特開2019-127949(P2019-127949A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社冨士パーライトの特許一覧

<>
  • 特開2019127949-断熱部材及び断熱部材の製造方法 図000003
  • 特開2019127949-断熱部材及び断熱部材の製造方法 図000004
  • 特開2019127949-断熱部材及び断熱部材の製造方法 図000005
  • 特開2019127949-断熱部材及び断熱部材の製造方法 図000006
  • 特開2019127949-断熱部材及び断熱部材の製造方法 図000007
  • 特開2019127949-断熱部材及び断熱部材の製造方法 図000008
  • 特開2019127949-断熱部材及び断熱部材の製造方法 図000009
  • 特開2019127949-断熱部材及び断熱部材の製造方法 図000010
  • 特開2019127949-断熱部材及び断熱部材の製造方法 図000011
  • 特開2019127949-断熱部材及び断熱部材の製造方法 図000012
  • 特開2019127949-断熱部材及び断熱部材の製造方法 図000013
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2019-127949(P2019-127949A)
(43)【公開日】2019年8月1日
(54)【発明の名称】断熱部材及び断熱部材の製造方法
(51)【国際特許分類】
   F16L 59/02 20060101AFI20190708BHJP
   E04B 1/80 20060101ALI20190708BHJP
   B32B 7/025 20190101ALI20190708BHJP
【FI】
   F16L59/02
   E04B1/80 100P
   B32B7/02 104
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2018-7752(P2018-7752)
(22)【出願日】2018年1月20日
(71)【出願人】
【識別番号】516202604
【氏名又は名称】株式会社冨士パーライト
(74)【代理人】
【識別番号】100157277
【弁理士】
【氏名又は名称】板倉 幸恵
(74)【代理人】
【識別番号】100160691
【弁理士】
【氏名又は名称】田邊 淳也
(72)【発明者】
【氏名】嵐 香信
(72)【発明者】
【氏名】吉村 光博
【テーマコード(参考)】
2E001
3H036
4F100
【Fターム(参考)】
2E001DD01
2E001FA03
2E001GA12
2E001GA24
2E001GA42
2E001HD03
2E001HD11
2E001JA04
2E001JA12
3H036AA09
3H036AB18
3H036AB26
3H036AC03
3H036AD09
3H036AE13
4F100AC00B
4F100AD09B
4F100AK51B
4F100BA03
4F100BA04
4F100BA07
4F100BA10A
4F100BA10C
4F100BA10D
4F100DC23C
4F100DJ01B
4F100EH31
4F100GB07
4F100HB00A
4F100HB00D
4F100JG06C
4F100JJ02B
(57)【要約】
【課題】容易に取り付け及び取り外しが可能な断熱部材を提供する。
【解決手段】断熱部材は、断熱性を有する平板状の本体部と、本体部の内側面において本体部に埋め込まれた磁性体と、本体部の外側面を覆う外装シートと、を備える。この断熱部材によれば、磁性体の磁気吸着力によって敷設対象物に対して、断熱部材を簡単に取り付けることができる。また、取り外しが可能であるため敷設対象物が変わる場合においても、断熱部材を簡単に取り外して再利用することができる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
断熱部材であって、
断熱性を有する平板状の本体部と、
前記本体部の内側面において、前記本体部に埋め込まれた磁性体と、
前記本体部の外側面を覆う外装シートと、
を備える、断熱部材。
【請求項2】
請求項1に記載の断熱部材であって、
前記本体部の側面は、前記外装シートに覆われず露出している、断熱部材。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の断熱部材であって、
前記本体部には、等間隔に配置された複数の前記磁性体が埋め込まれている、断熱部材。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の断熱部材であって、
前記磁性体は、平板状または粒状である、断熱部材。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の断熱部材であって、さらに、
前記本体部の内側面において、前記本体部の内側面と前記磁性体とを覆う第2の外装シートを備える、断熱部材。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の断熱部材であって、さらに、
前記本体部の外側面において、前記本体部に埋め込まれた第2の磁性体を備え、
前記外装シートは、前記本体部の外側面と前記第2の磁性体とを覆っている、断熱部材。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の断熱部材であって、
前記本体部は、ポリウレタンフォーム、パーライトおよびケイ酸カルシウムの少なくとも1つから主に成る、断熱部材。
【請求項8】
断熱部材の製造方法であって、
第1の枠と第2の枠とを有する型枠を準備する工程と、
前記第1の枠に磁性体を固定する工程と、
前記第2の枠に外装シートを固定する工程と、
前記第1の枠と前記第2の枠の一方にポリウレタンフォーム液を流入する工程と、
前記第1の枠と前記第2の枠とを嵌め込み加圧して、前記ポリウレタンフォーム液を発泡させることにより本体部を形成する工程と、
前記第1の枠と前記第2の枠とを脱型する工程と、
を備える、断熱部材の製造方法。
【請求項9】
請求項8に記載の断熱部材の製造方法であって、
前記型枠は、金属製である、断熱部材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、断熱部材及び断熱部材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
建造物の壁面、プラントの壁面、その他設備の躯体表面等に敷設されて、敷設対象物を断熱する断熱部材が知られている。このような被覆部材の材料としては、発泡プラスチック材料(硬質ウレタンフォーム、ポリエチレンフォーム、フェノールフォーム等)、無機多孔質材料(パーライト、ケイ酸カルシウム等)、繊維材料(ガラス繊維、ロックウール等)が知られている。特許文献1には、硬質ポリウレタンフォームの両面に面材が積層された断熱部材(断熱パネル)について開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016−164342号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の断熱部材では、敷設対象物への取り付けの際に、接着剤で固定する、針金等の固定具を用いて固定する、といった作業が必要となり手間がかかるという課題があった。また、断熱部材の敷設後において、敷設対象物から断熱部材を取り外すことが困難であるという課題があった。このため、容易に取り付け及び取り外しが可能な断熱部材が求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上述の課題を解決するためになされたものであり、以下の形態として実現できる。
【0006】
(1)本発明の一形態によれば、断熱部材が提供される。この断熱部材は、断熱性を有する平板状の本体部と、前記本体部の内側面において、前記本体部に埋め込まれた磁性体と、前記本体部の外側面を覆う外装シートと、を備える。
【0007】
この構成によれば、断熱部材は、本体部に埋め込まれた磁性体を有するため、磁性体の磁気吸着力によって、建造物の壁面、プラントの壁面、その他設備の躯体表面等の敷設対象物に対して、断熱部材を簡単に取り付けることができる。また、接着剤等による固定とは異なり取り外しが可能であるため、例えばプラント設備の入れ替え等、敷設対象物が変わる場合においても、断熱部材を簡単に取り外して再利用することができる。さらに、本体部の外側面が外装シートに覆われることによって、本体部が浸食される虞を低減すると共に、断熱部材の美観を向上できる。このように、本構成によれば、容易に取り付け及び取り外しが可能な断熱部材を提供できる。
【0008】
(2)上記形態の断熱部材において、前記本体部の側面は、前記外装シートに覆われず露出していてもよい。この構成によれば、本体部の側面は外装シートに覆われていないため、例えば広範な壁面を複数の断熱部材で覆う場合等において、断熱部材同士の隣接面における熱の漏れを抑制し、断熱効果を向上できる。
【0009】
(3)上記形態の断熱部材において、前記本体部には、等間隔に配置された複数の前記磁性体が埋め込まれていてもよい。この構成によれば、等間隔に配置された複数の磁性体が埋め込まれているため、磁性体の磁気吸着力を高めることができる。
【0010】
(4)上記形態の断熱部材において、前記磁性体は、平板状または粒状であってもよい。この構成によれば、磁性体の形状を平板状または粒状とできる。
【0011】
(5)上記形態の断熱部材では、さらに、前記本体部の内側面において、前記本体部の内側面と前記磁性体とを覆う第2の外装シートを備えていてもよい。この構成によれば、第2の外装シートによって、本体部及び磁性体と、敷設対象物とが接触することを抑制できる。この結果、接触面における敷設対象物の損傷の虞を低減できる共に、内側面において本体部及び磁性体が露出することに伴う浸食の虞を低減できる。また、本体部の外側面と内側面との両方が外装シートに覆われることによって、断熱部材の美観をより一層向上できるとともに、本体部に反りが生じることを抑制できる。
【0012】
(6)上記形態の断熱部材では、さらに、前記本体部の外側面において、前記本体部に埋め込まれた第2の磁性体を備え、前記外装シートは、前記本体部の外側面と前記第2の磁性体とを覆っていてもよい。この構成によれば、第2の磁性体によって、磁性体の磁気吸着力をより強固にできる。このため、断熱部材を重ねて(複数層にして)取り付ける場合に、各層の断熱部材をより強固に固定することができる。
【0013】
(7)上記形態の断熱部材において、前記本体部は、ポリウレタンフォーム、パーライトおよびケイ酸カルシウムの少なくとも1つから主に成っていてもよい。この構成によれば、断熱性を有する本体部を容易に構成できる。
【0014】
(8)本発明の一形態によれば、断熱部材の製造方法が提供される。この製造方法では、第1の枠と第2の枠とを有する型枠を準備する工程と、前記第1の枠に磁性体を固定する工程と、前記第2の枠に外装シートを固定する工程と、前記第1の枠と前記第2の枠の一方にポリウレタンフォーム液を流入する工程と、前記第1の枠と前記第2の枠とを嵌め込み加圧して、前記ポリウレタンフォーム液を発泡させることにより本体部を形成する工程と、前記第1の枠と前記第2の枠とを脱型する工程と、を備える。この構成によれば、平板状の本体部と、本体部の内側面において本体部に埋め込まれた磁性体と、本体部の外側面を覆う外装シートとを備える断熱部材を、簡単に製造することができる。
【0015】
(9)上記形態の断熱部材の製造方法において、前記型枠は、金属製であってもよい。この構成によれば、磁性体を型枠に裁置するのみで、磁性体が型枠に吸着固定される。
【0016】
本発明は、断熱部材以外の種々の形態で実現できる。本発明は、例えば、上記形態の断熱部材を備える設備、上記形態の断熱部材を製造する製造方法、ならびに、その製造方法を実施する製造装置などの形態で実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】第1実施形態の断熱部材の概要を示す図である。
図2】断熱部材の下面図である。
図3】断熱部材のA−A線(図1)における断面図である。
図4】断熱部材の製造方法の手順を示すフローチャートである。
図5】断熱部材の製造方法の手順を説明する図である。
図6】断熱部材の製造方法の他の例を示すフローチャートである。
図7】第2実施形態の断熱部材の概要を示す図である。
図8】断熱部材のB−B線(図7)における断面図である。
図9】第3実施形態における断熱部材の下面図である。
図10】第4実施形態における断熱部材の下面図である。
図11】第5実施形態における断熱部材の下面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
A.第1実施形態
図1は、第1実施形態の断熱部材1の概要を示す図である。図2は、断熱部材1の下面図である。図3は、断熱部材1のA−A線(図1)における断面図である。図1〜3には、互いに対応するX,Y,Z軸を図示している。X軸は断熱部材1の幅方向に対応し、Y軸は断熱部材1の高さ方向に対応し、Z軸は断熱部材1の奥行き方向に対応する。断熱部材1は、内蔵された磁性体の磁気吸着力によって、建造物の壁面、プラントの壁面、その他設備の躯体表面等の敷設対象物に対して容易に取り付け及び取り外しが可能な断熱部材である。断熱部材1は、本体部10と、磁性体20と、外装シート30とを備えている。
【0019】
本体部10は、断熱性を有する矩形形状の平板状部材である。本体部10は、ポリオールとポリイソシアネートとを主成分として、発泡剤、整泡剤、触媒、着色剤などを混合し発泡させた、硬質ポリウレタンフォームの成形品である。なお、ポリウレタンフォームに代えて本体部10は、パーライト(真珠岩粉末)を主材料に繊維バインダを混合して加圧成形した後に加熱によって膨張させた成型品であってもよく、ケイ酸カルシウムから主に成る成形品であってもよい。
【0020】
本体部10は、上面11と、下面12と、4つの側面13〜16を有している。上面11は「外側面」に相当し、下面12は「内側面」に相当する。本体部10の寸法は、任意に決定できる。例えば、X軸方向の長さL11は330mm、Z軸方向の長さL12は1000mm、Z軸方向の長さL13は25〜100mmとできる。
【0021】
磁性体20は、自発磁化を持つ強磁性体である。本実施形態の磁性体20は、第1磁性体21と、第2磁性体22とを含む。第1磁性体21及び第2磁性体22は、共に同一寸法の、矩形形状かつ平板状の部材であり、寸法は本体部10以下である限りにおいて任意に決定できる。例えば、X軸方向の長さL21は250mm、Z軸方向の長さL22は25mmとできる。
【0022】
図2及び図3に示すように、第1磁性体21は、本体部10の下面12(内側面)であって、+Z軸側の端部に位置するように、本体部10に埋め込まれている。同様に、第2磁性体22は、本体部10の下面12であって、−Z軸側の端部に位置するように、本体部10に埋め込まれている。第1磁性体21及び第2磁性体22について、本体部10の側面からの距離M1は0以上である限りにおいて任意に決定できる。
【0023】
外装シート30は、不燃性を有する矩形形状のシート状部材である。外装シート30は、アルミ箔、ノンアスベストの天然鉱物である含水ケイ酸マグネシウムを主成分とする無機質原紙、水酸化アルミニウムを含有する紙等により構成される。外装シート30は、外側面外装シート31と、内側面外装シート32とを含む。外側面外装シート31及び内側面外装シート32は、共に同一寸法であり、寸法は本体部10以下である限りにおいて任意に決定できる。本実施形態では、外側面外装シート31及び内側面外装シート32のX軸方向の長さ、Z軸方向の長さは、本体部10と同じである。
【0024】
図3に示すように、外側面外装シート31は、本体部10の上面11(外側面)を覆っている。外側面外装シート31は「外装シート」に相当する。内側面外装シート32は、本体部10の下面12(内側面)において、本体部10の下面12と、本体部10に埋め込まれた磁性体20(第1磁性体21及び第2磁性体22)とを覆っている。内側面外装シート32は「第2の外装シート」に相当する。この内側面外装シート32は、省略してもよい。内側面外装シート32を省略する場合、下面12においては、本体部10と磁性体20とが露出した状態となる。なお、本実施形態の断熱部材1では、本体部10の各側面13〜16は、いずれも外装シート30に覆われずに露出している(図3)。
【0025】
断熱部材1の使用について説明する。断熱部材1は、下面12(内側面)において磁性体20を有している。このため、建造物の壁面、プラントの壁面、その他設備の躯体表面等の金属製の部分に対して、磁性体20を吸着させることによって、簡単に取り付けることができる。例えば、大型の敷設対象物の場合は、複数の断熱部材1を組み合わせ、並べて敷き詰めることによって、敷設対象物の壁面全てを覆うことができる。この場合、隣接する断熱部材1の外側面外装シート31同士を、粘着テープ等で固定してもよい。
【0026】
以上説明した断熱部材1によれば、本体部10に埋め込まれた磁性体20(第1磁性体21及び第2磁性体22)を有するため、磁性体20の磁気吸着力によって、建造物の壁面、プラントの壁面、その他設備の躯体表面等の敷設対象物に対して、断熱部材1を簡単に取り付けることができる。また、断熱部材1の敷設対象物に対する取り付けは、接着剤等による固定とは異なって取り外しが可能であるため、例えば、プラント設備の入れ替え等、敷設対象物が変わる場合においても、断熱部材1を簡単に取り外して再利用することができる。さらに、本体部10の上面11(外側面)が外側面外装シート31(外装シート)に覆われることによって、本体部10が雨水等によって浸食される虞を低減すると共に、断熱部材1の美観を向上できる。このように、本実施形態の断熱部材1によれば、容易に取り付け及び取り外しが可能な断熱部材1を提供することができる。
【0027】
また、上述の通り、本体部10の側面13〜16は外装シート30(外側面外装シート31及び内側面外装シート32)に覆われていない。このため、例えば広範な壁面を複数の断熱部材1で覆う場合等において、断熱部材1同士の隣接面(本体部10の側面同士が接触する部分)における熱の漏れを抑制し、断熱効果を向上できる。
【0028】
さらに、断熱部材1は、本体部10の下面12(内側面)において、本体部10の下面12と、本体部10に埋め込まれた磁性体20(第1磁性体21及び第2磁性体22)とを覆う内側面外装シート32(第2の外装シート)を備える。この内側面外装シート32によって、本体部10及び磁性体20と、敷設対象物とが直接に接触することを抑制できる。この結果、接触面における敷設対象物の損傷の虞を低減できる共に、下面12(内側面)において本体部10及び磁性体20が露出することに伴う浸食の虞を低減できる。また、本体部10の上面11(外側面)と下面12(内側面)との両方が外装シート30に覆われることによって、断熱部材1の美観をより一層向上できるとともに、本体部10に反りが生じることを抑制できる。
【0029】
A−1.断熱部材1の製造方法
図4は、断熱部材1の製造方法の手順を示すフローチャートである。図5は、断熱部材1の製造方法の手順を説明する図である。ステップS10では、下枠201と上枠202とを有する型枠を準備する。図5に示すように、下枠201は箱状、換言すれば、上面が開口した中空の四角柱形状である。下枠201のX軸方向の長さ、Z軸方向の長さは、断熱部材1の本体部10と同じである。上枠202は、持ち手のついた平板状であり、下枠201の開口に嵌合する大きさである。下枠201と上枠202とは共に、金属製である。
【0030】
図5(A)に示すように、ステップS12では、下枠201に内側面外装シート32を敷設する。図5(B)に示すように、ステップS14では、下枠201に敷設した内側面外装シート32の上に、磁性体20(第1磁性体21及び第2磁性体22)を固定する。本実施形態の下枠201は金属製である。このため、磁性体20を内側面外装シート32の上に裁置すれば、磁性体20は、磁気吸着力によって下枠201に吸着固定される。図5(C)に示すように、ステップS16では、上枠202に外側面外装シート31を固定する。固定は任意の方法で実施でき、例えば、粘着テープを用いてもよく、弱粘性の接着剤を用いてもよい。
【0031】
ステップS18では、硬質ポリウレタンフォーム液を準備する。具体的には、ポリオール原液とポリイソシアネート原液とをビーカー等を用いて量り込み、攪拌混合する。この際、必要に応じて、発泡剤、整泡剤、触媒、着色剤などを添加してもよい。図5(D)に示すように、ステップS20では、準備した硬質ポリウレタンフォーム液を、下枠201の中へと流入する。
【0032】
図5(E)に示すように、ステップS22では、下枠201に上枠202を嵌め込み、加圧する。所定時間(例えば40分間)加圧を継続することにより、硬質ポリウレタンフォーム液が発泡し、本体部10が形成される。なお、加圧する時間は、周辺温度、液の温度、本体部10の厚さ(図1:長さL13)等によって任意に決定できる。硬質ポリウレタンフォーム液が発泡して本体部10が形成されることにより、第1磁性体21及び第2磁性体22が本体部10の中に埋め込まれた状態で固定されると共に、外側面外装シート31及び内側面外装シート32が本体部10に接着される。
【0033】
本体部10の形成後、ステップS24では、下枠201及び上枠202を脱型して、断熱部材1を取り出し、仕上げ処理を行う。例えば、下枠201と上枠202との隙間等に生じた硬質ポリウレタンフォームのバリをハサミ、カッター、ヤスリ等で除外して、断熱部材1を成形する。以上、図4及び図5において説明した断熱部材1の製造方法では、下枠201が「第1の枠」に相当し、上枠202が「第2の枠」に相当する。なお、内側面外装シート32を省略する場合、ステップS12は不要である。また、仕上げ処理は省略してもよい。
【0034】
このようにすれば、平板状の本体部10と、本体部10の下面12(内側面)において本体部10に埋め込まれた磁性体20(第1磁性体21及び第2磁性体22)と、本体部10の上面11(外側面)を覆う外側面外装シート31(外装シート)とを備える断熱部材1を、簡単に製造することができる。また、硬質ポリウレタンフォーム液が発泡することで、磁性体20を埋め込んだ本体部10が形成されるため、例えば本体部10の一部分を削って磁性体20を埋め込むような場合と比較して、製造に要する手間やコストを削減できると共に、断熱部材1の美観を向上できる。
【0035】
図6は、断熱部材1の製造方法の他の例を示すフローチャートである。図4に示した例との違いは、ステップS12〜S16に代えて、ステップS30〜S34を備える点である。
【0036】
ステップS30では、下枠201に外側面外装シート31を固定する。固定は任意の方法で実施でき、例えば、粘着テープを用いてもよく、弱粘性の接着剤を用いてもよい。ステップS32では、上枠202に内側面外装シート32を敷設する。ステップS34では、上枠202に敷設した内側面外装シート32の上に、磁性体20を固定する。上枠202は金属製であるため、磁性体20は磁気吸着力によって上枠202に吸着固定される。また、磁性体20に抑えられることによって、内側面外装シート32も上枠202に固定される。
【0037】
他の手順については、図4で説明した通りである。以上、図6において説明した断熱部材1の製造方法では、下枠201が「第2の枠」に相当し、上枠202が「第1の枠」に相当する。すなわち、図4の製造方法と、図6の製造方法とは、断熱部材1の上下が逆の関係にある。なお、内側面外装シート32を省略する場合、ステップS32は不要である。図6の製造方法によっても、図4の製造方法と同じ効果を奏することができる。
【0038】
B.第2実施形態
図7は、第2実施形態の断熱部材1aの概要を示す図である。図8は、断熱部材1aのB−B線(図7)における断面図である。図7,8においても、図1〜3と同じ互いに対応するX,Y,Z軸を図示している。第1実施形態の断熱部材1では、本体部10の下面12(内側面)に磁性体20が埋め込まれていた。第2実施形態の断熱部材1aでは、本体部10aの下面12(内側面)に加えて、上面11(外側面)にも磁性体20aが埋め込まれている。以下、第1実施形態と相違する部分についてのみ説明する。
【0039】
磁性体20aは、第1磁性体21、第2磁性体22に加えてさらに、第3磁性体23と、第4磁性体24とを含む。第3磁性体23と第4磁性体24とは、共に、第1磁性体21と同一寸法の平板形状である。第3磁性体23は、本体部10aの上面11(外側面)であって、+Z軸側の端部に位置するように、本体部10aに埋め込まれている。同様に、第4磁性体24は、本体部10aの上面11であって、−Z軸側の端部に位置するように、本体部10aに埋め込まれている。第3磁性体23と第4磁性体24とは「第2の磁性体」に相当する。外側面外装シート31は、本体部10aの上面11において、本体部10aの上面11と、本体部10aに埋め込まれた磁性体20(第3磁性体23及び第4磁性体24)とを覆っている。
【0040】
断熱部材1aは、図4に示す製造方法の場合、ステップS16においてさらに、外側面外装シート31の上に、第3磁性体23と第4磁性体24とを固定すればよい。図6に示す製造方法の場合、ステップS30においてさらに、外側面外装シート31の上に、第3磁性体23と第4磁性体24とを固定すればよい。
【0041】
以上説明した第2実施形態の断熱部材1aによれば、断熱部材1aは、本体部10aの上面11(外側面)において、本体部10aに埋め込まれた第3磁性体23及び第4磁性体24(第2の磁性体)を備える。この第3磁性体23及び第4磁性体24によって、磁性体20aの磁気吸着力をより強固にできる。このため、例えば高い断熱効果を求める場合等において、高さ方向(Y軸方向)に断熱部材1aを複数重ねて(複数層にして)取り付ける際に、各層の断熱部材1aをより強固に固定することができる。
【0042】
C.第3実施形態
図9は、第3実施形態における断熱部材1bの下面図である。図9以降の各図においても、図1〜3と同じ互いに対応するX,Y,Z軸を図示している。第1実施形態の断熱部材1では、磁性体20が2つの磁性体を有するとした。第3実施形態の断熱部材1bでは、磁性体20bが7つの磁性体21〜27を有している。第1磁性体21〜第7磁性体27は、いずれも、同一寸法の平板形状であり、X軸方向の長さL31と、Z軸方向の長さL32とは任意に決定できる。また、第1磁性体21〜第7磁性体27の各々は、等間隔に配置された状態で、本体部10bの下面12(内側面)に埋め込まれている。磁性体20bの間隔M2は任意に決定できる。
【0043】
以上説明した第3実施形態の断熱部材1bによっても、上述した第1実施形態と同様の効果を奏することができる。また、第3実施形態の断熱部材1bによれば、等間隔に配置された第1磁性体21〜第7磁性体27(複数の磁性体)が埋め込まれているため、磁性体20bの磁気吸着力を高めることができる。なお、磁性体の個数(7個)はあくまで例示であり、任意の複数個を採用できる。
【0044】
D.第4実施形態
図10は、第4実施形態における断熱部材1cの下面図である。第1実施形態の断熱部材1では、磁性体20が2つの磁性体を有するとした。第4実施形態の断熱部材1cでは、磁性体20cは1つの磁性体のみからなる。磁性体20cは、平板形状であり、X軸方向の長さL41と、Z軸方向の長さL42とは任意に決定できる。また、磁性体20cは、本体部10cの下面12(内側面)に埋め込まれている。このように、磁性体20cは単一の磁性体により構成されていてもよい。以上説明した第4実施形態の断熱部材1cによっても、上述した第1実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0045】
E.第5実施形態
図11は、第5実施形態における断熱部材1dの下面図である。第1実施形態の断熱部材1では、磁性体20が2つの磁性体を有し、各磁性体(第1磁性体21及び第2磁性体22)は矩形形状かつ平板状であった。第5実施形態の断熱部材1dでは、磁性体20dは、数多くの磁性体21〜2n(nは1以上の整数)を有し、各磁性体21〜2nは同一寸法の粒状である。各磁性体21〜2nの粒径L5は任意に決定でき、粒径数cmの粒状から、粒径数μmの粉状まで、任意の態様を採用できる。このように、磁性体20dは、粒状(いわゆる粉状を含む)であってもよい。以上説明した第5実施形態の断熱部材1dによっても、上述した第1実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0046】
F.変形例
本発明は上記の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
【0047】
上記実施形態では、断熱部材の構成について一例を示した。しかし、断熱部材の構成は、種々の変形が可能である。例えば、本体部の形状は矩形形状でなくてもよく、多角形形状、円形状など任意の形状とできる。例えば、本体部に複数の磁性体が埋め込まれる場合、各々の磁性体は、異なる寸法であってもよく、異なる形状であってもよく、平板状や粒状以外の形状でもよい。例えば、本体部に複数の磁性体が埋め込まれる場合、各々の磁性体は、等間隔に配置されていなくてもよい(ランダムに配置されていてもよい)。例えば、本体部の側面が外装シートによって覆われていてもよい。
【0048】
上記実施形態では、断熱部材の製造方法について一例(ハンドミキシング発泡とモールド成形)を示した。しかし、断熱部材の製造方法は、種々の変形が可能である。例えば、発泡方法として、簡易発泡(ボンベ式)、注入法、フロス注入法、スプレー法等を利用してもよく、成型方法として、スラブ成形、ラミネート成形等を利用してもよい。例えば、型枠は、金属製の金型に代えて、例えば樹脂製の型枠や、木製の型枠を用いてもよい。
【0049】
上記実施形態の構成、及び上記変形例の構成は、適宜組み合わせてもよい。例えば、第3〜第5実施形態で例示した態様の磁性体を、第2実施形態で説明したように、本体部の外側面にも備えていてもよい。上述した本体部の材料は、日本工業規格JIS A 9501:2014、JIS A 9510:2009、JIS A 9511:2009およびJIS A 9504:2011に規定される材料が好ましく、例えば、発泡プラスチック材料(硬質ウレタンフォーム、ポリエチレンフォーム、フェノールフォームなど)、無機多孔質材料(パーライト、ケイ酸カルシウムなど)ならびに繊維材料(ガラス繊維、ロックウールなど)の少なくとも一つであってもよい。
【0050】
以上、実施形態、変形例に基づき本態様について説明してきたが、上記した態様の実施の形態は、本態様の理解を容易にするためのものであり、本態様を限定するものではない。本態様は、その趣旨並びに特許請求の範囲を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本態様にはその等価物が含まれる。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することができる。
【符号の説明】
【0051】
1,1a,1b,1c,1d…断熱部材
10,10a,10b,10c…本体部
11…上面
12…下面
13〜16…側面
20,20a,20b,20c,20d…磁性体
21…第1磁性体
22…第2磁性体
30…外装シート
31…外側面外装シート
32…内側面外装シート
201…下枠
202…上枠
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
【手続補正書】
【提出日】2019年2月26日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
断熱部材であって、
断熱性を有する発泡体からなる平板状の本体部と、
前記本体部の内側面において、前記本体部に埋め込まれた磁性体と、
前記本体部の外側面を覆う外装シートと、
を備え
前記本体部の側面は、前記外装シートに覆われておらず、側面の全面に亘って前記発泡体のみが露出した状態で配置されている、断熱部材。
【請求項2】
請求項1に記載の断熱部材であって、
前記本体部には、等間隔に配置された複数の前記磁性体が埋め込まれている、断熱部材。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の断熱部材であって、
前記磁性体は、平板状または粒状である、断熱部材。
【請求項4】
請求項1から請求項のいずれか一項に記載の断熱部材であって、さらに、
前記本体部の内側面において、前記本体部の内側面と前記磁性体とを覆う第2の外装シートを備える、断熱部材。
【請求項5】
請求項1から請求項のいずれか一項に記載の断熱部材であって、さらに、
前記本体部の外側面において、前記本体部に埋め込まれた第2の磁性体を備え、
前記外装シートは、前記本体部の外側面と前記第2の磁性体とを覆っている、断熱部材。
【請求項6】
請求項1から請求項のいずれか一項に記載の断熱部材であって、
前記本体部は、ポリウレタンフォーム、パーライトおよびケイ酸カルシウムの少なくとも1つから主に成る、断熱部材。
【請求項7】
断熱部材の製造方法であって、
平板状の第1の枠と、箱状の第2の枠とを有する型枠を準備する工程と、
前記第1の枠に磁性体を固定する工程と、
前記第2の枠に対して、前記第2の枠の内側の側面を露出させた状態で外装シートを固定する工程と、
前記第2の枠にポリウレタンフォーム液を流入する工程と、
前記第1の枠と前記第2の枠とを嵌め込み加圧して、前記ポリウレタンフォーム液を発泡させることにより、前記磁性体が埋め込まれた本体部を形成する工程と、
前記第1の枠と前記第2の枠とを脱型する工程と、
を備える、断熱部材の製造方法。
【請求項8】
請求項に記載の断熱部材の製造方法であって、
前記型枠は、金属製である、断熱部材の製造方法。