(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2019-129560(P2019-129560A)
(43)【公開日】2019年8月1日
(54)【発明の名称】ステータユニット及びモータ
(51)【国際特許分類】
H02K 3/50 20060101AFI20190708BHJP
H02K 3/34 20060101ALI20190708BHJP
H02K 3/52 20060101ALI20190708BHJP
【FI】
H02K3/50 A
H02K3/34 B
H02K3/52 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2018-8433(P2018-8433)
(22)【出願日】2018年1月22日
(71)【出願人】
【識別番号】000113791
【氏名又は名称】マブチモーター株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】龍華国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】岩崎 佑哉
【テーマコード(参考)】
5H604
【Fターム(参考)】
5H604BB01
5H604BB10
5H604BB14
5H604BB17
5H604CC01
5H604CC05
5H604CC13
5H604PB03
5H604QB14
5H604QB17
(57)【要約】
【課題】バスバーユニットやリード線止めのような配線保持部の外径を小さくすること。
【解決手段】ステータユニットは、ステータコアと、ステータコアを覆い、巻線を保持する巻線保持部を有するインシュレータとを有するステータと、巻線に電気的に接続される配線を保持し、巻線保持部に固定される配線保持部とを備える。巻線保持部は、内周側端部に段差部を有しており、配線保持部は、段差部と嵌合する嵌合部を有する。モータは、ステータユニットと、ステータユニットの内側に設けられたロータとを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステータユニットであって、
ステータコアと、前記ステータコアを覆い、巻線を保持する巻線保持部を有するインシュレータとを有するステータと、
前記巻線に電気的に接続される配線を保持し、前記巻線保持部に固定される配線保持部と
を備え、
前記巻線保持部は、内周側端部に段差部を有し、
前記配線保持部は、前記段差部と嵌合する嵌合部を有する
ステータユニット。
【請求項2】
前記段差部により、前記巻線保持部の内周側端部には、軸方向に延伸する第1外面と、前記第1外面から径方向内側に延伸する第2外面と、前記第1外面より径方向内側の位置にあり、前記第2外面から軸方向に延伸する第3外面とが形成され、
前記配線保持部の前記嵌合部は、前記第1外面と前記第2外面とにより形成される空間において、前記第2外面と嵌合する
請求項1に記載のステータユニット。
【請求項3】
前記配線保持部の前記嵌合部は、前記第2外面にスナップフィット方式で固定される鉤部である
請求項2に記載のステータユニット。
【請求項4】
前記インシュレータの内周側端部は、径方向において、前記ステータコアの内周側端部と同じ位置または前記ステータコアの内周側端部より外側に配置される
請求項1から3のいずれか一項に記載のステータユニット。
【請求項5】
前記巻線保持部には、前記段差部により、前記巻線の第1層が設けられる第1内面と、前記第1内面から軸方向に延伸する内側面と、前記第1内面より軸方向に突出した位置にあり、前記内側面から径方向内側に延伸する第2内面とが形成される
請求項1から4のいずれか一項に記載のステータユニット。
【請求項6】
前記巻線は、前記第2内面に更に設けられる
請求項5に記載のステータユニット。
【請求項7】
前記巻線の前記第1層の内周側の線材は、前記内側面により固定される
請求項5又は6に記載のステータユニット。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一項に記載のステータユニットと
前記ステータユニットの内側に設けられたロータと
を備えるモータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステータユニット及びモータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、様々な装置や製品の駆動源としてモータが用いられている。例えば、自動車や、電動アシスト自転車や電動車椅子等の電動車を含めた移動体の動力源や電装部品の動力源としてモータが用いられている。
【0003】
モータの小型化に関して、各相に対応する3つのバスバーと中性点用バスバーとを3重の環状構造に収装することにより、バスバーユニットの径方向寸法を小型化する技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1 特開2013−212008号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の技術では、バスバーユニットの外周側に、バスバーユニットを固定するためのスナップフィットが設けられる。特許文献1に記載の技術のように、バスバーユニットのような配線保持部を固定するための固定部を外周側に設けると、固定部の厚みだけ、配線保持部の外径が大きくなる。例えば、配線保持部の固定部をインシュレータの外周部に固定すると、インシュレータの外径より固定部の厚みだけ、ステータ及びバスバーユニットの全体の外径が増大してしまう。また、配線が広がる方向の力により保持部材が広がることを考慮すると、ステータ及びバスバーユニットの全体の外径が更に増大する場合がある。
【0005】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、バスバーユニットやリード線止めのような配線保持部の外径を小さくするところにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の第1の態様においては、ステータユニットが提供される。ステータユニットは、ステータコアと、ステータコアを覆い、巻線を保持する巻線保持部を有するインシュレータとを有するステータと、巻線に電気的に接続される配線を保持し、巻線保持部に固定される配線保持部とを備える。巻線保持部は、内周側端部に段差部を有し、配線保持部は、段差部と嵌合する嵌合部を有してよい。
【0007】
この態様によると、巻線保持部102の外周側で配線保持部を固定する場合に比べて、配線保持部50の外径が大きくなることを防ぐことができる。そのため、ステータユニットの外径を小さくすることができる。
【0008】
段差部により、巻線保持部の内周側端部には、軸方向に延伸する第1外面と、第1外面から径方向内側に延伸する第2外面と、第1外面より径方向内側の位置にあり、第2外面から軸方向に延伸する第3外面とが形成されてよい。配線保持部の嵌合部は、第1外面と第2外面とにより形成される空間において、第2外面と嵌合してよい。これにより、配線保持部を巻線保持部にきちんと固定することができる。
【0009】
配線保持部の嵌合部は、第2外面にスナップフィット方式で固定する鉤部であってよい。これにより、配線保持部を容易に確実に固定することができる。
【0010】
インシュレータの内周側端部は、径方向において、ステータコアの内周側端部と同じ位置またはステータコアの内周側端部より外側に配置されてよい。これにより、配線保持部50を内周側で固定するスペースを設けることができる。
【0011】
巻線保持部には、段差部により、巻線の第1層が設けられる第1内面と、第1内面から軸方向に延伸する内側面と、第1内面より軸方向に突出した位置にあり、内側面から径方向内側に延伸する第2内面とが形成される。これにより、巻線保持部の内周側端部の外側に段差を設けても、内側が肉薄にならないようにすることができる。そのため、巻線保持部102の内周側端部の強度を保つことができる。
【0012】
巻線は、第2内面に更に設けられる。これにより、巻線における線材の占積率を維持することができる。
【0013】
巻線の第1層の内周側は内側面と接する。これにより、複数層の巻線を形成する場合に、第1層の巻線の位置がずれることを防ぐことができる。
【0014】
本発明の第2の態様においては、モータが提供される。モータは、上記のステータユニットと、ステータの内側に設けられたロータとを備える。この態様によっても、上述したステータユニットに関連して説明した効果と同様の効果を持つモータを提供することができる。
【0015】
上記の発明の概要は、本発明の特徴の全てを列挙したものではない。これらの特徴群のサブコンビネーションも発明となりうる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】一実施形態に係るモータ10の模式的な断面図である。
【
図2】インシュレータ100の巻線保持部102、巻線160、及び配線保持部50の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0018】
図1は、一実施形態に係るモータ10の模式的な断面図である。
図1は、モータ10の中心軸AXの片側のみの断面を示す。モータ10は、ブラシレスモータである。モータ10は、具体的には、インナーロータ型ブラシレスモータである。
【0019】
モータ10は、回転軸34と、ロータ30と、ステータ40と、配線保持部50とを備える。ステータ40は、ステータコア120と、インシュレータ100と、巻線160とを備える。ステータ40及び配線保持部50は、ステータユニットとして機能する。
【0020】
本実施形態の説明において、特に断らない限り、モータ10の中心軸AXに沿う方向のことを「軸方向」と呼ぶ。モータ10の中心軸AXは、ステータ40の中心軸と一致する。なお、「周方向」及び「径方向」の中心は、モータ10の中心軸AXであるとする。また、「内周」は、径方向内側の周を表す。「外周」は、径方向外側の周を表す。
【0021】
ステータ40は、筒状の部材である。ステータ40の内側には、ロータ30が配置される。ロータ30は、ロータコア32と、モータ10の出力軸となる回転軸34とを有する。ロータ30の回転軸34は、中心軸AXに一致するように設けられる。
【0022】
ステータコア120は、インシュレータ100により覆われる。ステータコア120は、環状のヨーク部と、ヨーク部から径方向内側に突出する複数のティース部とを有する。ステータコア120のティース部は、インシュレータ100が有する巻線保持部102により覆われる。巻線保持部102は、インシュレータ100のうち、ティース部を覆う部分である。巻線160は、巻線保持部102の周りに線材が巻回されることにより形成される。
【0023】
配線保持部50は、巻線160に電気的に接続される配線182と、信号線184とを保持する。配線182は、U相巻線、V相巻線、及びW相巻線にそれぞれ接続される配線であってよい。信号線184は、例えばモータ10内に設けられた電子部品との間で電気信号を伝送する。電子部品としては、ロータ30の回転位置やモータ10の温度を検出するセンサ等を例示することができる。
【0024】
配線保持部50は、基部52と、支持部54とを有する。支持部54は、基部52を支持する。基部52は、巻線160の軸方向上方に位置する。配線182及び信号線184は、基部52により保持された状態で、巻線160の軸方向上方を引き回される。
【0025】
配線保持部50は、全体として環形状を有する。支持部54は、基部52より内周側に位置する。配線保持部50は、巻線保持部102に固定される。具体的には、配線保持部50は、巻線保持部102の内周側端部に固定される。より具体的には、配線保持部50は、支持部54により、巻線保持部102の内周側端部に固定される。
【0026】
インシュレータ100において、巻線保持部102は、内周側端部に段差部104を有する。配線保持部50は、段差部104と嵌合する鉤部58を有する。具体的には、鉤部58は支持部54に設けられおり、鉤部58が段差部104に引っ掛かることにより、配線保持部50が巻線保持部102に固定される。このように、配線保持部50は、巻線保持部102の内周側にスナップフィット方式で固定される。なお、鉤部58は、段差部104に嵌合する嵌合部の一例である。
【0027】
このように、配線保持部50は外周側には支持部を有しておらず、配線保持部50の内周側の支持部54により、巻線保持部102の内周側端部で固定される。そのため、配線保持部50を小径化することができ、ひいては、ステータ40及び配線保持部50の全体を小径化することができる。
【0028】
図2は、インシュレータ100の巻線保持部102、巻線160、及び配線保持部50の断面図を拡大して示す。
【0029】
段差部104により、巻線保持部102の内周側端部には、軸方向に延伸する第1外面201と、第1外面201から径方向内側に延伸する第2外面202と、第1外面201より径方向内側の位置にあり、第2外面202から軸方向に延伸する第3外面203とが形成される。配線保持部50の鉤部58は、第1外面201と第2外面202とにより形成される空間において、第2外面202と嵌合する。
【0030】
具体的には、鉤部58は、巻線保持部102の第3外面203に対向する面101から径方向外側に突出している。支持部54を巻線保持部102に固定する場合、支持部54を第3外面203に沿って軸方向に挿入すると、第3外面203により鉤部58が軸方向内側に押されて、支持部54が弾性変形して撓む。鉤部58が第2外面202の位置まで挿入されると、弾性変形により支持部54の撓みが戻されて、鉤部58が第2外面202に引っ掛かる。このように、配線保持部50は、第2外面202にスナップフィット方式で段差部104に固定される。
【0031】
巻線保持部102において、巻線160が設けられる内側には、段差部104により、巻線160の第1層161が設けられる第1内面111と、第1内面111から軸方向に延伸する内側面113と、第1内面111より軸方向に突出した位置にあり、内側面113から径方向内側に延伸する第2内面112とが形成されている。これにより、巻線保持部102の内側の外面部に、鉤部58が嵌合する段差を形成しても、巻線保持部102が肉薄になることがない。そのため、巻線保持部102の強度が大きく低下することを防ぐことができる。これにより、巻線保持部102の内周側端部が配線保持部50を支持するために必要な強度を持たせることができる。
【0032】
巻線160は第2内面112上にも設けられる。そのため、段差部104を設けても、巻線160を形成する線材の占積率が低くならない。したがって、巻線160を第2内面112上に設けるために、第2内面112の径方向の長さをdとし、巻線160を形成する線材の直径をDとすると、d>D/2であることが好ましい。
【0033】
また、巻線160の第1層161の内周側は、内側面113と接する。これにより、巻線160の第1層161は、内側面113によって支持されている。したがって、第1層161上に線材を巻いて第2層162及び第3層163を積層しても、第1層161を形成する線材が径方向に位置ずれしにくい。
【0034】
第1内面111を基準面とした場合における各部材の高さについて説明する。内側面113の高さをHとし、巻線160を形成する線材の直径をDとすると、D/2≦Hを満たすことが望ましい。D/2≦Hを満たすことで、第1層161を形成する線材が位置ずれすることを確実に防止できる。なお、第2内面112の上に設けられた線材の軸方向上方の高さHwは、巻線160の最上層である第3層163の最上部の高さHwtより、低いことが好ましい。
【0035】
次に、径方向における配線保持部50及びインシュレータ100の内周側端部の位置について説明する。本実施形態において、支持部54の面101と反対側の面103の位置が、配線保持部50の内周側端部の位置となる。また、巻線保持部102の第3外面203が、インシュレータ100の内周側端部の位置となる。また、ステータコア120の内周側端部の位置は、ステータコア120が有するティースの先端部の位置となる。
【0036】
支持部54の面103は、ステータコア120の内周側端部と実質的に同じ位置にある。支持部54の面103の位置は、ステータコア120の内周側端部より径方向外側に位置してもよい。
【0037】
また、インシュレータ100において、巻線保持部102の第3外面203は、ステータコア120の内周側端部より、径方向外側に位置する。すなわち、インシュレータ100の内周側端部は、径方向において、ステータコア120の内周側端部より径方向外側に配置される。しかし、インシュレータ100の内周側端部は、ステータコア120の内周側端部と同じ位置にあってもよい。ロータ30をステータ40に挿入時やロータ30の回転時に配線保持部50の支持部54が障害にならない限り、インシュレータ100の内周側端部及び配線保持部50の支持部54の位置を任意に設定可能である。
【0038】
以上に説明したように、本実施形態のステータ40及び配線保持部50によれば、インシュレータ100の巻線保持部102の内周側端部に、配線保持部50を固定する。そのため、インシュレータ100の外周側に配線保持部50を固定する場合に比べて、配線保持部50の外径が大きくなることを防ぐことができる。また、段差部104のように、第2内面112が第1内面111から軸方向に突出するように段差を設けることで、インシュレータ100の内周側端部の強度を保つことができる。また、第2内面112に巻線160を形成する線材を巻回することにより、線材の占積率を維持することができる。
【0039】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0040】
10 モータ
30 ロータ
32 ロータコア
34 回転軸
40 ステータ
50 配線保持部
52 基部
54 支持部
58 鉤部
100 インシュレータ
101 面
102 巻線保持部
103 面
104 段差部
111 第1内面
112 第2内面
113 内側面
120 ステータコア
160 巻線
161 第1層
162 第2層
163 第3層
182 配線
184 信号線
201 第1外面
202 第2外面
203 第3外面