【解決手段】引戸1の戸当たり面2に切り欠き2aが設けられ、この切欠き2aに取り付けられる調整機能付き引手10、110であって、引戸1の表面3a側に取り付けられ、指を入れるための第1凹部S1が表面3a側に構成される第1引手部材20,120と、引戸1の裏面3b側に取り付けられ、指を入れるための第2凹部S2が裏面3b側に構成される第2引手部材30、130とを備え、第1引手部材20、120と第2引手部材30、130とを取り付けた状態で、第1引手部材20、120と第2引手部材30、130との間に生じる隙間Qを戸当たり面2側から覆う目隠し部材26、126が設けられている。
前記目隠し部材は、前記第1引手部材または前記第2引手部材のいずれか一方に一体に構成された嵌合突起であり、前記第1引手部材および前記第2引手部材のいずれか一方または両方は、前記引戸の板厚方向へスライドさせて前記引戸を挟み込むようにして取り付けられるようになっており、
前記第1引手部材または前記第2引手部材のいずれか他方に設けられた嵌合溝に前記嵌合突起を板厚方向へ嵌合長さを調整可能に嵌合させたことを特徴とする請求項1に記載の調整機能付き引手。
前記第1引手部材または前記第2引手部材のいずれか一方には、引戸の切欠きの奥側面に沿って配置され、前記奥側面に取り付けられる取付面部が設けられ、前記第1引手部材または前記第2引手部材のいずれか他方には、前記取付面部を戸当たり面側から覆う第2目隠し部材が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の調整機能付き引手。
前記第1引手部材または前記第2引手部材のいずれか一方または両方には、前記戸当たり面側からそれぞれの前記第1凹部または前記第2凹部に指を入れるための開口が形成されていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1つに記載の調整機能付き引手。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
(第1実施形態)
以下、第1実施形態に係る調整機能付き引手10について、図面を用いて詳細に説明する。
図1は、調整機能付き引手10を戸当たり面の切欠きに取り付けた状態を示す斜視図である。また、
図2は、切欠きに表面側引手部材を取り付ける状態を示す斜視図、
図3は、表面側引手部材が取り付けられた後に裏面側引手部材を切欠きに取り付ける状態を示す斜視図である。さらに、
図4は、
図1のA−A断面図であって、(A)は引戸の板厚が厚いもの、(B)は板厚が薄いものを示すものである。
【0016】
なお、以下の説明で使用する「左側」「右側」「前側」「後側」「上側」「下側」とは、
図1〜
図4に示す方向をいうものとする。
【0017】
引戸1は、左右方向(開閉方向)へ移動させることで、建屋の開口部を開閉するものである。この引戸1の戸当たり面2には、
図1〜
図3に示すように、戸当たり面2から右側に向けて角形に切り欠かれた切欠き2aが形成されており、この切欠き2aに調整機能付き引手10が取り付けられる。この調整機能付き引手10は、取り付けられた状態で、引戸の表面3a、裏面3b、戸当たり面2のそれぞれとほぼ面一か少しだけ突出する程度になる。
【0018】
調整機能付き引手10は、
図1〜
図4に示すように、引戸1の表面3a側に取り付けられ、利用者が指を入れるための表面側凹部(第1凹部)が表面3a側に構成される表面側引手部材20(第1引手部材)と、引戸1の裏面3b側に取り付けられ、指を入れるための裏面側凹部(第2凹部)が裏面3b側に構成される裏面側引手部材30(第2引手部材)とで構成されている。また、この調整機能付き引手10は、
図4に示すように、引戸1の板厚寸法がL1(板厚が厚いもの)から、L2(板厚が薄いもの)まで調整して取り付けられるものである。この機能についての詳細は後述する。
【0019】
図5は、表面側引手部材を凹部側から見た斜視図、
図6は、
図5を裏側から見た斜視図である。また、
図7は、裏面側引手部材を凹部側から見た斜視図、
図8は、
図7を裏側から見た斜視図、
図9は、
図8を斜め右側から見た斜視図である。
【0020】
表面側引手部材20は、
図5および
図6に示すように、その外観が上下方向に延びる角柱形状を成しており、その内部を中空にして表面側凹部S1が形成されている。この表面側引手部材20の上下方向の長さは、切欠き2aの上下方向の長さと同じであり、左右方向の長さは、切欠き2aの左右方向の長さと同じである。また、表面側引手部材20の前後方向(引戸1の板厚方向)の長さは、
図4(B)に示すように、引戸1の最小厚さL2の半分或いは半分よりも若干短くなるように形成されている。
【0021】
表面側引手部材20は、上側および下側にそれぞれ配置された端壁部21、21と、右側面(戸当たり面2側から見た奥側面)を構成する取付面部22と、後側面を構成する凹部底部23と、左側面を構成する指掛け部24とで構成されている。また、表面側引手部材20の前面には、表面側凹部S1と連通し、利用者が指を入れるための主開口F1が形成されている。
【0022】
端壁部21および取付面部22は、
図2および
図3に示すように、切欠き2aの上下面および右側面(奥側面)と当接するようにして取り付けられる。また、端壁部21の前側縁部および取付面部22の前側縁部には、
図5に示すように、上下および右側の外方へ突出するフランジ部25が連続してコ字状に形成されている。このフランジ部25は、表面側引手部材20が取り付けられた状態で、切欠き2aの前側の角部を覆うようになっている。
【0023】
また、取付面部22には、
図5および
図6に示すように、上側および下側に取付皿穴22aがそれぞれ設けられている。この取付皿穴22aには、図示しない皿ねじが挿通され、
図3に示すように、切欠き2aの右側面に固定されるようになっている。
【0024】
さらに、取付面部22には、
図6に示すように、凹部底部23よりも後側に向けて突出する嵌め込み部29が上下方向に連続して形成されている。また、この嵌め込み部29の上端および下端には、角状の切欠き部29a、29aがそれぞれ形成されている。この嵌め込み部29は、詳細は後述する裏面側引手部材30の嵌め込み部39に前後方向(引戸の板厚方向)に沿って嵌め込まれるようにして取り付けられる。
【0025】
凹部底部23は、
図6に示すように、左側(戸当たり面側)の部分に位置し、後側に向けて突出する嵌合突起26(目隠し部材)が形成されている。この嵌合突起26は、上端に位置する端壁部21と下端に位置する端壁部21との間に亘って上下方向に連続して形成されている。この嵌合突起26は、詳細は後述する裏面側引手部材30の嵌合溝36に前後方向(引戸の板厚方向)に沿って嵌め込まれるようにして取り付けられる。
【0026】
指掛け部24は、
図4および
図5に示すように、左側面の後側部分のみを覆うようにして設けられている。また、前側部分を覆わないことで、この部分に戸当たり面側の開口F2を形成している。また、指掛け部24は、
図4に示すように、左右方向に厚みを持たせることで、指が掛かり易いようにしている。
【0027】
また、指掛け部24の左側面には、左側に向けて外方向へ突出する2つの突条部27、27が形成されている。この突条部27、27は、上下方向に連続して形成されており、この2つの突条部27、27の間に溝部28が形成されている。
【0028】
このような表面側引手部材20の取付方法としては、
図2および
図3に示すように、フランジ部25が切欠き2aの前側の角部を覆うようにして、切欠き2aの前側部分に配置される。そして、取付面部22と切欠き2aの右側面とを面で当接させ、上述した皿ねじ(図示せず)を締め込むことで取り付けられる。
【0029】
裏面側引手部材30は、
図7〜
図9に示すように、その外観が上下方向に延びる角柱形状を成しており、その内部を中空にして裏面側凹部S2が形成されている。より詳細には、裏面側引手部材30は、上側および下側にそれぞれ配置された端壁部31、31と、右側面を構成する取付面部32と、前側面を構成する凹部底部33と、左側面を構成する指掛け部34とで構成されている。また、裏面側引手部材30の後面には、裏面側凹部S2と連通し、利用者が指を入れるための主開口B1が形成されている。
【0030】
端壁部31および取付面部32は、
図3に示すように、切欠き2aの上下面および右側面と当接するようにして取り付けられる。また、端壁部31の後側縁部および取付面部32の後側縁部には、
図5に示すように、上下および右側の外方へ突出するフランジ部35が連続してコ字状に形成されている。このフランジ部35は、裏面側引手部材30が取り付けられた状態で、切欠き2aの後側の角部を覆うようになっている。
【0031】
また、取付面部32には、
図7および
図9に示すように、上側および下側に取付皿穴32aがそれぞれ設けられている。この取付皿穴32aには、図示しない皿ねじが挿通され、切欠き2aの右側面に固定されるようになっている。
【0032】
さらに、取付面部32には、
図9に示すように、凹部底部33よりも後側に向けて凹んだ嵌め込み部39が上下方向に連続して形成されている。また、この嵌め込み部39の上端および下端には、嵌め込み部39が形成されておらず、角状の突部39a、39aがそれぞれ形成されている。この嵌め込み部39には、表面側引手部材20の嵌め込み部29が前後方向(引戸の板厚方向)に沿って嵌め込まれるようにして取り付けられる。
【0033】
凹部底部33は、
図8および
図9に示すように、左側(戸当たり面側)の部分に位置し、後側に向けて凹んだ嵌合溝36が形成されている。この嵌合溝36は、上端に位置する端壁部21と下端に位置する端壁部21との間に亘って上下方向に連続して形成されている。この嵌合溝36には、表面側引手部材20の嵌合突起26が前後方向(引戸の板厚方向)に沿って嵌め込まれるようにして取り付けられる。
【0034】
指掛け部34は、
図4および
図7に示すように、左側面の前側部分のみを覆うようにして設けられている。また、後側部分を覆わないことで、この部分に戸当たり面側の開口B2を形成している。また、指掛け部34は、
図4に示すように、左右方向に厚みを持たせることで、指が掛かり易いようにしている。
【0035】
また、指掛け部34の左側面には、左側に向けて外方向へ突出する2つの突条部37、37が形成されている。この突条部37、37は、上下方向に連続して形成されており、この2つの突条部37、37の間に溝部38が形成されている。
【0036】
このような裏面側引手部材30の取付方法としては、
図3に示すように、予め取り付けられた表面側引手部材20に対して、C方向(引戸の板厚方向)にスライドさせて嵌め込むようにする。このようにC方向にスライドさせることで、表面側引手部材20の嵌合突起26および嵌め込み部29が、裏面側引手部材30の嵌合溝36および嵌め込み部39に嵌め込まれるようになる。そして、フランジ部35が切欠き2aの後側の角部を覆うように配置し、フランジ部25、35で引戸1を板厚方向に挟み込むようにする。その後、取付面部32と切欠き2aの右側面とを面で当接させ、2つの取付皿穴32a、32aに皿ねじ(図示せず)を締め込むことで取り付けられる。
【0037】
次に、第1実施形態における調整機能付き引手10の作用を説明する。
この調整機能付き引手10は、
図4(A)、(B)に示すように、引戸1の板厚が異なる場合であっても、引戸1の表面3aおよび裏面3bと、調整機能付き引手10の表面側および裏面側を、ほぼ面一或いは若干突出させる程度に取り付けることができる。すなわち、表面側引手部材20の嵌合突起26および嵌め込み部29を、裏面側引手部材30の嵌合溝36および嵌め込み部39に、引戸1の板厚方向にスライドさせて取り付けることで、これらの嵌合長さを調整して種々の板厚の引戸1に対応させることができる。
【0038】
2つの引手部材20、30の嵌め込み部29、39を嵌合させた状態では、2つの引手部材20、30の左右方向の位置が規制され、左右方向のずれを生じさせない。また、裏面側引手部材30の突部39aが表面側引手部材20の切り欠き部29aに入り込むことによって、上下方向の位置が規制される。
【0039】
また、2つの引手部材20、30を取り付けた状態では、
図4(A)に示すように、板厚が厚い場合に2つの引手部材20、30の間に隙間Qが生じてしまう。この隙間Qは、嵌合突起26を嵌合溝36に嵌合させることで、戸当たり面側から見えないようになる。より詳細には、嵌合突起26が隙間Qを戸当たり面側から覆って見えないようにしている。
【0040】
これらの構造により、調整機能付き引手10は、利用者が引戸1の表面3a側から主開口F1を通して表面側凹部S1を掴むことができ、同様に引戸1の裏面3b側から主開口B1を通して裏面側凹部S2を掴むことができるようになる。さらには、引戸1が戸袋内に入り込んだ状態、或いは、並走するもう一方の引戸と完全に重なった状態で、表面3a或いは裏面3b側から凹部S1、S2を掴めない場合であっても、引戸1の戸当たり面側(左側端面)の開口F2、B2から指を入れて凹部S1、S2を掴んで移動させることができるようになる。
【0041】
第1実施形態に係る調整機能付き引手10によれば、引戸1の戸当たり面2に切り欠き2aが設けられ、この切欠き2aに取り付けられる調整機能付き引手10であって、引戸1の表面3a側に取り付けられ、指を入れるための表面側凹部S1が表面3a側に構成される表面側引手部材20と、引戸1の裏面3b側に取り付けられ、指を入れるための裏面側凹部S2が裏面3b側に構成される裏面側引手部材30とを備え、表面側引手部材20と裏面側引手部材30とを切欠き2aに取り付けた状態で、表面側引手部材20と裏面側引手部材30との間に生じる隙間Qを戸当たり面2側から覆う嵌合突起26が設けられているので、表面側引手部材20と裏面側引手部材30の前後方向の位置を引戸の板厚に合わせて調整したとしても、戸当たり面2側から見て隙間Qが見えないので、調整機能付き引手10の戸当たり面2側から見た見栄えを良好に保つことができる。
【0042】
また、嵌合突起26は、表面側引手部材20に一体に構成され、表面側引手部材20を引戸1の板厚方向へスライドさせて引戸1を挟み込むようにして取り付けられるようになっており、裏面側引手部材30に設けられた嵌合溝36に嵌合突起26を板厚方向へ嵌合長さを調整可能に嵌合させているので、引戸1の板厚が厚いもの(L1寸法)から薄いもの(L2寸法)までスライドして調整したとしても、嵌合突起26も嵌合溝36にスライドして入出するため、隙間Qを常に覆い隠すことができる。
【0043】
さらに、表面側引手部材20または裏面側引手部材30には、戸当たり面2側からそれぞれの表面側凹部S1または裏面側凹部S2に指を入れるための開口F2、B2が形成されているので、利用者が戸当たり面2側から開口F2、B2に指を入れて、それぞれの凹部S1、S2を掴むことができる。そのため、引戸1の表面3aおよび裏面3bから凹部S1、S2を掴めない場合であっても、引戸1を容易に開閉することができる。
【0044】
以上、第1実施形態に係る調整機能付き引手10について述べたが、本発明は既述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術思想に基づいて各種の変形および変更が可能である。
例えば、本第1実施形態における表面側引手部材20の嵌合突起26と裏面側引手部材30の嵌合溝36をそれぞれ逆に構成してもよい。これによっても、嵌合突起が隙間Qを戸当たり面側から覆って見えないようにすることができる。
【0045】
また、表面側引手部材20の嵌め込み部29と裏面側引手部材30の嵌め込み部39をそれぞれ逆に構成してもよい。
【0046】
さらに、隙間Qを目隠しする嵌合突起26を別部材で機能させてもよい。
図10は、第1実施形態の変形例であって、(A)は引戸の板厚が厚いものの断面図、(B)は板厚が薄いものの断面図を示すものである。
【0047】
図10に示す調整機能付き引手50は、切欠き2a内の前後方向の中央に配置された指掛け部材60と、表面3a側に配置された表面側引手部材50aと、裏面3b側に配置された裏面側引手部材50bとで構成されている。指掛け部材60は、切欠き2aの右側面(奥側面)と接する部分の前側および後側に突部69、69がそれぞれ設けられており、表面側引手部材50aおよび裏面側引手部材50bには、板厚方向にスライドさせることで突部69と嵌合する切欠き部59が設けられている。
【0048】
これらの突部69と切欠き部59との嵌合長さを調整することで、最大厚さL1から最小厚さL2までの板厚に対応することができる。また、指掛け部材60を中央に配置することで、表面側引手部材50aと裏面側引手部材50bとの間に生じる調整隙間を戸当たり面側から隠すことができる。
【0049】
この構造によっても、表面側凹部S1を主開口F1および戸当たり面側開口F2から指を入れて掴むことができるとともに、裏面側凹部S2を主開口B1および戸当たり面側開口B2から掴むことができる。
【0050】
(第2実施形態)
以下、第2実施形態に係る調整機能付き引手110について、図面を用いて詳細に説明する。
図11は、調整機能付き引手10を戸当たり面の切欠きに取り付けた状態を示す斜視図である。また、
図12は、切欠きに裏面側引手部材を取り付ける状態を示す斜視図、
図13は、裏面側引手部材が取り付けられた後に表面側引手部材を切欠きに取り付ける状態を示す斜視図である。さらに、
図14は、
図1のB−B断面図であって、(A)は引戸の板厚が厚いもの、(B)は板厚が薄いものを示すものである。
【0051】
なお、以下の説明で使用する「左側」「右側」「前側」「後側」「上側」「下側」とは、
図11〜
図14に示す方向をいうものとする。
【0052】
引戸1は、左右方向(開閉方向)へ移動させることで、建屋の開口部を開閉するものである。この引戸1の戸当たり面2には、
図1〜
図3に示すように、戸当たり面2から右側に向けて角形に切り欠かれた切欠き2aが形成されており、この切欠き2aに調整機能付き引手110が取り付けられる。この調整機能付き引手110は、取り付けられた状態で、引戸の表面3a、裏面3b、戸当たり面2のそれぞれとほぼ面一か少しだけ突出する程度になる。
【0053】
調整機能付き引手110は、
図11〜
図14に示すように、引戸1の表面3a側に取り付けられ、利用者が指を入れるための表面側凹部S1(第1凹部)が表面3a側に構成される表面側引手部材120(第1引手部材)と、引戸1の裏面3b側に取り付けられ、指を入れるための裏面側凹部S2(第2凹部)が裏面3b側に構成される裏面側引手部材130(第2引手部材)とで構成されている。また、この調整機能付き引手110は、
図14に示すように、引戸1の板厚寸法がL1(板厚が厚いもの)から、L2(板厚が薄いもの)まで調整して取り付けられるものである。この機能についての詳細は後述する。
【0054】
図15は、裏面側引手部材を凹部側から見た斜視図、
図16は、
図15を裏側から見た斜視図である。また、
図17は、表面側引手部材を凹部側から見た斜視図、
図18は、
図17を裏側から見た斜視図である。
【0055】
裏面側引手部材130は、
図15および
図16に示すように、その外観が上下方向に延びる角柱形状を成しており、その内部を中空にして表面側凹部S1が形成されている。この裏面側引手部材130の上下方向の長さは、切欠き2aの上下方向の長さと同じであり、左右方向の長さは、切欠き2aの左右方向の長さと同じである。また、裏面側引手部材130の前後方向(引戸1の板厚方向)の長さは、
図14(B)に示すように、引戸1の最小厚さL2と同じ或いは若干短くなるように形成されている。
【0056】
裏面側引手部材130は、上側および下側にそれぞれ配置された端壁部131、131と、右側面(戸当たり面2側から見た奥側面)を構成する取付面部132と、後側面を構成する凹部底部133と、左側面を構成する指掛け部134とで構成されている。また、裏面側引手部材130の前面には、表面側凹部S1と連通し、利用者が指を入れるための主開口F1が形成されている。
【0057】
端壁部131は、
図12および
図13に示すように、切欠き2aの上下面とそれぞれ当接するようにして取り付けられる。また、上下の2つの端壁部131、131には、
図15および
図16に示すように、左側(戸当たり面側)の部分に位置し、後側に向けて凹んだ嵌合溝136、136がそれぞれ形成されている。これらの上下の2つの嵌合溝136、136には、詳細は後述する表面側引手部材120の嵌合突起126が前後方向(引戸の板厚方向)に沿って嵌め込まれるようにして取り付けられる。
【0058】
また、2つの端壁部131、131の内側面(表面側凹部S1と対向する面)には、前後方向に向けて延びる2つのスライド凹部139b、139bが連続してそれぞれ形成されている。これらのスライド凹部139b、139bには、詳細は後述する表面側引手部材120のスライド凸部129b、129bが前後方向にスライド可能に取り付けられる。
【0059】
取付面部132は、切欠き2aの右側面(奥側面)と当接するようにして取り付けられる。取付面部132の後側縁部には、
図15および
図16に示すように、右側の外方へ突出するフランジ部135が上下方向に連続して形成されている。このフランジ部135は、裏面側引手部材130が取り付けられた状態で、切欠き2aの後側の角部を覆うようになっている。
【0060】
また、取付面部132には、
図15および
図16に示すように、上側および下側に取付皿穴132a、132aがそれぞれ設けられている。この取付皿穴132aには、図示しない皿ねじが挿通され、切欠き2aの右側面に固定されるようになっている。
【0061】
さらに、取付面部132には、取付皿穴132a、132aの近くに、前側端面から後側に延びる2つの切欠き部139a、139aがそれぞれ形成されている。これらの切欠き部139a、139aには、詳細は後述する表面側引手部材120の木部食い込み部129aが入り込むようになる。
【0062】
凹部底部133の裏面側には、
図16に示すように、中央のほぼ全面に亘って裏面側凹部S2が形成されている。この凹部底部133の裏面側は、調整機能付き引手110を取り付けた状態で、引戸1の裏側にそのまま露出するようになり、主開口B1から裏面側凹部S2に指が入れられるようになっている。
【0063】
指掛け部134は、
図14および
図15に示すように、左側面の後側部分の約半分のみを覆うようにして設けられている。また、前側部分を覆わないことで、この部分に戸当たり面側の開口F2を形成している。
【0064】
このような裏面側引手部材130の取付方法としては、
図12および
図13に示すように、フランジ部135が切欠き2aの前側の角部を覆うようにして、切欠き2aの前側部分に配置される。そして、取付面部132と切欠き2aの右側面とを面で当接させ、上述した皿ねじ(図示せず)を締め込むことで取り付けられる。
【0065】
表面側引手部材120は、
図17および
図18に示すように、上下方向に長尺な略コ字形状を成しており、コ字形状の内部に表面側凹部S1が形成されている。この表面側引手部材120の上下方向の長さは、切欠き2aの上下方向の長さと同じであり、左右方向の長さは、
図14(A)および
図14(B)に示すように、裏面側引手部材130の表面側凹部S1の左右方向の長さとほぼ同じである。また、表面側引手部材120の前後方向(引戸1の板厚方向)の長さは、
図14(B)に示すように、引戸1の最小厚さL2のときに裏面側引手部材130の表面側凹部S1の前後方向の長さとほぼ同じになるように形成されている。
【0066】
表面側引手部材120は、上側および下側にそれぞれ配置された端壁部121、121と、右側面を構成するスライド面部122(第2目隠し部材)とで構成されている。また、表面側引手部材120の前面には、表面側凹部S1と連通し、利用者が指を入れるための主開口F1が形成されている。
【0067】
端壁部121は、
図17および
図18に示すように、切欠き2aの上下面と当接するようにして取り付けられる。また、上下の2つの端壁部121、121には、
図17および
図18に示すように、左側(戸当たり面側)の部分に前後方向に延びる嵌合突起126がそれぞれ形成されている。上側の端壁部121に形成された嵌合突起126は、上側の端壁部121よりもさらに上側に突出しており、下側の端壁部121に形成された嵌合突起126は、下側の端壁部121よりもさらに下側に突出している。
【0068】
さらに、2つの端壁部121、121の外側面(表面側凹部S1と反対側の面)には、前後方向に向けて延びる2つのスライド凸部129b、129bが連続してそれぞれ形成されている。
【0069】
スライド面部122は、
図14(A)および
図14(B)に示すように、スライド面部122の外側面が、裏面側引手部材130の取付面部132の内側面と接するように取り付けられる。スライド面部122の前側縁部には、
図17および
図18に示すように、右側の外方へ突出するフランジ部125が上下方向に連続して形成されている。このフランジ部125は、裏面側引手部材130が取り付けられた状態で、切欠き2aの前側の角部を覆うようになっている。
【0070】
また、スライド面部122には、
図18に示すように、フランジ部125の後側から後側に延びる木部食い込み部129aが設けられている。この木部食い込み部129aは、スライド面部122の前後方向の中央まで延在しており、フランジ部125側から中央に向かうに従い左側方向へ傾斜する傾斜面が形成されている。この傾斜面には、固定用の複数の凹凸(食い込み歯)が形成されている。
【0071】
このような表面側引手部材120の取付方法としては、
図13に示すように、予め取り付けられた裏面側引手部材130に対して、D方向(引戸の板厚方向)にスライドさせて嵌め込むようにする。このようにD方向にスライドさせることで、表面側引手部材120の嵌合突起126およびスライド凸部129bが、裏面側引手部材130の嵌合溝136およびスライド凹部139bに嵌め込まれるようになる。そして、フランジ部135が切欠き2aの前側の角部を覆うように配置し、フランジ部125、135で引戸1を板厚方向に挟み込むようにする。
【0072】
また、表面側引手部材120のこのスライド面部122には、取付用の皿穴は開けられておらず、皿ねじで固定するものではない。この表面側引手部材120の固定は、上述した木部食い込み部129aを裏面側引手部材130の切欠き部139aに入り込ませることで行われる。また、木部食い込み部129aの食い込み歯は、引戸1の切欠き部2aの右側面の角部に食い込むことで、表面側引戸部材120が引戸1に対して固定される。なお、表面側引手部材120の木部食い込み部129aは、接着剤を用いることでより強固に固定することもできる。
【0073】
次に、第2実施形態における調整機能付き引手110の作用を説明する。
この調整機能付き引手110は、
図14(A)、(B)に示すように、引戸1の板厚が異なる場合であっても、引戸1の表面3aおよび裏面3bと、調整機能付き引手110の表面側および裏面側を、ほぼ面一或いは若干突出させる程度に取り付けることができる。すなわち、表面側引手部材120の嵌合突起126およびスライド凸部129bを、裏面側引手部材130の嵌合溝136およびスライド凹部139bに、引戸1の板厚方向にスライドさせて取り付けることで、これらの嵌合長さを調整して種々の板厚の引戸1に対応させることができる。
【0074】
2つの引手部材120、130のスライド凸部129bとスライド凹部139bをスライドして嵌合させた状態では、2つの引手部材20、30の左右方向の位置が規制され、左右方向のずれを生じさせない。また、表面側引手部材120の木部食い込み部129aが裏面側引手部材130の切り欠き部139aに入り込むことによって、上下方の位置が規制される。
【0075】
また、2つの引手部材120、130を取り付けた状態では、
図14(A)に示すように、板厚が厚い場合に2つの引手部材20、30の間に隙間Q1が生じてしまう。この隙間Q1は、嵌合突起126を嵌合溝136に嵌合させることで、戸当たり面側から見えないようになる。より詳細には、嵌合突起126および指掛け部材60が隙間Q1を戸当たり面側から覆って見えないようにしている。
【0076】
さらに、本第2実施形態では第1実施形態とは異なり、表面側引手部材120のスライド面部122が裏面側引手部材130の取付面部132を戸当たり面側から覆う構造になっている。そのため、表面側引手部材120と裏面側引手部材130との間に生じる隙間Q2をスライド面部122が戸当たり面側から覆って見えないようにしている。
【0077】
また、スライド面部122は、裏面側引手部材130の2つの取付皿穴132a、132a、固定する皿ねじ、および、切欠き部139bが戸当たり面側から見えないようになるという作用を奏する。これにより、取付ねじが見えない洗練された意匠が得られている。また、スライド面部122は、
図14(A)に示すように、引戸1の最大厚さL1のときに、裏面側引手部材130の取付面部132の前側先端部から、引戸1の前側面3aまでの間に生じる隙間Q2が見えないようにしている。
【0078】
これらの構造により、調整機能付き引手110は、利用者が引戸1の表面3a側から主開口F1を通して表面側凹部S1を掴むことができ、同様に引戸1の裏面3b側から主開口B1を通して裏面側凹部S2を掴むことができるようになる。さらには、引戸1が戸袋内に入り込んだ状態、或いは、並走するもう一方の引戸と完全に重なった状態で、表面3a或いは裏面3b側から凹部S1、S2を掴めない場合であっても、引戸1の戸当たり面側(左側端面)の開口F2から指を入れて表面側凹部S1を掴んで移動させることができるようになる。
【0079】
第2実施形態に係る調整機能付き引手によれば、引戸1の戸当たり面2に切り欠き2aが設けられ、この切欠き2aに取り付けられる調整機能付き引手110であって、引戸1の表面3a側に取り付けられ、指を入れるための表面側凹部S1が表面3a側に構成される表面側引手部材120と、引戸1の裏面3b側に取り付けられ、指を入れるための裏面側凹部S2が裏面3b側に構成される裏面側引手部材130とを備え、表面側引手部材120と裏面側引手部材130とを取り付けた状態で、表面側引手部材120と裏面側引手部材130との間に生じる隙間Q1を戸当たり面2側から覆う嵌合突起126が設けられているので、表面側引手部材120と裏面側引手部材130の前後方向の位置を引戸の板厚に合わせて調整したとしても、戸当たり面2側から見て隙間Q1が見えないので、調整機能付き引手110の戸当たり面2側から見た見栄えを良好に保つことができる。
【0080】
また、裏面側引手部材130には、引戸1の切欠き2aの奥側面に沿って配置され、奥側面に取り付けられる取付面部132が設けられ、表面側引手部材120には、取付面部132を戸当たり面2側から覆うスライド面部122が設けられているので、表面側引手部材120と裏面側引手部材130の前後方向の位置を引戸の板厚に合わせて調整したとしても、戸当たり面2側から見て隙間Q2が見えないので、調整機能付き引手110の戸当たり面2側から見た見栄えを良好に保つことができる。
【0081】
また、スライド面部122は、取付面部132を切欠き2aに取り付けるための皿ねじも戸当たり面2側から覆い隠すようになる。そのため、皿ねじの緩みなどを防止することができる。また、利用者から皿ねじが見えない洗練された意匠が得られる。
【0082】
以上、第2実施形態に係る調整機能付き引手110について述べたが、本発明は既述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術思想に基づいて各種の変形および変更が可能である。
例えば、本第2実施形態における表面側引手部材120と裏面側引手部材130をそれぞれの左右を逆にして取り付けるようにしてもよい。このようにすると、引戸1の戸当たり面側から見た戸当たり面側開口は、第2実施形態のような表面側に構成される開口F2ではなく、裏面側に構成される開口B2となる。