(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2019-131947(P2019-131947A)
(43)【公開日】2019年8月8日
(54)【発明の名称】ドラフト装置を備えた複列形のリング精紡機
(51)【国際特許分類】
D01H 5/70 20060101AFI20190712BHJP
D01H 5/22 20060101ALI20190712BHJP
D01H 5/32 20060101ALI20190712BHJP
【FI】
D01H5/70
D01H5/22
D01H5/32
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【外国語出願】
【全頁数】27
(21)【出願番号】特願2019-15171(P2019-15171)
(22)【出願日】2019年1月31日
(31)【優先権主張番号】10 2018 102 232.8
(32)【優先日】2018年2月1日
(33)【優先権主張国】DE
(71)【出願人】
【識別番号】518264859
【氏名又は名称】ザウラー スピニング ソリューションズ ゲー・エム・ベー・ハー ウント コー. カー・ゲー
【氏名又は名称原語表記】Saurer Spinning Solutions GmbH & Co. KG
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ヘアベアト グレースレ
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンダー ハーニッシュ
(72)【発明者】
【氏名】シュテファン クラヴィーツ
【テーマコード(参考)】
4L056
【Fターム(参考)】
4L056AA02
4L056BA03
4L056BC01
4L056BC24
4L056BC42
4L056DA02
4L056DA14
4L056DA15
4L056DA24
4L056DA28
4L056DA54
4L056DA62
4L056DA73
4L056EA10
4L056EC38
4L056ED01
4L056FC06
(57)【要約】 (修正有)
【課題】ねじれが十分に回避されるように駆動されるドラフト装置ボトムローラを有する長いドラフト装置を備えたリング精紡機を提供すること。
【解決手段】複列形のリング精紡機であって、ドラフト装置を備えており、ボトムローラが、機械端側に配置された駆動装置と、少なくとも1つの付加的な補助駆動装置28とによって駆動可能であり、補助駆動装置が、1つの電動モータ式の駆動装置29と、1つの主伝動装置30と、2つの分配伝動装置31とを有し、分配伝動装置はボトムローラに割り当てられ、それぞれ固定装置33を備え、この固定装置は、分配伝動装置の支持のために、2つの作業ユニットの間の第1の中間スペースにおける支持箇所38においてボトムローラに接続され、分配伝動装置は、トルクの伝達のために、それぞれ2つの作業ユニットの間の第2の中間スペースにおける駆動箇所18においてボトムローラに接続されている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複列形のリング精紡機(1)であって、各機械脇側に設けられたドラフト装置(3)を備えており、該ドラフト装置(3)は、繊維束の走行方向に相前後して配置された、それぞれ異なる回転数で回転する複数のドラフト装置ボトムローラ(21,22,23)を有しており、該ドラフト装置ボトムローラ(21,22,23)は、機械端側に配置された駆動装置(26,27)と、少なくとも1つの付加的な補助駆動装置(28)とによって駆動可能であり、各機械脇側に複数の作業ユニット(2)が相並んで配置されており、前記ドラフト装置(3)は、それぞれ作業ユニット(2)の一部である、複列形のリング精紡機(1)において、
前記補助駆動装置(28)は、1つの電動モータ式の駆動装置(29)と、1つの主伝動装置(30)と、2つの分配伝動装置(31)とを有しており、両分配伝動装置(31)のうちの一方の分配伝動装置は、一方の前記機械脇側に配置された前記ドラフト装置(3)の1つのドラフト装置ボトムローラ(21,22,23)に割り当てられており、他方の前記分配伝動装置(31)は、他方の前記機械脇側に配置された前記ドラフト装置(3)の1つのドラフト装置ボトムローラ(21,22,23)に割り当てられており、前記分配伝動装置(31)は、それぞれ固定装置(33)を備えており、該固定装置(33)は、前記分配伝動装置(31)の支持のために、2つの作業ユニットの間の第1の中間スペースにおける支持箇所(38)において各々の前記ドラフト装置ボトムローラ(21,22,23)に接続されており、前記分配伝動装置(31)は、トルクの伝達のために、それぞれ2つの作業ユニット(2)の間の第2の中間スペースにおける駆動箇所(18)において各々の前記ドラフト装置ボトムローラ(21,22,23)に接続されていることを特徴とする、複列形のリング精紡機(1)。
【請求項2】
各々の前記固定装置(33)は、前記分配伝動装置(31)の支持のために、2つの作業ユニットの間の第3の中間スペースにおける別の支持箇所(38)において各々の前記ドラフト装置ボトムローラ(21,22,23)に接続されていることを特徴とする、請求項1記載のリング精紡機(1)。
【請求項3】
前記駆動箇所(18)は、両方の前記支持箇所(38)の間の真ん中に位置していることを特徴とする、請求項2記載のリング精紡機(1)。
【請求項4】
前記主伝動装置(30)は、前記分配伝動装置(31)にそれぞれ交差ジョイント(32)を介して接続されており、該交差ジョイント(32)は、好ましくはハウジングによって覆われていることを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項記載のリング精紡機(1)。
【請求項5】
前記分配伝動装置(31)は、それぞれ対応する前記ドラフト装置ボトムローラ(21,22,23)の回転数に合わせて調整された伝動装置減速比を有していることを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項記載のリング精紡機(1)。
【請求項6】
各々の前記ドラフト装置ボトムローラ(21,22,23)は、前記駆動箇所(18)に、前記トルクを前記分配伝動装置(31)から各々の前記ドラフト装置ボトムローラに伝達するための軸ピニオンを有していることを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項記載のリング精紡機(1)。
【請求項7】
前記固定装置(33)は、前記分配伝動装置(31)のハウジング(34)に固定されたロック要素(35)を有しており、該ロック要素(35)は端側にそれぞれ、前記固定装置(33)を前記支持箇所(38)において各々の前記ドラフト装置ボトムローラ(21,22,23)に接続するための軸受支持体(36)を備えていることを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項記載のリング精紡機(1)。
【請求項8】
前記軸受支持体(36)内に回転用軸受が配置されていることを特徴とする、請求項7記載のリング精紡機(1)。
【請求項9】
前記リング精紡機(1)は、複数のローラスタンド(10)を有しており、該ローラスタンド(10)に前記ドラフト装置ボトムローラ(21,22,23)が支持されており、前記補助駆動装置(28)は、2つの隣り合ったローラスタンドの間に配置されていることを特徴とする、請求項1から8までのいずれか1項記載のリング精紡機(1)。
【請求項10】
前記固定装置(33)は、該固定装置(33)を互いに隣り合った前記ローラスタンド(10)に接続する引張要素および/または押圧要素(37)を備えていることを特徴とする、請求項9記載のリング精紡機(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複列形のリング精紡機であって、各機械脇側に設けられたドラフト装置を備えており、このドラフト装置が、繊維束の走行方向に相前後して配置された、それぞれ異なる回転数で回転する複数のドラフト装置ボトムローラを有しており、これらのドラフト装置ボトムローラが、機械端側に配置された駆動装置と、少なくとも1つの付加的な補助駆動装置とによって駆動可能であり、ドラフト装置が、それぞれ各機械脇側に相並んで複数配置された作業ユニットの一部であり、補助駆動装置が、リング精紡機の作業ユニットのピッチを増大させることなく、または複数の作業ユニットのうちの1つを省略する必要なく、リング精紡機内に装入可能となるように形成されている、複列形のリング精紡機に関する。
【0002】
1000箇所以上の作業ユニットを備えていることが多く、相応して、ドラフト装置のドラフト装置ボトムローラが大きな長さを有している近年のリング精紡機には、周知のように、ドラフト装置ボトムローラが、加えられるトルクの負荷ならびにそれぞれ異なるねじり抵抗の作用のもと、それぞれ異なる程度でねじれてしまうという問題がある。
【0003】
この問題がドラフト装置ボトムローラのどのくらいの長さから顕著に生じてしまうのかは、種々異なる要因、例えばローラ直径、軸受摩擦、引っ張られるエプロンによる制動等に拠る。それぞれ異なる程度のこのねじれは、ドラフト装置の通常の運転時にはほとんど不利な影響を与えないが、例えばドラフト装置の始動および停止といったドラフト装置ボトムローラの加速および/または減速の際にはドラフト欠陥を招いてしまうことが多い。つまり、1つのドラフト装置ボトムローラのねじれが先に生じるかまたは後に生じるかに応じて、糸に細い箇所または太い箇所が生じてしまう。これによって、糸の生産時に品質損失または糸の破断すら生じてしまう。
【0004】
したがって、これまですでに、大きな長さのドラフト装置のボトムローラにおけるそれぞれ異なる程度のねじれを阻止するかまたは少なくとも害がない程度に減じる種々異なる装置が提案されている。独国特許出願公開第2641434号明細書(DE 26 41 434 A1)には、例えば、このような装置の種々異なる実施の形態が記載されている。
【0005】
第1の実施の形態では、例えば、リング精紡機のドラフト装置の一方の側にドラフト装置駆動装置を設け、このドラフト装置駆動装置と反対のリング精紡機側に補助伝動装置を設けることが提案されている。この補助伝動装置によって、ドラフト装置の始動時、停止時または休止時でもドラフト装置ボトムローラの角度位置を維持し続けることが確保される。
【0006】
しかしながら、このような構成の場合には、例えば糸番手の変更時のドラフト装置の主伝動装置におけるドラフト比の変更が補助伝動装置でも相応に行われることが保証されていなければならない。このことは、付加的な多くの作業を招いてしまうだけでなく、ドラフト装置の著しい損傷に繋がることがある危険な故障源をも成している。
【0007】
別の実施例では、ドラフト装置ボトムローラの、ドラフト装置駆動装置と反対の側に、補助伝動装置の代わりに、ドラフト装置ボトムローラにトルクを導入することができる補助モータを据え付けることが提案されている。
【0008】
極めて大きな長さのリング精紡機に関連して、さらに、第3の実施例では、ドラフト装置のほぼ長手方向中央に別の付加的なドラフト装置駆動装置を配置することが提案されている。しかしながら、ドラフト装置ボトムローラの長手方向中央の領域へのドラフト装置駆動装置のこのような配置は、この箇所において作業ユニットの一連のピッチが遮られてしまうという顕著な欠点を有している。つまり、このような実施の形態では、リング精紡機の構造が著しく複雑になってしまうだけでなく、特に粗糸ボビンおよび/または精紡コップを自動的に交換するための装置が提案されている場合には、部分的にかなり手間のかかるさらに別の高価な手段も必要になってしまう。
【0009】
また、独国特許出願公開第10040420号明細書(DE 100 40 420 A1)にも、リング精紡機用のドラフト装置ユニットの種々異なる実施の形態が記載されている。
【0010】
全ての実施の形態では、複数のドラフト装置ボトムローラのうちの少なくとも1つのドラフト装置ボトムローラがその長さに沿って2つよりも多くの駆動箇所において駆動される。つまり、この公知のドラフト装置ユニットでは、ドラフト装置ボトムローラの端部においてドラフト装置主駆動装置が明らかに省略されており、ドラフト装置ボトムローラの駆動が、ドラフト装置ボトムローラに関して分配されて配置された複数の個別駆動装置によって行われるにすぎない。
【0011】
もっとも、独国特許出願公開第10040420号明細書に記載された実施の形態は有用ではなく、相応して、実際に受け入れられなかった。
【0012】
上述のことは、国際公開第2007/057148号(WO 2007/057148 A2)により公知のリング精紡機用ドラフト装置の実施の形態にも少なくとも部分的に当てはまる。同号には、例えば長いドラフト装置を備えたリング精紡機が記載されている。ドラフト装置は、機械端側に配置された1つのドラフト装置主駆動装置だけでなく、ドラフトボトムローラの長さにわたって分配されて配置された複数の補助駆動装置も有している。これらの補助駆動装置もしくはその伝達機構は、リング精紡機の作業ユニットのピッチ間隔を増大させる必要なく、または作業ユニットを省略する必要なく、作業ユニット同士の間でドラフト装置に補助駆動装置を作用させることが可能となる程度に狭幅の構成を有している。
【0013】
しかしながら、国際公開第2007/057148号に開示された、リング精紡機の作業ユニット同士の間に位置決め可能な狭幅の補助駆動装置に対する実施例は極めて概略的であり、実際、当業者にほとんど理解できるものではない。また、同号に記載された補助駆動装置を備えたドラフト装置を有するリング精紡機もこれまで知られていない。
【0014】
前述した先行技術から出発して、本発明の課題は、ねじれが十分に回避されるように駆動されるドラフト装置ボトムローラを有する長いドラフト装置を備えたリング精紡機であって、リング精紡機の作業ユニットのピッチを増大させる必要もなければ、複数の作業ユニットのうちの1つを省略する必要もないように、付加的な補助駆動装置が形成され、位置決めされているリング精紡機を提供することである。
【0015】
この課題は、本発明によれば、複列形のリング精紡機であって、各機械脇側に設けられたドラフト装置を備えており、このドラフト装置が、繊維束の走行方向に相前後して配置された、それぞれ異なる回転数で回転する複数のドラフト装置ボトムローラを有している、複列形のリング精紡機によって解決される。ドラフト装置ボトムローラは、機械端側に配置された駆動装置と、少なくとも1つの付加的な補助駆動装置とによって駆動可能である。各機械脇側には、複数の作業ユニットが相並んで配置されている。ドラフト装置は、それぞれ作業ユニットの一部である。本発明によれば、補助駆動装置が、1つの電動モータ式の駆動装置と、1つの主伝動装置と、2つの分配伝動装置とを有している。両分配伝動装置のうちの一方の分配伝動装置は、一方の機械脇側に配置されたドラフト装置の1つのドラフト装置ボトムローラに割り当てられており、他方の分配伝動装置は、他方の機械脇側に配置されたドラフト装置の1つのドラフト装置ボトムローラに割り当てられている。分配伝動装置は、それぞれ固定装置を備えており、この固定装置は、分配伝動装置の支持のために、2つの作業ユニットの間の第1の中間スペースにおける支持箇所において各ドラフト装置ボトムローラに接続されている。さらに、分配伝動装置は、トルクの伝達のために、それぞれ2つの作業ユニットの間の第2の中間スペースにおける駆動箇所において各ドラフト装置ボトムローラに接続されている。
【0016】
本発明の有利な構成は従属請求項の対象である。
【0017】
本発明によれば、つまり、支持の機能とトルク伝達の機能とが互いに分離される。駆動箇所は、トルクが伝達されるように形成されている。この箇所では、設けられた固定装置に基づき、支持機能を完全にまたは部分的に省略することができる。これによって、分配伝動装置とドラフト装置ボトムローラおよび駆動箇所との接続部を相応に狭幅に形成することができる。支持機能は固定装置によって引き受けられる。この固定装置は、精紡運転中の補助駆動装置の確実な位置固定を半径方向でも軸方向でも保証している。固定装置はトルクを伝達する必要はなく、支持のためだけに働く。これによって、支持箇所における固定装置とドラフト装置ボトムローラとの間の接続部を相応に狭幅に形成することができる。
【0018】
したがって、補助駆動装置の本発明による構成および配置によって、リング精紡機のドラフト装置の長いドラフト装置ボトムローラの十分にねじれなしの運転を確保することができ、ひいては、精紡プロセス中のリング精紡機の作業ユニットの運転に決してマイナスの影響が与えられないことを保証することができるだけでなく、本発明により形成された補助駆動装置をそのコンパクトな構成に基づきリング精紡機のドラフト装置内のほぼあらゆる箇所に問題なく組み込むこともできる。コンパクトな構成は、さらに、駆動装置と主伝動装置とが機械両脇側に共通して使用されることによって達成される。
【0019】
当然ながら、複数の補助駆動装置を同時にリング精紡機のドラフト装置内に装入することも可能である。複数の補助駆動装置の使用によって、例えば、不利な結果を伴う高められたねじれの危険が生じることなく、ドラフト装置ボトムローラの直径の縮径を実現することができる。
【0020】
補助駆動装置のコンパクトな構成に基づき、さらに、補助駆動装置の装入時でも、リング精紡機のスピンドルピッチを増大させる必要もなければ、作業ユニットを省略する必要もないことが保証されている。
【0021】
本発明によれば、補助駆動装置は、分配伝動装置を介して複数のドラフト装置ボトムローラのうちの1つのドラフト装置ボトムローラに接続されていて、この場合、駆動箇所で駆動エネルギを伝達することができるだけでなく、伝達されたエネルギの反作用トルクも確実に吸収されるように、固定装置によって位置固定されている。
【0022】
本発明の好適な実施の形態によれば、各固定装置が、分配伝動装置の支持のために、2つの作業ユニットの間の第3の中間スペースにおける別の支持箇所において各ドラフト装置ボトムローラに接続されている。2つの支持箇所への支持力の分配は、固定装置とドラフト装置ボトムローラとの間の接続部の狭幅の構成の意向に添っている。好ましくは、駆動箇所が、両支持箇所の間の真ん中に位置している。これによって、支持箇所が駆動箇所に対して対称的に配置されている。このことは、最適な支持だけでなく、最適なトルク伝達も提供する。駆動箇所にかかる負荷は、支持力によって確実に軽減される。
【0023】
好ましくは、補助駆動装置が、リング精紡機のドラフト装置の中間ボトムローラに接続されている。ドラフト装置の中間ボトムローラへの補助駆動装置の接続は、特に中間ボトムローラによってドラフト装置エプロンが運動させられるので、極めて推奨に値する。このドラフト装置エプロンは、エプロン保持器の変向縁部を介した滑動時に比較的高い抵抗に打ち勝たなければならない。このことは、当該ドラフト装置ボトムローラの比較的高いねじれ負荷に繋がる。
【0024】
しかしながら、補助駆動装置をリング精紡機用ドラフト装置の別のドラフト装置ボトムローラのうちの一方に接続することも同じく推奨に値する。代替的な実施の形態では、補助駆動装置が、例えば、リング精紡機のドラフト装置の入口ボトムローラまたは出口ボトムローラに接続されていてもよい。
【0025】
さらに、当然ながら、リング精紡機のドラフト装置の全てのドラフト装置ボトムローラにそれぞれ1つの補助駆動装置を接続することも可能である。また、ドラフト装置ボトムローラごとに複数の補助駆動装置を同時に使用することも極めて有利であり得る。
【0026】
別の有利な実施の形態では、さらに、主伝動装置と分配伝動装置とが、それぞれ交差ジョイントを介して接続されており、この交差ジョイントが、好ましくはハウジングによって覆われていることが提案される。このような交差ジョイントを主伝動装置と分配伝動装置との間に配置することは、特に分配伝動装置の交換時に、主伝動装置に対する分配伝動装置の手間のかかる方向調整が不要になるという利点を有している。さらに、付属のハウジングによって、交差ジョイントが、紡績工場では一般的な環境条件によって早期に損なわれてしまうことが阻止される。つまり、ハウジングは交差ジョイントを浮遊繊維(Verflugung)および/または粉塵(Verstaubung)に対して確実に保護している。このことは、交差ジョイントの機能性にも寿命にも極めて有利な影響を与える。
【0027】
補助駆動装置によりアシストされるこのようなドラフト装置ボトムローラの回転数は、ドラフト装置の主駆動装置によって設定されており、種々異なるドラフト装置ボトムローラの回転数は一般的に極めて異なっているので、分配伝動装置が、それぞれ適正な減速比で作業することが必要となる。
【0028】
したがって、有利な実施の形態では、分配伝動装置が、それぞれ対応するドラフト装置ボトムローラの回転数に合わせて調整された伝動装置減速比を有している。したがって、適切な伝動装置減速比を有する分配伝動装置を選択することによって、補助駆動装置を、アシストすべきドラフト装置ボトムローラの回転数に正確に適合させることが容易に可能となる。
【0029】
各ドラフト装置ボトムローラは、駆動箇所に、トルクを分配伝動装置から各ドラフト装置ボトムローラに伝達するための軸ピニオンを有することができる。この軸ピニオンは、分配伝動装置の歯車が噛み合う、ドラフト装置ボトムローラに加工された歯車として形成することができる。トルクは問題なく伝達することができる。しかしながら、駆動箇所で軸方向の支持は行われない。半径方向の支持は、制限された程度でしか行われない。軸方向および半径方向の支持は、本発明によれば、固定装置によって行われる。
【0030】
さらに、有利な実施の形態では、補助駆動装置用の固定装置が、分配伝動装置のハウジングに固定されたロック要素を有しており、このロック要素が端側にそれぞれ、固定装置を支持箇所において各ドラフト装置ボトムローラに接続するための軸受支持体を備えていることが規定されている。この軸受支持体は、好ましくは、それぞれ回転用軸受を備えている。回転用軸受として、滑り軸受または転がり軸受を使用することができる。固定装置のロック要素と軸受支持体とを介して、分配伝動装置が、それぞれドラフト装置の該当するドラフト装置ボトムローラに確実に接続されている。
【0031】
リング精紡機は、好ましくは複数のローラスタンドを有しており、これらのローラスタンドにドラフト装置ボトムローラが支持されており、補助駆動装置は、好ましくは2つの隣り合ったローラスタンドの間に配置されている。
【0032】
さらに、固定装置は、この固定装置を互いに隣り合ったローラスタンドに接続する引張要素および/または押圧要素を備えている。つまり、この引張要素および/または押圧要素によって、分配伝動装置に最終的に損傷を与える恐れがある力が固定装置に導入されてしまうことが確実に回避される。引張要素および/または押圧要素は、好ましくは軸方向力を受け止める。
【0033】
さらに、有利な実施の形態では、補助駆動装置の電動モータ式の駆動装置が、非同期モータとして形成されていることが規定されている。このような非同期モータは、繊維機械工業において度々使用される有用な駆動ユニットを成している。この駆動ユニットは、さらに、然るべき専門商にて大量生産構成部材として比較的廉価に手に入れることができる。
【0034】
本発明を以下に図示の実施例に基づき詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図1】複数のドラフト装置ボトムローラのうちの少なくとも1つのドラフト装置ボトムローラが補助駆動装置を有する長いドラフト装置を備えた複列形のリング精紡機の側面図である。
【
図2】複列形のリング精紡機のドラフト装置の中間ボトムローラに補助駆動装置が接続されたドラフト装置の概略的な平面図である。
【
図3】リング精紡機のドラフト装置の中間ボトムローラに接続された分配伝動装置を備えた、本発明により形成された補助駆動装置の平面図である。
【
図4】
図3に示した本発明により形成された補助駆動装置の斜視図である。
【0036】
図1には、複列形のリング精紡機1が側面図で示してある。このリング精紡機1はその機械長手方向脇側の領域にそれぞれ多数の同一の作業ユニット2を備えている。
【0037】
これらの作業ユニット2は、公知のように、それぞれ定位置に配置された装置、例えば、ドラフト装置3と、スピンドルレール4と、鉛直方向に移動可能に支持された装置、例えばリングレール11、バルーン制限リング12および糸ガイド13とを有している。
【0038】
さらに、このようなリング精紡機1の作業ユニット2は、一般的にクリール14を備えている。このクリール14には、粗糸ボビン15、いわゆる「フライヤボビン」が懸垂されている。この粗糸ボビン15は作業ユニット2で処理されて、精紡コップが形成される。この精紡コップの巻管は、精紡プロセス中、スピンドルレール4に配置されたスピンドル5と共に回転する。明らかなように、このようなリング精紡機1は、さらに、いわゆる「コップ交換装置6」を有している。このコップ交換装置6は、それぞれグリッパレール8に配置された把持装置7を有している。この把持装置7によって、完成した精紡コップを機械長さ相当の搬送装置9に移送することができ、新たな空管をスピンドルレール4のスピンドル5に移送することができる。
【0039】
さらに、リング精紡機1は、公知のように、機械長手方向両脇側にそれぞれ吸引通路16を備えている。この吸引通路16には、いわゆる「ローラスタンド10」が取り付けられている。このローラスタンド10には、支持キャリッジ17を介してドラフト装置3のドラフト装置ボトムローラ21,22,23が支持されている。
【0040】
本実施例では、ドラフト装置3が、特に
図2に基づき明らかであるように、3つのドラフト装置ボトムローラ、つまり、入口ボトムローラ21と、中間ボトムローラ22と、出口ボトムローラ23とを有している。対応するドラフト装置トップローラ24は、従来通り、支持・加重アーム19に支持されている。この支持・加重アーム19は可動制限されて支持管20に取り付けられている。この支持管20自体はローラスタンド10に固定されている。さらに、ローラスタンド10を貫いて、機械長手方向に延在する2つの平行な支持・安定管25が延びている。
【0041】
図2には、複列形のリング精紡機1のドラフト装置3の平面図が極めて概略的に示してある。
【0042】
このような複列形のリング精紡機1はその機械長手方向両脇側の各々の領域に、相並んで配置されたそれぞれ1つのドラフト装置3を有している。このドラフト装置3は、各機械長手方向脇側に、1つの入口ボトムローラ21と、1つの中間ボトムローラ22と、1つの出口ボトムローラ23とを有している。これらのドラフト装置ボトムローラ21,22,23は、従来通り、(
図2には示していない)支持キャリッジ17を介して複数のローラスタンド10に回転可能に支持されている。これらのローラスタンド10は、リング精紡機1に沿って規則的な間隔を置いて配置されている。ドラフト装置ボトムローラ21,22,23の回転駆動は、機械始端側に配置された主駆動装置26と、リング精紡機1の逆側の機械終端側に配置された同期駆動装置27とによって行われる。さらに、
図2に引き続き示したように、長さLを有するリング精紡機1の中間領域Mには、本発明により形成された補助駆動装置28が据え付けられている。この補助駆動装置28は、本実施例では、ドラフト装置3の中間ボトムローラ22に接続されている。
【0043】
図示のように、以下で
図3および
図4に基づき詳細に説明する補助駆動装置28は、1つの電動モータ式の駆動装置29と、1つの主伝動装置30と、2つの分配伝動装置31とを有している。両分配伝動装置31は、それぞれ固定装置33によってドラフト装置3の中間ボトムローラ22の支持箇所38に接続されている。
【0044】
図3には、リング精紡機1の2つのローラスタンド10の間に介装された、本発明により形成された補助駆動装置28が平面図で拡大寸法にて示してある。
【0045】
明らかなように、補助駆動装置28は電動モータ式の駆動装置29、好ましくは非同期モータを有している。この電動モータ式の駆動装置29は、好ましくは歯車伝動装置として形成された主伝動装置30に接続されている。この主伝動装置30には、それぞれ交差ジョイント32を介して2つの分配伝動装置31が接続されている。両分配伝動装置31自体は、それぞれドラフト装置3の一方の中間ボトムローラ22に駆動箇所18において接続されている。つまり、分配伝動装置31の歯車伝動装置が、中間ボトムローラ22に配置されて相応に形成されたそれぞれ1つの歯車に作用し、補助駆動装置28により発生させられたトルクを中間ボトムローラ22に伝達する。
【0046】
明らかなように、分配伝動装置31のハウジング34に固定装置33が据え付けられている。この固定装置33のロック要素35は端側にそれぞれ軸受支持体36を備えている。この軸受支持体36内には、回転用軸受、つまり、滑り軸受またはころ軸受が配置されていて、この回転用軸受内で、それぞれドラフト装置3の対応する中間ボトムローラ22が回転する。これによって、回転用軸受が支持箇所38を成している。
【0047】
運転中に生じる軸方向のモーメントを補償することができるようにするために、固定装置33は、さらに、引張要素および/または押圧要素37を備えている。この引張要素および/または押圧要素37を介して、固定装置33が、隣り合ったローラスタンド10に接続されている。
【0048】
図4には、本発明により形成された補助駆動装置28の斜視図が示してある。
【0049】
図3から認められるように、補助駆動装置28は電動モータ式の駆動装置29、好ましくは非同期モータを有している。この電動モータ式の駆動装置29は主伝動装置30に接続されている。この主伝動装置30自体は交差ジョイント32を介して2つの分配伝動装置31に接続されている。両分配伝動装置31は、それぞれリング精紡機1のドラフト装置3の中間ボトムローラ22に接続されている。つまり、電動モータ式の駆動装置29により加えられたトルクが、主伝動装置30と分配伝動装置31とを介してドラフト装置3の中間ボトムローラ22に伝達される。
【0050】
分配伝動装置31ひいては補助駆動装置28を全体的に有害な軸方向の力に対して防護するために、分配伝動装置31は、さらに、それぞれ固定装置33を備えている。つまり、分配伝動装置31のハウジング34にロック要素35が配置されている。このロック要素35自体は、それぞれ端側に軸受支持体36を有している。この軸受支持体36内には、回転用軸受が配置されている。この回転用軸受内には、それぞれ対応するドラフト装置3の中間ボトムローラ22が支持されている。軸方向のモーメントを補償するために、固定装置33は、さらに、引張要素および/または押圧要素37を備えている。この引張要素および/または押圧要素37を介して、固定装置33は、隣り合ったローラスタンド10に接続されている。
【符号の説明】
【0051】
1 リング精紡機
2 作業ユニット
3 ドラフト装置
4 スピンドルレール
5 スピンドル
6 コップ交換装置
7 把持装置
8 グリッパレール
9 搬送装置
10 ローラスタンド
11 リングレール
12 バルーン制限リング
13 糸ガイド
14 クリール
15 粗糸ボビン
16 吸引通路
17 支持キャリッジ
18 駆動箇所
19 支持・加重アーム
20 支持管
21 入口ボトムローラ
22 中間ボトムローラ
23 出口ボトムローラ
24 ドラフト装置トップローラ
25 支持・安定管
26 主駆動装置
27 同期駆動装置
28 補助駆動装置
29 電動モータ式の駆動装置
30 主伝動装置
31 分配伝動装置
32 交差ジョイント
33 固定装置
34 ハウジング
35 ロック要素
36 軸受支持体
37 引張要素および/または押圧要素
38 支持箇所
M リング精紡機のドラフト装置の中間領域
L 機械の長さ
【外国語明細書】