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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2019-128897(P2019-128897A)
(43)【公開日】2019年8月1日
(54)【発明の名称】紙葉類処理装置
(51)【国際特許分類】
   G07D 9/00 20060101AFI20190708BHJP
【FI】
   G07D9/00 416C
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2018-11782(P2018-11782)
(22)【出願日】2018年1月26日
(71)【出願人】
【識別番号】500265501
【氏名又は名称】ローレル精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(72)【発明者】
【氏名】吉田 慎平
(72)【発明者】
【氏名】品川 幹憲
(72)【発明者】
【氏名】下野 元喜
(72)【発明者】
【氏名】杉山 裕治
【テーマコード(参考)】
3E040
【Fターム(参考)】
3E040AA01
3E040BA06
3E040FA03
3E040FA06
3E040FB03
3E040FC05
3E040FG03
(57)【要約】
【課題】処理時間の短縮が可能な紙葉類処理装置を提供する。
【解決手段】装置外から紙葉類が投入される投入部11と、投入部11から繰り出された紙葉類を一方向に通しつつ識別する識別部17と、識別部17で受け入れ可能と識別された紙葉類を一時貯留する一時貯留部18と、識別部17で受け入れ不可と識別された紙葉類を装置外に取り出し可能に払い出す払出部12と、一時貯留部18から繰り出され識別部17を逆方向に通過しつつ識別部17で識別された紙葉類を収納する収納部43とを有し、一時貯留部18から繰り出され識別部17を前記逆方向に通過しつつ該識別部17で識別された紙葉類を投入部11に搬送可能である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
装置外から紙葉類が投入されるとともに投入された紙葉類を装置内に繰り出す投入部と、
前記投入部から繰り出された紙葉類を一方向に通しつつ識別する識別部と、
前記投入部から繰り出され前記識別部で受け入れ可能と識別された紙葉類を一時貯留するとともに一時貯留した紙葉類を繰り出す一時貯留部と、
前記投入部から繰り出され前記識別部で受け入れ不可と識別された紙葉類を装置外に取り出し可能に払い出す払出部と、
前記一時貯留部から繰り出され前記識別部を逆方向に通過しつつ該識別部で識別された紙葉類を収納する収納部とを有する紙葉類処理装置であって、
前記一時貯留部から繰り出され前記識別部を前記逆方向に通過しつつ該識別部で識別された紙葉類を前記投入部に搬送可能であることを特徴とする紙葉類処理装置。
【請求項2】
識別調整用の紙葉類を、前記識別部に前記一方向に通しつつ該識別部で識別を行うとともに前記逆方向に通しつつ該識別部で識別を行う識別調整処理時に、
前記投入部に投入され該投入部から繰り出された識別調整用の紙葉類を前記識別部に前記一方向に通しつつ該識別部で識別を行った後に前記一時貯留部に搬送し、当該識別調整用の紙葉類を前記一時貯留部から繰り出し前記識別部に前記逆方向に通しつつ該識別部で識別を行った後に前記投入部に戻すことを特徴とする請求項1記載の紙葉類処理装置。
【請求項3】
前記収納部の紙葉類を、該収納部から繰り出して前記一時貯留部に一時貯留し、その後、該一時貯留部の紙葉類を、該一時貯留部から繰り出し前記識別部に前記逆方向に通しつつ該識別部で識別を行った後に、収納部に収納する自己精査処理時に、
前記一時貯留部から繰り出され前記識別部を前記逆方向に通過する際に該識別部で異常と識別された紙葉類を、前記投入部に搬送し、その後、該投入部から繰り出して前記一時貯留部に戻し、該一時貯留部から繰り出し前記識別部に前記逆方向に通しつつ該識別部で識別することを特徴とする請求項1または2記載の紙葉類処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙葉類処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
入金部にセットされた紙幣を装置内へ取り込み、識別部によって識別された紙幣を一時保留部に一時的に保留させて、各種処理が終了した後に紙幣を一時保留部から収納部等に搬送して収納するとともに、収納部に収納された紙幣を繰り出し、出金部へ搬送して機外へ取り出し可能に集積する紙幣処理装置が知られている。このような装置の中には、入金部と出金部とをそれぞれ専用に有するものがある。すなわち、装置内へ紙幣を取り込む投入口と、機外へ紙幣を排出する払出口とは、紙幣の搬送方向が異なる上、搬送路のレイアウトの都合により、別々の位置に配置される。このような理由から、専用の投入口および専用の払出口となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017−27198号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
紙葉類処理装置において、処理時間の短縮が求められている。
【0005】
したがって、本発明は、処理時間の短縮が可能な紙葉類処理装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明に係る第1の態様は、装置外から紙葉類が投入されるとともに投入された紙葉類を装置内に繰り出す投入部と、前記投入部から繰り出された紙葉類を一方向に通しつつ識別する識別部と、前記投入部から繰り出され前記識別部で受け入れ可能と識別された紙葉類を一時貯留するとともに一時貯留した紙葉類を繰り出す一時貯留部と、前記投入部から繰り出され前記識別部で受け入れ不可と識別された紙葉類を装置外に取り出し可能に払い出す払出部と、前記一時貯留部から繰り出され前記識別部を逆方向に通過しつつ該識別部で識別された紙葉類を収納する収納部とを有する紙葉類処理装置であって、前記一時貯留部から繰り出され前記識別部を前記逆方向に通過しつつ該識別部で識別された紙葉類を前記投入部に搬送可能であることを特徴とする。
【0007】
上記第1の態様によれば、装置外から投入された紙葉類を、投入部から装置内に繰り出し、識別部で一方向に通しながら識別して、受け入れ可能と識別された紙葉類を一時貯留部に一時貯留させる一方、受け入れ不可と識別された紙葉類を払出部に搬送して、装置外に取り出し可能とする。そして、一時貯留部に一時貯留した紙葉類を、識別部で逆方向に通しながら識別し、その結果に基づいて収納部に収納する。他方で、一時貯留部に一時貯留した紙葉類を、識別部で逆方向に通しながら識別した後、投入部に搬送することができる。よって、例えば、識別部の一方向および逆方向の両方向で紙葉類を搬送しつつ識別する場合に、投入部と識別部と一時貯留部とを結ぶルートで紙葉類を往復搬送することが可能となる。したがって、処理時間の短縮が可能になる。また、例えば、一時貯留部に一時貯留した紙葉類を、識別部で逆方向に通しながら識別し、その結果に基づいて収納部に収納する際に、識別部で異常と識別された紙葉類を、投入部に搬送し、その後、投入部から繰り出して一時貯留部に搬送した後、一時貯留部から繰り出し、識別部で逆方向に通しながら再識別し、その結果に基づいて収納部に収納することができる。よって、識別部で異常と識別された紙葉類の再識別のための人手による投入部への投入作業をなくすことが可能になる。したがって、処理時間の短縮が可能になり、手間の抑制が可能となる。
【0008】
本発明に係る第2の態様は、第1の態様において、識別調整用の紙葉類を、前記識別部に前記一方向に通しつつ該識別部で識別を行うとともに前記逆方向に通しつつ該識別部で識別を行う識別調整処理時に、前記投入部に投入され該投入部から繰り出された識別調整用の紙葉類を前記識別部に前記一方向に通しつつ該識別部で識別を行った後に前記一時貯留部に搬送し、当該識別調整用の紙葉類を前記一時貯留部から繰り出し前記識別部に前記逆方向に通しつつ該識別部で識別を行った後に前記投入部に戻すことを特徴とする。
【0009】
上記第2の態様によれば、識別調整用の紙葉類を、識別部に一方向に通しつつ識別部で識別を行うとともに逆方向に通しつつ識別部で識別を行う識別調整処理時に、投入部に投入され投入部から繰り出された識別調整用の紙葉類を識別部に一方向に通しつつ識別部で識別を行った後に一時貯留部に搬送し、当該識別調整用の紙葉類を一時貯留部から繰り出し識別部に逆方向に通しつつ識別部で識別を行った後に投入部に戻すことになる。よって、投入部と識別部と一時貯留部とを結ぶルートで識別調整用の紙葉類を往復搬送することが可能となる。したがって、識別調整処理の処理時間の短縮が可能になる。
【0010】
本発明に係る第3の態様は、第1または第2の態様において、前記収納部の紙葉類を、該収納部から繰り出して前記一時貯留部に一時貯留し、その後、該一時貯留部の紙葉類を、該一時貯留部から繰り出し前記識別部に前記逆方向に通しつつ該識別部で識別を行った後に、収納部に収納する自己精査処理時に、前記一時貯留部から繰り出され前記識別部を前記逆方向に通過する際に該識別部で異常と識別された紙葉類を、前記投入部に搬送し、その後、該投入部から繰り出して前記一時貯留部に戻し、該一時貯留部から繰り出し前記識別部に前記逆方向に通しつつ該識別部で識別することを特徴とする。
【0011】
上記第3の態様によれば、収納部の紙葉類を、収納部から繰り出して一時貯留部に一時貯留し、その後、一時貯留部の紙葉類を、一時貯留部から繰り出し識別部に逆方向に通しつつ該識別部で識別を行った後に、収納部に収納する自己精査処理時に、一時貯留部から繰り出され識別部を逆方向に通る際に該識別部で異常と識別された紙葉類を、投入部に搬送し、その後、投入部から繰り出して一時貯留部に搬送した後、一時貯留部から繰り出し、識別部で逆方向に通しながら再識別し、その結果に基づいて収納部に収納することができる。よって、識別部で異常と識別された紙葉類の再識別のための人手による投入部への投入作業をなくすことが可能になる。したがって、自己精査処理の処理時間の短縮が可能になり、手間の抑制が可能となる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、処理時間の短縮が可能な紙葉類処理装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明に係る一実施形態の紙葉類処理装置を概略的に示す側面図である。
図2】本発明に係る一実施形態の紙葉類処理装置を概略的に示す側面図であって、(a)は入金処理ルート、整理計数処理の前段ルートおよび入金口補充処理の前段ルートを太線で示し、(b)は収納処理ルート、異常紙幣収納ルート、出金退避処理の後段ルート、入金口補充処理の後段ルートおよびカセット補充処理の後段ルートを太線で示すものである。
図3】本発明に係る一実施形態の紙葉類処理装置を概略的に示す側面図であって、返却処理ルートおよび整理計数処理の後段ルートを太線で示すものである。
図4】本発明に係る一実施形態の紙葉類処理装置を概略的に示す側面図であって、出金処理ルートおよび出金退避処理の前段ルートを太線で示すものである。
図5】本発明に係る一実施形態の紙葉類処理装置を概略的に示す側面図であって、(a)は自己精査処理の往路ルートおよび回収処理の前段ルートを太線で示し、(b)は自己精査処理の復路ルートを太線で示すものである。
図6】本発明に係る一実施形態の紙葉類処理装置を概略的に示す側面図であって、(a)は自己精査リトライ処理の前段ルートを太線で示し、(b)は自己精査リトライ処理の後段ルートを太線で示すものである。
図7】本発明に係る一実施形態の紙葉類処理装置を概略的に示す側面図であって、カセット補充処理の前段ルートを太線で示すものである。
図8】本発明に係る一実施形態の紙葉類処理装置を概略的に示す側面図であって、回収処理の後段ルートを太線で示すものである。
図9】本発明に係る一実施形態の紙葉類処理装置を概略的に示す側面図であって、(a)は識別調整処理の往路ルートを太線で示し、(b)は識別調整処理の復路ルートを太線で示すものである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明に係る一実施形態の紙葉類処理装置を図面を参照して以下に説明する。本実施形態に係る紙葉類処理装置10は、紙葉類としての紙幣を処理するものである。勿論、紙幣以外の紙葉類を処理するものであっても良い。紙葉類処理装置10は、外部から投入された紙幣を内部に収納する入金処理と、内部に収納されている紙幣を外部に取り出し可能に出金する出金処理とが可能な紙幣入出金装置である。なお、以下の説明における「前」は操作者側を示し、「後」は操作者とは反対側を示す。
【0015】
図1に示すように、紙葉類処理装置10の前面側の上部には、入金用の紙幣が装置外から投入される投入部11が設けられており、この投入部11の後方に、入金用の紙幣のうち受け入れ不可な入金リジェクト紙幣が内部から繰り出されるとともに出金用の紙幣が内部から繰り出され、これらを外部に取り出し可能とする払出部12が設けられている。紙葉類処理装置10の上面の払出部12の後方には、操作者の操作入力を受け付けるとともに操作者に対し表示を行うタッチパネル式の操作表示部14が設けられている。投入部11には、これを開閉するシャッタ13が設けられている。
【0016】
投入部11の後方には、紙幣を識別する識別部17が設けられており、この識別部17の後方には、識別部17により識別された紙幣を一時貯留させる一時貯留部18が設けられている。
【0017】
投入部11には、載置板19が後下がりの姿勢で設けられており、この載置板19は、投入部11内で後上がりの方向に上昇し前下がりの方向に下降する。シャッタ13が開かれた状態で、下降状態にある載置板19上に集積状態の紙幣が外部から載置されることになり、その際に、載置板19上に載置された紙幣は後上がりの方向に集積された状態となる。載置板19は上昇して集積状態の紙幣を後上がりの方向に搬送し、投入部11は、装置外から投入される等した集積状態の紙幣を集積方向の上端のものから一枚ずつ装置内に繰り出す。紙幣は左右に横長の状態で投入部11に投入される。
【0018】
投入部11には、その後端部に、投入部11から繰り出された紙幣を搬送する入金搬送路21が接続されている。入金搬送路21は、投入部11から後下がりに延出する傾斜送路部22と、傾斜送路部22の後端から水平後方に延出する水平送路部23とを有している。入金搬送路21は、水平送路部23の後端部において識別部17に接続されている。入金搬送路21は、その傾斜送路部22および水平送路部23の両方が紙幣を往復搬送可能となっている。言い換えれば、入金搬送路21は、その全搬送長さにおいて紙幣を往復搬送可能となっている。
【0019】
識別部17は、入金搬送路21の水平送路部23と同一直線上に配置されて水平送路部23の後端部から水平後方に延出する内部搬送路25を有している。内部搬送路25は、水平送路部23から引き続き後方に紙幣を搬送する。内部搬送路25は、その全搬送長さにおいて紙幣を往復搬送可能となっている。識別部17は、紙幣を内部搬送路25において前から後への第1方向(一方向)での搬送中と、内部搬送路25において後から前への第2方向(逆方向)での搬送中の両方において、紙幣を識別可能となっている。すなわち、識別部17は、第1方向とこれとは逆の第2方向との双方向の搬送で紙幣を識別可能となっている。識別部17は、内部搬送路25で搬送中の紙幣の真偽、正損および金種と、重送、斜行等の搬送異常の有無とを識別する。
【0020】
識別部17の内部搬送路25の後端部からは水平後方に直線搬送路26が延出しており、この直線搬送路26の後端部が一時貯留部18に接続されている。直線搬送路26は、内部搬送路25から引き続き後方に紙幣を搬送する。直線搬送路26は、その全搬送長さにおいて紙幣を往復搬送可能となっている。入金搬送路21の水平送路部23と内部搬送路25と直線搬送路26とは同一直線上で一直線に並んでおり、識別部17と一時貯留部18とが一直線の直線搬送路26で接続されている。例えば、投入部11に投入された紙幣が、投入部11から繰り出され、入金搬送路21で識別部17に向けて搬送され、内部搬送路25の第1方向での搬送中に識別部17で識別され、その後、直線搬送路26で一時貯留部18に搬送されて貯留される。すなわち、識別部17は、投入部11から繰り出された紙幣を第1方向に通しつつ識別する。
【0021】
上記したように、投入部11と一時貯留部18とを結ぶ入金搬送路21、内部搬送路25および直線搬送路26が、いずれも紙幣を往復搬送可能となっている。このため、投入部11から繰り出され識別部17を第1方向に通過しつつ識別部17で識別された紙幣を一時貯留部18に搬送可能であり、これに加えて、一時貯留部18から繰り出され識別部17を第2方向に通過しつつ識別部17で識別された紙幣を投入部11に搬送可能となっている。
【0022】
一時貯留部18は、紙幣を繰り出し可能に一時貯留するもので、直線搬送路26で搬送されてきた紙幣を一枚ずつ順に取り込んで収納し、収納している紙幣を一枚ずつ順に直線搬送路26に繰り出す。この一時貯留部18は、紙幣を間隔をあけてテープとともにドラムに順に巻き付けて収納し紙幣をテープとともにドラムから解いて繰り出す巻付収納タイプとなっている。巻付収納タイプの一時貯留部18は、紙幣を受け入れた順番に収納し、収納順とは逆の順番で繰り出すことになる。例えば、一時貯留部18は、投入部11から繰り出され、識別部17で第1方向への搬送中に受け入れ可能と識別された紙幣を一時貯留させるとともに、このように一時貯留させている紙幣を繰り出す。
【0023】
直線搬送路26の中間位置からは出金搬送路27が上方に分岐しており、この出金搬送路27が払出部12に接続されている。直線搬送路26における出金搬送路27の分岐位置と内部搬送路25との間位置からは中間搬送路28が上方に分岐しており、中間搬送路28は出金搬送路27の中間位置に合流している。出金搬送路27および中間搬送路28が分岐することによって、直線搬送路26は、中間搬送路28の分岐位置から前側の前側送路部31と、中間搬送路28の分岐位置と出金搬送路27の分岐位置との間の中間送路部32と、出金搬送路27の分岐位置から後側の後側送路部33とに分けられる。直線搬送路26と中間搬送路28との間は、中間送路部32から中間搬送路28への紙幣の搬送が可能であり、直線搬送路26と出金搬送路27との間は、中間送路部32から出金搬送路27への紙幣の搬送が可能である。中間搬送路28は、その全搬送長さにおいて紙幣を、直線搬送路26から出金搬送路27に向かう方向のみに搬送可能となっている。出金搬送路27は、その全搬送長さにおいて紙幣を、払出部12に向かう方向のみに搬送可能となっている。
【0024】
出金搬送路27は、直線搬送路26の前側送路部31および中間送路部32で搬送されてきた紙幣を払出部12に搬送するもので、直線搬送路26の中間送路部32と後側送路部33との間から半円状をなして上側に延出する上方送路部35と、上方送路部35の上端部から前方に前上がりに直線状に延出する前上送路部36と、前上送路部36の前端部から前方に前下がりに若干延出して払出部12に繋がる前下送路部37とを有している。
【0025】
ここで、払出部12は、出金搬送路27の前下送路部37から繰り出された紙幣を前側かつ下側から後側かつ上側に斜めに集積させる。払出部12に集積された紙幣は、払出部12から外部に取り出される。出金搬送路27は、例えば、投入部11から繰り出され、識別部17で第1方向への搬送中に受け入れ不可と識別された紙幣を直線搬送路26の中間送路部32と後側送路部33との間から上方に分岐搬送して払出部12に放出する。払出部12は、放出された紙幣を装置外に取り出し可能に払い出す。中間搬送路28は、例えば、一時貯留部18から直線搬送路26に繰り出された紙幣を中間送路部32と前側送路部31との間から上方に分岐搬送して出金搬送路27に搬送する。一時貯留部18から後側送路部33、中間送路部32および中間搬送路28を介して出金搬送路27に搬送された紙幣を、出金搬送路27が払出部12に搬送し放出する。
【0026】
投入部11、払出部12、操作表示部14、内部搬送路25を含む識別部17、一時貯留部18、入金搬送路21、直線搬送路26、出金搬送路27および中間搬送路28は、紙葉類処理装置10の上部を構成する上部ユニット40に設けられている。
【0027】
上部ユニット40の下側にあって紙葉類処理装置10の高さ方向の中間部から下部を構成する下部ユニット41には、前部位置に前方カセット42が設けられており、前方カセット42の後方に、上下2段、前後4列の合計8台の収納部43が設けられている。
【0028】
入金搬送路21の水平送路部23の中間位置からは、上下搬送路46が下方に分岐しており、この上下搬送路46が、水平送路部23から下方に延出して前方カセット42に接続されている。上下搬送路46が分岐することによって、入金搬送路21の水平送路部23は、上下搬送路46の分岐位置から前側の前側構成部48と、上下搬送路46の分岐位置から後側の後側構成部49とに分けられる。前側構成部48と後側構成部49との間は、紙幣の行き来が可能であり、上下搬送路46と後側構成部49との間も紙幣の行き来が可能である。上下搬送路46は、その全搬送長さにおいて紙幣を往復搬送可能となっている。上下搬送路46は、例えば、一時貯留部18から直線搬送路26に繰り出され、内部搬送路25で第2方向に搬送されて識別部17を通過後の紙幣を、識別部17の直線搬送路26とは反対側の入金搬送路21の途中から下方に分岐搬送して前方カセット42に収納させる。
【0029】
前方カセット42は、紙幣を一枚ずつ順に取り込んで収納可能であり、収納している紙幣を一枚ずつ順に繰り出し可能となっている。前方カセット42は、紙幣を上部から受け入れて水平状態で下から上に集積させて収納するとともに収納している紙幣を上端部のものから繰り出す集積収納タイプとなっている。集積収納タイプの前方カセット42は、一時貯留部18および後述する収納部43のような巻付収納タイプに比べて紙幣の収納効率が大幅に高い。
【0030】
上下搬送路46の中間位置からは、収納搬送路51が後方に分岐している。この収納搬送路51は、上下搬送路46から水平後方に延出した後、紙葉類処理装置10の後端部付近で下方に延出して最後列の上段の収納部43に接続されており、この収納部43を介して最後列の下段の収納部43にも接続されている。収納搬送路51が分岐することによって、上下搬送路46は、収納搬送路51の分岐位置から上側の上側送路部55と、収納搬送路51の分岐位置から下側の下側送路部56とに分けられる。収納搬送路51は、その全搬送長さにおいて紙幣を往復搬送可能となっている。
【0031】
収納搬送路51の中間位置からは、複数具体的には3カ所の分岐搬送路72,73,74が下方に分岐している。分岐搬送路72は、最前列の上段の収納部43に接続されており、この収納部43を介して、最前列の下段の収納部43に接続されている。分岐搬送路73は、前から2列目の上段の収納部43に接続されており、この収納部43を介して、前から2列目の下段の収納部43に接続されている。分岐搬送路74は、前から3列目の上段の収納部43に接続されており、この収納部43を介して、前から3列目の下段の収納部43に接続されている。分岐搬送路72,73,74は、それぞれの全搬送長さにおいて紙幣を往復搬送可能となっている。
【0032】
8台の収納部43は、いずれも、紙幣を繰り出し可能に収納するもので、紙幣を一枚ずつ順に取り込んで収納し、収納している紙幣を一枚ずつ順に繰り出す。8台の収納部43は、いずれも、紙幣を間隔をあけてテープとともにドラムに順に巻き付けて収納し紙幣をテープとともにドラムから解いて繰り出す巻付収納タイプとなっており、紙幣を計数しながら繰り出す。巻付収納タイプの収納部43は、紙幣を受け入れた順番に収納し、収納順とは逆の順番で繰り出すことになる。このため、1台に複数金種の紙幣をランダムに混合して収納する場合であっても、識別部17の識別結果から収納する各紙幣の金種を把握可能となっており、よって、繰り出す各紙幣の金種を把握可能となっている。
【0033】
収納搬送路51および分岐搬送路72,73,74は、例えば、一時貯留部18から直線搬送路26に繰り出され、内部搬送路25で第2方向に搬送されて識別部17を通過しつつ識別部17で識別された紙幣を、上下搬送路46の途中から後方に分岐搬送して8台の収納部43に選択的に収納させる。8台の収納部43は、例えば、8台全部を、それぞれが設定された単一金種の紙幣のみを収納する単金種収納部に設定したり、8台のうちの何台かを、それぞれが設定された単一金種の紙幣のみを収納する単金種収納部に設定し、残りを、それぞれ複数金種の紙幣を金種混合で収納する金種混合収納部に設定したりすることができる。ここでは、8台の収納部43のうち、少なくとも1台が金種混合収納部に設定され、1台が損券収納用の損券収納部に設定され、残りが単金種収納部に設定されている。
【0034】
下部ユニット41には、前方カセット42と、8台の収納部43と、上下搬送路46の上側送路部55の下部と、下側送路部56と、収納搬送路51と、分岐搬送路72〜74とが設けられている。上下搬送路46の上側送路部55の上部は上部ユニット40に設けられている。
【0035】
下部ユニット41は、前方に開口する直方体の箱状の筐体75と、8台の収納部43が設けられて筐体75内に配置されるユニット本体76と、筐体75の前部開口を開閉する蓋体77とを有している。前方カセット42は、ユニット本体76に対し前方に引き出し可能であって着脱可能に設けられている。
【0036】
次に、本実施形態に係る紙葉類処理装置10の主な作動について説明する。
【0037】
「入金処理」
操作表示部14に入金処理開始の操作が入力されると、シャッタ13を開き、この状態で投入部11に外部から紙幣が投入されたことを図示略のセンサが検知すると、シャッタ13を閉じた後、図2(a)に太線で示す入金処理ルートで紙幣を搬送する。つまり、投入部11が紙幣を一枚ずつ分離して繰り出し、繰り出された紙幣を、入金搬送路21、識別部17の内部搬送路25、直線搬送路26の前側送路部31および中間送路部32が搬送する。このときの内部搬送路25の第1方向での搬送中に、識別部17が紙幣を一枚ずつ識別することになり、識別部17が受け入れ可能と識別した紙幣を、直線搬送路26の中間送路部32から後側送路部33が一時貯留部18に搬送し、一時貯留部18が一時貯留させる(図2(a)の太実線参照)。他方、識別部17が受け入れ不可と識別した紙幣は、直線搬送路26の中間送路部32から出金搬送路27が払出部12に搬送する(図2(a)の太実線から太破線参照)。
【0038】
ここで、投入部11は厚さ方向に集積された状態の紙幣を分離して繰り出すものであるため、繰り出し時に、重送、斜行等の搬送異常を生じる可能性がある。このような搬送異常紙幣も、このときの内部搬送路25の第1方向での搬送中に識別部17が受け入れ不可と識別して払出部12に搬送させる。投入部11に投入された紙幣をすべて、一時貯留部18および払出部12のいずれかに搬送した状態になると、識別部17の識別結果から一時貯留部18に一時貯留させている紙幣の金種別の枚数および総額等の金額情報を操作表示部14が表示する。払出部12に搬送された紙幣は、外部に取り出し可能となる。
【0039】
「収納処理」
入金処理後の金額情報の操作表示部14の表示後、操作者が操作表示部14に承認操作を入力すると、図2(b)に太線で示す収納処理ルートで紙幣を搬送する。つまり、一時貯留させていた紙幣を一時貯留部18が一枚ずつ繰り出し、直線搬送路26、識別部17の内部搬送路25、入金搬送路21の後側構成部49、上下搬送路46の上側送路部55および収納搬送路51が搬送する。このときの内部搬送路25の第2方向での搬送中に、識別部17が紙幣を一枚ずつ識別することになり、その結果に基づいて、収納搬送路51および分岐搬送路72〜74の適宜のものが8台の収納部43の対応するものに紙幣を振り分ける。振り分けられた紙幣を8台の収納部43の対応するものが収納する。このとき、識別部17で、正常紙幣であり損券と識別された紙幣については、これを損券収納部に設定された収納部43に収納する。ここで、一時貯留部18は巻付収納タイプであるため、繰り出し時に、斜行等の搬送異常を生じにくいが、識別部17で搬送異常を検出した場合、および、識別部17で識別異常を生じた場合、これらの異常紙幣を、損券収納部に設定された収納部43に収納することになる。
【0040】
「返却処理」
入金処理後の金額情報の操作表示部14の表示後、操作者が操作表示部14に返却操作を入力すると、図3に太線で示す返却処理ルートで紙幣を搬送する。つまり、一時貯留させていた紙幣を、一時貯留部18が繰り出し、直線搬送路26の後側送路部33、中間送路部32、中間搬送路28および出金搬送路27で払出部12に搬送する。払出部12に搬送された紙幣は、外部に取り出し可能となる。
【0041】
「整理計数処理」
操作表示部14に金種の指定が入力され、その後、整理計数処理開始の操作が入力されると、シャッタ13を開く。この状態で投入部11に外部から紙幣が投入されたことをセンサが検出すると、シャッタ13を閉じた後、図2(a)に太線で示す入金処理ルートと同様の整理計数処理の前段ルートで紙幣を搬送する。つまり、投入部11が紙幣を一枚ずつ分離して繰り出し、繰り出された紙幣を、入金搬送路21、識別部17の内部搬送路25、直線搬送路26の前側送路部31および中間送路部32が搬送する。このときの内部搬送路25の第1方向での搬送中に、識別部17が紙幣を識別することになり、識別部17が指定金種と識別した紙幣を、直線搬送路26が一時貯留部18に搬送し、一時貯留部18が一時貯留させる(図2(a)の太実線参照)。他方、識別部17が指定金種以外と識別した紙幣(搬送異常紙幣を含む)は、直線搬送路26の前側送路部31および中間送路部32から出金搬送路27が払出部12に搬送する(図2(a)の太実線から太破線参照)。払出部12に搬送された紙幣は、外部に取り出し可能となる。
【0042】
投入部11に投入された紙幣をすべて、一時貯留部18および払出部12のいずれかに搬送した状態になると、払出部12の紙幣が取り出されたことを条件に、図3に太線で示す返却処理ルートと同様の整理計数処理の後段ルートで紙幣を搬送する。つまり、一時貯留させていた紙幣を一時貯留部18が繰り出し、直線搬送路26の後側送路部33、中間送路部32、中間搬送路28および出金搬送路27で払出部12に搬送する。前段ルートでの識別部17の識別結果に基づいて、払出部12に搬送した設定金種の紙幣の金種、枚数および総額等の金額情報を操作表示部14が表示する。払出部12に搬送された紙幣は、外部に取り出し可能となる。ここで、前段ルートで識別部17が指定金種と識別した紙幣のみを一時貯留部18に一時貯留しているため、後段ルートで一時貯留部18から払出部12に搬送された紙幣は、前段ルートでの識別部17の識別結果に対応するものとなり、後段ルートでは識別部17で識別しなくても済むことになる。
【0043】
「出金処理」
操作表示部14に、出金させる紙幣の金額情報とともに出金処理の選択操作が入力されると、単金種収納部に設定された収納部43から紙幣を出金する場合は、出金対象金種の紙幣が収納された収納部43から図4に太線で示す出金処理ルートで紙幣を搬送する。つまり、収納部43のうちの対応するものが、収納していた紙幣を計数しつつ繰り出し、繰り出された紙幣を、分岐搬送路72〜74の適宜のもの、収納搬送路51、上下搬送路46の上側送路部55、入金搬送路21の後側構成部49、識別部17の内部搬送路25、直線搬送路26の前側送路部31、中間送路部32および出金搬送路27が払出部12に搬送する(図4の太実線参照)。その際の識別部17の識別結果に基づいて出金させる紙幣の金額情報を確認する。払出部12に搬送された紙幣は、外部に取り出し可能となる。
【0044】
ここで、収納部43は、すべて巻付収納タイプであるため、繰り出し時に、斜行等の搬送異常を生じにくいが、識別部17で搬送異常が検出された紙幣、および、識別部17で識別異常を生じた異常紙幣については、直線搬送路26の前側送路部31、中間送路部32および後側送路部33が一時貯留部18に一時貯留させる(図4の太実線から太破線参照)。そして、出金処理の最後に、図2(b)に太線で示す収納処理ルートと同様の異常紙幣収納ルートで、一時貯留部18から異常紙幣を、損券収納部に設定された収納部43に収納する。
【0045】
「出金退避処理」
金種混合収納部に設定された収納部43から紙幣を出金する場合、紙幣を図4に太線で示す出金処理ルートと同様の出金退避処理の前段ルートで搬送する。その際に、金種混合収納部に設定された収納部43から繰り出された出金対象の紙幣を、分岐搬送路72〜74の対応するもの、収納搬送路51、上下搬送路46の上側送路部55、入金搬送路21の後側構成部49、識別部17の内部搬送路25、直線搬送路26の前側送路部31、中間送路部32および出金搬送路27が払出部12に搬送する。また、金種混合収納部に設定された収納部43から繰り出された出金対象以外の紙幣を、分岐搬送路72〜74の対応するもの、収納搬送路51、上下搬送路46の上側送路部55、入金搬送路21の後側構成部49、識別部17の内部搬送路25および直線搬送路26が一時貯留部18に搬送し、一時貯留部18が一時貯留させる。払出部12に搬送された紙幣は、外部に取り出し可能となる。
【0046】
出金対象の紙幣をすべて払出部12に搬送すると、次に、図2(b)に太線で示す収納処理ルートと同様の出金退避処理の後段ルートで紙幣を搬送する。つまり、一時貯留させていた出金対象以外の紙幣を、一時貯留部18が繰り出し、直線搬送路26、識別部17の内部搬送路25、入金搬送路21の後側構成部49、上下搬送路46の上側送路部55および収納搬送路51が搬送する。このときの内部搬送路25の第2方向での搬送中に、識別部17が紙幣を識別することになり、その結果に基づいて、収納搬送路51および分岐搬送路72〜74の適宜のものが、損券収納部に設定されたものを含む8台の収納部43の対応するものに紙幣を振り分ける。振り分けられた紙幣を8台の収納部43の対応するものが収納する。
【0047】
「自己精査処理」
操作表示部14に自己精査処理の選択操作が入力されると、まず、図5(a)に太線で示す自己精査処理の往路ルートで紙幣を搬送する。つまり、8台の収納部43のうち、損券収納部以外の収納部43を精査対象とする場合、精査対象の1台の収納部43が紙幣を繰り出し、繰り出された紙幣を、分岐搬送路72〜74の対応するもの、収納搬送路51、上下搬送路46の上側送路部55、入金搬送路21の後側構成部49、識別部17の内部搬送路25および直線搬送路26が一時貯留部18に搬送し、一時貯留部18が一時貯留させる。このときの内部搬送路25の第1方向での搬送中に、識別部17は紙幣を識別しない。このようにして、精査対象の1台の収納部43のすべての紙幣を、一時貯留部18に搬送する。
【0048】
次に、図5(b)に太線で示す自己精査処理の復路ルートで紙幣を搬送する。つまり、一時貯留させていた紙幣を、一時貯留部18が繰り出し、直線搬送路26、識別部17の内部搬送路25、入金搬送路21の後側構成部49、上下搬送路46の上側送路部55および収納搬送路51が搬送する。このときの内部搬送路25の第2方向での搬送中に、識別部17が紙幣を識別することになり、その結果に基づいて、収納搬送路51および分岐搬送路72〜74の適宜のものが8台の収納部43のうちの適宜の収納部43に紙幣を搬送し収納する(図5(b)の太実線参照)。ここで、自己精査処理の復路ルートにおいて、内部搬送路25の第2方向での搬送中に識別部17によって、識別異常あるいは搬送異常等の異常と識別された、金種および枚数が確定できない異常紙幣があると、この異常紙幣を、収納搬送路51および分岐搬送路72〜74の適宜のものが損券収納部に設定された収納部43に搬送し収納する。
【0049】
一時貯留部18に一時貯留されていた紙幣をすべて、8台の収納部43のいずれかに搬送した状態になると、このときの識別部17の識別結果から、精査対象の収納部43に収納された紙幣の枚数情報つまり金額情報を確定する。また、精査対象以外の収納部43についても、増加分を在高に加算する。
【0050】
以上により、自己精査処理は、収納部43の紙幣を、収納部43から繰り出して一時貯留部18に一時貯留し、その後、一時貯留部18の紙幣を、一時貯留部18から繰り出し識別部17に第2方向に通しつつ識別部17で識別を行った後に、収納部43に収納する処理となる。
【0051】
上記と同様の処理を、損券収納部に設定されたもの以外のすべての精査対象の収納部43のそれぞれに対して行い、すべての精査対象の収納部43の個々の金額情報を確定する。
【0052】
損券収納部に設定された収納部43を精査対象とする場合、操作表示部14に、この収納部43に対する自己精査処理の選択操作が入力されると、まず、損券収納部に設定された収納部43から、図5(a)に太線で示す自己精査処理の往路ルートで紙幣を搬送する。つまり、損券収納部に設定された収納部43が紙幣を繰り出し、繰り出された紙幣を、分岐搬送路72〜74の対応するもの、収納搬送路51、上下搬送路46の上側送路部55、入金搬送路21の後側構成部49、識別部17の内部搬送路25および直線搬送路26が一時貯留部18に搬送し、一時貯留部18が一時貯留させる。このときも、内部搬送路25の第1方向での搬送中に、識別部17は紙幣を識別しない。このようにして、精査対象である損券収納部に設定された収納部43のすべての紙幣を、一時貯留部18に搬送する。
【0053】
次に、図5(b)に太線で示す自己精査処理の復路ルートで紙幣を搬送する。つまり、一時貯留させていた紙幣を、一時貯留部18が繰り出し、直線搬送路26、識別部17の内部搬送路25が搬送する。このときの内部搬送路25の第2方向での搬送中に、識別部17が紙幣を識別することになり、その結果に基づいて、異常紙幣以外の正常紙幣については、入金搬送路21の後側構成部49、上下搬送路46の上側送路部55、収納搬送路51および分岐搬送路72〜74の適宜のものが8台の収納部43の1台に搬送し、この収納部43が収納する(図5(b)の太実線参照)。この場合、損券については、これを損券収納部に設定された収納部43に収納する。
【0054】
この損券収納部に設定された収納部43についての自己精査処理の復路ルートにおいて、内部搬送路25の第2方向での搬送中に識別部17によって、識別異常あるいは搬送異常等の異常と識別された異常紙幣があると、この異常紙幣を、入金搬送路21の水平送路部23および傾斜送路部22で、シャッタ13が閉じられた状態にある投入部11に搬送する(図5(b)の太実線から太破線参照)。
【0055】
一時貯留部18に一時貯留されていた紙幣をすべて、8台の収納部43および投入部11のいずれかに搬送した状態になると、識別部17によって異常と識別されて、シャッタ13が閉じられた状態の投入部11に搬送された異常紙幣がなければ、このときの識別部17の識別結果から、精査対象である損券収納部に設定された収納部43に収納された紙幣の枚数情報つまり金額情報を確定する。また、精査対象以外の収納部43についても、増加分を在高に加算する。
【0056】
「自己精査リトライ処理」
他方で、損券収納部に設定された収納部43についての自己精査処理の復路ルートにおいて、識別部17によって異常と識別されて、シャッタ13が閉じられた状態の投入部11に搬送された紙幣があれば、図6(a)に太線で示す自己精査リトライ処理の前段ルートで紙幣を搬送する。つまり、シャッタ13を閉じた状態のまま、投入部11が紙幣を一枚ずつ分離して繰り出し、繰り出された紙幣を、入金搬送路21、識別部17の内部搬送路25および直線搬送路26が一時貯留部18に搬送し、一時貯留部18に一時貯留させる。このときも、内部搬送路25の第1方向での搬送中に、識別部17が紙幣を識別することはない。
【0057】
次に、図6(b)に太線で示す自己精査リトライ処理の後段ルートで紙幣を搬送する。つまり、一時貯留させていた紙幣を、一時貯留部18が繰り出し、直線搬送路26、識別部17の内部搬送路25、入金搬送路21の後側構成部49、上下搬送路46の上側送路部55および収納搬送路51が搬送する。このときの内部搬送路25の第2方向での搬送中に、識別部17が紙幣を識別することになり、その結果に基づいて、収納搬送路51および分岐搬送路72〜74の適宜のものが、8台の収納部43のうちの適宜のものに紙幣を搬送し収納する。(図6(b)の太実線参照)。他方で、自己精査リトライ処理の後段ルートにおいて、内部搬送路25の第2方向での搬送中に識別部17によって、識別異常あるいは搬送異常等の異常と識別された異常紙幣があると、この異常紙幣を、損券収納部に設定された収納部43に収納する。これにより、自己精査処理時に一旦は異常紙幣と識別されて、損券収納部に設定された収納部43に収納された紙幣を、再度識別し、正常紙幣(損券を含む)と識別されれば、対応する収納部43に収納する。
【0058】
一時貯留部18に一時貯留されていた紙幣をすべて、8台の収納部43のいずれかに搬送した状態になると、このときの識別部17の識別結果から、精査対象である損券収納部に設定された収納部43に収納された正常紙幣である損券の枚数情報つまり金額情報を確定する。また、精査対象以外の収納部43についても、増加分を在高に加算する。
【0059】
なお、自己精査リトライ処理の後段ルートにおいて、内部搬送路25の第2方向での搬送中に識別部17によって異常と識別された異常紙幣があると、この異常紙幣を、損券収納部に設定された収納部43に収納するのではなく、再度、投入部11に搬送し、自己精査リトライ処理をもう一度行うようにしても良い。自己精査リトライ処理を所定の複数回行っても、異常と識別された異常紙幣があると、この異常紙幣を、損券収納部に設定された収納部43に収納する。
【0060】
以上により、損券収納部に設定された収納部43についての自己精査処理時に、一時貯留部18から繰り出され識別部17を第2方向に通る際に識別部17で識別異常あるいは搬送異常等の異常と識別された異常紙幣を、投入部11に搬送し、その後、自己精査リトライ処理の前段ルートで、投入部11から繰り出し、識別部17に第1方向に通しつつ一時貯留部18に戻す。そして、自己精査処理の復路ルートと同様の自己精査リトライ処理の後段ルートで、一時貯留部18の紙幣を、一時貯留部18から繰り出し識別部17に第2方向に通しつつ識別部17で識別を行った後に、その結果に基づいて収納部43に収納する。
【0061】
なお、損券収納部に設定された収納部43を精査対象とする場合、上記の自己精査リトライ処理を行っても収納部43に異常紙幣が残ると、損券収納部に設定された収納部43の全在高を確定できない。このため、損券収納部に設定された収納部43の全在高を確定すべく、この収納部43から異常紙幣を繰り出し、分岐搬送路72〜74の適宜のもの、収納搬送路51、上下搬送路46の上側送路部55、入金搬送路21の後側構成部49、識別部17の内部搬送路25、直線搬送路26の前側送路部31、中間送路部32および出金搬送路27で払出部12に搬送するようにしても良い。すると、異常紙幣は、投入部11に再投入されたり、人手によって精査されて在高が手動補正される。
【0062】
ここで、投入部11が入金専用である場合、紙幣を一枚ずつ分離して装置内に繰り出す繰出機構のみを有しており、投入部11に紙幣を繰り出す際に集積させるための羽根車を搭載していないことになる。このような場合、投入部11での紙幣の集積異常を抑制するため、紙幣の繰り出し間隔を間欠繰り出し(例えば200ms毎の間欠繰り出し)になるように制御する。また、載置板19を、紙幣集積用ステージとして用い、投入部11に紙幣が1枚繰り出されるごとに一定量下降させて紙幣の集積を行う。更に、一定枚数集積した際に載置板19を一定量上昇させることで紙幣の整列を行い、集積異常の低減を図る。加えて、投入部11への識別調整用紙の繰り出し枚数に制限を設ければ、集積異常が発生する可能性を低く抑えることができる。すなわち、所定枚数の識別調整用紙が繰り出されると、投入部11からの紙幣の抜き取りを行わせるように制御することも可能である。
【0063】
以上では、損券収納部に設定されたもの以外の収納部43の自己精査処理時に、識別部17で異常と識別された異常紙幣を損券収納部に設定された収納部43に収納し、損券収納部に設定された収納部43の自己精査処理時のみ、自己精査リトライ処理を行うようにした。勿論、損券収納部に設定されたもの以外の収納部43の自己精査処理時に、識別部17で異常と識別された異常紙幣に対して自己精査リトライ処理を行うようにしても良い。すなわち、損券収納部に設定されたもの以外の収納部43の自己精査処理時に、自己精査処理の前段ルートで一時貯留部18に一旦退避後、自己精査処理の後段ルートで一時貯留部18から繰り出され識別部17で識別された紙幣のうちの異常紙幣を投入部11に搬送する。その後、自己精査リトライ処理の前段ルートで、投入部11から紙幣を繰り出し一時貯留部18に戻す。そして、自己精査リトライ処理の後段ルートで、一時貯留部18の紙幣を、一時貯留部18から繰り出し識別部17で識別を行った後に、対応する収納部43に収納する。
【0064】
「カセット補充処理」
カセット補充処理を行うにあたって、前方カセット42には、装置外部で紙幣が収納される。そして、蓋体77が開かれ、筐体75からユニット本体76が引き出されてユニット本体76にこの前方カセット42が、それまで取り付けられていた前方カセット42と交換で取り付けられる。
【0065】
操作表示部14にカセット補充処理の選択操作が入力されると、図7に太線で示すカセット補充処理の前段ルートで紙幣を搬送する。つまり、前方カセット42が紙幣を繰り出し、繰り出された紙幣を、上下搬送路46、入金搬送路21の後側構成部49、識別部17の内部搬送路25、直線搬送路26の前側送路部31および中間送路部32が搬送する。このときの内部搬送路25の第1方向での搬送中に、識別部17が紙幣を識別することになり、その結果に基づいて、受け入れ可能と識別した紙幣を、直線搬送路26の後側送路部33で一時貯留部18に搬送し、一時貯留部18が一時貯留させる(図7の太実線参照)。前方カセット42は集積収納タイプであるため、繰り出した紙幣に、重送、斜行等の搬送異常の可能性があり、このような搬送異常紙幣を含む受け入れ不可と識別した紙幣については、直線搬送路26の中間送路部32から出金搬送路27が払出部12に搬送する(図7の太実線から太破線参照)。払出部12に搬送された紙幣は、外部に取り出し可能となる。
【0066】
ここで、前方カセット42の収納容量は一時貯留部18の収納容量よりも大きいため、前方カセット42が空になる前に、一時貯留部18が満杯になる場合がある。前方カセット42が空になるか、あるいは一時貯留部18が満杯になると、図2(b)に太線で示す収納処理ルートと同様のカセット補充処理の後段ルートで紙幣を搬送する。つまり、一時貯留させていた紙幣を、一時貯留部18が繰り出し、直線搬送路26、識別部17の内部搬送路25、入金搬送路21の後側構成部49、上下搬送路46の上側送路部55および収納搬送路51が搬送する。このときの内部搬送路25の第2方向での搬送中に、識別部17が紙幣を識別することになり、その結果に基づいて、収納搬送路51および分岐搬送路72〜74の適宜のものが、損券および異常紙幣を含む紙幣を、8台の収納部43の対応するものに振り分ける。振り分けられた紙幣を8台の収納部43の対応するものが収納する。
【0067】
以上の処理を前方カセット42が空になるまで適宜繰り返す。このようにして、前方カセット42に収納された紙幣が、それぞれ8台の収納部43の対応するものに振り分けられて収納される。
【0068】
「入金口補充処理」
操作表示部14に入金口補充処理の選択操作が入力されると、まず、図2(a)に太線で示す入金処理ルートと同様の入金口補充処理の前段ルートで紙幣を搬送する。つまり、投入部11が紙幣を一枚ずつ分離して繰り出し、繰り出された紙幣を、入金搬送路21、識別部17の内部搬送路25、直線搬送路26の前側送路部31および中間送路部32が搬送する。このときの内部搬送路25の第1方向での搬送中に、識別部17が紙幣を識別することになり、識別部17が受け入れ可能と識別した紙幣を、直線搬送路26の中間送路部32から後側送路部33が一時貯留部18に搬送し、一時貯留部18が一時貯留させる(図2(a)の太実線参照)。他方、識別部17が受け入れ不可と識別した紙幣(搬送異常紙幣を含む)は、直線搬送路26の中間送路部32から出金搬送路27が払出部12に搬送する(図2(a)の太実線から太破線参照)。払出部12に搬送された紙幣は、外部に取り出し可能となる。
【0069】
投入部11に投入された紙幣をすべて一時貯留部18および払出部12のいずれかに搬送した状態になると、図2(b)に太線で示す収納処理のルートと同様の入金口補充処理の後段ルートで紙幣を搬送する。つまり、一時貯留させていた紙幣を、一時貯留部18が繰り出し、直線搬送路26、識別部17の内部搬送路25、入金搬送路21の後側構成部49、上下搬送路46の上側送路部55および収納搬送路51が搬送する。このときの内部搬送路25の第2方向での搬送中に、識別部17が紙幣を識別することになり、その結果に基づいて、収納搬送路51および分岐搬送路72〜74の適宜のものが、損券および異常紙幣を含む紙幣を、8台の収納部43の対応するものに振り分ける。振り分けられた紙幣を8台の収納部43の対応するものが収納する。このようにして、投入部11に投入された紙幣が、それぞれ8台の収納部43の対応するものに振り分けられて収納される。
【0070】
「回収処理」
操作表示部14に回収処理の選択操作が入力されると、図5(a)に太線で示す自己精査処理の往路ルートと同様の回収処理の前段ルートで紙幣を搬送する。つまり、8台の収納部43のうちの回収対象の1台が紙幣を繰り出し、繰り出された紙幣を、分岐搬送路72〜74の適宜のもの、収納搬送路51、上下搬送路46の上側送路部55、入金搬送路21の後側構成部49、識別部17の内部搬送路25および直線搬送路26が一時貯留部18に搬送し、一時貯留部18が一時貯留させる。このようにして、回収対象の1台の収納部43のすべての紙幣を、一時貯留部18に搬送する。
【0071】
次に、図8に太線で示す回収処理の後段ルートで紙幣を搬送する。つまり、一時貯留させていた紙幣を、一時貯留部18が繰り出し、直線搬送路26、識別部17の内部搬送路25、入金搬送路21の後側構成部49および上下搬送路46が前方カセット42に搬送し、前方カセット42が収納する。
【0072】
このような処理を、収納部43の回収が指定されたもの(全部の場合もあり)に対して行う。その後、蓋体77が開かれ、ユニット本体76から前方カセット42が取り外されて回収される。
【0073】
「識別調整処理」
識別部17は、上記したように紙幣を双方向の搬送に対して識別可能となっているため、識別調整を第1方向とこれとは逆の第2方向との2方向でおこなう必要がある。
【0074】
操作表示部14に識別調整処理の操作が入力されると、シャッタ13を開く。この状態で投入部11に外部から識別調整用の紙葉類である識別調整用紙が所定の複数枚投入されると、図示略のセンサがこれを検出する。すると、シャッタ13を閉じた後、図9(a)に太線で示す識別調整処理の往路ルートで、複数枚の識別調整用紙を搬送する。つまり、投入部11が識別調整用紙を一枚ずつ繰り出し、繰り出された識別調整用紙を、入金搬送路21、識別部17の内部搬送路25が搬送する。このときの内部搬送路25の第1方向での搬送中に、識別部17が識別調整用紙を一枚ずつ識別することになり、その後、識別調整用紙を直線搬送路26が一時貯留部18に搬送し、一時貯留部18が一時貯留させる(図9(a)の太実線参照)。
【0075】
次に、図9(b)に太線で示す識別調整処理の復路ルートで識別調整用紙を搬送する。つまり、一時貯留させていた複数枚の識別調整用紙を、一時貯留部18が一枚ずつ繰り出し、直線搬送路26、識別部17の内部搬送路25が搬送する。このときの内部搬送路25の第2方向での搬送中に、識別部17が識別調整用紙を一枚ずつ識別することになり、その後、識別調整用紙を、入金搬送路21が、シャッタ13が閉じられた状態にある投入部11に搬送し集積させる。そして、シャッタ13を開き、これらの識別調整用紙を投入部11から装置外に取り出し可能とする。
【0076】
以上のようにして行われた、所定の複数枚の識別調整用紙に対する内部搬送路25の第1方向での搬送中の識別部17の識別結果に基づいて、この第1方向での搬送中の識別部17の識別レベルを調整し、所定の複数枚の識別調整用紙に対する内部搬送路25の第2方向での搬送中の識別部17の識別結果に基づいて、この第2方向での搬送中の識別部17の識別レベルを調整する。
【0077】
以上により、識別調整処理は、識別調整用紙を、識別部17に第1方向に通しつつ識別部17で識別を行うとともに第2方向に通しつつ識別部17で識別を行う処理である。この識別調整処理時に、投入部11に投入され投入部11から繰り出された識別調整用紙を識別部17に第1方向に通しつつ識別部17で識別を行った後に一時貯留部18に搬送し、当該識別調整用紙を一時貯留部18から繰り出し識別部17に第2方向に通しつつ識別部17で識別を行った後に投入部11に戻す。
【0078】
ここで、投入部11が入金専用である場合、上述した投入部11での紙幣の集積異常を抑制するための制御を識別調整用紙に対しても同様に行うことになる。
【0079】
以上に述べた本実施形態の紙葉類処理装置10によれば、装置外から投入された紙幣を、投入部11から装置内に繰り出し、識別部17で第1方向に通しながら識別して、受け入れ可能と識別された紙幣を一時貯留部18に一時貯留させる一方、受け入れ不可と識別された紙幣を払出部12に搬送して、装置外に取り出し可能とする。そして、一時貯留部18に一時貯留した紙幣を、識別部17で第2方向に通しながら識別し、その結果に基づいて収納部43に収納する。他方で、一時貯留部18に一時貯留した紙幣を、識別部17で第2方向に通しながら識別した後、投入部11に搬送することができる。
【0080】
よって、識別調整用紙を、識別部17に第1方向に通しつつ識別部17で識別を行うとともに第2方向に通しつつ識別部17で識別を行う識別調整処理時に、投入部11に投入され投入部11から繰り出された識別調整用紙を識別部17に第1方向に通しつつ識別部17で識別を行った後に一時貯留部18に搬送し、当該識別調整用紙を一時貯留部18から繰り出し識別部17に第2方向に通しつつ識別部17で識別を行った後に投入部11に戻すことになる。よって、投入部11と識別部17と一時貯留部18とを結ぶルートで識別調整用紙を往復搬送することが可能となる。したがって、識別調整処理の処理時間の短縮が可能になる。
【0081】
すなわち、識別部の識別に関して、搬送方向が正方向と逆方向の双方向で識別することが可能となっている場合、識別部の調整作業には、専用の識別調整用紙を使用して、正方向と逆方向の2方向で所定枚数ずつ搬送させて識別を行わせる必要がある。装置の搬送レイアウトの構成等により、識別部に正方向に通す際には、投入部、識別部、一時貯留部の順で識別調整用紙を搬送することになる。他方、識別部に逆方向に通す際には、一時貯留部、識別部、収納部へと搬送して識別部の調整を行った後、識別調整用紙の回収のため、識別調整用紙を収納部から払出部へと搬送する必要がある。
【0082】
具体的に、紙葉類処理装置10の構造で説明すると、投入部11に投入され投入部11から繰り出された識別調整用紙を識別部17に第1方向に通しつつ識別部17で識別を行った後に一時貯留部18に搬送する。そして、当該識別調整用紙を一時貯留部18から繰り出し識別部17に第2方向に通しつつ識別部17で識別を行った後、所定の収納部43に搬送し、この収納部43から出金処理と同様にして払出部12に搬送することになる。
【0083】
このように、識別調整用紙の逆方向の搬送が2ステップの制御により行われると、正方向の搬送時よりも時間を要する。また2ステップのうちの1番目のステップである一時貯留部、識別部、収納部の順での搬送では、搬送先となる収納部が環流庫であって空の状態となっていることが前提条件であり、搬送先の収納部に機内金が格納されている場合は、機内金と識別調整用紙とが混ざってしまうことを回避する必要があることから、機内金を全回収させてから識別部の調整作業に入る手順を踏む必要がある。したがってこれに伴う作業手順が更に増えることなり、逆方向に識別調整用紙を搬送させる場合には、更に手間が掛かかる場合が予想される。
【0084】
これに対し、紙葉類処理装置10は、逆方向の搬送において、識別部17から投入部11に識別調整用紙を搬送できるようになっている。よって、投入部11を識別調整用紙の排出先として代用することができるため、識別調整用紙の搬送距離が短くなり、よって、識別調整処理の処理時間の短縮が可能になる。すなわち、従来、識別調整に必要であった環流庫からの回収動作を省くことができ、紙幣搬送のステップを、3ステップから2ステップに削減することが可能となるため、処理動作の時短が図れる。
【0085】
また、収納部43の紙幣を、収納部43から繰り出して一時貯留部18に一時貯留し、その後、一時貯留部18の紙幣を、一時貯留部18から繰り出し識別部17に第2方向に通しつつ識別部17で識別を行った後に、収納部43に収納する自己精査処理時に、一時貯留部18から繰り出され識別部17を第2方向に通る際に識別部17で、識別異常あるいは搬送異常等の異常と識別された異常紙幣を、投入部11に搬送することができる。そして、異常紙幣を、その後、投入部11から繰り出して一時貯留部18に搬送した後、一時貯留部18から繰り出し、識別部17で逆方向に通しながら再識別し、その結果に基づいて収納部43に収納することができる。よって、識別部17で異常と識別された紙幣の再識別のための搬送距離が短くなり、人手による投入部11への投入作業をなくすことが可能になる。したがって、自己精査処理の処理時間の短縮が可能になり、手間の抑制が可能となる。
【0086】
従来の制御について、具体的に、紙葉類処理装置10の構造で説明すると、例えば、損券収納部に設定されたもの以外の収納部43についての自己精査処理時に、一時貯留部18から繰り出され識別部17を第2方向に通る際に識別部17で異常と識別された異常紙幣を、所定の損券収納部に設定された収納部43に収納することになる。そして、この損券収納部に設定された収納部43を自己精査処理する場合には、この損券収納部に設定された収納部43から払出部12に紙幣を搬送し、人手による払出部12から投入部11への投入作業を伴って、投入部11に投入された紙幣を、一時貯留部18に一時貯留し、その後、一時貯留部18の紙幣を、一時貯留部18から繰り出し識別部17に第2方向に通しつつ識別部17で識別を行った後に、収納部43に収納することになる。
【0087】
これに対し、紙葉類処理装置10は、識別部17から投入部11に紙幣を搬送できるようになっていることから、投入部11を異常紙幣の一時退避先として代用し、投入部11の異常紙幣を、投入部11から繰り出し一時貯留部18に貯留させた後、一時貯留部18から繰り出し再度識別部17で識別して、収納部43に収納することができる。よって、紙幣の搬送距離が短くなり、人手による紙幣の移動作業がなくなるため、自己精査処理のの処理時間の短縮および手間の抑制が可能となる。また、装置内の紙幣の出し入れというユーザ操作の発生を抑制できるため、手順が簡素になりオペミス発生の可能性を低減することができる。また、装置外へ機内金を排出する可能性を低減できることになるため、機内金管理上の問題発生の可能性も低減できる。よって、装置内在高管理の厳格化にも貢献できる。
【0088】
以上においては、紙葉類として紙幣を処理する紙葉類処理装置10を例にとり説明したが、紙幣以外の、有価証券、金券等の、種々の紙葉類を処理する装置に適用可能である。
【符号の説明】
【0089】
10 紙葉類処理装置
11 投入部
12 払出部
17 識別部
18 一時貯留部
43 収納部
図1
図2
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