(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2019-128277(P2019-128277A)
(43)【公開日】2019年8月1日
(54)【発明の名称】磁気センサ装置
(51)【国際特許分類】
G01D 5/245 20060101AFI20190708BHJP
【FI】
G01D5/245 110C
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2018-10535(P2018-10535)
(22)【出願日】2018年1月25日
(71)【出願人】
【識別番号】000002233
【氏名又は名称】日本電産サンキョー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100142619
【弁理士】
【氏名又は名称】河合 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100125690
【弁理士】
【氏名又は名称】小平 晋
(74)【代理人】
【識別番号】100153316
【弁理士】
【氏名又は名称】河口 伸子
(72)【発明者】
【氏名】森山 克也
【テーマコード(参考)】
2F077
【Fターム(参考)】
2F077AA21
2F077NN05
2F077NN06
2F077NN17
2F077NN24
2F077PP14
2F077UU26
2F077VV02
2F077VV31
2F077WW03
2F077WW04
(57)【要約】
【課題】薄型化を図ることのできる磁気センサ装置を提供すること。
【解決手段】磁気センサ装置10では、ホルダ20の内部に配置されたセンサ基板30からホルダ20の外側までフレキシブル配線基板40が引き回されているため、磁気センサ装置10の薄型化を図ることができる。フレキシブル配線基板40の途中には、湾曲しながら折り返された第3部分48があるが、第3部分48の根元付近(第1部分46と第3部分48との間)が第1接着剤91によってホルダ20に固定されている。ホルダ20の開口部27を覆うシールド部材70は、ホルダ20の内側で、第1接着剤91と同一材料からなる第2接着剤92によってホルダ20に固定されている。第1接着剤91は、ゴム系の軟質接着剤であるため、環境温度が変化して第1接着剤91に膨張や収縮が発生しても、かかる変形が第1接着剤91の弾性で吸収される。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1側壁および前記第1側壁に第1方向の一方側で対向する第2側壁を備え、高さ方向の一方端に開口部が設けられたホルダと、
前記開口部に一方面を向けて前記ホルダの内側に配置され、前記開口部と重なる領域に感磁素子が設けられたセンサ基板と、
一方端が前記センサ基板に接続され、他方端が前記ホルダの外側に引き出されたフレキシブル配線基板と、
を有し、
前記フレキシブル配線基板は、前記一方端から前記第1方向の他方側に向けて延在する第1部分と、前記センサ基板の他方面に対向するように前記第1方向の他方側から一方側に延在する第2部分と、前記第1側壁に沿うように湾曲して前記第1部分の他方側の端部と前記第2部分の他方側の端部とを繋ぐ第3部分と、を有し、
前記フレキシブル配線基板は、前記第1部分と前記第3部分との間が前記ホルダに第1接着剤によって固定されていることを特徴とする磁気センサ装置。
【請求項2】
前記開口部を塞ぐ板状またはシート状のシールド部材を有し、
前記シールド部材は、前記ホルダに内側で、前記第1接着剤と同一材料からなる第2接着剤によって前記ホルダに固定されていることを特徴とする請求項1に記載の磁気センサ装置。
【請求項3】
前記ホルダは、前記第1側壁と前記第2側壁との間に設けられた第3側壁と、前記第1方向に対して直交する第2方向で前記第3側壁に対向する第4側壁と、を有し、
前記シールド部材は、前記第2接着剤によって全周にわたって固定されていることを特徴とする請求項2に記載の磁気センサ装置。
【請求項4】
前記第1接着剤は、ゴム系の軟質接着剤であることを特徴とする請求項1から3までの何れか一項に記載の磁気センサ装置。
【請求項5】
前記第1接着剤は、熱硬化性であることを特徴とする請求項4に記載の磁気センサ装置。
【請求項6】
前記センサ基板は、UV硬化性の第3接着剤、および熱硬化性の第4接着剤によって前記ホルダに固定されていることを特徴とする請求項1から5までの何れか一項に記載の磁気センサ装置。
【請求項7】
前記ホルダは、前記センサ基板と重なる支持板部を備え、
前記センサ基板は、前記第3接着剤、および前記第4接着剤によって、前記ホルダのうち、前記支持板部に固定されていることを特徴とする請求項6に記載の磁気センサ装置。
【請求項8】
前記センサ基板と前記第2部分との間に、前記フレキシブル配線と接続された剛性の回路基板が配置され、
前記回路基板は、速乾性の第5接着剤によって、前記ホルダに固定されていることを特徴とする請求項1から6までの何れか一項に記載の磁気センサ装置。
【請求項9】
前記ホルダは、前記回路基板と重なる支持板部を備え、
前記回路基板は、前記第5接着剤によって、前記ホルダのうち、前記支持板部に固定されていることを特徴とする請求項8に記載の磁気センサ装置。
【請求項10】
前記第3部分に対して前記センサ基板とは反対側に、第6接着剤によって前記ホルダに
固定されたカバーを有し、
前記フレキシブル配線基板は、前記第2部分が前記カバーと前記第2側壁との間を通って外部に引き出されており、
前記フレキシブル配線基板は、軟質の第7接着剤によって前記第2側壁に固定されていることを特徴とする請求項1から6までの何れか一項に記載の磁気センサ装置。
【請求項11】
前記第2部分には、フレキシブルシートが貼付されていることを特徴とする請求項1から10までの何れか一項に記載の磁気センサ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホルダ内にセンサ基板が配置された磁気センサ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
リニアエンコーダでは、一方方向に延在する磁気スケールに対向するように、感磁素子を備えた磁気センサ装置が配置される。磁気センサ素子では、感磁素子が形成されたセンサ基板や回路基板がホルダの内側に配置される。また、センサ基板と回路基板とはフレキシブル配線基板によって電気的に接続され、回路基板から延在するケーブルがホルダの外側に引き出される(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−84410号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1等に記載の磁気センサ装置に対しては、薄型化が要求されているが、特許文献1に記載の構成では、ホルダの内側から外側にケーブルを引き出す必要があるため、薄型化が困難である。
【0005】
以上の問題点に鑑みて、本発明の課題は、薄型化を図ることのできる磁気センサ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の磁気センサ装置は、第1側壁および前記第1側壁に第1方向の一方側で対向する第2側壁を備え、高さ方向の一方端に開口部が設けられたホルダと、前記開口部に一方面を向けて前記ホルダの内側に配置され、前記開口部と重なる領域に感磁素子が設けられたセンサ基板と、一方端が前記センサ基板に接続され、他方端が前記ホルダの外側に引き出されたフレキシブル配線基板と、を有し、前記フレキシブル配線基板は、前記一方端から前記第1方向の他方側に向けて延在する第1部分と、前記センサ基板の他方面に対向するように前記第1方向の他方側から一方側に延在する第2部分と、前記第1側壁に沿うように湾曲して前記第1部分の他方側の端部と前記第2部分の他方側の端部とを繋ぐ第3部分と、を有し、前記フレキシブル配線基板は、前記第1部分と前記第3部分との間が前記ホルダに第1接着剤によって固定されていることを特徴とする。
【0007】
本発明では、感磁素子からホルダの外側までフレキシブル配線基板が引き回されているため、磁気センサ装置の薄型化を図ることができる。また、フレキシブル配線基板の途中には、湾曲しながら折り返された第3部分があるが、第3部分の根元付近(第1部分と第3部分との間)が第1接着剤によってホルダに固定されている。このため、磁気センサ装置に振動が伝わっても、ホルダの内部でフレキシブル配線基板が動いてホルダと擦れて断線するという事態が発生しにくい。従って、フレキシブル配線基板を用いて磁気センサ装置の薄型化を図っても、高い信頼性を確保することができる。
【0008】
本発明において、前記開口部を塞ぐ板状またはシート状のシールド部材を有し、前記シールド部材は、前記ホルダの内側で、前記第1接着剤と同一材料からなる第2接着剤によって前記ホルダに固定されている態様を採用することができる。かかる態様によれば、ホ
ルダの空きスペースが狭い場合でも、第1接着剤と第2接着剤とにおいて接着剤を使い分ける必要がない。
【0009】
本発明において、前記ホルダは、前記第1側壁と前記第2側壁との間に設けられた第3側壁と、前記第1方向に対して直交する第2方向で前記第3側壁に対向する第4側壁と、を有し、前記シールド部材は、前記第2接着剤によって全周にわたって固定されている態様を採用することができる。かかる態様によれば、シールド部材とホルダとの間に隙間が発生しにくいので、埃等が開口部からホルダの内側に侵入しにくい。
【0010】
本発明において、前記第1接着剤は、ゴム系の軟質接着剤である態様を採用することができる。かかる態様によれば、環境温度が変化して第1接着剤に膨張や収縮が発生しても、かかる変形が第1接着剤の弾性で吸収される。従って、第1接着剤の膨張や収縮の応力がセンサ基板に伝わって感磁素子の磁気特性が変化することを抑制することができる。
【0011】
本発明において、前記第1接着剤は、熱硬化性である態様を採用することができる。かかる態様によれば、第1接着剤が熱硬化性であれば、粘度が比較的低いので、狭い隙間に第1接着剤を塗布しやすい。
【0012】
本発明において、前記センサ基板は、UV硬化性の第3接着剤、および熱硬化性の第4接着剤によって前記ホルダに固定されている態様を採用することができる。かかる態様によれば、第3接着剤によってセンサ基板を短時間のうちに仮固定した後、第3接着剤が完全に硬化する前にセンサ基板の位置調整等を行い、その後、第4接着剤によってセンサ基板を固定することができる。この場合、前記ホルダは、前記センサ基板と重なる支持板部を備え、前記センサ基板は、前記第3接着剤、および前記第4接着剤によって、前記ホルダのうち、前記支持板部に固定されている態様を採用することができる。
【0013】
本発明において、前記センサ基板と前記第2部分との間に、前記フレキシブル配線と接続された剛性の回路基板が配置され、前記回路基板は、速乾性の第5接着剤によって、前記ホルダに固定されている態様を採用することができる。かかる態様によれば、フレキシブル配線基板が湾曲した状態を維持したまま、回路基板を支持板部に固定することができる。この場合、前記ホルダは、前記回路基板と重なる支持板部を備え、前記回路基板は、前記第5接着剤によって、前記ホルダのうち、前記支持板部に固定されている態様を採用することができる。
【0014】
本発明において、前記第3部分に対して前記センサ基板とは反対側に、第6接着剤によって前記ホルダに固定されたカバーを有し、前記フレキシブル配線基板は、前記第2部分が前記カバーと前記第2側壁との間を通って外部に引き出されており、前記フレキシブル配線基板は、軟質の第7接着剤によって前記第2側壁に固定されている態様を採用することができる。かかる態様によれば、フレキシブル配線基板においてホルダから引き出されている部分に外部から力が加わっても、フレキシブル配線基板が擦れて断線する等の事態が発生しにくい。
【0015】
本発明において、前記第2部分には、フレキシブルシートが貼付されている態様を採用することができる。かかる態様によれば、フレキシブル配線基板のうち、直線的に延在している第2部分の剛性を高めることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明では、感磁素子からホルダの外側までフレキシブル配線基板が引き回されているため、磁気センサ装置の薄型化を図ることができる。また、フレキシブル配線基板の途中には、湾曲しながら折り返された第3部分があるが、第3部分の根元付近(第1部分と第
3部分との間)が第1接着剤によってホルダに固定されている。このため、磁気センサ装置に振動が伝わっても、ホルダの内部でフレキシブル配線基板が動いてホルダと擦れて断線するという事態が発生しにくい。従って、フレキシブル配線基板を用いて磁気センサ装置の薄型化を図っても、高い信頼性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明を適用した磁気センサ装置を高さ方向の他方側からみた斜視図である。
【
図2】
図1に示す磁気センサ装置を高さ方向の一方側からみた斜視図である。
【
図4】
図1に示す磁気センサ装置を高さ方向の他方側からみた分解斜視図である。
【
図5】
図1に示す磁気センサ装置を高さ方向の一方側からみた分解斜視図である。
【
図6】
図4に示す状態からフレキシブル配線基板とセンサ基板等とを分離した分解斜視図である。
【
図7】
図5に示す状態からフレキシブル配線基板とセンサ基板等とを分離した分解斜視図である。
【
図8】
図1に示す磁気センサ装置における接着剤の配置を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図面を参照して、本発明を適用した磁気センサ装置を説明する。なお、以下に参照する図面において、ホルダ20の長さ方向を第1方向Xとし、長さ方向(第1方向X)に直交する幅方向を第2方向Yとし、長さ方向(第1方向X)および幅方向(第2方向Y)に直交する方向を高さ方向Hとしてある。
【0019】
(磁気センサ装置10の全体構成)
図1は、本発明を適用した磁気センサ装置10を高さ方向Hの他方側H2からみた斜視図である。
図2は、
図1に示す磁気センサ装置10を高さ方向Hの一方側H1からみた斜視図である。
図3は、
図1に示す磁気センサ装置10の断面図である。
図4は、
図1に示す磁気センサ装置10を高さ方向Hの他方側H2からみた分解斜視図である。
図5は、
図1に示す磁気センサ装置10を高さ方向Hの一方側H1からみた分解斜視図である。
図6は、
図4に示す状態からフレキシブル配線基板40とセンサ基板30等とを分離した分解斜視図である。
図7は、
図5に示す状態からフレキシブル配線基板40とセンサ基板30等とを分離した分解斜視図である。
【0020】
図1に示す磁気センサ装置10は、磁気スケール90とともに、工作機械や実装装置のテーブル移動距離や位置を検出するリニアエンコーダ1として用いられる。磁気スケール90には、N極とS極が所定のピッチで交互に配列されている。かかるリニアエンコーダ1では、磁気センサ装置10および磁気スケール90のうちの一方が固定体に搭載され、他方が移動体に搭載される。本形態では、磁気スケール90が固定体に搭載され、磁気センサ装置10が移動体に搭載される。
【0021】
図2〜
図7に示すように、磁気センサ装置10は、ホルダ20と、ホルダ20の内側に配置されたセンサ基板30と、センサ基板30に接続されたフレキシブル配線基板40と、センサ基板30を高さ方向Hの他方側H2から覆うようにホルダ20に固定されたカバー50と、カバー50とセンサ基板30との間に配置された剛性の回路基板60と、ホルダ20の開口部27を塞ぐように固定されたシールド部材70とを有している。
【0022】
ホルダ20は、アルミニウムやステンレス等の非磁性の金属部材等からなり、第1側壁21と、第1側壁21に第1方向Xの一方側X1で対向する第2側壁22と、高さ方向Hの一方側H1で第1側壁21と第2側壁22との間に設けられた底壁25とを有している。ホルダ20には、第1方向Xの一方側X1に開口部27が形成されている。
【0023】
また、ホルダ20は、第2方向Yの一方側Y1で第1側壁21と第2側壁22とを繋ぐ第3側壁23と、第3側壁23に第2方向Yの他方側Y2で対向する第4側壁24とを備えており、第4側壁24は、第1側壁21と第2側壁22とを繋いでいる。第3側壁23および第4側壁24は、第1側壁21および第2側壁22より高さ方向Hの寸法が短い。第3側壁23と第1側壁21との間には略三角の連結部230が形成され、第4側壁24と第1側壁21との間には略三角の連結部240が形成されている。第2側壁22の高さ方向Hの他方側H2の端部には、第2側壁22の延在方向の中央部分に凹部221が形成されている。
【0024】
ホルダ20の内部には、カバー50とセンサ基板30との間で第3側壁23と第4側壁24とを繋ぐ支持板部26が形成されており、支持板部26は、回路基板60と対向している。
【0025】
底壁25は、第1方向Xの一方側X1のみに形成されており、第1側壁21、第3側壁23、および第4側壁24の高さ方向Hの一方側H1の端部は、開口部27の開口縁になっている。底壁25の外面側では、開口部27の周りを凹ませた凹部28が形成されており、開口部27は、全周にわたって凹部28に囲まれている。
【0026】
センサ基板30は、開口部27と支持板部26との間で一方面31を開口部27に向けて配置されている、一方面31側には感磁素子38および端子36が形成されており、感磁素子38は、開口部27と重なる領域に形成されている。本形態において、感磁素子38は、磁気抵抗素子380であり、磁気抵抗素子380は、90°位相の異なる2つの信号を出力するA相磁気抵抗パターンとB相磁気抵抗パターンとを含んでいる。
【0027】
回路基板60は、一方面61がセンサ基板30の他方面32と対向するように、支持板部26とカバー50との間に配置されている。一方面61には複数の回路素子66が実装され、他方面62には端子65が形成されている。
【0028】
カバー50は、センサ基板30の他方面32、および回路基板60の他方面62に対向する端板部51と、端板部51の第2方向Yの両端部から高さ方向Hの一方側H1に突出した側板部52、53とを有している。端板部51は、第1側壁21、第2側壁22、第3側壁23、および第4側壁24の高さ方向Hの他方側H2の端部に固定されている。この状態で、カバー50と第2側壁22との間には、凹部221によって隙間222が形成されている。
【0029】
フレキシブル配線基板40は、一方端41がセンサ基板30に接続され、他方端42がホルダ20の外側に引き出された状態にある。より具体的には、フレキシブル配線基板40は、一方端41から第1方向Xの他方側X2に向けて延在する第1部分46と、カバー50の端板部51と回路基板60との間でセンサ基板30の他方面32、および回路基板60の他方面62に対向するように第1方向Xの他方側X2から一方側X1に延在する第2部分47と、第1側壁21に沿うように湾曲して、第1部分46の第1方向Xの他方側X2の端部と第2部分47の第1方向Xの他方側X2の端部とを繋ぐ第3部分48とを有している。本形態において、フレキシブル配線基板40は、一方端41から他方端42まで1枚の基板からなる。
【0030】
フレキシブル配線基板40は、片面基板であり、第3部分48の内側に位置する面43には、第1部分46にセンサ基板30の端子36と接続された電極49が形成され、第2部分47に回路基板60の端子65が接続された電極45が形成されている。フレキシブル配線基板40の第2部分47には、延在方向において、電極45が形成されている側の
両側に補強用のフレキシブルシート471、472が貼付されている。従って、フレキシブル配線基板40のうち、第1方向Xに直線的に延在している第2部分47の剛性を高めることができる。
【0031】
シールド部材70は、アルミニウムや銅等の非磁性の板状部材またはシート状部材であり、底壁25の外面側において凹部28に配置されて開口部27を塞いでいる。
【0032】
(磁気センサ装置10における接着構造)
図8は、
図1に示す磁気センサ装置10における接着剤の配置を示す説明図であり、第3側壁23より内側で切断した様子を示してある。
【0033】
本形態では、磁気センサ装置10を製造する際には、フレキシブル配線基板40を展開した状態で、フレキシブル配線基板40の電極45、49に回路基板60の端子65、およびセンサ基板30の端子36を接続する。その際、例えば、フレキシブル配線基板40の電極45と回路基板60の端子65との間、およびフレキシブル配線基板40の電極49とセンサ基板30の端子36との間に、熱硬化性樹脂に導電粒子が分散された異方性導電材料を配置した状態で熱プレスを行い、熱硬化性樹脂を硬化させた後、冷却する。本形態では、電極45、49、および端子65、36の表面にハンダ層が形成されており、導電粒子は、ハンダ層より低融点の複数のハンダ粒子である。従って、熱プレスの際、ハンダ層が溶融せずに、ハンダ粒子が溶融し、電気的な接続が行われる。樹脂材料としては、エポキシ系等の熱硬化樹脂が用いられる。ハンダ粒子は、スズと、銅、銀、ビスマス、アンチモンおよびインジウムのうちの何れかの金属とを含有しており、例えば、融点が200℃以下の低融点ハンダ材料からなる。ハンダ層は、例えば、スズ−銅系のハンダ材料からなり、融点は約230℃である。ハンダ層は、スズ−銅系のハンダ材料の他、スズ−銀−銅系や、スズ−ビスマス系のハンダ材料であってもよい。
【0034】
次に、フレキシブル配線基板40を曲げながら、
図8に示すように、フレキシブル配線基板40をホルダ20の内側に配置する。また、底壁25の外面側において開口部27を塞ぐように、凹部28の内側にシールド部材70を配置する。
【0035】
この状態で、フレキシブル配線基板40のうち、第1部分46と第3部分48との間の部分をホルダ20の第1側壁21に第1接着剤91によって固定する。また、ホルダ20の内側で、シールド部材70を第1接着剤91と同一材料からなる第2接着剤92によって、ホルダ20の開口部27の縁で固定する。本形態において、シールド部材を第2接着剤92によって全周にわたって固定する。
【0036】
ここで、第1接着剤91および第2接着剤92は、ゴム系の軟質接着剤である。また、第1接着剤91および第2接着剤92は、熱硬化性である。例えば、第1接着剤91および第2接着剤92は、硬化後の硬度が、例えば、ショアD30からショアD60までの範囲にある。
【0037】
また、センサ基板30をUV硬化性の第3接着剤93によってホルダ20に仮固定した後、センサ基板30の位置調整を行い、その後、熱硬化性の第4接着剤94によってセンサ基板30をホルダ20に固定する。本形態では、センサ基板30を第3接着剤93によってホルダ20の支持板部26に仮固定した後、センサ基板30の位置調整を行い、その後、第4接着剤94によってセンサ基板30をホルダ20の支持板部26に固定する。第4接着剤94は、硬化後の硬度が、例えば、ショアD60からショアD90までの範囲にある。
【0038】
また、回路基板60を速乾性の第5接着剤95によってホルダ20に固定する。本形態
では、回路基板60を第5接着剤95によって支持板部26に固定する。
【0039】
次に、ホルダ20にカバー50を被せる。その際、フレキシブル配線基板40の第2部分47がホルダ20の第2側壁22とカバー50との間の隙間222から引き出した状態とする。本形態では、第6接着剤96によってカバー50をホルダ20に固定する。また、フレキシブル配線基板40の第2部分47を軟質の第7接着剤97によって第2側壁22と固定する。第6接着剤96は、硬化後の硬度が、例えば、ショアD60からショアD90までの範囲にある。第7接着剤97は、ゴム系の軟質接着剤であり、第6接着剤96より低硬度である。第7接着剤97は、硬化後の硬度が、例えば、ショアD30からショアD60までの範囲にある。かかる第7接着剤97は、例えば、空気中の水分によって硬化する常温硬化性の接着剤が用いられる。
【0040】
(本形態の主な効果)
以上説明したように、本形態では、ホルダ20の内部に配置されたセンサ基板30からホルダ20の外側までフレキシブル配線基板40が引き回されているため、磁気センサ装置10の薄型化を図ることができる。また、フレキシブル配線基板40の途中には、湾曲しながら折り返された第3部分48があるが、第3部分48の根元付近(第1部分46と第3部分48との間)が第1接着剤91によってホルダ20に固定されている。このため、磁気センサ装置10に振動が伝わっても、ホルダ20の内部でフレキシブル配線基板40が動いてホルダ20と擦れて断線するという事態が発生しにくい。従って、フレキシブル配線基板40を用いて磁気センサ装置10の薄型化を図っても、高い信頼性を確保することができる。
【0041】
また、シールド部材70は、ホルダ20の内側で、第1接着剤91と同一材料からなる第2接着剤92によってホルダ20に固定されている。従って、ホルダ20内の空きスペースが狭い場合でも、第1接着剤91と第2接着剤92とにおいて、接着剤を使い分ける必要がない。また、シールド部材70は、第2接着剤92によって全周にわたって固定されている。このため、シールド部材70とホルダ20との間に隙間が発生しにくいので、埃等が開口部27からホルダ20の内側に侵入しにくい。
【0042】
ここで、第1接着剤91は、ゴム系の軟質接着剤であるため、環境温度が変化して第1接着剤91に膨張や収縮が発生しても、かかる変形が第1接着剤91の弾性で吸収される。従って、第1接着剤91の膨張や収縮の応力がセンサ基板30に伝わって感磁素子38の磁気特性が変化することを抑制することができる。また、第1接着剤91および第2接着剤92は、熱硬化性であるため、粘度が比較的低い。それ故、狭い隙間に第1接着剤91および第2接着剤92を塗布しやすい。
【0043】
また、センサ基板30は、UV硬化性の第3接着剤93、および熱硬化性の第4接着剤94によってホルダ20の支持板部26に固定されているため、第3接着剤93によってセンサ基板30を短時間のうちにホルダ20の支持板部26に仮固定した後、センサ基板30の位置調整等を行い、その後、第4接着剤94によってセンサ基板30をホルダ20に固定することができる。
【0044】
また、回路基板60は、速乾性の第5接着剤95によって、ホルダ20の支持板部26に固定されているため、フレキシブル配線基板40が第3部分48で湾曲した状態を維持したまま、回路基板60をホルダ20に固定することができる。
【0045】
また、第6接着剤96によってホルダ20にカバー50が固定されている一方、フレキシブル配線基板40の第3部分48は、軟質の第7接着剤97によって第2側壁22に固定されている。このため、フレキシブル配線基板40においてホルダ20から引き出され
ている部分に外部から力が加わっても、フレキシブル配線基板40が擦れて断線する等の事態が発生しにくい。
【符号の説明】
【0046】
1…リニアエンコーダ、10…磁気センサ装置、20…ホルダ、21…第1側壁、22…第2側壁、23…第3側壁、24…第4側壁、25…底壁、26…支持板部、27…開口部、30…センサ基板、36、65…端子、38…感磁素子、40…フレキシブル配線基板、41…一方端、42…他方端、45、49…電極、46…第1部分、47…第2部分、48…第3部分、50…カバー、51…端板部、52、53…側板部、60…回路基板、66…回路素子、70…シールド部材、90…磁気スケール、91…第1接着剤、92…第2接着剤、93…第3接着剤、94…第4接着剤、95…第5接着剤、96…第6接着剤、97…第7接着剤、222…隙間、380…磁気抵抗素子、471、472…フレキシブルシート、X…第1方向、Y…第2方向、H…高さ方向