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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2019-129749(P2019-129749A)
(43)【公開日】2019年8月8日
(54)【発明の名称】ポリヌクレオチド及びその使用
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/11 20060101AFI20190712BHJP
   C12Q 1/68 20180101ALI20190712BHJP
   C12Q 1/02 20060101ALI20190712BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20190712BHJP
【FI】
   C12N15/11 ZZNA
   C12Q1/68
   C12Q1/02
   C12N5/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2018-14156(P2018-14156)
(22)【出願日】2018年1月30日
(71)【出願人】
【識別番号】899000057
【氏名又は名称】学校法人日本大学
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100126882
【弁理士】
【氏名又は名称】五十嵐 光永
(72)【発明者】
【氏名】立石 亮
(72)【発明者】
【氏名】上吉原 裕亮
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 慶一
(72)【発明者】
【氏名】水野 真二
【テーマコード(参考)】
4B063
4B065
【Fターム(参考)】
4B063QA01
4B063QA20
4B063QQ09
4B063QQ16
4B063QQ43
4B063QR08
4B063QR55
4B063QR62
4B063QS25
4B063QS34
4B063QX01
4B065AA88X
4B065AA88Y
4B065AB01
4B065BA02
4B065CA46
(57)【要約】      (修正有)
【課題】遺伝子発現制御及び食用植物のアレルゲン性評価に有用なポリヌクレオチド、並びにその使用方法の提供。
【解決手段】特定の塩基配列から選択される連続した100塩基以上の塩基配列を含む、ポリヌクレオチド、マタタビ科(Actinidiaceae)植物の細胞において、アレルゲン遺伝子の上流領域における、当該ポリヌクレオチドを検出する工程を含む、マタタビ科植物のアレルゲン性の評価方法、及びアレルゲン性評価用キット。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(a)〜(d)からなる群より選択されるポリヌクレオチド。
(a)配列番号2に記載の塩基配列から選択される連続した100塩基以上の塩基配列からなる、ポリヌクレオチド
(b)配列番号2に記載の塩基配列において1又は複数個の塩基が欠失、置換、付加、又は挿入された塩基配列から選択される連続した100塩基以上の塩基配列からなり、且つAct1a遺伝子の上流領域に存在したとき、前記Act1a遺伝子の発現を抑制する、ポリヌクレオチド
(c)配列番号2に記載の塩基配列と80%以上の配列同一性を有する塩基配列から選択される連続した100塩基以上の塩基配列からなり、且つAct1a遺伝子の上流領域に存在したとき、前記Act1a遺伝子の発現を抑制する、ポリヌクレオチド
(d)配列番号2に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件でハイブリダイズし、且つAct1a遺伝子の上流領域に存在したとき、前記Act1a遺伝子の発現を抑制する、ポリヌクレオチド
【請求項2】
請求項1に記載のポリヌクレオチドを含むベクター。
【請求項3】
請求項1に記載のポリヌクレオチドを、標的遺伝子の上流領域に含む細胞。
【請求項4】
標的遺伝子の発現を抑制する方法であって、請求項1に記載のポリヌクレオチドを、前記標的遺伝子の上流領域に導入する工程を含む、方法。
【請求項5】
マタタビ科(Actinidiaceae)植物の細胞において、アレルゲン遺伝子の上流領域における、請求項1に記載のポリヌクレオチドを検出する工程を含む、マタタビ科植物のアレルゲン性の評価方法。
【請求項6】
前記アレルゲン遺伝子がAct1a遺伝子である、請求項5に記載のアレルゲン性の評価方法。
【請求項7】
前記マタタビ科植物が、アクチニジア属(Actinidia)に属する植物である、請求項5又は6に記載のアレルゲン性の評価方法。
【請求項8】
下記(i)及び(ii)の少なくとも一方を含む、マタタビ科(Actinidiaceae)植物のアレルゲン性評価用キット。
(i)配列番号2に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチドの少なくとも一部とアレルゲン遺伝子のプロモーター領域の少なくとも一部とを増幅可能なプライマーセット
(ii)配列番号2に記載の塩基配列又はその相補配列からなるポリヌクレオチドに特異的にハイブリダイズするプローブ
【請求項9】
前記アレルゲン遺伝子がAct1a遺伝子である、請求項8に記載のアレルゲン性評価用キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリヌクレオチド及びその使用に関する。より具体的には、ポリヌクレオチド、該ポリヌクレオチドを含むベクター、該ポリヌクレオチドを含む細胞、及び該ポリヌクレオチドを用いた標的遺伝子の発現制御方法等に関する。さらに、前記ポリヌクレオチドを指標としたマタタビ科植物のアレルゲン性評価方法、及び該評価方法用いるアレルゲン性評価用キットに関する。
【背景技術】
【0002】
食物アレルギーは、食物を摂取したときにそこに含まれる物質をヒトの免疫系が異物と認識し、過剰に反応する疾患である。日本では、厚生労働省の調査などから、アトピー性皮膚炎の患者数が漸減しているのに対して、食物アレルギー患者はアレルギー性鼻炎と同様に増加していることが明らかになっている。食物アレルギーは、主たる患者年齢が0〜4歳の幼児期であり、育児や教育機関などの現場で重要な課題となつている。
【0003】
キウイフルーツは、果物類の中では、食物アレルギー患者が多い果物として知られている。キウイフルーツにおけるアレルギーの原因物質としては、アクチニジンが知られており、グリーンキウイ種であるアクチニジア・デリシオサ(Actinidia deliciosa)では、総可溶性タンパク質の40〜50%のアクチニジンを含有する。
アクチニジンは、システインプロテアーゼ活性を有し、パパイン様サブファミリー(papain−like subfamily)に属する。キウイフルーツにおいて、アクチニジンのレベルは、果実の成熟に伴って増加するが、他の果物種におけるシステインプロテアーゼのレベルは、成熟プロセス中に減少する。その結果、キウイフルーツでは、食用段階において、果物類や野菜類の中で最も高いプロテアーゼ活性を有する。
【0004】
アクチニジンの含有量は、キウイフルーツの品種間で差があることが報告されている(例えば、非特許文献1)。例えば、アクチニジア・シネンシス(Actinidia chinensis)の品種の中でも、A.chinensis‘EM4’は、A.deliciosa‘Hayward’(ヘイワード)と同等のアクチニジン含有量を有する。一方、A.chinensis‘Hongyang’(レインボーレッド)及び‘Hort16A’(ホート16A)は、ごく微量のアクチニジンしか含有しない。
【0005】
また、最近の研究では、A.chinensisの分離集団を用いて、アクチジンのコード遺伝子であるAct1aを含む領域の配列解析の結果が報告されている(非特許文献2)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Nieuwenhuizen et al., Identification and characterisation of acidic and novel basic forms of actinidin, the highly abundant cysteine protease from kiwifruit. Functional Plant Biology, 2007, 34, 946-961.
【非特許文献2】Nieuwenhuizen et al., Mapping, Complementation, and Targets of the Cysteine Protease Actinidin in Kiwifruit. Plant Physiology, 2012, 158, 376-388.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
キウイフルーツはビタミンC等の栄養素が豊富に含まれており、食品としての有用性が高い。しかしながら、食物アレルギーの問題があるため、アレルゲン性を低減した品種の開発が望まれる。
【0008】
一方、遺伝子の発現制御技術は、遺伝子の機能解析やトランスジェニック動植物の研究等、生命科学分野において重要である。
【0009】
本発明は上記事情に鑑みて為されたものであり、遺伝子発現制御及び食用植物のアレルゲン性評価に有用なポリヌクレオチド、並びにその使用方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は以下の態様を含む。
〔1〕下記(a)〜(d)からなる群より選択されるポリヌクレオチド。
(a)配列番号2に記載の塩基配列から選択される連続した100塩基以上の塩基配列からなる、ポリヌクレオチド
(b)配列番号2に記載の塩基配列において1又は複数個の塩基が欠失、置換、付加、又は挿入された塩基配列から選択される連続した100塩基以上の塩基配列からなり、且つAct1a遺伝子の上流領域に存在したとき、前記Act1a遺伝子の発現を抑制する、ポリヌクレオチド
(c)配列番号2に記載の塩基配列と80%以上の配列同一性を有する塩基配列から選択される連続した100塩基以上の塩基配列からなり、且つAct1a遺伝子の上流領域に存在したとき、前記Act1a遺伝子の発現を抑制する、ポリヌクレオチド
(d)配列番号2に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件でハイブリダイズし、且つAct1a遺伝子の上流領域に存在したとき、前記Act1a遺伝子の発現を抑制する、ポリヌクレオチド
〔2〕〔1〕に記載のポリヌクレオチドを含むベクター。
〔3〕〔1〕に記載のポリヌクレオチドを、標的遺伝子の上流領域に含む細胞。
〔4〕標的遺伝子の発現を抑制する方法であって、〔1〕に記載のポリヌクレオチドを、前記標的遺伝子の上流領域に導入する工程を含む、方法。
〔5〕マタタビ科(Actinidiaceae)植物の細胞において、アレルゲン遺伝子の上流領域における、請求項1に記載のポリヌクレオチドを検出する工程を含む、マタタビ科植物のアレルゲン性の評価方法。
〔6〕前記アレルゲン遺伝子がAct1a遺伝子である、〔5〕に記載のアレルゲン性の評価方法。
〔7〕前記マタタビ科植物が、アクチニジア属(Actinidia)に属する植物である、〔5〕又は〔6〕に記載のアレルゲン性の評価方法。
〔8〕下記(i)及び(ii)の少なくとも一方を含む、マタタビ科(Actinidiaceae)植物のアレルゲン性評価用キット。
(i)配列番号2に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチドの少なくとも一部とアレルゲン遺伝子のプロモーター領域の少なくとも一部とを増幅可能なプライマーセット
(ii)配列番号2に記載の塩基配列又はその相補配列からなるポリヌクレオチドに特異的にハイブリダイズするプローブ
〔9〕前記アレルゲン遺伝子がAct1a遺伝子である、〔8〕に記載のアレルゲン性評価用キット。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、遺伝子発現制御及び食用植物のアレルゲン性評価に有用なポリヌクレオチド、並びにその使用方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】キウイフルーツの各種品種(A.chinensisの8品種、A.deliosaの4品種、A.arguta及びA.eriantha)について、SDS−ポリアクリルアミド電気泳動(PAGE)後に、クマシーブリリアントブルー(CBB)染色を行った結果(上の写真)、及び抗アクチニジン抗体(Actinidin Ab)を用いてイムノブロット解析を行った結果(下の写真)を示す。矢印は、26kDaのアクチニジンを示す。図中、幾つかの品種は省略名で示した。‘S.Apple’は‘Sensational apple’;‘Y.queen’は‘Yellow queen’; ‘Shonan Y’は‘Shonan yellow’;‘Kataura Y.’は‘Kataura yellow’をそれぞれ示す。図2においても同様である。
図2】キウイフルーツの各種品種について、ELISAにより、アクチニジン含量を測定した結果を示す。‘Hayward’から精製したアクチニジンを検量線の作成に用いた。アッセイは3連で行った。図中の値は、平均±SEを示す(n=3)。
図3図3Aは、‘Hayward’、‘Hort16A’及び‘Kohi’のゲノムDNAを用いて、Act1a及びAct2aを増幅したPCRの結果を示す。図3Bは、‘Hayward’、‘Hort16A’及び‘Kohi’から抽出したmRNAを用いて、Act1a及びAct2aを増幅したRT−PCRの結果を示す。図3Cは、 ‘Hayward’、‘Hort16A’及び‘Kohi’から抽出したmRNAから逆転写したcDNAを用いて、Act1a及びAct2aの発現量を測定した定量PCRの結果を示す。Act1aの発現量は、UbiC9の発現量により標準化した。縦軸の相対発現量は、‘Hayward’における発現量を1.0としたときの相対値である。実験は3連で行った。図中の値は、平均±SEを示す(n=3)。
図4】‘Hayward’及び‘Kohi’のAct1aの上流領域を比較した結果を示す。Act1aの上流領域(I)及び(II)をゲノミックPCRにより増幅した。DNAの品質確認用のコントロールとして、UbiC9及びEF1aを増幅した。
図5】‘Hayward’及び‘Kohi’のAct1aの上流領域の配列を比較した結果を示す。ClustalWを用いて、‘Hayward’のAct1aプロモーター領域と、TAIL−PCRにより得た‘Kohi’のAct1a上流領域との、アライメントを行った。‘Hayward’及び‘Kohi’の共通配列は、四角で囲んだ。+1は、主要な転写開始サイトを示す(Lin et al., 1993. Plant Mol. Biol. 23:489-499.)。アスタリスクは、翻訳開始コドンを示す。
図6】‘Hayward’(上図)及び‘Kohi’(下図)のAct1a上流領域におけるシトシンメチル化の分布を示す。メチル化率を決定するために、各位置について13以上のクローンを解析した。Hは、A、T又はCを示す。
図7】‘Kohi'のAct1a上流領域の構造を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[ポリヌクレオチド]
一実施形態において、本発明は、下記(a)〜(d)からなる群より選択されるポリヌクレオチドを提供する。
(a)配列番号2に記載の塩基配列から選択される連続した100塩基以上の塩基配列からなる、ポリヌクレオチド
(b)配列番号2に記載の塩基配列において1又は複数個の塩基が欠失、置換、付加、又は挿入された塩基配列から選択される連続した100塩基以上の塩基配列からなり、且つAct1a遺伝子の上流領域に存在したとき、前記Act1a遺伝子の発現を抑制する、ポリヌクレオチド
(c)配列番号2に記載の塩基配列と80%以上の配列同一性を有する塩基配列から選択される連続した100塩基以上の塩基配列からなり、且つAct1a遺伝子の上流領域に存在したとき、前記Act1a遺伝子の発現を抑制する、ポリヌクレオチド
(d)配列番号2に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件でハイブリダイズし、且つAct1a遺伝子の上流領域に存在したとき、前記Act1a遺伝子の発現を抑制する、ポリヌクレオチド
【0014】
上記(a)〜(c)において、連続した塩基配列の長さは、100塩基以上であれば特に限定されないが、150塩基以上であることが好ましく、200塩基以上であることがより好ましく、300塩基以上であることがさらに好ましく、500塩基以上であることが特に好ましい。
【0015】
上記(b)において、欠失、置換、付加、又は挿入される塩基の数は、結果として生じるポリヌクレオチドがAct1a遺伝子のプロモーターの上流領域に存在したとき、Act1a遺伝子の発現を抑制するする機能を有する限り、特に限定されないが、例えば1〜180個であることができ、1〜150個であることが好ましく、1〜100個であることがより好ましく、1〜60個であることがさらに好ましく、1〜30個であることが特に好ましい。また、1〜20個、1〜10個、又は1〜5個であってもよい。
「ポリヌクレオチドがAct1a遺伝子の上流領域に存在したとき、Act1a遺伝子の発現を抑制する」とは、Act1a遺伝子を有する細胞(例えば、図1においてアクチニジンの発現が確認された品種の細胞)のAct1a遺伝子の上流領域(例えば、−800b〜−2000b付近)に該ポリヌクレオチドを導入したときに、該ポリヌクレオチドを導入しなかった場合と比較して、Act1a遺伝子のmRNA発現量が低下することを意味する。例えば、非導入の場合のmRNA量に対して、該ポリヌクレオチドを導入した細胞のAct1a遺伝子のmRNA発現量が10%以上低下している場合に、該ポリヌクレオチドはAct1a遺伝子の発現を抑制すると評価することができる。前記mRNA発現量は、20%以上低下していることが好ましく、50%以上低下していることがより好ましく、70%以上低下していることがさらに好ましい。Act1a遺伝子のmRNA発現量の測定は、RT−PCR、ノーザンブロッティング等の公知技術により行うことができる。該ポリヌクレオチドの導入は、公知の遺伝子導入技術を用いて行うことができる。遺伝子導入技術としては、例えば、遺伝子編集、相同組換等が例示される。
【0016】
上記(c)において、配列同一性は、80%以上である限り、特に限定されないが、85%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましく、95%以上であることがさらに好ましい。なお、塩基配列同士の配列同一性(相同性)は、2つの塩基配列を、対応する塩基が最も多く一致するように、挿入及び欠失に当たる部分にギャップを入れながら並置し、得られたアラインメント中のギャップを除く塩基配列全体に対する一致した塩基の割合として求められる。塩基配列同士の配列同一性は、当該技術分野で公知の各種相同性検索ソフトウェアを用いて求めることができる。例えば、塩基配列の配列同一性の値は、公知の相同性検索ソフトウェアBLASTPにより得られたアライメントを元にした計算によって得ることができる。
【0017】
上記(d)において、「ストリンジェントな条件」とは、例えば、Molecular Cloning−A LABORATORY MANUAL THIRD EDITION(Sambrookら、Cold Spring Harbor Laboratory Press)に記載の方法が挙げられる。例えば、6×SSC(20×SSCの組成:3M塩化ナトリウム、0.3Mクエン酸溶液、pH7.0)、5×デンハルト溶液(100×デンハルト溶液の組成:2質量%ウシ血清アルブミン、2質量%フィコール、2質量%ポリビニルピロリドン)、0.5質量%のSDS、0.1mg/mLサケ精子DNA、及び50%フォルムアミドからなるハイブリダイゼーションバッファー中で、42〜70℃で数時間から一晩インキュベーションを行うことによりハイブリダイズさせる条件を挙げることができる。なお、インキュベーション後の洗浄の際に用いる洗浄バッファーとしては、好ましくは0.1質量%SDS含有1×SSC溶液、より好ましくは0.1質量%SDS含有0.1×SSC溶液を挙げることができる。
【0018】
配列番号2に記載の塩基配列は、A.chinensis(Planch.)‘Kohi’(紅妃)において、Act1a遺伝子の上流領域(−874b〜−3687b)に位置する塩基配列である。後述する実施例で示すように、‘Kohi’は、Act1a遺伝子の発現量が極めて低く、成熟果実のアクチニジン含有量が極めて低い品種である。また、配列番号2に記載の塩基配列は、潜在的メチル化サイトを多く含み、バイサルファイトシークエンスの解析結果から、それらの潜在的メチル化サイトが高い頻度でメチル化されていることが確認された。
【0019】
配列番号2に記載の塩基配列は、アクチニジン含有量が高いA.deliciosa‘Hayward’では構造が異なり、Act1a遺伝子の5’隣接領域(0〜−873b)の配列は、‘Kohi’と‘Hayward’でほぼ共通である。そのため、‘Kohi’におけるAct1a遺伝子の発現抑制は、配列番号2に記載の塩基配列が、Act1a遺伝子の上流領域に存在していることに起因する。
すなわち、配列番号2に記載の塩基配列がAct1a遺伝子の上流領域に存在することにより、プロモーターへの転写因子の結合が阻害され、Act1a遺伝子の転写が抑制されると考えられる。
【0020】
本実施形態のポリヌクレオチドは、配列番号2に記載の塩基配列又はその変異配列からなるポリヌクレオチドであってもよく、前記ポリヌクレオチドの100塩基以上の断片を含むものであってもよい。具体的には、配列番号3、4又は5に記載の塩基配列を含むポリヌクレオチド又はその100塩基以上の断片等が挙げられるが、これらに限定されない。これらの中でも、配列番号5に記載の塩基配列を含むポリヌクレオチド又はその100塩基以上の断片が好ましい。例えば、本実施形態のポリヌクレオチドの好ましい態様として、下記(a’)〜(d’)のポリヌクレオチドが例示される。
(a’)配列番号5に記載の塩基配列から選択される連続した100塩基以上の塩基配列からなる、ポリヌクレオチド
(b’)配列番号5に記載の塩基配列において1又は複数個の塩基が欠失、置換、付加、又は挿入された塩基配列から選択される連続した100塩基以上の塩基配列からなり、且つAct1a遺伝子の上流領域に存在したとき、前記Act1a遺伝子の発現を抑制する、ポリヌクレオチド
(c’)配列番号5に記載の塩基配列と80%以上の配列同一性を有する塩基配列から選択される連続した100塩基以上の塩基配列からなり、且つAct1a遺伝子の上流領域に存在したとき、前記Act1a遺伝子の発現を抑制する、ポリヌクレオチド
(d’)配列番号5に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件でハイブリダイズし、且つAct1a遺伝子の上流領域に存在したとき、前記Act1a遺伝子の発現を抑制する、ポリヌクレオチド
上記(a’)〜(d’)における具体的な数値の例示については、上記(a)〜(d)と同様である。
【0021】
本実施形態のポリヌクレオチドは、配列番号2に記載の塩基配列の中でも、潜在的メチル化サイトの出現頻度が高い領域を含むことが好ましい。「潜在的メチル化サイト」とは、メチル化されることが知られている配列を意味する。具体的には、潜在的メチル化サイトの配列としては、CG、CHG、CHH(Hは、A、T又はC)が例示される。これらの中でも、本実施形態のポリヌクレオチドは、潜在的メチル化サイトとしてCGを多く含むことが好ましい。配列番号2に記載の塩基配列において、CGを多く含む領域としては、配列番号2に記載の塩基配列の1170〜1540位の塩基配列、2380〜2814位の塩基配列等が挙げられる。したがって、配列番号2に記載の塩基配列の1170〜1540位の塩基配列、又は2380〜2814位の塩基配列から選択される連続した100塩基以上の塩基配列を含むポリヌクレオチドは、本実施形態のポリヌクレオチドの好適な例である。前記好適な例において、連続した100塩基以上の塩基配列は、200塩基以上が好ましく、300塩基以上がより好ましく、350塩基以上がさらに好ましい。
【0022】
本実施形態のポリヌクレオチドは、配列番号2に記載の塩基配列から選択される塩基配列に限定されず、配列番号2に記載の塩基配列において変異を有する塩基配列から選択される塩基配列を含んでいてもよい。変異の位置は、特に限定されないが、潜在的メチル化サイト以外の領域であることが好ましい。
【0023】
本実施形態のポリヌクレオチドは、配列番号2に記載の塩基配列に基づいて、公知の核酸合成法等を用いて合成することにより、取得することができる。あるいは、A.chinensis‘Kohi’のゲノムDNAを鋳型とし、配列番号2に記載の塩基配列に基づいて設計されたプライマーを用いて、PCR法や等温増幅法等の公知の核酸増幅法によりポリヌクレオチド断片を増幅することにより、取得することができる。
【0024】
本実施形態のポリヌクレオチドは、標的遺伝子の上流領域(例えば、プロモーターの転写因子結合サイトの5’隣接領域)に存在することにより、該標的遺伝子の発現が抑制されるため、後述する標的遺伝子の発現制御方法等に用いることができる。
【0025】
[ベクター]
一実施形態において、本発明は、上記実施形態のポリヌクレオチドを含むベクターを提供する。
【0026】
本実施形態のベクターは、上記実施形態のポリヌクレオチド(以下、「本ポリヌクレオチド」という。)を含む。本実施形態のベクターは、特に限定されず、市販のプラスミドベクター、ウイルスベクター等であってもよい。
本実施形態のベクターは、本ポリヌクレオチドに加えて、マーカー遺伝子、複製開始点、複製開始点に結合して複製を制御するタンパク質をコードする遺伝子等を含んでいてもよい。上記のマーカー遺伝子とは、該マーカー遺伝子を細胞に導入することにより、細胞の選別や選択を可能とするような遺伝子をいう。マーカー遺伝子の具体例としては、薬剤耐性遺伝子、蛍光タンパク質遺伝子、発光酵素遺伝子、発色酵素遺伝子等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。上記の薬剤耐性遺伝子の具体例としては、ネオマイシン耐性遺伝子、テトラサイクリン耐性遺伝子、カナマイシン耐性遺伝子、ゼオシン耐性遺伝子、ハイグロマイシン耐性遺伝子などが挙げられる。上記の蛍光タンパク質遺伝子の具体例としては、緑色蛍光タンパク質(GFP)遺伝子、黄色蛍光タンパク質(YFP)遺伝子、赤色蛍光タンパク質(RFP)遺伝子などが挙げられる。上記の発光酵素遺伝子の具体例としては、ルシフェラーゼ遺伝子などが挙げられる。上記の発色酵素遺伝子の具体例としては、βガラクトシターゼ遺伝子、βグルクロニダーゼ遺伝子、アルカリフォスファターゼ遺伝子等が挙げられる。
【0027】
本実施形態のベクターは、後述する標的遺伝子の発現制御方法等に用いることができる。
【0028】
[細胞]
一実施形態において、本発明は、本ポリヌクレオチドを、標的遺伝子の上流領域に含む細胞を提供する。
【0029】
本実施形態の細胞は、標的遺伝子の上流領域に、本ポリヌクレオチドを含む。本明細書において、「標的遺伝子」とは、本ポリヌクレオチドによる発現抑制の対象となる遺伝子を意味する。標的遺伝子は、特に限定されず、任意の遺伝子であってよい。具体例としては、アレルゲン性タンパク質をコードする遺伝子が挙げられ、そのような遺伝子としては、例えば、アクチニジンをコードする遺伝子(Act1a、Act2aなど)等が例示される。
【0030】
本実施形態の細胞は、特に限定されないが、真核生物の細胞が好ましい。真核生物の細胞としては、動物細胞であってもよく、植物細胞であってもよいが、植物細胞であることが好ましい。植物細胞としては、陸上植物の細胞が好ましく、種子植物の細胞がより好ましく、被子植物の細胞がさらに好ましい。被子植物の細胞の中でも、マタタビ科(Actinidiaceae)の植物の細胞が好ましく、アクチニジア属(Actinidia)に属する植物の細胞がより好ましい。アクチニジア属に属する植物としては、アクチニジア・チネンシス(Actinidia chinesis)、アクチニジア・デリシオサ(Actinidia deliciosa)、アクチニジア・アルグタ(Actinidia arguta)、アクチニジア・エリアンサ(Actinidia eriantha)等が挙げられる。
【0031】
本明細書において、「標的遺伝子の上流領域」とは、標的遺伝子のコード配列の5’側に隣接する領域を意味する。5’側に隣接する領域としては、例えば、0b〜−10000bが例示される。なお、本明細書においては、標的遺伝子の転写開始点を+1bとし、前記転写開始点の5’側に隣接するヌクレオチド残基を0bとして、標的遺伝子に対するヌクレオチド残基の位置を示すものとする。また、対象の配列に対して、5’側を上流、3’側を下流と表現する。本ポリヌクレオチドが存在する領域は、−500b〜−10000bの範囲であってもよく、−700b〜−7000bの範囲であってもよく、−800b〜−5000bの範囲であってもよく、−800b〜−4000bの範囲であってもよい。
【0032】
あるいは、標的遺伝子の上流領域において、本ポリヌクレオチドが存在する位置としては、転写因子結合領域の5’側に隣接する領域も例示される。例えば、当該転写因子結合領域を起点として、その上流1b〜10000bの範囲に、本ポリヌクレオチドが存在してもよい。当該範囲は、1b〜80000bの範囲であってもよく、1b〜5000bの範囲であってもよく、1b〜4000bの範囲であってもよい。
【0033】
例えば、標的遺伝子がAct1a遺伝子である場合、本ポリヌクレオチドは、Act1a遺伝子の上流領域−600b〜−10000bの範囲に存在することが好ましい。前記範囲は、−800b〜−7000bの範囲であることが好ましく、−800b〜5000bの範囲であることがより好ましく、−800b〜−4000bの範囲であることがさらに好ましい。好ましくは、本ポリヌクレオチドの3’末端配列が、−600b〜−1000bの範囲に存在し、−800b〜−1000bの範囲に存在することがより好ましく、−800b〜−950bの範囲に存在することがさらに好ましい。
【0034】
本実施形態の細胞においては、標的遺伝子の上流領域に本ポリヌクレオチドを含む。本ポリヌクレオチドは、潜在的メチル化サイトを多く含み、本ポリヌクレオチドがゲノム中に存在すると、前記潜在的メチル化サイトが高頻度にメチル化される。これにより、標的遺伝子のプロモーターの機能が阻害され、標的遺伝子の発現が抑制される。したがって、本実施形態の細胞は、本ポリヌクレオチドを含まない同種の細胞と比較して、標的遺伝子の発現が抑制されている点に特徴を有する。
【0035】
本実施形態の細胞は、本ポリヌクレオチドを、ホモで含んでいることが好ましい。本ポリヌクレオチドを、標的遺伝子の上流領域にホモで含むことにより、標的遺伝子の発現がより抑制される。
【0036】
本実施形態の細胞において、標的遺伝子の上流領域に存在する本ポリヌクレオチドは、公知のDNA導入技術により、外来から導入されたものであることが好ましい。本ポリヌクレオチドが外来のものであるか否かは、標的遺伝子上流領域の配列解析を行い、野生株の配列と比較することにより確認することができる。あるいは、PCR法又はサザンハイブリダイゼーション法等により確認してもよい。
【0037】
本実施形態の細胞は、本ポリヌクレオチドを、公知のDNA導入技術を用いて、目的の細胞に導入することにより作製することができる。例えば、相同組換法や遺伝子編集技術を用いることにより、標的遺伝子の上流領域の所望の位置に、本ポリヌクレオチドを導入することが可能である。DNAの細胞への導入方法も公知の方法を用いることができ、パーティクルガン法、エレクトロポレーション法、PEG(ポリエチレングリコール)法等が挙げられる。
【0038】
本実施形態の細胞が、植物細胞である場合、植物体のいずれの部位の細胞であってもよく、根、茎、葉、種子、胚、胚珠、子房、茎頂、葯、花粉等の細胞が挙げられる。また、植物体ではなく、培養細胞等であってもよい。例えば、本実施形態の細胞からカルスを形成させ、それを再分化させて不定胚や不定芽等を得て、植物体に生長させてもよい。このようにして得られた植物体は、野生株と比較して、標的遺伝子の発現が抑制されている。したがって、本実施形態の細胞から、所望の標的遺伝子の発現が抑制された植物体を得ることができる。よって、本発明は、本ポリヌクレオチドが、標的遺伝子の上流領域に導入された植物体もまた提供する。例えば、標的遺伝子をAct1a遺伝子とし、Act1a遺伝子の上流領域(例えば、−600b〜−10000bの範囲)に、本ポリヌクレオチドが導入されたアクチニジア属の細胞は、本実施形態の細胞の好適な例である。前記細胞から形成された植物体からは、野生株と比較して、アクチニジン含有量が低減された果実を得ることができる。
【0039】
[標的遺伝子の発現制御方法]
一実施形態において、本発明は、標的遺伝子の発現を抑制する方法を提供する。本実施形態の方法は、本ポリヌクレオチドを、標的遺伝子の上流領域に導入する工程を含む。
【0040】
本実施形態の方法は、上記[細胞]において、上記実施形態の細胞の作製方法として挙げた方法と同様に行うことができる。標的遺伝子は、特に限定されず、上記[細胞]で例示したものと同様のものが例示される。また、標的遺伝子の上流領域についても、上記[細胞]で例示した領域と同様の領域が挙げられる。さらに、本実施形態の方法において、本ポリヌクレオチドを導入する対象である細胞についても、上記[細胞]で例示した細胞と同様の細胞が例示される。本ポリヌクレオチドを、標的遺伝子の上流領域に導入する方法は、公知のDNA導入技術を用いればよく、上記[細胞]で例示した方法と同様のものが挙げられる。本ポリヌクレオチドが、標的遺伝子の上流領域に導入されたことを確認する方法についても、上記[細胞]で例示した方法と同様のものが挙げられる。
【0041】
本実施形態の方法によれば、本ポリヌクレオチドを、標的遺伝子の上流領域に導入することにより、当該標的遺伝子の発現を抑制することができる。したがって、所望の表現型を有する細胞を得ることができ、当該細胞から植物体又は動物体を発生させることにより、所望の表現型を有する植物又は動物を得ることができる。そのため、本実施形態の方法は、動植物の育種に利用可能である。
【0042】
[アレルゲン性評価方法]
一実施形態において、本発明は、マタタビ科(Actinidiaceae)植物のアレルゲン性の評価方法を提供する。本実施形態の方法は、マタタビ科(Actinidiaceae)植物の細胞において、アレルゲン遺伝子の上流領域における、本ポリヌクレオチドを検出する工程を含む。
【0043】
本明細書において、「アレルゲン性」とは、摂食により、アレルギー応答を引き起こす食品の性質をいう。したがって、マタタビ科植物のアレルゲン性は、可食部である果実を摂食したときのアレルギー応答の程度を意味する。「アレルゲン」とは、アレルギー反応を引き起こす原因物質をいう。「アレルゲン遺伝子」とは、アレルゲンとなり得るタンパク質をコードする遺伝子をいう。
マタタビ科植物が有するアレルゲンは、特に限定されないが、アクチニジンが例示される。また、アレルゲン遺伝子としては、アクチニジンをコードする遺伝子が(Act1a、Act2aなど)が挙げられる。好ましくは、アレルゲン遺伝子はAct1a遺伝子である。
【0044】
本実施形態の方法により評価されるマタタビ科植物は、特に限定されないが、アレルゲン遺伝子を有することが好ましい。そのようなマタタビ科植物としては、アクチニジア属に属する植物が挙げられる。アクチニジア属に属する植物としては、上記[細胞]で例示したものと同様のものが例示される。
本実施形態の方法で用いる細胞は、植物体のいずれの部位の細胞であってもよい。例えば、根、茎、葉、種子、胚、胚珠、子房、茎頂、葯、花粉等の細胞を用いることができる。
【0045】
アレルゲン遺伝子の上流領域における、本ポリヌクレオチドの有無を調べる方法は、公知の方法を特に制限なく用いることができる。例えば、PCR法、サザンブロット法、シークエンス法等が例示される。
【0046】
本実施形態の方法をPCR法により行う場合、配列番号2に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチドの少なくとも一部を増幅可能なプライマーセットを用いることが好ましい。より好ましくは、配列番号2に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチドの少なくとも一部と、アレルゲン遺伝子のプロモーター領域(0b〜−900bの範囲等)の少なくとも一部と、を含む領域を増幅可能なプライマーセットを用いる。例えば、アレルゲン遺伝子がAct1a遺伝子である場合、配列番号2に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチドの少なくとも一部と、配列番号6又は7に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチドの少なくとも一部と、を含む領域を増幅可能なプライマーセットを好適に用いることができる。そのようなプライマーセットとしては、後述する[アレルゲン性評価用キット]に例示するプライマーセット等が挙げられる。なお、配列番号6に記載の塩基配列は、‘Kohi’のAct1a遺伝子の翻訳開始点から−873bの領域の塩基配列である。配列番号7に記載の塩基配列は、‘Hayward’のAct1a遺伝子の翻訳開始点から−867の領域の塩基配列である。配列番号6及び7の配列は、‘Kohi’及び‘Hayward’で高度に保存されており(図5参照)、他のマタタビ科植物においても保存されていると考えられる。
【0047】
例えば、マタタビ科植物の細胞から抽出したゲノムDNAを鋳型として、上記のようなプライマーセットを用いてPCRを行う。PCRの条件は、プライマー配列に応じて、適宜決定すればよい。PCR反応終了後、アガロースゲル電気泳動等により増幅断片の確認を行う。増幅断片の有無、増幅断片のサイズ等により、アレルゲン遺伝子の上流領域における本ポリヌクレオチドの有無を判定することができる。また、本ポリヌクレオチドが、ホモで存在するか、ヘテロで存在するかを調べるためには、リアルタイムPCR法等の定量PCRを行ってもよい。あるいは、アレルゲン遺伝子がAct1a遺伝子である場合、本ポリヌクレオチドが、ホモかヘテロでかを調べるために、配列番号1に記載の塩基配列の1〜301位、1029〜1077位、又は1381〜1458位の塩基配列からなるポリヌクレオチドの少なくとも一部と、配列番号5又は6に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチドの少なくとも一部とを含む領域を増幅可能なプライマーセットを用いてもよい。配列番号1に記載の塩基配列は、‘Kohi'のAct1a遺伝子の翻訳開始点(+60b)から−3989bの塩基配列であり、前記例示した領域は、アクチニジア属に属する植物において高度に保存されている。そのため、これらのプライマーセットを用いてPCRを行い、サイズの異なる断片が複数増幅された場合には、当該植物は、本ポリヌクレオチドをヘテロで有すると判定することができる。一方、同じサイズの断片が1つのみ増幅された場合には、増幅断片のサイズによって、本ポリヌクレオチドをホモで有する(例えば、1000b以上の断片が増幅された場合)、又はホモで有しない(例えば、1000b未満の断片が増幅された場合)と判定することができる。
【0048】
本実施形態の方法をサザンブロット法により行う場合、配列番号2に記載の塩基配列若しくはその相補配列からなるポリヌクレオチド若しくはその断片に特異的にハイブリダイズするプローブを用いることができる。「特異的にハイブリダイズする」とは、対象のポリヌクレオチドにハイブリダイズするが、他のポリヌクレオチドにはハイブリダイズしないことを意味する。例えば、プローブが、上記[ポリヌクレオチド]で例示したストリンジェントな条件で対象のポリヌクレオチドにハイブリダイズする場合に、該対象ポリヌクレオチドに特異的にハイブリダイズするとしてもよい。そのようなプローブとしては、後述する[アレルゲン性評価用キット]に例示するプローブ等が挙げられる。プローブは、放射放射性同位体、発色酵素、蛍光色素等で標識されていてもよい。
【0049】
例えば、マタタビ科植物の細胞からゲノムDNAを抽出し、配列番号2に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチドの少なくとも一部と、アレルゲン遺伝子のプロモーター領域(0b〜−900bの範囲等)の少なくとも一部と、を含む断片が生じるように、適切な制限酵素等により切断する。次いで、アガロースゲル電気泳動等を行った後、ニトロセルロース膜やナイロン膜等のメンブレンに転写する。次いで、上記のようなプローブを用いて、メンブレン上でハイブリダイゼーション反応を行う。ハイブリダイゼーション反応後、ハイブリダイゼーションしたプローブの標識を検出し、検出バンドの有無、検出バンドのサイズ等により、アレルゲン遺伝子の上流領域における本ポリヌクレオチドの有無を判定することができる。
【0050】
プローブとしては、配列番号2に記載の塩基配列若しくはその相補配列からなるポリヌクレオチド若しくはその断片に特異的にハイブリダイズするプローブ(以下、「プローブ1」という場合がある。)に加えて、アレルゲン遺伝子のプロモーター領域(0b〜−900bの範囲等)に特異的にハイブリダイズするプローブ(以下、「プローブ2」という場合がある。)を用いてもよい。例えば、プローブ1及びプローブ2にそれぞれ異なる標識を用い、ハイブリダイゼーション反応後に、それらの標識が同一バンド上で検出された場合には、アレルゲン遺伝子の上流領域に、本ポリヌクレオチドが存在すると判定することができる。また、両標識の検出量および検出位置により、本ポリヌクレオチドがホモで存在するか、ヘテロで存在するかを確認することができる。上記プローブ2は、制限酵素等で消化した際に、配列番号2に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチドの少なくとも一部と同一断片上に存在すると想定される限り、アレルゲン遺伝子の5’非翻訳領域(5’untranslated region:5’UTR)又はコード領域に特異的にハイブリダイズするプローブであってもよい。
【0051】
上記のように、アレルゲン遺伝子の上流領域における本ポリヌクレオチドを検出し、アレルゲン遺伝子の上流領域に本ポリヌクレオチドが存在すると判定された場合には、当該マタタビ科植物は、低アレルゲン性であると評価することができる。さらに、本ポリヌクレオチドが、アレルゲン遺伝子の上流領域にホモで存在すると判定された場合、より低アレルゲン性であると評価することができる。
【0052】
本実施形態の方法によれば、果実の成熟を待つことなく、植物体のいずれの生長段階でもアレルゲン性の評価を行うことができる。そのため、低アレルゲン性の植物体の選抜や低アレルゲン性品種の育種等に利用することができる。
【0053】
[アレルゲン性評価用キット]
一実施形態において、本発明は、マタタビ科(Actinidiaceae)植物のアレルゲン性評価キットを提供する。本実施形態のキットは、下記(i)及び(ii)の少なくとも一方を含む。
(i)配列番号2に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチドの少なくとも一部とアレルゲン遺伝子のプロモーター領域の少なくとも一部を増幅可能なプライマーセット
(ii)配列番号2に記載の塩基配列又はその相補配列からなるポリヌクレオチドに特異的にハイブリダイズするプローブ
【0054】
((i)プライマーセット)
プライマーセットは、配列番号2に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチドの少なくとも一部と、アレルゲン遺伝子のプロモーター領域の少なくとも一部と、を含む領域を増幅可能なプライマーセットであることが好ましい。プロモーター領域は、アレルゲン遺伝子の種類により異なるが、例えば、0b〜−900bの範囲等が挙げられる。例えば、アレルゲン遺伝子がAct1a遺伝子である場合、0b〜−850b程度までの領域がプロモーターとして例示される。
【0055】
より具体的には、プライマーセットは、例えば、フォワードプライマーとして、配列番号2に記載の塩基配列の相補配列からなるポリヌクレオチドに特異的にアニーリング(ハイブリダイズ)するプライマーを含んでいてもよい。そのようなフォワードプライマーとしては、配列番号2に記載の塩基配列の一部を含むプライマーが挙げられる。また、フォワードプライマーは、配列番号1に記載の塩基配列の1〜3115位の配列の一部を含むプライマーであってもよい。例えば、配列番号1に記載の塩基配列の1〜301位、1029〜1077位、又は1381〜1458位の塩基配列の一部を含むプライマーが好ましく例示される。前記配列の一部を含むプライマーは、本ポリヌクレオチドが、ホモであるかヘテロであるかの判定にも利用可能である。
また、リバースプライマーとして、アレルゲン遺伝子のプロモーター領域(0b〜−900bの範囲等)、5’UTR、又はコード領域のセンス鎖に特異的にアニーリング(ハイブリダイズ)するプライマーを含んでいてもよい。そのようなリバースプライマーとしては、アレルゲン遺伝子のプロモーター領域(0b〜−900bの範囲等)、5’UTR、又はコード領域のアンチセンス鎖の塩基配列の一部を含むプライマーが挙げられる。アレルゲン遺伝子がAct1a遺伝子である場合、リバースプライマーとしては、例えば、配列番号6又は7に記載の塩基配列の相補配列の一部を含むプライマーが挙げられる。プライマーの設計は、他の領域の塩基配列やTm値等に応じて、適宜行えばよい。
【0056】
プライマーの長さは、増幅反応を妨げない限り特に限定されないが、例えば、10〜50塩基程度が例示され、15〜40塩基程度が好ましく、18〜30塩基程度がより好ましい。
【0057】
((ii)プローブ)
プローブは、配列番号2に記載の塩基配列又はその相補配列の少なくとも一部を含むことが好ましい。プローブの長さは、ハイブリダイゼーション反応を妨げない限り特に限定されないが、例えば、50〜500塩基程度、50〜300塩基程度、50〜200塩基程度、50〜100塩基程度等が挙げられる。プローブの塩基配列は、配列番号2に記載の塩基配列に特異的な領域から選択することが好ましい。
【0058】
また、プローブは、標識化されたものであってもよい。標識化のための標識物質は、特に限定されず、公知のものを用いればよい。標識物質としては、例えば、ペルオキシダーゼ(例、西洋ワサビペルオキシダーゼ)、アルカリホスファターゼなどの酵素標識;カルボキシフルオレセイン(FAM)、6−カルボキシ−4’,5’−ジクロロ2’ ,7’−ジメトキシフルオレセイン(JOE)、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)、テトラクロロフルオレセイン(TET)、5'−ヘキサクロロ−フルオレセイン−CEホスホロアミダイト(HEX)、Cy3、Cy5、Alexa568、Alexa647などの蛍光標識;ヨウ素125などの放射性同位体標識;ルテニウム錯体などの電気化学発光標識;ビオチン;金属ナノ粒子等が挙げられる。プローブの標識化は、標識物質の種類に応じて、適宜、公知の方法を選択して行うことができる。なお、標識物質としてビオチンを用いる場合には、本実施形態のキットは、さらに、標識化されたアビジンを含んでいてもよい。アビジンの標識物質としては、上記例示した標識物質のうちビオチン以外の標識物質が例示される。
【0059】
プローブは、2本鎖ポリヌクレオチドであってもよく、1本鎖ポリヌクレオチドであってもよい。また、プローブは、DNAであってもよく、RNAであってもよく、DNAとRNAとの混合物であってもよい。また、プローブは、BNA(bridged nucleic acids)、PNA(peptide nucleic acid)、ENA(2’−O,4’−C−ethylene−bridged nucleic acids)等の人工核酸を含むものであってもよい。
【0060】
(他の要素)
本実施形態のキットは、上記プライマーセット及びプローブ以外の他の要素を含んでいてもよい。他の要素は、特に限定されないが、例えば、PCR法又はサザンブロット法に用いる試薬類等が挙げられる。
【0061】
PCR法に用いる試薬類としては、DNAポリメラーゼ、反応バッファー、dNTP等が例示される。
サザンブロット法に用いる試薬類としては、バッファー類(ブロッキングバッファー、洗浄バッファー、ハイブリダイゼーションバッファー等)、プローブ標識の検出試薬、上記[アレルゲン性評価方法]で記載したプローブ2に該当するプローブ等が例示される。
【0062】
本実施形態のキットは、マタタビ科植物の植物のアレルゲン性を評価するために用いることができる。本実施形態のキットは、PCR法やサザンブロット法で用いられる一般的な方法と同様に使用することができる。
【実施例】
【0063】
以下、実施例により本発明を説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0064】
[材料と方法]
(植物材料)
アクチニジア・チネンシス(Actinidia chinensis)(Planch.)‘Kohi’は、日本国徳島県のくゆな農園から入手した。A.chinensis‘Hort16A’は、地域市場で購入した。アクチニジア・デリシオサ(Actinidia deliciosa)(A.Chev.)C.F.Liang & A.R.Ferguson栽培品種(‘Hayward’、‘Abbott’、‘Monty’及び‘Bruno’)、並びに他のアクチニジア・チネンシス栽培品種(‘Sensational apple’、‘Golden king’、‘Yellow queen’、‘Shonan yellow’、‘Kataura yellow’及び‘Koshin’)は、日本国神奈川県根府川の野外で栽培した。アクチニジア・アルグタ(Actinidia arguta)及びアクチニジア・エリアンサ(Actinidia eriantha)は、日本大学(日本国神奈川県藤沢市)の野外で栽培した。キウイフルーツは、食べ頃に熟すまで室温で保存した。熟したキウイフルーツは、皮をむいて切り、液体窒素で凍結して、使用するまで−80℃で保存した。以下の各実験単位では、少なくとも3つの果実を使用した。
【0065】
(抗体の調製)
アクチニジン抗体を作製するために、Pastorello et al(Pastorello et al.,1998. J. Allergy Clin. Immunol. 101: 531-537.)に記載の方法に若干変更を加えた方法で、‘Hayward’の果実からアクチニジンを精製した。アクチニジンをAKTA(登録商標)10S(GE Healthcare life sciences)を用いたアニオン交換クロマトグラフィーにより精製した。果実の粗抽出物を、20mM Tris−HCl(pH7.5)で平衡化したHi−Trap Q HP(16mm×26mm、GE Healthcare life sciences)にロードした。タンパク質をNaCl濃度直線勾配(0〜0.5M)で溶出し、分画した。高プロテアーゼン活性を有する画分を集め、20mMクエン酸ナトリウムバッファー(pH4.5)で平衡化したSOURCE 15Q(4.6mm×100mm、GE Healthcare life sciences)にロードし、NaCl濃度直線勾配(0〜0.5M)で溶出した。プロテアーゼアッセイを行い、高活性を示す画分をドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)により分析し、アクチニジンの単一バンドを確認した。凍結乾燥したアクチニジン(5.6g)をSigma−Aldrichに送付し、抗アクチニジン ウサギ抗体の作製を依頼した。
【0066】
(イムノブロット解析)
皮を除去した果実組織を、2倍量のホモジナイズバッファー(50mMリン酸ナトリウム[pH7.0]、2%[w/v]ポリビニルピロリドン[PVP]、5mMエチレンジアミン四酢酸[EDTA]、Complete Protease Inhibitor Coktail[Roche Diagnostics])中で、polytron PT10−35GT(Central Scientific Commerce)を用いて4℃でホモジナイズした。次いで、8,500×g、4℃で15分間遠心した。上清をMiracloth(Millipore)で濾過し、20mM Tris−HCl(pH7.0)で平衡化したPD10カラム(GE Healthcare life sciences)に通した。サンプルを当量のSDSサンプルバッファー(125mM Tris−HCl[pH6.8]、2.5%[w/v]SDS、25%[v/v]グリセロール、2.5%[v/v]β−メルカプトエタノール、0.002%[w/v]ブロモフェノールブルー)と混合し、95℃で1分間加熱した。前記混合物20μLを用いて、SDS−PAGE(12.5%アクリルアミドゲル)を行った。電気泳動後、タンパク質をClearTrans(登録商標) Nitrocellulose Membrane(Wako chemicals)に転写した。イムノブロット解析を、以前記載したように行った(Kamiyoshihara, et al., Plant Physiol.160: 488-497.)。抗血清を1/2000倍希釈で用いた。全てのタンパク質を可視化するために、ゲルをSimplyBlue SafeStain(Thermo Fisher Scientific)で染色した。
【0067】
(Enzyme-linked immunosorbent assay:ELISA)
PD10カラム後のサンプルを、コーティングバッファー(5mM NaCO、10mM NaHCO[pH9.5])で25倍希釈した。アリコート(50μL)を、96F MAXISORP(登録商標) BlackMicrowell SH(Nunc)の各ウェルに添加し、37℃で1時間インキュベートした。0.05% Tween20含有Dulbecco’s PBS(GIBCO)(PBST)で洗浄後、ウェルを1%牛血清アルブミン含有PBSでブロックした。1%BSA/PBSTで希釈(1/400)した抗アクチニジン抗体を各ウェルに添加し、上記のようにインキュベートした。PBSTで洗浄後、抗原−抗体結合を、製造者の説明書に従い、SureBlue(Funakoshi)を用いて検出した。反応を1N HClを添加することにより停止し、450nMの吸光度をSynergy2(Biotek)を用いてモニターした。実験は3連で行った。‘Hayward’から精製したアクチニジンを検量線の作製に使用した。
【0068】
(ゲノムDNAの抽出)
DNA抽出は、以前記載された方法(Xu et al., Plant. 2004. Plant. Mol. Biol. Rep. 22:301a-301g.)に若干変更を加えて行った。液体窒素中ですりつぶした1.0gの果実組織を、5mLの洗浄バッファー(100mM Tris−HCl[pH8.0]、5mM EDTA、0.35Mグルコース、2%[w/v]PVP、4%[v/v]2-メルカプトエタノール)と混合し、氷上で30分間インキュベートした。6,000×g、4℃で10分間遠心分離した。沈殿を、5mLの抽出バッファー(100mM Tris−HCl[pH8.0]、5mM EDTA、1.5M NaCl、3%[w/v]セチルトリメチルアンモニウムブロミド、4%[v/v]2−メルカプトエタノール)に再懸濁し、数回攪拌しながら65℃で30分間インキュベートした。6,000×g、4℃で10分間遠心分離後、上清を0.1倍量の5M酢酸カリウム(pH4.8)及び等量のクロロホルム/イソアミルアルコール(24:1)と混合した。短く遠心分離した後の上清を、0.1倍量の3M酢酸ナトリウム及び等量のイソプロパノールと混合し、DNAを沈殿させた。DNAを70%エタノールで3回洗浄し、200μLの滅菌水で再構成した。DNAサンプルを、1μgのRNaseの存在下、37℃で3時間インキュベートし、混入RNAを分解した。
【0069】
(全RNA抽出)
RNA抽出を、以前記載された方法(Wan and Wilkins, 1994. Anal. Biochem. 223: 7-12.)に若干の変更を加えて行った。液体窒素中ですりつぶした果実組織(1g)を、10mg/mL Protease Kを含む5mLの予熱した抽出バッファー(0.2Mホウ酸ナトリウム[pH9.0]、30mM EDTA、1%デオキシコール酸ナトリウム、1% SDS、2% PVP、1% 4−ノニルフェニルポリエチレングリコール、10mMジチオスレイトール)中で、42℃で90分間インキュベートした。3M KCl(終濃度0.16M)を添加した後、氷上で1時間インキュベートした。サンプルを7,500rpmで10分間遠心分離し、上清を回収して、1/3量の10MLiClと混合し、−20℃で一晩インキュベートした。13,000rpmで30分間遠心分離して得られたペレットを、500μLの2M LiClに再懸濁した。2M LiClでの洗浄を3回繰り返し、ペレットを400μLの10mM Tris−HCl(pH7.5)に再懸濁した。DNAをDNase I Amplification Grade(Invitrogen)で消化した。
【0070】
(RT−PCR)
cDNA合成をPrimeScript(登録商標) Reverse Transcriptase(Takara)及びNot I−Oligo d(T)18 primer(5'-AACTGGAAGAATTCGCGGCCGCAGGAATTTTTTTTTTTTTTTTTT-3'[配列番号10])を用いて、製造者の説明書に従って行った。PCRを、2×GoTaq Green Master Mix(Promega)、0.5μMプライマー、及びcDNAからなる20μLの混合液で行った。PCR条件は、以下のとおりとした:工程1,95℃で2分;工程2,95℃で1分、55℃で1分、72℃で1分/1kb長;工程3,72℃で5分。工程2は、30回繰り返した。以下の遺伝子特異的プライマーセットをDNA断片増幅に用いた。
Act1a:センスプライマー,5'-GAAGTCAAGGCCATGTACGAG-3'(配列番号11)
アンチセンスプライマー,5'-AACCGCTTGTAAATCCCAAGT-3'(配列番号12)
Act2a:センスプライマー,5'-GTCAGCCATCGACATCGAAAACTCAGT-3'(配列番号13)
アンチセンスプライマー,5'-GAAACGGTTCAAGCCCAAAGA-3'(配列番号14)
PCR産物のアガロースゲル電気泳動を行い、UV照明下でエチジウムブロミドを用いて検出した。
【0071】
(リアルタイムPCR)
リアルタイムPCRを、cDNAを鋳型とし、0.4μMプライマーを用いて、SYBR Premix Ex Taq(Takara)を使って行った。反応及び検出は、Mx3000P(Stratagene)を用いて行った。反応条件は以下の通りとした:工程1,95℃で10秒;工程2,95℃で5秒、60℃で20秒。工程2は、40回繰り返した。定常的に発現するUbiC9レベルを用いて、Act1aの発現レベルを標準化した。以下の遺伝子特異的プライマーセットをDNA断片増幅に用いた。
Act1a:センスプライマー,5'-GGCACAGAGGGAGGTATCGA-3'(配列番号15)
アンチセンスプライマー,5'-CAATTCCACATGTTCCAGCA-3'(配列番号16)
UbiC9:センスプライマー,5'-CCATTTCCAAGGTGTTGCTT-3'(配列番号17)
アンチセンスプライア―,5'-TACTTGTTCCGGTCCGTCTT-3'(配列番号18)
【0072】
(熱非対称インターレスPCR:TAIL−PCR)
‘Kohi’のAct1aの5’−flaning領域を得るために、TAIL−PCRを、Liuら(Liu et al., 1995. Plant J. 8: 457-463.)に記載の方法に従って行った。‘Hayward’のプロモーターに対する特異的(specific:SP)プライマーと、5種の任意のディジェネレート(arbitrary degenerate:AD)プライマーをデザインした。
SP1:5'-GTTGGAACTGCAGATTCAGCAG-3'(配列番号19)
SP2:5'-CTTTAAATCCTTATCCAACCACAAC-3'(配列番号20)
SP3:5'-GAATGCAAGTAGCTAACCCTGTGG-3'(配列番号21)
AD1:5'-NGTCGASWGANAWGAA-3'(配列番号22)
AD2:5'-GTNCGASWCANAWGTT-3'(配列番号23)
AD3:5'-WGTGNAGWANCANAGA-3'(配列番号24)
AD4:5'-AGWGNAGWANCAWAGG-3'(配列番号25)
AD5:5'-NTCGASTWTSGWGTT-3'(配列番号26)
【0073】
SPプライマー(0.5μM)及び混合ADプライマー(各0.8μM)と共に、EmeraldAmp(登録商標) MAX PCR MASTER Mix(Takara)を用いて、PCRを3ラウンド行い、増幅産物をT−Vector pMD20(Takara)にクローニングした。PCR条件は、Liuら(Liu et al., 1995. Plant J. 8: 457-463.)に記載の方法に従った。
【0074】
(配列分析)
Act1a遺伝子の配列及びプロモーター領域の配列解析をBigDye(登録商標) Terminator v3.1 Cycle Sequence Kit(Thermo Fisher Scientific)を用いて、サンガー法により行った。マルチシークエンスアライメントは、ClustalWを用いて行った。
【0075】
(バイサルファイトシークエンス)
抽出したゲノムDNAを、MethylEasy(登録商標) DNA Bisulphite Modification Kit(Takara)で処理し、非メチル化シトシンをウラシルに変換した。KOD−Multi & Epi−(Toyobo)を用いて、DNAセグメントのプロモーター領域を増幅した。反応条件は以下の通りとした:工程1,94℃で2分;工程2,98℃で10秒、52℃で30秒、68℃で30秒。工程2は、40回繰り返した。‘Kohi’及び‘Hayward’の保存配列領域には、以下の同じプライマーセットを用いた。
−822b〜−520b:
センスプライマー,5'-ATTTGTTTTAYGAAGAAGATAGTTTTGTGATTTG-3'(配列番号27)
アンチセンスプライマー,5'-CCTAATAAATCTAAACAAAACAACTAAAAAATCC-3'(配列番号28)
−603b〜ー+67b:
センスプライマー,5'-YAAAATTGYAYTTGTATTAAGGTTG-3'(配列番号29)
アンチセンスプライマー,5'-CAAACCCATTTTTRTTCTCTCTCRTTTTTTRAAT-3'(配列番号30)
【0076】
‘Hayward’の特異領域には、以下のプライマーを用いた。
−1188b〜−807b:
センスプライマー,5'-TTAAATTTTATGGGGTTATTGAGAAAT-3'(配列番号31)
アンチセンスプライマー,5'-AAAAACAACAAATCACAAAACTATCTTC-3'(配列番号32)
【0077】
‘Kohi’の特異領域には、以下のプライマーを用いた。
−1449b〜−1084b:
センスプライマー,5'-GTTGAATATAAYGAGGTGGTGGCAT-3'(配列番号33)
アンチセンスプライマー,5'-ACCATACTAACCCATTTACTTAATC-3'(配列番号34)
−1108b〜−853b:
センスプライマー,5'-GATTAAGTAAATGGGTTAGTATGGTA-3'(配列番号35)
アンチセンスプライマー,5'-AAATCTAACACACTCCACTATTAAAAATAT-3'(配列番号36)
【0078】
E.Coli TOP10(Thermo Fisher Scientific)を、増幅産物でライゲーションしたプラスミドpZero2.1(Thermo Fisher Scientific)で形質転換した。少なくとも、13個の独立したクローンを用いて配列解析を行い、各領域のメチル化率を求めた。
【0079】
[結果]
(アクチニジア属植物の果実におけるアクチニジンレベル)
アクチニジア属の果実におけるアクチニジンレベルを求めるために、‘Hayward’の果実から抽出した天然アクチニジンに対して産生されたポリクローナル抗体を用いて、イムノブロット解析を行った。全可溶性タンパク質を、熟した果実組織全体から抽出して解析した。全タンパク質のSDS−PAGEを行い、泳動後のゲルをCBB染色したところ、A.deliciosaの4種の栽培品種、A.chinensisの8種の栽培品種のうちの6種及びA.argutaにおいて、26kDaの位置に、主要なタンパク質が検出された(図1)。抗アクチニジン抗体を用いたイムノブロット解析により、前記タンパク質は、アクチニジンであると確認された(図1)。
一方、アクチニジンは、A.chinensisの2種(‘Kohi’、‘Hort16A’)及びA.erianthaでは、ほとんど検出されなかった。CBB染色ゲルでは、‘Koshin’、‘Kohi’及び‘Hort16A’において、アクチニジンレベルよりもわずかに低分子のタンパク質が検出されている(図1)。このたんぱく質は、抗アクチニジン抗体反応せず、これらの種では、他の主要タンパク質が存在することを示している。
【0080】
次に、果実中のアクチニジンを定量するために、ELISAを行った。A.deliciosa及びA.chinensisのほとんどの栽培種におけるアクチニジン含量は、約1〜2mg/g生重量の範囲であり、‘Sensational Apple’(1.95±0.14mg/gFW)が最大量であった(図2)。イムノブロット解析の結果と同様に、ELISAの結果においても、‘Kohi’(0.06±0.01mg/gFW)及び‘Hort16A’(0.09±0.01mg/gFW)のアクチニジンレベルがはるかに低いことが確認された(図2)。
【0081】
(Act1a及びAct2aの発現解析)
‘Kohi’におけるアクチニジンレベルの低さの分子的機序を解明するために、アクチニジンのコード遺伝子Act1a及びAct2aの遺伝子発現解析を行った。これらの遺伝子は、‘Hayward’及び‘Hort16A’の熟した果実で検出されることが報告されている(Nieuwenhuizen et al., 2007. Funct. Plant Biol. 34: 946-961.)。ゲノムDNAのPCRの結果により、‘Kohi’でも、‘Hayward’及び‘Hort16A’と同様に、Act1a及びAct2aが存在していることが確認された(図3A)。しかしながら、RT−PCRでは、‘Hayward’及び‘Hort16A’とは異なり、‘Kohi’においてはAct1a断片が確認されなかった(図3B)。一方。Act2a断片は、3種の栽培品種全て確認された(図3B)。
そこで、Act1aの発現レベルを定量PCRで確認したところ、‘Hort16A’における発現レベルは、‘Hayward’とほぼ同じであったが、‘Kohi’ではほとんど発現が検出されなかった(図3C)。そのため、‘Hort’16Aと‘Kohi’とでは、異なる要因により低アクチニジンの表現型となっていると考えられた。
【0082】
(Act1a上流配列の解析)
ゲノミックPCRの結果は、‘Kohi’のゲノムにAct1a遺伝子が存在していることを示している。そこで、Act1aのゲノム領域の配列解析を行った。‘Hayward’の配列に対する複数の変異が、‘Kohi’のエクソン及びイントロンの両方で見出されたが、‘Kohi’のゲノムには、完全なAct1a遺伝子が存在していると考えられた。そこで、Act1aの上流プロモーター領域の解析を行った。
【0083】
‘Hayward’におけるAct1aプロモーターは、以前に報告されている(Lin et al., 1993. Plant Mol. Biol. 23:489-499.; Snowden and Gardner. 1990. Nucleic Acids Res. 18: 6684-6684.)。そこで、‘Hayward’の配列に基づくプライマーを用いて、‘Kohi’の対応領域が増幅できるか確認した。領域(I)(‘Hayward’配列における+5b〜−867b)は、‘Hayward’及び‘Kohi’の両方のDNAで増幅された(図4)。一方、領域(II)(‘Hayward’配列における−728b〜−1294b)は、‘Kohi’のDNAでは増幅されなかった(図4)。この結果は、領域(II)においては ‘Kohi’の配列が、‘Hayward’とは異なることを示している。
【0084】
そこで、TAIL PCRを行い、‘Kohi’におけるAct1a上流領域を取得した。特異的プライマー及び任意プライマー(arbitrary primer)の組合せで3ラウンドのPCRを行なったところ、1.5kb断片が得られた。この断片のシークエンス解析を行ったところ、Act1a遺伝子近傍領域(0〜−873b)は、‘Hayward’とほとんど同じ配列であることが確認された(図5)。一方、さらに上流領域(−874b〜−1449b)は、‘Hayward’とはほとんど類似していなかった(図5)。この領域の配列を用いて、様々なゲノムデータベースを検索したが、類似配列は検出されなかった。しかし、この配列は、元のプロモーター機能を破壊している可能性がある。
【0085】
(Act1a上流領域のメチル化解析)
‘Kohi’の上記配列は、シトシン残基の数が多いという特徴がある。プロモーター領域においてしばしばシトシンはメチル化されており、メチル化レベルが下流遺伝子発現に影響することが報告されている(Vanyushin and Ashapkin. 2011. BBA Gene Regul. Mech. 1809: 360-368.)。植物において、メチル化は、CG、CHG及びCHH(Hは、A、T又はCを示す。)との関連で生じる。一方、動物においては、CGのみがメチル化の標的となる。
そこで、Act1a上流領域について、潜在的メチル化サイトの数を調べた。その結果を表1及び表2に示す。表1は、‘Hayward’及び‘Kohi’の両者で配列が保存された領域の結果である。表2は、Hayward’及び‘Kohi’の両者で配列が分岐している(異なっている)領域の結果である。
【0086】
‘Kohi’の分岐領域は、‘Hayward’に比べて、CGリッチであり(‘Kohi’は44サイト、‘Hayward’は4サイト)だった。一方、他のサイトは、ほぼ同じ頻度であり、潜在的メチル化サイト全体では、‘Kohi’における数が、‘Hayward’における数の約1.6倍だった。
【0087】
そこで、‘Kohi’及び‘Hayward’の各領域について、バイサルファイトシークエンス解析を行い、メチル化状態を確認した。その結果を表1、表2、及び図6に示す。
【0088】
【表1】
【0089】
【表2】
【0090】
保存領域では、数か所を除いて、メチル化はほとんど確認できなかった(‘Hayward’:−666b、−664b、−631b及び−621bでそれぞれ25%のメチル化;‘Kohi’:−666b及び−664bでそれぞれ20%のメチル化)(図6)。一方、分岐領域は、‘Hayward’及び‘Kohi’の両方で、顕著にメチル化されていた。
分岐領域におけるメチル化の割合は、‘Hayward’(65.7%)よりも‘Kohi’(80.51%)の方が高かった。また、分岐領域は、‘Kohi’では全体的にメチル化されていたが、‘Hayward’の−1100b〜−1000bの領域では、メチル化の割合が制限されていた。さらに、CGサイトは‘Kohi’において、CHGサイト及びCHHサイトよりも優先的にメチル化されていた。しかし、CHHサイトは、‘Hayward’では高頻度にメチル化されていた。
【0091】
以上の結果より、‘Kohi’のAct1a上流領域(−1377b〜−874b)の配列が高頻度にメチル化されることにより、Act1aのプロモーターの機能が阻害され、Act1aの転写が抑制されていると示唆された。
【0092】
(Act1a上流領域の構造)
’Kohi’のAct1aの上流領域のさらなる解析を行い、配列番号1に記載の塩基配列(+60b〜―3989b)を取得した。’Kohi’のAct1a上流領域の構造を図7に示す。図7中の「保存領域」は、‘Hayward'のActa1上流領域と比較して、配列が保存されている領域である。
【産業上の利用可能性】
【0093】
本発明によれば、遺伝子発現制御及び食用植物のアレルゲン性評価に有用なポリヌクレオチド、並びにその使用方法が提供される。本発明に係るポリヌクレオチドは、特に、マタタビ科植物のアレルゲン性の評価に使用することができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]