【解決手段】電動弁10は、主弁体2と、副弁体3と、駆動部4と、を備え、副弁体3が副弁ポート22の開度を変更する小流量制御域と、主弁体2が主弁ポート1cを開閉する大流量制御域と、の二段の流量制御域を有する。副弁体3は、その外周面に設けられて副弁ポート22の開度を変更する副弁部31と、副弁部31よりも先端側に設けられるスラストワッシャ34と、を有する。主弁体2及び副弁体3の少なくとも一方には、被係止部23とスラストワッシャ34との接触面を迂回して副弁体3の先端部に至る迂回流路R’としての貫通流路35が形成されている。
弁室の主弁ポートを開閉する主弁体と、前記主弁体に設けられた副弁ポートの開度を可変にする副弁体と、前記副弁体を軸線方向に進退駆動する駆動部と、を備え、前記副弁体が前記副弁ポートの開度を変更する小流量制御域と、前記主弁体が前記主弁ポートを開閉する大流量制御域と、の二段の流量制御域を有する電動弁であって、
前記小流量制御域において、前記副弁体は、前記副弁ポートに最も近接した第一位置と、前記駆動部の駆動力により前記副弁ポートを開く開方向に移動されて前記主弁体に係合する第二位置と、の間を移動し、
前記大流量制御域において、前記主弁体は、前記主弁ポートに着座する閉位置と、前記駆動部の駆動力により前記第二位置に移動した前記副弁体と一体的に移動して前記主弁ポートを開放する開位置と、の間を移動し、
前記主弁体は、全体筒状に形成された内周面に前記副弁ポートと、前記副弁ポートよりも前記主弁ポート側の被係止部と、が設けられ、
前記副弁体は、全体柱状に形成されて前記主弁体の内部に配設されるとともに、当該副弁体の外周面に設けられて前記副弁ポートの開度を変更する副弁部と、前記副弁部よりも先端側に設けられて前記被係止部を係止可能な係止部と、を有し、
前記主弁体及び前記副弁体の少なくとも一方には、前記被係止部と前記係止部との接触面を迂回して前記副弁体の先端部に至る迂回流路が形成されていることを特徴とする電動弁。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載されたような従来の電動弁では、副弁ポートが軸線に沿った長い筒状に形成され、この副弁ポートに長尺棒状の副弁体が遊挿されており、小流量制御時には、副弁ポートの内周面と副弁体の外周面との隙間が冷媒の流路となる構成である。このような細長い流路を流体が通過することになるため、従来の電動弁では、流路に異物が流れ込んで副弁ポートと副弁体の間に噛み込み、副弁体の動作不良が生じて小流量制御時の流量制御に不具合をきたす可能性がある。
【0006】
本発明の目的は、二段の流量制御域を有する電動弁において、小流量制御域での流量を適切に制御することができる電動弁を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の電動弁は、弁室の主弁ポートを開閉する主弁体と、前記主弁体に設けられた副弁ポートの開度を可変にする副弁体と、前記副弁体を軸線方向に進退駆動する駆動部と、を備え、前記副弁体が前記副弁ポートの開度を変更する小流量制御域と、前記主弁体が前記主弁ポートを開閉する大流量制御域と、の二段の流量制御域を有する電動弁であって、前記小流量制御域において、前記副弁体は、前記副弁ポートに最も近接した第一位置と、前記駆動部の駆動力により前記副弁ポートを開く開方向に移動されて前記主弁体に係合する第二位置と、の間を移動し、前記大流量制御域において、前記主弁体は、前記主弁ポートに着座する閉位置と、前記駆動部の駆動力により前記第二位置に移動した前記副弁体と一体的に移動して前記主弁ポートを開放する開位置と、の間を移動し、前記主弁体は、全体筒状に形成された内周面に前記副弁ポートと、前記副弁ポートよりも前記主弁ポート側の被係止部と、が設けられ、前記副弁体は、全体柱状に形成されて前記主弁体の内部に配設されるとともに、当該副弁体の外周面に設けられて前記副弁ポートの開度を変更する副弁部と、前記副弁部よりも先端側に設けられて前記被係止部を係止可能な係止部と、を有し、前記主弁体及び前記副弁体の少なくとも一方には、前記被係止部と前記係止部との接触面を迂回して前記副弁体の先端部に至る迂回流路が形成されていることを特徴とする。
【0008】
このような本発明によれば、主弁体の内部に配設された副弁体が副弁部と係止部とを有し、主弁体及び副弁体の少なくとも一方に被係止部と係止部との接触面を迂回して副弁体の先端部に至る迂回流路が形成されていることで、小流量制御時の流体が迂回流路を通ることになり、異物の噛み込みを防止することができる。従って、副弁体の動作不良が生じにくくなり、小流量制御域における流量を適切に制御することができる。また、迂回流路を設けたことで、副弁体の係止部と主弁体の内周面との隙間を流体が通らないことから、この隙間を小さく設定することが可能になり、副弁体の係止部と主弁体の内周面とが互いに摺動して案内する摺動案内部として機能させることができる。これにより、副弁体が進退移動する際には主弁体の内周面に案内され、主弁体が進退移動する際には副弁体の係止部に案内されることで、主弁体及び副弁体の振れを抑制することができ、流量制御の精度を向上させることができる。
【0009】
この際、前記迂回流路は、前記副弁部と前記係止部との間の側面から前記副弁体の先端部まで貫通する貫通流路、前記副弁体の前記係止部を含む外周面を切り欠いた副弁切欠き部、及び、前記主弁体の内周面を切り欠いた主弁切欠き部、の少なくとも1つで構成されることが好ましい。
【0010】
迂回流路を貫通流路で構成すれば、主弁体の内周面と副弁体の外周面とが互いに摺接する摺接面を全周に連続させることができ、摺動抵抗が一定になり、主弁体及び副弁体の進退移動をより安定させることができる。また、迂回流路を副弁切欠き部や主弁切欠き部で構成すれば、貫通流路を形成する場合と比較して、加工が簡便になり、製作コストを抑制することができる。
【0011】
この際、前記駆動部は、前記副弁体に一体に連結された雄ねじ部と、前記雄ねじ部に螺合して案内する雌ねじ部と、を有したねじ送り機構を備え、前記駆動部の駆動により前記雄ねじ部が前記雌ねじ部に回転案内されることで、前記副弁体が軸線方向に沿って進退駆動されることが好ましい。
【0012】
この構成によれば、副弁体に一体に連結された雄ねじ部が雌ねじ部に案内されて副弁体が進退駆動されることで、駆動部により副弁体を直接的に駆動することができ、副弁体のがたつきを抑制して小流量制御域における流量制御の精度を向上させることができる。
【0013】
さらに、前記係止部、前記副弁部及び前記雄ねじ部は、この順に径が小さくなるように形成されていることが好ましい。
【0014】
この構成によれば、副弁体の先端部に係止部が設けられ、この係止部が副弁部及び雄ねじ部よりも径大とされ、副弁部が雄ねじ部よりも径大とされていることで、全体筒状の主弁体に対して雄ねじ部の側から差し込むようにして副弁体を組み付けることができ、電動弁の製造効率を向上させることができる。
【0015】
また、前記弁室を構成する弁本体と、前記弁本体に固定される支持部材と、前記主弁体を閉方向に付勢する主弁ばねと、をさらに備え、前記支持部材は、前記雌ねじ部と、前記主弁体との間に圧縮状態で前記主弁ばねを保持するばね受け部と、前記主弁体を軸線方向に進退案内する主弁ガイド部と、を有して樹脂成形部材で構成されていることが好ましい。
【0016】
この構成によれば、弁本体に固定される支持部材が雌ねじ部とばね受け部と主弁ガイド部とを有し、主弁ガイド部により主弁体を軸線方向に進退案内することで、主弁体の振れを抑制することができ、主弁ポートに確実に着座させることにより弁漏れを防止することができる。従って、副弁ポートを開いた小流量制御時の流量への影響を小さくして、小流量制御域での流量を適切に制御することができる。また、支持部材が樹脂成形部材で構成されていることで、支持部材や主弁体の摩耗を抑制することができ、電動弁の耐久性を向上させることができる。
【0017】
本発明の冷凍サイクルシステムは、圧縮機と、凝縮器と、膨張弁と、蒸発器と、を含む冷凍サイクルシステムであって、前記いずれかの電動弁が、前記膨張弁として用いられていることを特徴とする。
【0018】
このような冷凍サイクルシステムによれば、前述の電動弁による効果と同様に、副弁ポートの異物の噛み込みを防止することにより副弁体の動作不良が生じにくくなり、電動弁を膨張弁として用いた冷凍サイクルシステムにおける小流量制御時の流量を適切に制御することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の電動弁及び冷凍サイクルシステムによれば、二段の流量制御域を有する電動弁において、小流量制御域での流量を適切に制御することができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の実施形態に係る電動弁を
図1〜4に基づいて説明する。
図1、2に示すように、本実施形態の電動弁10は、弁ハウジング1と、主弁体2と、副弁体3と、駆動部4と、を備えている。なお、以下の説明における「上下」の概念は
図1、2の図面における上下に対応する。
【0022】
弁ハウジング1は、筒状の弁本体1aを有し、この弁本体1aは、黄銅製(真鍮製)であり、その内部に円筒状の弁室1Aが形成されている。弁本体1aには、側面側から弁室1Aに連通して冷媒が流入される一次継手管11が取り付けられ、底面側から弁室1Aに連通して冷媒が流出される二次継手管12が取り付けられている。さらに、弁本体1aには、弁室1Aと二次継手管12とを連通する位置に主弁座1bが形成されるとともに、この主弁座1bから二次継手管12側に断面形状が円形の主弁ポート1cが形成されている。弁本体1aの上部開口には支持部材13とケース15とが固定されている。
【0023】
支持部材13は、全体略円筒状に形成された樹脂成形部材であって、弁本体1aの上部開口に溶接される金属製の固定部材14を介して弁ハウジング1に固定されている。支持部材13は、固定部材14よりも下方に延びる円筒状の主弁ガイド部13aと、固定部材14よりも上方に延びて内側に雌ねじが形成された雌ねじ部13bと、筒状の内側上端に設けられたばね受け部13cと、を有している。この支持部材13を構成する樹脂材料としては、適宜な硬度や耐熱性を有したものであればよく、各種のエンジニアリングプラスチックが利用可能である。ケース15は、弁本体1aの上部開口に溶接等によって固定され、弁本体1a及びケース15によって気密な空間が形成されている。
【0024】
主弁体2は、全体略円筒状に形成されたステンレス製部材であって、支持部材13の主弁ガイド部13aの内部にて軸線Lに沿った上下方向に進退自在に支持されている。主弁体2は、主弁座1bに対して着座及び離座する主弁部21と、筒状の内周面に突出した円環状の副弁ポート22と、副弁ポート22よりも主弁ポート1c側(下側)の内周面に段付き状に形成された被係止部23と、上端部に設けられたばね受け部24と、を有している。主弁体2の副弁ポート22よりも上方の内部空間と支持部材13の内部空間とにより副弁室2Aが構成されている。主弁体2の側面には、貫通孔25が形成され、この貫通孔25により弁室1Aと副弁室2Aとが連通されている。また、支持部材13及び主弁体2のばね受け部13c,24間には、主弁ばね26が圧縮状態で配設されており、この主弁ばね26により主弁体2は主弁座1b方向(閉方向)に付勢されている。
【0025】
副弁体3は、全体略円柱状に形成されたステンレス製部材であって、主弁体2の内部に配設され、後述する駆動部4のロータ軸(弁軸)50の下端部に一体に連結され、駆動部4によって進退及び回転駆動されるようになっている。この副弁体3は、その外周面に設けられて副弁ポート22の開度を変更する副弁部31と、副弁部31よりも先端側(下側)にて小径とされた小径部32と、小径部32の先端に設けられて副弁部31よりも大径とされたフランジ部33と、を有している。フランジ部33の上側には、高滑性表面の金属製ワッシャ、フッ素樹脂等の高滑性樹脂製ワッシャ、あるいは高滑性樹脂コーディングされたワッシャからなるスラストワッシャ34が設けられ、このスラストワッシャ34が主弁体2の被係止部23を係止可能な係止部となっている。スラストワッシャ34は、フランジ部33の上面及び被係止部23に当接可能になっており、その当接面同士の摩擦力が極めて小さくなるようになっている。副弁部31とフランジ部33との間である小径部32の側面と、副弁体3の先端部であるフランジ部33の下面と、の間には、副弁体3を貫通する貫通流路35が設けられている。
【0026】
駆動部4は、電動モータとしてのステッピングモータ41と、ステッピングモータ41の回転により副弁体3を進退させるねじ送り機構42と、ステッピングモータ41の回転を規制するストッパ機構43と、を備える。
【0027】
ステッピングモータ41は、外周部が多極に着磁されたマグネットロータ44と、ケース15の外周に配設されたステータコイル45と、マグネットロータ44に固定されて軸線L方向に延びるロータ軸50と、を備えている。ステッピングモータ41は、ステータコイル45にパルス信号が与えられることにより、そのパルス数に応じてマグネットロータ44が回転される。
【0028】
ロータ軸50は、固定部材50aを介してマグネットロータ44に固定された長尺棒状の部材であり、ステンレス等の金属材料を切削あるいは転造等の加工を施すことで、副弁体3と一体に形成されている。ロータ軸50の中間部には雄ねじ部50bが一体に形成され、この雄ねじ部52bが支持部材13の雌ねじ部13bに螺合し、これによってねじ送り機構42が構成されている。ロータ軸50の上端部はストッパ機構43のガイド46に挿入され、軸線L方向に案内されるようになっている。一体に形成されるロータ軸50及び副弁体3において、フランジ部33及びスラストワッシャ34と、副弁部31と、雄ねじ部52bと、は順に径が小さくなり、すなわち、スラストワッシャ34の外径が最大であり、次にフランジ部33の外径、その次に副弁部31の外径が小さく、雄ねじ部52bの外径が最小となるように形成されている。
【0029】
駆動部4のマグネットロータ44及びロータ軸50が回転すると、雌ねじ部13bによって雄ねじ部50bが案内され、ねじピッチに応じて軸線L方向にマグネットロータ44及びロータ軸50が移動する。ここで、マグネットロータ44及びロータ軸50は、その正回転に伴って下降し、この下降に伴って副弁体3も下降する。一方、マグネットロータ44及びロータ軸50は、その逆回転に伴って上昇し、この上昇に伴って副弁体3も上昇する。
【0030】
ストッパ機構43は、ケース15の天井部から垂下された円筒棒状のガイド46と、ガイド46の外周に固定されたガイドねじ47と、ガイドねじ47にガイドされて回転かつ上下動可能な可動スライダ48と、を備えている。可動スライダ48には、径方向外側に突出した爪部48aが設けられ、マグネットロータ44には、上方に延びて爪部48aと当接する延長部44aが設けられ、マグネットロータ44が回転すると、延長部44aが爪部48aを押すことで、可動スライダ48がガイドねじ47に倣って回転かつ上下するようになっている。
【0031】
ガイドねじ47には、マグネットロータ44の最上端位置を規定する上端ストッパ47aと、マグネットロータ44の最下端位置を規定する下端ストッパ47bと、が形成されている。マグネットロータ44の正回転に伴って下降した可動スライダ48が下端ストッパ47bに当接すると、この当接した位置で可動スライダ48が回転不能となり、これによりマグネットロータ44の回転が規制され、副弁体3の下降も停止される。一方、マグネットロータ44の逆回転に伴って上昇した可動スライダ48が上端ストッパ47aに当接すると、この当接した位置で可動スライダ48が回転不能となり、これによりマグネットロータ44の回転が規制され、副弁体3の上昇も停止される。
【0032】
次に、
図3、4を参照して電動弁10の詳細構造、その動作について説明する。
図3(A),(B)は、それぞれ電動弁10の一部を拡大して示す縦断面図であり、主弁体2及び副弁体3の先端部を拡大して示す縦断面図である。
図4は、電動弁10における弁開度と流量の関係を示すグラフである。
【0033】
図3に示すように、副弁体3の副弁部31は、円柱状の円柱部31aと、この円柱部31aよりも先端に向かって徐々に径が小さくなる円錐台状の円錐部31bと、を有して形成されている。円柱部31aの直径は、主弁体2の副弁ポート22の内径よりも小さく形成され、円柱部31a及び円錐部31bの外周面と副弁ポート22の内周面との隙間によって冷媒が通過する流路Rが形成されている。
図3(A)は、マグネットロータ44の最下端位置に対応して円柱部31aが副弁ポート22の内側にある位置であり、すなわち副弁ポート22に最も近接する第一位置の副弁体3を示している。
図3(B)は、マグネットロータ44の回転により第一位置から副弁体3が上昇し、スラストワッシャ34が被係止部23に当接した位置であり、すなわち主弁体2に係合する第二位置の副弁体3を示している。副弁体3が第一位置から第二位置に向かって上昇することで、円錐部31bが副弁ポート22の内側に位置するようになり、副弁ポート22の開度が徐々に大きくなり、流路Rを通過する冷媒の流量が増加する。
【0034】
以上の電動弁10は、以下のように動作する。まず、
図1及び
図3(A)の状態では、主弁体2の主弁部21が主弁座1bに着座し、主弁ポート1cが閉じられた弁閉状態である。一方、第一位置にある副弁体3は、円柱部31aが副弁ポート22の内側に位置し、その隙間に流路Rが形成されている。従って、一次継手管11から弁室1Aに流入し、さらに貫通孔25から副弁室2Aに流入した冷媒は、流路Rから副弁ポート22を通って主弁体2の内部に流れ、さらに副弁体3の貫通流路35を通って副弁体3の先端側に流出し、主弁ポート1cから二次継手管12に向かって流出する。すなわち、副弁体3の貫通流路35によって、スラストワッシャ34と被係止部23との接触面を迂回する迂回流路R’が構成されている。このように、流路R及び迂回流路R’を冷媒が通過することで、
図4に示すように、弁開度がゼロであっても微少な流量が生じることとなる。
【0035】
次に、駆動部4のステッピングモータ41を駆動してマグネットロータ44を逆回転させて副弁体3を上昇させることで、副弁体3の円錐部31bが副弁ポート22の内側に位置するようになり、その隙間に流路Rが形成される。ここで、円錐部31bは徐々に直径が小さくなることから副弁ポート22の内周面との隙間が大きくなり、流路Rが拡大されることとなり、
図4に示すように、流量が徐々に増加する。この際、主弁体2の主弁部21が主弁座1bに着座したままであるため、副弁体3が主弁体2に係合する第二位置までは、流量の増加は微少である。このように副弁体3を第一位置と第二位置との間で移動させて開度を変更する制御域が小流量制御域であって、この小流量制御域における副弁体3の開度(ステッピングモータ41の回転量)に対する流量の変化は極微少である。
【0036】
次に、第二位置まで上昇させて主弁体2に係合した副弁体3をさらに上昇させると、
図2及び
図3(B)に示すように、副弁体3によって主弁体2が引き上げられ、主弁部21が主弁座1bから離間して弁開する。このように主弁体2を着座位置(閉位置)から弁開位置(開位置)に向かって上昇させる制御域が大流量制御域であって、この大流量制御域における主弁体2の開度(ステッピングモータ41の回転量)に対する流量の変化は大きなものとなる。そして、
図2及び
図3(B)に示す弁開位置まで主弁体2を上昇させた全開状態において、流量は最大となる。ここで、全開状態における流量としては、一次継手管11及び二次継手管12の開口面積に対し、主弁部21と主弁座1bの隙間の開口面積が同等以上となり、主弁部21や主弁ポート1cによって流量が絞られない状態、すなわち電動弁10が単なる流路として機能するような開度に設定されている。また、駆動部4のステッピングモータ41を駆動してマグネットロータ44を正回転させて副弁体3を下降させることで、主弁ばね26に付勢された主弁体2も下降し、その主弁部21が主弁座1bに着座して主弁ポート1cが閉じられ、小流量制御域となる。
【0037】
以上の本実施形態によれば、主弁体2の内部に配設された副弁体3が貫通流路35を有し、小流量制御時に貫通流路35を通って副弁体3の先端側に冷媒が流れることで、主弁体2と副弁体3との間に異物が噛み込むことを防止することができる。従って、副弁体3の動作不良が生じにくくなり、小流量制御域における流量を適切に制御することができる。
【0038】
また、貫通流路35を設けたことで、副弁体3の係止部であるスラストワッシャ34と主弁体2の内周面との隙間を冷媒が通らないことから、この隙間を小さく設定することが可能になり、スラストワッシャ34と主弁体2の内周面とが互いに摺動して案内する摺動案内部として機能させることができる。さらに、迂回流路R’を貫通流路35で構成したことで、主弁体2の内周面と副弁体3の外周面とが互いに摺接する摺接面を全周に連続させることができる。これにより、副弁体3が進退移動する際には主弁体2の内周面に案内され、副弁体3の振れを抑制することができ、流量制御の精度を向上させることができる。また、主弁体2が主弁座1bに着座する際にもスラストワッシャ34によって振れが規制されることで、弁閉性が向上して弁漏れ量を低減することができる。
【0039】
また、副弁体3に一体に連結されたロータ軸50の雄ねじ部50bが雌ねじ部13bに案内されて副弁体3が進退駆動されることで、駆動部4により副弁体3を直接的に駆動することができ、副弁体3のがたつきを抑制して小流量制御域における流量制御の精度を向上させることができる。
【0040】
また、副弁体3の先端部に係止部であるスラストワッシャ34が設けられ、スラストワッシャ34、副弁部31、雄ねじ部52bの順に径が小さくなるように形成されていることで、全体筒状の主弁体2に対してロータ軸50の上端側から雄ねじ部52b、副弁部31、スラストワッシャ34及びフランジ部33の順で差し込むようにして副弁体3を組み付けることができ、電動弁10の製造効率を向上させることができる。
【0041】
また、弁本体1に固定される支持部材13が主弁ガイド部13aと雌ねじ部13bとばね受け部13cとを有し、主弁ガイド部13aにより主弁体2を軸線L方向に進退案内することで、主弁体2の振れを抑制することができ、主弁座1bに確実に着座させることにより弁漏れを防止することができる。従って、副弁ポート22を開いた小流量制御時の流量への影響を小さくして、小流量制御域での流量を適切に制御することができる。また、支持部材13が樹脂成形部材で構成されていることで、支持部材13や主弁体2の摩耗を抑制することができ、電動弁10の耐久性を向上させることができる。
【0042】
また、第一位置にある副弁体3の円柱部31aの外周面と主弁体2の内周面との隙間によって流路Rが形成されることで、この流路Rによって常に流量が確保される弁開タイプの電動弁10を構成することができる。このような弁開タイプの電動弁10とすることで、家庭用エアコン等の除湿機能を有した空気調和機に好適に利用することができる。さらに、円柱部31aの外周面と主弁体2の内周面との隙間によって流路Rが形成されることで、この流路Rの開口面積を厳密に規定することができ、第一位置に副弁体3があるときの小流量を適切に確保ことができる。
【0043】
次に、
図5に基づいて本発明の冷凍サイクルシステムについて説明する。冷凍サイクルシステム90は、例えば、家庭用エアコン等の空気調和機に用いられる。前記実施形態の電動弁10は、空気調和機の第1室内側熱交換器91(除湿時冷却器として作動)と第2室内側熱交換器92(除湿時加熱器として作動)との間に設けられており、圧縮機93、四方弁94、室外側熱交換器95および電子膨張弁96とともに、ヒ−トポンプ式冷凍サイクルを構成している。第1室内側熱交換器91と第2室内側熱交換器92及び電動弁10は室内に設置され、圧縮機93、四方弁94、室外側熱交換器95および電子膨張弁96は室外に設置されていて冷暖房装置を構成している。
【0044】
なお、本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的が達成できる他の構成等を含み、以下に示すような変形等も本発明に含まれる。例えば、前記実施形態では、家庭用エアコン等の空気調和機に用いられる電動弁10を例示したが、本発明の電動弁は、家庭用エアコンに限らず、業務用エアコンであってもよいし、空気調和機に限らず、各種の冷凍機等にも適用可能である。
【0045】
また、前記実施形態では、ねじ送り機構42がロータ軸50の雄ねじ部50bと支持部材13の雌ねじ部13bとで構成されていたが、副弁体3を進退駆動するねじ送り機構の構成は前記実施形態のものに限らず、任意の構成が採用可能である。さらに、副弁体を進退駆動する機構としては、ねじ送り機構に限らず、適宜な機構が適用可能である。
【0046】
また、前記実施形態では、ストッパ機構43がケース15の天井部に設けられたガイド46、ガイドねじ47及び可動スライダ48によって構成されていたが、ストッパ機構としては、マグネットロータ44の回転を規制できるものであればよく、その配設位置や構造は特に限定されない。例えば、マグネットロータの内側や下側にストッパ機構が設けられていてもよい。
【0047】
また、前記実施形態では、迂回流路R’が貫通流路35によって構成されていたが、
図6、7に示すように、迂回流路R’が副弁切欠き部36や主弁切欠き部37で構成されてもよく、これらの貫通流路35、副弁切欠き部36及び主弁切欠き部37を適宜に組み合わせてもよい。具体的には、
図6に示すように、副弁切欠き部36は、副弁体3の小径部32からフランジ部33にかけて外周面の一部を切り欠いたDカット面として形成されている。従って、迂回流路R’は、小径部32からスラストワッシャ34の内側を通過するように設けられている。一方、
図7に示すように、迂回流路R’は、主弁体2の被係止部23から主弁部21にかけて内周面の一部を切り欠いて形成されている。従って、迂回流路R’は、副弁体3の小径部32からスラストワッシャ34の外側及びフランジ部33の外側を通過するように設けられている。
【0048】
以上、本発明の実施の形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこれらの実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。