【解決手段】磁気式リニアエンコーダでは、ヘッド11内の回路基板60から外部まで引き出された配線部材12がフレキシブル配線基板40であるため、ヘッド11の薄型化を図ることができる。また、回路基板60に増幅回路69が設けられているため、外部への信号出力をフレキシブル配線基板40によって行っても、信号の減衰等が問題となりにくい。ヘッド11では、センサ基板30から回路基板60までフレキシブル配線基板40によって配線されている。従って、ヘッド11をさらに薄型化するのに適している。また、フレキシブル配線基板40を第3部分48で折り返すことによって、フレキシブル配線基板40として、センサ基板30の第1端子36に接続する第1電極、第2電極44、および第3電極45が片面側に設けられた片面基板を用いることができる。
前記ヘッドは、前記センサ基板から前記回路基板まで延在して前記第1端子および前記第2端子に接続された第2フレキシブル配線基板を有することを特徴とする請求項1に記載の磁気式リニアエンコーダ。
前記第1フレキシブル配線基板および前記第2フレキシブル配線基板は、前記センサ基板から前記回路基板を経由して前記ヘッドの外側に向けて延在する1枚のフレキシブル配線基板からなることを特徴とする請求項2に記載の磁気式リニアエンコーダ。
前記ホルダには、前記ヘッドを固定する際の位置を規定する第1位置決め基準面と、前記第1位置決め基準面に平行に設けられ、前記ホルダに前記センサ基板を固定する際の位置を規定する第2位置決め基準面と、が設けられていることを特徴とする請求項6から10までの何れか一項に記載の磁気式リニアエンコーダ。
前記第1端子、前記第2端子、および前記第3端子は、異方性導電材料によって前記フレキシブル配線基板に接続されていることを特徴とする請求項1から11までの何れか一項に記載の磁気式リニアエンコーダ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1等に記載の磁気センサ装置に対しては、薄型化が要求されているが、特許文献1に記載の構成では、ホルダの内側から外側にケーブルを引き出す必要があるため、ヘッドの薄型化が困難である。
【0005】
以上の問題点に鑑みて、本発明の課題は、ヘッドの薄型化を図ることのできる磁気式リニアエコーダを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の磁気センサ装置は、第1方向に延在する磁気スケールと、前記磁気スケールに対向する感磁素子を備えたヘッド、および前記ヘッドから信号を出力する可撓性の配線部材を備えた磁気センサ装置と、を有する磁気式リニアエンコーダにおいて、前記ヘッドは、前記感磁素子および第1端子が設けられたセンサ基板と、前記感磁素子からの出力信号を増幅する増幅回路、第2端子、および第3端子が設けられた剛性の回路基板と、前記第3端子に接続されて前記配線部材として前記ヘッドの外部にまで引き出された第1フレキシブル配線基板と、を有することを特徴とする。
【0007】
本発明では、ヘッド内の回路基板から外部まで引き出された配線部材が第1フレキシブル配線基板であるため、ヘッドの薄型化を図ることができる。また、回路基板に増幅回路が設けられているため、外部への信号出力を第1フレキシブル配線基板によって行っても、信号の減衰等が問題となりにくい。従って、ヘッドの薄型化を図っても、位置検出等を適正に行うことができる。
【0008】
本発明において、前記ヘッドは、前記センサ基板から前記回路基板まで延在して前記第1端子および前記第2端子に接続された第2フレキシブル配線基板を有する態様を採用することができる。かかる態様によれば、ヘッドをさらに薄型化するのに適している。
【0009】
本発明において、前記第1フレキシブル配線基板および前記第2フレキシブル配線基板は、前記センサ基板から前記回路基板を経由して前記ヘッドの外側に向けて延在する1枚のフレキシブル配線基板からなる態様を採用することができる。かかる態様によれば、磁気式リニアエンコーダのコストを低減することができる。
【0010】
本発明において、前記センサ基板と前記回路基板とは、前記ヘッドの高さ方向で対向するように配置されており、前記回路基板は、前記センサ基板とは反対側の面に前記第2端子および前記第3端子が設けられ、前記フレキシブル配線基板は、前記センサ基板に接続された一方端から前記第1方向に延在する第1部分と、前記回路基板に対して前記センサ基板とは反対側で前記回路基板に対向して前記第1方向に延在する第2部分と、湾曲するように折り返されて前記第1部分と前記第2部分とを繋ぐ第3部分と、を有し、前記フレキシブル配線基板の片面側に、前記第1端子が接続された第1電極、前記第2端子が接続された第2電極、および前記第3端子が接続された第3電極が設けられている態様を採用することができる。かかる態様によれば、フレキシブル配線基板として、第1電極、第2電極、および第3電極が片面側に設けられた片面基板を用いることができるので、磁気式リニアエンコーダのコストを低減することができる。また、フレキシブル配線基板を厚さ方向に折り返した構造であるため、ヘッドの幅を狭くすることができる。
【0011】
本発明において、前記回路基板は、前記センサ基板の側の面に回路素子が実装された両面基板である態様を採用することができる。
【0012】
本発明において、前記センサ基板および前記回路基板を支持するホルダを有し、前記ホルダは、前記センサ基板と前記回路基板との間に配置された支持板部を備え、前記センサ基板は、前記支持板部の一方面に重なった状態で前記ホルダに固定され、前記回路基板は、前記支持板部の他方面に重なった状態で前記ホルダに固定されている態様を採用することができる。かかる態様によれば、センサ基板および回路基板を厚さ方向で重ねるため、ヘッドの底面積を狭くすることができ、ヘッドの小型化を図ることができる。
【0013】
本発明において、前記回路基板は、前記支持板部と重なる部分に前記回路素子が実装されていない態様を採用することができる。かかる態様によれば、回路素子の影響を受けずに、回路基板を支持板部と重なるように適正に配置することができる。
【0014】
本発明において、前記回路基板は、前記支持板部が位置する面に前記回路素子が実装されており、前記第2端子に50%以上重なる領域に前記回路素子が実装されておらず、前記第3端子に50%以上重なる領域に前記回路素子が実装されていない態様を採用することができる。かかる態様によれば、回路基板の端子(第2端子および第3端子)のうち、回路素子が重なっていない部分を利用してフレキシブル配線基板との接続を行うことができる。従って、回路基板とフレキシブル配線基板とを接続する際、回路基板およびフレキシブル配線基板の両面側から加熱や加圧を行うことができるので、回路基板とフレキシブル配線基板とを確実かつ効率よく接続することができる。
【0015】
本発明において、前記ホルダは、前記高さ方向および前記第1方向に対して直交する第2方向で対向する2つの側壁を備え、前記支持板部は、前記2つの側壁と繋がっている態様を採用することができる。かかる態様によれば、支持板部によってホルダの補強を行うことができるので、側壁を薄くすることができる。それ故、ヘッドの小型化を図ることができる。
【0016】
本発明において、前記ホルダは、前記高さ方向の一方側で前記感磁素子と重なる開口部が設けられ、前記ホルダの外面側では、前記開口部が凹部によって囲まれ、前記凹部内には、板状またはシート状のシールド部材が設けられている態様を採用することができる。かかる態様によれば、シールド部材によってノイズの影響を低減することができる。また、シールド部材が厚さ方向で大きく突出することを防止することができるので、ヘッドの薄型化に適している。
【0017】
本発明において、前記ホルダには、前記ヘッドを固定する際の位置を規定する第1位置
決め基準面と、前記第1位置決め基準面に平行に設けられ、前記ホルダに前記センサ基板を固定する際の位置を規定する第2位置決め基準面と、が設けられている態様を採用することができる。かかる態様によれば、ホルダを機器に固定した際、センサ基板を磁気スケールに対して平行に配置することができる。
【0018】
本発明において、前記第1端子、前記第2端子、および前記第3端子は、異方性導電材料によって前記フレキシブル配線基板に接続されている態様を採用することができる。かかる態様によれば、ヘッドの小型化のために端子ピッチを狭くした場合でも、電気的な接続を適正に行うことができる。
【0019】
本発明において、前記磁気スケールは、剛性基板と、磁性粉が樹脂中に配合された層であって前記剛性基板の一方面に形成された磁性塗膜と、を備え、前記磁性塗膜によってS極とN極とが交互に配置された永久磁石が構成されている態様を採用することができる。かかる態様によれば、ゴム磁石等を用いた場合に比して、永久磁石の平面度を高めることができる。
【0020】
本発明において、前記磁気スケールでは、前記第1方向にS極とN極とが交互に配置されたトラックが2列並列するように設けられ、前記感磁素子は、磁気抵抗パターンが厚さ方向に積層された磁気抵抗素子である態様を採用することができる。かかる態様によれば、磁気スケールおよびヘッドの幅を狭くすることができる。また、ヘッドの幅を狭くした場合でも、原点位置検出用のZ相の磁気抵抗パターンを設けるスペースを確保することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明では、ヘッド内の回路基板から外部まで引き出された配線部材が第1フレキシブル配線基板であるため、ヘッドの薄型化を図ることができる。また、回路基板に増幅回路が設けられているため、外部への信号出力を第1フレキシブル配線基板によって行っても、信号の減衰等が問題となりにくい。従って、ヘッドの薄型化を図っても、位置検出等を適正に行うことができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図面を参照して、本発明を適用した磁気センサ装置を説明する。なお、以下に参照する図面において、ホルダ20の長さ方向を第1方向Xとし、長さ方向(第1方向X)に直交する幅方向を第2方向Yとし、長さ方向(第1方向X)および幅方向(第2方向Y)に直交する方向を高さ方向Hとしてある。
【0024】
(磁気センサ装置10の全体構成)
図1は、本発明を適用した磁気センサ装置10を高さ方向Hの他方側H2からみた斜視図である。
図2は、
図1に示す磁気センサ装置10を高さ方向Hの一方側H1からみた斜視図である。
図3は、
図1に示す磁気センサ装置10の断面図である。
図4は、
図1に示す磁気センサ装置10を高さ方向Hの他方側H2からみた分解斜視図である。
図5は、
図1に示す磁気センサ装置10を高さ方向Hの一方側H1からみた分解斜視図である。
図6は、
図4に示す状態からフレキシブル配線基板40とセンサ基板30等とを分離した分解斜視図である。
図7は、
図5に示す状態からフレキシブル配線基板40とセンサ基板30等とを分離した分解斜視図である。
【0025】
図1に示す磁気センサ装置10は、磁気スケール90とともに、工作機械や実装装置のテーブル移動距離や位置を検出する磁気式リニアエンコーダ1として用いられる。磁気スケール90には、N極とS極が所定のピッチで交互に配列されている。かかる磁気式リニアエンコーダ1では、磁気センサ装置10および磁気スケール90のうちの一方が固定体に搭載され、他方が移動体に搭載される。磁気センサ装置10は、磁気式リニアエンコーダ1に対向するヘッド11と、ヘッド11の内部から外部に引き出されて第1方向Xに延在する可撓性の配線部材12とを有している。
【0026】
図2〜
図7に示すように、磁気センサ装置10は、ホルダ20と、ホルダ20の内側に配置されたセンサ基板30と、センサ基板30を高さ方向Hの他方側H2から覆うようにホルダ20に固定されたカバー50と、カバー50とセンサ基板30との間に配置された剛性の回路基板60と、ホルダ20の開口部27を塞ぐように固定されたシールド部材70とを有している。
【0027】
また、磁気センサ装置10は、ヘッド11内の回路基板60に接続されて、配線部材12としてホルダ20の外部にまで引き出された第1フレキシブル配線基板40aと、センサ基板30から回路基板60まで延在してセンサ基板30と回路基板60とに接続された第2フレキシブル配線基板40bとを有している。本形態において、第1フレキシブル配線基板40aおよび第2フレキシブル配線基板40bは、センサ基板30から回路基板60を経由してヘッド11の外側に向けて延在する1枚のフレキシブル配線基板40からなる。
【0028】
ホルダ20は、アルミニウムやステンレス等の非磁性の金属部材等からなり、第1側壁21と、第1側壁21に第1方向Xの一方側X1で対向する第2側壁22と、高さ方向Hの一方側H1で第1側壁21と第2側壁22との間に設けられた底壁25とを有している。ホルダ20には、第1方向Xの他方側X2に開口部27が形成されている。
【0029】
また、ホルダ20は、第2方向Yの一方側Y1で第1側壁21と第2側壁22とを繋ぐ第3側壁23と、第3側壁23に第2方向Yの他方側Y2で対向する第4側壁24とを備えており、第4側壁24は、第1側壁21と第2側壁22とを繋いでいる。第3側壁23および第4側壁24は、第1側壁21および第2側壁22より高さ方向Hの寸法が短い。第3側壁23と第1側壁21との間には略三角の連結部230が形成され、第4側壁24と第1側壁21との間には略三角の連結部240が形成されている。第2側壁22の高さ方向Hの他方側H2の端部には、第2側壁22の延在方向の中央部分に凹部221が形成されている。
【0030】
ホルダ20の内部には、カバー50とセンサ基板30との間で第3側壁23と第4側壁24とを繋ぐ支持板部26が形成されており、支持板部26は、回路基板60と対向している。従って、支持板部26によってホルダ20の補強を行うことができるので、側壁を
薄くすることができる。それ故、ヘッド11の小型化に適している。
【0031】
底壁25は、第1方向Xの一方側X1のみに形成されており、第1側壁21、第3側壁23、および第4側壁24の高さ方向Hの一方側H1の端部は、開口部27の開口縁になっている。底壁25の外面側では、開口部27の周りを凹ませた凹部28が形成されており、開口部27は、全周にわたって凹部28に囲まれている。
【0032】
本形態では、ホルダ20の第1方向Xの他方側X2の端部29には、ヘッド11を機器にネジ等によって固定するための穴291が形成されている。また、端部29では、高さ方向Hの他方側H2の面が、ヘッド11を固定する際の位置を規定する第1位置決め基準面290になっている。また、凹部28の底部は、第1位置決め基準面290に平行に設けられており、ホルダ20にセンサ基板30を固定する際の位置を規定する第2位置決め基準面280になっている。従って、ホルダ20を介してヘッド11を機器に固定した際、センサ基板30を磁気スケール90に対して平行に配置することができる。
【0033】
センサ基板30は、開口部27と支持板部26との間で一方面31を開口部27に向けて配置されている、一方面31側には感磁素子38、および複数の第1端子36が第2方向Yに並列するように形成されており、感磁素子38は、開口部27と重なる領域に形成されている。本形態において、感磁素子38は、磁気抵抗素子380であり、
図10を参照して後述するように、磁気抵抗素子380は、90°位相の異なる2つの信号を出力するA相磁気抵抗パターンとB相磁気抵抗パターンとを含んでいる。
【0034】
回路基板60は、一方面61がセンサ基板30の他方面32と対向するように、支持板部26とカバー50との間に配置されている。回路基板60は、一方面61に複数の回路素子66が実装され、他方面62には、複数の第2端子64、および複数の第3端子65が形成された両面基板である。複数の第2端子64、および複数の第3端子65は各々、第1方向Xで離間する2つ領域において第2方向Yに並列するように形成されている。回路基板60では、回路素子66によって、センサ基板30から出力された出力信号を増幅する増幅回路69等が形成されている。
【0035】
カバー50は、センサ基板30の他方面32、および回路基板60の他方面62に対向する端板部51と、端板部51の第2方向Yの両端部から高さ方向Hの一方側H1に突出した側板部52、53とを有している。端板部51は、第1側壁21、第2側壁22、第3側壁23、および第4側壁24の高さ方向Hの他方側H2の端部に固定されている。この状態で、カバー50と第2側壁22との間には、凹部221によって隙間222が形成されている。
【0036】
フレキシブル配線基板40は、一方端41がセンサ基板30に接続され、途中部分が回路基板60を経由して、他方端42がホルダ20の外側に引き出された状態にある。より具体的には、フレキシブル配線基板40は、一方端41から第1方向Xの他方側X2に向けて延在する第1部分46と、カバー50の端板部51と回路基板60との間でセンサ基板30の他方面32、および回路基板60の他方面62に対向するように第1方向Xの他方側X2から一方側X1に延在する第2部分47と、第1側壁21に沿うように湾曲して、第1部分46の第1方向Xの他方側X2の端部と第2部分47の第1方向Xの他方側X2の端部とを繋ぐ第3部分48とを有している。本形態において、フレキシブル配線基板40は、一方端41から他方端42まで1枚の基板からなる。
【0037】
フレキシブル配線基板40は、片面基板であり、第3部分48の内側に位置する面43には、第1部分46にセンサ基板30の第1端子36と接続された第1電極49が形成され、第2部分47に回路基板60の第2端子64が接続された第2電極44、および回路
基板60の第3端子65が接続された第3電極45が形成されている。フレキシブル配線基板40の第2部分47には、延在方向において、第2電極44および第3電極45が形成されている側の両側に補強用のフレキシブルシート471、472が貼付されている。従って、フレキシブル配線基板40のうち、第1方向Xに直線的に延在している第2部分47の剛性を高めることができる。
【0038】
シールド部材70は、アルミニウムや銅等の非磁性の板状部材またはシート状部材であり、底壁25の外面側において凹部28に配置されて開口部27を塞いでいる。従って、シールド部材70によってノイズの影響を低減することができる。また、シールド部材70が厚さ方向(高さ方向H)でホルダ20から大きく突出することを防止することができるので、ヘッド11の薄型化に適している。
【0039】
(フレキシブル配線基板40とのセンサ基板30および回路基板60の接続)
図8は、
図6等に示す回路基板60を高さ方向Hの他方側H2からみた平面図である。
図6および
図7において、磁気センサ装置10を製造する際には、フレキシブル配線基板40を展開した状態で、フレキシブル配線基板40の第1電極49、第2電極44、および第3電極45に、センサ基板30の第1端子36、回路基板60の第2端子64、および回路基板60の第3端子65を接続する。その際、フレキシブル配線基板40と回路基板60との間に、熱硬化性樹脂に導電粒子が分散された異方性導電材料を配置した状態で熱プレスを行い、熱硬化性樹脂を硬化させた後、冷却する。また、フレキシブル配線基板40とセンサ基板30との間に、熱硬化性樹脂に導電粒子が分散された異方性導電材料を配置した状態で熱プレスを行い、熱硬化性樹脂を硬化させた後、冷却する。従って、ヘッド11の小型化のために端子ピッチを狭くした場合でも、電気的な接続を適正に行うことができる。
【0040】
本形態では、第1電極49、第2電極44、第3電極45、第1端子36、第2端子64、および第3端子65の表面にハンダ層が形成されており、導電粒子は、ハンダ層より低融点の複数のハンダ粒子である。従って、熱プレスの際、ハンダ層が溶融せずに、ハンダ粒子が溶融し、電気的な接続が行われる。樹脂材料としては、エポキシ系等の熱硬化樹脂が用いられる。ハンダ粒子は、スズと、銅、銀、ビスマス、アンチモンおよびインジウムのうちの何れかの金属とを含有しており、例えば、融点が200℃以下の低融点ハンダ材料からなる。ハンダ層は、例えば、スズ−銅系のハンダ材料からなり、融点は約230℃である。ハンダ層は、スズ−銅系のハンダ材料の他、スズ−銀−銅系や、スズ−ビスマス系のハンダ材料であってもよい。
【0041】
図8に示すように、回路基板60の一方面61では、第2端子64に50%以上重なる領域に回路素子66が実装されておらず、第3端子65に50%以上重なる領域に回路素子66が実装されていない。すなわち、回路基板60の一方面61では、第2端子64および第3端子65の一部に回路素子66が重なっているが、回路素子66が重なっている部分は、第2端子64および第3端子65の50%未満、さらには20%未満である。
【0042】
このため、回路基板60の端子(第2端子64および第3端子65)のうち、回路素子66が重なっていない部分64a、65a(
図8に示す第2端子64および第3端子65のうち、グレーの部分)を利用してフレキシブル配線基板40と回路基板60との接続を行うことができる。従って、回路基板60とフレキシブル配線基板40とを異方性導電材料によって接続する際、回路基板60およびフレキシブル配線基板40の両面側から加熱や加圧を行うことができるので、回路基板60とフレキシブル配線基板40とを確実かつ効率よく接続することができる。
【0043】
また、回路基板60の一方面61側では、ホルダ20の支持板部26と平面視で重なる
領域に回路素子66が実装されていない。従って、回路素子66の影響を受けずに、回路基板60を支持板部26と重なるように適正に配置することができる。
【0044】
(磁気センサ装置10における接着構造)
図9は、
図1に示す磁気センサ装置10における接着剤の配置を示す説明図であり、第3側壁23より内側で切断した様子を示してある。
【0045】
磁気センサ装置10を製造する工程では、フレキシブル配線基板40にセンサ基板30および回路基板60を接続した後、フレキシブル配線基板40を曲げながら、
図9に示すように、フレキシブル配線基板40をホルダ20の内側に配置する。また、底壁25の外面側において開口部27を塞ぐように、凹部28の内側にシールド部材70を配置する。
【0046】
この状態で、フレキシブル配線基板40のうち、第1部分46と第3部分48との間の部分をホルダ20の第1側壁21に第1接着剤91によって固定する。従って、磁気センサ装置10に振動が伝わっても、ホルダ20の内部でフレキシブル配線基板40が動いてホルダ20と擦れて断線するという事態が発生しにくい。フレキシブル配線基板40を用いて磁気センサ装置10の薄型化を図っても、高い信頼性を確保することができる。
【0047】
また、ホルダ20の内側で、シールド部材70を第1接着剤91と同一材料からなる第2接着剤92によって、ホルダ20の開口部27の縁で固定する。従って、ホルダ20内の空きスペースが狭い場合でも、第1接着剤91と第2接着剤92とにおいて、接着剤を使い分ける必要がない。本形態において、シールド部材を第2接着剤92によって全周にわたって固定する。このため、シールド部材70とホルダ20との間に隙間が発生しにくいので、埃等が開口部27からホルダ20の内側に侵入しにくい。
【0048】
ここで、第1接着剤91および第2接着剤92は、ゴム系の軟質接着剤である。従って、環境温度が変化して第1接着剤91に膨張や収縮が発生しても、かかる変形が第1接着剤91の弾性で吸収される。従って、第1接着剤91の膨張や収縮の応力がセンサ基板30に伝わって感磁素子38の磁気特性が変化することを抑制することができる。また、第1接着剤91および第2接着剤92は、熱硬化性である。従って、第1接着剤91および第2接着剤92は、粘度が比較的低いので、狭い隙間に第1接着剤91および第2接着剤92を塗布しやすい。例えば、第1接着剤91および第2接着剤92は、硬化後の硬度が、例えば、ショアD30からショアD60までの範囲にある。
【0049】
また、センサ基板30をUV硬化性の第3接着剤93によってホルダ20に仮固定した後、センサ基板30の位置調整を行い、その後、熱硬化性の第4接着剤94によってセンサ基板30をホルダ20に固定する。本形態では、センサ基板30を第3接着剤93によってホルダ20の支持板部26に仮固定した後、センサ基板30の位置調整を行い、その後、第4接着剤94によってセンサ基板30をホルダ20の支持板部26に固定する。第4接着剤94は、硬化後の硬度が、例えば、ショアD60からショアD90までの範囲にある。
【0050】
また、回路基板60を速乾性の第5接着剤95によってホルダ20に固定する。本形態では、回路基板60を第5接着剤95によって支持板部26に固定する。従って、フレキシブル配線基板40が第3部分48で湾曲した状態を維持したまま、回路基板60をホルダ20に固定することができる。
【0051】
次に、ホルダ20にカバー50を被せる。その際、フレキシブル配線基板40の第2部分47がホルダ20の第2側壁22とカバー50との間の隙間222から引き出した状態とする。本形態では、第6接着剤96によってカバー50をホルダ20に固定する。また
、フレキシブル配線基板40の第2部分47を軟質の第7接着剤97によって第2側壁22と固定する。従って、フレキシブル配線基板40においてホルダ20から引き出されている部分に外部から力が加わっても、フレキシブル配線基板40が擦れて断線する等の事態が発生しにくい。第6接着剤96は、硬化後の硬度が、例えば、ショアD60からショアD90までの範囲にある。第7接着剤97は、ゴム系の軟質接着剤であり、第6接着剤96より低硬度である。第7接着剤97は、硬化後の硬度が、例えば、ショアD30からショアD60までの範囲にある。かかる第7接着剤97は、例えば、空気中の水分によって硬化する常温硬化性の接着剤が用いられる。
【0052】
(磁気スケール90および感磁素子38の構成)
図10は、
図1に示す磁気スケール90等の説明図であり、
図10には、磁気スケール90の断面を模式的に示す説明図(a)、および磁気スケール90と感磁素子38との平面的な位置関係を示す説明図(b)を示してある。
図11は、
図10に示す感磁素子38の磁気抵抗パターンの説明図であり、
図11には、感磁素子38の断面を模式的に示す説明図(a)、および感磁素子38の磁気抵抗パターンを示す説明図(b)を示してある。
【0053】
図10(a)に示すように、磁気スケール90は、金属板等の剛性基板903と、剛性基板の一方面に形成された磁性塗膜902とを有している。磁性塗膜902は、磁性粉が樹脂中に配合された層であり、磁性塗膜902によって、永久磁石901が構成されている。かかる永久磁石901は、剛性基板903に磁性塗膜902を設けた後、磁性塗膜902の表面を研磨し、その後、着磁することによって形成される。従って、ゴム磁石等を用いた場合に比して、永久磁石の平面度を高めることができる。
【0054】
図10(b)に示すように、永久磁石901では、S極とN極とが第1方向Xに交互に配置されたトラック901A,901Bが2列並列するように設けられており、トラック901A,901Bの境界に重なるように、センサ基板30に形成された感磁素子38が配置される。
【0055】
図11(a)に示すように、本形態において、感磁素子38は、センサ基板30において磁気抵抗パターン38が積層された構造になっている。より具体的には、センサ基板30において、感磁素子38は、SIN+用の磁気抵抗パターン38(+a)と、COS+用の磁気抵抗パターン38(+b)とが絶縁膜39を介して積層され、SIN−用の磁気抵抗パターン38(−a)と、COS−用の磁気抵抗パターン38(−b)とが絶縁膜39を介して積層された構造になっている。本形態では、SIN+用の磁気抵抗パターン38(+a)とCOS−用の磁気抵抗パターン38(−b)とが同一の層に形成され、COS+用の磁気抵抗パターン38(+b)とSIN−用の磁気抵抗パターン38(−a)とが同一の層に形成されている。
【0056】
ここで、SINを付したA相の磁気抵抗パターン38(+a)と、COSを付したB相の磁気抵抗パターン38(+b)とは互いに90°の位相差を有し、SINを付したA相の磁気抵抗パターン38(−a)と、COSを付したB相の磁気抵抗パターン38(−b)とは互いに90°の位相差を有している。また、A相の磁気抵抗パターン38(+a)と磁気抵抗パターン38(−a)とは180°の位相差を有し、B相の磁気抵抗パターン38(+b)と磁気抵抗パターン38(−b)とは180°の位相差を有している。
【0057】
かかる態様によれば、磁気スケール90、およびセンサ基板30において感磁素子38を形成する領域の幅寸法(第2方向Yの寸法)が狭く済む。従って、ヘッド11の小型化を図ることができる。また、センサ基板30において感磁素子38を形成する領域の幅寸法(第2方向Yの寸法)が狭く済むので、感磁素子38に幅方向(第2方向Y)で隣り合う領域に原点検出用のZ相の磁気抵抗パターンを設けることができる。
【0058】
(本形態の主な効果)
以上説明したように、本形態の磁気式リニアエンコーダ1では、ヘッド11内の回路基板60から外部まで引き出された配線部材12がフレキシブル配線基板40であるため、ヘッド11の薄型化を図ることができる。また、回路基板60に増幅回路69が設けられているため、外部への信号出力をフレキシブル配線基板40によって行っても、信号の減衰等が問題となりにくい。従って、ヘッド11の薄型化を図っても、位置検出等を適正に行うことができる。また、ヘッド11は、センサ基板30から回路基板60までフレキシブル配線基板40によって配線されている。従って、ヘッド11をさらに薄型化するのに適している。また、センサ基板30から回路基板60までの配線や、外部への配線を1枚のフレキシブル配線基板40によって行っているので、磁気式リニアエンコーダ1のコストを低減することができる。
【0059】
また、フレキシブル配線基板40を第3部分48で折り返すことによって、フレキシブル配線基板40として、第1電極49、第2電極44、および第3電極45が片面側に設けられた片面基板を用いることができる。従って、磁気式リニアエンコーダのコストを低減することができる。また、フレキシブル配線基板40を厚さ方向に折り返した構造であるため、ヘッド11の幅を狭くすることができる。
【0060】
また、センサ基板30および回路基板60を各々、ホルダ20の支持板部26の反対側に重ねてある。従って、ヘッド11の底面積を狭くすることができ、ヘッド11の小型化を図ることができる。
【0061】
(他の実施形態)
上記実施形態では、回路基板60の一方面61では、第2端子64および第3端子65の一部に回路素子66が重なっていたが、第2端子64および第3端子65に回路素子66が一切、重なっていない態様を採用すれば、第2端子64および第3端子65の全体をフレキシブル配線基板40との接続に用いることができる。
【0062】
上記実施形態では、第1フレキシブル配線基板40aおよび第2フレキシブル配線基板40bが1枚のフレキシブル配線基板40からなっていたが、第1フレキシブル配線基板40aおよび第2フレキシブル配線基板40bが別々のフレキシブル配線基板によって構成されていてもよい。この場合、第3電極45から他方端42までが、第1フレキシブル配線基板40aとして構成され、第1電極49から第2電極44までが、第2フレキシブル配線基板40bとして構成される。