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特開2019-129767柑橘類のさのうを製造する方法、柑橘類のさのうを硬化する方法、及び柑橘類のさのう入り飲食品の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2019-129767(P2019-129767A)
(43)【公開日】2019年8月8日
(54)【発明の名称】柑橘類のさのうを製造する方法、柑橘類のさのうを硬化する方法、及び柑橘類のさのう入り飲食品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 19/00 20160101AFI20190712BHJP
【FI】
   A23L19/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2018-15293(P2018-15293)
(22)【出願日】2018年1月31日
(71)【出願人】
【識別番号】000002196
【氏名又は名称】サッポロホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100176773
【弁理士】
【氏名又は名称】坂西 俊明
(72)【発明者】
【氏名】高柳 純司
【テーマコード(参考)】
4B016
【Fターム(参考)】
4B016LG02
4B016LK04
4B016LP13
(57)【要約】
【課題】短時間で硬化したさのうを製造することができる方法の提供。
【解決手段】果皮及びじょうのう膜が除去された柑橘類原料をグルコン酸カルシウム及び乳酸カルシウムの混合物を含む水溶液に浸漬する工程を含み、混合物中のグルコン酸カルシウムの含有量に対する乳酸カルシウムの含有量の重量比が1.5/8.5以上8.5/1.5以下である、柑橘類のさのうを製造する方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
果皮及びじょうのう膜が除去された柑橘類原料をグルコン酸カルシウム及び乳酸カルシウムの混合物を含む水溶液に浸漬する工程を含み、
前記混合物中の前記グルコン酸カルシウムの含有量に対する前記乳酸カルシウムの含有量の重量比が1.5/8.5以上8.5/1.5以下である、柑橘類のさのうを製造する方法。
【請求項2】
前記柑橘類が、レモン、グレープフルーツ及びミカンからなる群より選択される1種である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
果皮及びじょうのう膜が除去された柑橘類原料をグルコン酸カルシウム及び乳酸カルシウムの混合物を含む水溶液に浸漬することを含み、
前記混合物中の前記グルコン酸カルシウムの含有量に対する前記乳酸カルシウムの含有量の重量比が1.5/8.5以上8.5/1.5以下である、柑橘類のさのうを硬化する方法。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の柑橘類のさのうを製造する方法により得られる柑橘類のさのうを飲食品原料に配合する工程を含む、柑橘類のさのう入り飲食品を製造する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、柑橘類のさのうを製造する方法、柑橘類のさのうを硬化する方法、及び柑橘類のさのう入り飲食品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
柑橘類のさのうは、食感付与等を目的として、飲食品に添加することがある。しかし、柑橘類のさのうは、加熱によりそこに含まれるペクチン等の成分が溶解し、飲食品への加工工程(加熱・殺菌工程等)の途中でさのう本来の食感が損なわれやすい。そのため、本来の食感を保持したさのうを得る(さのうを硬化する)ことを目的として、乳酸カルシウムを含む水溶液に果肉を浸漬する方法が用いられる場合がある(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017−51148号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の乳酸カルシウムを含む水溶液に果肉を浸漬する方法では、さのうの硬化に時間がかかり、製造工程の時間的な制約からも、さのうの食感を感じられるレベルまで硬化性を付与することが困難であった。
【0005】
そこで、本発明は、短時間で硬化したさのうを製造することができる方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、果皮及びじょうのう膜が除去された柑橘類原料をグルコン酸カルシウム及び乳酸カルシウムの混合物を含む水溶液に浸漬する工程を含み、混合物中のグルコン酸カルシウムの含有量に対する乳酸カルシウムの含有量の重量比が1.5/8.5以上8.5/1.5以下である、柑橘類のさのうを製造する方法を提供する。本発明の製造方法は、浸漬工程でグルコン酸カルシウム及び乳酸カルシウムの混合物を含む水溶液を用いるため、短時間で硬化したさのうを製造することができる。
【0007】
柑橘類は、レモン、グレープフルーツ及びミカンからなる群より選択される1種であってよい。
【0008】
本発明はまた、果皮及びじょうのう膜が除去された柑橘類原料をグルコン酸カルシウム及び乳酸カルシウムの混合物を含む水溶液に浸漬することを含み、混合物中のグルコン酸カルシウムの含有量に対する乳酸カルシウムの含有量の重量比が1.5/8.5以上8.5/1.5以下である、柑橘類のさのうを硬化する方法を提供する。
【0009】
本発明はまた、上述の柑橘類のさのうの製造方法により得られる柑橘類のさのうを飲食品原料に配合する工程を含む、さのう入り飲食品を製造する方法を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、短時間で硬化したさのうを製造することができる方法の提供が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1Aは、試験例1におけるさのうの最大荷重の測定結果を示すグラフであり、図1Bは、試験例1におけるさのうの最大応力の測定結果を示すグラフである。
図2図2Aは、試験例2におけるさのうの最大荷重の測定結果を示すグラフであり、図2Bは、試験例2におけるさのうの最大応力の測定結果を示すグラフである。
図3図3Aは、試験例2におけるさのうの最大荷重の測定結果を示すグラフであり、図3Bは、試験例2におけるさのうの最大応力の測定結果を示すグラフである。
図4図4Aは、試験例2におけるさのうの最大荷重の測定結果を示すグラフであり、図4Bは、試験例2におけるさのうの最大応力の測定結果を示すグラフである。
図5図5Aは、試験例3におけるさのうの最大荷重の測定結果を示すグラフであり、図5Bは、試験例3におけるさのうの最大応力の測定結果を示すグラフである。
図6図6Aは、試験例4におけるさのうの最大荷重の測定結果を示すグラフであり、図6Bは、試験例4におけるさのうの最大応力の測定結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0013】
〔柑橘類のさのうの製造方法〕
本実施形態の柑橘類のさのうの製造方法は、果皮及びじょうのう膜が除去された柑橘類原料をグルコン酸カルシウム及び乳酸カルシウムの混合物を含む水溶液に浸漬する工程を含む。混合物中の乳酸カルシウムの含有量に対するグルコン酸カルシウムの含有量の重量比は、1.5/8.5以上8.5/1.5以下である。
【0014】
本実施形態の製造方法は、浸漬工程でグルコン酸カルシウム及び乳酸カルシウムの混合物を含む水溶液を用いるため、短時間で硬化したさのうを製造できる。更に、浸漬工程を経て得られる柑橘類のさのうは、さのう本来の風味が維持されながら、硬化性が付与されている。
【0015】
柑橘類のさのうとは、柑橘類のじょうのう内の粒状のものである。
【0016】
柑橘類は、ミカン科のミカン属、キンカン属、カラタチ属に属する植物を含む。柑橘類としては、例えば、レモン、ライム、シークワサー、スダチ、ユズ、ダイダイ、カボス、グレープフルーツ、ネーブルオレンジ、バレンシアオレンジ、サワーオレンジ、ミカン(温州ミカン)、イヨカン、ポンカン、あま夏、ブンタン等が挙げられる。柑橘類は、レモン、グレープフルーツ及びミカンからなる群より選択される1種であってよく、レモンであってよい。この場合、より効果的にさのうを硬化することが可能となる。
【0017】
柑橘類原料は、例えば、果皮を除去(例えば、剥皮)した後、酸処理、アルカリ処理、酵素処理等によって、じょうのう膜を除去することにより得ることができる。柑橘類原料は、全部のじょうのう膜が除去されていることが好ましいが、一部のじょうのう膜が除去されずに残っていても柑橘類原料として使用し得る。柑橘類原料は、果皮及びじょうのう膜に加えて、更に果心等が除去されていてもよい。
【0018】
浸漬工程で使用する柑橘類原料は、果皮及びじょうのう膜が除去されたもの(セグメント)をそのまま用いてもよいし、セグメントの一部をほぐした原料(セグメント片)又はセグメントの全部をほぐした原料(さのう原料)を用いてもよい。セグメントの一部又は全部をほぐす方法としては、特に制限されないが、例えば、水圧、撹拌等による機械的、物理的手段を用いることができる。
【0019】
浸漬工程では、柑橘類原料を、グルコン酸カルシウム及び乳酸カルシウムの混合物を含む水溶液に浸漬する。浸漬工程では、必要に応じて、柑橘原料をほぐしてもよい。
【0020】
水溶液中のグルコン酸カルシウム及び乳酸カルシウムの混合物の含有量は、上記水溶液全量に対して、1質量%以上であってよく、1質量%以上50質量%以下であってよく、2質量%以上45質量%以下であってよい。グルコン酸カルシウム及び乳酸カルシウムは、水溶液中で電離した状態で存在していてもよい。
【0021】
水溶液中のカルシウム濃度は、例えば、0.1質量%以上であってよく、0.2質量%以上5質量%以下、又は、0.2質量%以上4.5質量%以下であってもよい。本実施形態の製造方法によれば、カルシウム濃度が低濃度(例えば、0.2質量%)であっても、硬化したさのうを短時間で得ることができる。
【0022】
水溶液中のカルシウム濃度は、グルコン酸カルシウム及び乳酸カルシウムの混合物の含有量(添加量)によって、調整することができる。
【0023】
混合物中のグルコン酸カルシウム(A)の含有量に対する乳酸カルシウム(A)の含有量の重量比(A/A)は、1.5/8.5以上8.5/1.5以下であればよく、より短時間で硬化したさのうが得られやすいという観点から、2/8以上8/2以下であってもよい。
【0024】
グルコン酸カルシウム及び乳酸カルシウムの混合物は、グルコン酸カルシウムと、乳酸カルシウムとを上記の重量比となるように混合等を行い、入手することができる。グルコン酸カルシウム及び乳酸カルシウムの混合物は、水溶液に対する溶解性の観点から、公知の方法により造粒して得た造粒物(グルコン酸カルシウム及び乳酸カルシウムの造粒物)であってもよい。当該造粒物は、例えば、流動層造粒、撹拌造粒、スプレードライ等の方法により得ることができる。
【0025】
また、グルコン酸カルシウム及び乳酸カルシウムの混合物は、これらを上記の重量比で含む市販品を用いることもできる。市販品のグルコン酸カルシウム及び乳酸カルシウムの混合物としては、例えば、グルコン酸乳酸カルシウム製剤(コービオンジャパン社製)が挙げられる。
【0026】
水溶液は、グルコン酸カルシウム及び乳酸カルシウム以外の成分(他の成分)を含んでいてもよい。他の成分としては、食品衛生法上食品添加物として使用されているものであればよく、例えば、酵素、賦形剤、でんぷん、乳糖等が挙げられる。
【0027】
柑橘類原料を浸漬させる際の条件(浸漬温度、浸漬時間等)は、柑橘類原料の種類等に応じて、適宜設定することができる。浸漬温度(浸漬させる際の水溶液の温度)は、例えば、10〜75℃、又は30〜50℃であってよい。浸漬時間は、例えば、10〜180分、又は15〜90分であってよい。
【0028】
本実施形態の製造方法は、浸漬工程以外の工程を含んでいてよい。例えば、浸漬工程を経て得られたさのうを回収した後に、さのうを水等により、洗浄する工程(洗浄工程)、さのうを加熱する工程(加熱工程)、さのうを容器に充填する工程(充填工程)等を実施してよい。
【0029】
加熱工程では、さのうを加熱することにより、さのうを殺菌する。加熱工程は、例えば、水中でさのうを加熱することにより行ってよい。加熱条件は、さのうを加熱殺菌する際に使用される公知の条件であってよい。加熱温度は、例えば、60℃以上100℃以下、又は、80℃以上90℃以下であってよい。加熱時間は、例えば、1分以上60分以下、又は、1分以上5分以下であってよい。
【0030】
本実施形態の製造方法で得られたさのうは、加熱処理後であっても硬化していることから、飲食品の素材として好適に使用することができる。
【0031】
〔柑橘類のさのうを硬化する方法〕
本実施形態のさのうを製造する方法によれば、短時間で硬化したさのうを製造することができる。したがって、本発明の一実施形態として、果皮及びじょうのう膜が除去された柑橘類原料をグルコン酸カルシウム及び乳酸カルシウムの混合物を含む水溶液に浸漬する工程を含み、混合物中のグルコン酸カルシウムの含有量に対する乳酸カルシウムの含有量の重量比が1.5/8.5以上8.5/1.5以下である、さのうを硬化する方法が提供される。
【0032】
〔柑橘類のさのう入り飲食品を製造する方法〕
本実施形態の柑橘類のさのう入り飲食品の製造方法は、上述の柑橘類のさのうの製造方法により得られる柑橘類のさのうを飲食品原料に配合する工程を含む。
【0033】
さのう入り飲食品としては、例えば、果汁飲料、清涼飲料、炭酸飲料、アルコール飲料(炭酸入りアルコール飲料も含む。)等の飲料、調味料、シロップ、ゼリー、ヨーグルト、アイスクリーム、ケーキ、クッキー、飲食品用のトッピング剤等が挙げられる。
【0034】
さのう入り飲食品中のさのうの含有量は、さのう入り飲食品の種類等に応じて、適宜設定することができる。
【実施例】
【0035】
以下、実施例に基づいて本発明をより具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0036】
〔試験例1:グルコン酸カルシウムと乳酸カルシウムの効果〕
レモンのさのう原料を以下の方法により、準備した。
レモンの皮の部分に切れ目を入れ、3分間蒸気で加温した後、手で皮を剥き房分けした。房の状態のレモンを1%塩酸溶液に常温で30分浸漬してから水洗いし、その後、1%水酸化ナトリウム溶液に常温で10分浸漬して水洗いした後、高圧水に通して、さのう原料を得た。
【0037】
また、表1に示す重量比のグルコン酸カルシウム(グルコン酸Ca)及び乳酸カルシウム(乳酸Ca)の混合物(グルコン酸乳酸カルシウム(グルコン酸乳酸Ca))及び乳酸カルシウムは、グルコン酸乳酸カルシウムと乳酸カルシウムとを所定濃度となるよう水に溶解して調製した。
【0038】
レモンのさのう原料を各種グルコン酸乳酸カルシウム又は乳酸カルシウムを含む水溶液に浸漬した。水溶液中のカルシウム濃度は、0.45質量%とした。試験は、浸漬温度(水溶液の温度)30〜50℃で実施した。
【0039】
【表1】
【0040】
さのうの硬さは、浸漬時間0、15、45、90、及び180分における、さのうの最大荷重及び最大応力を測定することにより評価した。最大荷重及び最大応力は、円板プランジャーで50%の圧縮試験を行うことで、測定した。
【0041】
各浸漬時間経過時点のさのうの最大荷重及び最大応力は、90℃、3分間の条件で加熱した後に、クリープメーター(株式会社山電社製)を用いて、測定した(n=2)。結果を図1に示す。
【0042】
図1に示すとおり、グルコン酸カルシウムの含有量に対する乳酸カルシウムの含有量の重量比が1.5/8.5以上8.5/1.5以下の混合物を用いた場合に、より短時間でさのうを硬化できることが示された。
【0043】
〔試験例2:カルシウム濃度変化による影響〕
レモンのさのう原料を、グルコン酸乳酸カルシウム(グルコン酸カルシウムに対する乳酸カルシウムの含有重量比:8/2)添加又は非添加の水溶液に浸漬した。グルコン酸乳酸カルシウムは、水溶液全量に対して、4.5質量%、9.0質量%、18質量%、35質量%、又は45質量%となるように添加した。すなわち、水溶液中のカルシウム濃度が、それぞれ、0.45質量%、0.9質量%、1.8質量%、3.5質量%、又は4.5質量%となるように添加した。
【0044】
試験例1と同様にして、各浸漬時間経過時点のさのうの最大荷重及び最大応力を90℃、3分間の条件で加熱した後に、測定した(n=2)。また、各浸漬時間経過時点のさのうの最大荷重及び最大応力を加熱しなかったこと以外は、試験例1と同様にして、測定した。最大荷重及び最大応力の測定は、クリープメーター(株式会社山電社製)を用いて実施した。加熱後及び加熱前の測定結果をそれぞれ図2及び図3に示す。
【0045】
グルコン酸乳酸カルシウムの添加量(水溶液中のカルシウム濃度)が以下のとおりであること以外は、上記と同様にして、さのうの硬さを評価した。結果を図4に示す。グルコン酸乳酸カルシウムは、水溶液全量に対して、0.05質量%、0.1質量%、0.25質量%、0.5質量%、1質量%、又は2質量%となるように添加した。すなわち、水溶液中のカルシウム濃度が、それぞれ0.005質量%、0.01質量%、0.025質量%、0.05質量%、0.1質量%、又は0.2質量%となるように添加した。
【0046】
図2及び4に示すとおり、グルコン酸乳酸カルシウムの添加量(カルシウム濃度)が高くなるにつれて、さのうの硬さが向上した。
【0047】
図3に示すとおり、最大荷重及び最大応力の測定前に、加熱処理を行わなかった場合であっても、グルコン酸カルシウムを含む水溶液を用いた場合、グルコン酸乳酸カルシウム非添加の水溶液を用いた場合と比べて、さのうを硬化可能であることが確認された。この場合も、グルコン酸乳酸カルシウムの添加量(カルシウム濃度)が高くなるにつれて、さのうの硬さが向上した。
【0048】
〔試験例3:グレープフルーツのさのうにおける効果〕
グレープフルーツのさのう原料を以下の方法により、準備した。
グレープフルーツの皮の部分に切れ目を入れ、3分間蒸気で加温した後、手で皮を剥き房分けした。房の状態のグレープフルーツを1%塩酸溶液に常温で30分浸漬してから水洗いし、その後1%水酸化ナトリウム溶液に常温で10分浸漬して水洗いした後に、高圧水に通して、さのう原料を得た。
【0049】
グレープフルーツ(GF)のさのう原料を、グルコン酸乳酸カルシウム(グルコン酸カルシウムに対する乳酸カルシウムの含有重量比:8/2)添加又は非添加の水溶液に浸漬した。グルコン酸乳酸カルシウムは、水溶液全量に対して、35質量%となるように炭化した(水溶液中のカルシウム濃度:3.5質量%)。さのうの硬さは、試験例1と同様にして、評価した。結果を図5に示す。
【0050】
図5に示すとおり、グレープフルーツのさのうを用いた場合であっても、さのうを短時間で硬化することが可能であった。
【0051】
〔試験例4:みかんのさのうにおける効果〕
みかんのさのう原料を以下の方法により、準備した。
みかん(温州みかん)の皮を手で剥き房分けした。房の状態のみかんを1%塩酸溶液に常温で30分浸漬してから水洗いし、その後1%水酸化ナトリウム溶液に常温で10分浸漬して水洗いした後に、高圧水に通して、さのう原料を得た。
【0052】
みかんのさのう原料を、グルコン酸乳酸カルシウム(グルコン酸カルシウムに対する乳酸カルシウムの含有重量比:8/2)添加又は非添加の水溶液に浸漬した。グルコン酸乳酸カルシウムは、水溶液全量に対して、35質量%となるように添加した(水溶液中のカルシウム濃度:3.5質量%)。さのうの硬さは、試験例1と同様にして、最大荷重を測定することにより、評価した。結果を図6に示す。
【0053】
図6に示すとおり、みかんのさのうを用いた場合であっても、さのうを短時間で硬化することが可能であった。
図1
図2
図3
図4
図5
図6