【実施例】
【0040】
<マスターバッチ>
図1の配合で実施例のマスターバッチ(a)〜(h)と、比較例(i)〜(l)を作製した。マスターバッチの作製は、母材と発泡剤をニーダーにより100℃、25分間混練することにより行った。混練後、5分間養生したものを100g採取し、70℃で熱プレスし、50×50mm×5mmの平板を作製し、次の式で密度を測定して発泡剤が熱分解しているか否かを判断した。
密度=平板の重量/(平板の縦×横×厚み)
密度の値が1000kg/m
3未満の場合は発泡しているために発泡剤が分解していると判断し、密度の値が1000kg/m
3以上の場合は未発泡であるため、発泡剤が分解していないと判断した。
図1における熱分解の評価欄の「〇」は、発泡剤が分解していない場合を示し、一方、「×」は、発泡剤が分解している場合を示す。
【0041】
実施例(a)は、母材としてEVA(エチレン酢酸ビニル共重合体):VA値(酢酸ビニル含有量)20重量%、東ソー株式会社製ウルトラセン638を100重量部、発泡剤としてOBSH(p,p’−オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジド):永和化成工業社製ネオセルボンN#5000、平均粒径15μmの60重量部と、重曹:三協化成株式会社製セルマイク266、平均粒径12μmの40重量を用いた例である。実施例(a)は、OBSH/重曹の値が6/4であり、発泡剤の熱分解が無く、評価は「〇」である。
【0042】
実施例(b)は、実施例(a)におけるOBSHの量を75重量部、重曹の量を25重量部とし、他は実施例(a)と同様の例である。実施例(b)は、OBSH/重曹の値が75/25であり、発泡剤の熱分解が無く、評価は「〇」である。
【0043】
実施例(c)は、実施例(a)における母材としてのEVAに代えてEPDM(エチレン−プロピレン−ジエン三元共重合体):ムーニー粘度(ML1+4、100℃)が30、三井化学株式会社製1035を使用し、他は実施例(a)と同様の例である。実施例(c)は、OBSH/重曹の値が6/4であり、発泡剤の熱分解が無く、評価は「〇」である。
【0044】
実施例(d)は、実施例(c)におけるOBSHの量を75重量部、重曹の量を25重量部とし、他は実施例(c)と同様の例である。実施例(d)は、OBSH/重曹の値が75/25であり、発泡剤の熱分解が無く、評価は「〇」である。
【0045】
実施例(e)は、実施例(a)の母材を、EVA(エチレン酢酸ビニル共重合体):VA値(酢酸ビニル含有量)20重量%、東ソー株式会社製ウルトラセン638を50重量部と、EPDM(エチレン−プロピレン−ジエン三元共重合体):ムーニー粘度(ML1+4、100℃)が30、三井化学株式会社製1035の50重量部を使用し、他は実施例(a)と同様の例である。実施例(e)は、OBSH/重曹の値が6/4であり、発泡剤の熱分解が無く、評価は「〇」である。
【0046】
実施例(f)は、実施例(a)のOBSHとして三協化成株式会社製セルマイクS、平均粒径50μmを使用し、他は実施例(a)と同様の例である。実施例(f)は、OBSH/重曹の値が6/4であり、発泡剤の熱分解が無く、評価は「〇」である。
【0047】
実施例(g)は、実施例(a)のOBSHとして永和化成工業製N#1000M、平均粒径4μmを使用し、他は実施例(a)と同様の例である。実施例(g)は、OBSH/重曹の値が6/4であり、発泡剤の熱分解が無く、評価は「〇」である。
【0048】
実施例(h)は、実施例(g)における母材としてのEVAに代えてEPDM(エチレン−プロピレン−ジエン三元共重合体):ムーニー粘度(ML1+4、100℃)が30、三井化学株式会社製1035を使用し、他は実施例(g)と同様の例である。実施例(h)は、OBSH/重曹の値が6/4であり、発泡剤の熱分解が無く、評価は「〇」である。
【0049】
比較例(i)は、実施例(a)における発泡剤としてADCA(アゾジカルボンアミド):永和化成工業社製パンスレンH7310、平均粒径15μmを100重量部使用し、OBSH及び重曹の何れも含まない例である。比較例(i)は発泡剤の熱分解が無く、評価は「〇」である。
【0050】
比較例(j)は、実施例(c)における発泡剤として重曹を単独で100重量部使用した例である。比較例(j)は発泡剤の熱分解が有り、評価は「×」である。
【0051】
比較例(k)は、実施例(c)における母材としてEPDM(エチレン−プロピレン−ジエン三元共重合体):ムーニー粘度(ML1+4、100℃)が10、JSR株式会社製JSR EP912Pを使用し、他は実施例(c)と同様の例である。比較例(k)は、発泡剤の熱分解が有り、評価は「×」である。
【0052】
比較例(l)は、実施例(a)における母材としてEVA(エチレン酢酸ビニル共重合体):VA値(酢酸ビニル含有量)15重量%、東ソー株式会社製ウルトラセン630を使用し、他は実施例(a)と同様の例である。比較例(l)は、発泡剤の熱分解が有り、評価は「×」である。
【0053】
<ポリオレフィン系架橋発泡体>
ポリオレフィン系樹脂として低密度ポリエチレン(LDPE):MFR2、密度0.924kg/m
3、品番UBEポリエチレンF224C、宇部丸善ポリエチレン株式会社製を用い、マスターバッチ(a)〜(i)を
図2の配合とした。さらに架橋剤(
図2に示さず)として化薬アクゾ株式会社製カヤクミルD−40CをLDPE100重量部に対して2.7重量部配合した混合物をニーダーにて混練し、その後ロールにて混練し、実施例1〜9及び比較例1〜5の発泡性樹脂組成物を得た。混練は、1Lニーダーを用いて90℃の温度で20分間行った。
【0054】
前記発泡性樹脂組成物を用い、実施例1、2、4、5、8、9及び比較例1〜5については一段発泡によりポリオレフィン架橋発泡体を製造し、実施例3、6、7については二段発泡よりポリオレフィン系架橋発泡体を製造した。
一段発泡では、混練後の発泡性樹脂組成物を、発泡型に充填して加圧下加熱し、除圧して発泡させ、発泡型からポリオレフィン系架橋発泡体を取り出した。発泡型の成形空間は、縦160mm、横160mm、深さ33mm、容積0.85Lである。発泡性樹脂組成物の充填量は、何れも900g、加圧は7Pa、加熱は135℃で50分間である。
【0055】
二段発泡では、混練後の発泡性樹脂組成物を一次発泡型に充填して加圧下加熱し、除圧して発泡させ、その後に一次発泡型から一次発泡体を取り出す一次発泡工程を行い、得られた一次発泡体を二次発泡型に収容し、常圧下二次加熱による二次発泡を行って、二次発泡型からポリオレフィン系架橋発泡体を取り出した。
【0056】
一次発泡型の成形空間は、縦160mm、横160mm、深さ33mm、容積0.85Lである。発泡性樹脂組成物の充填量は、何れも900g、加圧は7Pa、加熱は130℃で50分間である。
二次発泡型の成形空間は、縦300mm、横300mm、深さ55mm、容積1.5Lである。加熱は150℃で50分間である。
【0057】
各実施例及び各比較例における密度(JIS K 6767準拠)、発泡倍率、アンモニア濃度、ガラス霞度(ISO6452準拠)を測定した。測定結果は
図2に示す。
【0058】
発泡倍率は、上記式1により算出した。
アンモニア濃度は、丸底フラスコに0.1gのサンプルを投入し、80℃のオーブンで2時間加熱し、その後冷えないうちに10〜1000ppmを測定できるガステック製検知管(品番:3M)で粗々の値を測定した後、100ppm未満を測定できる、精度の良いガステック検知管(品番:3L)にてアンモニア濃度を測定した。
ガラス霞度(フォギング)は、サンプルをガラス板で遮蔽した状態で80℃×20時間加熱し、ガラス板に付着した曇り度を日本電色工業株式会社製(品番:NDH−20H)により測定した。
総合評価は、密度が20〜160kg/m
3、アンモニア濃度が0ppm〜100ppm、ガラス霞度が5%以下の条件全てを満たす場合に「〇」とし、一つでも外れる場合、あるいは発泡せず又は発泡不良の場合に「×」とした。
【0059】
実施例1は、LDPE100重量部に対してマスターバッチ(a)が10重量部の例である。実施例1は、密度93kg/m
3、発泡倍率10.8倍、アンモニア濃度10ppm、ガラス霞度0.4%、総合評価「〇」である。
【0060】
実施例2は、LDPE100重量部に対してマスターバッチ(a)が30重量部の例である。実施例2は、密度68kg/m
3、発泡倍率14.7倍、アンモニア濃度15ppm、ガラス霞度0.4%、総合評価「〇」である。
【0061】
実施例3は、LDPE100重量部に対してマスターバッチ(a)が70重量部の例である。実施例3は、密度24kg/m
3、発泡倍率41.7倍、アンモニア濃度15ppm、ガラス霞度0.6%、総合評価「〇」である。
【0062】
実施例4は、LDPE100重量部に対してマスターバッチ(b)が10重量部の例である。実施例4は、密度98kg/m
3、発泡倍率10.2倍、アンモニア濃度40ppm、ガラス霞度2.2%、総合評価「〇」である。
【0063】
実施例5は、LDPE100重量部に対してマスターバッチ(c)が10重量部の例である。実施例5は、密度100kg/m
3、発泡倍率10倍、アンモニア濃度15ppm、ガラス霞度0.2%、総合評価「〇」である。
【0064】
実施例6は、LDPE100重量部に対してマスターバッチ(c)が30重量部の例である。実施例6は、密度62kg/m
3、発泡倍率16.1倍、アンモニア濃度15ppm、ガラス霞度0.3%、総合評価「〇」である。
【0065】
実施例7は、LDPE100重量部に対してマスターバッチ(c)が70重量部の例である。実施例7は、密度29kg/m
3、発泡倍率34.5倍、アンモニア濃度20ppm、ガラス霞度0.7%、総合評価「〇」である。
【0066】
実施例8は、LDPE100重量部に対してマスターバッチ(d)が10重量部の例である。実施例8は、密度107kg/m
3、発泡倍率9.3倍、アンモニア濃度45ppm、ガラス霞度2.9%、総合評価「〇」である。
【0067】
実施例9は、LDPE100重量部に対してマスターバッチ(g)が10重量部の例である。実施例9は、密度95kg/m
3、発泡倍率10.5倍、アンモニア濃度10ppm、ガラス霞度0.3%、総合評価「〇」である。
【0068】
比較例1は、LDPE100重量部に対してマスターバッチ(a)が4重量部の例である。比較例1は、発泡せず、密度が900kg/m
3、発泡倍率1.1倍、総合評価「×」である。発泡しなかったため、アンモニア濃度及びガラス霞度は測定しなかった。なお、マスターバッチ(a)は、実施例のマスターバッチの一つであるが、配合量が少ないため、密度が高くなった。
【0069】
比較例2は、LDPE100重量部に対してマスターバッチ(f)が10重量部の例である。比較例2は、発泡不良であり、密度が230kg/m
3、発泡倍率4.3倍、総合評価「×」である。発泡不良のため、アンモニア濃度及びガラス霞度は測定しなかった。なお、マスターバッチ(f)は、実施例のマスターバッチの一つであるが、OBSHの平均粒径が50μmと大きいために発泡不良を生じた。
【0070】
比較例3は、LDPE100重量部に対してマスターバッチ(h)が10重量部の例である。比較例3は、発泡不良であり、密度が200kg/m
3、発泡倍率5.0倍、総合評価「×」である。発泡不良のため、アンモニア濃度及びガラス霞度は測定しなかった。なお、マスターバッチ(h)は、実施例のマスターバッチの一つであるが、OBSHの平均粒径が4μmと小さいために発泡不良を生じた。
【0071】
比較例4は、LDPE100重量部に対してマスターバッチ(g)が10重量部の例である。比較例4は、発泡不良であり、密度が210kg/m
3、発泡倍率4.8倍、総合評価「×」である。発泡不良のため、アンモニア濃度及びガラス霞度は測定しなかった。なお、マスターバッチ(g)は、実施例のマスターバッチの一つであるが、OBSHの平均粒径が4μmと小さいために発泡不良を生じた。
【0072】
比較例5は、LDPE100重量部に対してマスターバッチ(i)が10重量部の例である。比較例5は、発泡剤がADCAであるマスターバッチ(i)を使用したため、アンモニア濃度900ppm、ガラス霞度22%、総合評価「×」である。
【0073】
このように、本発明では、残留するアンモニア濃度が低く、アンモニアによる汚染、腐食を防ぐことができるポリオレフィン系架橋発泡体が得られる。