【解決手段】磁気センサ1は、大バルクハウゼン効果を生ずる磁性線材11、コイル12およびボビン13を備え、ボビン13の軸方向中間部には、磁性線材11の軸方向中間部を収容する線材収容部15が設けられ、ボビン13の軸方向中間部の外周面にはコイル12が巻回され、ボビン13の軸方向における両端部には、磁性線材11の端部を支持する線材支持部21が設けられ、線材収容部15の横断面の面積は磁性線材11の横断面の面積よりも大きく、かつ磁性線材11はその軸方向中間部の外周面がその全周に亘って線材収容部15の内面から離間した状態を保つように線材支持部21により位置決めされている。
前記ボビンにおいて前記線材支持部が設けられた端部には、前記磁性線材の端部を前記線材支持部に固定するための接着剤を滞留させる凹部が設けられていることを特徴とする請求項2に記載の磁気センサ。
前記線材収容部と前記線材支持部との間には、前記線材収容部の内面と前記線材支持部の内面とを連続的に接続する傾斜面が形成されていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の磁気センサ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記磁性線材において、大バルクハウゼン効果を生ずるという磁気的特性、すなわち、外部磁界の変化に応じて磁化方向が急反転するという特性は、磁性線材を形成する過程で半硬質磁性材料の線材に捻りを加えることによって線材に生じた内部応力が、線材に残留することにより形成されると考えられる。
【0007】
このため、磁気センサのボビンに磁性線材を組み込んだ後に、この磁性線材に外力が加わると、この外力が、磁性線材に残留している内部応力に影響を及ぼし、磁性線材の上記磁気的特性が変動するおそれがある。
【0008】
上記磁気的特性の変動として、具体的には、外部磁界の変化に応じた磁化方向の反転のタイミングが変動することや、磁化方向の反転の立ち上がりが鈍ること等が考えられる。このような磁性線材の磁気的特性の変動のために、磁気センサの検出性能の安定性が悪くなり、検出精度が低下するおそれがある。
【0009】
この点、上記特許文献1に記載された磁気センサにおいては、感磁性ワイヤの軸方向中間部がボビンの貫通孔内に配設され、感磁性ワイヤの両端部がボビンの縁に固定されている。この磁気センサは、感磁性ワイヤの軸方向中間部と貫通孔の内面とが互いに離間した状態を保持する構造を有していない。したがって、この磁気センサにおいて、ボビンに外力が加わってボビンが変形した場合には、この変形により貫通孔の内面が感磁性ワイヤの軸方向中間部に接触するおそれがある。また、周囲の温度変化によるボビンの変形によって貫通孔の内面が感磁性ワイヤの軸方向中間部に接触するおそれもある。さらに、ボビンに加わった振動により感磁性ワイヤが位置ずれして感磁性ワイヤの軸方向中間部が貫通孔の内面に接触するおそれもある。感磁性ワイヤの軸方向中間部と貫通孔の内面とが接触すると、接触時に、貫通孔の内面から感磁性ワイヤの軸方向中間部に力が加わり、感磁性ワイヤの磁気的特性が変動するおそれがある。また、感磁性ワイヤの軸方向中間部が貫通孔の内面に接触した状態が維持された場合には、ボビンの変形に伴って感磁性ワイヤの軸方向中間部が変形し、感磁性ワイヤの上記磁気的特性が変動するおそれがある。
【0010】
本発明は例えば上述したような問題に鑑みなされたものであり、本発明の課題は、磁性線材に力が加わることによる磁性線材の磁気的特性の変動を抑制することができる磁気センサを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明の磁気センサは、大バルクハウゼン効果を生ずる磁性線材と、コイルと、前記磁性線材が支持され、かつ前記コイルが巻回された柱状のボビンとを備え、前記ボビンの軸方向中間部には、当該ボビンの軸方向中間部を軸方向に貫く溝または穴であり、前記磁性線材の軸方向中間部を収容する線材収容部が設けられ、前記ボビンの軸方向中間部の外周面には前記コイルが巻回され、前記ボビンの軸方向における少なくとも一方の端部には、線材収容部に接続する溝または穴であり、前記磁性線材の端部を支持する線材支持部が設けられ、前記ボビンの軸方向における各端部には、当該端部の外周面から径方向外向きに突出し、前記コイルの巻回範囲を制限する壁部が設けられ、線材収容部の横断面の面積は前記磁性線材の横断面の面積よりも大きく、かつ前記磁性線材は、当該磁性線材の軸方向中間部の外周面がその全周に亘って線材収容部の内面から離間した状態を保つように線材支持部により位置決めされていることを特徴とする。
【0012】
本発明の磁気センサにおいては、線材収容部の横断面の面積が磁性線材の横断面の面積よりも大きく、かつ磁性線材の軸方向中間部の外周面がその全周に亘って線材収容部の内面から離間した状態を保つように磁性線材が線材支持部により位置決めされている。この構成により、ボビンに外力が加わってボビンが変形した場合、周囲の温度変化によりボビンが変形した場合、およびボビンに振動が加わった場合のいずれにおいても、磁性線材の軸方向中間部が線材収容部の内面に接触することを防止することができる。これにより、磁性線材の軸方向中間部に力が加わって磁性線材の磁気的特性が変動することを抑制することができる。したがって、磁気センサの検出性能の安定性を向上させることができ、かつ検出精度を高めることができる。
【0013】
また、上述した本発明の磁気センサにおいて、線材収容部は前記ボビンの軸方向中間部の外周面に形成された溝であり、線材支持部は前記ボビンの軸方向における少なくとも一方の端部に形成された溝であり、線材収容部の幅は線材支持部の幅よりも大きく、かつ線材収容部の底面の位置は線材支持部の底面の位置よりも低いことが好ましい。
【0014】
また、上述した本発明の磁気センサにおいて、前記ボビンにおいて線材支持部が設けられた端部には、前記磁性線材の端部を線材支持部に固定するための接着剤を滞留させる凹部が設けられていることが好ましい。
【0015】
また、上述した本発明の磁気センサにおいて、線材収容部を、前記ボビンの軸方向中間部をその軸方向に貫通する穴とし、線材支持部を、前記ボビンの軸方向における少なくとも一方の端部に形成された穴とし、線材収容部の直径を線材支持部の直径よりも大きくしてもよい。
【0016】
また、上述した本発明の磁気センサにおいて、線材収容部と線材支持部との間には、線材収容部の内面と線材支持部の内面とを連続的に接続する傾斜面が形成されていることが好ましい。
【0017】
また、上述した本発明の磁気センサにおいて、線材収容部を前記ボビンの軸方向中間部の中心軸に対して偏心した位置に設けてもよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、磁性線材に力が加わることによる磁性線材の磁気的特性の変動を抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
(第1の実施形態)
図1は本発明の第1の実施形態の磁気センサ1を示している。なお、磁気センサ1の各部の配置や形状等を説明するに当たり、説明の便宜上、磁気センサ1の上(U)、下(D)、左(L)、右(R)、前(F)、後(B)の方向を各図中の右下に描いた矢印が示す方向とする。
【0021】
図1に示すように、磁気センサ1は磁性線材11、コイル12およびボビン13を備えている。ボビン13には磁性線材11が支持され、かつコイル12が巻回されている。
【0022】
磁性線材11は磁性材料により線状に形成されている。磁性線材11を形成する磁性材料は、鉄およびコバルトを含む半硬質磁性材料であることが好ましく、具体的には、鉄、コバルトおよびバナジウムを含む合金(FeCoV合金またはバイカロイ合金)が好ましい。また、磁性線材11は、0.1mm〜1mm程度、例えば0.25mmの直径を有している。
【0023】
磁性線材11は、上記磁性材料を、熱処理を介在させながら複数回線引きして上述した直径を有する線状に形成した後、その線状の材料に捻り加工を施し、その後、当該線状の材料を所定の長さに切断することにより形成されている。線状の材料に対する捻り加工は、例えば、右方向に数十〜数千回転、左方向に数十〜数千回転、右方向に数十〜数千回転というように、数十〜数千回転の捻りを、回転方向を反転させながら複数回行う。
【0024】
このようにして形成された磁性線材11は、磁化が容易な方向が当該磁性線材11の伸長方向である一軸異方性の性質を有している。また、磁性線材11は、その外周側部分よりも中心側部分の方が保磁力が大きい性質を有している。また、磁性線材11は、大バルクハウゼン効果を生じる性質、すなわち、磁性線材11の伸長方向のいずれか一方の方向の外部磁界を加えた後、この外部磁界の方向を反転させたときに、磁性線材11の磁化方向が急反転する性質を有している。
【0025】
コイル12は、絶縁材料が被膜された導線、例えばエナメル線により形成されている。巻回量を増やすために、コイル12を形成する導線の直径は例えば0.05mm程度であることが好ましい。
【0026】
図2は、磁気センサ1においてコイル12を除く部分、すなわち磁性線材11およびボビン13を
図1における上方から見た図である。
図3は
図2中の矢示III−III方向から見た磁性線材11およびボビン13の縦断面を示している。
図4は
図3中の矢示IV−IV方向から見た磁性線材11およびボビン13の横断面を示している。
【0027】
図2および
図3に示すように、ボビン13は例えば樹脂材料等により全体的に見て円柱状に形成されている。ボビン13は例えば射出成形により形成されている。図中のCはボビン13の中心軸を示している。なお、ボビン13の全体的な形状は円柱状に限らず、角柱状でもよい。
【0028】
ボビン13の軸方向中間部には、磁性線材11の軸方向中間部を収容する線材収容部15が形成されている。線材収容部15は、
図2に示すように、ボビン13の軸方向中間部を軸方向に直線状に伸長する溝である。線材収容部15は、
図4に示すように、ボビン13の軸方向中間部の上部かつ前後方向中間部に配置され、上方に開口している。また、線材収容部15はボビン13の中心軸Cに対して偏心した位置、具体的には中心軸Cよりも上側の位置に形成されている。また、ボビン13の軸方向中間部の外周面は、コイル12を巻回するためのコイル巻回部16となっている。また、本実施形態においては、ボビン13の軸方向中間部の横断面が楕円形状に形成されている。
【0029】
また、ボビン13の軸方向両端部には、コイル12の巻回範囲を制限する壁部17がそれぞれ形成されている。各壁部17はボビン13の軸方向端部の外周面からその全周に亘って径方向外向きに突出し、大略鍔状に形成されている。また、各壁部17の上側部分には磁性線材11を通すための挿通溝18が形成されている。また、各壁部17の前側部分には、コイル12の端部を巻き付けて固定すると共に、コイル12を回路に電気的に接続するための接続部材19が設けられている。各接続部材19は、導電性を有する金属製の棒状の部材をL字状に折り曲げることにより形成されている。各接続部材19の上端側は、コイル12の端部を巻き付けて固定するためのコイル接続部19Aとなり、各接続部材19の下端側は、例えば磁気センサ1が取り付けられる基板の回路に半田付けされることにより、コイル12と回路とを電気的に接続する回路接続部19Bとなっている。また、各壁部17の上部後側には、磁気センサ1を外部のケース等に支持する際に、磁気センサ1のケースにおける位置を定めるための突起20が形成されている。
【0030】
また、ボビン13の軸方向両端部であって壁部17よりもさらに端側の部分には、
図2および
図3に示すように、磁性線材11の端部を支持する線材支持部21がそれぞれ形成されている。各線材支持部21は、ボビン13の軸方向端部を軸方向に伸長する溝であり、上方に開口している。また、各線材支持部21は、線材収容部15の伸長方向の延長線上に配置され、挿通溝18を介して線材収容部15に接続している。また、ボビン13の軸方向の各端部において、軸方向に伸長する線材支持部21の途中には、磁性線材11の端部を線材支持部21に固定するための接着剤を滞留させる凹部22が形成されている。各凹部22は上方に開口し、線材支持部21よりも幅広に形成されている。また、ボビン13の右側の端部には、磁気センサ1の製造時にボビン13の右方から磁性線材11を線材収容部15等に挿入するための線材挿入部23が形成されている。線材挿入部23は右側の線材支持部21の伸長方向における延長線上に形成され、左端側は右側の線材支持部21に接続し、右端側はボビン13の右端面に達している。また、本実施形態においては、ボビン13の軸方向の各端部であって壁部17よりもさらに端側の部分、すなわち線材支持部21および凹部22が形成されている部分の横断面が四角形状に形成されている(
図8参照)。
【0031】
図5は
図2中の磁性線材11およびボビン13の左端側部分を拡大して示している。
図5に示すように、線材収容部15の幅W1は、磁性線材11の軸方向中間部が線材収容部15の内面から離間した状態を保ち得るように、磁性線材11の直径K1よりも十分に大きい値に設定されている。具体的には、線材収容部15の幅W1は磁性線材11の直径K1よりも例えば0.2mm以上大きい値に設定されている。一方、左側の線材支持部21の幅W2は、磁性線材11の前後方向における位置ずれ範囲を小さくするために磁性線材11の直径K1に近い値に設定されている。具体的には、左側の線材支持部21の幅W2は磁性線材11の直径K1よりも例えば0.01mm〜0.05mm程度大きい値に設定されている。この結果、線材収容部15の幅W1は左側の線材支持部21の幅W2よりも例えば0.15mm以上大きい。
【0032】
線材収容部15と左側の線材支持部21との間を接続する挿通溝18の右端側部分の幅は線材収容部15の幅W1と等しく、挿通溝18の左端側部分の幅は左側の線材支持部21の幅W2と等しい。挿通溝18の前側および後側の内面には傾斜面25A、25Bがそれぞれ形成され、これら傾斜面25A、25Bにより、挿通溝18の幅は右端側から左端側に向かって漸次小さくなっている。これにより、互いに幅の異なる線材収容部15と左側の線材支持部21とが連続的に接続されている。
【0033】
図6は
図3中の磁性線材11およびボビン13の左端側部分の縦断面を拡大して示している。
図6に示すように、磁性線材11の端部が線材支持部21の底面に接触した状態で磁性線材11の軸方向中間部が線材収容部15の底面から離間した状態を保ち得るように、線材収容部15の底面の位置H1は、左側の線材支持部21の底面の位置H2よりも例えば0.05mm以上低い。
【0034】
また、挿通溝18の右端側部分の底面の位置は線材収容部15の底面の位置H1と同じであり、挿通溝18の左端側部分の底面の位置は左側の線材支持部21の底面の位置H2と同じである。挿通溝18の底面には傾斜面25Cが形成され、傾斜面25Cにより、挿通溝18の底面の位置は右端側から左端側に向かって漸次上昇している。これにより、底面の位置が互いに異なる線材収容部15と左側の線材支持部21とが連続的に接続されている。
【0035】
図7は
図6中の矢示VII−VII方向から見た磁性線材11およびボビン13の切断面の端面を示している。なお、
図7中の二点鎖線は、コイル巻回部16に巻回されたコイル12を示している。
図7に示すように、線材収容部15の横断面の面積は磁性線材11の横断面の面積よりも大きい。具体的には、線材収容部15の幅W1は上述したように磁性線材11の直径K1よりも例えば0.2mm以上大きく、線材収容部15の深さD1も磁性線材11の直径K1よりも例えば0.2mm以上大きい。磁性線材11の軸方向中間部は線材収容部15内に完全に入っている。また、磁性線材11の軸方向中間部は、その全周に亘って、線材収容部15の前側の内面、線材収容部15の後側の内面、線材収容部15の底面(下側の内面)、およびコイル巻回部16に巻回されたコイル12において最も内周側に位置するコイルの下面のいずれからも離間している。
【0036】
図8は
図6中の矢示VIII−VIII方向から見た磁性線材11およびボビン13の切断面の端面を示している。
図8に示すように、左側の線材支持部21の幅W2は上述したように磁性線材11の直径K1よりも例えば0.01mm〜0.05mm程度大きく、当該線材支持部21の深さD2は磁性線材11の直径K1よりも大きい。磁性線材11の左側の端部は当該線材支持部21内の底側部分に位置している。また、磁性線材11の左側の端部の外周面における前部、後部および下部は、当該線材支持部21における前側の内面、後側の内面および底面(下側の内面)に極めて接近し、または接触している。なお、当該線材支持部21の幅W2は磁性線材11の直径K1よりも若干大きいので、磁性線材11の左側の端部の外周面における前部および後部が当該線材支持部21における前側の内面および後側の内面に同時に接触することはない。
【0037】
また、右側の線材支持部21は、
図2および
図3に示すように、その右端側が線材挿入部23と接続されている点を除き、左側の線材支持部21と同様に形成されている。すなわち、右側の線材支持部21の幅および底面の位置は、左側の線材支持部21の幅W2および底面の位置H2と同じである。また、線材収容部15と右側の線材支持部21とを接続する挿通溝18の前側の内面、後側の内面および底面には段部26A、26B、26Cが形成されている。
【0038】
なお、
図6において、線材収容部15の右端側部分の底面に形成された段部27は、線材収容部15から左側の線材支持部21に向かって漸次上昇する傾斜面25Cを金型により確実に成形するために設けられたものである。段部27を設けることで、線材収容部15の底面において段部27よりも左側を低くすることで、成型時の誤差等により、傾斜面25Cの傾斜が急になったり、傾斜面25Cの一部に段差が形成されたりすることを防止することができる。
【0039】
磁気センサ1は次のような手順で組み立てることができる。まず、ボビン13の左端側(または右端側)に設けられた接続部材19のコイル接続部19Aにコイル12の一端側を接続する。次に、ボビン13のコイル巻回部16にコイル12を巻回する。次に、ボビン13の右端側(または左端側)に設けられた接続部材19のコイル接続部19Aにコイル12の他端側を接続する。次に、磁性線材11の一端部をボビン13の右方から線材挿入部23に挿入し、さらに磁性線材11を右側の線材支持部21、右側の挿通溝18、線材収容部15、左側の挿通溝18および左側の線材支持部21に順次通す。これにより、磁性線材11の軸方向中間部は線材収容部15内に配置され、磁性線材11の両端部は左側および右側の線材支持部21内に配置される。次に、左側および右側の線材支持部21の途中にそれぞれ形成された凹部22に接着剤を注入する。接着剤が硬化すると、磁性線材11の両端部が左側および右側の線材支持部21にそれぞれ固定される。これにより磁気センサ1の組立が完了する。
【0040】
磁性線材11の両端部が左側および右側の線材支持部21にそれぞれ固定されることで、磁性線材11の軸方向中間部がその全周に亘って線材収容部15の内面から離間した状態が保持される。具体的に説明すると、磁性線材11の両端部の外周面が左側および右側の線材支持部21の前側の内面にそれぞれ接触した状態で磁性線材11の両端部が固定された場合、磁性線材11の軸方向中間部の外周面と線材収容部15の前側の内面との距離が最小となる。この距離は、線材収容部15の幅W1および各線材支持部21の幅W2を上述した値に設定した場合、0.05mm以上となる。また、磁性線材11の両端部の外周面が左側および右側の線材支持部21の後側の内面にそれぞれ接触した状態で磁性線材11の両端部が固定された場合、磁性線材11の軸方向中間部の外周面と線材収容部15の後側の内面との距離が最小となる。この距離は、線材収容部15の幅W1および各線材支持部21の幅W2を上述した値に設定した場合、0.05mm以上となる。また、磁性線材11の両端部の外周面が左側および右側の線材支持部21の底面にそれぞれ接触した状態で磁性線材11の両端部が固定された場合、磁性線材11の軸方向中間部の外周面と線材収容部15の底面との距離が最小となる。この距離は、線材収容部15の底面の位置H1を各線材支持部21の底面の位置H2よりも上述した値、低く設定した場合、0.05mm以上となる。このように、左側および右側の線材支持部21により、磁性線材11は、その軸方向中間部の外周面がその全周に亘って線材収容部15の内面から0.05mm以上離間した状態で位置決めされ、かつその状態が保持される。
【0041】
以上、説明した通り、本発明の実施形態の磁気センサ1においては、線材収容部15の幅を磁性線材11の直径および各線材支持部21の幅よりも大きくし、かつ線材収容部15の底面の位置を各線材支持部21の底面の位置よりも低くすることにより、磁性線材11の軸方向中間部がその全周に亘ってボビン13から離間した状態を保つように磁性線材11をボビン13に位置決めして支持する構成とした。この構成により、ボビン13に外力が加わってボビン13が変形した場合、周囲の温度変化によりボビン13が変形した場合、およびボビン13に振動が加わった場合のいずれにおいても、磁性線材11の軸方向中間部が線材収容部15の内面に接触することを防止することができる。これにより、磁性線材11の軸方向中間部に力が加わって磁性線材11の磁気的特性が変動することを抑制することができる。したがって、磁気センサ1の検出性能の安定性を向上させることができ、かつ検出精度を高めることができる。
【0042】
また、ボビン13の外周面に溝を設けることで線材収容部15および各線材支持部21を形成することにより、ボビン13を射出成形により容易に形成することが可能になる。
【0043】
また、各線材支持部21の途中に、接着剤を滞留させるための凹部22を形成したことにより、磁気センサ1の組立時に接着剤を凹部22に容易に注入することができ、磁性線材11の端部を線材支持部21に容易にかつ確実に固定することができる。
【0044】
また、左側の挿通溝18に傾斜面25A、25B、25Cを形成し、幅および底面位置が互いに異なる線材収容部15と左側の線材支持部21とを連続的に接続したことにより、磁気センサ1の組立時において、ボビン13のコイル巻回部16にコイル12を巻回した後に磁性線材11を右側の線材支持部21から線材収容部15等を介して左側の線材支持部21へ円滑に通すことができる。すなわち、仮に、線材収容部15と左側の線材支持部21との接続部分に、傾斜面ではなく、切り立った段部が形成されていた場合には、磁性線材11を右側の線材支持部21から線材収容部15等を介して左側の線材支持部21へ通すときに、磁性線材11の左端部が段部に引っ掛かり、磁性線材11を左側の線材支持部21へ通すことが困難になる。線材収容部15と左側の線材支持部21との接続部分に傾斜面25A、25B、25Cを形成したことにより、磁性線材11の左端部が引っ掛かる部分を除去することができ、磁性線材11を左側の線材支持部21へ円滑に通すことが可能になる。
【0045】
また、線材収容部15はボビン13の中心軸Cに対して偏心した位置に設けられている。これにより、磁性線材11と、磁性線材11に外部磁界を付与する磁石との距離を容易に選択することができる。すなわち、磁気センサ1を、
図1、
図2および
図4に示すように、線材収容部15が中心軸Cよりも上側に偏心した向きで磁石の上方に配置した場合と、磁気センサ1を、線材収容部15が中心軸Cよりも下側に偏心した向き(
図1、
図2および
図4に示す向きに対して上下逆向き)で磁石の上方に配置した場合とを比較すると、前者の場合の方が後者の場合よりも磁性線材11と磁石との距離が長くなる。このように、磁気センサ1を配置する際の上下方向の向きを選択することにより、磁性線材11と磁石との距離を長くしたり短くしたりすることができる。これにより、磁性線材11に加わる外部磁界の大きさを変更または調整することができる。特に、磁気センサ1を線材収容部15が中心軸Cよりも上側に偏心した向きで磁石の上方に配置した場合には、磁性線材11と磁石との距離を十分に確保しつつ、磁気センサ1の上下方向の寸法を小さくし、かつボビン13の強度低下を抑えることができる。これにより、上下方向に狭いスペースに磁気センサ1を容易に配置することが可能になる。また、
図4に示すように、ボビン13の軸方向中間部の横断面の形状を前後方向に長い楕円とすることによっても、磁気センサ1の上下方向の寸法を小さくし、かつボビン13の強度低下を抑えることができる。
【0046】
(第2の実施形態)
図9は本発明の第2の実施形態の磁気センサ51における磁性線材11およびボビン52の縦断面を示している。なお、
図9中の磁性線材11およびボビン52の断面の切断位置は、
図3中の磁性線材11およびボビン13の断面の切断位置と同じである。
図10は
図9中の矢示X−X方向から見た磁性線材11およびボビン52の断面を示している。また、本発明の第2の実施形態において、本発明の第1の実施形態と同一の構成要素には同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0047】
図9および
図10に示すように、本発明の第2の実施形態の磁気センサ51においては、線材収容部53がボビン52の軸方向中間部をその軸方向に貫通する穴であり、線材支持部54がボビン52の軸方向における両端部にそれぞれ形成された穴である。線材収容部53の直径は、磁性線材11の軸方向中間部が線材収容部53の内面から離間した状態を保ち得るように、磁性線材11の直径よりも十分に大きい値(例えば0.2mm以上大きい値)に設定されている。一方、線材支持部54の直径は、磁性線材11の前後方向および上下方向における位置ずれ範囲を小さくするために磁性線材11の直径に近い値(例えば0.01mm〜0.05mm程度大きい値)に設定されている。この結果、線材収容部53の直径は各線材支持部54の直径よりも例えば0.15mm以上大きい。また、線材収容部53、各線材支持部54および各挿通穴55はボビン13の中心軸Cから偏心した位置に形成されている。
【0048】
また、線材収容部53と左側の線材支持部54との間、および線材収容部53と線材支持部54との間には挿通穴55がそれぞれ形成されている。また、左側の挿通穴55には、線材収容部53と左側の線材支持部54とを連続的に接続する傾斜面56が形成され、右側の挿通穴55には段部57が形成されている。また、ボビン13の両端部には、各線材支持部54内へ接着剤を注入し、滞留させるための接着剤注入穴58がそれぞれ形成されている。
【0049】
このような構成を有する磁気センサ51によっても、本発明の第1の実施形態の磁気センサ1とほぼ同様の作用効果を得ることができる。
【0050】
なお、上記各実施形態では、磁性線材11の両端部をボビン13(52)に支持および固定する構成を例にあげたが、磁性線材11の片側の端部だけをボビン13(52)に支持および固定する構成としてもよい。また、上記各実施形態では、線材収容部15(53)をボビン13(52)の中心軸Cから偏心した位置に配置する構成を例にあげたが、線材収容部15(53)をボビン13(52)の中心に配置してもよい。
【0051】
また、本発明は、請求の範囲および明細書全体から読み取ることのできる発明の要旨または思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う磁気センサもまた本発明の技術思想に含まれる。