(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2019-127929(P2019-127929A)
(43)【公開日】2019年8月1日
(54)【発明の名称】作業機の防油構造
(51)【国際特許分類】
F04B 39/12 20060101AFI20190708BHJP
F04B 39/00 20060101ALI20190708BHJP
F04B 39/02 20060101ALI20190708BHJP
【FI】
F04B39/12 G
F04B39/00 101T
F04B39/02 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2018-11702(P2018-11702)
(22)【出願日】2018年1月26日
(71)【出願人】
【識別番号】000241795
【氏名又は名称】北越工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002398
【氏名又は名称】特許業務法人小倉特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藍澤 卓也
【テーマコード(参考)】
3H003
【Fターム(参考)】
3H003AC02
3H003BA07
3H003BD00
3H003CD01
(57)【要約】
【課題】構成機器より油類が漏出した場合であっても,漏出した油類の機外への漏出を防止する。
【解決手段】フレーム11の天板11a上に構成機器を搭載した作業機1において,前記フレーム11に,平面視において前記構成機器の外周を囲う位置で前記天板11aより立設された防油壁21を設け,該防油壁21の内側に,前記構成機器より漏出した油類を溜めるための,前記防油壁21を側壁とする有底の油受け槽20を形成する。これにより,構成機器より漏出した油類はフレーム11上に形成された油受け槽20内に留まることで,機外に対する油類の漏出を防止することができる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フレームの天板上に構成機器を搭載した作業機において,
前記フレームに,平面視において前記構成機器の外周を囲う位置で前記天板より立設された防油壁を設け,該防油壁の内側に,前記構成機器より漏出した油類を溜めるための,前記防油壁を側壁とする有底の油受け槽を形成したことを特徴とする作業機の防油構造。
【請求項2】
前記防油壁の内側における前記フレームの前記天板上に,前記構成機器を取り付けるためのボルトを前記天板に孔を設けることなく取り付けたことを特徴とする請求項1記載の作業機の防油構造。
【請求項3】
底板と,該底板の周縁より立設された側壁を有する防油皿を前記フレーム上に載置し,前記防油皿の前記底板上に前記構成機器を搭載すると共に,該防油皿の前記側壁を前記防油壁としたことを特徴とする請求項1又は2記載の作業機の防油構造。
【請求項4】
前記ボルトの挿通孔を備えた底板と,該底板の周縁より立設された側壁を有する防油皿を前記フレーム上に載置し,前記防油皿の前記底板上に前記構成機器を搭載すると共に,該防油皿の前記側壁を前記防油壁とし,
前記挿通孔の外側を囲って前記防油皿の前記底板と,前記フレームの前記天板間の間隔をシールするシール材を設けることにより,前記防油皿の底板と前記フレームの前記天板,及び前記シール材によって前記油受け槽の液密の底部を形成したことを特徴とする請求項2記載の作業機の防油構造。
【請求項5】
前記シール材を,前記挿通孔それぞれの外側を囲う位置に設けたことを特徴とする請求項4記載の作業機の防油構造。
【請求項6】
前記シール材を,複数の前記挿通孔の外側を同時に囲う位置に設けたことを特徴とする請求項4又は5記載の作業機の防油構造。
【請求項7】
前記ボルトが挿通される取付孔が形成された前記構成機器の取付部を,前記防油皿の前記底板上に載置すると共に,
前記取付孔の周縁部分において前記取付部と前記防油皿の前記底板間の間隔をシールするシール材を設けたことを特徴とする請求項4〜6いずれか1項記載の作業機の防油構造。
【請求項8】
前記取付部の前記取付孔を貫通した前記ボルトの先端にナットを螺着すると共に,前記取付孔の周縁部分において前記取付部と前記ナット間の間隔をシールするシール材を設けたことを特徴とする請求項7記載の作業機の防油構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は作業機の防油構造に関し,例えば油冷式の圧縮機本体や,これを駆動するエンジンやモータ等の駆動源等の構成機器を防音箱内に収容した防音型作業機において,構成機器より潤滑油や燃料等の油類が漏出した場合であっても,漏出した油類を機内に留めて機外への漏出を防止し得る作業機の防油構造に関する。
【背景技術】
【0002】
屋外等での使用を目的とした作業機では,構成機器を搭載する基台であるフレームと,このフレームの上部を覆うボンネットにより構成される防音箱内に作業機の構成機器を収容して防音型作業機として構成することが一般に行われており,このように防音箱内に収容することで構成機器を風雨より保護すると共に,作業機の作動に伴い発生する騒音が機外へ漏出することを防止している。
【0003】
このように防音型作業機として構成される作業機の一例として,油冷式スクリュ圧縮機では,噛み合い状態で回転するオスロータとメスロータから成る一対のスクリュロータをシリンダ内に収容した圧縮機本体を備え,スクリュロータがシリンダ内で回転して被圧縮気体を圧縮する際に作用空間内に潤滑油を供給することで,ロータ間,及びロータとシリンダ内壁間の密封や冷却,潤滑を行うことができるように構成されている。
【0004】
そのため,このような油冷式スクリュ圧縮機では,構成機器として圧縮機本体の他に,圧縮機本体より潤滑油と共に吐出された圧縮気体より潤滑油を分離するためのレシーバタンクやセパレータ等の気液分離器を備えると共に,レシーバタンクで分離された潤滑油を,オイルクーラやオイルフィルタを通過させた後,再度,圧縮機本体の作用空間内に導入するための潤滑油の循環系が形成されている(特許文献1参照)。
【0005】
このように,油冷式スクリュ圧縮機では圧縮作用空間の潤滑,冷却及び密封に潤滑油を使用することから,使用に伴い劣化した潤滑油を定期的に新しいものに交換する必要がある。
【0006】
このような潤滑油の交換に際し,前掲の特許文献1では,オイルタンクに設けたオイル排油口下方におけるフレーム上にオイル受け皿を配置しておき(特許文献1[0070]),又は,オイル排油口に延長ホースを取り付け,このホースの先端を機外に配置したオイル受け皿に挿入し(特許文献1[0071]),この状態でレシーバタンクの底部に設けられているバルブを開放して,レシーバタンク内の潤滑油をオイル受け皿に回収している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2015−7404号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
以上で説明したように,防音箱のフレーム上にオイル受け皿を載置した状態で潤滑油の排出を開始する場合,オイル排出口から勢いよく潤滑油の排出が開始されると,排出された潤滑油が受け皿の外へ飛び出してフレーム上に溢れ出るおそれがある。
【0009】
また,潤滑油の排出中に,オイル受け皿に手や工具が当たる等して受け皿がオイル排出口の下方より移動してしまうと,排出された潤滑油は受け皿に入らず防音箱のフレーム上に流れ出すことになる。
【0010】
更に,オイル排油口に延長ホースを取り付けることにより機外に配置したオイル受け皿にレシーバタンク内の潤滑油を回収する構成を採用した場合であっても,ネジの締め付けが緩い等,延長ホースの取り付け状態に不備があると,延長ホースの接続部から潤滑油が漏れてフレーム上に流れ出る場合があり,また,潤滑油の回収中にオイル排油口より延長ホースが外れると,フレーム上に潤滑油が直接流れ出すことになる。
【0011】
そして,このようにしてフレーム上に流れ出した潤滑油は,フレームの周縁から機外へと漏出し,また,フレームに設けた構成機器の取付穴等の穴を介してフレームの下方へ落下し,作業機の設置場所の土壌を汚染する等,周辺環境を汚染する。
【0012】
なお,上記の説明では,潤滑油の漏出が生じる場合として油冷式スクリュ圧縮機のレシーバタンクより潤滑油を回収する場合を例に挙げて説明したが,防音型作業機がエンジン駆動型の作業機である場合には,エンジンオイルについても定期的な交換が必要となると共に,エンジンオイルの回収時にも同様に潤滑油が漏出する危険性がある。
【0013】
また,防音箱のフレーム上への潤滑油,その他の油類の漏出は,潤滑油の交換時にのみ生じるものではなく,例えばエンジン駆動型の作業機である場合には燃料タンクの破損,オイルホースや燃料ホースの破損やこれらの接続部の弛み等によっても生じ,これらにより油類が漏出した場合であっても,同様に機外への漏出を回避する必要がある。
【0014】
そこで本発明は,前述したようにフレーム上に搭載されている作業機の構成機器より潤滑油や燃料等の油類が漏出した場合であっても,漏出した油類が機外へ漏出することがないよう,フレーム上に溜めておくことができる防油構造を備えた作業機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
以下に,課題を解決するための手段を,発明を実施するための形態で使用する符号と共に記載する。この符号は,特許請求の範囲の記載と,発明を実施するための形態の記載との対応を明らかにするためのものであり,言うまでもなく,本願発明の技術的範囲の解釈に制限的に用いられるものではない。
【0016】
上記目的を達成するために,本発明の作業機1の防油構造は,
フレーム11の天板11a上に構成機器を搭載した作業機1において,
前記フレーム11に,平面視において前記構成機器の外周を囲う位置で前記天板11aより立設された防油壁21を設け,該防油壁21の内側に,前記構成機器より漏出した油類を溜めるための,前記防油壁21を側壁とする有底の油受け槽20を形成したことを特徴とする(請求項1)。
【0017】
上記構成の防油構造において,前記防油壁21の内側における前記フレーム11の前記天板11a上に,前記構成機器を取り付けるためのボルト23をスタッド溶接等の方法によって前記天板11aに孔を設けることなく取り付けることが好ましい(請求項2)。
【0018】
更に,底板221と,該底板221の周縁より立設された側壁222を有する防油皿22を前記フレーム11上に載置し,前記防油皿22の前記底板221上に前記構成機器を搭載すると共に,該防油皿22の前記側壁222を前記防油壁21とすることもできる(請求項3)。
【0019】
又は,前記ボルト23の挿通孔223を備えた底板221と,該底板221の周縁より立設された側壁222を有する防油皿22を前記フレーム11上に載置し,前記防油皿22の前記底板221上に前記構成機器を搭載すると共に,該防油皿22の前記側壁222を前記防油壁21とし,
前記挿通孔223の外側を囲って前記防油皿22の前記底板221と,前記フレーム11の前記天板11a間の間隔δ1をシールするシール材(31,31’)を設けることにより,前記防油皿22の底板221と前記フレーム11の天板11a,及び前記シール材(31,31’)によって前記油受け槽20の液密の底部を形成するものとしても良い(請求項4:
図4〜
図6参照)。
【0020】
防油皿22の底板221に挿通孔223を設けた構成では,前記シール材31を,前記挿通孔223それぞれの外側を囲う位置に設けるものとしても良く(請求項5:
図4及び
図5参照),前記構成に代え,又は前記構成と共に,前記シール材31’を,複数の前記挿通孔223の外側を同時に囲う位置に設けるものとしても良い(請求項6:
図6参照)。
【0021】
更に,前記ボルト23が挿通される取付孔572が形成された前記構成機器の取付部571を,前記防油皿22の前記底板221上に載置すると共に,
前記取付孔572の周縁部分において前記取付部571と前記防油皿22の前記底板221間の間隔δ2をシールするシール材32を設けることが好ましい(請求項7:
図7参照)。
【0022】
この場合,更に,前記取付部571の前記取付孔572を貫通した前記ボルト23の先端にナット24を螺着すると共に,前記取付孔572の周縁部分において前記取付部571と前記ナット24間の間隔をシールするシール材33を設けることが好ましい(請求項8:
図7参照)。
【発明の効果】
【0023】
以上で説明した本発明の構成により,本発明の防油構造を備えた作業機1では,以下の顕著な効果を得ることができた。
【0024】
フレーム11の天板11aより立設する防油壁21を,平面視において構成機器の外周を囲う位置に形成して,この防油壁21の内側に,構成機器より漏出した油類を溜めるための,前記防油壁21を側壁とする有底の油受け槽20を形成したことで,構成機器より油類が漏出した場合であっても,漏出した油類をフレーム11上に留めておくことで,機外への漏出を防止することができた。
【0025】
防油壁21の内側におけるフレーム11の天板11a上に,構成機器を取り付けるためのボルト23をスタッド溶接等の方法で孔を設けることなく取り付けた構成では,天板11aに対するシーリングを行うことなく天板11aの下方に油類が落下することを確実に防止することができた。
【0026】
また,底板221と該底板221の周縁より立設された側壁222を有する防油皿22をフレーム11に載置して該防油皿22の側壁222を,前述の防油壁21とした構成では,フレーム11上に防油皿22を取り付けることで前述した油受け槽20を容易に形成することができた。
【0027】
ボルト23が取り付けられているフレーム11の天板11aに,このボルト23を挿通するための挿通孔223を備えた底板221と該底板221の周縁より立設された側壁222を備える防油皿22を載置して,前記防油皿22の前記側壁222を前記防油壁21とした構成では,前記挿通孔223の外周を囲って前記防油皿22の前記底板221と,前記フレーム11の前記天板11a間の間隔δ1をシールするシール材(31,31’)を設けることにより,前記防油皿22の底板221と前記フレーム11の天板11a,及び前記シール材(31,31’)によって前記油受け槽20の液密の底部を形成することで,防油皿22の底板221に挿通孔223を設ける構成を採用しつつ,防油皿22内に油類を溜めるための油受け槽20を形成することができた。
【0028】
挿通孔223の周縁部分にそれぞれシール材31を設ける構成では,挿通孔223を介してフレーム11の天板11aと防油皿22の底板221間の間隔δ1に油類が浸入することを防止することができ,また,前記防油皿22の前記底板221の周縁部分全周に亘ってシール材31’を設ける等,複数の前記挿通孔223の外側を同時に囲う位置にシール材31’を設けた構成では,挿通孔223を介してフレーム11の天板11aと防油皿22の底板221間の間隔δ1に油類が浸入した場合であっても,油類はシール材31’の外側に移動することができず,この間隔δ1内に油類を留めることで機外への漏出を防止することができた。
【0029】
更に,防油皿22の底板221上に搭載される構成機器の取付部571に設けた取付孔572の周縁部分において前記取付部571と,前記防油皿22の前記底板221間の間隔δ2をシールするシール材32を設けることで,前記取付部571の底面573と,前記防油皿22の前記底板221間の間隔を介して取付孔572内に油類が浸入することについても防止することができた。
【0030】
特に,取付部571の取付孔572を貫通したボルト23の先端に螺着されたナット24と取付部571間をシールするシール材33を設けた構成では,取付孔572内に対する油類の浸入をより確実に防止することができた。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図3】
図2におけるレシーバタンク下部の拡大斜視図。
【
図4】レシーバタンクの取付部分の防油構造を示す断面図。
【
図5】サブフレームの取付部分の防油構造を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下,添付図面を参照しながら本発明の防油構造を備えた作業機1について説明する。
【0033】
なお,以下の説明ではモータ駆動型の油冷式圧縮機に対し本発明の防油構造を適用した場合を例に挙げて説明するが,本発明の防油構造は,以下に説明する構成の作業機1に限定されず,油類の漏出が生じ得る構成機器を備えた各種の作業機に対し適用可能である。
【0034】
図1及び
図2において符号1は,作業機である油冷式圧縮機を示し,この油冷式圧縮機1は,
図1に示すようにフレーム11と,このフレーム11上を覆うボンネット12により構成された防音箱10内に構成機器を収容した,所謂「パッケージ型」の圧縮機として構成されている。
【0035】
防音箱10のフレーム11上には,
図2に示すように作業機の構成機器が搭載されており,モータ駆動型の油冷式圧縮機1である本実施形態では,被圧縮気体を潤滑油と共に圧縮して吐出する圧縮機本体51,前記圧縮機本体51を駆動するモータ52,前記圧縮機本体51より吐出された圧縮気体を導入して圧縮気体と潤滑油とに分離(一次分離)するレシーバタンク53,前記レシーバタンク53内に回収した潤滑油を冷却するオイルクーラ54等が搭載されており,前述のレシーバタンク53内で潤滑油が分離された圧縮気体が,必要に応じて潤滑油の二次分離や除湿を経て空気作業機等が接続された図示せざる消費側に供給されると共に,レシーバタンク53に回収された潤滑油はオイルクーラ54によって冷却された後,再度,圧縮機本体51の作用空間内に給油できるようになっている。
【0036】
これらの油冷式圧縮機を構成する圧縮機本体51,モータ52,レシーバタンク53,オイルクーラ54等の主要構成機器,及びこれらの主要構成機器間を連通する配管やバルブ,並びに前記構成機器をフレーム11上に固定するための支持台56や架台57(本実施形態において防振ゴム),その他の付属品は,
図2に示すように所定の配置でフレーム11上に取り付けられている。
【0037】
油冷式圧縮機1の構成機器を搭載する前述のフレーム11は,図示の例では平面視において矩形板状の天板11aと,前記天板11aの幅方向両端より下向きに突設された脚部11bを備え,このフレーム11の天板11a上に前述した構成機器を搭載すると共に固定している。
【0038】
このフレーム11の天板11aには,平面視において前述した構成機器の外側を囲うように防油壁21を立設して,この防油壁21の内側に,前述の構成機器より漏出した潤滑油を溜めるための,前記防油壁21を側壁とする油受け槽20を形成している。
【0039】
そして,この防油壁21の内側におけるフレーム11の天板11aに構成機器をボルト止めすることで,フレーム11上に構成機器を取り付けている。
【0040】
前述の防油壁21は,フレーム11の天板11a上に帯板を溶接,その他の方法で直接取り付けるものとしても良く,このようにフレーム11の天板11aに直接防油壁21を立設する場合,フレーム11の天板11aが単独で前述した油受け槽20の底部を構成することから,防油壁21の内側におけるフレーム11の天板11aを孔の無い構造と成すと共に,防油壁21の下端とフレーム11の天板11a間,及び,防油壁21同士の継ぎ目を介して漏油が生じないようにするために,この部分を溶接し,又はこの部分にコーキング材を充填する等して液密に構成する。
【0041】
また,フレーム11上に底板221と,該底板221の周縁より上向きに立設した側壁222を備える防油皿22を載置し,この防油皿22の側壁222を前述の防油壁21とするものとしても良く,この場合,
図2に示すように天板11aを備えたフレーム11上に前記防油皿22を載置して,フレーム11の上部を天板11aと防油皿22の底板221の二重構造に構成しても良く,又は,フレーム11として天板11aを持たないパイプフレームを採用し,このパイプフレーム上に防油皿22を載置することで,防油皿22の底板221によってフレーム11の天板11aを形成するものとしても良い。
【0042】
本実施形態では,
図2に示すように天板11aを備えたフレーム11上に前述した防油皿22を載置,固定することで,この防油皿22の前記側壁222を前述した防油壁21とすると共に,フレーム11の上部を,天板11aと防油皿22の底板221から成る二重構造としている。
【0043】
このようにしてフレーム11に設けられた防油皿22の底板221上には,防油皿22の底板221上に搭載される構成機器を固定するためのボルト23が立設される。
【0044】
このボルト23は,防油皿22の底板221上にスタッド溶接等の方法で直接取り付ける取り付けけるものとしても良く,又は,フレーム11の天板11a上にスタッド溶接等の方法で取り付けたボルト23を,防油皿22の底板221に設けた挿通孔223を介して防油皿22の底板221上に突設させるものとしても良い。
【0045】
防油皿22の底板221に直接ボルトをスタッド溶接する構成では,防油皿22の底板221に孔を形成することなくボルト23を立設することができるため,防油皿22の底板221のシーリングが不要となる点で有利であるが,この方法で重量の重い構成機器を固定すると,フレーム11に比較して薄い鋼板で製造されている防油皿22の底板221は,機器の振動等によって破損や変形等が生じるおそれがあることから,本実施形態では,比較的軽量なダクト55(
図2参照)の取り付けについては防油皿22の底板221に直接スタッド溶接したボルトによって取り付けを行う一方,重量の重いレシーバタンク53,モータ52,及び圧縮機本体51等の構成機器については,ボルト23をフレーム11の天板11aにスタッド溶接によって取り付け,このボルト23を防油皿22の底板221に設けた挿通孔223を介し防油皿22の底板221上に立設させて構成機器を取り付けることができるようにしている。
【0046】
ボルト23に対する構成機器の取り付けは,防油皿22の底板221に設けた挿通孔223を貫通して突出したボルト23に直接,構成機器(例えばレシーバタンク53の取付部531)を取り付けるものとしても良いが,本実施形態では,構成機器のうちレシーバタンク53については
図4に示すように防油皿22の底板221を貫通するボルト23に防振ゴム57を架台として取り付け,この防振ゴム57上にレシーバタンク53の取付部531を取り付けることで,レシーバタンク53をフレーム11上に固定している。
【0047】
また,モータ52及びこのモータ52によって駆動される圧縮機本体51については,防油皿22の底板221を貫通するボルト23に防振ゴム57を取り付ける点までは同様であるが,この防振ゴム57上に
図5に示すように下向きに開口する箱型形状を有するサブフレーム13を取り付けると共に,
図2に示すようにこのサブフレーム13上に設けられた支持台56にモータ52と圧縮機本体51を取り付けている。
【0048】
このように,防油皿22の底板221に挿通孔223を設けた本実施形態の構成では,防油皿22内に溜まった潤滑油がこの挿通孔223を介して機外へ漏出することを防止するために,フレーム11の天板11aに対するボルト23の取り付けを,スタッド溶接等のフレーム11の天板11aに孔を形成しない方法によって取り付けている。
【0049】
また,挿通孔223内に浸入した潤滑油が,防油皿22の底板221とフレーム11の天板11a間の間隔δ1を介して機外へ漏出することを防止するために,防油皿22の底板221とフレーム11の天板11a間の間隔δ1にシール材31,31’を挟持している。
【0050】
このように構成することで,防油皿22の側壁222の内側に,防油皿22の側壁222を側壁とし,かつ,防油皿22の底板221とフレーム11の天板11aによって形成された二重底構造の底部を有する油受け槽20が形成され,この油受け槽20内に構成機器より漏出した油類を貯留することができるようになっている。
【0051】
このようなシール材の挟持は,無端環状のシール材31を
図4中に拡大図で示すように各挿通孔223それぞれの周縁部において防油皿22の底板221とフレーム11の天板11a間で挟持することにより,挿通孔223内に浸入した潤滑油が防油皿22の底板221とフレーム11の天板11a間の間隔δ1に浸入しないように構成することができる。
【0052】
または,上記構成に代えて,上記構成と共に,
図6に示すように,防油皿22の底板221周縁部全周に亘って防油皿22の底板221とフレーム11の天板11a間でシール材31’を挟持する等,複数の挿通孔223の外周側において防油皿22の底板221とフレーム11の天板11a間の間隔δ1をシールする構成を採用し,挿通孔223を介して防油皿22の底板221とフレーム11の天板11a間に潤滑油が浸入した場合であっても,浸入した潤滑油がこのシール材31’よりも外側に移動できないようにして前記間隔δ1内に潤滑油を閉じ込めることで機外への漏出を防止するものとしても良い。
【0053】
更に,
図4〜
図6を参照して説明した構成に代え,又はこれらの構成と共に,
図7に示すように前述した防振ゴム57の取付部571の底面573と,防油皿22の底板221上面間の間隔δ2に,無端環状のシール材32を挟持して取付孔572の周縁部において前記間隔δ2をシールして,防振ゴム57の取付部571の底面573と,防油皿22の底板221上面間の間隔δ2を介して防油皿22の底板221に設けた挿通孔223内に潤滑油が浸入することを防止するものとしても良い。
【0054】
なお,この構成では,防振ゴム57の取付部571の上面574とナット24間にOリング等のシール材33を更に挟持して,防振ゴム57の取付部571の上面574とナット24間の間隔を介して防油皿22の底板221に設けた挿通孔223内に潤滑油が浸入することを防止するものとしても良い。
【0055】
以上で説明した本発明の防油構造を備えた作業機1において,レシーバタンク53やオイル配管等から潤滑油の漏出が生じると,漏出した潤滑油は防油皿22内に落下して溜まる。
【0056】
この防油皿22の底板221には,前述したように作業機1の構成機器を固定するためのボルト23を挿通するための挿通孔223が設けられている。
【0057】
しかし,
図7に示したように防振ゴム57の取付部571の底面573と防油皿22の底板221の上面間の間隔δ2にシール材32を挟持した構成,特に,ナット24と防振ゴム57の取付部571の上面574間の間隔についてもシール材33を挟持してシールした構成では,これらの間隔を介して防油皿22内の潤滑油が,防振ゴム57の取付部571に設けた取付孔572及び防油皿22の底板221に設けた挿通孔223内に浸入することが防止されている。
【0058】
また,
図4又は
図5に示すように,防油皿22の底板221に設けた挿通孔223それぞれの周縁部分における防油皿22の底板221とフレーム11の天板11a間の間隔δ1で無端環状のシール材31を挟持した構成では,仮に防油皿22の底板221に設けた挿通孔223内に潤滑油が浸入した場合であっても,潤滑油は,防油皿22の底板221とフレーム11の天板11a間の間隔δ1に浸入することができず挿通孔223内に留まることで,潤滑油が機外へ漏出することが防止される。
【0059】
更に,
図6に示すように防油皿22の底板221周縁部分全周に亘って防油皿22の底板221とフレーム11の天板11a間にシール材31’を挟持した構成では,防油皿22の底板221に設けた挿通孔223を介して防油皿22の底板221とフレーム11の天板11a間の間隔δ1に潤滑油が浸入した場合であっても,浸入した潤滑油はシール材31’の外側へは移動できず,潤滑油をこの間隔δ1内に留めることができ,機外へ漏出することを防止できるものとなっている。
【0060】
このように,本発明の作業機では,前述した防油構造のいずれか1つまたは複数を組み合わせて適用することで,防油壁21(防油皿22の側壁222)の内側に,防油壁21(防油皿22の側壁222)を側壁とし,防油皿22の底板221及び/又はフレーム11の天板11aによって底部が形成された,構成機器より漏出した潤滑油を貯留する油受け槽20をフレーム11上に形成することができ,これにより機外への油類の漏出を防止して,周辺環境を汚染することが防止される。
【符号の説明】
【0061】
1 作業機(油冷式圧縮機)
10 防音箱
11 フレーム
11a 天板(フレームの)
11b 脚部(フレームの)
13 サブフレーム
20 油受け槽
21 防油壁
22 防油皿
221 底板
222 側壁
223 挿通孔
23 ボルト
24 ナット
31,31’ シール材(間隔δ1用)
32 シール材(間隔δ2用)
33 シール材(ナット24と取付部571間)
51 圧縮機本体
52 モータ(駆動源)
53 レシーバタンク
531 取付部(レシーバタンクの)
54 オイルクーラ
55 ダクト
56 支持台
57 防振ゴム(架台)
571 取付部
572 取付孔
573 底面
574 上面
δ1 間隔(防油皿の底板とフレーム天板間の間隔)
δ2 間隔(防振ゴムの取付部と防油皿の底板間の間隔)