの調整用開口部が設けられている。換言すれば、調整用孔部は、第1空間と第2空間との境界に設けられる。このため、第1空間の排気と第2空間の排気とが、同一の調整用開口部を通過して外側空間に流出する。また、調整用開口部は熱交換空間の中央に位置するため、第1空間の排気が調整用開口部を通過する際の圧力損失と、第2空間の排気が該調整用開口部を通過する際の圧力損失との差を抑制できる。
【0017】
これにより、排気が第2空間からEGR開口に至るまでの圧力損失と、排気が第1空間からEGR開口に至るまでの圧力損失との差が抑制される。その結果、熱交換空間における排気の流れの偏りが抑制される。したがって、EGR開口から内燃機関の吸気系へと再循環させる排気を、効率良く冷却することができる。
【0018】
本開示の一態様では、少なくとも1つの調整用開口部は、内側シェルにおける一方の交差部分と、熱交換空間を挟んで一方の交差部分に対面する他方の交差部分とに設けられていてもよい。
【0019】
このような構成によれば、熱交換空間における排気の流れの偏りを抑制しつつ、熱交換空間から外側空間への排気の流出を促し、内燃機関の吸気系へと効率良く排気を再循環させることができる。
【0020】
本開示の一態様では、調整用開口部から流出した排気がEGR開口に至るまでに外側空間を流下する平均的な距離を、流下距離としてもよい。そして、一方の交差部分に設けられた調整用開口部の流下距離と、他方の交差部分に設けられた調整用開口部の流下距離とは、同一又は略同一であってもよい。
【0021】
このような構成によれば、内側シェルにおける一方の交差部分の調整用開口部を通過した排気がEGR開口に至るまでの圧力損失と、他方の交差部分の調整用開口部を通過した排気がEGR開口に至るまでの圧力損失との差を抑制できる。その結果、熱交換空間における排気の流れの偏りが、より抑制される。したがって、EGR開口から内燃機関の吸気系へと再循環させる排気を、より効率良く冷却することができる。
【0022】
本開示の一態様では、外側シェルは、内側シェルを外側から囲むことで、内側シェルとの間に、内側シェルを外側から囲む外側空間を形成してもよい。
このような構成によれば、外側空間を広くすることができる。このため、排気がEGR開口に向かって外側空間を流下する際の圧力損失を抑制できる。これにより、内燃機関の吸気系へと効率良く排気を再循環させることができる。
【0023】
本開示の一態様では、複数のプレートのうちのいずれかを第1プレートとし、第1プレート以外のいずれかのプレートを第2プレートとしてもよい。そして、少なくとも1つの調整用開口部は、内側シェルにおける第1プレートに対面する部分から、第2プレートに対面する部分にわたって、軸線方向に沿って設けられてもよい。
【0024】
このような構成によれば、少なくとも1つの調整用開口部は、第1プレートから第2プレートに跨って、軸線方向に沿って設けられる。このため、調整用開口部に対面する各プレートの周辺領域において排気の流れに偏りが生じるのを抑制でき、これにより、これらのプレートでの熱交換の効率に偏りが生じるのを抑制できる。したがって、効率良く排気を冷却することができる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本開示の実施形態について図面を用いて説明する。なお、本開示の実施の形態は、下記の実施形態に何ら限定されることはなく、本開示の技術的範囲に属する限り種々の形態を採りうる。
【0027】
[第1実施形態]
[全体の構成]
図1,2に示す第1実施形態の排気熱回収装置1は、内燃機関を有する移動体(例えば、乗用車等の車両)に搭載され、内燃機関からの排気の流路に設けられる。以後、排気の流路における上流側,下流側を、単に上流側,下流側と記載する。排気熱回収装置1は、内燃機関から排出される排気から熱を回収する排気熱回収機能と、EGRクーラ機能とを備える。
【0028】
EGRクーラ機能とは、排気の一部を内燃機関の吸気系へと再循環させるEGRにおいて、再循環させる排気を冷却する機能である。排気熱回収装置1には、内燃機関の吸気系に向けて排気を流下させるEGR管43が接続されている。EGR管43は、図示しないEGRバルブが設けられており、EGRバルブは、内燃機関の吸気系へ排気を再循環させる場合に開放され、排気を再循環させない場合には閉じられる。EGRバルブが開放された場合、排気熱回収装置1はEGRクーラとして機能する。つまり、排気熱回収装置1は、排気を冷却させ、内燃機関の吸気系に向けて再循環させる。
【0029】
排気熱回収装置1は、内燃機関からの排気を流下させる上流管40の下流側に繋がった状態で、移動体に搭載される。排気熱回収装置1は、
図1〜3に示すように、第1排気管10と、第2排気管11と、調整バルブ12と、熱交換器2とを備える。
【0030】
第1排気管10は、上流管40からの排気を流下させる。ここで、直線である軸線10bの方向を、軸線方向10aとする。第1排気管10は、軸線方向10aに沿って直線状に延びる。また、第1排気管10は、一例として円筒状となっており、軸線方向10aに直交する断面は、円形又は略円形となっている。以後、軸線方向10aに直交する断面を、単に断面と記載する。また、第1排気管10は、断面の中心が、軸線10b上又は軸線10bの付近に位置する。なお、第1排気管10は、断面が楕円形状又は多角形状であっても良いし、曲がっていても良い。
【0031】
また、第1排気管10は、上流側の開口が、上流管40の下流側の開口に対面した状態で配置される。第1排気管10の上流側の開口を囲む縁部と、上流管40の下流側の開口を囲む縁部との間には、隙間が形成されている。該隙間は、後述する熱交換空間3に繋がる入口30を形成している。
【0032】
第2排気管11は、円筒状の部位であり、第1排気管10の下流側の開口(以後、下流開口)に繋がっており、第1排気管10からの排気を流下させる。第2排気管11は、第1排気管10よりも径が大きく、第2排気管11の上流側の端部の内側に、第1排気管10の下流側の端部が配置される。また、第2排気管11の上流側の端部には、その径が拡大された拡径部11aが設けられている。拡径部11aにおける上流側の開口(換言すれば、第2排気管11の上流側の開口)を囲む縁部は、後述する熱交換器2の内側シェル21の下流側の開口を囲む縁部に繋がっている。そして、第2排気管11の側面の内側と第1排気管10の側面の外側との間に、熱交換器2の出口31に繋がる流路が形成されている。
【0033】
調整バルブ12は、第1排気管10の下流開口を開閉する。調整バルブ12は、回転軸15を中心に搖動可能に構成される。回転軸15は、下流開口の付近に設けられており、軸線10bに直交する方向に延びる。また、回転軸15の両端は第2排気管11の外部に突出している。そして、回転軸15の端部を回転駆動させることで、調整バルブ12が回転軸15を中心に搖動し、調整バルブ12により下流開口が開閉される。
【0034】
また、第1排気管10の下流側の端部には、下流開口を囲む縁部14が設けられている。縁部14は、環状の部位であり、外周側に位置する外周面には、耐熱性及び緩衝性のある素材(例えば、ワイヤメッシュ等)で構成された緩衝材13が設けられている。そして、調整バルブ12が下流開口を閉鎖した際には、調整バルブ12が緩衝材13に接触する。
【0035】
調整バルブ12により下流開口の開放度合いを調整することで、熱交換器2を経ることなく第1排気管10から第2排気管11へ流出する排気の量と、第1排気管11から熱交換器2へと流入する排気の量との比を変更できる。
【0036】
[熱交換器の構成]
排気熱回収装置1の熱交換器2は、第1排気管10から流入した排気と冷却流体(例えば、冷却水,オイル等)との間で熱交換を行うことで、排気の熱を回収すると共に、排気を冷却する装置である。なお、回収された熱は、例えば、内燃機関やそれに付随する装置の暖気、又は、暖房用の熱源等として利用されても良い。
図3,4に示すように、熱交換器2は、第1排気管10の側面を外側から囲んだ状態で設けられる。そして、外部供給管41により熱交換器2に冷却流体が供給され、熱交換器2にて熱交換された冷却流体は、外部排出管42により排出される。
【0037】
また、熱交換器2は、内燃機関の吸気系に繋がっているEGR管43に接続されている。EGR管43に設けられたEGRバルブが開放された場合には、熱交換器2にて冷却された排気が、内燃機関の吸気系へと再循環される。
【0038】
熱交換器2は、所謂シェルアンドプレート型の熱交換器であり、複数のプレート20と、内側シェル21と、外側シェル22と、仕切り部24と、上流壁部25と、下流壁部26とを備える。
【0039】
内側シェル21は、第1排気管10の側面を外側から囲むことで、第1排気管10との間に、複数のプレート20が配置される熱交換空間3を形成する。内側シェル21は、一例として軸線方向10aに延びる円筒状の部位となっており、断面が円形又は略円形となっている。また、内側シェル21は、一例として、断面の中心が、軸線10b上又は軸線10bの付近に位置する。なお、内側シェル21は、断面が楕円形状又は多角形状であっても良い。
【0040】
また、内側シェル21には、熱交換空間3と、後述する外側空間32とを連通させる少なくとも1つの調整用開口部5(詳細は後述する)が設けられている。
上流壁部25は、上流側にて熱交換空間3と外部の空間とを仕切る部位である。上流壁部25は、その外周側の縁部が、内側シェル21の上流側の開口を囲む縁部に繋がっている。また、上流壁部25の内周側の縁部は、上流管40の下流側の端部に位置する側面の外側に繋がっている。また、上流壁部25には、外部供給管41及び内部供給路20aに繋がる開口と、外部排出管42及び内部排出路20bに繋がる開口とが設けられる。内部供給路20a及び内部排出路20bの詳細は後述する。
【0041】
下流壁部26は、下流側から熱交換空間3と外部の空間とを仕切る部位である。下流壁部26は、内側シェル21の下流側の開口の付近にて、内側シェル21と第1排気管10との間に設けられる。下流壁部26は、内側シェル21の側面の内側に当接し、且つ、第1排気管10との間に隙間を有した状態で配置される。該隙間は、熱交換空間3に繋がる出口31を構成する。
【0042】
外側シェル22は、内側シェル21の側面を外側から囲むことで、内側シェル21との間に、外側空間32を形成する。外側シェル22は、一例として軸線方向10aに延びる略円筒状の部位となっており、断面が円形又は略円形となっている。また、外側シェル22は、一例として、断面の中心が、軸線10b上又は軸線10bの付近に位置する。なお、外側シェル22は、断面が楕円形状又は多角形状であっても良い。
【0043】
また、外側シェル22の各開口を囲む縁部には、壁部が設けられている。これらの壁部は、内側シェル21に繋がっており、外側空間32と、外部の空間とを仕切る。
また、外側シェル22には、EGR管43に接続されるEGR開口23が設けられている。第1実施形態では、一例として、EGR開口23は、円形又は略円形となっており、その中心が、外側シェル22における軸線方向10aの中央に位置している。なお、EGR開口23は、例えば、楕円形状又は多角形状であっても良い。
【0044】
複数のプレート20は、冷却流体と排気との熱交換を行う部分であり、上述した熱交換空間3に配置される。
図3,4に示すように、複数のプレート20は、第1排気管10の側面を外側から囲んだ状態で軸線方向10aに沿って並ぶ。また、隣り合うプレート20は、隙間を有した状態で配置される。
【0045】
各プレート20は、熱伝導性の高い素材(例えば、ステンレス、アルミニウム合金、又は、銅合金等の金属)で構成される。また、各プレート20は、内部に冷却流体の流路が設けられた環状の扁平な部位であり、軸線方向10aに直交する方向に広がる。
【0046】
より詳しくは、各プレート20は、正面視した際に内周側に位置する内周縁部20cと、外周側に位置する外周縁部20dとを有し、内周縁部20c及び外周縁部20dは、同心円状となっている。そして、各プレート20は、内周縁部20c及び外周縁部20dの中心が、軸線10b上又は軸線10bの付近に位置する状態で配置される。
【0047】
また、各プレート20は、軸線方向10aに直線状に延びる管状の内部供給路20a及び内部排出路20bに接続されている。内部供給路20a及び内部排出路20bは、軸線10bを挟んで対面する。内部供給路20aは、上流壁部25の開口から熱交換空間3に向かって延びており、該開口を介して外部供給管41に繋がっている。また、内部排出路20bは、上流壁部25の開口から熱交換空間3に向かって延びており、該開口を介して外部排出管42に繋がっている。
【0048】
プレート20の流路は、内部供給路20aと内部排出路20bとに繋がりつつ、当該プレート20の内部を一周する。冷却流体は、外部供給管41から内部供給路20aに流入した後、各プレート20の流路に流入する。その後、各プレート20の流路を流下した冷却流体は、内部排出路20bに流入し、外部排出管42へと流出する。
【0049】
仕切り部24は、熱交換空間3を、上流側の空間である上流空間3aと、下流側の空間である下流空間3bとに分割する。ここで、複数のプレート20のうち、端部に位置しないいずれかのプレート20を、対象プレートとする。第1実施形態では、一例として、軸線方向10aの中央付近(一例として、下流側から6番目)のプレート20が、対象プレートとなっている。仕切り部24は、対象プレート20の内周縁部20cと、第1排気管10の側面との間を塞ぐ。これにより、熱交換空間3が、上流空間3aと下流空間3bとに分割される。
【0050】
上流空間3aと下流空間3bとには、それぞれ、少なくとも1つのプレート20が配置される。そして、上流空間3aでは、入口30から流入する排気は、プレート20に接触しながらプレート20の内周側から外周側へと向かい、EGR開口23に向かって流下する。また、下流空間3bでは、EGR開口23に流入しなかった排気は、プレート20に接触しながら外周側から内周側へと流れ、出口31に到達し、出口31を通過して第2排気管11に流入する。
【0051】
[排気熱回収装置の機能について]
第1実施形態の排気熱回収装置1では、調整バルブ12の開度を調整することで、第1排気管10から熱交換器2へ流入する排気の流量を調整できる。排気は、入口30から熱交換空間3に流入する。そして、各プレート20の周辺を流下する排気と、各プレート20の内部の流路を流下する冷却流体との間で熱が伝達され、これにより、熱の回収及び排気の冷却がなされる。
【0052】
また、排気を内燃機関の吸気系へと再循環させる場合は、EGRバルブが開かれる。このとき、調整バルブ12は、適量が熱交換器2へ流入するように開度が調整される。この場合、熱交換器2はEGRクーラとして機能する。これにより、吸気温の上昇を抑制することができ、その結果、吸気の充填効率の低下を抑制できる。
【0053】
なお、排気を内燃機関の吸気系へと再循環させない場合には、EGRバルブが閉鎖される。また、排気からの熱回収が不要な場合には、調整バルブ12が開かれる。この場合、第1排気管10に流入した排気のほぼ全量が、第2排気管11へと流出する。
【0054】
ところで、排気を再循環させる場合において、熱交換器2からEGR管43へ流入する排気の量に対し、入口30を介して熱交換空間3に供給される排気の量が過小になる可能性がある。この場合、出口31を介して第2排気管11から熱交換空間3へ高温の排気が逆流する可能性がある。
【0055】
これに対し、第1実施形態の排気熱回収装置1の熱交換器2は、仕切り部24により、熱交換空間3が、上流空間3aと下流空間3bとに分割されている。このため、出口31を介して第2排気管11から熱交換空間3へ高温の排気が逆流したとしても、このような排気は、仕切り部24により分割された下流空間3bで、プレート20に接触してからEGR管43に到達する。したがって、逆流した排気を冷却した後にEGR管43に流出させることができ、これにより、吸気温の上昇を抑制できる。
【0056】
[調整用開口部について]
図4に示すように、熱交換器2の内側シェル21は、熱交換空間3と外側空間32とを隔てる円筒状の部位である。また、内側シェル21の断面の中心は、軸線10b上又は軸線10bの付近に位置する。また、各プレート20の内周縁部20c及び外周縁部20dの中心も、軸線10b上又は軸線10bの付近に位置する。このため、熱交換器2の断面において、内側シェル21と各プレート20の内周縁部20c及び外周縁部20dとは同心円状となる。
【0057】
また、外側シェル22は、略円筒状の部位であり、外側空間32を外側から覆う。外側空間32は、内側シェル21の側面を外側から囲む扁平な空間である。また、外側空間32は、厚さが均一又は略均一である。また、外側シェル22の断面は、円形又は略円形であり、その中心22aは、軸線10b上又は軸線10bの付近に位置する。なお、外側シェル22の断面の中心22aは、軸線10bから離れた位置にあっても良い。ここで、EGR開口23から離れる方向を遠位方向とし、EGR開口23に近づく方向を、近位方向とする。外側シェル22の中心22aは、例えば、
図5に示すように、軸線10bの遠位方向側に位置しても良いし、
図6に示すように、軸線10bの近位方向側に位置しても良い。
【0058】
ここで、EGR開口23から第1排気管11に向かい、且つ、軸線方向10aに直交する方向を、基準方向50とする。第1実施形態では、一例として、EGR開口23の中心から軸線10bに向かい、且つ、軸線方向10aに直交する方向を、基準方向50としている。しかしながら、これに限らず、EGR開口23における他の地点や、第1排気管11における他の地点を起点として、基準方向50を定めても良い。また、熱交換空間3における基準方向50の中央を通過し、且つ、基準方向50に直交する平面を、第1基準面51とする。そして、熱交換空間3における第1基準面51のEGR開口23側に位置する部分を、第1空間3cとし、他の部分を第2空間3dとする。
【0059】
内側シェル21は、熱交換空間3と外側空間32とを連通する少なくとも1つの調整用開口部5を有する。調整用開口部5は、熱交換空間3と外側空間32とを連通する少なくとも1つの開口を有する。ここで、内側シェル21において、第1空間3cに当接する部分を第1部分21aとし、第2空間3dに当接する部分を第2部分21bとする。内側シェル21は、第1部分21aに設けられた4つのA〜D調整用開口部5a〜5dと、第2部分21bに設けられた4つのE〜H調整用開口部5e〜5hとを有する。
【0060】
なお、第1及び第2部分21a,21bの各々に設けられた調整用開口部の数は、4個未満又は5個以上であっても良い。また、調整用開口部は、第1部分21aと第2部分21bとに跨って設けられていても良い。また、内側シェル21は、第1部分21aと第2部分21bとに跨って設けられた1つの調整用開口部のみを有していても良い。
【0061】
そして、少なくとも1つの調整用開口部5における第2空間3dと外側空間32とを連通する開口の総面積は、第1空間3cと外側空間32とを連通する開口の総面積よりも大きい。
【0062】
また、各調整用開口部5は、軸線方向10aに沿って配置される。具体的には、例えば、調整用開口部5は、
図7に示すように、軸線方向10aに沿って延びる細長い開口を有していても良い。また、例えば、調整用開口部5は、
図8に示すように、軸線方向10aに沿って配置された複数の円形状の開口を有していても良い。なお、これに限らず、調整用開口部5は、軸線方向10aに沿うことなく配置されても良い。
【0063】
ここで、複数のプレート20のうちの1つを第1プレートとし、第1プレート以外のいずれかのプレートを第2プレートとする。各調整用開口部5は、少なくとも、内側シェル21における第1プレートに対面する部分から、第2プレートに対面する部分にわたって設けられる。なお、第1プレートは、上流側の端部に位置するプレートであっても良い。また、第2プレートは、下流側の端部に位置するプレートであっても良い。
【0064】
また、調整用開口部5から流出した排気がEGR開口23に至るまでに外側空間32を流下する平均的(換言すれば、標準的)な距離を、流下距離とする。各調整用開口部5は、流下距離が長くなるに従い、外側空間32と熱交換空間3とを連通する開口の面積が大きくなる。具体的には、例えば、複数の調整用開口部5が同一又は略同一の面積及び形状の開口を有する場合には、外側空間32にて各調整用開口部5とEGR開口23とを結ぶ最短経路の距離の大小関係を、これらの調整用開口部5の流下距離の大小関係とみなしても良い。また、例えば、調整用開口部5に複数の地点を設け、外側空間32にて各地点とEGR開口23とを結ぶ最短経路の距離の平均値を、流下距離とみなしても良い。
【0065】
ここで、第1基準面51と垂直であり、且つ、軸線10bを含む面を、第2基準面52とする。第2基準面52は、EGR開口23の中心を通過する。また、A及びB調整用開口部5a,5bと、C及びD調整用開口部5c,5dと、E及びF調整用開口部5e,5fと、G及びH調整用開口部5g,5hとを、それぞれ、組とする。第1実施形態においては、各組に含まれる2つの調整用開口部は、内側シェル21の断面において、第2基準面52を中心とした線対称又は略線対称となるよう構成されている。つまり、該2つの調整用開口部は、開口の形状が同一又は略同一となっている。また、これら2つの調整用開口部は、開口の面積及び流下距離が同一となっている。
【0066】
つまり、A〜H調整用開口部5a〜5hの流下距離の大小関係は、
Da=Db<Dc=Dd<De=Df<Dg=Dh
となる。なお、Da〜Dhは、それぞれ、A〜H調整用開口部5a〜5hの流下距離を意味する。
【0067】
そして、A〜H調整用開口部5a〜5hの開口の総面積の大小関係は、
Sa=Sb<Sc=Sd<Se=Sf<Sg=Sh
となる。なお、Sa〜Shは、それぞれ、A〜H調整用開口部5a〜5hの開口の総面積を意味する。
【0068】
[効果]
(1)特許文献1に記載された技術では、熱交換器の内部において、EGRの再循環流路に繋がる開口から遠い第1領域では、開口から近い第2領域に比べ、複数のプレートの周辺を排気が流下する際に発生する圧力損失が大きくなっていた。これにより、熱交換器の内部で排気の流れに偏りが生じ、熱交換の効率が低下していた。このため、第1領域から排気が流出する際の圧力損失と、第2領域から排気が流出する際の圧力損失との差を抑制するのが望ましい。
【0069】
これに対し、第1実施形態によれば、A〜H調整用開口部5a〜5hにおける第2空間3dと外側空間32とを連通する部分(以後、第2開口部)の総面積は、第1空間3cと外側空間32とを連通する部分(以後、第1開口部)の総面積よりも大きい。このため、排気が第2開口部を通過する際の圧力損失が、排気が第1開口部を通過する際の圧力損失よりも小さくなるよう促される。これにより、排気が第2空間3dからEGR開口23に至るまでの圧力損失と、排気が第1空間3cからEGR開口23に至るまでの圧力損失との差が抑制される。
【0070】
その結果、第2空間3dから外側空間32への排気の流出が促進され、熱交換空間3における排気の流れの偏りが抑制される。したがって、EGR開口23から内燃機関の吸気系へと再循環させる排気を、効率良く冷却することができる。
【0071】
(2)また、第1実施形態によれば、流下距離が長くなるに従い調整用開口部5の面積が大きくなる。このため、調整用開口部5の流下距離が長くなるに従い、排気が調整用開口部5を通過する際の圧力損失が小さくなるよう促される。その結果、流下距離の長い調整用開口部5から外側空間32への排気の流出が促進され、熱交換空間3における排気の流れの偏りが、より抑制される。したがって、EGR開口23から内燃機関の吸気系へと再循環させる排気を、より一層効率良く冷却することができる。
【0072】
(3)また、第1実施形態では、外側空間32は、内側シェル21を外側から囲む構成となっている。これにより、外側空間32を広くすることができるため、排気がEGR開口23に向かって外側空間32を流下する際の圧力損失を抑制できる。これにより、内燃機関の吸気系へと効率良く排気を再循環させることができる。
【0073】
(4)また、第1実施形態では、A〜H調整用開口部5a〜5hは、第1プレートから第2プレートに跨って、軸線方向10aに沿って設けられる。このため、調整用開口部5に対面する各プレート20の周辺領域において排気の流れに偏りが生じるのを抑制でき、これにより、これらのプレート20での熱交換の効率に偏りが生じるのを抑制できる。したがって、効率良く排気を冷却することができる。
【0074】
[第2実施形態]
図9に示す第2実施形態の排気熱回収装置1は、熱交換器2における外側シェル22及び少なくとも1つの調整用開口部5等の構成において、第1実施形態と相違している。以下では、この相違点について説明する。
【0075】
内側シェル21において第1基準面51と交差する部分を、交差部分21c,21dとする。換言すれば、交差部分21c,21dは、内側シェル21における第1部分21aと第2部分21bとの境界をなす部分である。内側シェル21には、熱交換空間3を挟んで対面する2つの交差部分21c,21dが存在する。そして、内側シェル21における各交差部分21c,21dに、I,J調整用開口部5i,5jが設けられる。なお、内側シェル21における一方の交差部分に、調整用開口部5が設けられていても良い。
【0076】
一方、外側シェル22は、軸線方向10aに延び、断面が半円形又は略半円形である溝状の部位であり、内側シェル21の第1部分21aを覆う。また、外側シェル22の断面の中心22aは、軸線10b上又は軸線10bの付近に位置する。なお、第1実施形態と同様、外側シェル22の断面の中心22aは、軸線10bから離れた位置にあっても良い。また、外側シェル22は、I調整用開口部5iの正面の位置から、J調整用開口部5jの正面の位置にわたって広がる。そして、外側シェル22と内側シェル21との間に、I,J調整用開口部5i,5jを介して熱交換空間3に連通し、厚さが均一又は略均一である扁平な外側空間32が形成される。
【0077】
また、外側シェル22における軸線方向10bの両端に位置する各縁部には、壁部が設けられている。これらの壁部は、内側シェル21に繋がっており、外側空間32と、外部の空間とを仕切る。また、外側シェル22における調整用開口部5に対面する各縁部にも、壁部が設けられている。これらの壁部は、内側シェル21に繋がっており、外側空間32と、外部の空間とを仕切る。
【0078】
また、外側シェル22には、第1実施形態と同様にしてEGR開口23が設けられている。
そして、I,J調整用開口部5i,5jは、それぞれ、第1実施形態と同様にして、内側シェル21における第1プレートに対面する部分から第2プレートに対面する部分にわたって、軸線方向10aに沿って配置される。
【0079】
また、I,J調整用開口部5i,5jは、それぞれ、内側シェル21の断面において、第2基準面52を中心とした線対称又は略線対称となるよう構成されている。つまり、I,J調整用開口部5i,5jは、開口の形状及び総面積が、同一又は略同一となっている。また、I,J調整用開口部5i,5jの各々の流下距離は、同一又は略同一となっている。
【0080】
[効果]
(1)第2実施形態では、内側シェル21における第1基準面51との第1及び第2交差部分21c,21dの各々に、I,J調整用開口部5i,5jが設けられている。換言すれば、I,J調整用開口部5i,5jは、第1空間3cと第2空間3dとの境界に設けられる。このため、第1空間3cの排気と第2空間3dの排気とが、同一の調整用開口部5を通過して外側空間32に流出する。また、調整用開口部5は熱交換空間3の中央に位置するため、第1空間3cの排気が調整用開口部5を通過する際の圧力損失と、第2空間3dの排気が該調整用開口部5を通過する際の圧力損失との差を抑制できる。
【0081】
これにより、排気が第2空間3dからEGR開口23に至るまでの圧力損失と、排気が第1空間3cからEGR開口23に至るまでの圧力損失との差が抑制される。その結果、熱交換空間3における排気の流れの偏りが抑制される。したがって、EGR開口23から内燃機関の吸気系へと再循環させる排気を、効率良く冷却することができる。
【0082】
(2)また、第2実施形態では、I,J調整用開口部5i,5jの各々における流下距離は、同一又は略同一である。このため、I調整用開口部5iを通過した排気がEGR開口23に至るまでの圧力損失と、J調整用開口部5jを通過した排気がEGR開口23に至るまでの圧力損失との差を抑制できる。その結果、熱交換空間3における排気の流れの偏りが、より抑制される。したがって、EGR開口23から内燃機関の吸気系へと再循環させる排気を、より効率良く冷却することができる。
【0083】
[他の実施形態]
(1)第1実施形態では、外側シェル22は、内側シェル21を外側から囲んだ状態で設けられており、外側シェル22は、内側シェル21を全て覆った状態となる。しかし、外側シェル22は、内側シェル21の第1及び第2部分21a,21bを覆った状態で、内側シェル21の一部を外側から覆うよう構成されていても良い。このような場合であっても、第1実施形態と同様にして少なくとも1つの調整用開口部5を設けることで、同様の効果が得られる。
【0084】
(2)第2実施形態では、外側シェル22は、内側シェル21の第1部分21aと、I,J調整用開口部5i,5jとを覆った状態で設けられる。しかし、外側シェル22は、第2部分21bをさらに覆った状態で配置されても良いし、第1実施形態と同様、内側シェル21を外側から囲んだ状態で設けられても良い。このような場合であっても、同様の効果が得られる。
【0085】
(3)上記実施形態における1つの構成要素が有する複数の機能を、複数の構成要素によって実現したり、1つの構成要素が有する1つの機能を、複数の構成要素によって実現したりしてもよい。また、複数の構成要素が有する複数の機能を、1つの構成要素によって実現したり、複数の構成要素によって実現される1つの機能を、1つの構成要素によって実現したりしてもよい。また、上記実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上記実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加又は置換してもよい。