特開2019-132877(P2019-132877A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特開2019-132877重心位置調整部材を備える振れ補正機能付き光学ユニット、および、その重心位置調整部材の固定方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2019-132877(P2019-132877A)
(43)【公開日】2019年8月8日
(54)【発明の名称】重心位置調整部材を備える振れ補正機能付き光学ユニット、および、その重心位置調整部材の固定方法
(51)【国際特許分類】
   G03B 5/00 20060101AFI20190712BHJP
【FI】
   G03B5/00 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2018-12231(P2018-12231)
(22)【出願日】2018年1月29日
(71)【出願人】
【識別番号】000002233
【氏名又は名称】日本電産サンキョー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101465
【弁理士】
【氏名又は名称】青山 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100104204
【弁理士】
【氏名又は名称】峯岸 武司
(72)【発明者】
【氏名】新井 努
(72)【発明者】
【氏名】金井 孝志
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 俊之
【テーマコード(参考)】
2K005
【Fターム(参考)】
2K005AA20
2K005BA52
2K005CA04
2K005CA14
2K005CA23
2K005CA34
2K005CA44
2K005CA53
(57)【要約】
【課題】 筒部の被写体側端部から脱落する危険性無く、安定した固定保持力によって、筒部に形成された細径部に重心位置調整部材が確実かつ安定に保持固定される振れ補正機能付き光学ユニットを提供する。
【解決手段】 実装工程で、ウエイト10は、端部が曲げられていない細径部4a1の外周に内周が嵌められて、下端部が段部4a2に当接するまで、細径部4a1に挿入される。次の熱カシメ工程で、細径部4a1の被写体側端部にヒーターチップ41が当接させられ、ヒーターチップ41が所定温度に加熱され、被写体側と反対側へ向かう方向にヒーターチップ41に押圧力が加えられて、細径部4a1の被写体側端部が加圧される。この熱カシメ工程により、ウエイト10に囲まれない細径部4a1が筒部4aの軸心側から外周側へ曲げられる。
【選択図】 図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学素子を保持する鏡筒部材、前記光学素子によって結像される被写体光を受光する撮像素子、および、揺動駆動機構を構成するコイルまたはマグネットの一方が取り付けられる樹脂製のホルダを有する可動体と、
前記可動体を揺動支持機構を介して揺動自在に支持する、前記揺動駆動機構を構成するコイルまたはマグネットの他方が取り付けられる固定体と、
前記鏡筒部材の外周を囲む前記ホルダの筒部に取り付けられ、前記可動体の重心位置を調整する重心位置調整部材と
を備える振れ補正機能付き光学ユニットにおいて、
前記筒部は、被写体側端部の外径が軸心方向に所定長にわたって細く形成されて、被写体側端面から所定長の箇所に段部が形成され、
前記重心位置調整部材は、前記筒部の外径が細くなった細径部の外周に嵌まる内周の環状で、前記段部に下端部が当接する位置で前記細径部を前記所定長より短い軸方向長さに囲む形状に形成され、前記重心位置調整部材に囲まれない前記細径部が前記筒部の軸心側から外周側へ曲げられることで前記筒部に固定される
ことを特徴とする重心位置調整部材を備える振れ補正機能付き光学ユニット。
【請求項2】
前記重心位置調整部材は、前記筒部の外周側へ曲げられる前記細径部と当接する面に、前記筒部の軸心を中心にして被写体側へ向かうのにしたがって径方向外側へ傾斜する第1傾斜面が形成されることを特徴とする請求項1に記載の重心位置調整部材を備える振れ補正機能付き光学ユニット。
【請求項3】
前記筒部は、前記筒部の外周側へ曲げられる前記細径部の厚さと、前記重心位置調整部材に囲まれて曲げられない前記細径部の厚さとが同じ寸法に設定されることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の重心位置調整部材を備える振れ補正機能付き光学ユニット。
【請求項4】
前記重心位置調整部材は、被写体側の面に内縁を所定径方向長さ残す溝が形成されることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の重心位置調整部材を備える振れ補正機能付き光学ユニット。
【請求項5】
前記重心位置調整部材は、前記筒部の外周側へ曲げられる前記細径部と当接する面に凸部または凹部が少なくとも1つ以上形成されることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の重心位置調整部材を備える振れ補正機能付き光学ユニット。
【請求項6】
前記重心位置調整部材は、被写体側と反対側の面に、前記筒部の軸心を中心にして被写体側へ向かうのにしたがって径方向外側へ傾斜する第2傾斜面が形成されることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の重心位置調整部材を備える振れ補正機能付き光学ユニット。
【請求項7】
前記重心位置調整部材は、前記細径部のうちの、前記撮像素子に受光される被写体光が近接して通過する被写体側端部だけが曲げられることで前記筒部に固定されることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の重心位置調整部材を備える振れ補正機能付き光学ユニット。
【請求項8】
前記重心位置調整部材は、前記細径部の被写体側端部の全周が曲げられることで前記筒部に固定されることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の重心位置調整部材を備える振れ補正機能付き光学ユニット。
【請求項9】
前記細径部の外周に前記重心位置調整部材の内周を嵌めて前記重心位置調整部材の下端部が前記段部に当接するまで前記重心位置調整部材を挿入する実装工程と、
前記細径部の被写体側端部に所定形状をしたヒーターチップを当接させ、前記ヒーターチップを所定温度に加熱して被写体側と反対側へ向かう方向に前記ヒーターチップに押圧力を加えて前記細径部の被写体側端部を加圧することで、前記重心位置調整部材に囲まれない前記細径部を前記筒部の軸心側から外周側へ曲げる熱カシメ工程とを備えて、
請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の振れ補正機能付き光学ユニットにおける前記重心位置調整部材を前記筒部に固定する重心位置調整部材の固定方法。
【請求項10】
前記ヒーターチップは、前記細径部のうちの、前記撮像素子に受光される被写体光が近接して通過する被写体側端部だけに当接する形状を有して、当該被写体側端部だけを被写体側と反対側へ向かう方向に押圧することを特徴とする請求項7を引用する請求項9に記載の重心位置調整部材の固定方法。
【請求項11】
前記ヒーターチップは、前記細径部の被写体側端部の全周に当接する形状を有して、当該被写体側端部の全周を被写体側と反対側へ向かう方向に押圧することを特徴とする請求項8を引用する請求項9に記載の重心位置調整部材の固定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可動体の重心位置を調整する重心位置調整部材をホルダの筒部に備える振れ補正機能付き光学ユニット、および、その重心位置調整部材を筒部に固定する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の振れ補正機能付き光学ユニットとしては、例えば、特許文献1に開示されたものがある。
【0003】
この光学ユニットは、光学素子を備える可動体と、可動体を揺動支持機構によって揺動可能に支持する固定体とを備える。固定体は、光学素子であるレンズを被写体側に露出させて、可動体を収容する。可動体は、光学素子を保持する鏡筒部材および撮像素子を有する光学モジュールと、この光学モジュールを外周側から保持するホルダとを備える。可動体には揺動駆動用コイルが取り付けられ、固定体の各揺動駆動用コイルに対向する各内壁には揺動駆動用マグネットが取り付けられる。これら揺動駆動用コイルおよび揺動駆動用マグネットは揺動駆動機構を構成し、揺動駆動用コイルに通電されることで可動体を揺動させて、ピッチング方向およびヨーイング方向の振れ補正が行われる。
【0004】
ホルダの筒部には、環状の形状をしたウエイトが取り付けられている。ウエイトは可動体の重心位置を調整する重心位置調整部材であり、可動体はウエイトによって位置調整された重心位置を中心に揺動する。このウエイトは、ホルダの筒部の被写体側端部に接着剤によって取り付けられ、固定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2015−64501号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来の振れ補正機能付き光学ユニットでは、上記のように、接着剤によってウエイトが筒部の被写体側端部に取り付けられ、固定保持される。したがって、比較的重い材料で構成される傾向があるウエイトは、接着材による固定保持では、光学ユニットの落下時等における衝撃により、筒部の被写体側端部から脱落する危険性が高い。このため、脱落の危険を回避するため、接着材を大量に塗布することとなる。この結果、ウエイトの筒部への固定保持力が不安定になり、大きくばらつく。また、筒部の被写体側端部へウエイトを組み込む際に、接着材がこれらの間に介在する。このため、ウエイトの取り付け位置が被写体側端部から浮きやすく、可動体の重心位置がばらつく要因となる。また、ウエイトの取付箇所に接着材を塗布する作業は作業性が著しく悪く、光学ユニットの量産性に劣る
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明はこのような課題を解決するためになされたもので、光学素子を保持する鏡筒部材、光学素子によって結像される被写体光を受光する撮像素子、および、揺動駆動機構を構成するコイルまたはマグネットの一方が取り付けられる樹脂製のホルダを有する可動体と、可動体を揺動支持機構を介して揺動自在に支持する、揺動駆動機構を構成するコイルまたはマグネットの他方が取り付けられる固定体と、鏡筒部材の外周を囲むホルダの筒部に取り付けられ、可動体の重心位置を調整する重心位置調整部材とを備える振れ補正機能付き光学ユニットにおいて、筒部が、被写体側端部の外径が軸心方向に所定長にわたって細く形成されて、被写体側端面から所定長の箇所に段部が形成され、重心位置調整部材が、筒部の外径が細くなった細径部の外周に嵌まる内周の環状で、段部に下端部が当接する位置で細径部を所定長より短い軸方向長さに囲む形状に形成され、重心位置調整部材に囲まれない細径部が筒部の軸心側から外周側へ曲げられることで筒部に固定されることを特徴とする。
【0008】
本構成によれば、重心位置調整部材は、重心位置調整部材に囲まれない細径部が筒部の軸心側から外周側へ曲げられた曲げ部に上端部が係合することで、被写体側への移動が規制され、下端部が段部に係合することで、被写体側の反対側への移動が規制されて、ホルダの筒部に形成された細径部に確実に固定される。したがって、比較的重い材料で構成される傾向がある重心位置調整部材は、光学ユニットの落下時等に衝撃が加わっても、従来の、接着剤を使って重心位置調整部材をホルダの筒部に保持固定させる場合のように、筒部の被写体側端部から脱落する危険性は無く、筒部に形成された細径部に確実に保持固定される。このため、脱落の危険を回避するために接着材を大量に塗布することで、重心位置調整部材の固定保持力が不安定になって大きくばらつくといった従来の懸念は解消され、重心位置調整部材は安定した固定保持力によって筒部に安定して固定保持される。また、従来のように、筒部の被写体側端部と重心位置調整部材との間に接着材が介在することは無いので、重心位置調整部材の取り付け位置が浮いて、可動体の重心位置がばらつくおそれもない。このため、重心位置調整部材の取り付け位置精度が向上し、揺動駆動機構による振れ補正の正確性が増す。また、重心位置調整部材は、作業性が著しく悪い接着材の塗布作業を行わずに筒部の細径部に固定されるので、光学ユニットの量産性が向上する。このため、光学ユニットの製造コストを抑制することができる。
【0009】
また、本発明は、重心位置調整部材が、筒部の外周側へ曲げられる細径部と当接する面に、筒部の軸心を中心にして被写体側へ向かうのにしたがって径方向外側へ傾斜する第1傾斜面が形成されることを特徴とする。
【0010】
本構成によれば、筒部の外周側へ曲げられる細径部と重心位置調整部材とが当接する面に形成される第1傾斜面により、細径部が外周側へ曲げられる際に、細径部には筒部の内側から外側へ向かう半径方向の力が作用する。細径部は、この半径方向の力によって環状をした重心位置調整部材の第1傾斜面に均等に加圧され、その外周が第1傾斜面に隙間無く密着する。このため、重心位置調整部材の細径部への保持固定はがたつくことなく安定して行われる。また、細径部の中心は重心位置調整部材の中心に一致し、細径部に囲まれる鏡筒部材の中心、つまり、光学素子の光軸は重心位置調整部材の中心に一致する。これによっても揺動駆動機構による振れ補正の正確性が増す。
【0011】
また、本発明は、筒部が、筒部の外周側へ曲げられる細径部の厚さと、重心位置調整部材に囲まれて曲げられない細径部の厚さとが同じ寸法に設定されることを特徴とする。
【0012】
重心位置調整部材の筒部からの抜けは、筒部の外周側へ曲げられる細径部の曲げ部に重心位置調整部材の上端部が係合して、曲げ部が重心位置調整部材の抜ける力に対向することで、規制される。したがって、曲げ部の、重心位置調整部材の抜ける力に対向する力は、曲げ部の厚さが大きいほど大きい。本構成により、重心位置調整部材に囲まれて曲げられない細径部の厚さと曲げ部の厚さとが同じ寸法に設定されることで、細径部を単に曲げることで得られる曲げ部の厚さは最大の厚さとなり、曲げ部の、重心位置調整部材の抜ける力に対向する力も最大になる。このため、本構成によれば、光学ユニットの落下等によって重心位置調整部材に大きな衝撃力が加わっても、曲げ部が破壊することなく、重心位置調整部材は曲げ部によって筒部の被写体側端部に保持固定された状態に保たれる。
【0013】
また、本発明は、重心位置調整部材が、被写体側の面に内縁を所定径方向長さ残す溝が形成されることを特徴とする。
【0014】
筒部の外周側へ曲げられる細径部と重心位置調整部材の被写体側端面とが当接する径方向長さは短いほど、重心位置調整部材に衝撃力が加わったときに曲げ部へ印加される応力が小さくなるので、重心位置調整部材を筒部の被写体側端部に保持固定する力は向上する。一方、筒部の外周側へ曲げられる細径部の曲げ部長さは、一定に保つことが難しい。しかし、本構成によれば、重心位置調整部材の被写体側の面に溝を形成することで、重心位置調整部材の曲げ部に当接する径方向長さを一定に保つことができる。このため、この径方向長さが所定の短さになるように、重心位置調整部材の被写体側の面に内縁を所定径方向長さ残す溝を形成することで、重心位置調整部材を筒部の被写体側端部に保持固定する力を一定の大きな力に設定することができる。
【0015】
また、本発明は、重心位置調整部材が、筒部の外周側へ曲げられる細径部と当接する面に凸部または凹部が少なくとも1つ以上形成されることを特徴とする。
【0016】
本構成によれば、重心位置調整部材の細径部との当接面に形成される凸部または凹部と細径部の樹脂とが咬み合って係合することで、各部品間の接触面積が大きくなって重心位置調整部材の細径部への固定力が向上すると共に、重心位置調整部材の細径部周方向における移動に抵抗が与えられる。このため、筒部の外周側へ細径部を曲げて重心位置調整部材を細径部に固定した後、重心位置調整部材が細径部の周りを回転するのが防げる。
【0017】
また、本発明は、重心位置調整部材が、被写体側と反対側の面に、筒部の軸心を中心にして被写体側へ向かうのにしたがって径方向外側へ傾斜する第2傾斜面が形成されることを特徴とする。
【0018】
本構成によれば、重心位置調整部材の被写体側と反対側に、揺動する可動体の初期位置を規定するバネ部材が存在する場合、重心位置調整部材の被写体側と反対側の面に形成される第2傾斜面により、重心位置調整部材とバネ部材とが接触するのが防止される。このため、揺動する可動体の初期位置を規定するバネ部材の機能が阻害されることなく、発揮される。
【0019】
また、本発明は、重心位置調整部材が、細径部のうちの、撮像素子に受光される被写体光が近接して通過する被写体側端部だけが曲げられることで筒部に固定されることを特徴とする。
【0020】
本構成によれば、細径部のうちの、撮像素子に受光される被写体光が近接して通過する被写体側端部だけが部分的に外周側に曲げられることで、撮像素子によって撮影される画像の画角に影響を与えることなく、細径部の被写体側端部に曲げられていない直立部を残すことができる。このため、撮影画像の画角を確保しながら、直立部の突出端面を可動体の位置測定の基準面にして、可動体の揺動特性の検査を行うことができる。
【0021】
また、本発明は、重心位置調整部材が、細径部の被写体側端部の全周が曲げられることで筒部に固定されることを特徴とする。
【0022】
本構成によれば、光学ユニットにおける細径部の曲げ部が外部から視認される場合、細径部の被写体側端部の全周が曲げられていると、曲げ部の見栄えが向上する。また、重心位置調整部材を筒部の被写体側端部へ接着剤によって固定保持する従来の構成では、接着剤の塗布作業終了後、外観を整えるために、接着箇所にはみ出た余剰の接着剤を取り除く拭き取り作業が必要とされていたが、本構成によれば、この拭き取り作業が不要となる。
【0023】
また、本発明は、細径部の外周に重心位置調整部材の内周を嵌めて重心位置調整部材の下端部が段部に当接するまで重心位置調整部材を挿入する実装工程と、細径部の被写体側端部に所定形状をしたヒーターチップを当接させ、ヒーターチップを所定温度に加熱して被写体側と反対側へ向かう方向にヒーターチップに押圧力を加えて細径部の被写体側端部を加圧することで、重心位置調整部材に囲まれない細径部を筒部の軸心側から外周側へ曲げる熱カシメ工程とを備えて、上記のいずれかの振れ補正機能付き光学ユニットにおける重心位置調整部材を筒部に固定するように構成した。
【0024】
本構成の固定方法により、筒部の被写体側端部が軸心側から外周側へ熱によって曲げられることで、上記のいずれかの振れ補正機能付き光学ユニットにおける重心位置調整部材は、筒部に上記のように確実に固定される。
【0025】
また、本発明は、ヒーターチップが、細径部のうちの、撮像素子に受光される被写体光が近接して通過する被写体側端部だけに当接する形状を有して、当該被写体側端部だけを被写体側と反対側へ向かう方向に押圧することを特徴とする。
【0026】
本構成によれば、細径部の被写体側端部に曲げられていない直立部を残して、重心位置調整部材は筒部に固定される。
【0027】
また、本発明は、ヒーターチップが、細径部の被写体側端部の全周に当接する形状を有して、当該被写体側端部の全周を被写体側と反対側へ向かう方向に押圧することを特徴とする。
【0028】
本構成によれば、細径部の被写体側端部の全周が筒部の外周側に曲げられて、重心位置調整部材は筒部に固定される。
【発明の効果】
【0029】
本発明の重心位置調整部材を備える振れ補正機能付き光学ユニット、および、その重心位置調整部材の固定方法によれば、重心位置調整部材は、筒部の被写体側端部から脱落する危険性無く、安定した固定保持力によって、筒部に形成された細径部に確実かつ安定に保持固定される。また、重心位置調整部材の取り付け位置精度が向上し、揺動駆動機構による振れ補正の正確性が増す。また、光学ユニットの量産性が向上し、光学ユニットの製造コストを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】本発明の一実施形態による重心位置調整部材を備える振れ補正機能付き光学ユニットの外観斜視図である。
図2】一実施形態による振れ補正機能付き光学ユニット全体の縦断面図である。
図3】一実施形態による振れ補正機能付き光学ユニットの分解斜視図である。
図4】一実施形態による振れ補正機能付き光学ユニットから筒状ケースおよび被写体側ケースを取り外してウエイトを見下ろした状態の斜視図である。
図5】一実施形態による振れ補正機能付き光学ユニットを構成するウエイトの斜視図である。
図6】一実施形態による振れ補正機能付き光学ユニットを構成するホルダ単体にウエイトが取り付けられた状態の斜視図である。
図7図6に示すウエイトが取り付けられた状態のホルダの平面図である。
図8図7に示す状態のホルダをA−A線で破断して矢視方向から見た縦断面図である。
図9】(a)は、一実施形態による振れ補正機能付き光学ユニットを構成するホルダの筒部にウエイトを固定するのに使用されるヒーターチップが筒部の細径部の被写体側端部に押しつけられて熱カシメ工程が行われている状態の平面図、(b)はその状態の縦断面図である。
図10】(a)は、一実施形態による振れ補正機能付き光学ユニットを構成するホルダの筒部における細径部の一部拡大断面図、(b)は、一実施形態の第1変形例による光学ユニットを構成するホルダの筒部における細径部の一部拡大断面図である。
図11】一実施形態の第2変形例による光学ユニットを構成するウエイトの斜視図である。
図12】一実施形態の第3変形例による光学ユニットを構成するホルダ単体にウエイトが取り付けられた状態の平面図である。
図13】一実施形態の第3変形例による光学ユニットを構成するホルダの筒部にウエイトを固定するのに使用されるヒーターチップが筒部の細径部の被写体側端部に押しつけられて熱カシメ工程が行われている状態の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
次に、本発明による重心位置調整部材を備える振れ補正機能付き光学ユニット、および、その重心位置調整部材の固定方法を実施するための形態について説明する。
【0032】
(全体構成)
図1は、本発明の一実施形態による振れ補正機能付き光学ユニット1の外観斜視図、図2は縦断面図、図3は分解斜視図である。
【0033】
本明細書において、同一または相当する部分には同一符号を付して説明する。また、各図に示すXYZの3軸は互いに直交する方向であり、X軸方向の一方側を+X、他方側を−Xで示し、Y軸方向の一方側を+Y、他方側を−Yで示し、Z軸方向の一方側を+Z、他方側を−Zで示す。Z軸方向は、光学ユニット1の後述する可動体3が揺動していない状態で、可動体3に搭載されるレンズ8の光軸Lに沿う方向である。また、+Z方向が光軸L方向の物体側(被写体側)、−Z方向が光軸L方向の像側(被写体側の反対側(反被写体側))である。
【0034】
光学ユニット1は、筒状ケース2a、被写体側ケース2b、反被写体側ケース2cおよび底板2dから構成される固定体2を備える。筒状ケース2aは角筒状をしており、磁性材料から形成されている。被写体側ケース2bは、この筒状ケース2aに対して+Z方向の側(被写体側)から組み付けられ、反被写体側ケース2cは、筒状ケース2aに対して−Z方向の側(反被写体側)から組み付けられる。反被写体側ケース2cには、反被写体側からさらに底板2dが組み付けられる。被写体側ケース2b、反被写体側ケース2cおよび底板2dは樹脂材料から形成されている。
【0035】
固定体2の内部には、可動体3がホルダ4に支持されて、収容されている。ホルダ4の内周には図2に示すようにセンサカバー5の外周が固定されており、センサカバー5の反被写体側には、撮像素子6が実装された回路基板7が保持されている。被写体側ケース2bの開口部にはレンズ8が露出しており、レンズ8により撮像素子6に+Z方向から被写体光が入射させられる。鏡筒部材9の外周には雄ネジが刻まれており、この雄ネジがセンサカバー5の内周に刻まれた雌ネジと嵌まり合って、鏡筒部材9はセンサカバー5に固定されている。レンズ8および鏡筒部材9は光学モジュールを構成し、この光学モジュールと撮像素子6および回路基板7によってカメラモジュールが構成される。また、ホルダ4の被写体側端部にはウエイト10が固定されている。
【0036】
(重心位置調整部材)
図4は、光学ユニット1から筒状ケース2aおよび被写体側ケース2bを取り外して、ウエイト10を見下ろした状態の斜視図である。ウエイト10は、図5の斜視図に外観が示され、鏡筒部材9の外周を囲むホルダ4の筒部4aに、図6の斜視図および図7の平面図に示すように取り付けられる。図6および図7はホルダ4単体にウエイト10が取り付けられた状態を示している。ホルダ4は、樹脂によって設けられ、底板部4bの中央に円筒状をした筒部4aがZ軸を中心軸にして立設されている。筒部4aの中心軸は、鏡筒部材9によって固定保持されるレンズ8の光軸Lに一致する。
【0037】
図8は、図7に示すウエイト10が取り付けられた状態のホルダ4におけるA−A線破断矢視図である。筒部4aは、被写体側端部の外径が軸心方向に所定長にわたって細く形成された細径部4a1を有し、曲げられていないときの細径部4a1の被写体側端面から所定長の箇所に段部4a2が形成されている。ウエイト10は、細径部4a1の外周に嵌まる内周の環状で、段部4a2に下端部が当接する位置で細径部4a1を所定長より短い軸方向長さに囲む形状に形成されている。ウエイト10に当接して囲まれない細径部4a1が筒部4aの軸心側から外周側へ曲げられることで、ウエイト10は筒部4aに固定されている。本実施形態では、筒部4aは、筒部4aの外周側へ曲げられる細径部4a1の厚さt1と、ウエイト10に囲まれて曲げられない細径部4a1の厚さt2とが同じ寸法に設定されている。ウエイト10は、可動体3の重心位置を調整する重心位置調整部材を構成する。
【0038】
本実施形態では、ウエイト10は、筒部4aの外周側へ曲げられる細径部4a1と当接する面に、筒部4aの軸心を中心にして被写体側である+Z側へ向かうのにしたがって径方向外側へ傾斜する第1傾斜面10aが形成されている。また、ウエイト10は、被写体側と反対側の−Z側の面に、筒部4aの軸心を中心にして被写体側へ向かうのにしたがって径方向外側へ傾斜する第2傾斜面10bが形成されている。
【0039】
(揺動駆動機構)
ホルダ4の底板部4bのX軸方向およびY軸方向の各両側には、壁部4cが4箇所に+Z方向に向かって立設されている。4箇所の各壁部4cの外周側にはそれぞれ楕円状に突出したコイル取付部4dが形成されており、各コイル取付部4dには図4に示すように揺動駆動用コイル11が取り付けられる。また、筒状ケース2aのX軸方向に対向する両内壁およびY軸方向に対向する両内壁には、図2および図3に示すように、各揺動駆動用コイル11に対向して揺動駆動用マグネット12がそれぞれ取り付けられている。揺動駆動用コイル11および揺動駆動用マグネット12は揺動駆動機構を構成する。なお、揺動駆動機構は、揺動駆動用コイル11を筒状ケース2aの側に、揺動駆動用マグネット12をホルダ4の側に設けるように構成してもよい。
【0040】
(揺動支持機構)
固定体2と可動体3との間には、Z軸方向と直交し、かつ、X軸方向およびY軸方向に対して45度傾いた第1軸線R1周りおよび第2軸線R2周り(図3参照)に、可動体3を固定体2に揺動自在に支持するジンバル機構が、揺動支持機構として構成されている。この揺動支持機構は、可動体3の外周囲を囲む可動枠21を備える。ホルダ4の筒部4aの外周囲における第1軸線R1上の対角位置に設けられた2箇所の第1揺動支持部4e(図7参照)には図3に示す一対の第1接点バネ22、固定体2を構成する被写体側ケース2bにおける第2軸線R2上の対角位置に設けられた2箇所の第2揺動支持部2b1には一対の第2接点バネ23が取り付けられる。第1接点バネ22および第2接点バネ23は板状バネである。
【0041】
可動枠21の内周囲の4箇所には球体24が固定されており、これら球体24は、第1揺動支持部4eおよび第2揺動支持部2b1にそれぞれ保持される第1接点バネ22および第2接点バネ23と点接触する。第1揺動支持部4eに取り付けられる第1接点バネ22は第1軸線R1方向に、第2揺動支持部2b1に取り付けられる第2接点バネ23は第2軸線R2方向に弾性変形可能である。ホルダ4は、第1軸線R1上の対角位置に設けられた一対の球体24および一対の第1接点バネ22により、第1軸線R1周りに揺動可能な状態で可動枠21に支持される。また、可動枠21は、第2軸線R2上の対角位置に設けられた一対の球体24および一対の第2接点バネ23により、第2軸線R2周りに揺動可能な状態で固定体2に支持される。
【0042】
この結果、ホルダ4に取り付けられる可動体3は、第1軸線R1周りおよび第2軸線R2周りに揺動可能な状態で固定体2に支持されることになる。固定体2には、矩形枠状の板状ストッパ25が可動体3の周りを囲むように配置されて取り付けられている。可動体3は、この板状ストッパ25により、Z軸方向における−Z側である反被写体側への可動範囲が規制されている。
【0043】
また、筒部4aの被写体側の環状端面と、被写体側ケース2bの反被写体側端面との間には、図3に示す板バネ26が掛け渡される。板バネ26は、固定体2に対する可動体3の基準姿勢を規定するバネ部材を構成する。すなわち、揺動駆動用コイル11が駆動されていない静止状態にあるとき、可動体3の姿勢は、可動体3に保持されるレンズ8の光軸LがZ軸と一致する基準姿勢に、板バネ26によって保持される。
【0044】
(振れ補正)
光学ユニット1はフレキシブルプリント回路基板31,32を備える。フレキシブルプリント回路基板31は、ホルダ4の反被写体側端部外縁に沿って延在する矩形枠部分31a(図3参照)を有し、この矩形枠部分31aには各揺動駆動用コイル11が接続される。各揺動駆動用コイル11には、このフレキシブルプリント回路基板31によって駆動電流が供給される。フレキシブルプリント回路基板32は可動体3が保持する回路基板7に電気的に接続されている。
【0045】
フレキシブルプリント回路基板31を介して各揺動駆動用コイル11に電流が通電されると、各揺動駆動用コイル11と各揺動駆動用マグネット12との間に磁気駆動力が発生する。カメラモジュールによって撮影される被写体像は、これらの磁気駆動力により、可動体3が第1軸線R1周りおよび第2軸線R2周りに固定体2に対して揺動することで、可動体3に備えられるジャイロスコープによって検出されるX軸周りのピッチング方向およびY軸周りのヨーイング方向の像振れが補正される。
【0046】
(熱カシメ方法)
このような構成をした光学ユニット1におけるウエイト10は、次のようにしてホルダ4の円筒部4aに固定される。最初に、端部が曲げられていない細径部4a1の外周にウエイト10の内周が嵌められて、ウエイト10の下端部が段部4a2に当接するまで、ウエイト10が細径部4a1に挿入される実装工程が行われる。次に、細径部4a1の被写体側端部に図9に示す形状をしたヒーターチップ41が当接させられ、ヒーターチップ41が所定温度に加熱され、被写体側と反対側へ向かう方向にヒーターチップ41に押圧力が加えられて、細径部4a1の被写体側端部を加圧する熱カシメ工程が行われる。ここで、図9(a)は、ヒーターチップ41が細径部4a1の被写体側端部に押しつけられて熱カシメ工程が行われているときの平面図、図9(b)はそのときの縦断面図である。この熱カシメ工程は、例えば、210℃にヒーターチップ41が加熱され、5KgWの荷重で3秒間、ヒーターチップ41が細径部4a1の被写体側端部に押しつけられて、行われる。この熱カシメ工程により、ウエイト10に囲まれない細径部4a1が図示するように筒部4aの軸心側から外周側へ曲げられる。
【0047】
本実施形態では、ヒーターチップ41は、図9に示すように、細径部4a1の被写体側端部の全周に当接する形状を有しており、細径部4a1の被写体側端部の全周を被写体側と反対側へ向かう−Z側の方向に押圧する。このため、細径部4a1の被写体側端部の全周が筒部4aの外周側に曲げられて、ウエイト10は筒部4aに確実に固定される。
【0048】
(作用効果)
本実施形態の光学ユニット1によれば、ウエイト10は、ウエイト10に囲まれない細径部4a1が筒部4aの軸心側から外周側へ曲げられた曲げ部に上端部が係合することで、被写体側への移動が規制され、下端部が段部4a2に係合することで、被写体側の反対側への移動が規制されて、ホルダ4の筒部4aに形成された細径部4a1に確実に固定される。したがって、比較的重い材料で構成される傾向があるウエイト10は、光学ユニット1の落下時等に衝撃が加わっても、従来の、接着剤を使ってウエイトをホルダの筒部に保持固定させる場合のように、筒部4aの被写体側端部から脱落する危険性は無く、筒部4aに形成された細径部4a1に確実に保持固定される。ウエイト10の筒部4aへの固定保持力を実験で従来の場合と比較したところ、接着剤によってウエイトをホルダの筒部へ固定する従来の構成では、30N前後の固定保持力であった。しかし、熱カシメによってウエイト10を筒部4aへ固定する本実施形態の構成では、50N以上の固定保持力を確保できることが確認された。
【0049】
このため、脱落の危険を回避するために接着材を大量に塗布することで、ウエイト10の固定保持力が不安定になって大きくばらつくといった従来の懸念は解消され、ウエイト10は安定した固定保持力によって筒部4aに安定して固定保持される。また、従来のように、筒部4aの被写体側端部とウエイト10との間に接着材が介在することは無いので、ウエイト10の取り付け位置が浮いて、可動体3の重心位置がばらつくおそれもない。このウエイト10の浮きについては、上記の実験の際において、無いことが確認された。このため、ウエイト10の取り付け位置精度が向上し、揺動駆動機構による振れ補正の正確性が増す。また、ウエイト10は、作業性が著しく悪い接着材の塗布作業を行わずに筒部4aの細径部4a1に固定されるので、光学ユニット1の量産性が向上する。このため、光学ユニット1の製造コストを抑制することができる。
【0050】
また、本実施形態の光学ユニット1によれば、筒部4aの外周側へ曲げられる細径部4a1とウエイト10とが当接する面に形成される第1傾斜面10a(図8参照)により、細径部4a1が外周側へ曲げられる際に、細径部4a1には筒部4aの内側から外側へ向かう半径方向の力が作用する。細径部4a1は、この半径方向の力によって環状をしたウエイト10の第1傾斜面10aに均等に加圧され、その外周が第1傾斜面10aに隙間無く密着する。このため、ウエイト10の細径部4a1への保持固定はがたつくことなく安定して行われる。また、細径部4a1の中心はウエイト10の中心に一致し、細径部4a1に囲まれる鏡筒部材9の中心、つまり、レンズ8の光軸Lはウエイト10の中心に一致する。これによっても揺動駆動機構による振れ補正の正確性が増す。
【0051】
また、ウエイト10の筒部4aからの抜けは、筒部4aの外周側へ曲げられる細径部4a1の曲げ部にウエイト10の上端部が係合して、曲げ部がウエイト10の抜ける力に対向することで、規制される。したがって、細径部4a1の曲げ部の、ウエイト10の抜ける力に対向する力は、曲げ部の厚さt1が大きいほど大きい。本実施形態の光学ユニット1により、ウエイト10に囲まれて曲げられない細径部4a1の厚さt2と曲げ部の厚さt1とが同じ寸法に設定されることで、曲げ時に曲げ部の樹脂が展延するのを規制等すること無く、細径部4a1を単に曲げることで得られる曲げ部の厚さt1は最大の厚さとなり、曲げ部の、ウエイト10の抜ける力に対向する力も最大になる。このため、本実施形態の光学ユニット1によれば、光学ユニット1の落下等によってウエイト10に大きな衝撃力が加わっても、曲げ部が破壊することなく、ウエイト10は曲げ部によって筒部4aの被写体側端部に保持固定された状態に保たれる。
【0052】
また、本実施形態の光学ユニット1によれば、ウエイト10が、細径部4a1の被写体側端部の全周が曲げられることで、筒部4aに固定される。このため、本実施形態の光学ユニット1のように、光学ユニット1における細径部4a1の曲げ部が被写体側ケース2bの中央部に形成される開口部を介して外部から視認される場合、細径部4a1の被写体側端部の全周が曲げられていると、曲げ部の見栄えが向上する。また、ウエイト10を筒部4aの被写体側端部へ接着剤によって固定保持する従来の構成では、接着剤の塗布作業終了後、外観を整えるために、接着箇所にはみ出た余剰の接着剤を取り除く拭き取り作業が必要とされていた。しかし、細径部4a1の被写体側端部の全周が曲げられてウエイト10が固定される本構成によれば、この拭き取り作業が不要となる。
【0053】
また、本実施形態では、ウエイト10の被写体側と反対側に、揺動する可動体3の初期位置を規定する板バネ26が図2に示すように存在する。本実施形態の光学ユニット1によれば、ウエイト10の被写体側と反対側の面に形成される第2傾斜面10bにより、ウエイト10と板バネ26とが接触するのが防止される。このため、揺動する可動体3の初期位置を規定する板バネ26の機能が阻害されることなく、発揮される。
【0054】
(変形例)
筒部4aの外周側へ曲げられる細径部4a1とウエイト10の被写体側端面とが当接する径方向長さα(図10(a)参照)は短いほど、ウエイト10に衝撃力が加わったときに細径部4a1の曲げ部へ印加される応力が小さくなるので、ウエイト10を筒部4aの被写体側端部に保持固定する力は向上する。図10(a)は細径部4a1の曲げ部の一部拡大断面図である。一方、筒部4aの外周側へ曲げられる細径部4a1の曲げ部長さは、一定に保つことが難しい。このため、図10(b)に示す、本実施形態の第1変形例による光学ユニット1におけるウエイト10Aのように、被写体側の面に内縁を所定径方向長さβだけ残す溝10cが形成されるのが望ましい。この第1変形例による光学ユニット1によればウエイト10Aの被写体側の面に溝10cを形成することで、ウエイト10Aの曲げ部に当接する径方向長さを一定のβに保つことができる。このため、この径方向長さβが所定の短さになるように、ウエイト10Aの被写体側の面に内縁を所定径方向長さ残す溝10cを形成することで、ウエイト10を筒部4aの被写体側端部に保持固定する力を一定の大きな力に設定することができる。
【0055】
また、図11に示す、本実施形態の第2変形例による光学ユニット1におけるウエイト10Bのように、筒部4aの外周側へ曲げられる細径部4a1と当接する第1傾斜面10aに、溝10dが少なくとも1つ以上形成されるように構成してもよい。また、このような溝10dに限られず、筒部4aの外周側へ曲げられる細径部4a1と当接する面に、凸部または凹部が少なくとも1つ以上形成されるように構成してもよい。本構成によれば、ウエイト10Bの細径部4a1との当接面に形成される溝10dまたは凸部もしくは凹部と細径部4a1の樹脂とが咬み合って係合することで、各部品間の接触面積が大きくなってウエイト10Bの細径部4a1への固定力が向上すると共に、ウエイト10Bの細径部4a1周方向における移動に抵抗が与えられる。このため、筒部4aの外周側へ細径部4a1を熱カシメによって曲げてウエイト10Bを細径部4a1に固定した後、ウエイト10Bおよび細径部4a1の材質の相違による異なる線膨張率に起因して相互の部品間にガタが生じるなどして、ウエイト10Bが細径部4a1の周りを回転するのが防げる。また、ウエイト10Bが細径部4a1の周りを回転するのを確実に防止するため、熱カシメによる固定に接着剤による固定を併用するようにしてもよい。
【0056】
また、図12の平面図に示す、本実施形態の第3変形例による光学ユニット1におけるウエイト10のように、細径部4a1のうちの、撮像素子6に受光される被写体光が近接して通過する被写体側端部4a11だけが曲げられることで、筒部4aに固定されるように構成してもよい。同図において二点鎖線で示す四角形は、撮像素子6に受光される被写体光の範囲を示しており、撮影される画像の画角51に相当する。この画角51に入る映像領域52は図1における二点鎖線に示される。細径部4a1のうちの曲げられない被写体側端部4a12は、曲げられる被写体側端部4a11より高い高さで+Z方向に直立している。本構成によれば、細径部4a1のうちの、撮像素子6に受光される被写体光が近接して通過する被写体側端部4a11だけが部分的に外周側に曲げられ、その直立高さが+Z方向に低く形成されることで、被写体側端部4a11は映像領域52にかからなくなる。したがって、被写体側端部4a11だけが部分的に外周側に曲げられことで、撮像素子6によって撮影される画像の画角51に影響を与えることなく、細径部4a1の被写体側端部4a12に曲げられていない直立部を残すことができる。このため、撮影画像の画角51を確保しながら、被写体側端部4a12の突出端面を可動体3の位置測定の基準面にして、可動体3の揺動特性の検査を行うことができる。また、直立している被写体側端部4a12の外周とウエイト10の内周との間の隙間に接着剤を流し込むことで、ウエイト10の筒部4aへの熱カシメによる固定に接着剤による固定を併用することができ、更に確実な固定を図ることもできる。
【0057】
細径部4a1のうちの、撮像素子6に受光される被写体光が近接して通過する被写体側端部4a11だけを図12に示すように曲げるのには、図13の平面図に示すヒーターチップ42が用いられる。このヒーターチップ42は、細径部4a1のうちの、撮像素子6に受光される被写体光が近接して通過する被写体側端部4a11だけに当接する形状を有して、当該被写体側端部4a11だけを被写体側と反対側へ向かう方向に押圧する。このヒーターチップ42によれば、細径部4a1の被写体側端部4a12に曲げられていない直立部を残して、ウエイト10は筒部4aに固定される。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本実施形態による振れ補正機能付き光学ユニット1は、例えば、カメラ付き携帯電話機、ドライブレコーダー等の光学機器や、ヘルメット、自転車、ラジコンヘリコプター等の移動体に搭載されるアクションカメラやウエアラブルカメラ等の光学機器に利用することができる。このような光学機器では、撮影時に光学機器に振れが発生すると、撮像画像に乱れが発生するが、本実施形態による振れ補正機能付き光学ユニット1は、上記のようにウエイト10によって精度高く重心位置が調整された可動体3を固定体2に対して揺動させて、揺動駆動機構による振れ補正を正確に行うことで、撮像画像に振れが生じるのを精度高く回避することができる。
【符号の説明】
【0059】
1…振れ補正機能付き光学ユニット、2…固定体、2a…筒状ケース、2b…被写体側ケース、2b1…第2揺動支持部、2c…反被写体側ケース、2d…底板、3…可動体、4…ホルダ、4a…筒部、4a1…細径部、4a11,4a12…被写体側端部、4a2…段部、4b…底板部、4c…壁部、4d…コイル取付部、4e…第1揺動支持部、5…センサカバー、6…撮像素子、7…回路基板、8…レンズ(光学素子)、9…鏡筒部材、10…ウエイト(重心位置調整部材)、11…揺動駆動用コイル、12…揺動駆動用マグネット、21…可動枠、22…第1接点バネ、23…第2接点バネ、24…球体、25…板状ストッパ、26…板バネ、31,32…フレキシブルプリント回路基板、41,42…ヒーターチップ、51…画角、52…映像領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13