【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 2017年11月20日 アクセリード ドラッグディスカバリーパートナーズ株式会社においてシンフォニアテクノロジー株式会社が「観察用容器を保持するホルダを備えた顕微鏡」を試験運用のために公開、2017年12月18日 慶応義塾大学医学部循環器内科 総合医科学研究棟8N2においてシンフォニアテクノロジー株式会社が「観察用容器を保持するホルダを備えた顕微鏡」を試験運用のために公開
【解決手段】不要細胞除去装置に備えられたホルダ10は、載置部材40と、開放位置と保持位置との間で移動可能な蓋部材と、蓋部材を保持位置で係止する係止部とを有する。蓋部材には、押え面71を有する押え板70が、ばね80を介して取り付けられている。ばね80は、係止部60が蓋部材を保持位置で係止し、且つ、押え面71が培養容器100の上端面102bを押さえている状態で、水平面内における複数の付勢位置において押え板70を付勢する。複数の付勢位置は、中心線C1によって押え面71を2つの領域R1、R2に分けたときに、両方の領域に存在し、中心線C2によって押え面71を2つの領域R3、R4に分けたときにも、両方の領域に存在する。
前記蓋部材が前記保持位置から前記開放位置に移動する向きに前記蓋部材を付勢するねじりばねが、前記回動軸に取り付けられていることを特徴とする請求項2〜4のいずれかに記載の顕微鏡。
【発明を実施するための形態】
【0022】
次に、本発明の実施の形態について、
図1〜
図9を参照しながら説明する。
【0023】
(不要細胞除去装置の構成)
以下、本発明に係るホルダ10を備える不要細胞除去装置1(本発明の顕微鏡)について、
図1〜
図3を用いて説明する。
図1は、不要細胞除去装置1の全体図である。
図2は、不要細胞除去装置1の電気的構成を示すブロック図である。
図3(a)は、培養容器100(本発明の観察用容器)の斜視図である。
図3(b)は、培養容器100の断面図である。なお、説明の便宜上、
図1の紙面上下方向を上下方向とする。また、上下方向に垂直な方向を水平方向とする。
【0024】
図1に示すように、不要細胞除去装置1は、機台2と、ステージ3と、ステージ移動装置4と、レーザー光照射装置5と、撮影装置6と、照明装置7と、制御装置8(
図2参照)と、を備える。不要細胞除去装置1は、倒立顕微鏡の一種である。不要細胞除去装置1は、培養容器100の中で培養された細胞を培養容器100の底面側から観察して細胞の画像を取得し、不要な細胞を除去するためのものである。
【0025】
機台2は、不要細胞除去装置1を構成する各部材を支持する箱状の部材である。機台2の内部には、レーザー光照射装置5及び撮影装置6の一部構成が収容されている。
【0026】
ステージ3は、機台2の上方に配置されており、X軸のリニアガイド(不図示)とY軸のリニアガイド(不図示)とが井桁状に組まれた構成となっている。ステージ3上には、ホルダ10が固定されている。ステージ3の、ホルダ10が設置される部分には、可視光やレーザー光が上下方向に通過可能な空間が形成されている(図示省略)。ホルダ10によって、培養容器100が保持される(詳細については後述する)。培養容器100は、可視光やレーザー光が通過可能な透明の部材、例えば透明のプラスチック部材からなる。
図3(a)、(b)に示すように、本実施形態の培養容器100は、全体として円筒状の容器である。培養容器100は、培養液L及び細胞C(
図3(b)参照)が入れられる円筒状のディッシュ101と、ディッシュ101の上部を覆う円筒状の蓋102とを有する。ディッシュ101の内側には培養液Lが入れられ、培養液Lの中で細胞Cが培養される。細胞Cは、ディッシュ101の内側の底面に付着している。細胞Cには、培養対象としている目的細胞と、目的細胞とは異なる細胞に変化した不要細胞とが含まれている。蓋102の径方向外側端部には、ディッシュ101の上端縁101aと当接する複数の突起102aが設けられている。突起102aによって、ディッシュ101と蓋102との間にわずかな隙間が形成され、培養容器100の内部と外部との間で空気の流出入が可能となっている。これにより、細胞Cが呼吸可能となっている。
【0027】
図1に戻って説明を続ける。ステージ移動装置4は、ステージ3を水平方向(前後左右方向)に移動させるための装置である。ステージ移動装置4によってステージ3を移動させることにより、後述の集光レンズ14及び撮影用対物レンズ21に対して培養容器100を水平方向に相対移動させることができる。
【0028】
レーザー光照射装置5は、レーザー光生成器11、コリメートレンズ12、光学ミラー13、及び、集光レンズ14を有する。レーザー光照射装置5においては、レーザー光生成器11で生成されたレーザー光が、コリメートレンズ12及び光学ミラー13を経て集光レンズ14に至るように、光路15が規定されている。レーザー光生成器11は、主に近赤外線(波長が約780〜2000nmの範囲の光、特に水に吸収されやすい1460nmが好ましい)からなる近赤外線レーザー光を生成する。集光レンズ14は、ステージ3の下方に配置されている。ステージ移動装置4によって培養容器100を水平方向に移動させながら、細胞Cに含まれる不要細胞が集光レンズ14の鉛直上方にきたタイミングでレーザー光を照射することで、不要細胞を死滅させ、培養容器100の底面から剥離させることができる。
【0029】
撮影装置6は、撮影用対物レンズ21、光学ミラー22、23、及び、撮像部24を有する。撮影装置6においては、撮影用対物レンズ21の視野内の画像が、光学ミラー22、23を経て撮像部24で撮像されるように、光路25が規定されている。撮影用対物レンズ21は、ステージ3の下方に配置されている。撮像部24は、例えばCCDやCMOSからなるイメージセンサを有している。ステージ移動装置4による培養容器100の水平方向への移動と、撮影装置6による撮影とを順番に繰り返すことで、培養容器100内に点在している細胞Cの全領域を撮影することができる。撮影装置6によって撮影された画像データは、制御装置8に送られる。
【0030】
照明装置7は、撮影用対物レンズ21の鉛直上方に配置されており、撮影装置6による
撮影に必要な光量を供給する。言い換えると、照明装置7は、観察用の照明光を生成する。
【0031】
レーザー光照射装置5の集光レンズ14と、撮影装置6の撮影用対物レンズ21とは、支持部材31によって一体的に支持されている。支持部材31は、昇降装置32によって昇降可能に構成されている。これにより、集光レンズ14及び撮影用対物レンズ21は、昇降装置32によって一体的に昇降可能となっている。つまり、昇降装置32によって、集光レンズ14及び撮影用対物レンズ21のピントが調整される。
【0032】
図2に示すように、制御装置8は、ステージ移動装置4、レーザー光照射装置5、撮影装置6、照明装置7、及び、昇降装置32の各動作を制御する。制御装置8は、画像処理部(不図示)と記憶部(不図示)とを有する。画像処理部は、撮影装置6によって撮影された細胞Cの画像データに画像処理を施すことによって、細胞Cに含まれる不要細胞を検出してその位置情報を取得する。記憶部は、画像処理部によって取得された不要細胞の位置情報等を記憶する。
【0033】
(不要細胞除去動作について)
次に、不要細胞除去装置1における不要細胞の除去動作について、
図4を参照しつつ説明する。
図4(a)、(b)は、培養容器100の観察領域を示す図である。
【0034】
制御装置8(
図2参照)は、不要な細胞の除去に先立って、ステージ移動装置4(
図1参照)を制御してステージ3(
図1参照)を水平方向に移動させながら、ディッシュ101の内側の底面の観察領域103(
図4参照)を撮影装置6によって撮影し、画像データを取得する。
図4に示すように、観察領域103の大きさ(例えば、直径約6cm)に比べて、撮影装置6が一度に撮影可能な撮影領域104はかなり小さい(例えば、約3mm角)。このため、制御装置8は、ステージ3を順次移動させながら(
図4(a)の矢印参照)、撮影装置6に複数の画像データを取得させる。制御装置8は、観察領域103の全部又は一部を撮影装置6に撮影させる。取得された画像データは、制御装置8に送られる。
【0035】
次に、制御装置8は、画像処理部(不図示)によって、取得された画像データに画像処理を施し、その画像から細胞C(細胞Ca、Cb、Cc。
図4参照)を検出する。さらに、制御装置8は、不要細胞を検出するとともに不要細胞の位置情報を取得し、当該位置情報を記憶部(不図示)に記憶させる。
【0036】
次に、制御装置8は、記憶部に記憶されている不要細胞の位置情報に基づいて、ステージ移動装置4を制御し、細胞Cのうち不要細胞の部分が集光レンズ14の直上に位置するようにステージ3を移動させる。そして、制御装置8は、ステージ移動装置4によってステージ3を約数十μmの細かい単位で水平移動させながら、レーザー光照射装置5を制御してレーザー光を生成する。これにより、不要細胞にレーザー光が照射され、不要細胞が死滅する。死滅した不要細胞は、その後、ディッシュ101の底面から剥離する。制御装置8は、全ての不要細胞にレーザー光を照射し終えるまで、ステージ移動装置4によるステージ3の移動とレーザー光照射装置5によるレーザー光の照射を交互に繰り返し実行する。例えば、本実施形態では、
図4(b)の矢印に示すように、細胞Ca、Cb、Ccの順にレーザー光を照射するようにステージ3を移動させる。以上のような不要細胞除去処理を実行することで、細胞Cに含まれる不要細胞を除去することができ、目的細胞のみを培養することができるようになる。
【0037】
ここで、不要細胞除去装置1においては、処理効率を高めるため、高速でステージ3を動かすことが求められる。しかしながら、ステージ移動装置4によってステージ3を急激に加減速させると、培養容器100に作用する水平方向の慣性力によって培養容器100の位置が微妙にずれ、撮影やレーザー照射の位置精度が悪化するおそれがある。これらの位置精度が悪化すると、不要細胞を除去できないおそれや、目的細胞まで除去してしまうおそれがある。このため、上述したような慣性力による培養容器100の位置ずれを抑制する必要がある。特に、不要細胞を除去する際には、
図4(b)に示すように、ステージ3があらゆる方向に移動しうるため、慣性力も、培養容器100に対してあらゆる方向に作用しうる。そこで、本実施形態では、ホルダ10が以下の構成を有する。
【0038】
(ホルダの構成)
ホルダ10の構成について、
図5〜
図7を用いて説明する。なお、便宜上、
図5に示す前後左右上下方向を、前後左右上下方向として、以下の説明を行う。
図5における上下方向は、
図1における上下方向と一致する。前後方向は、後述する回動軸45の軸方向とも称する。
【0039】
図5(a)、(b)は、ホルダ10の斜視図である。
図6(a)、(b)は、ホルダ10の、前後方向に直交する断面図である。
図7(a)は、ホルダ10が保持位置(詳細は後述)に位置しているときのホルダ10の平面図である。
図7(b)は、ホルダ10を軸方向から見たときの側面図である。
【0040】
ホルダ10は、ステージ3上に固定され、培養容器100を保持するためのものである。
図5〜
図7に示すように、ホルダ10は、載置部材40と、蓋部材50と、係止部60とを有する。大まかには、ホルダ10は、載置部材40の上に載置される培養容器100を、蓋部材50に取り付けられた押え板70の押え面71によって上方から押圧して保持する。蓋部材50は、培養容器100を交換可能な開放位置(
図5(a)、
図6(a)参照)と、培養容器100を保持可能な保持位置(
図5(b)、
図6(b)参照)との間で移動可能(回動可能)である。係止部60は、蓋部材50を保持位置で係止する。なお、押え面71と平行であり、且つ、前後方向と直交する方向を、直交方向とする。直交方向において、回動軸45に近い側を一方側とし、遠い側を他方側とする。直交方向は、蓋部材50の回動角度に応じて変化する。
【0041】
載置部材40は、培養容器100が載置される矩形状の板部材である。載置部材40は、例えば、ステージ3にねじ止めされて固定されている。載置部材40は、水平方向に延びている。載置部材40の前後方向及び左右方向における中央部には、照明装置7(
図1参照)で生成される照明光やレーザー光生成器11(
図1参照)で生成されるレーザー光を通過させるための、円状の通過孔41が形成されている(
図5(a)等参照)。載置部材40の、通過孔41の縁部及びその周辺部は、他の部分と比べて薄くなっており(つまり、段差が設けられており)、培養容器100の底部を収容可能な収容部42となっている。収容部42の上面は、培養容器100が載置される載置面43となっている。載置面43の、ディッシュ101の外側の底面101b(
図3(b)参照)と接触する部分には、例えば、樹脂製の滑り止め44(
図5(a)のハッチング部分参照)が配置されていることが好ましい。なお、収容部42は必ずしも形成されていなくても良い。つまり、載置部材40が平坦であり、その上面に培養容器100が載置される構成となっていても良い。
【0042】
載置面43の面方向において、収容部42の外側(すなわち、載置面43のうち、ディッシュ101の底面101bと接触する部分よりも外側)には、回動軸45が設けられている(
図5(a)等参照)。本実施形態では、回動軸45は、載置部材40の左端部の上方に配置されている。回動軸45は、載置部材40に立設配置された支持部46に支持され、前後方向に延びている。回動軸45の軸中心は、蓋部材50が保持位置に位置しているときの押え面71よりも上方に配置されている(
図6(b)参照)。回動軸45の軸方向における両端部には、ねじりばね47が取り付けられている(
図5(a)、
図7(b)参照)。ねじりばね47は、蓋部材50が保持位置から開放位置に移動する向きに蓋部材50を付勢する(
図7(b)の矢印110参照)。また、左右方向において、載置部材40の、収容部42を挟んで回動軸45の反対側には、係止部60が配置されている(
図5、
図6参照)。
【0043】
蓋部材50は、載置部材40との間に培養容器100を挟んで保持するためのものである。蓋部材50は、前後方向及び直交方向に延びる矩形状の板部材である。蓋部材50の軸方向及び直交方向における中央部には、照明装置7(
図1参照)で生成される照明光を通過させるための通過孔51が形成されている(
図5(a)等参照)。蓋部材50の前後方向における両端部は略直角に折り曲げられており、直交方向に延びる側面部52が形成されている。側面部52の直交方向における一方側の端部は、回動軸45に回動可能に支持されている。これにより、蓋部材50は、回動軸45を回動支点として、開放位置と保持位置との間で回動可能となっている。蓋部材50の、直交方向における他方側の端部且つ前後方向(回動軸45の軸方向)における中央部には、直交方向における他方側に突出する突出部53が形成されている。突出部53には、突出部53が係止部60によって係止されるための係止孔54が形成されている。
【0044】
蓋部材50には、複数のばね80(本発明の板付勢部材)を介して、押え板70が取り付けられている(
図5(b)、
図6等参照)。押え板70は、培養容器100の蓋102の上端面102b(本発明の「観察用容器の上端面」)を上方から押さえるためのものである。押え板70は、前後方向及び直交方向に延びる矩形状の板部材である。押え板70は、蓋部材50と対向するように配置されている(
図5、
図6参照)。押え板70は、蓋102の上端面102bを押さえる押え面71を有する。押え板70は、蓋部材50が保持位置に位置しているときに、押え面71が蓋102の上端面102bに接触するように配置されている(
図6(b)参照)。なお、押え面71は、上端面102bに接触する接触部分74(
図7(a)のハッチング部分参照)を含む面全体である。
【0045】
押え板70の前後方向及び直交方向における中央部には、照明装置7(
図1参照)で生成される照明光を通過させるための通過孔72(本発明の窓)が形成されている(
図5(a)、
図7(a)参照)。蓋部材50が保持位置に位置しているとき、押え面71が蓋102の上端面102bと平行になっており(
図6(b)参照)、通過孔72の縁部73(
図7(a)参照)が、蓋102の上端面102bに接触している。つまり、押え面71のうち上端面102bに接触する接触部分74によって、上端面102bが押さえられる。押え板70の、直交方向における一方側の部分には切欠76が形成されている(
図7(a)参照)。つまり、縁部73の直交方向における一部が、上端面102bに接触しないように切り欠かれている。また、押え板70の、ばね80が取り付けられる部分には、後述する柱81を挿通させる挿通孔77が形成されている(
図5(a)参照)。
【0046】
複数(本実施形態では4つ)のばね80は、蓋部材50と押え板70との間に介在し、蓋部材50と押え板70とを接続する部材である。ばね80は、例えば圧縮コイルばねである。ばね80の端部は、蓋部材50及び押え板70に固定されている。複数のばね80は、蓋部材50が保持位置に位置し、且つ、押え面71が上端面102bを押さえているとき、複数の付勢位置(
図7(a)参照)において押え板70を下方へ付勢する。複数のばね80の径方向内側には、柱81(
図5(a)、
図6(b)参照)がそれぞれ配置されている。柱81は、蓋部材50にねじ止めされている。これにより、ばね80は柱81に沿って安定的に伸縮可能である。
【0047】
係止部60は、蓋部材50を保持位置で係止するためのものである。
図6に示すように、係止部60は、載置部材40の右端部(すなわち、左右方向において、収容部42を挟んで回動軸45とは反対側の端部)の上方に設けられている。係止部60は、載置部材40に取り付けられた土台61と、土台61に回動可能に支持された回動部材62(本発明のロック部材)とを有する。土台61には、回動部材62の回動支点となる回動軸63が設けられている。回動部材62は、保持位置に位置している蓋部材50を係止する係止姿勢(
図7(b)の実線参照)と、蓋部材50の係止を解除する解除姿勢(
図7(b)の二点鎖線参照)との間で姿勢を切換可能である。回動部材62の上側部分には、蓋部材50を係止する係止爪64が取り付けられている(
図6参照)。係止爪64は、蓋部材50が保持位置に位置しているときに、突出部53の係止孔54に嵌まることで、突出部53を上方から押さえつけて蓋部材50を係止する(
図6(b)参照)。回動軸63には、ねじりばね65(本発明のロック付勢部材)が取り付けられている(
図6(b)参照)。回動部材62は、ねじりばね65によって、解除姿勢から係止姿勢に変化する向きに付勢されている(
図7(b)の矢印111参照)。これにより、回動部材62が係止姿勢をとっているときに、ステージ3の加減速等のはずみで回動部材62が解除姿勢になることが抑制される。
【0048】
(ばねの配置位置及び切欠の形成位置)
ばね80の配置位置(すなわち、ばね80が押え板を付勢する付勢位置)及び切欠76の形成位置について、
図8を用いて説明する。
図8(a)、(b)は、蓋部材50(
図5等参照)が保持位置に位置しているときの載置部材40、押え板70、ばね80、回動軸45、及び培養容器100のみを模式的に表した平面図である。
図8(a)、(b)において、押え面71のうち上端面102bに接触する接触部分74の中心を、中心C0とする。本実施形態の中心C0は、接触部分74をリング状とみなしたときの(言い換えると、切欠76が存在しておらず、縁部73が全周に亘って設けられていると考えたときの)仮想的なリング状領域75の中心である。
【0049】
図8(a)、(b)に示すように、複数のばね80(ばね82〜85)は、押え面71の面方向において、押え板70の四隅に等間隔で配置されている。つまり、蓋部材50が保持位置に位置しているとき、ばね82は押え板70の左後端部、ばね83は押え板70の右後端部、ばね84は押え板70の左前端部、ばね85は押え板70の右前端部にそれぞれ配置されている。言い換えると、
図8(a)に示すように、中心C0を通り、直交方向に延びる中心線C1(本発明の第1中心線)によって押え面71を前後2つの領域R1、R2に分けたときに、ばね82、83は領域R1に、ばね84、85は領域R2にそれぞれ位置する。すなわち、付勢位置が領域R1、R2の両方に存在する。また、
図8(b)に示すように、中心C0を通り、且つ、中心線C1と直交する中心線C2(本発明の第2中心線)によって押え面71を左右2つの領域R3、R4に分けたときに、ばね82、84は領域R3に、ばね83、85は領域R4にそれぞれ位置する。すなわち、付勢位置が領域R3、R4の両方に存在する。このように、複数のばね80は、押え面71の面内で均等に配置されており、押え板70を均等に付勢する。
【0050】
切欠76は、直交方向において、中心線C2よりも一方側に形成されている。言い換えると、縁部73は、直交方向において、中心C0よりも回動軸45側に位置する途中部よりも、さらに回動軸45側の部分が切り欠かれている。
【0051】
(培養容器の着脱方法)
次に、上記の構成を有するホルダ10における培養容器100の着脱方法、及び、培養容器100の着脱時におけるホルダ10の動作について、
図6〜
図9を用いて説明する。
図9は、押え板70の押え面71と培養容器100の蓋102の上端面102bとのなす角を示す図である。
【0052】
初期状態として、ホルダ10の蓋部材50が開放位置(
図6(a)参照)に位置しており、且つ、載置面43に培養容器100が載置されていない状態である。蓋部材50が開放位置に位置しているとき、ばね80は圧縮されておらず(
図6(a)参照)、押え板70は付勢されていない。まず、作業者(不図示)は、載置面43に培養容器100を載置する。次に、開放位置に位置している蓋部材50を回動させて、押え板70の押え面71を培養容器100の蓋102の上端面102bに接触させる。このとき、押え板70に切欠76(
図7(a)参照)が形成されていない場合、
図9に示すように、押え面71が上端面102bに対して大きく傾いた状態で、押え面71の直交方向における一方側端部が上端面102bの左端部に接触するおそれがある(
図9の二点鎖線参照)。これにより、培養容器100が傾く等のおそれがある。本実施形態では、押え板70の縁部73に切欠76が形成されているため、押え面71が上端面102bに接触するときの押え面71の傾きを緩やかにすることができる(
図9の実線参照)。また、回動軸45の軸中心が、蓋部材50が保持位置に位置しているときの押え面71よりも上方に配置されており、高い位置にある。このため、押え面71が上端面102bに接触するときの押え面71の傾きをさらに緩やかにすることができる。
【0053】
次に、蓋部材50を保持位置まで移動させた後、係止部60によって蓋部材50の突出部53を上方から押さえつけ、蓋部材50を保持位置で係止させる(
図6(b)参照)。蓋部材50が保持位置に位置しているとき、押え面71が培養容器100の上端面102bによって押し返され、ばね80が圧縮される(
図6(b)参照)。このとき、蓋部材50は、係止部60によって係止されており、上方への移動が規制されている。このため、圧縮されているばね80の弾性復元力によって押え板70が下方へ付勢され(
図6(b)のブロック矢印参照)、押え面71によって上端面102bが下方へ押圧される。これにより、ディッシュ101の外側の底面101bが載置面43に押し付けられ、載置面43からの垂直抗力によって底面101bと載置面43との間に摩擦力が働く。なお、本実施形態では、底面101bと載置面43との間に滑り止め44が配置されているので、摩擦力はより強くなる。
【0054】
ここで、上述したように、ばね80は、押え面71の面方向において均等に配置され、押え板70を均等に付勢している(
図8参照)。これにより、水平面内で、摩擦力が底面101bと載置面43との間に均等に働くので、ホルダ10が固定されているステージ3がいかなる方向に移動しても、上記摩擦力によって、培養容器100に作用する慣性力に抗うことができる。これにより、ステージ3の移動方向によらず、培養容器100の位置ずれが抑制される。なお、ばね80が圧縮されている状態では、押え板70と蓋部材50との距離が近くなっており、蓋部材50に固定されている柱81は、押え板70よりも下方へ突出している。また、保持位置に位置している蓋部材50は、圧縮されているばね80の弾性復元力によって上方へ付勢されるため、蓋部材50の突出部53が係止部60によってしっかり受け止められる。
【0055】
また、培養容器100の交換時等、蓋部材50を保持位置から開放位置に移動させる場合、作業者が係止部60の回動部材62を回動させて、回動部材62を解除姿勢にする(
図7(b)の二点鎖線参照)。このとき、蓋部材50の係止が解除されており、且つ、上述したように蓋部材50がねじりばね47によって付勢されているため、保持位置(
図7(b)の実線参照)から開放位置(
図7(b)の二点鎖線参照)に移動する。これにより、培養容器100の交換時等に、作業者が蓋部材50を回動させて開放位置に移動させる手間を省くことができる。
【0056】
以上のように、蓋部材50が保持位置で係止されているとき、蓋部材50に取り付けられた押え板70の押え面71によって培養容器100の上端面102bが押さえられ、且つ、ばね80によって押え板70が下方へ付勢される。これにより、培養容器100が押え板70によって押圧される。このため、培養容器100が載置面43から受ける垂直抗力が大きくなり、培養容器100と載置面43との間に働く摩擦力が大きくなる。
【0057】
さらに、ばね80によって、複数の付勢位置において押え板70が付勢される。具体的には、押え板を中心線C1によって2つの領域R1、R2に分けたときに、両方の領域に付勢位置が存在する。また、押え板70を中心線C2によって2つの領域R3、R4に分けたときにも、両方の領域に付勢位置が存在する。このため、ばね80によって押え面71を均等に付勢することができ、培養容器100の上端面102bを接触部分74によって均等に押圧することができる。これにより、培養容器100の底面101bと載置面43との間に働く摩擦力を均等にすることができるため、ステージ3の移動の向きによらず、培養容器100の位置ずれを抑制することができる。また、ホルダ10は、上方から培養容器100を押圧するだけの単純な構成であり、培養容器100の側面を固定するための押えねじ等が必要ないので、構造の複雑化を抑制できる。したがって、ステージ3の移動の向きによらず、単純な構成によって、培養容器100の位置ずれを抑制することができる。
【0058】
また、開放位置に位置している蓋部材50を回動させ、係止部60によって蓋部材50を保持位置で係止させることで、不要細胞除去装置1を使用可能な状態にすることができる。逆に、保持位置に位置している蓋部材50を回動させて開放位置に位置させることで、培養容器100の交換を行うことができる。このように、単純な操作によって、蓋部材50の位置を保持位置と開放位置との間で変更することができる。したがって、培養容器100の交換作業等を容易に行うことができる。
【0059】
また、回動軸45の軸中心が、蓋部材50が保持位置に位置しているときの押え面71よりも上方に配置されており、高い位置にある。このため、押え板70の接触部分74を培養容器100の上端面102bに接触させる際に、上端面102bに対する押え面71の角度を緩やかにすることができる。したがって、培養容器100が傾くこと等を抑制できる。
【0060】
また、縁部73のうち、直交方向において回動軸45に近い部分が、培養容器100の上端面102bに接触しないように切り欠かれている。つまり、縁部73の全周に亘って接触部分74が形成されているのではない。これにより、培養容器100の上端面102bを押え面71によって均等に押圧しつつ、接触部分74を培養容器100の上端面102bに接触させる際に押え面71の角度を緩やかにすることができる。
【0061】
また、培養容器100の交換時等に、係止部60による蓋部材50の係止を解除することで、蓋部材50が、ねじりばね47によって付勢されて保持位置から開放位置に移動する。このため、培養容器100の交換時等に、作業者が蓋部材50を回動させて開放位置に移動させる手間を省くことができる。
【0062】
また、本発明では、ねじりばね65によって、回動部材62が解除姿勢から係止姿勢に変化する向きに付勢されているので、ばね80及び押え板70による培養容器100の押圧が解除されることを抑制できる。
【0063】
また、蓋部材50が保持位置に位置しているとき、培養容器100が必ずしも載置面43に載置されているとは限らない。例えば、不要細胞除去装置1の立上げ時等に、培養容器100がホルダ10に保持されていない状態でステージ3が動かされることも想定される。培養容器100が載置面43に載置されていない場合、押え板70が押し返されないため、ばね80が圧縮されない。このため、保持位置に位置している蓋部材50には、ばね80による上方への付勢力が作用せず、係止部60による蓋部材50の係止が緩くなるおそれがある。このような状態では、ステージ3の加減速等のはずみにより、係止部60の回動部材62が解除姿勢になりやすいおそれがある。さらに、蓋部材50がねじりばね47によって付勢されている構成では、回動部材62が解除姿勢になると、蓋部材50が保持位置から開放位置に移動して照明装置7に衝突する等のおそれがある。本実施形態では、回動部材62が解除姿勢から係止姿勢に変化する向きに付勢されているため、そのような不具合の発生を防止することもできる。
【0064】
次に、前記実施形態に変更を加えた変形例について説明する。但し、前記実施形態と同様の構成を有するものについては、同じ符号を付して適宜その説明を省略する。
【0065】
(1)前記実施形態において、蓋部材50と押え板70との間に介在するばね80の数は4つであるものとしたが、これには限られない。例えば、
図10(a)に示すように、ホルダ90において、ばね80の数が3つであっても良い。この構成においても、押え面71を中心線C1で2つの領域に分けたときに、いずれの領域にもばね80が配置されている。また、押え面71を中心線C2で2つの領域に分けたときにも、いずれの領域にもばね80が配置されている。これにより、押え板70を均等に付勢することができる。なお、ばね80の数は、5つ以上でも良い。また、ばね80は必ずしも等間隔で配置されていなくても良い。
【0066】
(2)前記までの実施形態において、ばね80として圧縮コイルばねを用いるものとしたが、これには限られない。例えば、ばね80として板ばね等を適用しても良い。或いは、例えば、
図10(b)に示すように、ホルダ91において、蓋部材50と押え板70との間に、ゴム等からなる平面視C字状の弾性部材80aが介在していても良い。この場合、付勢位置が押え板70の面内で連続している。このような構成も、本発明における「複数の付勢位置において押え板を下方へ付勢する」構成に含まれる。
【0067】
(3)前記までの実施形態において、蓋部材50を回動可能に支持する回動軸45の軸心が、蓋部材50が保持位置に位置しているときの押え面71よりも上方に配置されているものとしたが、これには限られない。回動軸45の軸心が低い位置にある場合でも、作業者が培養容器100を押さえながら蓋部材50を慎重に回動させることで、蓋部材50を開放位置から保持位置に移動させる際に、培養容器100が傾くことを防ぐことは可能である。
【0068】
(4)前記までの実施形態において、押え板70に切欠76が形成されているものとしたが、これには限られない。押え板70に切欠76が形成されていない場合でも、前記(3)の変形例と同様に、作業者が培養容器100を押さえながら蓋部材50を慎重に回動させることで、培養容器100が傾くことを防ぐことは可能である。
【0069】
(5)前記までの実施形態において、蓋部材50は、回動軸45に取り付けられたねじりばね47によって、保持位置から開放位置に移動する向きに付勢されているものとしたが、これには限られない。すなわち、回動軸45にねじりばね47が取り付けられていなくても良い。この場合、培養容器100の交換時において、作業性は若干低下するが、作業者が、係止部60の回動部材62を解除姿勢にした状態で蓋部材50を回動させ、蓋部材50を保持位置から開放位置に移動させれば良い。
【0070】
(6)前記までの実施形態において、蓋部材50が回動軸45を回動中心として回動可能であるものとしたが、これには限られない。例えば、
図11(a)、(b)に示すホルダ92のように、載置部材40aの左右両端部に係止部60がそれぞれ逆向きに取り付けられており、且つ、蓋部材50aの左右両端部に突出部53が設けられていても良い。この構成では、蓋部材50aがホルダ92に対して着脱可能となっている。また、
図11(a)に示すように、押え板70aに形成された通過孔72aが円形であり、培養容器100に接触する縁部73aが切り欠かれていなくても良い。以上の構成を有するホルダ92においては、蓋部材50aを上方から装着することが可能となっている(
図11(b)の二点鎖線参照)。すなわち、蓋部材50aを保持位置に移動させる際には、2つの係止部60の回動部材62をそれぞれ回動させて解除姿勢にし、押え板70aによって培養容器100を押さえる。その後、2つの回動部材62を係止姿勢にすることで、蓋部材50aを保持位置に位置させ、押え面71aで培養容器100を押さえることができる。このような構成では、蓋部材50aの構造を単純化することができる。なお、係止部60は載置部材40aの左右両端部に設けられているものとしたが、これには限られない。すなわち、係止部60は、さらに、前後両端部にも設けられていても良い。これにより、蓋部材50aをより安定的に係止させることができる。
【0071】
(7)前記までの実施形態において、ホルダ10等は、円筒状の培養容器100を保持可能であるものとしたが、これには限られない。以下、
図12及び
図13を用いて説明する。
図12は、培養容器200の斜視図である。
図13(a)は、培養容器200を保持するホルダ93の平面図である。
図13(b)は、ばね80による押え板70bの付勢位置を示す図である。
【0072】
図12に示すように、培養容器200は、例えば、ウェルプレートと呼ばれる直方体状の容器である。培養容器200の上端面201には、複数の窪み202が形成されている。窪み202の内側に培養液及び細胞(図示省略)が入れられる。培養容器200の上端部は、不図示の蓋で覆われていても良い。
【0073】
培養容器200を保持可能なホルダ93は、例えば前記(6)の変形例と同様に、載置部材40bの左右両端部に係止部60が設けられており、蓋部材50bの左右両端部が係止される構成(
図13(a)参照)でも良い。或いは、蓋部材50bが回動可能であっても良い。
図13(a)に示すように、蓋部材50bには、複数の窪み202に対応して、複数の通過孔51bが形成されている。同様に、押え板70bにも、複数の窪み202の位置に対応する複数の通過孔72bが形成されている。なお、押え板70bは、培養容器200の上端面201(
図12参照)を通過孔72bの縁部73bのみによって押さえるのではなく、押え面71bのほぼ全体によって、上端面201を押さえることが可能となっている。つまり、
図13(b)に示すように、押え板70bの四隅だけではなく、押え面71bの内側部分にもばね80を配置することが可能である。この変形例においても、押え面71bを中心線C1によって2つの領域に分けたときに、両方の領域にばね80が配置されている。同様に、押え面71bを中心線C2によって2つの領域に分けたときにも、両方の領域にばね80が配置されている。これにより、押え板70bを面内で均等に付勢できる。
【0074】
(8)前記までの実施形態において、係止部60の回動部材62がねじりばね65によって付勢されるものとしたが、これには限られない。例えば、係止部60は、コイルばね(不図示)等のロック付勢部材によって左右方向に付勢されるロック部材(不図示)を有しており、ロック部材によって蓋部材50等を保持位置で係止しても良い。或いは、ロック部材は、必ずしも解除姿勢から係止姿勢に変化する向きに付勢されていなくても良い。
【0075】
(9)前記までの実施形態において、ホルダ10等は、不要細胞除去装置1に適用されるものとしたが、これには限られない。すなわち、本発明は、ステージを移動させるステージ移動装置を備える様々な顕微鏡に適用可能である。また、載置部材40、蓋部材50、押え板70には、それぞれ通過孔41、51、72が形成されているものとしたが、これには限られない。例えば、上方から照明光を照射して上方から観察対象物を観察するように構成された顕微鏡においては、載置部材40に通過孔が形成されていなくても良い。また、下方から照明光を照射して下方から観察対象物を観察するように構成された顕微鏡においては、蓋部材50及び押え板70に通過孔が形成されていなくても良い。また、観察用容器として、細胞を培養する培養容器100等以外の容器を用いても良い。