【解決手段】ガラスの移動装置は、複数の吸盤40と、吸盤40が連結されたガラスGを移動させる移動機構80と、吸盤40を移動機構80に脱着自在に連結する連結機構60とを備える。連結機構60は、吸盤40の背面に固定してなる脱着ロッド41と、移動機構80に固定されて脱着ロッド41に脱着自在に連結するガイド筒51と、ガイド筒51に連結してなるストッパ筒55と、ガイド筒51に脱着ロッド41が連結される状態でストッパ筒55に挿入されるストッパーピン65とを備える。ガイド筒51は、グリップ部43を側面から脱着する脱着スリット52を軸方向に伸びる姿勢で開口している。脱着ロッド41のグリップ部43がガイド筒51に案内されて、ストッパーピン65がストッパ筒55に挿入される状態で吸盤40が移動機構80に連結状態に保持される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図5の移動装置は、移動機構180の先端に連結している吸盤140を設けているフレーム150を介して重い自動車のフロントガラスなどに連結するので、移動機構180をガラスGに連結するのに手間がかかる欠点があった。
【0006】
本発明は、さらに以上の欠点を解決することを目的に開発されたものである。本発明の重要な目的は、ガラスに吸着される吸盤を簡単かつ容易に、しかも確実に安定して移動機構に連結して、重いガラスをも安全に能率よく所定の位置に移動できるガラスの移動装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のガラスの移動装置は、ガラス表面に吸着される複数の吸盤40と、各々の吸盤40が連結されてガラスGを所定の位置に移動させる移動機構80と、各々の吸盤40を移動機構80に脱着自在に連結する連結機構60とを備えている。連結機構60は、吸盤40の背面に固定してなる脱着ロッド41と、移動機構80に固定されて脱着ロッド41に脱着自在に連結するガイド筒51と、ガイド筒51に連結してなるストッパ筒55と、ガイド筒51に脱着ロッド41が連結される状態で、脱着ロッド41側に設けてなる係止部45を通過し、かつストッパ筒55に挿入されるストッパーピン65とを備えている。脱着ロッド41は、両端部が一対の連結プレート42を介して吸盤40の背面に固定されて、一対の連結プレート42間をグリップ部43としている。ガイド筒51は、一対の連結プレート42間に配設されて、グリップ部43を側面から脱着する脱着スリット52を軸方向に伸びる姿勢で開口している。ガラスの移動装置は、脱着ロッド41のグリップ部43がガイド筒51に案内された状態で、ストッパーピン65が係止部45を通過し、かつストッパ筒55に挿入される状態で吸盤40が移動機構80に連結状態に保持され、ストッパーピン65がストッパ筒55から引き抜かれた状態で、吸盤40が移動機構80に脱着されるようにしている。
【0008】
以上のガラスの移動装置は、ガラスに吸着される吸盤を簡単かつ容易に、しかもガラスを移動しないように安定して移動機構に連結して、移動機構でもって重いガラスを安全に能率よく所定の位置に移動できる特徴がある。それは、吸盤を移動機構に連結する連結機構が、吸盤に設けた脱着ロッドと、移動機構に固定されて脱着ロッドを脱着自在に連結するガイド筒と、脱着ロッドをガイド筒に連結状態に保持するストッパーピン及びストッパ筒を備えると共に、脱着ロッドは、両端部を一対の連結プレートで吸盤に連結して連結プレート間をグリップ部とし、このグリップ部を、ガイド筒側面に設けている脱着スリットからガイド筒に案内し、この状態でストッパーピンをストッパ筒に挿入して、吸盤を外れないように移動機構に連結するからである。
【0009】
とくに、脱着ロッドは、両端部を連結プレートで吸盤に固定して吸盤の背面に強固に固定され、また、脱着ロッドは、連結プレートの間を吸盤を持ち運ぶためのグリップ部としながら、このグリップ部をガイド筒の側面に開口している脱着スリットから脱着自在にガイド筒に連結するので、脱着ロッドを介して吸盤を簡単に脱着できる。さらに、脱着ロッドのグリップ部をガイド筒に連結する状態で、ストッパーピンがストッパ筒に挿入されて、脱着ロッドは抜け出さない状態に保持される。
【0010】
脱着ロッドは、一端に固定する連結プレートを介して吸盤に連結することもできる。この脱着ロッドは、円筒状の筒に挿入して簡単に、しかも強固に連結できる。しかしながら、この構造の吸盤は、重いガラスを吸着する状態で、連結プレートに大きな曲げ応力が作用するので、連結プレートを厚い金属板とし、さらに脱着ロッドにも厚い金属筒を使用する必要があって相当に重くなる弊害がある。脱着ロッドの両端を連結プレートで吸盤に固定する構造は、連結プレートに薄い金属板やプラスチック板を使用して、脱着ロッドを強固に吸盤に連結できる。ただ、この脱着ロッドは、円筒状の筒に挿入して連結できない。
【0011】
本発明の移動装置は、脱着ロッドの両端を一対の連結プレートで吸盤に固定して、脱着ロッドを強固に吸盤に固定し、さらに連結プレートの間をグリップ部として、このグリップ部をガイド筒に簡単に脱着しながら、抜けないように強固な連結状態に保持する。ガイド筒は、グリップ部を脱着するための脱着スリットを側面に設けている。脱着スリットから脱着される脱着ロッドを抜けない状態に保持するために、ストッパーピンと、このストッパーピンを挿入するストッパ筒をガイド筒側に設けている。したがって、ストッパーピンを引き抜く状態で脱着ロッドは簡単に脱着でき、またストッパーピンをストッパ筒に挿入する状態で、脱着ロッドはガイド筒に連結される状態に保持される。さらに、本発明の移動装置は、複数の吸盤を連結アームに連結して各々の吸盤を移動機構に連結し、各々の吸盤をガラスに吸着する。複数の吸盤がガラス表面に吸着されると、各々の吸盤はガラスを介して一体構造に連結される。したがって、吸盤がガラス表面に吸着される状態で、各々の吸盤はガラス表面で回転することも傾動することもない。この状態で、ストッパーピンが脱着ロッドをガイド筒に連結状態に保持するので、吸盤が移動機構から外れることなくガラス表面に強固に固定される。したがって、ガラス表面に吸盤を吸着している移動機構は、極めて重いガラスであっても安全に必要な位置に移動できる。とくに、ガラスが吸盤を介して直接に移動機構に連結されるので、重いガラスを理想的な姿勢に保持しながら安定して安全に所定の位置に移動できる。このため、ガラスを移動するときに、他の物に衝突して傷を付け、あるいはガラスが損傷する弊害は確実に阻止できる。さらに、吸盤をガラスから外す状態では、ストッパーピンを抜いて移動機構から簡単に脱着できる。
【0012】
本発明のガラスの移動装置は、脱着スリットを、ガイド筒の軸方向に対して傾斜姿勢で開口することができる。
【0013】
また、本発明のガラスの移動装置は、脱着ロッドが円柱状で、ガイド筒が脱着ロッドを内側に案内できる円筒状とすることができる。
【0014】
さらに、本発明のガラスの移動装置は、脱着ロッド側に設けてなる係止部を、連結プレートに設けてなる貫通穴とし、ストッパーピンを貫通穴を介してストッパ筒に挿入することができる。
【0015】
さらに、本発明のガラスの移動装置は、移動機構80が、上下に移動する荷台2を有する貨物自動車1と、貨物自動車1の荷台2に前後に移動できるように連結している前後台3と、この前後台3に傾動できるように連結されて、先端には連結機構60を設けてなる連結アーム5とを備えて、連結アーム5を傾動し、さらに前後台3を前後に移動し、さらに、荷台2を上下に移動して、連結アーム5と連結機構60とを介して連結された吸盤40を吸着してなるガラスGを車両の取り付け位置に移動することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。ただし、以下に示す実施の形態は、本発明の技術思想を具体化するための構成を例示するものであって、本発明は以下のものに特定されない。また、特許請求の範囲に示される部材を、実施の形態の部材に特定するものでは決してない。特に実施の形態に記載されている構成部材の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、特に特定的な記載がない限りは、本発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。なお、各図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするため誇張していることがある。さらに以下の説明において、同一の名称、符号については同一もしくは同質の部材を示しており、詳細説明を適宜省略する。さらに、本発明を構成する各要素は、複数の要素を同一の部材で構成して一の部材で複数の要素を兼用する態様としてもよいし、逆に一の部材の機能を複数の部材で分担して実現することもできる。また、一部の実施例、実施形態において説明された内容は、他の実施例、実施形態等に利用可能なものもある。
【0018】
図1ないし
図4に示すガラスの移動装置は、ガラスGの表面に脱着できるように吸着される吸盤40と、ガラスに吸着している吸盤40を介してガラスを所定の位置に移動する移動機構80と、この移動機構80に吸盤40を脱着自在に連結する連結機構60とを備える。
【0019】
吸盤40は、ガラス表面に吸着される吸着面40Aを前面に有するゴム状弾性体からなり、背面には、連結機構60の脱着ロッド41を設けている。脱着ロッド41は、その両端に一対の連結プレート42を固定して、連結プレート42を介して吸盤40の背面に固定している。脱着ロッド41は連結プレート42の間をグリップ部43として、内部をエアーポンプ44としている。さらに、連結プレート42は、後述するストッパーピン65を挿入して、脱着ロッド41とガイド筒51とを連結状態に保持する係止部45の具体例として貫通穴45Aを設けている。
【0020】
脱着ロッド41は円柱状で、グリップ部43に併用するために、手で握ることができる太さの円筒状で、内部には吸盤40内の空気を排気して、ガラス表面に吸着されるエアーポンプ44を設けている。エアーポンプ44は、脱着ロッド41の一端に設けた往復運動できる押圧部44Aを有し、この押圧部44Aを往復運動させて内部の空気を排気する。エアーポンプ44は、押圧部44Aが往復運動して、吸盤40内の空気を排気できるように、脱着ロッド41をシリンダとして内部にはピストンを設けて、このピストンを押圧部44Aに連結している。押圧部44Aを押して往復運動できるように、押圧部44Aは、バネなどの弾性体(図示せず)で弾性的に押し出される構造としている。さらに、往復運動するピストンを内蔵するシリンダは、吸入側と排出側に逆止弁を連結して、ピストンが往復運動して、吸盤40内の空気を排気できる構造としている。ただ、本発明は、吸盤40が空気を排気する構造を特定するものでないので、エアーポンプ44の構造を特定するものではなく、既に使用され、あるいはこれから開発されるガラスに吸着される全ての吸盤40を使用できる。
【0021】
連結機構60は、吸盤40に連結される脱着ロッド41と、連結機構60に固定されて脱着ロッド41を脱着自在に連結するガイド筒51と、ガイド筒51に脱着ロッド41を連結する状態で、脱着ロッド41とガイド筒51を連結状態に保持するストッパーピン65及びストッパ筒55を備える。
【0022】
ガイド筒51は脱着ロッド41のグリップ部43を内側に嵌合状態に案内できる円筒状で、グリップ部43を横から脱着できるように、脱着スリット52を側面に開口している。脱着スリット52は、ガイド筒51の軸方向に伸びて開口される。ガイド筒51は連結機構60の連結アーム5の先端に固定される。ガイド筒51は、連結アーム5の先端に上下方向に伸びる姿勢で連結される。連結アーム5は垂直面内で傾動してガイド筒51を、垂直姿勢から所定の角度に傾動して、ここに連結された吸盤40を介してガラスGを最適な傾斜角度に調整して移動させる。
【0023】
図4のガイド筒51は、脱着スリット52を軸方向に対して傾斜する姿勢で開口している。このガイド筒51は、脱着ロッド41を傾斜姿勢で脱着スリット52に通過させて脱着する。脱着スリット52は、吸盤40に吸着されるガラス表面に対して傾斜するように、ガイド筒51に設けられる。このガイド筒51は、脱着スリット52を通過する脱着ロッド41を傾斜姿勢とする。言い換えると、脱着ロッド41は、ガラス表面に対して傾斜する姿勢で脱着スリット52を通過するので、ガラス表面に対して傾動できない脱着ロッド41は、脱着スリット52を通過できない。ガラス表面に吸着される吸盤40は、ガラス表面に対して傾斜できないので、吸盤40に固定している脱着ロッド41がガラス表面に対して傾斜できないと、脱着ロッド41は脱着スリット52を通過できない。したがって、このガイド筒51は、吸盤40がガラス表面に吸着される状態で、脱着ロッド41が脱着スリット52を通過できず、ガイド筒51から外れない。このため、脱着スリット52がガラス表面に対して傾斜するガイド筒51は、吸盤40がガラスGに吸着される状態で、脱着ロッド41がガイド筒51から外れず、吸盤40を確実にガイド筒51に連結状態に固定できる。
【0024】
さらに、ストッパーピン65とストッパ筒55を介して、脱着ロッド41はガイド筒51に連結状態に保持される。ストッパーピン65は、ガイド筒51に脱着ロッド41を連結する状態で、脱着ロッド41側に設けている係止部45を通過すると共に、ストッパ筒55に挿入されて、脱着ロッド41をガイド筒51の連結位置に保持する。
図3の連結機構60は、脱着ロッド41側に設けている係止部45を連結プレート42に設けている貫通穴45Aとして、ストッパ筒55をガイド筒51の側面に固定している。貫通穴45Aは、脱着ロッド41をガイド筒51に連結する状態で、ストッパ筒55に挿入されるストッパーピン65を挿通できるように、ストッパ筒55の開口端との対向面に設けられる。
【0025】
以上の連結機構60は、ストッパーピン65を貫通穴45Aに挿通し、ストッパ筒55に挿入して、脱着ロッド41をガイド筒51に連結する状態に保持する。ガイド筒51は、側面に脱着スリット52を設けて、吸盤40との対向面、すなわち前面にストッパ筒55を固定している。ガイド筒51は、中心軸をストッパ筒55と平行姿勢として、ガイド筒51に固定される。ただし、図示しないが、ストッパ筒は、ガイド筒の他の部分に中心軸を平行姿勢として固定することもできる。連結プレート42の貫通穴45Aを脱着ロッド41側の係止部45とする連結機構60は、貫通穴45Aにストッパーピン65を挿通して、脱着ロッド41を確実に安定してガイド筒51に連結状態に保持できる。ただ、脱着ロッド41側の係止部45は、必ずしも連結プレート42に設ける必要はなく、たとえば、図示しないが、ストッパーピン65を位置ずれしないように挿入できるリングやフックを脱着ロッド41や連結プレート42に連結して、係止部45にストッパーピン65を係止して、脱着ロッド41をガイド筒51に連結状態に保持することもできる。
【0026】
ガイド筒51は、移動機構80の連結アーム5の先端に溶接等の方法で固定される。
図1と
図2の移動機構80は、互いに平行に配置している2本の連結アーム5を備え、2本の連結アーム5の先端に連結機構60を介して2組の吸盤40を連結している。この移動装置は、2組の吸盤40をガラスGに吸着し、各々の吸盤40を連結アーム5に連結して重いガラスGを確実に外れないように安定して最適姿勢に保持して移動できる。ただ、本発明は、必ずしも2組の吸盤40をガラスGに吸着して移動するものには特定せず、たとえば、3組以上の吸盤40をガラスGに吸着して、各々の吸盤40を移動機構80に連結して移動することもできる。吸盤40は、連結アーム5の先端に連結されるので、3組の吸盤40を連結する移動機構80は、互いに平行姿勢に配置している3組の連結アーム5を備え、各々の連結アーム5の先端に吸盤40が連結される。吸盤40は、各々の連結アーム5の先端に連結されてガラス表面に吸着される。
【0027】
図1と
図2の移動機構80は、移動台車1と、この移動台車1に装着している前後台3と、この前後台3に傾動できるように連結されて、連結機構60を介して吸盤40を連結する連結アーム5と、この連結アーム5を傾動させる傾動機構6と、連結アーム5を荷台2の横方向に移動させる横駆動機構7とを備える。
【0028】
以上の移動装置は、以下のようにしてガラスGを所定の位置に移動する。
1.ストッパーピン65を引き抜いた状態で、ガイド筒51に脱着ロッド41のグリップ部43を案内する。
脱着ロッド41のグリップ部43は、脱着スリット52を通過してガイド筒51の内側に嵌合状態で案内される。
2.脱着ロッド41のグリップ部43をガイド筒51の内側に嵌合する状態で、ストッパーピン65を貫通穴45Aからストッパ筒55に挿入する。
ストッパーピン65は、グリップ部43がガイド筒51から抜け出すのを阻止して、連結状態に保持して、吸盤40を連結アーム5に連結する。
3.移動機構80は2組の連結アーム5を備えるので、各々の連結アーム5の先端に吸盤40を連結する。
4.吸盤40の表面にガラスGを移動して、各々の吸盤40をガラス表面に吸着する。
吸盤40は、ガラス表面に密着される状態でグリップ部43のエアーポンプ44を操作して、ガラス表面に吸着される。
5.吸盤40がガラス表面に吸着される状態で、移動機構80を操作してガラスGを所定の位置に、たとえば、新しいフロントガラスを自動車の窓に移動して車両に取り付ける。
【0029】
本発明の移動装置は、破損したフロントガラスを自動車から取り外して、新しいガラスに交換するのに特に便利に使用できる。破損したフロントガラスを車両から取り外すには、連結アーム5の先端に吸盤40を連結する状態で、移動機構80を操作して吸盤40を破損したガラス表面に密着し、エアーポンプ44を操作して吸盤40をガラスに吸着した後、移動機構80を操作して、フロントガラスを車両から取り外す。破損したフロントガラスは、接着剤やパッキンで車両に固定しているので、車両から取り外す時は、吸盤40をフロントガラスに吸着する状態で、あるいは吸盤40をフロントガラスに吸着する前工程で、接着剤やパッキンを切除して、フロントガラスを車両から取り外しできる状態とする。
【0030】
近年の自動車は、フロントガラスに合わせガラスを使用しているので、一部から破損しても全体が分散することがない。このため、一部が破損したほとんどのガラスは、表面に吸盤40を吸着できる移動装置で取り外しできる。破損して分散したフロントガラスは、吸盤40を吸着することなく、小さく破砕して車両から取り外しできる。
【0031】
移動装置は、破損したフロントガラスを取り外した後、新しいフロントガラスを吸盤40を吸着して、車両の窓に移動して取り付けできる。
【0032】
移動装置は、ガラスGを所定の位置に移動した後、ストッパーピン65を引き抜き、脱着ロッド41のグリップ部43をガイド筒51から外して、吸盤40を移動機構80から分離できる。
【0033】
本発明の移動装置は、連結アーム5に吸盤40を連結し、移動機構80で吸盤40を所定の位置に移動するが、移動機構80には吸盤40を所定の位置に移動できる全ての機構を使用できる。以下、移動機構80の具体例を
図1及び
図2に基づいて詳述するが、本発明は移動機構80を以下の機構に特定するものではない。
【0034】
移動台車1は、上下駆動機構8で上下に移動される荷台2を有する。上下駆動機構8は、荷台2を水平の姿勢に保持して上下に移動させる。また、荷台2を所定の高さに停止させる。図の上下駆動機構8は、移動台車1のシャーシ9と荷台2との間に連結している一対のXフレーム10と、上下シリンダー11とを備える。Xフレーム10は、図において右端を垂直面内で回転できるようにシャーシ9と荷台2に連結して、左端にはローラー12を設けている。ローラー12は、シャーシ9と荷台2に設けたレール13に沿って水平方向に移動する。上下シリンダー11は、下端をシャーシ9に連結して、ロッド11Aの上端を荷台2の下面に垂直面内で回転できるように連結している。この上下駆動機構8は、上下シリンダー11のロッド11Aを伸長して荷台2を持ち上げ、ロッド11Aを収縮して荷台2を降下させる。上下シリンダー11のロッド11Aを伸縮させる位置を制御して、荷台2の高さを調整する。上下シリンダー11は、油圧シリンダーまたは電動シリンダーである。油圧シリンダーは、制御弁を介して油圧ポンプに連結され、制御弁を開いて油圧ポンプでロッド11Aを伸長させて荷台2を上昇させる。また、油圧シリンダーは、制御弁を介してリターン回路に連結され、この制御弁を開いてロッド11Aを収縮させて荷台2を降下させる。電動シリンダーは、サーボモーターでロッドを伸縮させる。
【0035】
前後台3は、移動台車1の上下する荷台2に、前後に移動できるように搭載される。前後台3は、荷台2に脱着できるように装着され、あるいは脱着できないように連結される。図の前後台3は、本体フレーム3Aと、この本体フレーム3Aの後端から突出している突出アーム3Bとを備える。本体フレーム3Aは、荷台2に連結して設けているレール15に沿って走行する車輪14を両側に有する。この車輪14がレール15を走行して、本体フレーム3Aは荷台2の前後に移動される。レール15は、荷台2に連結される方形状の回動フレーム16の内側に設けている。すなわち、前後台3は、内側にレール15を備える回動フレーム16を介して荷台2に連結している。
【0036】
回動フレーム16は、内側にレール15を有する一対の縦フレーム16Aを複数の横フレーム16Bで連結した構造としている。回動フレーム16は、水平面内で回動できるように、水平回動機構33を介して荷台2に連結している。
図2に示す回動フレーム16は、一対の縦フレーム16Aの前端を連結する横フレーム16Bの中央を回動軸34を介して荷台2に連結すると共に、各々の縦フレーム16Aの後端部を移動台車35と走行レール36を介して荷台2に連結している。移動台車35は、ベアリングを介して走行レール35に連結されており、回動フレーム16を走行レール35に沿ってスムーズに移動できるようにしている。移動台車35は、回動フレーム16を無理なく回動できるように、縦フレーム16Aの下面に、回転できるように連結している。さらに、移動台35車は、多少遊びのある状態で縦フレーム16Aに連結して、回動フレーム16をよりスムーズに回動できる。走行レール36は、移動台車35を走行させるレールで、ボルト止して、あるいは溶接して荷台2に固定している。この水平回動機構33は、回動軸34を中心として、回動フレーム16を
図2の矢印Aで示す方向に回動させる。
【0037】
回動フレーム16は、たとえば、手で回動させることができる。手で移動される回動フレーム16は、図示しないが、位置決機構で所定の位置に停止させることができる。位置決機構は、回動フレーム16を特定の位置で停止させる機構で、回動した回動フレーム16を最適な位置で停止させて、動かないように一時的に固定する。ただ、回動フレームは、電動で回動させることもできる。以上のように、水平面内で回動する回動フレーム16は、前後台3の向きを微調整でき、より正確な位置に前後台3を移動できる特長がある。さらに、回動軸34と移動台車35と走行レール36とからなる水平回動機構33は、最も簡単な機構で回動フレーム16を回動できる。ただ、水平回動機構は、回動フレームを荷台に対して回動できる他の全ての機構とすることができる。
【0038】
さらに、図の移動機構80は、本体フレーム3Aを前後に移動させるために、回動フレーム16と本体フレーム3Aとの間に前後シリンダー17を連結している。この前後シリンダー17は、ロッド17Aの先端を本体フレーム3Aに連結して、後端を回動フレーム16に連結している。前後シリンダー17は、油圧シリンダーや電動シリンダーで、制御回路で伸縮位置を制御する。この移動装置は、前後シリンダー17を伸縮させて本体フレーム3Aを前後に移動できるので便利に使用できる。ただ、移動装置は、本体フレームを手動で前後に移動させることもできる。
【0039】
図の前後台3は、荷台2の前後方向に配設された一対の縦筒18を横フレーム19で連結して本体フレーム3Aとしている。縦筒18は、荷台2の前後方向に延びる金属製の角パイプで、後端と先端と中央部に横フレーム19を溶接して固定している。本体フレーム3Aは、縦筒18の両側に車輪14を固定している。
【0040】
突出アーム3Bは、本体フレーム3Aから後方に突出するように、本体フレーム3Aの後端に溶接して固定される。突出アーム3Bは、後方に向かって上り勾配に傾斜する姿勢で、本体フレーム3Aに固定される。突出アーム3Bは、連結アーム5を短くするために、前後台3に設けている。したがって、突出アーム3Bのある前後台3は、連結アーム5を短くして強靭な構造にできる。ただ、移動装置は、前後台に突出アームを設けることなく、本体フレームに直接に連結アームを連結することもできる。
【0041】
連結アーム5は、前後台3である突出アーム3Bの後端部に、傾動できると共に横方向に移動できるように装着される。図の移動機構80は、2本の連結アーム5を突出アーム3Bに連結している。連結アーム5は、回転軸21を介して突出アーム3Bに連結される。回転軸21の両端に、回転軸21に直交して連結アーム5を連結している。回転軸21は、前後台3である突出アーム3Bの後端部に設けている貫通孔に、回転できると共に軸方向に移動できるように挿入している。回転軸21が回転されると、これに固定している連結アーム5が傾動される。また、回転軸21が軸方向に移動されると、連結アーム5は横方向に移動される。
【0042】
傾動機構6は、連結アーム5を傾動させて、連結アーム5の先端に連結している吸盤40の水平面に対する角度、すなわち傾斜角を調整する。自動車のフロントガラスは、ほとんど例外なく傾斜して固定される。このため、移動機構80は、吸着するガラスGを自動車の窓枠に合わせて傾斜させる必要がある。図の傾動機構6は、回転軸21に回転しないように固定している駆動アーム28と、この駆動アーム28に連結している傾動シリンダー29とを備える。傾動シリンダー29は、ロッド29Aの先端を駆動アーム28に連結して、後端を前後台3の本体フレーム3Aに垂直面内で回動できるように連結している。傾動シリンダー29は、油圧シリンダーや電動シリンダーである。これ等のシリンダーは、前述した前後シリンダー17と同じように、制御回路で伸縮する長さが制御されて、回転軸21の回転角を制御する。すなわち、傾動シリンダー29は、駆動アーム28を駆動して、回転軸21を回動し、回動する回転軸21が連結アーム5を所定の角度に傾動させる。
【0043】
傾動機構6は、連結アーム5を傾動させて、吸盤40の傾斜角を調整する。連結アーム5が、
図1の矢印Aで示す方向に傾動されると、ガラスGは、図の矢印Bで示す方向に傾動されて、ガラスGが傾斜した姿勢になる。逆に、連結アーム5が、
図1の矢印Aと反対の方向に傾動されると、ガラスGは、図の矢印Bと反対の方向に傾動されて、ガラスが垂直の姿勢に近づく。
【0044】
さらに、図に示す連結アーム5は、先端にガイド筒51を連結している。この連結アーム5は、
図3に示すように、このガイド筒51に吸盤40を連結して、この吸盤40でガラスGを吸着して脱着する。このように、先端に吸盤40を連結する連結アーム5は、弾性的に伸縮できるように回転軸21の両端に連結される。図に示す連結アーム5は、軸方向に移動できる直動ベアリング22と弾性体23を介して回転軸21に連結される。直動ベアリング22は、回転軸21の両端に固定されて、連結アーム5を軸方向に移動させる。弾性体23は、コイルスプリングで、連結アーム5をコイルスプリングに挿入している。コイルスプリングである弾性体23は、連結アーム5を弾性的に伸縮させる。
【0045】
横駆動機構7は、回転軸21を軸方向に移動させる。横方向に移動する連結アーム5は、吸盤40を横方向に移動させる。回転軸21の軸方向は、水平で横方向となるので、この横駆動機構7は、吸盤40を荷台2に対して横方向に移動させる。吸盤40に連結しているガラスGを、装着しようとする自動車の窓枠にピッタリと一致させるためである。移動台車1の停止位置を調整して、ガラスGとこれを装着する自動車との横方向の位置調整はできる。しかしながら、現実に移動台車1の位置を正確にピッタリと一致させるのは極めて難しい。吸盤40に連結されたガラスGを自動車の窓枠に接近させて、横駆動機構7で吸盤40を横方向に移動してガラスGを正確に装着位置に一致させる。
【0046】
図の横駆動機構7は、回転軸21と平行に配設しているネジ棒30と、このネジ棒30にねじこまれて回転軸21に連結しているナット材31と、ネジ棒30を回転するモーター32とを備える。ナット材31は、回転軸21に移動しないように連結している。モーター32はサーボモーターで、ネジ棒30を回転させてナット材31をネジ棒30に沿って軸方向に移動させる。ナット材31は、回転軸21に連結しているので、回転軸21はナット材31と一緒に軸方向、すなわち横方向に移動する。モーター32は、制御回路(図示せず)で制御されて、正逆に回転される。モーター32の回転位置を制御して、ナット材31の位置を制御できる。
【0047】
以上の移動装置は、ボンネットタイプのガラスG、いいかえると3ボックスカーや2ボックスカー等の乗用車タイプのフロントガラスの脱着に便利に使用できる。とくに、ボンネットタイプの自動車は、フロントガラスがボンネットから後退する位置にあるので、このタイプの自動車にガラスGを脱着するときは、前後台3を後方に移動させてガラスGを脱着する。