【解決手段】電動弁10は、主弁ポート1dを開閉する主弁体2と、主弁体2を閉方向に付勢する主弁ばね27と、副弁ポート24の開度を変更する副弁体3と、副弁体3を閉方向に付勢する副弁ばね34と、を備える。小流量制御域において、副弁体3は、副弁ポート24に最も近づく第一位置と、副弁ポート24から離れる開方向に移動されて主弁体2に係合する第二位置と、の間を移動し、第一位置において、副弁体3が副弁ポート24に着座せず、副弁ばね34の付勢力が主弁体2に作用しない。
弁室の主弁ポートを開閉する主弁体と、前記主弁体を閉方向に付勢する主弁ばねと、前記主弁体に設けられた副弁ポートの開度を変更する副弁体と、前記副弁体を閉方向に付勢する副弁ばねと、前記副弁体を軸線方向に進退駆動する駆動部と、を備え、前記副弁体が前記副弁ポートの開度を変更する小流量制御域と、前記主弁体が前記主弁ポートを開閉する大流量制御域と、の二段の流量制御域を有する電動弁であって、
前記小流量制御域において、前記副弁体は、前記副弁ポートに最も近づく第一位置と、前記駆動部の駆動力により前記副弁ポートから離れる開方向に移動されて前記主弁体に係合する第二位置と、の間を移動し、
前記大流量制御域において、前記主弁体は、前記主弁ばねにより閉方向に付勢されることで前記主弁ポートに着座する閉位置と、前記駆動部の駆動力により前記第二位置に移動した前記副弁体と一体的に移動して前記主弁ポートを開放する開位置と、の間を移動し、
前記第一位置において、前記副弁体が前記副弁ポートに着座せず、前記副弁ばねの付勢力が前記主弁体に作用しないことを特徴とする電動弁。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載されたような従来の電動弁では、主弁ポート及び副弁ポートの両方が閉じた全閉状態において、主弁体を付勢する主弁ばねと、副弁体を付勢する副弁ばねと、の両方のばねの付勢力が主弁体に作用し、このような複合的な付勢力によって主弁体が主弁ポートを閉じることになる。このため、従来の電動弁では、主弁ばね及び副弁ばねの2つのばねそれぞれの曲がりや傾き等の違いにより、複合的な付勢力の作用方向が軸線に対して傾斜した場合には、主弁体が主弁ポートに対して適切に着座せず、主弁の弁漏れが生じやすくなったり、弁漏れ量のばらつきが大きくなったりなどの不具合が生じる。このような主弁の弁漏れが生じてしまうと、副弁ポートを開いた小流量制御時の流量への影響が大きくなり、設定した小流量まで流量を絞れなくなるなど、小流量制御における流量が厳密に制御できなくなってしまう。
【0006】
本発明の目的は、二段の流量制御域を有する電動弁において、小流量制御域での流量を適切に制御することができる電動弁及び冷凍サイクルシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の電動弁は、弁室の主弁ポートを開閉する主弁体と、前記主弁体を閉方向に付勢する主弁ばねと、前記主弁体に設けられた副弁ポートの開度を変更する副弁体と、前記副弁体を閉方向に付勢する副弁ばねと、前記副弁体を軸線方向に進退駆動する駆動部と、を備え、前記副弁体が前記副弁ポートの開度を変更する小流量制御域と、前記主弁体が前記主弁ポートを開閉する大流量制御域と、の二段の流量制御域を有する電動弁であって、前記小流量制御域において、前記副弁体は、前記副弁ポートに最も近づく第一位置と、前記駆動部の駆動力により前記副弁ポートから離れる開方向に移動されて前記主弁体に係合する第二位置と、の間を移動し、前記大流量制御域において、前記主弁体は、前記主弁ばねにより閉方向に付勢されることで前記主弁ポートに着座する閉位置と、前記駆動部の駆動力により前記第二位置に移動した前記副弁体と一体的に移動して前記主弁ポートを開放する開位置と、の間を移動し、前記第一位置において、前記副弁体が前記副弁ポートに着座せず、前記副弁ばねの付勢力が前記主弁体に作用しないことを特徴とする。
【0008】
このような本発明によれば、第一位置において、副弁体は副弁ポートに着座せず、副弁ばねの付勢力が主弁体に作用しないように構成されていることで、閉位置にて主弁ポートに着座した主弁体に対し、主弁ばねの付勢力は作用するものの副弁ばねの付勢力が作用しないようにできる。従って、主弁ばね及び副弁ばねによる複合的な付勢力が主弁体に作用せず、主弁ばねのみの付勢力によって主弁体を主弁ポートに対して適切に着座させることができ、主弁の弁漏れが生じにくくできる。主弁の弁漏れが生じにくくなることで、副弁ポートを開いた小流量制御時の流量への影響を小さくして、小流量制御域での流量を適切に制御することができる。
【0009】
この際、前記第一位置において、前記副弁体と前記副弁ポートとの間に流路が形成されることが好ましい。
【0010】
この構成によれば、副弁体と副弁ポートとの間に流路が形成されることで、この流路によって常に流量が確保される弁開タイプの電動弁を構成することができる。このような弁開タイプの電動弁とすることで、家庭用エアコン等の除湿機能を有した空気調和機に好適に利用することができる。
【0011】
さらに、前記流路は、前記副弁体の外周面と前記副弁ポートの内周面との隙間によって形成されることが好ましい。
【0012】
さらに、前記副弁体は円柱部を有し、前記円柱部の外周面と前記副弁ポートの内周面との隙間によって前記流路が形成されることが好ましい。
【0013】
この構成によれば、副弁体の外周面(特に、円柱部の外周面)と副弁ポートの内周面との隙間によって流路が形成されることで、この流路の開口面積を厳密に規定することができ、第一位置に副弁体があるときの小流量を適切に確保ことができる。
【0014】
また、前記駆動部は、マグネットロータを有した電動モータと、前記マグネットロータの回転を規制するストッパ機構と、を備え、前記副弁体の前記第一位置は、前記ストッパ機構により規制される前記マグネットロータの最下端位置によって規定されていることが好ましい。
【0015】
この構成によれば、副弁体の第一位置がマグネットロータの最下端位置によって規定され、この最下端位置にてマグネットロータの回転がストッパ機構によって規制されることで、副弁体を第一位置にて確実に停止させることができ、主弁体に余計な荷重が作用することを防止することができる。
【0016】
本発明の冷凍サイクルシステムは、圧縮機と、凝縮器と、膨張弁と、蒸発器と、を含む冷凍サイクルシステムであって、前記いずれかの電動弁が、前記膨張弁として用いられていることを特徴とする。
【0017】
このような冷凍サイクルシステムによれば、前述の電動弁による効果と同様に、主弁の弁漏れが生じにくくできることから、副弁ポートを開いた小流量制御時の流量への影響を小さくして、膨張弁として電動弁を用いた冷凍サイクルにおける小流量制御域での流量を適切に制御することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の電動弁及び冷凍サイクルシステムによれば、二段の流量制御域を有する電動弁において、小流量制御域での流量を適切に制御することができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の第1実施形態に係る電動弁を
図1〜4に基づいて説明する。
図1、2に示すように、第1実施形態の電動弁10(10A)は、弁ハウジング1と、主弁体2と、副弁体3と、駆動部4と、を備えている。なお、以下の説明における「上下」の概念は
図1、2の図面における上下に対応する。
【0021】
弁ハウジング1は、筒状の弁本体1aと、弁本体1aに固定される軸受部材1bと、を有している。弁本体1aは、その内部に円筒状の弁室1Aが形成され、弁本体1aには、側面側から弁室1Aに連通して冷媒が流入される一次継手管11が取り付けられ、底面側から弁室1Aに連通して冷媒が流出される二次継手管12が取り付けられている。さらに、弁本体1aには、弁室1Aと二次継手管12とを連通する位置に主弁座1cが形成されるとともに、この主弁座1cから二次継手管12側に断面形状が円形の主弁ポート1dが形成されている。弁本体1aの上部には略円筒状の嵌合部1eが設けられ、この嵌合部1eに軸受部材1bが嵌合され、嵌合部1eの上端部を内側に加締めることにより、弁本体1aと軸受部材1bとが一体に固着されている。この弁ハウジング1(弁本体1a及び軸受部材1b)は黄銅製(真鍮製)である。
【0022】
弁本体1aの内部は円筒状の主弁ガイド部1Bとされ、この主弁ガイド部1B内に主弁体2が配設されている。主弁体2は、主弁座1cに対して着座及び離座する主弁部21を有する弁本体部2Aと、ばね受け部2Bと、副弁座2Cと、を有している。弁本体部2Aの上部は略円筒状の嵌合孔を構成する保持部22とされ、この保持部22内にばね受け部2Bが嵌合され、保持部22の上端部22aを内側に加締めることにより、弁本体部2Aとばね受け部2Bとが一体に固着されている。この主弁体2(弁本体部2A、ばね受け部2B及び副弁座2C)は黄銅製(真鍮製)である。
【0023】
弁本体部2Aの内部には副弁室23が形成されるとともに、軸線Lに沿って副弁座2Cの内部を貫通する副弁ポート24が形成されている。副弁座2Cは、弁本体部2Aの下端側の内部に固定されている。また、弁本体部2Aは略円柱状であり、その側面2箇所には導通孔25が形成され、副弁室23は導通孔25により主弁ガイド部1B内の弁室1Aに導通されている。ばね受け部2Bには、軸線Lに沿った挿通孔26が形成され、この挿通孔26内には副弁体3が挿通されている。ばね受け部2Bの上面と軸受部材1bの下面との間には、主弁ばね27が配設されており、この主弁ばね27により主弁体2は主弁座1c方向(閉方向)に付勢されている。
【0024】
副弁体3は、円柱棒状の副弁軸31と、Eリング32と、スラストワッシャ33と、副弁ばね34と、で構成されている。この副弁体3の副弁軸31及びEリング32はステンレス製であり、スラストワッシャ33はりん青銅製である。副弁軸31の下端近傍にはEリング32を嵌め込むための溝が形成され、副弁軸31の上端側には副弁ばね34に挿通される小径部31aが形成されている。副弁軸31は、軸受部材1bのガイド孔13及び主弁体2の挿通孔26に挿通され、軸線Lに沿った上下方向に進退自在かつ軸線L回りに回転自在に支持されている。スラストワッシャ33は、Eリング32の上面及びばね受け部2Bの下面に当接可能になっており、その当接面同士の摩擦力が極めて小さくなるようになっている。副弁ばね34は、駆動部4のロータ支持板44aと副弁軸31の小径部31aの段差部との間に配設されており、この副弁ばね34により副弁体3はマグネットロータ44に対して副弁座2C方向(閉方向)に付勢されている。
【0025】
弁ハウジング1の上端には固定部材14が溶接等によって固定されており、この固定部材14には、ケース15が溶接等によって気密に固定されている。駆動部4は、電動モータとしてのステッピングモータ41と、ステッピングモータ41の回転により副弁体3を進退させるねじ送り機構42と、ステッピングモータ41の回転を規制するストッパ機構43と、を備える。
【0026】
駆動部4のステッピングモータ41は、外周部が多極に着磁されたマグネットロータ44と、ケース15の外周に配設されたステータコイル45と、を備えている。ステッピングモータ41は、ステータコイル45にパルス信号が与えられることにより、そのパルス数に応じてマグネットロータ44が回転される。副弁軸31の上端部には当接板31bが溶接等により固定され、この当接板31bがロータ支持板44aの上面に当接するようになっている。また、副弁軸31の小径部31aには円筒状のスリーブ31cが設けられ、このスリーブ31cを介して副弁ばね34の付勢力がロータ支持板44aと副弁軸31との間に作用し、これによりスリーブ31cと当接板31bとでロータ支持板44aが挟持されるようになっている。
【0027】
ねじ送り機構42は、マグネットロータ44の内周側にてロータ支持板44aに固定された円筒状の雌ねじ部材47と、雌ねじ部材47の内側に螺合して設けられて軸受部材1bの円筒凹部1baに固定された雄ねじ部材46と、を備えている。マグネットロータ44が回転すると、雌ねじ部材47が雄ねじ部材46の周りを回りつつ、ねじピッチに応じて軸線L方向に雌ねじ部材47が移動することで、マグネットロータ44が軸線L方向に進退移動する。ここで、マグネットロータ44は、その正回転に伴って下降し、この下降に伴って副弁体3も下降する。一方、マグネットロータ44は、その逆回転に伴って上昇し、この上昇に伴ってロータ支持板44aに当接板31bが押されることで副弁体3も上昇する。
【0028】
以上のように、副弁体3が副弁ばね34によって下方に付勢されることで、マグネットロータ44に対し、スリーブ31cと当接板31bとの挟持部を支点として副弁体3が首振り自在に支持されている。そして、マグネットロータ44の回転及びねじ送り機構42によって副弁体3が上昇又は下降される際に、副弁体3と副弁ポート24やガイド孔13、挿通孔26とが擦れた場合でも、副弁ばね34による首振り機構により副弁体3を逃がすことで、擦れた箇所に摩擦力が作用しにくくできる。従って、駆動部4の駆動トルクを低減させるとともに、副弁体3や副弁ポート24等の摩耗防止を図ることができる。
【0029】
ストッパ機構43は、ケース15の天井部から垂下された円柱棒状のガイド48と、ガイド48の外周に固定されたガイド線体49と、ガイド線体49にガイドされて回転かつ上下動可能な可動スライダ50と、を備えている。可動スライダ50には、径方向外側に突出した爪部51が設けられ、マグネットロータ44には、上方に延びて爪部51と当接する延長部44bが設けられ、マグネットロータ44が回転すると、延長部44bが爪部51を押すことで、可動スライダ50がガイド線体49に倣って回転かつ上下するようになっている。
【0030】
ガイド線体49には、マグネットロータ44の最上端位置を規定する上端ストッパ49aと、マグネットロータ44の最下端位置を規定する下端ストッパ49bと、が形成されている。マグネットロータ44の正回転に伴って下降した可動スライダ50の爪部51の端部とは反対側の端部が下端ストッパ49bに当接すると、この当接した位置で可動スライダ50が回転不能となり、これによりマグネットロータ44の回転が規制され、副弁体3の下降も停止される。一方、マグネットロータ44の逆回転に伴って上昇した可動スライダ50の爪部51が上端ストッパ49aに当接すると、この当接した位置で可動スライダ50が回転不能となり、これによりマグネットロータ44の回転が規制され、副弁体3の上昇も停止される。
【0031】
次に、
図3、4を参照して電動弁10Aの詳細構造、その動作について説明する。
図3(A),(B)は、それぞれ電動弁10Aの一部を拡大して示す縦断面図であり、副弁体3の先端部及び副弁座2Cを拡大して示す縦断面図である。
図4(A),(B)は、電動弁10Aにおける弁開度と流量の関係を示すグラフである。
【0032】
図3に示すように、副弁体3の副弁軸31先端は、副弁軸31の端部分よりも小径とされた円柱状の円柱部35と、この円柱部35よりも先端に向かって徐々に径が小さくなる円錐台状の円錐部36と、を有して形成されている。円柱部35の直径は、副弁座2Cの副弁ポート24の内径よりも小さく形成され、円柱部35の外周面35aと副弁ポート24の内周面24aとの隙間によって冷媒が通過する流路Rが形成されている。
図3(A)は、マグネットロータ44の最下端位置に対応して副弁ポート24に最も近づいた位置(第一位置)にある副弁体3を示している。
図3(B)は、マグネットロータ44の回転により第一位置から副弁体3が上昇し、スラストワッシャ33がばね受け部2Bの下面に当接した位置、すなわち主弁体2に係合した位置(第二位置)にある副弁体3を示している。
【0033】
以上の電動弁10Aは、以下のように動作する。まず、
図1及び
図3(A)の状態では、主弁体2の主弁部21が主弁座1cに着座し、主弁ポート1dが閉じられた弁閉状態である。一方、副弁ポート24に最も近づいた第一位置にある副弁体3は、副弁座2Cに着座せず、副弁体3の円柱部35の外周面35aと副弁ポート24の内周面24aとの隙間によって流路Rが形成されている。従って、一次継手管11から弁室1Aに流入し、さらに導通孔25から副弁室23に流入した冷媒は、流路Rから副弁ポート24を通って主弁部21の下方に流れ、主弁ポート1dから二次継手管12に向かって流出する。すなわち、
図4に示すように、弁開度がゼロであっても微少な流量が生じることとなる。
【0034】
次に、駆動部4のステッピングモータ41を駆動してマグネットロータ44を逆回転させて副弁体3を上昇させることで、
図3(B)に示すように、副弁体3の円柱部35が副弁ポート24から抜け出し、副弁体3の円錐部36と副弁ポート24の内周面24aとの隙間によって流路Rが形成される。ここで、円錐部36は徐々に直径が小さくなることから副弁ポート24の内周面24aとの隙間が大きくなり、流路Rが拡大されることとなり、
図4に示すように、流量が徐々に増加する。この際、主弁体2の主弁部21が主弁座1cに着座したままであるため、副弁体3が主弁体2に係合する第二位置までは、流量の増加は微少である。このように副弁体3を第一位置と第二位置との間で移動させて開度を変更する制御域が小流量制御域であって、この小流量制御域における副弁体3の開度(ステッピングモータ41の回転量=弁リフト量)に対する流量の変化は極微少である。
【0035】
次に、第二位置まで上昇させて主弁体2に係合した副弁体3をさらに上昇させると、
図2に示すように、副弁体3によって主弁体2が引き上げられ、主弁部21が主弁座1cから離間して弁開する。このように主弁体2を着座位置(閉位置)から弁開位置(開位置)に向かって上昇させる制御域が大流量制御域であって、この大流量制御域における主弁体2の開度(ステッピングモータ41の回転量=弁リフト量)に対する流量の変化は大きなものとなる。そして、
図2に示す弁開位置まで主弁体2を上昇させた全開状態において、流量は最大となる。ここで、全開状態における流量としては、一次継手管11及び二次継手管12の開口面積に対し、主弁部21と主弁座1cの隙間の開口面積が同等以上となり、主弁部21や主弁ポート1dによって流量が絞られない状態、すなわち電動弁10Aが単なる流路として機能するような開度に設定されている。
【0036】
ここで、小流量制御域における副弁体3のリフト量は、ねじ送り機構42の雌ねじ部材47と雄ねじ部材46とのねじピッチに対し、ねじ1ピッチ量(すなわち、ステッピングモータ41におけるマグネットロータ44の1回転=80パルス)以下で、第一位置から第二位置まで到達するように設定されていることが好ましい。ここで、ねじ1ピッチ量は、例えば、0.5mmであることが好ましい。このような副弁体3のリフト量に設定することで、全制御範囲(小流量制御域+大流量制御域)に対して、副弁制御範囲(小流量制御域)の割合を一定以下とすることができ、主弁部21開放時の全開流量を確保することができる。ここで、副弁制御範囲(副弁体3のリフト量)は、全制御範囲(全リフト量)の20%以下であることが好ましい。
【0037】
すなわち、副弁体3のリフト量がねじ1ピッチ量を超える場合、
図4(A)に囲み部Aで示すように、全開位置において、主弁部21が主弁座1cから完全に抜けきらず、設定した全開流量が得られない可能性がある。これに対して、副弁体3のリフト量がねじ1ピッチ量以下に設定されていれば、
図4(B)に囲み部Bで示すように、全開位置において、主弁部21が主弁座1cから完全に抜けきり、所定の全開流量を得ることができるとともに、部品ごとの製作誤差や組立誤差等によって弁開の開始点にばらつきがあったとしても、主弁部21が全開することで全開流量のばらつきを抑制することができる。
【0038】
以上の本実施形態によれば、全閉状態の第一位置において、副弁体3は副弁ポート24に着座せず、副弁ばね34の付勢力が主弁体2に作用しないように構成されていることで、主弁ポート1dに着座した主弁体2に対し、主弁ばね27の付勢力は作用するものの副弁ばね34の付勢力が作用しないようにできる。従って、主弁ばね27及び副弁ばね34による複合的な付勢力が主弁体2に作用せず、主弁ばね27のみの付勢力によって主弁体2を主弁ポート1dに対して適切に着座させることができ、主弁の弁漏れが生じにくくできる。主弁の弁漏れが生じにくくなることで、副弁ポート24を開いた小流量制御時の流量への影響を小さくして、小流量制御域での流量を適切に制御することができる。この際、副弁ばね34の付勢力は、副弁ポート24に加わらないが、前述の通り、副弁ばね34は、弁駆動トルクの低減や、副弁体3や副弁ポート24等の摩耗防止に役立っている。
【0039】
また、第一位置にある副弁体3の円柱部35の外周面35aと副弁ポート24の内周面24aとの隙間によって流路Rが形成されることで、この流路Rによって常に流量が確保される弁開タイプの電動弁10を構成することができる。このような弁開タイプの電動弁10とすることで、家庭用エアコン等の除湿機能を有した空気調和機に好適に利用することができる。さらに、円柱部35の外周面35aと副弁ポート24の内周面24aとの隙間によって流路Rが形成されることで、この流路Rの開口面積を厳密に規定することができ、第一位置に副弁体3があるときの小流量を適切に確保ことができる。
【0040】
また、副弁体3の第一位置がマグネットロータ44の最下端位置によって規定され、この最下端位置にてマグネットロータ44の回転がストッパ機構43によって規制されることで、副弁体3を第一位置にて確実に停止させることができ、主弁体2に余計な荷重が作用することを防止することができる。
【0041】
次に、本発明の第2実施形態に係る電動弁を
図5〜7に基づいて説明する。
図5、6に示すように、第2実施形態の電動弁10(10B)は、第1実施形態の電動弁10Aと同様に、弁ハウジング1と、主弁体2と、副弁体3と、駆動部4と、を備えている。以下、第1実施形態との相違点について詳しく説明し、第1実施形態と同一又は同様の構成については説明を省略又は簡略する。
【0042】
弁ハウジング1は、筒状の弁本体1aと、弁本体1aの内部に固定される支持部材16と、を有している。支持部材16は、金属製の固定部16aによって弁本体1aに溶接固定されている。支持部材16は、樹脂成形品であって、主弁座1c側に設けられて円筒状の主弁ガイド部16bと、駆動部4側に設けられて内周面に雌ねじが形成された雌ねじ部16cと、を有して形成されている。
【0043】
主弁体2は、弁本体部2Aと、ばね受け部2Bと、副弁座2Cと、を有している。弁本体部2Aの内部には副弁室23が形成されるとともに、軸線Lに沿って副弁座2Cの内部を貫通する副弁ポート24が形成されている。弁本体部2Aの側面2箇所には導通孔25が形成され、副弁室23は導通孔25により弁室1Aに導通されている。ばね受け部2Bは、円環状に形成され、その内部にロータ軸52が挿通されている。ばね受け部2Bの上面と支持部材16の天井面との間には、主弁ばね27が配設されており、この主弁ばね27により主弁体2は主弁座1c方向(閉方向)に付勢されている。
【0044】
副弁体3は、円筒状の副弁筒体37と、副弁筒体37から下方に突出する副弁部38と、副弁筒体37の上側に設けられたスラストワッシャ33と、副弁筒体37の内部に設けられた副弁ばね34と、で構成されている。副弁筒体37は、主弁体2の挿通孔26に挿通され、軸線Lに沿った上下方向に進退自在かつ軸線L回りに回転自在に支持されている。スラストワッシャ33は、副弁筒体37の上面及びばね受け部2Bの下面に当接可能になっており、その当接面同士の摩擦力が極めて小さくなるようになっている。副弁筒体37の上部には挿通孔が設けられてロータ軸52が挿通され、ロータ軸52の下端部に形成されたフランジ部52cと副弁筒体37の底面部に接合された副弁部38の上端部38aとの間に副弁ばね34が配設されている。この副弁ばね34により副弁体3はロータ軸52(マグネットロータ44)に対して副弁座2C方向(閉方向)に付勢されている。
【0045】
以上のように、副弁体3が副弁ばね34によって下方に付勢されることで、マグネットロータ44及びロータ軸52に対し、ロータ軸52のフランジ部52cを支点として副弁筒体37及び副弁体3が首振り自在に支持されている。そして、マグネットロータ44の回転及びねじ送り機構42によって副弁体3が上昇又は下降される際に、副弁体3と副弁ポート24や挿通孔26とが擦れた場合でも、副弁ばね34による首振り機構により副弁体3を逃がすことで、擦れた箇所に摩擦力が作用しにくくできる。従って、駆動部4の駆動トルクを低減させるとともに、副弁体3や副弁ポート24等の摩耗防止を図ることができる。
【0046】
駆動部4は、電動モータとしてのステッピングモータ41と、ステッピングモータ41の回転により副弁体3を進退させるねじ送り機構42と、ステッピングモータ41の回転を規制するストッパ機構43と、を備える。ステッピングモータ41は、マグネットロータ44と、ステータコイル45と、マグネットロータ44に固定されたロータ軸52と、を備えている。ロータ軸52は、固定部材52aを介してマグネットロータ44に固定されるとともに、軸線Lに沿って延び、その上端部はストッパ機構43のガイド48に挿入されている。ロータ軸52の中間部には雄ねじ部52bが一体に形成され、この雄ねじ部52bが支持部材16の雌ねじ部16cに螺合し、これによってねじ送り機構42が構成されている。
【0047】
次に、
図7を参照して電動弁10Bの詳細構造について説明する。
図7(A),(B)は、それぞれ電動弁10Bの一部を拡大して示す縦断面図であり、主弁体2及び副弁体3の先端部と主弁座1c及び副弁座2Cを拡大して示す縦断面図である。
【0048】
図7に示すように、副弁体3の副弁部38先端は、円柱状の円柱部35と、円錐台状の円錐部36と、を有して形成され、円柱部35の直径は、副弁座2Cの副弁ポート24の内径よりも小さく形成され、円柱部35の外周面35aと副弁ポート24の内周面24aとの隙間によって冷媒が通過する流路Rが形成されている。
図7(A)は、マグネットロータ44の最下端位置に対応して副弁ポート24に最も近づいた位置(第一位置)にある副弁体3を示している。
図7(B)は、マグネットロータ44の回転により第一位置から副弁体3が上昇し、スラストワッシャ33がばね受け部2Bの下面に当接した位置、すなわち主弁体2に係合した位置(第二位置)にある副弁体3を示している。
【0049】
以上の本実施形態によれば、前記第1実施形態と同様の作用効果を奏することができる。すなわち、全閉状態の第一位置において、副弁ばね34の付勢力が主弁体2に作用しないことで、主弁ポート1dに着座した主弁体2に対し、主弁ばね27及び副弁ばね34による複合的な付勢力が作用せず、主弁ばね27のみの付勢力によって主弁体2を主弁ポート1dに対して適切に着座させることができ、主弁の弁漏れが生じにくくできる。主弁の弁漏れが生じにくくなることで、副弁ポート24を開いた小流量制御時の流量への影響を小さくして、小流量制御域での流量を適切に制御することができる。また、副弁ばね34の付勢力は、副弁ポート24に加わらないが、前述の通り、副弁ばね34は、弁駆動トルクの低減や、副弁体3や副弁ポート24等の摩耗防止に役立っている。
【0050】
次に、
図8に基づいて本発明の冷凍サイクルシステムについて説明する。冷凍サイクルシステム90は、例えば、家庭用エアコン等の空気調和機に用いられる。前記第1、2実施形態の電動弁10は、空気調和機の第1室内側熱交換器91(除湿時冷却器として作動)と第2室内側熱交換器92(除湿時加熱器として作動)との間に設けられており、圧縮機93、四方弁94、室外側熱交換器95および電子膨張弁96とともに、ヒ−トポンプ式冷凍サイクルを構成している。第1室内側熱交換器91と第2室内側熱交換器92及び電動弁10は室内に設置され、圧縮機93、四方弁94、室外側熱交換器95および電子膨張弁96は室外に設置されていて冷暖房装置を構成している。
【0051】
なお、本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的が達成できる他の構成等を含み、以下に示すような変形等も本発明に含まれる。例えば、前記実施形態では、家庭用エアコン等の空気調和機に用いられる電動弁10を例示したが、本発明の電動弁は、家庭用エアコンに限らず、業務用エアコンであってもよいし、空気調和機に限らず、各種の冷凍機等にも適用可能である。
【0052】
また、前記実施形態では、ねじ送り機構42が雌ねじ部材47と雄ねじ部材46とで構成される(第1実施形態)か、ロータ軸52の雄ねじ部52bと支持部材16の雌ねじ部16cとで構成され(第2実施形態)ていたが、副弁体3を進退駆動するねじ送り機構の構成は前記実施形態のものに限らず、任意の構成が採用可能である。さらに、副弁体を進退駆動する機構としては、ねじ送り機構に限らず、適宜な機構が適用可能である。
【0053】
また、前記実施形態では、ストッパ機構43がケース15の天井部に設けられたガイド48、ガイド線体49及び可動スライダ50によって構成されていたが、ストッパ機構としては、マグネットロータ44の回転を規制できるものであればよく、その配設位置や構造は特に限定されない。例えば、マグネットロータの内側や下側にストッパ機構が設けられていてもよい。また、前記実施形態では、一次継手管11から冷媒が流入し、二次継手管12から流出する旨を記載しているが、この一方向流れに限定されるものではなく、逆流しとして、二次継手管12から冷媒が流入し、一次継手管11から流出する場合にも適用可能であり、特に全開状態での逆流しを行うことがある。
【0054】
以上、本発明の実施の形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこれらの実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。