【解決手段】熱源コントローラ18は、VWV制御の優先実行モード時に空調負荷に応じて冷温水の送水圧力設定値を設定し、VWV制御の非優先実行モード時に送水圧力設定値を固定する送水圧力設定部と、送水圧力設定値に基づいて2次ポンプ8−1〜8−3を制御する送水圧力制御部と、VWT制御の優先実行モード時に空調負荷に応じて冷温水の送水温度設定値を設定し、VWT制御の非優先実行モード時に送水温度設定値を固定する送水温度設定部と、送水温度設定値に基づいて熱源機1−1,1−2を制御する送水温度制御部と、VWV制御の優先実行モード時に送水圧力設定値が限界値に達したときにVWT制御の優先実行モードに切り替え、VWT制御の優先実行モード時に送水温度設定値が限界値に達したときにVWV制御の優先実行モードに切り替える制御切替部を備える。
【背景技術】
【0002】
従来より空調熱源システムの制御方法として、冷温水循環ポンプを制御する変水量制御(VWV:Variable Water Volume)と、熱源機器の送水温度を制御する変送水温度制御(VWT:Variable Water Temperature)とが知られている(特許文献1参照)。
【0003】
図7は、熱源制御の方法としてVWV制御を採用した従来の空調制御システムの構成を示すブロック図である。
図7の空調制御システムは、冷温水を生成する熱源機1−1,1−2と、これら熱源機1−1,1−2の補機としての1次ポンプ2−1,2−2と、複数の熱源機1−1,1−2からの冷温水(送水)を混合する往路ヘッダー3−1,3−2と、送水管路4と、負荷機器であるAHU(Air Handling Unit)5−1と、同じく負荷機器であるFCU(Fan Coil Unit)5−2と、還水管路6と、AHU5−1およびFCU5−2において熱交換され還水管路6を介して送られてくる冷温水(還水)が戻される還路ヘッダー7と、往路ヘッダー3−1と3−2との間に設けられた2次ポンプ8−1〜8−3と、往路ヘッダー3−1と3−2との間に設けられたバイパス弁9と、送水圧力を計測する吐出圧センサ10と、送水温度を計測する往温度センサ11と、還水温度を計測する還温度センサ12と、還水の流量を計測する流量計13とから構成される。2次ポンプ8−1〜8−3は、それぞれインバータ14−1〜14−3と、AHU5−1、FCU5−2を流れる冷温水の流量を調節する制御弁15−1,15−2とを備えている。
【0004】
1次ポンプ2−1,2−2により圧送され熱源機1−1,1−2により熱量が付加された冷温水(送水)は、往路ヘッダー3−1に送られ、2次ポンプ8−1〜8−3により圧送されて往路ヘッダー3−2を経て送水管路4に供給される。そして、冷温水は、AHU5−1およびFCU5−2を通過して還水管路6により還水として還路ヘッダー7に至り、再びポンプ2−1,2−2によって圧送される。こうして、冷温水は以上の経路を循環する。
【0005】
制御装置(不図示)は、AHU5−1の制御弁15−1、FCU5−2の制御弁15−2で判定されたそれぞれの制御状態から全体の制御状態(トータル制御状態)を判定して、このトータル制御状態に応じて表1のように2次ポンプ8−1〜8−3の圧力設定の変更を行う。
【0006】
【表1】
【0007】
制御装置は、“能力不足”の状態と判定した場合には送水圧力設定値を上昇させ、“能力適正”の状態と判定した場合には現在の送水圧力設定値を維持し、“能力過剰”の状態と判定した場合には送水圧力設定値を下降させる。そして、制御装置は、送水圧力設定値に基づいて2次ポンプ8−1〜8−3のインバータ14−1〜14−3の周波数およびバイパス弁9の開度を制御する。
【0008】
ここで、“能力不足”の状態とは、AHU5−1、FCU5−2を流れる冷温水の流量を制御する個々の制御弁(不図示)の開度がほぼ全開であり、AHU5−1、FCU5−2によって冷却または加熱された空気(給気)の温度と給気温度設定値SPとが離れている状態を言う。“能力適正”の状態とは、AHU5−1、FCU5−2の制御弁の開度がほぼ全開であり、給気温度と給気温度設定値SPとがほぼ同じ状態を言う。“能力過剰”の状態とは、AHU5−1、FCU5−2の制御弁の開度が一定開度以下の状態を言う。
【0009】
以上のように、空調負荷が少ない時にはAHU5−1、FCU5−2の制御弁が閉まり気味の運転となる。AHU5−1、FCU5−2の制御弁が閉まっている状態は、制御弁の圧力損失の分だけ無駄に2次ポンプ8−1〜8−3の搬送動力を消費することになる。そこでVWV制御においては、AHU5−1、FCU5−2の制御弁がなるべく開くよう送水圧力設定値を緩和することで2次ポンプ8−1〜8−3の搬送動力を削減する。このときに、AHU5−1、FCU5−2の制御状態によって送水圧力設定値を変更して送水圧力設定値を緩和するためと、送水圧力設定値を下げ過ぎることを防止するために、AHU5−1、FCU5−2の制御状態を監視する。
【0010】
熱源制御の方法としてVWT制御を採用する場合においても空調制御システムの構成は
図7に示したVWV制御の場合と同様である。VWT制御の場合、図示しない制御装置は、負荷機器であるAHU5−1の制御弁15−1およびFCU5−2の制御弁15−2のそれぞれの制御状態からトータル制御状態を判定して、このトータル制御状態に応じて表2のように熱源の送水温度設定の変更を行う。
【0011】
【表2】
【0012】
制御装置は、冷房運転時に、“能力不足”の状態と判定した場合には送水温度設定値を下降させ、“能力適正”の状態と判定した場合には現在の送水温度設定値を維持し、“能力過剰”の状態と判定した場合には送水温度設定値を上昇させる。そして、制御装置は、送水温度設定値に基づいて熱源機1−1,1−2からの送水の温度を制御する。
【0013】
VWT制御においては、AHU5−1、FCU5−2の制御状態によって送水温度設定を変更することで熱源機1−1,1−2の1次エネルギーを削減できる。しかし、冷房運転時に熱源機1−1,1−2の送水温度を上げ過ぎると空調負荷を処理できなくなる。そこで、空調負荷が小さいようであれば送水温度を上昇させ、空調負荷が大きくなったときに送水温度を下降させることで、負荷に追従した形で熱源機1−1,1−2の1次エネルギーを削減するようにしている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
特許文献1に開示された空調制御システムでは、ポンプと熱源機の省エネルギーを同時に実現するため、VWV制御とVWT制御を同時に実行するようにしていた。
しかしながら、VWV制御とVWT制御を同時に実行すると、お互いに制御が干渉する可能性があった。干渉の例としては、例えばVWT制御により送水温度設定値が上昇して要求水量が増えたことにより、VWV制御側では送水圧力設定値の上昇要求が生じ、2次ポンプの搬送動力が増加するといった例がある。
【0016】
このような制御の干渉を避けるには、オペレータが、VWV制御とVWT制御を手動で切り替えるなどの手法で対応する必要があった。
【0017】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、VWV制御とVWT制御の干渉を抑制することができる負荷応答型空調制御システムおよび方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明の負荷応答型空調制御システムは、空調機と、冷温水を生成するように構成された熱源機と、前記冷温水を前記空調機へ供給するように構成されたポンプと、前記空調機の制御状態を判定するように構成された第1の制御状態判定部と、変水量制御の優先実行モード時に前記制御状態が表す空調負荷に応じて前記冷温水の送水圧力設定値を設定し、前記変水量制御の非優先実行モード時に前記送水圧力設定値を固定するように構成された送水圧力設定部と、前記冷温水の送水圧力が前記送水圧力設定値と一致するように前記ポンプを制御するように構成された送水圧力制御部と、変送水温度制御の優先実行モード時に前記空調負荷に応じて前記冷温水の送水温度設定値を設定し、前記変送水温度制御の非優先実行モード時に前記送水温度設定値を固定するように構成された送水温度設定部と、前記冷温水の送水温度が前記送水温度設定値と一致するように前記熱源機を制御するように構成された送水温度制御部と、前記変水量制御の優先実行モード時に前記送水圧力設定値が限界値に達したときに前記変送水温度制御の優先実行モードに切り替え、前記変送水温度制御の優先実行モード時に前記送水温度設定値が限界値に達したときに前記変水量制御の優先実行モードに切り替えるように構成された制御切替部とを備えることを特徴とするものである。
【0019】
また、本発明の負荷応答型空調制御システムの1構成例は、前記空調機を通過する冷温水の流量を調節するように構成された制御弁と、前記空調機から供給される給気の温度と給気温度設定値とが一致するように前記制御弁の開度を制御するように構成された弁開度制御部とをさらに備え、前記第1の制御状態判定部は、前記制御弁の開度と前記給気の温度とに基づいて前記空調機の制御状態を判定することを特徴とするものである。
また、本発明の負荷応答型空調制御システムの1構成例は、前記空調機が複数設けられ、前記第1の制御状態判定部によって前記空調機毎に判定された制御状態を1つに統合したトータル制御状態を判定するように構成された第2の制御状態判定部をさらに備え、前記送水圧力設定部は、前記変水量制御の優先実行モード時に前記トータル制御状態が表す空調負荷に応じて前記冷温水の送水圧力設定値を設定し、前記送水温度設定部は、前記変送水温度制御の優先実行モード時に前記トータル制御状態が表す空調負荷に応じて前記冷温水の送水温度設定値を設定することを特徴とするものである。
また、本発明の負荷応答型空調制御システムの1構成例において、前記第2の制御状態判定部は、前記第1の制御状態判定部によって前記空調機毎に判定された制御状態の多数決処理により前記トータル制御状態を判定することを特徴とするものである。
【0020】
また、本発明の負荷応答型空調制御システムの1構成例において、前記制御切替部は、前記変水量制御の優先実行モード時に前記送水圧力設定値が下限値に達したときに前記変送水温度制御の優先実行モードに切り替え、前記変送水温度制御の優先実行モード時に冷房運転の場合の前記送水温度設定値が冷房運転時下限値に達したとき、あるいは暖房運転の場合の前記送水温度設定値が暖房運転時上限値に達したときに、前記変水量制御の優先実行モードに切り替えることを特徴とするものである。
また、本発明の負荷応答型空調制御システムの1構成例において、前記送水圧力設定部は、前記変水量制御の優先実行モードから非優先実行モードに切り替わったときに前記送水圧力設定値を下限値に固定し、前記送水温度設定部は、前記変送水温度制御の優先実行モードから非優先実行モードに切り替わったときに前記送水温度設定値を冷房運転時下限値または暖房運転時上限値に固定することを特徴とするものである。
【0021】
また、本発明の負荷応答型空調制御方法は、空調機の制御状態を判定する第1のステップと、変水量制御の優先実行モード時に前記制御状態が表す空調負荷に応じて、前記空調機へ供給される冷温水の送水圧力設定値を設定する第2のステップと、前記変水量制御の非優先実行モード時に前記送水圧力設定値を固定する第3のステップと、前記冷温水を前記空調機へ供給するポンプを、前記冷温水の送水圧力が前記送水圧力設定値と一致するように制御する第4のステップと、変送水温度制御の優先実行モード時に前記空調負荷に応じて前記冷温水の送水温度設定値を設定する第5のステップと、前記変送水温度制御の非優先実行モード時に前記送水温度設定値を固定する第6のステップと、前記冷温水の送水温度が前記送水温度設定値と一致するように、前記冷温水の生成元の熱源機を制御する第7のステップと、前記変水量制御の優先実行モード時に前記送水圧力設定値が限界値に達したときに前記変送水温度制御の優先実行モードに切り替える第8のステップと、前記変送水温度制御の優先実行モード時に前記送水温度設定値が限界値に達したときに前記変水量制御の優先実行モードに切り替える第9のステップとを含むことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、送水圧力設定部と送水圧力制御部と送水温度設定部と送水温度制御部と制御切替部とを設け、変水量制御の優先実行モード時に送水圧力設定値が限界値に達したときに変送水温度制御の優先実行モードに切り替え、変送水温度制御の優先実行モード時に送水温度設定値が限界値に達したときに変水量制御の優先実行モードに切り替えることにより、変水量制御と変送水温度制御を自動的に切り替えることができる。本発明では、変水量制御と変送水温度制御を同時に実行せずに優先順位をつけて制御をすることにより、変水量制御と変送水温度制御の干渉を抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施例について図面を参照して説明する。
図1は本発明の実施例に係る負荷応答型空調制御システムの構成を示すブロック図であり、
図7と同様の構成には同一の符号を付してある。本実施例の空調制御システムは、熱源機1−1,1−2と、1次ポンプ2−1,2−2と、往路ヘッダー3−1,3−2と、送水管路4と、AHU5−1と、FCU5−2と、還水管路6と、還路ヘッダー7と、2次ポンプ8−1〜8−3と、バイパス弁9と、吐出圧センサ10と、往温度センサ11と、還温度センサ12と、流量計13と、2次ポンプ8−1〜8−3毎に設けられたインバータ14−1〜14−3と、AHU5−1、FCU5−2を流れる冷温水の流量を調節する制御弁15−1,15−2と、AHU5−1、FCU5−2によって冷却または加熱された空気(給気)の温度を計測する給気温度センサ16−1,16−2と、制御弁15−1,15−2を制御する空調コントローラ17と、2次ポンプ8−1〜8−3とバイパス弁9と熱源機1−1,1−2とを制御する熱源コントローラ18とから構成される。
【0025】
従来と同様に、1次ポンプ2−1,2−2により圧送され熱源機1−1,1−2により熱量が付加された冷温水(送水)は、往路ヘッダー3−1に送られ、2次ポンプ8−1〜8−3により圧送されて往路ヘッダー3−2を経て送水管路4に供給され、AHU5−1およびFCU5−2に供給される。そして、冷温水は、AHU5−1およびFCU5−2において熱交換され、制御弁15−1,15−2、還水管路6、還路ヘッダー7を介して1次ポンプ2−1,2−2に戻され、再び1次ポンプ2−1,2−2によって圧送される。
【0026】
図2は空調コントローラ17の構成を示すブロック図、
図3は熱源コントローラ18の構成を示すブロック図である。
空調コントローラ17は、給気温度と給気温度設定値とが一致するように制御弁15−1,15−2の開度を制御する弁開度制御部171と、空調機(AHU5−1、FCU5−2)の制御状態を判定する制御状態判定部172と、制御状態判定部172によって空調機毎に判定された制御状態を1つに統合したトータル制御状態を判定するトータル制御状態判定部173とを備えている。
【0027】
熱源コントローラ18は、VWV制御の優先実行モード時に空調負荷に応じて冷温水の送水圧力設定値を設定し、VWV制御の非優先実行モード時に送水圧力設定値を固定する送水圧力設定部180と、冷温水の送水圧力が送水圧力設定値と一致するように2次ポンプ8−1〜8−3およびバイパス弁9を制御する送水圧力制御部181と、VWT制御の優先実行モード時に空調負荷に応じて冷温水の送水温度設定値を設定し、VWT制御の非優先実行モード時に送水温度設定値を固定する送水温度設定部182と、冷温水の送水温度が送水温度設定値と一致するように熱源機1−1,1−2を制御する送水温度制御部183と、VWV制御の優先実行モード時に送水圧力設定値が限界値に達したときにVWT制御の優先実行モードに切り替え、VWT制御の優先実行モード時に送水温度設定値が限界値に達したときにVWV制御の優先実行モードに切り替える制御切替部184とを備えている。
【0028】
以下、本実施例の負荷応答型空調制御システムの動作について説明する。
図4は空調コントローラ17の動作を説明するフローチャート、
図5は熱源コントローラ18の動作を説明するフローチャートである。
【0029】
給気温度センサ16−1,16−2は、それぞれAHU5−1、FCU5−2によって冷却または加熱され、空調ゾーン(不図示)へ供給される空気(給気)の温度T1,T2を計測する。
【0030】
制御弁15−1,15−2は、空調機(AHU5−1、FCU5−2)毎に設けられる。空調コントローラ17の弁開度制御部171は、空調制御が開始されると、給気温度センサ16−1によって計測された給気温度T1と給気温度設定値SPとが一致するように制御弁15−1の開度φ1を制御する。同様に、弁開度制御部171は、給気温度センサ16−2によって計測された給気温度T2と給気温度設定値SPとが一致するように制御弁15−2の開度φ2を制御する(
図4ステップS100)。給気温度設定値SPは、例えばオペレータによって予め設定されている。
【0031】
空調コントローラ17の制御状態判定部172は、AHU5−1の現在の制御状態(空調負荷)を判定する(
図4ステップS101)。具体的には、制御状態判定部172は、空調機の冷房運転時にAHU5−1の制御弁15−1の開度φ1が閾値TH1(TH1は全開(100%)に近い所定の値)以上で、かつ給気温度T1と給気温度設定値SPとの関係がT1>SP+α(αは所定の偏差)であれば、冷房運転時の“能力不足”の状態と判定する。
【0032】
また、制御状態判定部172は、空調機の暖房運転時に制御弁15−1の開度φ1が閾値TH1以上で、かつ給気温度T1と給気温度設定値SPとの関係がT1<SP−αであれば、暖房運転時の“能力不足”の状態と判定する。つまり、制御状態判定部172は、制御弁15−1がほぼ全開で、給気温度T1と給気温度設定値SPとが離れている場合には、“能力不足”の状態と判定する。
【0033】
また、制御状態判定部172は、冷暖房運転時に制御弁15−1の開度φ1が閾値TH1以上で、かつ給気温度T1と給気温度設定値SPとの関係がSP−α≦T1≦SP+αであれば、冷暖房運転時の“能力適正”の状態と判定する。つまり、制御状態判定部172は、制御弁15−1がほぼ全開で、給気温度T1と給気温度設定値SPとがほぼ同じ場合には、“能力適正”の状態と判定する。
【0034】
また、制御状態判定部172は、冷暖房運転時に制御弁15−1の開度φ1が閾値TH2(TH2<TH1)以下であれば、冷暖房運転時の“能力過剰”の状態と判定する。つまり、制御状態判定部172は、制御弁15−1の開度が一定開度以下の場合には、“能力過剰”の状態と判定する。
制御状態判定部172は、FCU5−2の現在の制御状態についてもAHU5−1と同様に判定する(ステップS101)。
【0035】
次に、空調コントローラ17のトータル制御状態判定部173は、AHU5−1、FCU5−2のそれぞれの制御状態から空調制御システム全体のトータル制御状態を判定する(
図4ステップS102)。
【0036】
本実施例では、複数の空調機(AHU5−1、FCU5−2)の制御状態のうち最も多い制御状態をトータル制御状態として採用する多数決処理の方法を用いる。トータル制御状態判定部173は、“能力不足”の状態が最も多い場合には空調制御システム全体が“能力不足”の状態と判定し、“能力適正”の状態が最も多い場合には空調制御システム全体が“能力適正”の状態と判定し、“能力過剰”の状態が最も多い場合には空調制御システム全体が“能力過剰”の状態と判定する。
【0037】
トータル制御演算部173は、“能力不足”の状態が1台ないし複数台存在する場合には、“能力過剰”および“能力適性”の数には関係なく、空調制御システム全体として“能力不足”の状態と判定する。また、トータル制御演算部173は、“能力不足”の状態が1台も存在せず、“能力過剰”の状態のみが存在する場合には、空調制御システム全体として“能力過剰”の状態と判定する。また、トータル制御状態判定部173は、“能力過剰”と“能力適性”の状態が混在している場合には、空調制御システム全体として“能力適性”の状態と判定する。
【0038】
そして、トータル制御状態判定部173は、判定したトータル制御状態を示す制御状態情報を熱源コントローラ18に対して送出する(
図4ステップS103)。
空調コントローラ17は、以上のようなステップS100〜S103の処理を空調が停止するまで(
図4ステップS104においてYES)、一定時間毎に行う。
【0039】
次に、熱源コントローラ18の動作について説明する。まず、オペレータは、空調運転の開始前に、VWV制御とVWT制御のどちらを優先実行するかを選択し、熱源コントローラ18に対してVWV制御とVWT制御のどちらを優先実行するかを指定する優先指定操作をあらかじめ行う(
図5ステップS200)。本実施例では、始めにVWV制御で運転を開始し、VWVの下限設定値となった場合に自動的にVWT制御へ移行する例で説明する。
【0040】
熱源コントローラ18の制御切替部184は、オペレータからの優先指定操作を受けて、VWV制御のための送水圧力設定部180の実行モードを優先実行モードにする優先実行モード信号を出力すると共に(
図5ステップS201)、VWT制御のための送水温度設定部182の実行モードを非優先実行モードにする非優先実行モード信号を出力する(
図5ステップS202)。
【0041】
優先実行モード信号を受け取った熱源コントローラ18の送水圧力設定部180は、通常のVWV制御の処理により送水圧力設定値WPSPを設定する(
図5ステップS203)。具体的には、送水圧力設定部180は、空調コントローラ17からの制御状態情報が示すトータル制御状態が“能力不足”の状態を示している場合には、現在の送水圧力設定値WPSPを所定幅だけ上昇させ、トータル制御状態が“能力適正”の状態を示している場合には、現在の送水圧力設定値WPSPを維持し、トータル制御状態が“能力過剰”の状態を示している場合には、現在の送水圧力設定値WPSPを所定幅だけ下降させる。
【0042】
なお、送水圧力設定部180は、送水圧力設定値WPSPが所定の上限値WPHに既に達していて、トータル制御状態が“能力不足”の状態を示している場合には、送水圧力設定値WPSPを上限値WPHのままとする。また、送水圧力設定部180は、送水圧力設定値WPSPが所定の下限値WPL(WPL<WPH)に既に達していて、トータル制御状態が“能力過剰”の状態を示している場合には、送水圧力設定値WPSPを下限値WPLのままとする。
【0043】
往路ヘッダー3−2に設けられた吐出圧センサ10は、送水圧力WPを計測する。熱源コントローラ18の送水圧力制御部181は、吐出圧センサ10によって計測された送水圧力WPと送水圧力設定部180によって設定された送水圧力設定値WPSPとが一致するように2次ポンプ8−1〜8−3のインバータ14−1〜14−3の周波数(2次ポンプ8−1〜8−3の回転数)およびバイパス弁9の開度を制御する(
図5ステップS204)。
【0044】
次に、送水圧力設定部180は、送水圧力設定値WPSPが所定の上限値WPHに達した場合(
図5ステップS205においてYES)、改善リミット通知信号を出力する(
図5ステップS206)。また、送水圧力設定部180は、送水圧力設定値WPSPが所定の下限値WPLに達した場合(
図5ステップS207においてYES)、制御切替部184に対して緩和リミット通知信号を出力する(
図5ステップS208)。
【0045】
送水圧力設定部180と送水圧力制御部181とは、送水圧力設定部180から緩和リミット通知信号が出力され、後述のように制御切替部184から送水圧力設定部180の実行モードを非優先実行モードにする非優先実行モード信号が出力されるまで、ステップS203〜S207の処理を一定時間毎に行う。
【0046】
一方、非優先実行モード信号を受け取った熱源コントローラ18の送水温度設定部182は、通常のVWT制御と異なり、送水温度設定値WTSPを固定値(定格値)とする(
図5ステップS209)。このときの送水温度設定値WTSPの定格値は、例えば熱源機1−1,1−2の消費エネルギーが適切な値になるように予め決定しておけばよい。
【0047】
往路ヘッダー3−2に設けられた往温度センサ11は、送水温度WTを計測する。熱源コントローラ18の送水温度制御部183は、往温度センサ11によって計測された送水温度WTと送水温度設定部182によって設定された送水温度設定値WTSPとが一致するように熱源機1−1,1−2を制御する(
図5ステップS210)。
【0048】
送水温度設定部182と送水温度制御部183とは、送水圧力設定部180から緩和リミット通知信号が出力され、後述のように制御切替部184から送水温度設定部182の実行モードを優先実行モードにする優先実行モード信号が出力されるまで、ステップS209,S210の処理を一定時間毎に行う。
【0049】
空調負荷が下がり続けると、送水圧力設定値WPSPが徐々に低下して遂には下限値WPLに達し、上記のとおり送水圧力設定部180から緩和リミット通知信号が出力される。
【0050】
熱源コントローラ18の制御切替部184は、送水圧力設定部180から緩和リミット通知信号が出力されると、VWV制御のための送水圧力設定部180の実行モードを非優先実行モードにする非優先実行モード信号を出力すると共に、VWT制御のための送水温度設定部182の実行モードを優先実行モードにする優先実行モード信号を出力する(
図5ステップS211)。
【0051】
送水温度設定部182は、制御切替部184から優先実行モード信号を受け取ると(
図5ステップS212においてYES)、通常のVWT制御により送水温度設定値WTSPを設定する(
図5ステップS213)。具体的には、送水温度設定部182は、空調機の冷房運転時に空調コントローラ17からの制御状態情報が示すトータル制御状態が“能力不足”の状態を示している場合には、現在の送水温度設定値WTSPを所定幅だけ下降させ、冷暖房運転時にトータル制御状態が“能力適正”の状態を示している場合には、現在の送水温度設定値WTSPを維持し、冷房運転時にトータル制御状態が“能力過剰”の状態を示している場合には、現在の送水温度設定値WTSPを所定幅だけ上昇させる。
【0052】
また、送水温度設定部182は、空調機の暖房運転時にトータル制御状態が“能力不足”の状態を示している場合には、現在の送水温度設定値WTSPを所定幅だけ上昇させ、暖房運転時にトータル制御状態が“能力適正”の状態を示している場合には、現在の送水温度設定値WTSPを維持し、暖房運転時にトータル制御状態が“能力過剰”の状態を示している場合には、現在の送水温度設定値WTSPを所定幅だけ下降させる。
【0053】
なお、送水温度設定部182は、冷房運転時に送水温度設定値WTSPが所定の冷房運転時下限値WTCLに既に達していて、トータル制御状態が“能力不足”の状態を示している場合には、送水温度設定値WTSPを下限値WTCLのままとし、冷房運転時に送水温度設定値WTSPが所定の冷房運転時上限値WTCHに既に達していて、トータル制御状態が“能力過剰”の状態を示している場合には、送水温度設定値WTSPを上限値WTCHのままとする。
【0054】
また、送水温度設定部182は、暖房運転時に送水温度設定値WTSPが所定の暖房運転時上限値WTHHに既に達していて、トータル制御状態が“能力不足”の状態を示している場合には、送水温度設定値WTSPを上限値WTHHのままとし、暖房運転時に送水温度設定値WTSPが所定の暖房運転時下限値WTHL(WTCL<WTCH<WTHL<WTHH)に既に達していて、トータル制御状態が“能力過剰”の状態を示している場合には、送水温度設定値WTSPを下限値WTHLのままとする。
【0055】
図5のステップS214の送水温度制御部183の動作は、ステップS210と同じなので、説明は省略する。
次に、送水温度設定部182は、冷房運転時に送水温度設定値WTSPが所定の冷房運転時上限値WTCHに達した場合、あるいは暖房運転時に送水温度設定値WTSPが所定の暖房運転時下限値WTHLに達した場合(
図5ステップS215においてYES)、緩和リミット通知信号を出力する(
図5ステップS216)。
【0056】
また、送水温度設定部182は、冷房運転時に送水温度設定値WTSPが所定の冷房運転時下限値WTCLに達した場合、あるいは暖房運転時に送水温度設定値WTSPが所定の暖房運転時上限値WTHHに達した場合(
図5ステップS217においてYES)、制御切替部184に対して改善リミット通知信号を出力する(
図5ステップS218)。
【0057】
送水温度設定部182と送水温度制御部183とは、送水温度設定部182から改善リミット通知信号が出力され、後述のように制御切替部184から送水温度設定部182の実行モードを非優先実行モードにする非優先実行モード信号が出力されるまで、ステップS213〜S217の処理を一定時間毎に行う。
【0058】
一方、非優先実行モード信号を受け取った送水圧力設定部180は、通常のVWV制御と異なり、送水圧力設定値WPSPを固定値とする(
図5ステップS219)。このとき、送水圧力設定値WPSPが下限値WPLになっているので、送水圧力設定部180は、現在の下限値WPLのまま送水圧力設定値WPSPを固定する。
【0059】
図5のステップS220の送水圧力制御部181の動作は、ステップS204と同じなので、説明は省略する。
送水圧力設定部180と送水圧力制御部181とは、送水温度設定部182から改善リミット通知信号が出力され、後述のように制御切替部184から送水圧力設定部180の実行モードを優先実行モードにする優先実行モード信号が出力されるまで、ステップS219,S220の処理を一定時間毎に行う。
【0060】
空調負荷が上がり続けると、冷房運転時に送水温度設定値WTSPが徐々に低下して冷房運転時下限値WTCLに達するか、あるいは暖房運転時に送水温度設定値WTSPが徐々に上昇して暖房運転時上限値WTHHに達し、送水温度設定部182から改善リミット通知信号が出力される。
【0061】
制御切替部184は、送水温度設定部182から改善リミット通知信号が出力されると、VWV制御のための送水圧力設定部180の実行モードを優先実行モードにする優先実行モード信号を出力すると共に、VWT制御のための送水温度設定部182の実行モードを非優先実行モードにする非優先実行モード信号を出力する(
図5ステップS221)。
【0062】
送水圧力設定部180は、制御切替部184から優先実行モード信号を受け取ると(
図5ステップS222においてYES)、ステップS203に戻る。
また、送水温度設定部182は、制御切替部184から非優先実行モード信号を受け取ると、ステップS209に戻る。このとき、冷房運転時であれば送水温度設定値WTSPが冷房運転時下限値WTCLになっていて、暖房運転時であれば送水温度設定値WTSPが暖房運転時上限値WTHHになっているので、送水温度設定部182は、現在の下限値WTCLまたは上限値WTHHのまま送水温度設定値WTSPを固定する(ステップS209)。
【0063】
図6は以上の負荷応答型空調制御システムの動作を説明する図である。なお、
図6では、冷房運転の場合について記載している。
図6の時刻t1からt2まではVWV制御が優先実行モード、VWT制御が非優先実行モードになっている。
上記のとおりVWV制御において空調負荷が下がり続けると、送水圧力設定値WPSPが徐々に低下して遂には下限値WPLに達し、送水圧力設定部180から緩和リミット通知信号が出力される。
【0064】
VWT制御が非優先実行モードの場合、送水温度設定値WTSPが固定値(定格値)となっているが、時刻t2において送水圧力設定部180から緩和リミット通知信号が出力され、制御切替部184から送水温度設定部182に対して優先実行モード信号が出力されると、VWT制御が優先実行モードに切り替わる。
【0065】
VWV制御が非優先実行モードに切り替わった場合、送水圧力設定値WPSPは下限値WPLのまま固定される。
冷房運転時のVWT制御において空調負荷が下がり続けると、送水温度設定値WTSPが徐々に上昇して遂には冷房運転時上限値WTCHに達し、時刻t3において送水温度設定部182から緩和リミット通知信号が出力される。なお、送水温度設定部182から緩和リミット通知信号が出力された場合、VWV制御が優先実行モードに移行することはない。
【0066】
冷房運転時のVWT制御において空調負荷が上がり続けると、送水温度設定値WTSPが徐々に低下して遂には冷房運転時下限値WTCLに達し、送水温度設定部182から改善リミット通知信号が出力される。
【0067】
VWV制御が非優先実行モードの場合、上記のとおり送水圧力設定値WPSPが固定値となっているが、時刻t4において送水温度設定部182から改善リミット通知信号が出力され、制御切替部184から送水圧力設定部180に対して優先実行モード信号が出力されると、VWV制御が優先実行モードに切り替わる。
【0068】
冷房運転時のVWV制御において空調負荷が上がり続けると、送水圧力設定値WPSPが徐々に上昇して遂には上限値WPHに達し、時刻t5において送水圧力設定部180から改善リミット通知信号が出力される。なお、送水圧力設定部180から改善リミット通知信号が出力された場合、VWT制御が優先実行モードに移行することはない。
【0069】
以上のように、本実施例では、VWV制御とVWT制御を同時実行せずに優先順位をつけて制御をすることにより、VWV制御とVWT制御の干渉を抑制することができる。
なお、本実施例では、送水圧力設定部180から改善リミット通知信号が出力された場合、または送水温度設定部182から緩和リミット通知信号が出力された場合、上記のとおり熱源制御の実行モードが切り替わることはない。ただし、これらの信号が出力されることにより、オペレータに対して設備に改善の必要性があることを知らせることができる。
【0070】
また、本実施例では、始めにVWV制御を優先実行モードにして運転を開始する例を説明したが、始めにVWT制御を優先実行モードにして運転を開始するようにしてもよい。VWT制御を優先実行モードにして運転を開始する場合、非優先実行モードの送水圧力設定部180は、送水圧力設定値WPSPを固定値(定格値)とする。このときの送水圧力設定値WPSPの定格値は、例えば2次ポンプ8−1〜8−3の消費エネルギーが適切な値になるように予め決定しておけばよい。
【0071】
VWT制御を優先実行モードにして運転を開始する場合においても、制御切替部184は、上記と同様にVWT制御の送水温度設定部182から緩和リミット通知信号が出力されたときにVWV制御を優先実行モードに切り替え、VWV制御の送水圧力設定部180から改善リミット通知信号が出力されたときにVWT制御を優先実行モードに切り替えるようにすればよい。
【0072】
また、本実施例では、空調機をAHU5−1とFCU5−2の2台としたが、これに限るものではなく、3台以上の空調機があってもよいことは言うまでもない。
また、熱源機を2台としたが、1台乃至は3台以上の熱源機があってもよいことは言うまでもない。
【0073】
本実施例で説明した空調コントローラ17は、CPU(Central Processing Unit)、記憶装置及びインタフェースを備えたコンピュータと、これらのハードウェア資源を制御するプログラムによって実現することができる。同様に、熱源コントローラ18は、コンピュータとプログラムによって実現することができる。各々の装置のCPUは、各々の記憶装置に格納されたプログラムに従って本実施例で説明した処理を実行する。これにより、本実施例の負荷応答型空調制御方法を実現することができる。