特開2019-130982(P2019-130982A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2019-130982(P2019-130982A)
(43)【公開日】2019年8月8日
(54)【発明の名称】鉄道車両用台車
(51)【国際特許分類】
   B61F 5/32 20060101AFI20190712BHJP
【FI】
   B61F5/32 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2018-13523(P2018-13523)
(22)【出願日】2018年1月30日
(71)【出願人】
【識別番号】000004617
【氏名又は名称】日本車輌製造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100128358
【弁理士】
【氏名又は名称】木戸 良彦
(74)【代理人】
【識別番号】100086210
【弁理士】
【氏名又は名称】木戸 一彦
(72)【発明者】
【氏名】新村 浩
(72)【発明者】
【氏名】金屋 大三
(72)【発明者】
【氏名】玉川 佑介
(72)【発明者】
【氏名】滝野 雄一郎
(57)【要約】
【課題】軸ゴムに歪みが発生することを抑制できる構造を備えた鉄道車両用台車を提供する。
【解決手段】台車11のレール方向両端部に軸ゴム17を備えた軸箱支持装置14をそれぞれ設け、各軸箱支持装置によって輪軸16を回転可能に保持する各軸箱13をそれぞれ弾性的に支持するとともに、台車のレール方向中間部に踏面片押し式のユニットブレーキ18を搭載した鉄道車両用台車において、レール方向に隣接する軸箱同士を接続し、該軸箱同士の間隔が拡がることを抑制する軸箱連結部材19を設ける。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
台車のレール方向両端部に軸ゴムを備えた軸箱支持装置をそれぞれ設け、各軸箱支持装置によって輪軸を回転可能に保持する各軸箱をそれぞれ弾性的に支持するとともに、台車のレール方向中間部に踏面片押し式のユニットブレーキを搭載した鉄道車両用台車において、レール方向に隣接する軸箱同士を接続し、該軸箱同士の間隔が、あらかじめ設定された最大間隔以上に拡がることを抑制する軸箱連結部材を設けたことを特徴とする鉄道車両用台車。
【請求項2】
前記軸箱連結部材は、硬質材料からなる棒状部材の両端部にそれぞれ設けられたレール方向の長孔と、前記軸箱に設けられて前記長孔内に移動可能に挿入される接続ピンとを備え、該接続ピンは、前記ユニットブレーキの非作動時に前記長孔の先端部に位置していることを特徴とする請求項1記載の鉄道車両用台車。
【請求項3】
前記軸箱連結部材は、両端部が前記軸箱にそれぞれ回動可能に接続される硬質材料からなる棒状部材からなり、該棒状部材を中央部で2分割して連結ピンで屈曲可能に連結するとともに、台車の両側に配置された各軸箱連結部材における両連結ピン同士を中央連結部材で連結したことを特徴とする請求項1記載の鉄道車両用台車。
【請求項4】
前記軸箱連結部材は、両端部が前記軸箱にそれぞれ回動可能に接続される硬質材料からなる棒状部材からなり、該棒状部材をレール方向の中間部で2分割して連結ピンで屈曲可能に連結するとともに、台車の回転中心から離れた位置の車体と前記連結ピンとを操舵用連結部材で連結したことを特徴とする請求項1記載の鉄道車両用台車。
【請求項5】
前記軸箱連結部材は、両端部が前記軸箱にそれぞれ回動可能に接続される硬質材料からなる棒状部材からなり、該棒状部材を中央部で2分割して連結ピンで屈曲可能に連結し、台車中央部の枕木方向に移動可能に設けた駆動軸の外端と前記連結ピンとを連結するとともに、前記駆動軸を台車に対して枕木方向に移動させるアクチュエータを設けたことを特徴とする請求項1記載の鉄道車両用台車。
【請求項6】
前記軸箱連結部材は、両端部が前記軸箱にそれぞれ回動可能に接続される硬質材料からなる棒状部材からなり、該棒状部材を中央部で2分割して連結ピンで屈曲可能に連結し、台車中央部の枕木方向に移動可能に設けた駆動軸の内端と前記連結ピンとを連結するとともに、一端が車体に取り付けられてレール方向に配置された固定軸の他端と前記駆動軸の外端とをアングル部材を介して連結したことを特徴とする請求項1記載の鉄道車両用台車。
【請求項7】
前記軸箱連結部材は、柔軟性を有する材料によって形成されていることを特徴とする請求項1記載の鉄道車両用台車。
【請求項8】
前記軸箱連結部材は、前記軸箱同士を近接する方向に付勢する弾性材料によって形成されていることを特徴とする請求項1記載の鉄道車両用台車。
【請求項9】
台車のレール方向両端部に軸ゴムを備えた軸箱支持装置をそれぞれ設け、各軸箱支持装置によって輪軸を回転可能に保持する各軸箱をそれぞれ弾性的に支持するとともに、台車のレール方向中間部に踏面片押し式のユニットブレーキを搭載した鉄道車両用台車において、一方のユニットブレーキのシリンダにおけるロッド側先端部の台車内側部分と、他方のユニットブレーキのブレーキシューが押圧する車輪の輪軸を保持する軸箱とをシリンダ連結部材で連結したことを特徴とする鉄道車両用台車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道車両用台車に関し、詳しくは、ボギー台車のブレーキシステムに踏面片押し式のユニットブレーキを搭載し、軸箱支持装置に筒状の軸ゴムを備えた鉄道車両用台車に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道車両用のボギー台車として、輪軸を回転可能に保持する軸箱を、軸ゴムを備えた軸箱支持装置を介して台車に結合するとともに、ブレーキシステムに踏面片押し式のユニットブレーキを搭載したものが知られている(例えば、特許文献1,2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016−107911号公報
【特許文献2】特開2010−42778号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
通常、軸箱支持装置は、台車におけるレール方向両端部にそれぞれ設けられており、踏面片押し式のユニットブレーキは、両軸箱支持装置の間の台車中央部にそれぞれ設けられている。したがって、ブレーキを作動させて車輪の踏面にブレーキシューを押圧させると、車輪を台車端部方向に押圧する力が作用することになり、軸箱支持装置における軸ゴムの台車端部側(反ブレーキシュー側)が圧縮された状態になる。通常のブレーキ操作では問題になることはないが、長時間にわたって駐車させる際に、ブレーキを作動させたままにしておくと、長時間の圧縮によって軸ゴムに歪みが生じるおそれがある。このため、軸ゴムの寿命が短くなるという問題があった。
【0005】
そこで本発明は、長時間にわたってブレーキを作動させた状態にしても、軸ゴムに歪みが発生することを抑制できる構造を備えた鉄道車両用台車を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の鉄道車両用台車は、台車のレール方向両端部に軸ゴムを備えた軸箱支持装置をそれぞれ設け、各軸箱支持装置によって輪軸を回転可能に保持する各軸箱をそれぞれ弾性的に支持するとともに、台車のレール方向中間部に踏面片押し式のユニットブレーキを搭載した鉄道車両用台車において、レール方向に隣接する軸箱同士を接続し、該軸箱同士の間隔が、あらかじめ設定された最大間隔以上に拡がることを抑制する軸箱連結部材を設けたことを特徴としている。
【0007】
さらに、前記鉄道車両用台車における前記軸箱連結部材が、硬質材料からなる棒状部材の両端部にそれぞれ設けられたレール方向の長孔と、前記軸箱に設けられて前記長孔内に移動可能に挿入される接続ピンとを備え、該接続ピンは、前記ユニットブレーキの非作動時に前記長孔の先端部に位置していることを特徴としている。
【0008】
また、本発明の鉄道車両用台車における前記軸箱連結部材が、両端部が前記軸箱にそれぞれ回動可能に接続される硬質材料からなる棒状部材からなり、該棒状部材を中央部で2分割して連結ピンで屈曲可能に連結するとともに、台車の両側に配置された各軸箱連結部材における前記連結ピン同士を中央連結部材で連結したことを特徴としている。
【0009】
さらに、前記棒状部材をレール方向の中間部で2分割して連結ピンで屈曲可能に連結するとともに、台車の回転中心から離れた位置の車体と前記連結ピンとを操舵用連結部材で連結したことを特徴としている。また、前記軸箱連結部材が、両端部が前記軸箱にそれぞれ回動可能に接続される硬質材料からなる棒状部材からなり、該棒状部材を中央部で2分割して連結ピンで屈曲可能に連結し、台車中央部の枕木方向に移動可能に設けた駆動軸の外端と前記連結ピンとを連結するとともに、前記駆動軸を台車に対して枕木方向に移動させるアクチュエータを設けたことを特徴としている。さらに、前記軸箱連結部材が、両端部が前記軸箱にそれぞれ回動可能に接続される硬質材料からなる棒状部材からなり、該棒状部材を中央部で2分割して連結ピンで屈曲可能に連結し、台車中央部の枕木方向に移動可能に設けた駆動軸の内端と前記連結ピンとを連結するとともに、一端が車体に取り付けられてレール方向に配置された固定軸の他端と前記駆動軸の外端とをアングル部材を介して連結したことを特徴としている。
【0010】
また、本発明の鉄道車両用台車は、前記軸箱連結部材が柔軟性を有する材料によって形成されていることを特徴とし、前記連結部材が、前記軸箱同士を近接する方向に付勢する弾性材料によって形成されていることを特徴としている。
【0011】
さらに、本発明の鉄道車両用台車は、台車のレール方向両端部に軸ゴムを備えた軸箱支持装置をそれぞれ設け、各軸箱支持装置によって輪軸を回転可能に保持する各軸箱をそれぞれ弾性的に支持するとともに、台車のレール方向中間部に踏面片押し式のユニットブレーキを搭載した鉄道車両用台車において、一方のユニットブレーキのシリンダにおけるロッド側先端部の台車内側部分と、他方のユニットブレーキのブレーキシューが押圧する車輪の輪軸を保持する軸箱とをシリンダ連結部材で連結したことを特徴としている。
【発明の効果】
【0012】
本発明の鉄道車両用台車によれば、ブレーキが作動して車輪が台車端部方向に押圧されたときに、連結部材によって軸箱が台車端部方向に移動することを抑制できるので、ブレーキを作動させた状態で長時間にわたって駐車した場合でも、軸箱同士の間隔があらかじめ設定された最大間隔以上に拡がることがなく、軸ゴムに歪みが発生することを防止でき、軸ゴムの性能を長期にわたって維持することができる。また、軸箱連結部材を分割することにより、操舵機能を付与することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の鉄道車両用台車の第1形態例を示す側面図である。
図2】同じく平面図である。
図3】本発明の鉄道車両用台車の第2形態例を示す側面図である。
図4】同じく平面図である。
図5】本発明の鉄道車両用台車の第3形態例を示す側面図である。
図6】同じく平面図である。
図7】本発明の鉄道車両用台車の第4形態例を示す側面図である。
図8】同じく平面図である。
図9】本発明の鉄道車両用台車の第5形態例を示す側面図である。
図10】同じく平面図である。
図11】本発明の鉄道車両用台車の第6形態例を示す側面図である。
図12】同じく平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1及び図2は、本発明の鉄道車両用台車の第1形態例を示している。なお、以下の各形態例の説明において、レール方向を前後方向、枕木方向を幅方向又は左右方向ということがある。
【0015】
第1形態例に示す鉄道車両用の台車11は、ボルスタレス式の動力台車であって、枕木方向に配置される横梁11aと、該横梁11aの両端でレール方向に配置される一対の側梁11b,11bとで平面視がH字形に形成されている。横梁11aの両端部には、車体(図示せず)を支持する一対の空気ばね12,12が設けられており、側梁11bの両端部には、軸箱13を弾性的に支持する軸箱支持装置14がそれぞれ設けられている。また、横梁11aの前後には主電動機15,15が固定されており、主電動機15の回転力は、たわみ継手15a及び歯車装置15bを介して輪軸16の車軸16aに伝達される。さらに、台車11と車体とは、駆動力や制動力を伝達するための牽引装置(図示せず)により連結されている。
【0016】
台車11の4箇所に設けられる軸箱支持装置14は、車軸16aの両端部を回転可能に挿通した軸箱13から上方に突設した円錐形状の突部と、側梁11bの端部に設けた下方が開口した円錐形状の筒部との間に、円錐形状の複数の金属筒と複数のゴムとを積層した軸ゴム17を介装することによって軸箱13を弾性的に支持している。
【0017】
さらに、前後の車輪16bに挟まれた横梁11aの両端部には、踏面片押し式のユニットブレーキ18が設けられている。このユニットブレーキ18は、横梁11aに固定されるシリンダ18aと、該シリンダ18aのロッド先端に設けられたブレーキシュー(制輪子)18bとを有するもので、ブレーキ作動時には、各ブレーキシュー18bが各車輪16bの踏面16cを押圧することによって制動力を得ている。このとき、片押し式のブレーキシュー18bによって車輪16bが側梁11bの端部方向に押圧されるため、輪軸16の全体が側梁端部方向に押圧され、これに伴って軸箱13も側梁端部方向に押圧される。このため、軸箱支持装置14における軸ゴム17に、側梁端部方向が圧縮され、側梁中央方向が伸長し、両側部分が前後方向にずれる方向の変形力が発生する。
【0018】
軸ゴム17への変形力は、通常の運転中は、ブレーキ中の押圧変形と走行中の弾性変形とが繰り返されるためにほとんど問題になることはないが、滞泊などによる長時間の駐車中にブレーキを作動させたままにしておくと、長時間にわたって変形力が作用した状態になるため、軸ゴム17に歪みが発生するおそれがある。
【0019】
軸ゴム17に作用する変形力に対処するため、本形態例では、レール方向に隣接する前後の軸箱13,13同士を接続する硬質棒状部材、例えば金属製ロッドからなる軸箱連結部材19を設けて軸箱13が側梁端部方向に移動することを抑制している。この軸箱連結部材19は、軸箱連結部材19の両端部にそれぞれ設けられたレール方向の長孔19aと、前記軸箱13にそれぞれ設けられて前記長孔19a内に移動可能に挿入される接続ピン19bとを備えている。この接続ピン19bは、ブレーキの非作動時には、前記長孔19aの先端部、すなわち、長孔19aの側梁端部方向先端部に位置している。これにより、軸箱連結部材19は、軸箱13,13同士の間隔が拡がる方向への移動のみを規制し、軸箱13,13同士の間隔が狭まる方向や、走行中における軸箱13の上下左右方向への移動は許容するようにしている。
【0020】
したがって、ブレーキを作動させてブレーキシュー18bが車輪16bの踏面16cを押圧したときに、軸箱13が側梁端部方向に移動することを抑制でき、軸箱13同士の間隔があらかじめ設定された最大間隔以上に拡がることがなくなり、軸ゴム17の変形を抑えることができるので、滞泊などによる長時間の駐車中にブレーキを作動させたままにしておいても、軸ゴム17に歪みが発生することがなくなり、軸ゴム17の性能を長期にわたって維持することができる。また、長時間の駐車中にブレーキを作動させたままにしておくことが可能となるので、鉄道車両の駐車状態を確実に保持することができる。
【0021】
前記軸箱連結部材19は、硬質の棒状部材に限るものではなく、軸箱13,13同士の間隔が拡がる方向への移動を抑制できれば、ワイヤなどの可撓性、柔軟性を有する材料で形成することができる。さらに、伸縮性を有する弾性材料を使用し、ブレーキの非作動時に軸箱13,13同士を近接する方向に付勢した状態にしておくこともできる。
【0022】
図3及び図4は、本発明の鉄道車両用台車の第2形態例を示している。なお、以下の説明において、各形態例に示す鉄道車両用台車における共通の構成要素には同一の符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0023】
本形態例に示す鉄道車両用の台車21では、レール方向に隣接する前後の軸箱13,13同士を接続する軸箱連結部材22を2分割し、分割部を連結ピン23により屈曲可能に連結している。2分割された軸箱連結部材22の先端は、軸箱13に設けられた接続ピン24にそれぞれ回動可能に接続されており、連結ピン23の位置は、レール方向に隣接する接続ピン24同士を繋ぐ直線に対して台車内側に変位した位置に設定され、軸箱連結部材22は台車内側に向かって屈曲した状態となっている。さらに、台車21の両側にそれぞれ配置された各軸箱連結部材22における連結ピン23,23同士は、台車21の下方を枕木方向に横切る中央連結部材25で連結している。
【0024】
本形態例に示す中央連結部材25は、中心ピンや牽引装置などの部品との干渉を避けるため、中央部に六角形状の干渉回避部25aを設けているが、この干渉回避部25aの形状は任意であり、干渉する部品がないときは干渉回避部25aを設ける必要はない。また、軸箱連結部材22の先端に、前記第1形態例と同様の長孔を設けておくこともできる。
【0025】
このように、軸箱連結部材22を2分割するとともに、直線に対して台車内側に屈曲させた状態で連結ピン23により屈曲可能に連結するとともに、台車21の両側に配置された連結ピン23,23同士を中央連結部材25で連結することにより、ブレーキを作動させて軸箱13に側梁端部方向に移動する力が加わった場合でも、連結ピン23が中央連結部材25で固定された状態になっているので、軸箱連結部材22は屈曲状態に保持され、軸箱13が側梁端部方向に移動することを抑制でき、軸ゴム17の変形を抑えることができる。
【0026】
一方、車両が曲線路を走行する際に、踏面16cの形状などによって曲線路外側の軸箱13同士には互いに離れる方向の力が作用して軸箱連結部材22には伸長方向の力が作用し、曲線路内側の軸箱13同士には互いに近付く方向の力が作用して軸箱連結部材22には屈曲方向の力が作用する。このとき、軸箱連結部材22の連結ピン23,23同士が中央連結部材25で連結されているので、曲線路外側の軸箱連結部材22の伸長方向の力と、曲線路内側の軸箱連結部材22の屈曲方向の力とを、中央連結部材25によってバランスさせることができるので、4箇所の軸箱13の動きを規制することができるとともに、伸長力と短縮力とで軸ゴム17をそれぞれ変形させることによって自己操舵機能を得ることができることから、曲線路走行時の安定性を向上させることができ、より円滑に車両を走行させることができる。
【0027】
図5及び図6は、本発明の鉄道車両用台車の第3形態例を示している。本形態例に示す鉄道車両用の台車31では、前記第2形態例と同様に、2分割して分割部を連結ピン23で屈曲可能に連結した軸箱連結部材22によってレール方向に隣接する前後の軸箱13,13同士を接続するとともに、台車31の回転中心からレール方向及び枕木方向の斜め方向に離れた位置の車体下部に突設した回動可能ピン32と前記連結ピン23とを、操舵用の第1連結部材33a、固定ピン32a及び第2連結部材33bとによって連結している。
【0028】
ブレーキを作動させた停車時には、車体に対して台車31の方向が固定されているので、操舵用連結部材33が移動することはなく、一定の屈曲状態を保った軸箱連結部材22によってレール方向に隣接する前後の軸箱13,13同士が連結された状態になっているので、前記各形態例と同様に、ブレーキの作動時における軸ゴム17の変形を抑えることができる。
【0029】
車両が曲線路を走行する際に、車体に対して台車31が左右に回動したときに、例えば、図6において図示上方の車輪16bが曲線路外側に位置している場合、車体に対して台車31は、図中の矢印Aの方向に回動するので、曲線路外側の連結ピン23には、回動可能ピン32から第1連結部材33a、固定ピン32a及び第2連結部材33bを介して矢印Bに示す方向の押動力が作用する。したがって、屈曲状態で連結された曲線路外側の軸箱連結部材22は伸長する状態になり、曲線路外側のレール方向に隣接する前後の軸箱13,13同士は、軸ゴム17を変形させて離れる方向に移動する。一方、曲線路内側では、逆方向の向きの力が作用するので、曲線路内側のレール方向に隣接する前後の軸箱13,13同士は、軸ゴム17を変形させて近付く方向に移動する。これにより、自己操舵機能が得られるので、曲線路走行時の安定性を向上させることができ、より円滑に車両を走行させることができる。固定ピン32aの位置は、曲線走行時の車体に対する台車31の回動量などに応じて適宜に設定することが可能である。また、走行時に車体と台車31との間に発生する±40mm以内の左右動は、第1連結部材33aと第2連結部材33bとを連結する固定ピン32aのピン部角折れによって吸収されるので、操舵に悪影響を与えることはない。
【0030】
図7及び図8は、本発明の鉄道車両用台車の第4形態例を示している。本形態例に示す鉄道車両用の台車41では、前記第2形態例、第3形態例と同様に、2分割して分割部を連結ピン23で屈曲可能に連結した軸箱連結部材22によってレール方向に隣接する前後の軸箱13,13同士を接続するとともに、横梁11aの下面に設けたシリンダ42のロッド先端を連結ピン23に連結している。また、2分割した軸箱連結部材22の連結ピン23側は、側梁11bの下面に設けた支持部材11cによって水平方向にのみ移動可能にそれぞれ支持されている。
【0031】
前記各形態例と同様に、ブレーキを作動させた停車時には、シリンダ42のピストン両側の圧力が均衡した状態になっているので、シリンダ42のロッドは伸縮せず、軸箱連結部材22は一定の屈曲状態に保たれているので、軸箱連結部材22によってレール方向に隣接する前後の軸箱13,13同士が連結された状態になり、前記各形態例と同様に、ブレーキの作動時における軸ゴム17の変形を抑えることができる。
【0032】
そして、車両が曲線路を走行する際には、曲線路外側に位置するシリンダ42のロッドを伸長させて軸箱連結部材22を直線状態に近付けることにより、曲線路外側のレール方向に隣接する前後の軸箱13,13同士は、軸ゴム17を変形させて離れる方向に移動する。一方、曲線路内側に位置するシリンダ42のロッドを短縮させて軸箱連結部材22を、より屈曲させた状態にすることにより、曲線路内側のレール方向に隣接する前後の軸箱13,13同士は、軸ゴム17を変形させて近付く方向に移動する。さらに、シリンダ42に供給する圧縮空気量を調節することにより、曲線半径に応じた強制操舵機能を得ることができるので、曲線路走行時の安定性を向上させることができ、より円滑に車両を走行させることができる。
【0033】
連結ピン23を移動させて軸箱連結部材22の屈曲状態を変化させる手段は、前記シリンダ42に限るものではなく、モータとラック&ピニオンとを利用することもでき、前記第2形態例における中央連結部材25をシリンダやモータで枕木方向に移動させることにより、本形態例と同様に、連結ピン23を内外方向に強制的に移動させて軸箱連結部材22の屈曲状態を変化させることができる。
【0034】
図9及び図10は、本発明の鉄道車両用台車の第5形態例を示している。本形態例に示す鉄道車両用の台車51では、前記第2形態例乃至第4形態例と同様に、2分割して分割部を連結ピン23で屈曲可能に連結して軸箱連結部材22を形成することによってレール方向に隣接する前後の軸箱13,13同士を接続している。本形態例における軸箱連結部材22は、前記各形態例とは逆に、分割部を台車外側に位置させており、外側に向かって屈曲した状態になっている。
【0035】
連結ピン23は、台車51のレール方向中央部で、連結ピン23の外側に枕木方向に移動可能に設けられた駆動軸52の内端に回動可能に連結され、駆動軸52の外端は、平面視がL字状のアングル部材53を介してレール方向に配置された固定軸54の先端54aに連結されている。アングル部材53は、回動中心(図10において黒丸で示す。)となる屈曲部が台車枠から突設した回動軸53aに回動可能に設けられており、駆動軸52の外端と固定軸54の先端54aとは、回動ピン53bによってそれぞれ回動可能に連結されている。
【0036】
前記固定軸54の基端54bは、台車51のヨーイングを抑制するために設けられているヨーダンパ55を装着するために車体から下方に突設させたヨーダンパ受け55aに上下方向に回動可能な状態で取り付けられている。ヨーダンパ受け55aは、台車51に対して車体端部側にそれぞれ設けられており、車両が曲線路を走行して台車51が車体に対して回動したときに、ヨーダンパ受け55aを介して車体に固定された状態の固定軸54が、台車51に回動可能に設けられているアングル部材53を回動させ、回動したアングル部材53が駆動軸52を介して連結ピン23を枕木方向に移動させる状態となっている。
【0037】
したがって、本形態例においても、ブレーキを作動させて軸箱13に側梁端部方向に移動する力が加わった場合でも、連結ピン23が、駆動軸52、アングル部材53、固定軸54及びヨーダンパ受け55aを介して固定された状態になっているので、軸箱連結部材22は屈曲状態に保持され、軸箱13が側梁端部方向に移動することを抑制でき、軸ゴム17の変形を抑えることができる。
【0038】
車両が曲線路を走行する際に、例えば、図10において、走行方向に対して車体前方にある台車51の図示上方の車輪16bが曲線路外側に位置している場合、車体に対して台車51は、図中の矢印Aの方向に回動するので、台車51に固定されている回動軸53aとヨーダンパ受け55aとが相対的に接近するので、固定軸54がアングル部材53を図中の矢印Bの方向に回動させる。さらに、アングル部材53の回動によって駆動軸52が図中の矢印Cの方向に移動し、軸箱連結部材22を直線状態に近付ける。これにより、曲線路外側のレール方向に隣接する前後の軸箱13,13同士は、軸ゴム17を変形させて離れる方向に移動する。
【0039】
一方、曲線路内側に位置する回動軸53aとヨーダンパ受け55aとが相対的に離間するので、固定軸54がアングル部材53を図中の矢印Dの方向に回動させることにより、駆動軸52が図中の矢印Eの方向に移動し、軸箱連結部材22をより屈曲した状態にする。これにより、曲線路内側のレール方向に隣接する前後の軸箱13,13同士は、軸ゴム17を変形させて近付く方向に移動する。
【0040】
したがって、車体に対する台車51の回動方向や回動量に応じて、曲線路外側では軸箱13同士を離間させ、曲線路内側では軸箱13同士を近接させることができることから、曲線半径に応じた強制操舵機能を得ることができ、曲線路走行時の安定性を向上させることができるとともに、より円滑に車両を走行させることができる。さらに、直線路走行中に台車51が左右に振れるヨーイングが発生した際も、台車51の振れ量に応じてレール方向に隣接する前後の軸箱13,13同士の距離を適宜調整することができるので、ヨーイングを抑制することができ、高速走行時における走行安定性も向上させることができ、ヨーダンパを省略することが可能となる。また、ヨーダンパ受けを利用せず、専用の固定軸受けを設けてもよい。さらに、軸箱連結部材22の屈曲方向、アングル部材53の形状や回動方向、ヨーダンパ受け55aの位置などは、車体や台車51の形状などの条件に応じて適宜設定することができる。
【0041】
図11及び図12は、本発明の鉄道車両用台車の第6形態例を示している。本形態例に示す鉄道車両用の台車61では、一方のユニットブレーキ62のシリンダ62aにおけるロッド側先端部と、他方のユニットブレーキ63のブレーキシュー63aが踏面を押圧する車輪64aの輪軸64bを保持する軸箱65とをシリンダ連結部材66で連結している。シリンダ連結部材66は、軸箱65に連結されるロッド66aとシリンダ62aに連結される二股状部材66bとで形成されており、二股状部材66bの二股部先端が、一方のシリンダ62aの先端両側部分に取り付けられている。
【0042】
このように、一方のユニットブレーキ62のシリンダ62aと他方のユニットブレーキ63が作用する軸箱65とをシリンダ連結部材66で連結することにより、ブレーキを作動させたときの軸箱65の移動を抑制できるとともに、シリンダ62aの所定の取付状態を保持することができるので、一方のユニットブレーキ62のブレーキシュー62bが車輪の踏面64cの傾斜によって車輪外側に移動する、いわゆる脱シューの発生を防止できる。
【0043】
図11及び図12では、2組のシリンダと軸箱とをシリンダ連結部材で連結しているが、4組全てに設けることが好ましい。また、二股状部材でシリンダの両側を保持するようにしているが、脱シューを抑制できる位置ならば、シリンダの適宜な位置と軸箱とをシリンダ連結部材で連結すればよく、二股でなくてもよい。
【0044】
なお、各形態例では、台車の軸箱支持装置として、タンデム式と呼ばれる形式を例示したが、本発明は、軸ゴムを使用する各種の軸箱支持装置に対応することができ、コイルスプリングの配置や軸ダンパーの有無も任意であり、電動台車ではなく付随台車であっても同様に適用可能である。さらに、アームなどを支持するゴムブッシュの変形も抑制することができる。
【符号の説明】
【0045】
11,21,31,41,51,61…台車、11a…横梁、11b…側梁、11c…支持部材、12…空気ばね、13…軸箱、14…軸箱支持装置、15…主電動機、15a…たわみ継手、15b…歯車装置、16…輪軸、16a…車軸、16b…車輪、16c…踏面、17…軸ゴム、18…ユニットブレーキ、18a…シリンダ、18b…ブレーキシュー、19…軸箱連結部材、19a…長孔、19b…接続ピン、22…軸箱連結部材、23…連結ピン、24…接続ピン、25…中央連結部材、25a…干渉回避部、32…回動可能ピン、32a…固定ピン、33a…第1連結部材、33b…第2連結部材、42…シリンダ、52…駆動軸、53…アングル部材、53a…回動軸、53b…回動ピン、54…固定軸、54a…先端、54b…基端、55…ヨーダンパ、55a…ヨーダンパ受け、62…一方のユニットブレーキ、62a…シリンダ、62b…ブレーキシュー、63…他方のユニットブレーキ、63a…ブレーキシュー、64a…車輪、64b…輪軸、64c…踏面、65…軸箱、66…シリンダ連結部材、66a…ロッド、66b…二股状部材
図1
図2
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図7
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図9
図10
図11
図12