【解決手段】バランス運動装置(1)は、上面に使用者の足を載せる足載せ部(10)と、足載せ部の下面中央部で足載せ部を下方から支持する中央支持部(24)と、足載せ部の下面側の相互に異なる位置で足載せ部と連結する二つの支持リンク部(21、22)と、当該二つの支持リンク部をそれぞれ変位させて足載せ部の上面を傾斜させるアクチュエータ(25、26)と、を備える。
前記二つの支持リンク部は、前記足載せ部の下面側の各位置と前記足載せ部の前記下面中央部とを結ぶ線分どうしが平面視で直交する該各位置で、前記足載せ部を支持する、
請求項1又は2に記載のバランス運動装置。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。以下に挙げる実施形態は例示であり、本発明は以下の実施形態の構成に限定されない。
【0009】
図1は、本実施形態に係るバランス運動装置1の外観を示す図である。
図2は、本実施形態に係るバランス運動装置1の一部の構造の分解図である。
図3は、足乗せ部10を下方から視た図である。
本実施形態に係るバランス運動装置(以降、本装置と略称する場合もある)1に関する説明において、各構成要素の相対的な位置関係を特定するために、本装置1の使用態様に応じた方向を用いることとする。即ち、以降の説明で用いる「前後方向」、「上下方向」、及び「左右方向」は、本装置1に使用者が足を載せた際の使用者にとっての前後方向、上下方向、及び左右方向と一致させることとする。
【0010】
本装置1は、大別すると、上面に使用者の足を載せる足載せ部10と、足載せ部10を支持する本体部20とから構成されている。
足載せ部10は、上面外装部11、上面プレート部12、足載せシャーシ部13、安全バー17などを有している。
足載せシャーシ部13は足載せ部10の骨組みをなし、その上方を塞ぐように薄い平板状の上面プレート部12が足載せシャーシ部13に連結されており、その上面プレート部12の上面に上面外装部11が装着されている。
足載せシャーシ部13は、平面視で略正方形の外縁枠と、その外縁枠における前後方向の中央に左右に架設された上面支持部14とを有しており、外縁枠と上面支持部14との間で上方に開放されている。
上面プレート部12及び足載せシャーシ部13は、使用者の体重に耐え得る剛性(強度)を有する金属などの素材で成形される。
【0011】
上面外装部11は足載せ部10の上面をなし、上面外装部11の上面に直接、使用者の足が載せられる。
上面外装部11の上面は、四辺が内側に緩やかに湾曲し角丸の略正方形の形状を有しており、使用者が両足で乗ることができる程度の面積を有している。このように、本装置1は、片足立ちで使用することもできるし、両足立ちで使用することもできる。但し、上面外装部11の上面は、片足のみを載せることができる程度の面積とされてもよい。この場合には、片足立ちでの使用のみが許される。
上面外装部11は、載せられた足が滑らないように、ゴムのような樹脂材料で成形されてもよいし、上面プレート部12などと同様の素材で成形されてもよい。本実施形態では、滑り難くするために、上面外装部11の上面には複数の凹部が設けられている。
【0012】
安全バー17は、足載せ部10の下面側の四隅に設けられ、下方に延びる、4つの棒状の部材である。具体的には、各安全バー17は、足載せシャーシ部13の上述の外縁枠の下面の四隅から下方にそれぞれ延設されており、その下端は、足載せ部10が正常に本体部20に支持されている状態では、本体部20の底板部23に当接していない。
各安全バー17は、その下端が本体部20の底板部23に当接した状態において、足載せ部10と上カバー部5との間に空隙ができる長さに設定されている。これにより、安全バー17は、足載せ部10の傾斜により、足載せ部10と本体部20の上カバー部5との間に使用者が手指や足先などを挟むことを防ぐことができる。
【0013】
本体部20は、上カバー部5及び下カバー部7で覆われる内部構造として、フロントリンク部21、サイドリンク部22、中央支持部24、フロントモータ25、サイドモータ26、制御ボックス27などを有している。なお、これら構成要素は、本体部20の内部構造の一部であり、本体部20は、
図2に示されるもの以外の構成要素を含んでもよい。
足載せ部10は、本体部20におけるフロントリンク部21、サイドリンク部22、及び中央支持部24により下方から支持されている。具体的には、中央支持部24は、足載せ部10の下面中央部で足載せ部10を下方から支持し、フロントリンク部21及びサイドリンク部22は、足載せ部10の下面側の相互に異なる位置(中央支持部24とも異なる位置)で足載せ部10と連結し、支持している。このため、フロントリンク部21及びサイドリンク部22は、支持リンク部と表記することもできる。
【0014】
図4は、中央支持部24の拡大図である。
本実施形態では、
図4に示されるように、中央支持部24は、連結プレート241と、プレート支持部243、十字軸部244、第一支持柱部245、第二支持柱部246等から構成されている。
連結プレート241は、足載せ部10の下面中央部と上面で連結する板状の部材である。本実施形態では、連結プレート241は、平面視で左右方向に延びる長方形の形状を有し、足載せ部10の上面支持部14の下面中央にボルトで連結固定されている。
但し、連結プレート241の形状及び連結プレート241と足載せ部10の下面中央部との連結手段は何ら制限されない。例えば、連結プレート241は、足載せ部10と連結する上面が或る程度の広さを持った平面であれば、その形状は特に制限されない。
【0015】
連結プレート241は、上述のように上面が足載せ部10(上面支持部14)の下面と面接触で連結されつつ、下面がプレート支持部243に連結されている。本実施形態では、連結プレート241及びプレート支持部243は上下に重ね合わされた状態で足載せ部10の上面支持部14にボルトで連結されている。但し、連結プレート241とプレート支持部243との連結手段は制限されず、両者は一体成形されてもよいし、溶接や接着剤などで固着されてもよいし、他の手段で連結されてもよい。
【0016】
プレート支持部243は、平面視で連結プレート241と同様に左右方向に延びる長方形の形状を有した板状の部材であり、連結プレート241と連結される箇所の両端部が下方に屈曲している。そして、プレート支持部243は、その屈曲した両端部の間に介在する十字軸部244により回動自在に支持されている。具体的には、プレート支持部243の両端部には軸受孔がそれぞれ設けられており、各軸受孔に十字軸部244の左右方向にそれぞれ突設された左軸部又は右軸部が転動体を介して嵌挿されている。これにより、プレート支持部243が十字軸部244の左右の軸部を中心に前後に回動可能となっている。
【0017】
十字軸部244は、十字状に突設された4つの軸部(左軸部、右軸部、前軸部、及び後軸部)を有しており、上述したとおり、左軸部及び右軸部によりプレート支持部243を回動自在に軸支する。
更に、十字軸部244は、二つの第一支持柱部245の間に介在しており、前軸部及び後軸部を介して、二つの第一支持柱部245により回動自在に支持されている。具体的には、十字軸部244の前軸部及び後軸部はそれぞれ第一支持柱部245の上端部に設けられた軸受孔に転動体を介して嵌挿されている。これにより、十字軸部244が前後の軸部を中心に左右に回動可能となっている。
【0018】
二つの第一支持柱部245はそれぞれ上下方向に延びる板状の部材であり、十字軸部244を介して前後方向に離間して設けられており、上述したとおり、上端で十字軸部244を支持している。また、二つの第一支持柱部245はそれぞれ下端側が本体部20の底板部23に連結固定されている。
第二支持柱部246は、前後方向に延びる板状の部材であり、前後方向の一端で第一支持柱部245の一方に連結されており、他端で第一支持柱部245の他方に連結されており、下端で本体部20の底板部23に連結固定されている。
【0019】
このように、中央支持部24では、本体部20の底板部23に前後及びサイドで固定されている二つの第一支持柱部245が十字軸部244を左右に回動自在に支持しており、更に、十字軸部244がプレート支持部243を前後に回動自在に支持している。結果、プレート支持部243の上面に連結されている連結プレート241の上面は、全方向に傾斜自在となっている。
つまり、プレート支持部243、十字軸部244、第一支持柱部245、及び第二支持柱部246は、連結プレート241を全方向に傾斜自在に下方から支持するプレート支持機構と呼ぶことができる。但し、このプレート支持機構は、上述した構成に制限されず、前後方向の軸及び左右方向の軸を用いて連結プレート241を全方向に傾斜自在とすると共に、連結プレート241を下方から支持可能であれば、どのような構成であってもよい。
【0020】
以上のように、本実施形態では、中央支持部24は、下面中央部で足載せ部10を支持していることから、使用者の体重が大きく掛かる部材であるところ、連結プレート241の上面で足載せ部10の下面中央部を面接触で支持しつつ、上述のようなプレート支持機構の構造によりその連結プレート241を全方向に傾斜自在に支持するため、本装置1の強度を高め、耐久性を向上させることができる。更に、本実施形態によれば、上述の特許文献1に開示される支持構造と比較して、本装置1の製造コストを低減することができる。
【0021】
図5は、
図2に示される本体部20の一部の内部構造の平面図である。
フロントモータ25は、駆動軸251を回転させるモータであり、駆動軸251の動力によりフロントリンク部21を変位させて足載せ部10の上面を前後方向に傾斜させる。
サイドモータ26は、駆動軸261を回転させるモータであり、駆動軸261の動力によりサイドリンク部22を変位させて足載せ部10の上面を左右方向に傾斜させる。
フロントモータ25及びサイドモータ26は、サーボモータやステッピングモータなどの一般的な回転式モータであればよい。また、フロントモータ25及びサイドモータ26は、制御のし易さから同一のモータであることが好ましいが、異なるモータであってもよい。
このように、フロントリンク部21及びサイドリンク部22を変位させるアクチュエータとして回転式のアクチュエータ(モータ)を用いることで、足載せ部10の上面を低くすることができ、本装置1の安全性を高めることができる。
【0022】
制御ボックス27は、フロントモータ25及びサイドモータ26を制御する制御基板(制御回路)を収容する。制御基板は、フロントモータ25を制御するICが搭載された基板(回路)と、サイドモータ26を制御するICが搭載された基板(回路)とを含む。この制御基板は、モータドライバ基板、モータ制御基板などと呼ぶこともできる。また、制御基板は、アクチュエータを制御する制御手段と呼ぶこともでき、本実施形態では、そのアクチュエータは、駆動軸をそれぞれ回転させる二つのモータであり、当該二つのモータの各駆動軸の回転方向に応じてフロントリンク部21及びサイドリンク部22は上昇又は下降する。
【0023】
以降の説明では、説明を分かり易くするために、フロントモータ25を制御する手段をフロントモータ制御手段と表記し、サイドモータ26を制御する手段をサイドモータ制御手段と表記することとする。フロントモータ制御手段及びサイドモータ制御手段による具体的な制御内容については後述する。
【0024】
フロントリンク部21及びサイドリンク部22は、足載せ部10を下方から支持する機構であると共に、フロントモータ25の駆動軸251又はサイドモータ26の駆動軸261の回転運動を伝達し、上下方向の運動に変換する運動伝達・変換機構である。
フロントリンク部21は、縦リンクバー211、横リンクプレート213、大歯車214、出力軸215、角度検出部216、小歯車217等を有している。
サイドリンク部22は、縦リンクバー221、横リンクプレート223、大歯車224、出力軸225、角度検出部226、小歯車227等を有している。
このように、フロントリンク部21及びサイドリンク部22はそれぞれ同一の構成を有するため、以下では、フロントリンク部21の構成を主に説明するものとする。
【0025】
小歯車217は、駆動軸251と共に回動可能に駆動軸251に取り付けられた平歯車である。
大歯車214は、出力軸215と共に回動可能に出力軸215に取り付けられた平歯車であり、小歯車217と噛合されている。これにより、出力軸215は、駆動軸251よりも低速かつ高トルクで回転する。このように、駆動軸251の回転に伴い出力軸215も回転するため、フロントモータ25は、出力軸215を回転させるモータであるということもできる。
【0026】
角度検出部216は、出力軸215の端部に設けられており、出力軸215の回転角度を検出する。角度検出部216は、出力軸215の回転角度を検出することができれば、その設置位置や具体的な検出手法については何ら制限されない。例えば、角度検出部216は、可変抵抗器(ポテンショメータ)やロータリエンコーダなどで実現される。また、角度検出部216は、出力軸215に装着され共に回動する他の部材の回転角度を検出してもよい。
【0027】
横リンクプレート213は、長手方向の両端部にそれぞれ貫通孔を有する板状部材であり、一方の貫通孔には出力軸215が嵌挿されており、出力軸215の回転に伴い出力軸215を中心に揺動自在となっている。他方の貫通孔には先端に球状体が設けられたボールジョイントの基端部が嵌着されており、そのボールジョイントを介して縦リンクバー211と連結している。
【0028】
縦リンクバー211は、上下方向に延びる棒状部材であり、下端に上述のボールジョイントの球状体を揺動及び回動可能に収容支持するハウジング部を有する。これにより、縦リンクバー211は、横リンクプレート213が出力軸215を中心に揺動することに伴い、上下方向に変位する。具体的には、横リンクプレート213が正面視で反時計回り(上方向)に揺動すると、縦リンクバー211は上方に変位し、逆に横リンクプレート213が正面視で時計回り(下方向)に揺動すると、縦リンクバー211は下方に変位する。
【0029】
縦リンクバー211は、上端で足載せ部10の下面側と連結している。具体的には、縦リンクバー211の上端には板状体が設けられており、その板状体が足載せ部10の足載せシャーシ部13の上述の外縁枠と平面で接触しボルトで連結されている。但し、縦リンクバー211と足載せ部10との連結手段は制限されない。
【0030】
サイドリンク部22についても、上述した通り、フロントリンク部21と同様の構成を有する。即ち、サイドモータ26の駆動軸261の回転に伴い小歯車227が回動し、小歯車227に噛合されている大歯車224の回動に伴い出力軸225が回転する。このように、駆動軸261の回転に伴い出力軸225も回転するため、サイドモータ26は、出力軸225を回転させるモータであるということもできる。
出力軸225の回転は角度検出部226により検出されており、出力軸225の回転に伴い横リンクプレート223が上方又は下方に揺動し、その横リンクプレート223の揺動に伴い縦リンクバー221が上方又は下方に変位する。
本明細書においてフロントリンク部21又はサイドリンク部22の変位とは、直接的には、縦リンクバー211又は縦リンクバー221が上方又は下方に変位することを指し示す。
【0031】
ここで、フロントリンク部21及びサイドリンク部22の、足載せ部10の下面側における連結位置(支持位置)は、次のように表記することができる。
即ち、フロントリンク部21及びサイドリンク部22は、フロントリンク部21による足載せ部10の下面側の支持位置と中央支持部24による足載せ部10の下面側の支持位置(下面中央部)とを結ぶ線分と、サイドリンク部22による足載せ部10の下面側の支持位置と中央支持部24による足載せ部10の下面側の支持位置(下面中央部)とを結ぶ線分とが平面視で略直交する各位置で、足載せ部10を支持する。更に言えば、フロントリンク部21は、足載せ部10の前縁部の左右方向の中央で支持し、サイドリンク部22は、足載せ部10の側縁部の前後方向の中央で支持する。
【0032】
これにより、足載せ部10の下面側(足載せシャーシ部13)を中央支持部24、フロントリンク部21及びサイドリンク部22で三点支持することになるため、足載せ部10をしっかりと支持できると共に、前後方向及び左右方向の各方向において力作用点を一つとすることで、足載せ部10の傾斜動作を効率的に行うことができる。
【0033】
〔フロントモータ25及びサイドモータ26の制御〕
以下、フロントモータ25及びサイドモータ26の制御手法について詳述する。
フロントモータ制御手段は、角度検出部216からの角度検出信号を受け、この信号に基づいてフロントモータ25の動作を制御する。
サイドモータ制御手段は、角度検出部226からの角度検出信号を受け、この信号に基づいてサイドモータ26の動作を制御する。
また、本実施形態では、フロントモータ25は、フロントリンク部21を変位させて足載せ部10の上面を前傾及び後傾させ、サイドモータ26は、サイドリンク部22を変位させて足載せ部10の上面を左傾及び右傾させる。
【0034】
フロントモータ制御手段は、出力軸215の回転角度範囲に関する情報を持ち、その回転角度範囲内で出力軸215が回転するように、フロントモータ25の動作を制御する。
同様に、サイドモータ制御手段は、出力軸225の回転角度範囲に関する情報を持ち、その回転角度範囲内で出力軸225が回転するように、サイドモータ26の動作を制御する。
以降、出力軸215の回転角度範囲をフロント角度範囲と表記し、出力軸225の回転角度範囲をサイド角度範囲と表記する場合がある。
フロント角度範囲及びサイド角度範囲に関する情報は、例えば、制御基板上のメモリに保持され、後述のように設定可能又は変更可能とされる。
【0035】
フロント角度範囲は、フロントリンク部21の上下の変位範囲に対応し、ひいては、足載せ部10の上面の前傾及び後傾の角度範囲に対応する。
サイド角度範囲は、サイドリンク部22の上下の変位範囲に対応し、ひいては、足載せ部10の上面の左傾及び右傾の角度範囲に対応する。
ここで、出力軸215の回転角度範囲(フロント角度範囲)は、出力軸225の回転角度範囲(サイド角度範囲)よりも広く設定されることが好ましい。これにより、フロントリンク部21の変位する範囲がサイドリンク部22の変位する範囲よりも大きくなり、結果として、足載せ部10の上面の前傾及び後傾の最大角度がその左傾及び右傾の最大角度よりも大きくなる。
全方位に大きい角度で傾斜した場合には使用者にとってバランスを維持することが大変難しくなるところ、上述のように、左傾及び右傾の最大角度を前傾及び後傾の最大角度よりも小さくすることで、本装置1を用いたバランス運動の安全性をより高めることができる。
但し、本装置1は、フロント角度範囲及びサイド角度範囲が同一に設定されること、サイド角度範囲がフロント角度範囲よりも広く設定されることを除外するものではない。このような設定であっても、本装置1を用いたバランス運動の安全性が著しく低下するわけではない。
【0036】
フロントモータ制御手段は、角度検出部216による検出情報に基づいて、出力軸215がフロント角度範囲内で回転方向を順次変えながら回転するように、フロントモータ25の動作を制御する。例えば、フロントモータ制御手段は、或る回転方向及び或る回転速度を指定してフロントモータ25の回転を開始させ、角度検出部216により検出された回転角度が当該回転角度範囲の一方の制限角度(例えば、後傾の最大角度)を示すとフロントモータ25を停止させ、その後、逆の回転方向及び或る回転速度を指定してフロントモータ25の回転を再び開始させる。続いて、フロントモータ制御手段は、検出された回転角度が当該回転角度範囲の他方の制限角度(例えば、前傾の最大角度)を示すとフロントモータ25を所定時間停止させ、その後、元の回転方向及び或る回転速度を指定してフロントモータ25の回転を再び開始させる。このとき、即ち、フロント角度範囲内で一往復分回転した後に再度、回転方向を変えて回転を開始する際に、フロントモータ制御手段は、サイドモータ制御手段に動作指示を出す。フロントモータ制御手段は、フロントモータ25に対するこのような制御を繰り返し実行する。
【0037】
一方で、サイドモータ制御手段は、角度検出部226による検出情報に基づいて、出力軸225がサイド角度範囲内で一方向に回転した後、停止し、出力軸215の回転方向が或る方向から或る方向へ切り替えられるのに同期して、回転方向を変えて回転するように、サイドモータ26の動作を制御する。
本実施形態において、この同期は、フロントモータ制御手段からサイドモータ制御手段への動作指示により実現される。即ち、サイドモータ制御手段は、或る回転方向及び或る回転速度を指定してサイドモータ26の回転を開始させ、角度検出部226により検出された回転角度がサイド角度範囲の制限角度(例えば、右傾の最大角度)を示すとサイドモータ26を停止させる。その後、フロントモータ制御手段からの動作指示を待って、サイドモータ制御手段は、逆の回転方向及び或る回転速度を指定してサイドモータ26の回転を開始させ、角度検出部226により検出された回転角度がサイド角度範囲の制限角度(例えば、左傾の最大角度)を示すとサイドモータ26を停止させる。その後、フロントモータ制御手段からの動作指示を待って、サイドモータ制御手段は、元の回転方向及び或る回転速度を指定してサイドモータ26の回転を再度開始させる。サイドモータ制御手段は、サイドモータ26に対するこのような制御を繰り返し実行する。
【0038】
フロントモータ制御手段及びサイドモータ制御手段が指定するフロントモータ25又はサイドモータ26の回転速度に関する情報についても、例えば、制御基板上のメモリに保持され、後述のように設定可能又は変更可能とされる。ここで、フロントモータ25の回転速度及びサイドモータ26の回転速度とは、駆動軸251の回転速度及び駆動軸261の回転速度と同意である。
本実施形態では、フロントモータ25及びサイドモータ26の各回転速度は、出力軸215がフロント角度範囲(最小角度から最大角度まで)分回転する間に出力軸225もサイド角度範囲(最小角度から最大角度まで)分回転するようにそれぞれ設定される。例えば、フロント角度範囲がサイド角度範囲の2倍に設定されている場合には、フロントモータ25及びサイドモータ26の各回転速度は、出力軸215の回転速度が出力軸225の回転速度の2倍となるようにそれぞれ設定される。なお、実際の回転速度は使用者の体重や載り方によって影響を受けるため、ここでの回転速度は実際上の速度ではなく、制御で指定される速度である。
【0039】
上述のような制御により、出力軸215がフロント角度範囲内において二往復分回転する間に、出力軸225がサイド角度範囲内において一往復分回転することになる。即ち、フロントリンク部21がフロント角度範囲に対応する変位範囲内で二往復分上下する間に、サイドリンク部22がサイド角度範囲に対応する変位範囲内で一往復分上下することなり、結果として、足載せ部10の上面が前傾から後傾になり前傾に戻る動作を二回する間に、左傾から右傾になり左傾に戻る動作を一回することになる。
これにより、足載せ部10の上面をスムーズに全方位に傾斜させることができる。
【0040】
更に言えば、フロントモータ25及びサイドモータ26の各回転速度が、上述のように、出力軸215がフロント角度範囲分回転する間に出力軸225もサイド角度範囲分回転するようにそれぞれ設定されることで、フロントリンク部21及びサイドリンク部22は次のように動作する。即ち、フロントリンク部21がフロント角度範囲に対応する範囲で片方向(例えば上方)に移動する間に、サイドリンク部22がサイド角度範囲に対応する範囲で片方向(例えば上方)に移動し、フロントリンク部21が折り返しで逆方向(例えば下方)に当該範囲分移動する間、サイドリンク部22は停止する。フロントリンク部21が一往復終え、当該片方向(上方)に移動を開始するのに同期して、サイドリンク部22が折り返しで逆方向(下方)に当該範囲で移動する。
結果として、足載せ部10の上面を前右傾、後左傾、前左傾、後右傾、前右傾といった全方位にスムーズに傾斜させることができる。
更に、左右の傾きで待ち時間を設け、前後の傾きと同期をとることで、体重等により前後又は左右の傾き動作に遅延を生じたとしても、待ち時間でその遅延を解消することができるため、確実に同期を取ったスムーズな傾斜動作を実現することができる。
【0041】
また、フロントモータ25及びサイドモータ26の回転方向の反転タイミングや動作停止タイミングは、時間を用いて制御することも可能である。しかしながら、使用者の体重や載り方等がフロントリンク部21及びサイドリンク部22を介してフロントモータ25及びサイドモータ26の駆動軸251及び駆動軸261の回転負荷となり得るため、時間を用いた制御は、使用者の体重等に影響を受けて不安定になる可能性が高い。
本実施形態では、出力軸215の回転角度に従ってフロントモータ25又はサイドモータ26の動作を制御するため、使用者の体重等に影響を受けずに足載せ部10の傾斜制御を安定的に行うことができる。
【0042】
本装置1は、出力軸215の回転角度範囲(フロント角度範囲)或いは出力軸225の回転角度範囲(サイド角度範囲)、又は、フロントモータ25若しくはサイドモータ26の回転速度を複数段階で設定可能とするユーザインタフェース部(図示せず)を更に有していてもよい。
このユーザインタフェース部は、制御ボックス27と有線又は無線で通信可能に接続される。
ユーザインタフェース部には、足載せ部10の傾斜角度の大きさを複数段階で設定可能とする操作部(ボタンやレバーなど)が設けられてもよい。この場合、例えば、操作部において、レベル1、レベル2、又はレベル3のいずれかが選択可能となっており、レベル1が、前傾及び後傾の制限角度(±4度)、左傾及び右傾の制限角度(±2度)を示し、レベル2が、前傾及び後傾の制限角度(±8度)、左傾及び右傾の制限角度(±4度)を示し、レベル3が、前傾及び後傾の制限角度(±12度)、左傾及び右傾の制限角度(±6度)を示す。
また、ユーザインタフェース部には、傾斜角度の大きさと同様に、足載せ部10の傾斜速度を複数段階で設定可能とする操作部が設けられてもよい。この場合、レベル1が、前傾及び後傾を実現するフロントモータ25の回転速度(出力軸215の回転速度=1度/秒)、左傾及び右傾を実現するサイドモータ26の回転速度(出力軸225の回転速度=0.5度/秒)を示し、レベル2が、フロントモータ25の回転速度(出力軸215の回転速度=2度/秒)、サイドモータ26の回転速度(出力軸225の回転速度=1度/秒)を示し、レベル3が、フロントモータ25の回転速度(出力軸215の回転速度=4度/秒)、サイドモータ26の回転速度(出力軸225の回転速度=2度/秒)を示す。
【0043】
このような操作部に対する使用者の操作が検出されることで、制御ボックス27内の制御基板が、選択されたレベルに対応する出力軸215のフロント角度範囲及び出力軸225のサイド角度範囲、又は、フロントモータ25の回転速度及びサイドモータ26の回転速度をそれぞれ決定し、メモリに格納するようにすればよい。
このようにすることで、使用者はバランス運動の運動強度を所望の強度に設定することができ、使用者に応じた強度でのバラン運動を行うことができるようになる。
但し、ユーザインタフェース部の態様はこのような例に限定されない。ユーザインタフェース部には表示パネルが設けられており、前傾及び後傾の制限角度、並びに、左傾及び右傾の制限角度、又は、前傾及び後傾の傾斜速度、並びに、左傾及び右傾の傾斜速度をそれぞれ数値で設定可能な操作部が設けられていてもよい。
【0044】
[変形例]
上述の実施形態は、バランス運動装置1の一例である。バランス運動装置1は、上述の構成のみに限定されるわけではなく、上述の少なくとも一部の構成を有していれば、部分的に適宜変形されてもよい。
例えば、バランス運動装置1は、上面に使用者の足を載せる足載せ部10と、足載せ部10の下面中央部で足載せ部10を下方から支持する中央支持部24と、足載せ部10の下面側の相互に異なる位置で足載せ部10と連結する二つの支持リンク部(フロントリンク部21及びサイドリンク部22)と、当該二つの支持リンク部をそれぞれ変位させて足載せ部10の上面を傾斜させるアクチュエータと、少なくとも有していればよい。
【0045】
当該二つの支持リンク部は、少なくともアクチュエータの運動を伝達して、足載せ部10の上面を傾斜させ得る構造を有していればよく、上述のフロントリンク部21及びサイドリンク部22のような構造に限定されない。
また、当該アクチュエータについても、少なくとも当該二つの支持リンク部を変位させて足載せ部10の上面を傾斜させることができれば、上述のフロントモータ25及びサイドモータ26のような回転式モータでなくてもよい。例えば、リニアモータ、シリンダ、ソレノイドといった直動式のアクチュエータであってもよい。但し、足載せ部10の上面の位置が高くなり過ぎると、安全性が低下する恐れがあるため、直動する部材のスライド方向が水平方向となるようにアクチュエータを配置するなどすればよい。
【0046】
また、上述の本実施形態では、出力軸215及び出力軸225の回転角度が角度検出部216及び角度検出部226で検出され、その回転角度に従ってフロントモータ25及びサイドモータ26が制御されたが、フロントモータ25及びサイドモータ26の制御手法は、そのような例に限定されない。例えば、縦リンクバー211及び縦リンクバー221の変位量が検出されて、その変位量に従ってフロントモータ25及びサイドモータ26が制御されてもよいし、駆動軸251及び駆動軸261の回転角度が検出されて、その回転角度に従ってフロントモータ25及びサイドモータ26が制御されてもよい。この場合、制御基板に保持されるフロント角度範囲及びサイド角度範囲は、駆動軸251及び駆動軸261の回転角度範囲を示してもよいし、それらに代えて変位量範囲が保持されてもよい。
また、フロントモータ制御手段及びサイドモータ制御手段は、フロントモータ25又はサイドモータ26を制御するにあたり、角度検出部216又は角度検出部226により検出された回転角度を駆動軸251又は駆動軸261の回転角度に変換してもよい。
【0047】
更に、上述のフロントモータ25及びサイドモータ26の制御では、足載せ部10の上面を規則的に動作させていたが、次のようなランダムな動作をさせるように制御されてもよい。
例えば、フロントモータ制御手段若しくはサイドモータ制御手段の一方又は両方は、回転方向を変える度に、回転速度若しくは回転角度範囲の一方又は両方をランダムに決定するようにしてもよい。このようなランダムな動きと上述のような規則的な動きとがユーザインタフェース部に対する操作で切り替え可能とされてもよい。
【0048】
加えて、前傾及び後傾の動作のみを行う動作モード、並びに、左傾及び右傾の動作のみを行う動作モードがユーザインタフェース部に対する操作で切り替え可能とされてもよい。前傾及び後傾の動作のみ行う動作モードが指定された場合には、フロントモータ制御手段は上述のような処理を行い、サイドモータ制御手段は出力軸225が基準角度(例えば、0度)となる位置で停止するようにサイドモータ26を制御し、左傾及び右傾の動作のみを行う動作モードが指定された場合には、サイドモータ制御手段は左傾及び右傾の動作が行われるようにサイドモータ26を制御し、フロントモータ制御手段は出力軸215が基準角度(例えば、0度)となる位置で停止するようにフロントモータ25を制御する。
前傾及び後傾の動作のみを行う動作モード、並びに左傾及び右傾の動作のみを行う動作モードには、上述の実施形態のように変更可能に設定された角度範囲及び回転速度で繰り返し傾斜動作を行う動作モードと、ランダムに角度範囲及び回転速度が決定される動作モードとがそれぞれ設けられてもよい。
【0049】
即ち、6種類の全ての動作モードがユーザインタフェース部に対する操作で切り替え可能とすることができる。具体的には、第一の動作モードは、実施形態で述べたとおり、変更可能に設定される角度範囲及び回転速度で、前傾及び後傾の動作と左傾及び右傾の動作とが協調する動作モードである。第二の動作モードは、変形例として上述した、ランダムに決定される角度範囲及び回転速度で、前傾及び後傾の動作、並びに左傾及び右傾の動作を行う動作モードである。第三及び第四の動作モードは、変形例として上述した、変更可能に設定される角度範囲及び回転速度で、前傾及び後傾の動作のみを行う動作モード、並びに左傾及び右傾の動作のみを行う動作モードである。第五及び第六の動作モードは、変形例として上述した、ランダムに決定される角度範囲及び回転速度で、前傾及び後傾の動作のみを行う動作モード、並びに左傾及び右傾の動作のみを行う動作モードである。
【0050】
[補足]
上述の説明では特に言及しなかったが、足載せ部10の上面が水平となるときに検出される回転角度が基準角度(例えば、0度)を示すように角度検出部216及び角度検出部226が設定される。これにより、本装置1が起動されたとき或いは停止されたときに、フロントモータ制御手段及びサイドモータ制御手段は、角度検出部216及び角度検出部226により検出される回転角度が基準角度となるように、フロントモータ25及びサイドモータ26を制御する。
また、本装置1の傾斜動作の最中に、ユーザインタフェース部に対する操作でフロント角度範囲及びサイド角度範囲又は回転速度が変更可能とされてもよい。この場合には、出力軸215又は出力軸225の回転方向を切り替えるときに、フロントモータ制御手段又はサイドモータ制御手段が変更後の角度範囲又は回転速度を用いるようにすればよい。