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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2019-130561(P2019-130561A)
(43)【公開日】2019年8月8日
(54)【発明の名称】鋳型ばらし方法及び鋳型ばらし装置
(51)【国際特許分類】
   B22D 29/04 20060101AFI20190712BHJP
【FI】
   B22D29/04 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2018-14255(P2018-14255)
(22)【出願日】2018年1月31日
(71)【出願人】
【識別番号】000191009
【氏名又は名称】新東工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 道太
(72)【発明者】
【氏名】久保田 知里
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 寛之
(72)【発明者】
【氏名】杉野 剛大
(57)【要約】
【課題】鋳型ばらしを確実に行い得る鋳型ばらし方法及び鋳型ばらし装置を提供すること。
【解決手段】鋳型を載置可能であり、且つ載置された鋳型から退避可能なテーブルと、テーブル上に鋳型を搬送する搬送機構と、ハンガ部に掛かるハンガーフックと、鋳型の自重によりハンガ部にハンガーフックが掛かるようにテーブルを退避させるテーブル退避手段と、テーブルの退避時における、鋳型のハンガーフック側への傾斜を防止する浮き上がり防止手段とを備える鋳型ばらし装置とする。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋳造物及びハンガ部を有する鋳物が形成された鋳型を前記鋳物と分離する鋳型ばらし方法であって、
テーブル上に前記鋳型を載置すること、
前記ハンガ部に掛かるようにハンガーフックを配置し、該ハンガーフック側を回転軸として前記テーブルの角度を調整すること、
前記鋳型を前記テーブルから落下させることを含むことを特徴とする鋳型ばらし方法。
【請求項2】
鋳造物及びハンガ部を有する鋳物が形成された鋳型を前記鋳物と分離する鋳型ばらし方法であって、
テーブル上に前記鋳型を載置すること、
前記ハンガ部に掛かるようにハンガーフックを配置し、前記テーブルを水平方向に退避させて前記鋳型を前記テーブルから落下させることを含むことを特徴とする鋳型ばらし方法。
【請求項3】
鋳造物及びハンガ部を有する鋳物が形成された鋳型を前記鋳物と分離する鋳型ばらし方法であって、
観音開き可能なテーブル上に前記鋳型を載置すること、
前記ハンガ部に掛かるようにハンガーフックを配置し、前記テーブルを観音開きすることで前記鋳型を前記テーブルから落下させることを含むことを特徴とする鋳型ばらし方法。
【請求項4】
鋳造物及びハンガ部を有する鋳物が形成された鋳型を前記鋳物と分離する鋳型ばらし方法であって、
テーブル上に前記鋳型を載置すること、
前記ハンガ部に掛かるようにハンガーフックを配置するとともに前記鋳型の位置を仮固定すること、
前記ハンガ部にハンガーフックが掛かるように前記テーブルの角度を調整すること、
前記鋳型を前記テーブルから落下させることを含むことを特徴とする鋳型ばらし方法。
【請求項5】
鋳造物及びハンガ部を有する鋳物が形成された鋳型を前記鋳物と分離する鋳型ばらし装置であって、
前記鋳型を載置可能であり、且つ載置された前記鋳型から退避可能なテーブルと、
前記テーブル上に前記鋳型を搬送する搬送機構と、
前記ハンガ部に掛かるハンガーフックと、
前記鋳型の自重により前記ハンガ部に前記ハンガーフックが掛かるように前記テーブルを退避させるテーブル退避手段と、
前記テーブルの退避時における、前記鋳型の前記ハンガーフック側への傾斜を防止する浮き上がり防止手段とを備えることを特徴とする鋳型ばらし装置。
【請求項6】
前記テーブルは回転によって前記鋳型から退避可能であり、
前記ハンガーフックが前記テーブルの回転軸側に配され、
前記ハンガ部に前記ハンガーフックが掛かるように前記テーブルの角度を調整するテーブル角度調整部を備えることを特徴とする請求項5に記載の鋳型ばらし装置。
【請求項7】
前記テーブル上の前記鋳物が自重により落下するように、前記テーブルを水平方向に退避させるテーブル水平移動部を備えることを特徴とする請求項5に記載の鋳型ばらし装置。
【請求項8】
前記テーブルは観音開き可能であることを特徴とする請求項5に記載の鋳型ばらし装置。
【請求項9】
前記鋳型を仮固定する鋳型仮固定機構と、
前記ハンガ部に前記ハンガーフックが掛かるように前記テーブルの角度を調整するテーブル角度調整部とを備えることを特徴とする請求項5に記載の鋳型ばらし装置。
【請求項10】
前記鋳型仮固定機構は、くさびを打ち込むことで前記鋳型を仮固定し、
前記ハンガーフックを押さえると同時に前記鋳型に前記くさびを打ち込むハンガーフック押さえ部を備えることを特徴とする請求項9に記載の鋳型ばらし装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋳造ラインにおいて用いられる鋳型ばらし方法及び鋳型ばらし装置に関する。
【背景技術】
【0002】
鋳造ラインでは、鋳型に形成した溶融金属が凝固して冷却された後、鋳型ばらしが行われる。この鋳型ばらしでは、溶融金属が凝固した鋳物と、ばらした鋳型である鋳型砂とが分離される。該鋳物は製品とされ、該鋳型砂は回収されて再利用される。鋳型ばらしを行う鋳型ばらし装置としては、回転ドラム式、振動トラフ式及び振動ドラム式を例示することができる。
【0003】
従来技術の一例である特許文献1には、回転ドラム式の冷却装置を用いた鋳型ばらしに関する技術が開示されている。
【0004】
図12は、従来技術の一例である回転ドラム式の鋳型ばらし装置10を示す図である。図12に示す鋳型ばらし装置10は、搬入機構11と、回転ドラム12と、搬出機構13と、換気機構14と、散水機構15と、砂回収機構16とを備える。
【0005】
搬入機構11は、鋳物が形成された鋳型を回転ドラム12へ搬入する。鋳物が形成された鋳型は、図12における白抜き矢印の方向から搬入機構11へ投入される。
【0006】
回転ドラム12は、鋳物の移動方向と略一致する方向の回転軸を回転中心として、実線の矢印で示すように回転する。回転ドラム12では、鋳物を形成した鋳型と該鋳物とが分離され、鋳型は鋳型砂となり、該鋳物及び該鋳型砂が冷却される。鋳物及び鋳型砂は、回転ドラム12内を搬入機構11側から搬出機構13側へ移動し、鋳物は搬出機構13に排出され、鋳型砂は砂回収機構16に回収される。
【0007】
換気機構14は、換気扇を含み、回転ドラム12内の換気を行う。散水機構15は、回転ドラム12内の鋳物及び鋳型砂に対して散水を行う。砂回収機構16は、回転ドラム12と搬出機構13との間に設けられ、回転ドラム12内の砂を回収する。この砂には鋳型砂が含まれる。
【0008】
図12に示す鋳型ばらし装置10によれば、回転ドラム12の回転により鋳物を効率的に冷却可能である。また、鋳型ばらし装置10によれば、回転ドラム12内において、常温の砂と、乾燥した高温の砂と、中子砂とが混ざり、砂回収機構16による回収前に砂を均質化することが可能である。
【0009】
また、回転ドラムを用いることなく鋳型ばらしを行う装置として、従来技術の一例である特許文献2に開示されるように、鋳物にハンガを設け、該ハンガに掛かるフックによって鋳物を吊下げて鋳型ばらしを行うことが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開昭56−14068号公報
【特許文献2】特許第2996283号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ところで、上記の図12に示す鋳型ばらし装置10では、回転ドラム12内において鋳物を損傷することがある。これは、回転ドラム12内において、鋳物が他の鋳物又は回転ドラム12の内壁に接触又は衝突するためである。このように損傷した鋳物は、表面に打痕又は割れを生じてしまう、という問題があった。そして、鋳物の表面に打痕又は割れを生じると、その鋳物は不良品となるため、生産効率を低下させてしまう、という問題があった。
【0012】
また、図12に示す鋳型ばらし装置10においては、鋳物が形成された鋳型の搬入順と鋳物の搬出順とが一致しない。すなわち、先に投入された鋳型内の鋳物が、これより後に投入された鋳型内の鋳物よりも後に排出されることがある。そのため、鋳型ばらし装置10では、排出された各鋳物を形成した順番を特定することが難しく、各鋳物の製造条件を特定することが困難である、という問題があった。
【0013】
また、図12に示す鋳型ばらし装置10では、回転ドラム12内における鋳物と砂の接触時間が長いため、砂の温度が全体的に上昇してしまう、という問題があった。また、図12に示す鋳型ばらし装置10では、後処理工程における人の作業量が多い、という問題もあった。
【0014】
上記の特許文献2に開示される技術によれば、鋳物の打痕及び割れ等を防止することができるが、ハンガの位置によっては鋳物にフックが掛からない場合があり、鋳型ばらしを確実に行い得ない、という問題があった。
【0015】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、鋳型ばらしを確実に行い得る鋳型ばらし方法及び鋳型ばらし装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上述の課題を解決して目的を達成する本発明は、鋳造物及びハンガ部を有する鋳物が形成された鋳型を前記鋳物と分離する鋳型ばらし方法であって、テーブル上に前記鋳型を載置すること、前記ハンガ部に掛かるようにハンガーフックを配置し、該ハンガーフック側を回転軸として前記テーブルの角度を調整すること、前記鋳型を前記テーブルから落下させることを含むことを特徴とする鋳型ばらし方法である。
【0017】
または、本発明は、鋳造物及びハンガ部を有する鋳物が形成された鋳型を前記鋳物と分離する鋳型ばらし方法であって、テーブル上に前記鋳型を載置すること、前記ハンガ部に掛かるようにハンガーフックを配置し、前記テーブルを水平方向に退避させて前記鋳型を前記テーブルから落下させることを含むことを特徴とする鋳型ばらし方法である。
【0018】
または、本発明は、鋳造物及びハンガ部を有する鋳物が形成された鋳型を前記鋳物と分離する鋳型ばらし方法であって、観音開き可能なテーブル上に前記鋳型を載置すること、前記ハンガ部に掛かるようにハンガーフックを配置し、前記テーブルを観音開きすることで前記鋳型を前記テーブルから落下させることを含むことを特徴とする鋳型ばらし方法である。
【0019】
または、本発明は、鋳造物及びハンガ部を有する鋳物が形成された鋳型を前記鋳物と分離する鋳型ばらし方法であって、テーブル上に前記鋳型を載置すること、前記ハンガ部に掛かるようにハンガーフックを配置するとともに前記鋳型の位置を仮固定すること、前記ハンガ部にハンガーフックが掛かるように前記テーブルの角度を調整すること、前記鋳型を前記テーブルから落下させることを含むことを特徴とする鋳型ばらし方法である。
【0020】
または、本発明は、鋳造物及びハンガ部を有する鋳物が形成された鋳型を前記鋳物と分離する鋳型ばらし装置であって、前記鋳型を載置可能であり、且つ載置された前記鋳型から退避可能なテーブルと、前記テーブル上に前記鋳型を搬送する搬送機構と、前記ハンガ部に掛かるハンガーフックと、前記鋳型の自重により前記ハンガ部に前記ハンガーフックが掛かるように前記テーブルを退避させるテーブル退避手段と、前記テーブルの退避時における、前記鋳型の前記ハンガーフック側への傾斜を防止する浮き上がり防止手段とを備えることを特徴とする鋳型ばらし装置である。
【0021】
前記鋳型ばらし装置は、前記テーブルは回転によって前記鋳型から退避可能であり、前記ハンガーフックが前記テーブルの回転軸側に配され、前記ハンガ部に前記ハンガーフックが掛かるように前記テーブルの角度を調整するテーブル角度調整部を備えることで実現することができる。
【0022】
又は、前記鋳型ばらし装置は、前記テーブル上の前記鋳物が自重により落下するように、前記テーブルを水平方向に退避させるテーブル水平移動部を備えることで実現することができる。
【0023】
又は、前記鋳型ばらし装置は、前記テーブルを観音開き可能とすることで実現することができる。
【0024】
又は、前記鋳型ばらし装置は、前記鋳型を仮固定する鋳型仮固定機構と、前記ハンガ部に前記ハンガーフックが掛かるように前記テーブルの角度を調整するテーブル角度調整部とを備えることで実現することができる。
【0025】
前記鋳型仮固定機構は、くさびを打ち込むことで前記鋳型を仮固定し、前記ハンガーフックを押さえると同時に前記鋳型に前記くさびを打ち込むハンガーフック押さえ部を備えることが好ましい。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、鋳型ばらしを確実に行うことができる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】実施形態1に係る鋳型ばらし装置に投入される鋳型及び鋳型内部に形成された鋳物の高さの一例を示す図である。
図2図1に示す鋳物の鋳型における位置関係を示す平面図である。
図3】実施形態1に係る鋳型ばらし装置を含む鋳造ラインを示す概略図である。
図4】実施形態1に係る鋳型ばらし装置における鋳型ばらしの第1の手順を示す図である。
図5】鋳物に設けたハンガに掛かるハンガーフックに鋳物を吊下げて行う鋳型ばらしの一例(比較例)を示す図である。
図6図4に示す工程の実施形態1における詳細を示す側面図の一例である。
図7】実施形態1に係る鋳型ばらし装置における鋳型ばらしの第2の手順を示す図である。
図8図4に示す工程の実施形態2における詳細を示す側面図の一例である。
図9図4に示す工程の実施形態3における詳細を示す側面図の一例である。
図10図4に示す工程の実施形態4における詳細を示す側面図の一例である。
図11図10のX−Xにおける鋳型にくさびを打つ構成の平面図である。
図12】従来技術の一例である回転ドラム式の鋳型ばらし装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明の実施形態について図面を参照して以下に説明する。ただし、本発明は、以下の実施形態の記載によって限定解釈されるものではない。
【0029】
<前提技術>
まず、本発明を説明する前に前提技術について説明する。図1は、本実施形態に係る鋳型ばらし装置に投入される鋳型及び鋳型内部に形成された鋳物の一例を示す図である。図1に示す鋳型102は、上鋳型103と下鋳型104とを備え、上鋳型103と下鋳型104との間には鋳物101が形成されている。鋳物101は、製品となる鋳造物105と、ハンガ部106とを有する。なお、図1には、上鋳型103及び下鋳型104の最大高さがいずれも130mmであり、鋳型102の高さが260mmである場合を例示している。また、上鋳型103及び下鋳型104は、各々の最大高さを有する部分において互いに接することで鋳物101を閉じこめている。突部107及び注湯部108については後述する。
【0030】
また、図2は、図1に示す鋳物101の鋳型102における位置関係を示す平面図である。図1及び図2に示すように、鋳物101は、鋳造物105及びハンガ部106を含み、鋳造物105及びハンガ部106は、これらを連結する部分も含めて一体に形成されている。そして、ハンガ部106の下方にはハンガーフック31が配置される。なお、鋳造物105とハンガ部106とを連結する部分に形成された突部107は、後の工程においてロボットアームが鋳物101を掴むことが可能なように設けられる構成である。また、注湯部108は、注湯の際の湯口に形成される部分である。
【0031】
なお、図2においてハンガ部106はT字型であるが、これに限定されるものではない。ハンガ部106は、H字型であってもよいし、十字型であってもよい。また、図2においてハンガ部106は2つ設けられているが、これは、後の工程において鋳物101をパレット台車に乗せることが可能なように設けられるものである。
【0032】
なお、鋳型の造型方法には、枠抜造型及び枠付造型がある。枠付造型で作製される鋳型の高さは、鋳型の造型に使用する枠である金枠の高さに応じて決まる。そのため、枠付造型では同一金枠で作製される鋳型の高さは概ね等しくなる。他方で、枠抜造型では鋳型の造型に金枠を用いないので、作製される鋳型の高さは様々に異なる。本発明は、枠抜造型及び枠付造型のいずれにも適用可能である。
【0033】
また、図1において、上鋳型の最大高さと下鋳型の最大高さとを等しくしているが、本発明はこれに限定されるものではなく、上鋳型の最大高さと下鋳型の最大高さとは異なっていてもよい。
【0034】
図3は、本実施形態に係る鋳型ばらし装置を含む鋳造ラインを示す概略図である。図3に示す鋳造ライン20は、鋳型造型装置21と、注湯装置22と、第1搬送部23と、第2搬送部24と、鋳型ばらし装置30とを備える。
【0035】
鋳型造型装置21は、鋳型砂を成形することで鋳型102を造型する。ここで、鋳型により形成される鋳物101は、少なくとも、製品となる鋳造物と、鋳型ばらしにおいて利用されるハンガ部とを有する形状とする。注湯装置22は、鋳型造型装置21が造型した鋳型102に溶融金属を鋳込むために注湯を行う。
【0036】
第1搬送部23は、注湯装置22により溶湯が鋳込まれて鋳物が形成された鋳型102を鋳型ばらし装置30へ搬送する。第2搬送部24は、鋳型ばらし装置30から搬出された鋳物101を図示しない次の工程の場所へ搬送する。ここで、次の工程の一例は、検査工程である。
【0037】
鋳型ばらし装置30は、第1搬送部23によって搬送された鋳型102と鋳物101とを分離し、鋳型102をばらし、発生した鋳型砂を回収し、鋳物101を排出する。
【0038】
次に、鋳型ばらし装置30について図4を参照して説明する。鋳型ばらし装置30は、図3の白抜き矢印で示す第1搬送部23の進行方向に隣接してテーブル32を備える。鋳物101が形成された鋳型102は、プッシャー33によりテーブル32上に載置される。テーブル32は、第1搬送部23の逆側が回転軸34を中心として回転自在に支持され、回転軸34の逆側が自由端であるため、テーブル32の上面の角度は水平面に対して傾斜可能である。テーブル32の回転軸34側の上方にはレール35が紙面に直交する方向に配設されており、レール35には懸吊装置36が懸架されている。懸吊装置36の下端部37にはハンガーフック31が設けられており、ハンガーフック31は鋳型102に差し込み可能に構成されている。
【0039】
懸吊装置36は、レール35上に複数配置され、ハンガーフック31により鋳物101を吊下げて鋳型砂を落とす作業を終えた後、順次、紙面に直交する方向、例えば紙面の奥へ進行するように構成されている。
【0040】
次に、鋳型ばらし装置30を用いた鋳型ばらしの手順を説明する。図4は、鋳型ばらし装置30における鋳型ばらしの第1の手順を示す図である。図4に示す工程では、第1搬送部23上の鋳型102をプッシャー33で押し出すことで、鋳型ばらし装置30が備えるハンガーフック31に隣接するテーブル32上に、鋳型102を載置してセットする。図4に示す工程では、後の工程における鋳型102の落下時にハンガーフック31に鋳物101が掛かるように、ハンガーフック31と鋳物101との相対位置を調整する。
【0041】
図5は、鋳物に設けたハンガに掛かるハンガーフックに鋳物を吊下げて行う鋳型ばらしの一例(比較例)を示す図である。図5に示すテーブル32は、ハンガーフック31とは逆側の回転軸34aを中心として回転自在に支持され、回転軸34aの逆側、すなわちハンガーフック31側が自由端である。そのため、テーブル32の上面の角度は、水平面に対して傾斜可能である。図5では、テーブル32上に鋳物101が形成された鋳型102が載置されている。この状態でテーブル32を傾斜させると、鋳型102がテーブル32から落下しつつハンガーフック31がハンガ部106に掛かり、鋳物101がハンガーフック31に吊下がるとともに鋳型102が鋳型砂として下方に落下する。この装置は、上述のように鋳物101と鋳型102とを分離するものであるが、落下時の条件によっては、ハンガ部106がハンガーフック31に掛かることなく鋳物101と鋳型102との分離が適切に行われないことがある。すなわち、テーブル32を水平面に対して傾斜させると、鋳型102のハンガーフック31側が重力方向と概ね逆方向に跳ね上がり、鋳物101のハンガ部106がハンガーフック31に掛からずに、鋳物101及び鋳型102が落下してしまうことがある。
【0042】
このようなハンガーフック31側における鋳型102の跳ね上がりの原因として、次の3つのいずれか又はこれらの組み合わせが考えられる。第1には、ハンガーフック31とハンガ部106との間に存在する鋳型砂が抵抗軸となることが挙げられる。第2には、テーブル32の回転軸34a側は、テーブル32の傾斜が大きくなるまで鋳型102と接触しているため、この接触部分が軸となって自由端であるハンガーフック31側の鋳型102が上に動いてしまうことが挙げられる。第3には、テーブル32の傾斜速度によって生じ得る、傾斜したテーブル32と落下を開始した鋳型102との衝突が挙げられる。ただし、鋳型102の跳ね上がりには、これら3つの理由以外によってハンガーフック31側において生じる跳ね上がりも含むものとする。ハンガーフック31で鋳物101を確実に吊下げるため、また損傷のない鋳物101を得るためには、このようなハンガーフック31側における鋳型102の跳ね上がりが生じないように鋳型ばらしを行うべきである。
【0043】
<実施形態1>
図6は、図4に示す工程の本実施形態における詳細を示す側面図である。図6に示す鋳型102は、テーブル32上に載置される。図6では、テーブル32を回転自在に支持する回転軸34が、プッシャー33側ではなく、ハンガーフック31側に設けられている点が図5とは異なる。ハンガーフック31側に設けられた回転軸34によって回転可能に支持されたテーブル32の角度は、テーブル32の裏面側に設けられたシリンダ38の伸縮によって調整可能である。シリンダ38は、白抜き矢印の方向に伸縮することでテーブル32の角度を調整して鋳型102の載置面を水平面に対して傾斜させる。このとき、鋳型102の載置面と重力方向とのなす角度が小さくなるように回転軸34を回転中心としてテーブル32を回転させる。このようにして、鋳型102を自重によりテーブル32から落下させ、鋳型102の落下時にハンガーフック31が鋳物101のハンガ部106に掛かる。
【0044】
このように、ハンガ部106を掛けるハンガーフック31側にテーブル32の回転軸34が設けられることで、鋳型102の落下時における、上述のいずれか一つ又は複数の理由により生じる跳ね上がりを防止して鋳物101の落下を回避し、ハンガーフック31を鋳物101のハンガ部106に確実に掛けることができ、損傷のない鋳物101を得ることができる。
【0045】
図7は、鋳型ばらし装置30における鋳型ばらしの第2の手順を示す図である。図7に示す工程では、ハンガーフック31に鋳物101を吊下げた状態で、回転軸34を回転中心として傾斜させたテーブル32と鋳物101の突部とを接触させて残留した鋳型砂を落とすことが好ましい。このような構成とすることで、鋳物101に残留した鋳型砂をさらに落とすことができる。
【0046】
ただし、本発明はこれに限定されるものではなく、テーブル32と鋳物101とを接触させず、鋳物101に振動装置により振動を与えて残留した鋳型砂を落としてもよい。
【0047】
本実施形態にて説明した鋳型ばらし装置は、図6に示すように、ハンガーフック31がテーブル32の回転軸34側に配され、ハンガ部106にハンガーフック31が掛かるようにテーブル32の角度を調整するテーブル角度調整部を備える構成である。このテーブル角度調整部は、少なくともテーブル32に接続されたシリンダ38を含み、シリンダ38の伸縮に応じてテーブル32の角度が調整される。
【0048】
以上、本実施形態によれば、鋳型落下時の跳ね上がりを防止し、打痕及び割れ等の損傷を生じることなく鋳物を得ることができる。また、鋳物にフックを確実に引っ掛けることができ、鋳型ばらしを確実に行うことができる。
【0049】
<実施形態2>
実施形態1では、鋳型の載置面を含むテーブルを傾斜することにより鋳型を落下させる形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、本実施形態にて説明するように、テーブルを水平方向に移動させてもよい。
【0050】
本実施形態は、実施形態1とは鋳型を落下させる際のテーブルの動作が異なるのみであり、その他の構成については、実施形態1と同じであるため、図1から図4を参照した説明を援用する。
【0051】
図8は、図4に示す工程の本実施形態における詳細を示す側面図である。図8に示すように、プッシャー33によって鋳型102がテーブル32上に載置された状態でテーブル32に接続されたシリンダ38aが伸縮する。シリンダ38aが伸縮すると、テーブル32は水平方向に引かれ、鋳型102は自重により落下する。鋳型102の落下時には、ハンガーフック31が鋳物101のハンガ部106に掛かる。
【0052】
このように、テーブル32を水平方向に引く構成とすることで、鋳型102の落下時における跳ね上がりを防止し、ハンガーフック31を鋳物101のハンガ部106に確実に掛けることができ、損傷のない鋳物101を得ることができる。
【0053】
本実施形態にて説明した鋳型ばらし装置は、図8に示すように、鋳型102を落下させるために鋳型102の載置面であるテーブル32を水平方向に退避させるテーブル水平移動部を備える構成である。このテーブル水平移動部は、少なくともテーブル32に接続されたシリンダ38aを含み、シリンダ38aの伸縮に応じてテーブル32が水平方向に移動する。
【0054】
なお、本実施形態においては、鋳型102が落下するように鋳型102の載置面であるテーブル32を水平方向に退避させることができればよく、テーブル32を水平方向に移動させる手段は上記したものに限定されない。図8に示す構成では、テーブル32はプッシャー33側に退避しているが、テーブル32はハンガーフック31側に退避してもよいし、テーブル32が中央で2つに分割されて、プッシャー33側のテーブルがプッシャー33側に退避し、ハンガーフック31側のテーブルがハンガーフック31側に退避する構成としてもよい。
【0055】
以上、本実施形態にて説明したように、鋳型の載置面を傾けずに鋳型の載置面を退避させることによっても鋳型落下時の跳ね上がりを防止し、打痕及び割れ等の損傷を生じることなく鋳物を得ることができる。また、鋳物にフックを確実に引っ掛けることができ、鋳型ばらしを確実に行うことができる。
【0056】
<実施形態3>
実施形態1ではテーブルの角度を調整することにより鋳型を落下させる形態について説明し、実施形態2ではテーブルを水平方向に退避させて鋳型を落下させる形態について説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、本実施形態にて説明するように、テーブルを観音開きとしてもよい。
【0057】
本実施形態は、実施形態1,2とは鋳型を落下させる際のテーブルの動作が異なるのみであり、その他の構成については、実施形態1と同じであるため、図1から図4を参照した説明を援用する。
【0058】
図9は、図4に示す工程の本実施形態における詳細を示す側面図である。図9に示すように、プッシャー33によって鋳型102がテーブル32A,32B上に載置された状態で、図9の白抜き矢印にて示すように、回転軸34Aを軸としてテーブル32Aを水平面に対して傾斜させると同時に回転軸34Bを軸としてテーブル32Bを傾斜させて、テーブル32A,32Bにより形成された鋳型102の載置面を観音開きさせると、鋳型102は自重により落下する。鋳型102の落下時には、ハンガーフック31が鋳物101のハンガ部106に掛かる。
【0059】
このように、テーブル32A,32Bを観音開きとすることで、鋳型102の落下時における跳ね上がりを防止し、ハンガーフック31を鋳物101のハンガ部106に確実に掛けることができ、損傷のない鋳物101を得ることができる。
【0060】
本実施形態にて説明した鋳型ばらし装置は、テーブル32A,32Bにより形成される鋳型の載置面が観音開きする構成である。
【0061】
なお、本実施形態においては、鋳型102が落下するように鋳型102の載置面であるテーブル32を観音開きする構成とすればよく、回転軸34A,34Bを回転軸としたテーブル32A,32Bを回転させる手段は限定されるものではない。図9には示していないが、図6と同様にテーブルに接続されたシリンダを備えていてもよい。
【0062】
以上、本実施形態にて説明したように、鋳型の載置面を観音開きとすることによっても鋳型落下時の跳ね上がりを防止し、打痕及び割れ等の損傷を生じることなく鋳物を得ることができる。また、鋳物にフックを確実に引っ掛けることができ、鋳型ばらしを確実に行うことができる。
【0063】
<実施形態4>
実施形態1ではテーブルの角度を調整することにより鋳型を落下させる形態について説明し、実施形態2ではテーブルを水平方向に退避させて鋳型を落下させる形態について説明し、実施形態3ではテーブルを観音開きとすることで鋳型を落下させる形態について説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、本実施形態にて説明するように、テーブルの退避時に鋳型を仮固定する構成であってもよい。
【0064】
本実施形態は、実施形態1〜3とはハンガーフックの構成が異なるのみであり、その他の構成については、実施形態1と同じであるため、図1から図4を参照した説明を援用する。
【0065】
図10は、図4に示す工程の本実施形態における詳細を示す側面図である。また、図11は、図10のX−Xにおける鋳型にくさびを打つ構成の平面図である。図10に示すように、プッシャー33によって鋳型102がテーブル32上に載置された状態でシリンダ38bが伸縮することで、シリンダ38bに連結されたハンガーフック押さえ部39は、ハンガーフック31を押さえつつ鋳型102にくさび40を打ち込んで仮固定する。鋳型102にくさび40を打ち込んだ状態で回転軸34aを軸としてテーブル32を傾斜させると、鋳型102は自重により落下する。鋳型102の落下時には、ハンガーフック31が鋳物101のハンガ部106に掛かる。
【0066】
なお、図10においては、テーブル32の回転軸34aはプッシャー33側に配されているが、本発明はこれに限定されるものではなく、本実施形態においても実施形態1の図6と同様に、回転軸34aに代えてハンガーフック31側の回転軸34がテーブル32に配されていてもよい。すなわち、本実施形態の構成と実施形態1の構成とを組み合わせてもよい。また、本実施形態の構成と実施形態2,3の構成とを組み合わせてもよい。
【0067】
このように、鋳型102にくさび40を打ち込む構成とすることで、鋳型102の落下時における跳ね上がりを防止し、ハンガーフック31を鋳物101のハンガ部106に確実に掛けることができ、損傷のない鋳物101を得ることができる。
【0068】
本実施形態にて説明した鋳型ばらし装置は、鋳型にくさびを打ち込んで鋳型を仮固定する鋳型仮固定機構を備える構成である。鋳型仮固定機構による仮固定では、上面が鋳型の載置面であるテーブルの退避時に一時的に鋳型の落下を防止することができればよい。なお、くさびは鋳型仮固定機構の例示であり、本発明はこれに限定されるものではない。
【0069】
以上、本実施形態にて説明したように、鋳型にくさびを打ち込んで鋳型を仮固定することによっても鋳型落下時の跳ね上がりを防止し、打痕及び割れ等の損傷を生じることなく鋳物を得ることができる。また、鋳物にフックを確実に引っ掛けることができ、鋳型ばらしを確実に行うことができる。
【0070】
また、実施形態1〜4によれば、鋳型の自重によりハンガ部にハンガーフックが掛かるように、上面が鋳型の載置面であるテーブルを鋳型から退避させるテーブル退避手段と、テーブルの退避時における、鋳型のハンガーフック側への傾斜を防止する浮き上がり防止手段とを備えることで、テーブルの退避時における、鋳型のハンガーフック側での跳ね上がりを防止することができ、鋳型ばらしを確実に行うことができる。
【符号の説明】
【0071】
10 鋳型ばらし装置
11 搬入機構
12 回転ドラム
13 搬出機構
14 換気機構
15 散水機構
16 砂回収機構
20 鋳造ライン
21 鋳型造型装置
22 注湯装置
23 第1搬送部
24 第2搬送部
30 鋳型ばらし装置
31 ハンガーフック
32,32A,32B テーブル
33 プッシャー
34,34a,34A,34B 回転軸
35 レール
36 懸吊装置
37 下端部
38,38a,38b シリンダ
39 ハンガーフック押さえ部
40 くさび
101 鋳物
102 鋳型
103 上鋳型
104 下鋳型
105 鋳造物
106 ハンガ部
107 突部
108 注湯部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12