(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2019-132404(P2019-132404A)
(43)【公開日】2019年8月8日
(54)【発明の名称】駆動装置
(51)【国際特許分類】
F16H 1/06 20060101AFI20190712BHJP
F16H 57/029 20120101ALI20190712BHJP
F16H 57/031 20120101ALI20190712BHJP
F16H 57/04 20100101ALI20190712BHJP
F16J 15/447 20060101ALI20190712BHJP
【FI】
F16H1/06
F16H57/029
F16H57/031
F16H57/04 L
F16H57/04 H
F16J15/447
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2018-17234(P2018-17234)
(22)【出願日】2018年2月2日
(71)【出願人】
【識別番号】000002233
【氏名又は名称】日本電産サンキョー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095452
【弁理士】
【氏名又は名称】石井 博樹
(72)【発明者】
【氏名】大島 勇太
(72)【発明者】
【氏名】保科 顕一
【テーマコード(参考)】
3J009
3J042
3J063
【Fターム(参考)】
3J009DA15
3J009DA20
3J009EA04
3J009EA05
3J009EA11
3J009EA21
3J009EA32
3J009EA44
3J009EB01
3J009EB24
3J009ED12
3J042AA03
3J042BA01
3J042CA01
3J042CA10
3J063AB02
3J063AC01
3J063BA05
3J063BA11
3J063BB03
3J063CA01
3J063CB12
3J063CD67
3J063XD02
3J063XD17
3J063XD62
3J063XD72
3J063XD73
3J063XE14
(57)【要約】
【課題】伝達歯車と出力歯車と出力軸とを備える駆動装置において、出力軸の回転を許容するケースのクリアランス部からグリースが外部に漏れ出す虞を低減する。
【解決手段】本駆動装置1は、回転駆動源2の回転力Fを伝達する伝達歯車9と、伝達歯車9から回転力Fが伝達される出力歯車11と、出力歯車11に設けられ、回転力Fを出力する出力軸13と、伝達歯車9、出力歯車11及び出力軸13を収容するケース15とを備え、ケース15は、出力軸13の回転を許容するクリアランス部39を介して出力軸13の出力側を外部に露出し、伝達歯車9と出力歯車11との噛み合い部41からクリアランス部39に至る出力歯車11のケース15との対向部に、出力軸13の軸方向Zに突出する歯車側凸部45を備え、ケース15の歯車側凸部45と対応する位置に歯車側凸部45を受け入れるケース側凹部47を備える。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転駆動源の回転力を伝達する伝達歯車と、
前記伝達歯車から前記回転力が伝達される出力歯車と、
前記出力歯車に設けられ、前記回転力を出力する出力軸と、
前記伝達歯車、前記出力歯車及び前記出力軸を収容するケースと、を備え、
前記ケースは、前記出力軸の回転を許容するクリアランス部を介して該出力軸の出力側を外部に露出し、
前記伝達歯車と前記出力歯車との噛み合い部から前記クリアランス部に至る前記出力歯車の前記ケースとの対向部には、前記出力軸の軸方向に突出する歯車側凸部を備え、
前記ケースの前記歯車側凸部と対応する位置に前記歯車側凸部を受け入れるケース側凹部を備える、
ことを特徴とする駆動装置。
【請求項2】
回転駆動源の回転力を伝達する伝達歯車と、
前記伝達歯車から前記回転力が伝達される出力歯車と、
前記出力歯車に設けられ、前記回転力を出力する出力軸と、
前記伝達歯車、前記出力歯車及び前記出力軸を収容するケースと、を備え、
前記ケースは、前記出力軸の回転を許容するクリアランス部を介して該出力軸の出力側を外部に露出し、
前記伝達歯車と前記出力歯車との噛み合い部から前記クリアランス部に至る前記ケースの前記出力歯車との対向部には、前記出力歯車との前記対向部に向かって突出するケース側凸部を備え、
前記出力歯車の前記ケース側凸部と対応する位置に前記ケース側凸部を受け入れる歯車側凹部を備える、
ことを特徴とする駆動装置。
【請求項3】
回転駆動源の回転力を伝達する伝達歯車と、
前記伝達歯車から前記回転力が伝達される出力歯車と、
前記出力歯車に設けられ、前記回転力を出力する出力軸と、
前記伝達歯車、前記出力歯車及び前記出力軸を収容するケースと、を備え、
前記ケースは、前記出力軸の回転を許容するクリアランス部を介して該出力軸の出力側を外部に露出し、
前記伝達歯車と前記出力歯車との噛み合い部から前記クリアランス部に至る前記出力歯車の前記ケースとの対向部には、前記出力軸の軸方向に突出する歯車側凸部を備え、
前記伝達歯車と前記出力歯車との噛み合い部から前記クリアランス部に至る前記ケースの前記出力歯車との対向部には、前記歯車側凸部と隣り合って前記噛み合い部側に位置し、前記出力歯車に向かって突出するケース側凸部を備える、
ことを特徴とする駆動装置。
【請求項4】
請求項1又は3に記載の駆動装置において、
前記歯車側凸部の前記クリアランス部側の下端位置と前記噛み合い部側の下端位置とは前記軸方向における高さが異なる、
ことを特徴とする駆動装置。
【請求項5】
請求項4に記載の駆動装置において、
前記歯車側凸部の前記クリアランス部側の下端位置は前記噛み合い部側の下端位置より前記軸方向における高さが低い、
ことを特徴とする駆動装置。
【請求項6】
請求項3から5のいずれか一項に記載の駆動装置において、
前記ケースの前記歯車側凸部に対応する位置に設けられ、該歯車側凸部を受け入れるケース側凹部と、
前記出力歯車の前記ケース側凸部に対応する位置に設けられ、該ケース側凸部を受け入れる歯車側凹部と、
を備える、ことを特徴とする駆動装置。
【請求項7】
請求項1又は請求項3から6のいずれか一項に記載の駆動装置において、
前記出力軸のスラスト方向における押さえ位置は、
前記出力軸の前記出力側と反対側に位置する基端部位が前記ケース内に固定されているプレートの対応する部位に規制され、
前記歯車側凸部の頂部が前記ケースの対応する部位に規制される、
ことで構成されている、ことを特徴とする駆動装置。
【請求項8】
請求項2から6のいずれか一項に記載の駆動装置において、
前記出力軸のスラスト方向における押さえ位置は、
前記出力軸の前記出力側と反対側に位置する基端部位が前記ケース内に固定されているプレートの対応する部位に規制され、
前記ケース側凸部の頂部が前記出力歯車の対応する部位に規制される、ことで構成されている、ことを特徴とする駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータ等の回転駆動源の回転力を出力する出力軸を備える駆動装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の駆動装置として、特許文献1に記載されている装置が挙げられる。この駆動装置は、モータ、歯車輪列で構成された伝達歯車、出力歯車が設けられた出力軸がケースに収容されている。前記歯車の噛み合い部にはグリースが付着されている。前記ケースは、前記出力軸の回転を許容するクリアランス部を介して該出力軸の出力側を外部に露出した構造である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−32143号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の上記駆動装置は、使用を継続すると前記グリースが前記クリアランス部からケースの外に漏れ出す場合がある。しかし、グリースが前記クリアランス部から外部に漏れ出す問題及びその抑制については、記載も示唆もない。
【0005】
本発明の目的は、出力軸の回転を許容するケースのクリアランス部からグリースが外部に漏れ出す虞を低減できる駆動装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明の第1の態様の駆動装置は、回転駆動源の回転力を伝達する伝達歯車と、前記伝達歯車から前記回転力が伝達される出力歯車と、前記出力歯車に設けられ、前記回転力を出力する出力軸と、前記伝達歯車、前記出力歯車及び前記出力軸を収容するケースと、を備え、前記ケースは、前記出力軸の回転を許容するクリアランス部を介して該出力軸の出力側を外部に露出し、前記伝達歯車と前記出力歯車との噛み合い部から前記クリアランス部に至る前記出力歯車の前記ケースとの対向部には、前記出力軸の軸方向に突出する歯車側凸部を備え、前記ケースの前記歯車側凸部と対応する位置に前記歯車側凸部を受け入れるケース側凹部を備えることを特徴とする。
【0007】
本態様によれば、前記伝達歯車と前記出力歯車との噛み合い部から前記クリアランス部に至るグリースの移動経路を成す前記出力歯車の前記ケースとの対向部には、前記出力軸の軸方向に突出する歯車側凸部を備える。更に、前記ケースの前記歯車側凸部と対応する位置に前記歯車側凸部を受け入れるケース側凹部を備える。即ち、前記ケース側凹部に前記歯車側凸部が入り込む構造であるので、該入り込み構造によって前記クリアランス部に至る前記グリースの移動経路における移動距離が長くなり、グリースの移動抵抗が高くなる。従って、出力軸の回転を許容するケースのクリアランス部からグリースが外部に漏れ出す虞を低減することができる。
【0008】
本発明の第2の態様の駆動装置は、回転駆動源の回転力を伝達する伝達歯車と、前記伝達歯車から前記回転力が伝達される出力歯車と、前記出力歯車に設けられ、前記回転力を出力する出力軸と、前記伝達歯車、前記出力歯車及び前記出力軸を収容するケースと、を備え、前記ケースは、前記出力軸の回転を許容するクリアランス部を介して該出力軸の出力側を外部に露出し、前記伝達歯車と前記出力歯車との噛み合い部から前記クリアランス部に至る前記ケースの前記出力歯車との対向部には、前記出力歯車との前記対向部に向かって突出するケース側凸部を備え、前記出力歯車の前記ケース側凸部と対応する位置に前記ケース側凸部を受け入れる歯車側凹部を備えることを特徴とする。
【0009】
本態様によれば、前記伝達歯車と前記出力歯車との噛み合い部から前記クリアランス部に至るグリースの移動経路を成す前記ケースの前記出力歯車との対向部には、前記出力歯車との前記対向部に向かって突出するケース側凸部を備える。更に、前記出力歯車の前記ケース側凸部と対応する位置に前記ケース側凸部を受け入れる歯車側凹部を備える。即ち、前記歯車側凹部に前記ケース側凸部が入り込む構造であるので、該入り込み構造によって前記クリアランス部に至る前記グリースの移動経路における移動距離が長くなり、グリースの移動抵抗が高くなる。従って、出力軸の回転を許容するケースのクリアランス部からグリースが外部に漏れ出す虞を低減することができる。
【0010】
本発明の第3の態様の駆動装置は、回転駆動源の回転力を伝達する伝達歯車と、前記伝達歯車から前記回転力が伝達される出力歯車と、前記出力歯車に設けられ、前記回転力を出力する出力軸と、前記伝達歯車、前記出力歯車及び前記出力軸を収容するケースと、を備え、前記ケースは、前記出力軸の回転を許容するクリアランス部を介して該出力軸の出力側を外部に露出し、前記伝達歯車と前記出力歯車との噛み合い部から前記クリアランス部に至る前記出力歯車の前記ケースとの対向部には、前記出力軸の軸方向に突出する歯車側凸部を備え、前記伝達歯車と前記出力歯車との噛み合い部から前記クリアランス部に至る前記ケースの前記出力歯車との対向部には、前記歯車側凸部と隣り合って前記噛み合い部側に位置し、前記出力歯車に向かって突出するケース側凸部を備えることを特徴とする。
【0011】
本態様によれば、前記伝達歯車と前記出力歯車との噛み合い部から前記クリアランス部に至る前記出力歯車の前記ケースとの対向部には、前記出力軸の軸方向に突出する歯車側凸部を備える。更に、前記伝達歯車と前記出力歯車との噛み合い部から前記クリアランス部に至る前記ケースの前記出力歯車との対向部には、前記歯車側凸部と隣り合って前記噛み合い部側に位置し、前記出力歯車に向かって突出するケース側凸部を備える。即ち、前記歯車側凸部と前記ケース側凸部とが隣り合って位置する構造によって、前記クリアランス部に至る前記グリースの移動経路における移動距離が長くなり、グリースの移動抵抗が高くなる。従って、出力軸の回転を許容するケースのクリアランス部からグリースが外部に漏れ出す虞を低減することができる。
【0012】
本発明の第4の態様の駆動装置は、第1の態様又は第3の態様において、前記歯車側凸部の前記クリアランス部側の下端位置と前記噛み合い部側の下端位置とは前記軸方向における高さが異なることを特徴とする。
ここで、「歯車側凸部の前記クリアランス部側の下端位置」とは、該下端位置から前記クリアランス部に連なるU字形状の底部を含む意味で使われている。
「噛み合い部側の下端位置」とは、該下端位置がU字形状の底部に連なる構造である場合は該底部を含む意味で使われている。
【0013】
本態様によれば、前記歯車側凸部の前記クリアランス部側の下端位置と前記噛み合い部側の下端位置は前記軸方向における高さが異なる。従って、その高低差によって前記クリアランス部に至る前記グリースの移動経路における移動距離が長くなり、グリースの移動抵抗を高くすることが可能となる。
【0014】
本発明の第5の態様の駆動装置は、第4の態様において、前記歯車側凸部の前記クリアランス部側の下端位置は前記噛み合い部側の下端位置とより前記軸方向における高さが低いことを特徴とする。
【0015】
本態様によれば、前記歯車側凸部の前記クリアランス部側の下端位置は前記噛み合い部側の下端位置より前記軸方向における高さが低い。従って、グリースが前記歯車側凸部を越えても、前記クリアランス部側の下端位置は前記の如く低く形成されているので、前記クリアランス部を登って外部に到達するまでの移動距離が長くなって漏れ出しにくくなっている。
【0016】
本発明の第6の態様の駆動装置は、第3の態様から第5の態様のいずれか一つの態様において、前記ケースの前記歯車側凸部に対応する位置に設けられ、該歯車側凸部を受け入れるケース側凹部と、前記出力歯車の前記ケース側凸部に対応する位置に設けられ、該ケース側凸部を受け入れる歯車側凹部と、を備えることを特徴とする。
【0017】
本態様によれば、歯車側凸部とケース側凹部との入り込み構造と、ケース側凸部と歯車側凹部との入り込み構造のダブルの入り込み構造によって、前記クリアランス部に至る前記グリースの移動経路における移動距離が一層長くなり、グリースの移動抵抗が一層高くなる。従って、出力軸の回転を許容するケースのクリアランス部からグリースが外部に漏れ出す虞を一層低減することができる。
【0018】
本発明の第7の態様の駆動装置は、第1の態様又は第3の態様から第6の態様のいずれか一つの態様において、前記出力軸のスラスト方向における押さえ位置は、前記出力軸の前記出力側と反対側に位置する基端部位が前記ケース内に固定されているプレートの対応する部位に規制され、前記歯車側凸部の頂部が前記ケースの対応する部位に規制されることで構成されていることを特徴とする。
【0019】
本態様によれば、前記出力軸のスラスト方向における押さえ位置は、前記出力軸の前記出力側と反対側に位置する基端部位が前記ケース内に固定されているプレートの対応する部位に当接することによって規制され、前記歯車側凸部の頂部が前記ケースの対応する部位に当接することによって規制される。従って、このように規制され開口面積が狭くなっているスラスト方向における押さえ位置の存在によって、前記クリアランス部に至るグリースの移動経路におけるグリースの移動抵抗が高くなるため、グリースが外部に漏れ出す虞を一層低減することができる。
【0020】
本発明の第8の態様の駆動装置は、第2の態様から第6の態様のいずれか一つの態様において、前記出力軸のスラスト方向における押さえ位置は、前記出力軸の前記出力側と反対側に位置する基端部位が前記ケース内に固定されているプレートの対応する部位に規制され、前記ケース側凸部の頂部が前記出力歯車の対応する部位に規制される、ことで構成されている、ことを特徴とする。
【0021】
本態様によれば、前記出力軸のスラスト方向における押さえ位置は、前記出力軸の前記出力側と反対側に位置する基端部位が前記ケース内に固定されているプレートの対応する部位に当接することによって規制され、前記ケース側凸部の頂部が前記出力歯車の対応する部位に当接することによって規制される。従って、このように規制され開口面積が狭くなっているスラスト方向における押さえ位置の存在によって、前記クリアランス部に至るグリースの移動経路におけるグリースの移動抵抗が高くなるため、グリースが外部に漏れ出す虞を一層低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の実施形態を示す図で、駆動装置の外観を表す斜視図。
【
図2】本発明の実施形態を示す図で、駆動装置の内部を透視して表す斜視図。
【
図3】本発明の実施形態を示す図で、ケースカバーを取り外した駆動装置を表す平面図。
【
図4】本発明の実施形態を示す図で、駆動装置の内部を表す側断面図。
【
図5】本発明の実施形態を示す図で、駆動装置の出力歯車周辺を拡大して表す側断面図。
【
図6】本発明の実施形態の変形例を示す図で、駆動装置の出力歯車周辺を拡大して表す側断面図。
【
図7】本発明の実施形態の他の変形例を示す図で、駆動装置の出力歯車周辺を拡大して表す側断面図。
【
図8】本発明の実施形態の他の変形例を示す図で、駆動装置の出力歯車周辺を拡大して表す側断面図。
【
図9】本発明の実施形態の他の変形例を示す図で、駆動装置の出力歯車周辺を拡大して表す側断面図。
【
図10】従来の駆動装置を示す図で、駆動装置の出力歯車周辺を拡大して表す側断面図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の駆動装置を図示の実施形態を例にとって、添付図面に基づいて詳細に説明する。
尚、以下の説明では最初に
図1から
図4に基づいて本発明の実施形態に係る駆動装置1の全体構成について説明する。次に、
図5から
図9に基づいて駆動装置1の要部の構成とその変形例について具体的に説明する。
続いて、
図5から
図9に表す本発明の駆動装置1と
図10に表す従来の駆動装置100とを比較して本発明の駆動装置1の作用、効果について説明する。最後に前記実施形態とは部分的構成を異にする本発明の他の実施形態について言及する。
【0024】
(1)駆動装置の全体構成(
図1から
図4参照)
本実施形態に係る駆動装置1Aは、
図2及び
図3に表したように、回転駆動源であるモータ2と、モータ2の回転力Fを伝達する複数枚の伝達歯車5、6、7、8、9を有する伝達歯車輪列3と、伝達歯車輪列3の終端の伝達歯車9から回転力Fが伝達される出力歯車11と、出力歯車11に設けられ、出力歯車11より小径であり、回転力Fを出力する出力軸13と、モータ2、伝達歯車5、6、7、8、9、出力歯車11及び出力軸13を収容するケース15と、を備えることによって一例として構成されている。
【0025】
また、本実施形態ではケース15は、
図1、
図2及び
図4に示す姿勢で、上方に位置するケースカバー16と、下方に位置するケース本体17と、を備えることによって構成されている。ケース15の内部には、出力歯車11と出力軸13を回転可能な状態で支持するボス部19を備えたプレート21がケース15に固定されている。
モータ2としては、直流式のサーボモータ等が一例として適用できる。モータ2の出力軸には小径のピニオンギヤ23が取り付けられている。
【0026】
図1、
図2及び
図4において、上方に位置するケースカバー16の天板26と、ケース本体17の底板27には上下方向Zに延びる複数本の軸部28が設けられている。そして、これらの軸部28を利用して複数枚の伝達歯車5、6、7、8、9を有する伝達歯車輪列3が支持されている。
伝達歯車輪列3は、モータ2の出力軸に取り付けられているピニオンギヤ23と噛み合う第1伝達歯車5と、第1伝達歯車5と噛み合う大径歯車6A及び小径歯車6Bを一体に備えた第2伝達歯車6と、第2伝達歯車6の小径歯車6Bと噛み合うケースカバー16側の歯車7A及びプレート21側の歯車7Bを一体に備えた第3伝達歯車7と、第3伝達歯車7のプレート21側の歯車7Bと噛み合う第4伝達歯車8と、第4伝達歯車8と噛み合う大径歯車9A及び小径歯車9Bを一体に備えた第5伝達歯車9と、を備えることによって一例として構成されている。
【0027】
そして、第5伝達歯車9が伝達歯車輪列3の終端に位置する伝達歯車となり、この第5伝達歯車9に出力歯車11が噛み合うことで、伝達歯車輪列3によって例えば減速された回転が出力歯車11を介して出力歯車11と一体に設けられる出力軸13に伝達されるようになっている。
また、図示の実施形態では、
図2及び
図4において、プレート21の下方、即ちケース本体17側にも伝達歯車輪列29が第3伝達歯車7から動力が分配される形で設けられている。そして、伝達歯車輪列29の終端に設けられる伝達歯車30からケース本体17側の出力歯車31に回転が伝達されてケース本体17側の出力軸33に回転力Fが出力されるように構成されている。
【0028】
また、ケースカバー16の天板26とケース本体17の底板27には、回転力Fを伝達した出力軸13と出力軸33の出力側を外部に露出させるための平面視円形の開口35、37がそれぞれ設けられている。
そして、開口35、37によって露出された出力軸13と出力軸33を利用して、所定の回転力Fを外部の駆動系統や他の装置に伝達できるように構成されている。
【0029】
(2)駆動装置の要部の構成とその変形例(
図5から
図9参照)
(2-1)駆動装置1A
図5に表したように、本実施形態では、ケースカバー16と出力軸13の間には、出力軸13の回転を許容するためのクリアランス部39が設けられている。伝達歯車輪列3の終端に設けられる第5伝達歯車9と出力歯車11との噛み合い部41からクリアランス部39にかけて、グリースGの移動経路となる流路43が形成されている。
そして、流路43を挟んで位置する出力歯車11のケースカバー16との対向部には、出力軸13の軸方向Zに突出する所定高さHの歯車側凸部45が設けられている。更に、ケースカバー16の歯車側凸部45と対応する位置に歯車側凸部45を受け入れるケース側凹部47が設けられている。
【0030】
尚、歯車側凸部45とケース側凹部47の断面形状は、図示のように幾分テーパを付けた矩形状のものの他、更にテーパを大きくした台形状のものや端部を丸く加工したもの、コーナー部に面取りを施したもの等、種々の形状が採用可能である。
また、ケース本体17と出力軸33の間にも、同様の構成のクリアランス部39と、噛み合い部41と、流路43と、歯車側凸部45と、ケース側凹部47と、が設けられている。
【0031】
また、本実施形態では流路43を挟んで位置するケースカバー16の出力歯車11との対向部に、歯車側凸部45と隣り合って出力歯車11と第5伝達歯車9との噛み合い部41側に位置し、出力歯車11に向って突出するケース側凸部49が設けられている。
また、本実施形態では流路43を挟んで位置する出力歯車11のケース側凸部49に対応する位置に、ケース側凸部49を受入れる歯車側凹部51が設けられている。
【0032】
尚、ケース側凸部49と歯車側凹部51の断面形状も、歯車側凸部45とケース側凹部47の断面形状と同様、図示のように幾分テーパを付けた矩形状のものの他、更にテーパを大きくした台形状のものや端部を丸く加工したもの、コーナー部に面取りを施したもの等、種々の形状が採用可能である。
また、ケース本体17側の出力歯車31と、ケース本体17との対向面にも同様の構成のケース側凸部49と、歯車側凹部51と、が設けられている。
【0033】
そして、このような歯車側凸部45とケース側凹部47、ケース側凸部49と歯車側凹部51が対向して配置されているグリースGの流路43は、
図5に表すように、出力歯車11と第5伝達歯車9との噛み合い部41から出力歯車11の上面を伝って出力軸13側に水平に延び、外方の歯車側凹部51で所定深さD下った後、内方の歯車側凸部45の高さH分上り、歯車側凸部45の頂部53に達する。
更に、流路43は、歯車側凸部45の頂部53から内方の出力軸13との間に形成される凹部55に歯車側凸部45の高さH分下った後に上方に延び、出力軸13とケースカバー16との間に形成されているクリアランス部39を通ってケースカバー16に形成されている開口35と連通する。
尚、ケース本体17側の出力軸33及び出力歯車31とケース本体17との間に形成されているグリースGの流路43も、基本的にケースカバー16側の流路43と同様に形成されている。
【0034】
また、本実施形態では出力軸13のスラスト方向、即ち軸方向Zにおけるケース本体17側への押さえ位置は、出力軸13の出力側と反対側に位置する基端部位57がプレート21の対応する部位(図示の実施形態ではプレート21から突出しているボス部19の外周縁)に当接することでプレート21側のそれ以上の移動が規制されることで設定されている。
また、出力軸13の軸方向Zにおけるケースカバー16側への押さえ位置は、歯車側凸部45の頂部53がケースカバー16の対応する部位(図示の実施形態ではケース側凹部47の底面59)に当接することでケースカバー16から外部に突出する方向のそれ以上の移動が規制されることで出力軸13のスラスト方向(軸方向)Zにおけるケースカバー16側への押さえ位置が設定されている。
【0035】
これに伴い、出力軸13の基端部位57とプレート21側の対向面との間隔T1と、歯車側凸部45の頂部53とケース側凹部47の底面59との間隔T2と、は厳格に管理されており、出力軸13のスラスト方向(軸方向)Zの必要な遊び(ガタ)の範囲で、できるだけ小さくなるように設定されている。
これにより、流路43の開口面積も、歯車側凸部45の頂部53とケース側凹部47の底面59との対向位置で狭くなるように構成されている。従って、グリースGの移動抵抗を高くなり、グリースGのそれ以上のクリアランス部39への移動が抑制されるようになっている。
【0036】
次に、歯車側凸部45、ケース側凹部47、ケース側凸部49、歯車側凹部51の配置構成、形状ないしその構成を一部省略した本実施形態に係る駆動装置1Aの変形例の構成とその作用、効果を
図6〜
図9に基づいて説明する。
(2-2)駆動装置1B
図6に表す駆動装置1Bは、
図5に表す駆動装置1Aの構成からケース側凸部49と歯車側凹部51を省略した変形例である。この変形例の場合には、凸部と凹部によって構成される入り込み構造61が歯車側凸部45とケース側凹部47とによって構成される入り込み構造61Aの一組となり、駆動装置1Aよりも流路43の長さが幾分短くなる。
【0037】
しかし、歯車側凸部45とケース側凹部47によって構成される一組の入り込み構造61Aによっても、グリースGの外部への流出の虞は後述する従来構造(
図10)より低く抑えることが可能であると共に、構造が駆動装置1Aよりもシンプルになり、組付け性が向上し、また製造コストを低減することができる。
尚、本変形例の場合も
図5に表す駆動装置1Aと同様、出力軸13のスラスト方向(軸方向)Zにおける押さえ位置は、出力軸13の基端部位57とプレート21の対応する部位との当接による規制と、歯車側凸部45の頂部53とケース側凹部47の底面59との当接による規制と、によって所定の押さえ位置になるように保たれている。
【0038】
(2-3)駆動装置1C
また、
図7に表す駆動装置1Cは、
図5に表す駆動装置1Aの構成から歯車側凸部45とケース側凹部47を省略した変形例である。
具体的には、第5伝達歯車9と出力歯車11との噛み合い部41からクリアランス部39に至る流路43におけるケースカバー16の出力歯車11との対向部に、出力歯車11側に向かって突出するケース側凸部49を設け、出力歯車11のケース側凸部49と対応する位置にケース側凸部49を受け入れる歯車側凹部51を設けることによって本変形例の駆動装置1Cは構成されている。
【0039】
そして、この変形例の場合には、凸部と凹部によって構成される入り込み構造61がケース側凸部49と歯車側凹部51とによって構成される入り込み構造61Bの一組のみとなるから、駆動装置1Aよりも流路43の長さが幾分短くなる。
しかし、ケース側凸部49と歯車側凹部51によって構成される一組の入り込み構造61Bによっても、グリースGの外部への流出の虞は後述する従来構造(
図10)より低く抑えることが可能であると共に、構造が駆動装置1Aよりもシンプルになり、組付け性が向上し、また製造コストを低減することができる。
【0040】
また、本変形例の場合には出力軸13のスラスト方向(軸方向)Zにおける押さえ位置は、出力軸13の基端部位57とプレート21の対応する部位との当接による規制と、ケース側凸部49の頂部63と、出力歯車11の対応する部位となる歯車側凹部51の底面65との当接による規制と、によって所定の押さえ位置になるように保たれている。
【0041】
(2-4)駆動装置1D
また、
図8に表す駆動装置1Dは、
図5に表す駆動装置1Aの構成からケース側凹部47と歯車側凹部51を省略し、その形状を一部変更した変形例である。
具体的には、第5伝達歯車9と出力歯車11の噛み合い部41からクリアランス部39に至る流路43における出力歯車11のケースカバー16との対向部に出力軸13の軸方向Zに突出する歯車側凸部45を設け、ケースカバー16の出力歯車11との対向部に、歯車側凸部45と隣り合って噛み合い部41側に位置し、出力歯車11に向って突出するケース側凸部49を設けることによって本変形例の駆動装置1Dは構成されている。
【0042】
そして、この変形例の場合には、歯車側凸部45とケース側凸部49とが隣り合って位置する構造によって、クリアランス部39に至るグリースGの移動経路である流路43における移動距離が長くなり、グリースGの移動抵抗が高くなる。
駆動装置1Dは、別に言い方をすると、凸部と凹部によって構成される入り込み構造61が出力軸13側の入り込み構造61Aの出力軸13側の範囲を除く一部の範囲と、噛み合い部41側の入り込み構造61Bの噛み合い部41側の範囲を除く一部の範囲と、になる構造である。よって、駆動装置1Aよりも流路43の長さが幾分短くなる。
しかし、一部の範囲となった入り込み構造61A、61Bによっても、グリースGの外部への流出の虞は後述する従来構造(
図10)より低く抑えることが可能であると共に、構造が駆動装置1Aよりもシンプルになり、組付け性が向上し、また製造コストを低減することができる。
【0043】
(2-5)駆動装置1E
また、
図9に表す駆動装置1Eのように、歯車側凸部45のクリアランス部39側の下端位置67と噛み合い部41側の下端位置69とは軸方向Zにおける高さhがそれぞれh1とh2と、異なるように設定することが可能である。
そして、
図9に表す変形例では、歯車側凸部45のクリアランス部39側の下端位置67の軸方向Zにおける高さh1が噛み合い部41側の下端位置69の軸方向Zにおける高さh2よりも低くなる(h1<h2)ように設定されている。
【0044】
そして、この変形例の場合には、
図5に表す駆動装置1Aと同様の二組の入り込み構造61A、61Bが設けられている。更に、歯車側凸部45のクリアランス部39側の下端位置67が低くなるので、流路43の長さは、駆動装置1Aよりも長くなってグリースGの移動距離が長くなり、グリースGの移動抵抗が高くなる。
従って、この変形例の駆動装置1Eの場合には、グリースGの外部への流出の虞は更に低く抑えられるから、本発明の目的は更に良好に達成できるようになる。
【0045】
(3)駆動装置の作用、効果(
図5から
図9及び
図10参照)
このようにして構成される本実施形態による駆動装置1Aから1Eによれば、凸部と凹部によって構成される入り込み構造61等の採用によって、グリースGの流路43が、
図10に表す従来の駆動装置100の流路143に比べて長くなる。これによりグリースGの移動距離が長くなり、グリースGの移動抵抗が高くなってグリースGの外部への流出の虞が低く抑えられるようになる。
また、グリースGの塗布量を多くしてもグリースGの外部への流出の虞は低いから、従来、採られていたグリースGの塗布量を少なくするといった消極的な対策を取る必要がなくなる。
【0046】
また、歯車側凸部45とケース側凹部47あるいはケース側凸部49と歯車側凹部51を出力軸13のスラスト方向(軸方向)Zの遊び(ガタ)を規制する出力軸13の押し付け手段として利用することで、部品の有効利用が図れ、流路43の開口面積を狭くしてグリースGの外部への流出の虞を更に低くすることが可能になる。
尚、
図10において、符号109は伝達歯車、符号111は出力歯車、符号113は出力軸、符号115はケース、符号116はケースカバー、符号121はプレート、符号143はグリースGの移動経路である流路をそれぞれ示している。
【0047】
[他の実施形態]
本発明に係る駆動装置1は、以上述べたような構成を有することを基本とするものであるが、本願発明の要旨を逸脱しない範囲内での部分的構成の変更や省略等を行うことも勿論可能である。
【0048】
例えば、本発明の駆動装置1は、回転駆動源であるモータ2を有しないで、外部の回転駆動源から動力が伝達される構成の装置であってもよい。また伝達歯車5、6、7、8、9は5枚に限らず、1から4枚あるいは6枚以上であっても構わない。
また、ケース本体17側の出力軸33と、出力歯車31と、伝達歯車30を有する伝達歯車輪列29を省略してケースカバー16側のみに出力軸13を設ける構成の駆動装置1とすることも可能である。
【0049】
この他、歯車側凸部45とケース側凹部47、ケース側凸部49と歯車側凹部51あるいは歯車側45とケース側凸部49によって構成される入り込み構造は、それぞれ単独で一組ずつ設ける他、同じ種類のものを複数組設けてもよいし、異なる種類のものを組み合わせて複数組設けることも可能である。
更に、流路43を形成している出力軸13、ケースカバー16、出力歯車11の壁面にグリースGの溜まり部となる溝や小さな凹部を設けることや、グリースGの移動抵抗となる小さな凸部等を設けることも可能である。
また、歯車側凸部45の高さHは、
図5に表す高さに限らず、それよりも高くても低くても構わない。同様に、ケース側凸部49の高さも、
図5に表す高さに限らず、それよりも高くても低くても構わない。
【符号の説明】
【0050】
1…駆動装置、2…モータ(回転駆動源)、3…伝達歯車輪列、5…伝達歯車、
6…伝達歯車、7…伝達歯車、8…伝達歯車、9…伝達歯車、11…出力歯車、
13…出力軸、15…ケース、16…ケースカバー、17…ケース本体、
19…ボス部、21…プレート、23…ピニオンギヤ、26…天板、27…底板、
28…軸部、29…伝達歯車輪列、30…伝達歯車、31…出力歯車、
33…出力軸、35…開口、37…開口、39…クリアランス部、
41…噛み合い部、43…流路(移動経路)、45…歯車側凸部、
47…ケース側凹部、49…ケース側凸部、51…歯車側凹部、53…頂部、
55…凹部、57…基端部位、59…底面、61…入り込み構造、63…頂部、
65…底面、67…(クリアランス部側の)下端位置、
69…(噛み合い部側の)下端位置、100…駆動装置、109…伝達歯車、
111…出力歯車、113…出力軸、115…ケース、116…ケースカバー、
121…プレート、143…流路、F…回転力、Z…上下方向(軸方向)、
G…グリース、H…高さ、D…深さ、T…間隔、h…高さ