特開2019-128246(P2019-128246A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ アンリツ株式会社の特許一覧

特開2019-128246トリガ生成回路及びトリガ生成方法とサンプリングオシロスコープ及びサンプリング方法
<>
  • 特開2019128246-トリガ生成回路及びトリガ生成方法とサンプリングオシロスコープ及びサンプリング方法 図000003
  • 特開2019128246-トリガ生成回路及びトリガ生成方法とサンプリングオシロスコープ及びサンプリング方法 図000004
  • 特開2019128246-トリガ生成回路及びトリガ生成方法とサンプリングオシロスコープ及びサンプリング方法 図000005
  • 特開2019128246-トリガ生成回路及びトリガ生成方法とサンプリングオシロスコープ及びサンプリング方法 図000006
  • 特開2019128246-トリガ生成回路及びトリガ生成方法とサンプリングオシロスコープ及びサンプリング方法 図000007
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2019-128246(P2019-128246A)
(43)【公開日】2019年8月1日
(54)【発明の名称】トリガ生成回路及びトリガ生成方法とサンプリングオシロスコープ及びサンプリング方法
(51)【国際特許分類】
   G01R 13/20 20060101AFI20190708BHJP
   G01R 13/34 20060101ALI20190708BHJP
【FI】
   G01R13/20 N
   G01R13/34 B
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2018-9766(P2018-9766)
(22)【出願日】2018年1月24日
(71)【出願人】
【識別番号】000000572
【氏名又は名称】アンリツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100067323
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 教光
(74)【代理人】
【識別番号】100124268
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 典行
(72)【発明者】
【氏名】村上 崇
(57)【要約】
【課題】長周期パターンでも従来より早いサンプリング速度でパターンロックする。
【解決手段】動作可能な周波数範囲内で入力されるトリガクロックを任意の周波数で出力するDDS12と、DDS12から出力されるトリガクロックの通過帯域を制限するBPF13と、BPF13で通過帯域が制限されたトリガクロックを分周する可変分周器15とを含み、サンプラ4が動作する周波数のストローブ信号を生成するトリガ生成回路2であり、1回のストローブ信号によって生じるデータのパターン周期に対する位相ずれ量を算出し、算出した位相ずれ量が無くなるようにDDS12の位相アキュムレータのカウント値を更新して位相を調整する制御部7を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
動作可能な周波数範囲内で入力されるトリガクロックを任意の周波数で出力するダイレクト・デジタル・シンセサイザ(12)と、
前記ダイレクト・デジタル・シンセサイザから出力されるトリガクロックの通過帯域を制限するバンドパスフィルタ(13)と、
前記バンドパスフィルタで通過帯域が制限されたトリガクロックを分周する可変分周器(15)とを含み、サンプラ(4)が動作する周波数のストローブ信号を生成するトリガ生成回路(2)において、
1回のストローブ信号によって生じるデータのパターン周期に対する位相ずれ量を算出し、算出した位相ずれ量が無くなるように前記ダイレクトデジタルシンセサイザの位相アキュムレータのカウント値を更新して位相を調整する制御部(7)を備えたことを特徴とするトリガ生成回路。
【請求項2】
前記制御部(7)は、前記位相ずれ量を複数回に分割して位相を調整することを特徴とする請求項1記載のトリガ生成回路。
【請求項3】
動作可能な周波数範囲内で入力されるトリガクロックを任意の周波数で出力するダイレクト・デジタル・シンセサイザ(12)と、
前記ダイレクト・デジタル・シンセサイザから出力されるトリガクロックの通過帯域を制限するバンドパスフィルタ(13)と、
前記バンドパスフィルタで通過帯域が制限されたトリガクロックを分周する可変分周器(15)とを含むトリガ生成回路(2)を用いてサンプラ(4)が動作する周波数のストローブ信号を生成するトリガ生成方法において、
1回のストローブ信号によって生じるデータのパターン周期に対する位相ずれ量を算出する位相ずれ量算出ステップと、
前記位相ずれ量算出ステップにて算出した位相ずれ量が無くなるように前記ダイレクトデジタルシンセサイザの位相アキュムレータのカウント値を更新して位相を調整する位相調整ステップとを含むことを特徴とするトリガ生成方法。
【請求項4】
前記位相ずれ量算出ステップにて算出した位相ずれ量を複数回に分割して位相を調整するステップを含むことを特徴とする請求項3記載のトリガ生成方法。
【請求項5】
請求項1または請求項2のトリガ生成回路(2)にて生成される前記ストローブ信号に基づくサンプリングタイミングでサンプラ(4)によりデータをサンプリングすることを特徴とするサンプリングオシロスコープ。
【請求項6】
請求項3または請求項4のトリガ生成方法にて生成される前記ストローブ信号に基づくサンプリングタイミングでサンプラ(4)によりデータをサンプリングするステップを含むことを特徴とするサンプリング方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、データをサンプリングするサンプラが動作するストローブ信号を生成するトリガ生成回路及びトリガ生成方法と、サンプラによるサンプリングデータに基づく波形を表示するサンプリングオシロスコープ及びサンプリング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば下記特許文献1には、ダイレクト・デジタル・シンセサイザ(DDS:Direct Digital Synthesizer)とプログラマブルカウンタを用いて生成されるストローブ信号によりサンプラにてパターン信号をサンプリングする技術が開示されている。
【0003】
ところで、近年では、携帯端末やクラウドコンピューティングの普及により、データ通信量は増加の一途をたどり伝送速度も高速化が著しくなっている。また、高速データ伝送に関する国際規格は、電気インターフェース、光インターフェースとともに従来のNRZ伝送からPAM4伝送へと変化している。
【0004】
そして、この種のPAM4伝送に関して、IEEE802.3bsでは、例えばパターン長:65535ビットのSSPRQの解析が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第7284141号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した特許文献1に開示される技術を含め、従来のサンプリングオシロスコープでは、パターン信号が上述したSSPRQのような長周期パターンになると、早いサンプリング速度でパターンロックすることができず、解析にも時間を要するという問題があった。
【0007】
さらに説明すると、従来のサンプリングオシロスコープでは、データを時系列波形としてサンプリングする場合、トリガクロックの周波数をデータのパターン長に同期させ(パターンロック)、さらにダイレクト・デジタル・シンセサイザの位相シフト機能を用いた位相変調によって処理を実現している。ここで、パターン長が長いパターン信号をパターンロックするためには、分周比の設定が大きくなり、結果的にサンプリングレートが大きく低下してしまう問題がある。
【0008】
具体的には、例えばパターン長が32767ビットのPRBS15の場合、トリガクロックの周波数をパターン長に同期させるためにはダイレクト・デジタル・シンセサイザの出力を32767で分周する必要がある。その際、ダイレクト・デジタル・シンセサイザの出力周波数が1.1GHz程度の周波数であるため、32767分周すると32kHzとなり、サンプリングレートが最高32kHzとなる。但し、実際にはダイレクト・デジタル・シンセサイザで綺麗な正数にならないため、さらに32分周されて1kHz程度まで落ちる可能性があった。
【0009】
そこで、本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであって、長周期パターンでも従来より早いサンプリング速度でパターンロックすることができるトリガ生成回路及びトリガ生成方法とサンプリングオシロスコープ及びサンプリング方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明の請求項1に記載されたトリガ生成回路は、動作可能な周波数範囲内で入力されるトリガクロックを任意の周波数で出力するダイレクト・デジタル・シンセサイザ12と、
前記ダイレクト・デジタル・シンセサイザから出力されるトリガクロックの通過帯域を制限するバンドパスフィルタ13と、
前記バンドパスフィルタで通過帯域が制限されたトリガクロックを分周する可変分周器15とを含み、サンプラ4が動作する周波数のストローブ信号を生成するトリガ生成回路2において、
1回のストローブ信号によって生じるデータのパターン周期に対する位相ずれ量を算出し、算出した位相ずれ量が無くなるように前記ダイレクトデジタルシンセサイザの位相アキュムレータのカウント値を更新して位相を調整する制御部7を備えたことを特徴とする。
【0011】
請求項2に記載されたトリガ生成回路は、請求項1のトリガ生成回路において、
前記制御部7は、前記位相ずれ量を複数回に分割して位相を調整することを特徴とする。
【0012】
請求項3に記載されたトリガ生成方法は、動作可能な周波数範囲内で入力されるトリガクロックを任意の周波数で出力するダイレクト・デジタル・シンセサイザ12と、
前記ダイレクト・デジタル・シンセサイザから出力されるトリガクロックの通過帯域を制限するバンドパスフィルタ13と、
前記バンドパスフィルタで通過帯域が制限されたトリガクロックを分周する可変分周器15とを含むトリガ生成回路2を用いてサンプラ4が動作する周波数のストローブ信号を生成するトリガ生成方法において、
1回のストローブ信号によって生じるデータのパターン周期に対する位相ずれ量を算出する位相ずれ量算出ステップと、
前記位相ずれ量算出ステップにて算出した位相ずれ量が無くなるように前記ダイレクトデジタルシンセサイザの位相アキュムレータのカウント値を更新して位相を調整する位相調整ステップとを含むことを特徴とする。
【0013】
請求項4に記載されたトリガ生成方法は、請求項3のトリガ生成方法において、
前記位相ずれ量算出ステップにて算出した位相ずれ量を複数回に分割して位相を調整するステップを含むことを特徴とする。
【0014】
請求項5に記載されたサンプリングオシロスコープは、請求項1または請求項2のトリガ生成回路2にて生成される前記ストローブ信号に基づくサンプリングタイミングでサンプラ4によりデータをサンプリングすることを特徴とする。
【0015】
請求項6に記載されたサンプリング方法は、請求項3または請求項4のトリガ生成方法にて生成される前記ストローブ信号に基づくサンプリングタイミングでサンプラ4によりデータをサンプリングするステップを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、長周期パターンでも従来より早いサンプリング速度でパターンロックすることができ、パターンロックを用いた解析が高速に実現可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明に係るトリガ生成回路を含むサンプリングオシロスコープの概略構成を示すブロック図である。
図2】25GHz帯のパターン信号のパターン長に応じて採用されるm値、総ビットシフト量、周期でのずれ量、推定サンプルレートの一例を示す図である。
図3】DDSの位相アキュムレータのカウント値をずらしたときに位相が飛ぶ様子を示す出力クロックの波形図である。
図4】10ビットの位相変調を1回で実施した場合(点線)と位相変調を実施しない場合(実線)のそれぞれの出力クロックの波形図である。
図5】10ビットの位相変調を4回に分割して実施した場合(点線)と位相変調を実施しない場合(実線)のそれぞれの出力クロックの波形図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を実施するための形態について、添付した図面を参照しながら詳細に説明する。
【0019】
[本発明の概要]
図1において、データ(パターン信号)に同期したトリガクロックのクロック周波数=Baud Rateを前提条件とする。なお、分周クロックをトリガクロックに使用した場合、その分周比は可変分周器11aの重みとして加味される。
【0020】
DDS12の入力周波数DDSInputは1.25GHz〜2.5GHzである必要があるため、可変分周器11aで分周する必要がある。可変分周器11aは2のべき乗となるので、DDS12の入力周波数DDSInputは、DDSInput=Baud rate*1/2n と表現される。
【0021】
また、DDS12の出力周波数DDSOutputはBPF13を通過可能な周波数である必要がある。DDS12をα/32分周として計算すると(α=18〜29の正数)、DDS12の出力周波数DDSOutputは、DDSOutput=DDSInput*α/32=Baud Rate*1/2n *α/32と表現される。
【0022】
なお、αは、DDS12の出力周波数DDSOutputを確定させるためのパラメータであり、DDS12の出力周波数DDSOutputがBPF13を通過可能な周波数(1.08GHzまたは1.7GHz)となるように算出される。
【0023】
そして、最終段の可変分周器15で分周してサンプルレート(ストローブ周波数)のストローブ信号を生成する。可変分周器15は任意の分周比を採用できるので、M分周として考えると、サンプルレート(ストローブ周波数)=DDSOutput*1/M=Baud Rate*1/2n *α/32*1/Mの式で与えられる。
【0024】
ここで、M=m*α(mは任意の正数)として定義すると、αを約分することが可能となる。
【0025】
その結果、サンプルレート(ストローブ周波数)=Baud Rate*1/2n *α/32*1/(α*m)=Baud Rate*1/2n *1/25 *1/(m)=Baud Rate/(2(n+5) *m)となる。
【0026】
実際にはnの値はBaud Rateによって自動的に決定される。25GHz帯の場合はDDS12の入力周波数DDSInputの関係で必ずn=4(1/16分周)となる。よって、サンプルレート(ストローブ周波数)=Baud Rate/(2(n+5) *m)=Baud Rate/29 *m)と表現できる。
【0027】
また、サンプル1つ1つのサンプル時間はサンプルレートの逆数で表現できるため、サンプル間時間=1/サンプルレート=29 *m/Baud Rate=29 *m[UI]となる。従って、1回のサンプリングのタイミングで29 *m[UI]位相がずれることになる。
【0028】
以上の式より、Baud Rateが25GHz帯の場合は実質位相シフト量は最終段の可変分周器15の分周比(1/m*α)設定によって決定されることになる。
【0029】
ここで、図2に示すように、パターン長に応じて採用するmの値を決定することを考える。可変分周器15にてm*α分周した後の動作周波数がサンプラ4の動作周波数を超えないようにmの値が決定される。本発明では、速度を速めることを目的としているので、サンプラ4の動作周波数を超えない最小の値をmとして決定する。
【0030】
そして、Baud Rate:26.5625GHz、推定サンプルレート:150kHzを想定した場合、図2に示すように、PRBS7はパターン長が短いので丁度0ビットシフト(パターンロック状態)でも136kHzといった高速サンプリングが可能だが、他のパターンの場合は高速設定にするとビットがずれていくことが分かる。例えばPRBS15では6ビットのずれが生じ、PRBS16やSSPRQでは3ビットのずれが生じる。但し、大きいビット量ずれではないため、後述する自動位相調整により、実質的に上記速度でパターンロックすることが可能となる。
【0031】
その結果、図2に示すように、Baud Rateが25GHz帯において推定サンプルレート:150kHzを想定した場合には、パターン長(127ビット、511ビット、8191ビット、32767ビット、65535ビット)によらずに高速サンプリングが可能となる。
【0032】
なお、パターンロックの状態とは、パターン周期中の特定の位相においてサンプルする状態を表している。理想的なパターンロックの状態とは、1サンプル取得の時間、すなわち、サンプルレートの周期でパターンがちょうど入力パターンのN周期に相当する状態である。
【0033】
[サンプリングオシロスコープの構成]
次に、上述した高速サンプリングを実現する本実施の形態のサンプリングオシロスコープの構成について図1を参照しながら説明する。
【0034】
図1に示すように、本実施の形態のサンプリングオシロスコープ1は、広帯域・低雑音の特徴を有し、観測対象となる信号の波形表示を行うもので、トリガ生成回路2、設定部3、サンプラ4、A/D変換器5、表示部6、制御部7を備えて概略構成される。
【0035】
トリガ生成回路2は、サンプラ4が動作するサンプリングタイミングとして用いられるストローブ信号を生成する回路であり、周波数変換部11、ダイレクト・デジタル・シンセサイザ(以下、DDSと略称する)12、バンドパスフィルタ(以下、BPFと略称する)13、増幅器14、可変分周器15を含んで構成される。
【0036】
周波数変換部11は、トリガ生成回路2の初段に位置し、可変分周器11aと周波数逓倍回路11bを備え、次段に位置するDDS12が動作可能な入力周波数範囲(1.25GHz〜2.5GHzのオクターブ(2倍)の範囲)に外部から供給されるトリガクロック(例えば矩形波や正弦波)の周波数を変換する。
【0037】
尚、周波数変換部11は、DDS12の動作周波数範囲がオクターブ(2倍)の範囲であれば、可変分周器11aの分周比及び周波数逓倍回路11bの逓倍比が2のべき乗で対応可能となる。また、周波数変換部11は、DDS12が動作可能な入力周波数範囲のトリガクロックが外部から入力される場合には省略することができる。この場合、外部からトリガクロックがDDS12に直接入力される。
【0038】
DDS12は、周波数変換部11の次段に接続され、リファレンスクロック発生器、位相アキュムレータ、波形データを記憶するROM、DAC(デジタル−アナログ変換回路)を備えて構成される。
【0039】
DDS12は、周波数変換部11にて動作周波数範囲に入力周波数が調整され、周波数変換部11にて周波数変換されたトリガクロックから、任意の波形や周波数(出力周波数)をデジタル的に生成する。
【0040】
BPF13は、DDS12の次段に接続され、スプリアスを除去するため、DDS12から出力されるトリガクロックの通過帯域を制限する。
【0041】
増幅器14は、ローノイズアンプで構成され、BPF13にて帯域制限されたトリガクロックの振幅を増幅する。
【0042】
可変分周器15は、増幅器14の次段に接続され、分周比が可変設定可能(例えば2〜1/231)であり、サンプラ4のサンプリングタイミングを生成するためにトリガ回路2の最終段に設けられる。可変分周器15は、BPF13を通過して増幅器14にて増幅されたトリガクロックの周波数を、サンプラ4が動作可能な周波数範囲に調整する。
【0043】
ここで、サンプラ4が駆動可能なサンプリングタイミングの周期(ストローブ周期)は一般的にkHzオーダとなり、DDS12とBPF13の出力周波数にてサンプラ4を直接駆動することは現実的ではない。そのため、最終段の可変分周器15は、BPF13を通過したトリガクロックをサンプラ4が駆動可能な周波数まで周波数を分周し、サンプラ4のサンプリングタイミングとなるストローブ信号を出力する。
【0044】
設定部3は、データ(パターン信号)をサンプリングするために必要な各種情報を設定するものであり、例えばデータのパターン長、シンボルレート(ビットレート)、トリガクロックのクロック周波数などが設定される。
【0045】
サンプラ4は、トリガ回路2にて生成されるストローブ信号をサンプリングタイミングとして例えば数百kHzでスイッチング動作(閉状態:例えば10〜100psec)し、外部から入力されるデータ(パターン信号)をサンプリングする。
【0046】
尚、外部から入力されるデータは、例えば被測定物Wにテスト信号として入力される繰り返しパターンによる周期性を持つ既知のパターン信号である。この既知のパターン信号には、例えばPRBS(Pseudo-random bit sequence:擬似ランダム・ビット・シーケンス)パターン、固定パターン、任意パターンによるプログラマブルパターン等がある。
【0047】
A/D変換器5は、サンプラ4にてサンプリングされたアナログ出力によるデータをディジタルのデータに変換する。
【0048】
表示部6は、例えば本体に設けられる液晶表示器などで構成され、制御部7の制御により、データ(パターン信号)の波形や統計処理された測定結果などを表示する。
【0049】
制御部7は、高い周波数で繰り返す波形を観測するため、設定部3にて設定される各種情報が入力され、トリガ生成回路2、サンプラ4、A/D変換器5、表示部6を統括制御する。
【0050】
具体的には、周波数変換部11、DDS12、可変分周器15の各部の分周比設定、可変分周器11aと周波数逓倍回路11bの切替制御、A/D変換部5にて変換されたデータの統計解析処理、表示部6への観測波形の表示制御などを行う。
【0051】
また、制御部7は、推定サンプルレート、DDS出力周波数を確定させるためのパラメータα、最終段の可変分周器15の分周比を確定させるためのパラメータm、総ビットシフト量、周期でのずれ量を算出する。
【0052】
さらに説明すると、推定サンプルレートは、データ(パターン信号)のシンボルレート(ビットレート)とトリガクロックのクロック周波数から算出する。パラメータαは、DDS12の出力周波数がBPF13の通過帯域内となるように、18〜29の正数から算出する。パラメータmは、最終段の可変分周器15にてm*α分周した後の動作周波数がサンプラ4の動作周波数を超えないように、サンプラ4の動作周波数を超えない最小の値として算出する。総ビットシフト量は、29 *mの式から算出する。周期でのずれ量は、総ビットシフト量をパターン長で除算したときの余りから算出する。なお、余りがパターン長の半分を超える場合には、m−パターン長を周期でのずれ量としてもよい。例えば図2のパターン長511ビットのPRBS9のように、総ビットシフト量が229376ビット、mが448の場合には、余りが448となるので、448−511=−63を周期でのずれ量としてもよい。
【0053】
さらに、制御部7は、DDS12の位相アキュムレータの値をサンプル毎に自動更新するため、位相ずれ量算出手段7aと位相調整手段7bを備える。
【0054】
位相ずれ量算出手段7aは、1回のストローブ信号によって生じるデータ(パターン信号)のパターン周期(パターン長)に対するずれ量を位相ずれ量として算出する。
【0055】
位相調整手段7bは、位相ずれ量算出手段7aにて算出した位相ずれ量が無くなるように、DDS12の位相アキュムレータのカウント値を推定サンプルレートに対応する時間内でサンプル毎に自動更新し、位相を位相ずれ量だけ逆方向にずらして調整を行なう(自動位相調整)。
【0056】
[具体例]
次に、具体例について説明する。ここでは、ビットレートが400GbEの基本レートである26.5625Gbit/s、観測パターンとしてSSPRQ、推定サンプルレート:150kHzを想定する。
【0057】
DDS12の入力レートは、26.5625G/16=1.660156GHzとなる。DDS12の出力周波数は、DDS12のFTW設定によってα/32=21/32分周として1.660156GHz*21/32=1.089478GHzとなる。そして、最終分周として可変分周器15でm*α=8064分周して1.089578Ghz*1/8064=135.1039kHzとなる。これにより、総分周比は、(1/16)*(21/32)*(1/8064)=1/196608となる。なお、8064=21*384なので21で約分が可能である。
【0058】
以上の計算より、1サンプルの取得時間で196608ビットがずれる。一周期は65535ビットなので、これは3周期+3ビットとなり、このままでは3ビットずつビットがシフトしてしまう。
【0059】
そこで、本実施の形態では、設定部3にてデータ(パターン信号)のパターン長、シンボルレート(ビットレート)、トリガクロックのクロック周波数が設定されると、制御部7が推定サンプルレート、パラメータα、パラメータm、総ビットシフト量の算出とともに、1回のストローブ信号によって生じるデータのパターン周期(パターン長)に対するずれ量を位相ずれ量として算出し、位相ずれ量である3ビットを1サンプル毎に逆方向に位相をずらして自動位相調整を行なう。
【0060】
すなわち、本実施の形態の自動位相調整では、制御部7の位相ずれ量算出手段7aが、1回のストローブ信号によって生じるデータのパターン周期(パターン長)に対するずれ量である3ビットを位相ずれ量として算出する(位相ずれ量算出ステップ)。そして、制御部7の位相調整手段7bは、位相ずれ量算出手段7aにて算出した位相ずれ量である3ビットが無くなるように、DDS12の位相アキュムレータのカウント値を推定サンプルレート(150kHz)に対応する時間(6μs)内でサンプル毎に自動更新し(位相調整ステップ)、位相を位相ずれ量である3ビットだけ逆方向にずらして位相調整を行なう。
【0061】
例えば図2のパターン長:65535ビットのパターン信号:SSPRQを観測データとした場合、本実施の形態の自動位相調整を行なわない場合は、総ビットシフト量:196608ビットがパターン長:65535ビットを約数に持たないため、m=65535となり、Baud Rate/(29 *m)の式から推定サンプルレート:791.63628Hzのサンプリング速度でパターンロックする。これに対し、本実施の形態の自動位相調整を行なった場合には、推定サンプルレート:135.1039kHzのサンプリング速度でパターンロックし、自動位相調整を行なわない場合よりも高速にパターンロックすることができる。
【0062】
そして、図2に示すように、Baud Rateが25GHz帯において推定サンプルレート:150kHzを想定した場合には、パターン長(127ビット、511ビット、8191ビット、32767ビット、65535ビット)によらずに高速サンプリングが可能となる結果が得られた。
【0063】
なお、具体例では、ビットレートが400GbEの基本レートである26.5625Gbit/s、観測パターンとしてSSPRQ、推定サンプルレート:150kHzを想定しているが、これに限定されるものではない。
【0064】
[変形例]
次に、変形例について説明する。本実施の形態では、図1に示すように、DDS12を主に制御してトリガ周波数を生成している。なお、アイダイアグラムを表示するためのランダムサンプリングの場合は、FTW制御により周波数を制御することでサンプリングクロックを生成しているが、シーケンシャルサンプリングの場合、実位相制御はDDS12の位相制御によって対応している。
【0065】
位相制御はDDS12内部の位相アキュムレータのカウント値をFTW+βだけずらしている。そのため、出力クロックでは図3に示すような位相変調として観測される。理想的には、図3の位相変化点に示すように、位相が飛ぶため、正弦波の形状は不連続となる。
【0066】
一方、実際の回路では、図1に示すように、DDS12の出力段に不要波除去のためのBPF13があり、このBPF13によって不連続点では振幅が低くなる。BPF13の出力段に設けられる増幅器14で増幅するものの、最終的には振幅が低くなったクロックを含めて可変分周器15に入力されてしまう。このため、所定レベル以上に位相変調によって振幅が減衰した場合、可変分周器15を正常に駆動することができず、可変分周器15の出力の位相が異常となる。
【0067】
この直接的な原因は、位相変調量が大きくなり、位相変調タイミングにおいて高い周波数成分となり、BPF13はその成分を通過できない結果としてBPF13の出力のレベルが低下することに起因すると考えられる。振幅の減衰量は、位相変調量に依存するため(位相変化量が小さければ振幅減衰も小さい)、位相変調量が小さければ実質的に問題ない。
【0068】
ところで、DDS12の出力クロック周波数は1GHz以上である。一方で最終的なストローブ周波数は150kHz程度であり、両者は大きく異なる。例えば、本実施の形態におけるDDS12の位相アキュムレータをFPGA内部に実装し、トリガクロックを1/3したものをシステムクロックとすると、DDS12に入力されるトリガクロックは最低1.25GHzであるため、システムクロックは最低で416MHzとなり、ストローブ周波数より十分早い。
【0069】
したがって、位相変調を考えた場合、各ストローブで位相変調が実施されれば良いため、位相変調に要していい時間は150kHz(≒6μs)となる。そこで、変形例として、一度に変化させてもよい位相変調量を小さくして複数回の自動位相調整を実施する処理を行なうことで上述した課題を改善することができる。
【0070】
ここで、図4は10ビットの位相変調を1回で実施した場合(点線)と位相変調を実施しない場合(実線)のそれぞれの出力クロックの波形図、図5は10ビットの位相変調を4回に分割して実施した場合(点線)と位相変調を実施しない場合(実線)のそれぞれの出力クロックの波形図である。
【0071】
図4図5の点線で囲まれる部分を比較すると、10ビットの位相変調を4回に分割して実施した場合には、10ビットの位相変調を1回で実施した場合よりも減衰量を抑えることができていることが判る。この結果、位相変調を複数回に分割して実施することにより、可変分周器15を誤動作せずに駆動することが可能となる。
【0072】
このように、本実施の形態によれば、長周期パターンのデータ(パターン信号)でも従来より早いサンプリング速度でパターンロックすることができ、パターンロックを用いたデータ解析が高速に実現可能となる。具体的な数値を示すと、例えばIEEE802.3bsでPAM4測定で求められるパターン長:65535ビットのパターン信号SSPRQの場合、Baud Rate/(29 *m)の式からサンプリング速度を算出すると、従来では800Hz程度のサンプリング速度しか実現できなかったのに対し、150kHz前後のサンプリング速度が達成できるようになり、パターンロックを用いたデータ解析を従来よりも高速に行なうことができる。
【0073】
以上、本発明に係るトリガ生成回路及びトリガ生成方法とサンプリングオシロスコープ及びサンプリング方法の最良の形態について説明したが、この形態による記述及び図面により本発明が限定されることはない。すなわち、この形態に基づいて当業者等によりなされる他の形態、実施例及び運用技術などはすべて本発明の範疇に含まれることは勿論である。
【符号の説明】
【0074】
1 サンプリングオシロスコープ
2 トリガ生成回路
3 設定部
4 サンプラ
5 A/D変換器
6 表示部
7 制御部
7a 位相ずれ量算出手段
7b 位相調整手段
11 周波数変換部
11a 可変分周器
11b 周波数逓倍回路
12 DDS
13 BPF
14 増幅器
15 可変分周器
図1
図2
図3
図4
図5