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特開2019-133376制御装置、終端器、断線検出方法及び火災報知システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2019-133376(P2019-133376A)
(43)【公開日】2019年8月8日
(54)【発明の名称】制御装置、終端器、断線検出方法及び火災報知システム
(51)【国際特許分類】
   G08B 29/06 20060101AFI20190712BHJP
   G08B 17/00 20060101ALI20190712BHJP
【FI】
   G08B29/06
   G08B17/00 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2018-14495(P2018-14495)
(22)【出願日】2018年1月31日
(71)【出願人】
【識別番号】000111074
【氏名又は名称】ニッタン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100166006
【弁理士】
【氏名又は名称】泉 通博
(74)【代理人】
【識別番号】100154070
【弁理士】
【氏名又は名称】久恒 京範
(74)【代理人】
【識別番号】100153280
【弁理士】
【氏名又は名称】寺川 賢祐
(72)【発明者】
【氏名】中村 憲太
【テーマコード(参考)】
5C087
5G405
【Fターム(参考)】
5C087AA02
5C087AA10
5C087AA23
5C087AA25
5C087AA37
5C087BB02
5C087CC04
5C087CC05
5C087DD04
5C087DD20
5C087FF01
5C087FF02
5G405AA01
5G405AA04
5G405AA06
5G405BA01
5G405CA15
5G405CA22
5G405CA25
(57)【要約】
【課題】火災感知器に接続される回線が分岐された場合であっても断線を検出できる制御装置、終端器、断線検出方法及び火災報知システムを提供する。
【解決手段】本発明の一実施形態に係る地区回路11は、回線Wを介して、回線Wに接続された終端器3の識別情報を示す第1信号を受信する通信部112と、記憶部113に記憶された識別情報と、第1信号が示す識別情報とを比較することによって、回線Wの断線及び終端器3の誤接続の少なくとも一方を検出する制御部111と、を有する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
火災感知器に接続される回線の状況を監視する制御装置であって、
前記回線を介して、前記回線に接続された終端器の識別情報を示す第1信号を受信する通信部と、
記憶部に記憶された識別情報と、前記第1信号が示す識別情報とを比較することによって、前記回線の断線及び前記終端器の誤接続の少なくとも一方を検出する制御部と、
を有する制御装置。
【請求項2】
前記通信部は、前記回線を介して、前記記憶部に記憶された識別情報を示す第2信号を前記終端器へ送信した後に、前記終端器から前記第1信号を受信する、請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記第2信号の送信から所定時間以内に、前記記憶部に記憶された識別情報と一致する識別情報を示す前記第1信号を前記通信部が受信できない場合に、前記回線の断線及び前記終端器の誤接続の少なくとも一方を検出する、請求項2に記載の制御装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記記憶部に記憶された複数の識別情報のそれぞれと、前記第1信号が示す識別情報とを比較することによって、前記回線の断線及び前記終端器の誤接続の少なくとも一方を検出する、請求項1から3のいずれか一項に記載の制御装置。
【請求項5】
前記通信部は、火災感知器に電力を供給する前記回線を介して前記第1信号を受信する、請求項1から4のいずれか一項に記載の制御装置。
【請求項6】
前記通信部は、前記終端器と複数の前記火災感知器とに接続されている前記回線を介して前記第1信号を受信する、請求項5に記載の制御装置。
【請求項7】
火災感知器に接続される回線の終端部に接続される終端器であって、
前記回線を介して、前記回線に接続された制御装置から識別情報を示す第2信号を受信する通信部と、
前記通信部が前記第2信号を受信したことを条件として、前記終端器自身の識別情報を示す第1信号を、前記通信部から前記回線を介して前記制御装置へ送信させる制御部と、
を有する終端器。
【請求項8】
前記制御部は、前記第2信号が示す識別情報が、前記終端器自身の識別情報と一致する場合に、前記終端器自身の識別情報を示す第1信号を、前記通信部から前記回線へ送信させる、請求項7に記載の終端器。
【請求項9】
火災感知器に接続される回線の状況を監視する制御装置のプロセッサが、
前記回線を介して、前記回線に接続された終端器の識別情報を示す第1信号を受信するステップと、
記憶部に記憶された識別情報と、前記第1信号が示す識別情報とを比較することによって、前記回線の断線及び前記終端器の誤接続の少なくとも一方を検出するステップと、
を実行する、断線検出方法。
【請求項10】
火災感知器に接続される回線の状況を監視する制御装置と、前記回線の終端部に接続される終端器と、を備え、
前記制御装置は、
前記回線を介して、前記終端器の識別情報を示す第1信号を受信する通信部と、
記憶部に記憶された識別情報と、前記第1信号が示す識別情報とを比較することによって、前記回線の断線及び前記終端器の誤接続の少なくとも一方を検出する制御部と、
を有し、
前記終端器は、前記第1信号を、前記回線を介して前記制御装置へ送信する通信部を有する、火災報知システム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、火災感知器に接続される回線の状況を監視する制御装置、終端器、断線検出方法及び火災報知システムに関する。
【背景技術】
【0002】
火災報知システムは、監視対象の地区に設置されている複数の火災感知器と、火災感知器が感知した火災を報知する制御装置(例えば受信機)とを含む。制御装置は、電線を含む回線で各火災感知器と接続される。制御装置は、回線に断線が発生すると火災感知器を用いて火災を感知できなくなるため、回線を監視して断線を検出することが求められている。
【0003】
従来、回線の終端部に終端器を設け、終端器を介して観測される電流又は電圧を監視することによって断線を検出する技術が知られている。また、特許文献1には、受信機から終端器へ呼出信号を送信し、終端器からの受信機へ戻る応答信号に基づいて断線を検出する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−80032号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
建物に配設する電線の量を削減するために、回線を制御装置と終端器との間で分岐したいという需要がある。分岐された複数の回線にそれぞれ終端器を設けると、制御装置に複数の終端器が接続されている状態になる。しかしながら、終端器を介した電流又は電圧を監視する技術を用いた火災報知設備は、回線に1つの終端器が接続されていることを前提とした設計値に基づいて断線を検出するため、回線に複数の終端器が接続されていると断線を正しく検出することができない。また、特許文献1に記載の技術を用いた火災報知設備は、複数の終端器が送信する応答信号を区別しないため、分岐された複数の回線の一部に発生した断線を検出することができない。
【0006】
本発明はこれらの点に鑑みてなされたものであり、火災感知器に接続される回線が分岐された場合であっても断線を検出できる制御装置、終端器、断線検出方法及び火災報知システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様の、火災感知器に接続される回線の状況を監視する制御装置は、前記回線を介して、前記回線に接続された終端器の識別情報を示す第1信号を受信する通信部と、記憶部に記憶された識別情報と、前記第1信号が示す識別情報とを比較することによって、前記回線の断線及び前記終端器の誤接続の少なくとも一方を検出する制御部と、を有する。
【0008】
前記通信部は、前記回線を介して、前記記憶部に記憶された識別情報を示す第2信号を前記終端器へ送信した後に、前記終端器から前記第1信号を受信してもよい。
【0009】
前記制御部は、前記第2信号の送信から所定時間以内に、前記記憶部に記憶された識別情報と一致する識別情報を示す前記第1信号を前記通信部が受信できない場合に、前記回線の断線及び前記終端器の誤接続の少なくとも一方を検出してもよい。
【0010】
前記制御部は、前記記憶部に記憶された複数の識別情報のそれぞれと、前記第1信号が示す識別情報とを比較することによって、前記回線の断線及び前記終端器の誤接続の少なくとも一方を検出してもよい。
【0011】
前記通信部は、火災感知器に電力を供給する前記回線を介して前記第1信号を受信してもよい。
【0012】
前記通信部は、前記終端器と複数の前記火災感知器とに接続されている前記回線を介して前記第1信号を受信してもよい。
【0013】
本発明の第2の態様の、火災感知器に接続される回線の終端部に接続される終端器は、前記回線を介して、前記回線に接続された制御装置から識別情報を示す第2信号を受信する通信部と、前記通信部が前記第2信号を受信したことを条件として、前記終端器自身の識別情報を示す第1信号を、前記通信部から前記回線を介して前記制御装置へ送信させる制御部と、を有する。
【0014】
前記制御部は、前記第2信号が示す識別情報が、前記終端器自身の識別情報と一致する場合に、前記終端器自身の識別情報を示す第1信号を、前記通信部から前記回線へ送信させてもよい。
【0015】
本発明の第3の態様の断線検出方法は、火災感知器に接続される回線の状況を監視する制御装置のプロセッサが、前記回線を介して、前記回線に接続された終端器の識別情報を示す第1信号を受信するステップと、記憶部に記憶された識別情報と、前記第1信号が示す識別情報とを比較することによって、前記回線の断線及び前記終端器の誤接続の少なくとも一方を検出するステップと、を実行する。
【0016】
本発明の第4の態様の火災報知システムは、火災感知器に接続される回線の状況を監視する制御装置と、前記回線の終端部に接続される終端器と、を備え、前記制御装置は、前記回線を介して、前記終端器の識別情報を示す第1信号を受信する通信部と、記憶部に記憶された識別情報と、前記第1信号が示す識別情報とを比較することによって、前記回線の断線及び前記終端器の誤接続の少なくとも一方を検出する制御部と、を有し、前記終端器は、前記第1信号を、前記回線を介して前記制御装置へ送信する通信部を有する。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、火災感知器に接続される回線が分岐された場合であっても断線を検出できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】火災報知システムの模式図である。
図2】地区回路及び終端器のブロック図である。
図3】火災報知システムによる断線検出方法の模式図である。
図4】応答要求信号及び応答信号の模式図である。
図5】火災報知システムにおける例示的な配線の模式図である。
図6】火災報知システムが行う断線検出方法のフローチャートを示す図である。
図7】地区回路と終端器との間の通信シーケンスを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
[火災報知システムSの概要]
図1は、本実施形態に係る火災報知システムSの模式図である。火災報知システムSは、火災受信機1と、火災感知器2と、終端器3とを含む。火災報知システムSは、火災警報監視対象となる警戒区域ごとに、一以上の火災感知器2及び終端器3を有する。警戒区域は、例えば建物の階層、階層を分割した領域、建物内の部屋等に対応する。
【0020】
火災感知器2は、それぞれ2本の回線W(電線)に接続されている、警戒区域内で火災が発生したことを検知するセンサである。火災感知器2は、火災を検知すると、自身の電気的特性(例えばインピーダンス)を変化させる、あるいは回線W上に信号を送信することによって、火災受信機1に火災を検知したことを通知する。
【0021】
終端器3は、火災感知器2が接続されている回線Wの、火災受信機1とは反対側の終端部に設けられる終端装置であり、火災受信機1と協働して回線Wの断線を検出するための処理を行う。終端器3は、回線Wの最も終端側(すなわち火災受信機1から最も遠い位置)にある火災感知器2に内蔵されてもよい。
【0022】
火災受信機1は、火災報知システムSの各種の動作を司る装置であり、例えば火災感知器2が火災を感知した際に報知するための制御を行う。火災受信機1は、例えばP型火災受信機である。火災受信機1は、地区回路11と、全体制御部12と、操作部13と、表示部14とを有する。
【0023】
地区回路11は、火災を検知する各警戒区域に対応する制御装置である。地区回路11は、対応する警戒区域内に設置された複数の火災感知器2のいずれかから火災を検知したことが通知されると、火災検知情報を全体制御部12に通知する。
【0024】
各地区回路11は、2本の回線W(例えば表示線及び共通線)を介して、火災感知器2及び終端器3に接続される。各地区回路11は、回線Wを介して、火災感知器2及び終端器3に電力を供給するとともに、終端器3との間で通信を行う。回線Wは、複数の火災感知器2に順に接続(いわゆる送り配線)され、地区回路11とは反対側の終端部において終端器3に接続される。
【0025】
火災報知システムSは、地区回路11と火災感知器2との間の回線W上に、中継器4を有してもよい。中継器4は、例えば地区回路11と火災感知器2との間で信号を変換する装置である。地区回路11は、中継器4を用いることによって、様々な種類の火災感知器2に対応できる。
【0026】
全体制御部12は、例えばCPU(Central Processing Unit)等のプロセッサであり、地区回路11からの火災検知情報に応じて、火災を報知する。例えば全体制御部12は、表示部14上で火災が発生した警戒区域を表示する、あるいはスピーカから火災が発生した警戒区域を示す音声を出力することによって、火災を報知する。また、全体制御部12は、後述の断線検出方法の結果に基づいて、表示部14上で断線又は誤接続が発生している回線Wを示す情報を表示する。
【0027】
操作部13は、キーボード、ボタン、スイッチ等の操作部材を含む。表示部14は、ディスプレイ、ランプ等の表示装置を含む。表示部14としてユーザによる接触の位置を検出可能なタッチスクリーンを用いることによって、操作部13と表示部14とを一体に構成してもよい。
【0028】
図2は、本実施形態に係る地区回路11及び終端器3のブロック図である。図2において、回線Wの火災感知器2は省略されている。地区回路11は、制御部111と、通信部112と、記憶部113とを有する。地区回路11は、これ以外の部材を有してもよい。
【0029】
通信部112は、回線Wを介して終端器3との間で通信するための通信インターフェースである。通信部112は、通信を実行するためのプロセッサ、コネクタ、電気回路等を含む。通信部112は、終端器3から受信した信号に所定の処理を行ってデータを取得し、取得したデータを制御部111に入力する。また、通信部112は、制御部111から入力されたデータに所定の処理を行って信号を生成し、生成した信号を終端器3に送信する。また、通信部112は、回線Wを介して火災感知器2及び終端器3へ電力を供給する。
【0030】
記憶部113は、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、ハードディスクドライブ等を含む記憶媒体である。記憶部113は、制御部111が実行するプログラムを予め記憶している。また、記憶部113は、地区回路11に接続されている1つ以上の終端器3それぞれの識別情報を記憶する。記憶部113は、地区回路11の外部に設けられてもよい。この場合に火災受信機1に含まれる複数の地区回路11は、火災受信機1が有する記憶部を、記憶部113として共有してもよい。
【0031】
制御部111は、例えばCPU等のプロセッサであり、記憶部113に記憶されたプログラムを実行することにより、所定の機能を実行する。制御部111の機能については、図3図7を用いて後述する。
【0032】
終端器3は、制御部31と、通信部32と、記憶部33とを有する。終端器3は、これ以外の部材を有してもよい。通信部32は、回線Wを介して地区回路11との間で通信するための通信インターフェースである。通信部32は、通信を実行するためのプロセッサ、コネクタ、電気回路等を含む。通信部32は、地区回路11から受信した信号に所定の処理を行ってデータを取得し、取得したデータを制御部31に入力する。また、通信部32は、制御部31から入力されたデータに所定の処理を行って信号を生成し、生成した信号を地区回路11に送信する。
【0033】
記憶部33は、ROM、RAM、ハードディスクドライブ等を含む記憶媒体である。記憶部33は、制御部31が実行するプログラムを予め記憶している。また、記憶部33は、終端器3自身の識別情報を記憶する。
【0034】
制御部31は、例えばCPU等のプロセッサであり、記憶部33に記憶されたプログラムを実行することにより、所定の機能を実行する。制御部31の機能については、図3図7を用いて後述する。
【0035】
地区回路11は、少なくとも1つの終端器3に回線Wを介して接続される。地区回路11に2つ以上の終端器3を接続する場合には、地区回路11からの回線Wは分岐され、分岐された回線Wのそれぞれの終端部に終端器3が接続される。図2の例では、地区回路11は、2つの終端器3に接続されているが、これに限定されず、回線Wを複数個所で分岐することによって3つ以上の終端器3に接続されてもよい。
【0036】
本実施形態に係る地区回路11及び終端器3は、図2に示す具体的な構成に限定されない。例えば地区回路11及び終端器3は、それぞれ1つの装置に限られず、2つ以上の物理的に分離した装置が互いに接続されることにより構成されてもよい。
【0037】
[断線検出方法の説明]
図3(a)、図3(b)は、本実施形態に係る火災報知システムSによる断線検出方法の模式図である。終端器3の記憶部33には、予め終端器3自身に固有の識別情報(ID)が登録されている。終端器3の識別情報は、例えば終端器3の製造番号である。
【0038】
地区回路11に終端器3を接続する際に、ユーザは、火災受信機1の操作部13を用いて、地区回路11に関連付けて終端器3の識別情報を入力する。火災受信機1の全体制御部12は、ユーザによる入力に基づいて、各地区回路11の記憶部113に、その地区回路11に接続されている少なくとも1つの終端器3の識別情報を記憶させる。
【0039】
図3(a)のように1つの地区回路11に1つの終端器3が接続されている場合には、記憶部113は、地区回路11に関連付けて1つの識別情報を記憶する。図3(b)のように1つの地区回路11に複数の終端器3が接続されている場合には、記憶部113は地区回路11に関連付けて複数の識別情報を記憶する。全体制御部12は、火災受信機1の記憶部に、各地区回路11に関連付けて終端器3の識別情報を記憶させてもよい。
【0040】
地区回路11において、制御部111は、所定の時間間隔で、あるいはユーザによる指示に従って、回線Wの状況を監視して断線検出を行う。断線検出を行う際に、制御部111は、記憶部113から自身に接続されている終端器3の識別情報を読み出し、読み出した識別情報を示す応答要求信号を生成する。そして制御部111は、生成した応答要求信号を、通信部112から回線Wへ送信する。
【0041】
回線Wに接続されている終端器3において、制御部31は、通信部32を用いて、地区回路11からの応答要求信号を受信する。制御部31は、地区回路11から応答要求信号を受信したことを条件として、記憶部33から終端器3自身の識別情報を読み出し、受信した応答要求信号が示す識別情報と比較する。終端器3の識別情報と応答要求信号の識別情報とが一致する場合に、制御部31は、終端器3の識別情報を示す応答信号を生成し、通信部32から回線Wへ送信する。
【0042】
終端器3の識別情報と応答要求信号の識別情報とが一致しない場合に、制御部31は、応答信号を生成及び送信しない。このように終端器3は自身の識別情報を示す応答要求信号を受信したときのみ応答信号を送信するため、回線Wに複数の終端器3が接続されている場合であっても、異なる終端器3からの応答信号が衝突することを抑制することができる。
【0043】
地区回路11において、制御部111は、通信部112を用いて、終端器3からの応答信号を受信する。制御部111は、応答要求信号に用いた識別情報を、受信した応答信号が示す識別情報と比較する。応答要求信号の送信から所定時間以内に応答要求信号の識別情報と一致する識別情報を示す応答信号を受信した場合に、制御部111は、その識別情報に対応する終端器3が回線Wに接続されている(すなわち、回線Wが断線していないこと及び回線Wに正しい終端器3が接続されていること)と判定する。
【0044】
応答要求信号の送信から所定時間以内に応答要求信号の識別情報と一致する識別情報を示す応答信号を受信できない場合に、制御部111は、その識別情報に対応する終端器3が回線Wに接続されていない(すなわち、回線Wが断線していること及び回線Wに誤った終端器3が接続されていることの少なくとも一方)と判定する。制御部111は、記憶部113に記憶されている識別情報に対応する終端器3それぞれについて、順に応答要求信号の送信及び応答信号の受信を繰り返す。そして制御部111は、回線Wが断線している又は誤った終端器3が接続されていることを検出した場合に、その旨を示す情報を、火災受信機1の表示部14から出力する。
【0045】
図3(a)の例では、1つの地区回路11に1つの終端器3(ID:1)が接続されている。回線Wに断線が発生しておらず、かつ地区回路11に正しい終端器3(すなわち記憶部113に記憶されている識別情報に対応する終端器3)が接続されている場合には、地区回路11は応答要求信号と同じ識別情報を示す応答信号を受信する。回線Wに断線が発生し、又は地区回路11に誤った終端器3(すなわち記憶部113に記憶されている識別情報に対応しない終端器3)が接続されている場合には、地区回路11は応答要求信号と同じ識別情報を示す応答信号を受信できない。
【0046】
図3(b)の例では、1つの地区回路11に2つの終端器3(ID:1及びID:2)が接続されている。地区回路11は、2つの終端器3の識別情報を示す応答要求信号を順に送信する。例えば地区回路11がID:2を示す応答要求信号を送信した際に、ID:1の終端器3は応答信号を送信せず、ID:2の終端器3のみが応答信号を送信する。そのため地区回路11は、ID:1の終端器3から応答信号を受信せず、ID:2の終端器3から応答信号を受信する。回線Wに断線が発生し、又は地区回路11に誤った終端器3が接続されている場合には、地区回路11はいずれかの終端器3の識別情報を示す応答信号を受信できない。
【0047】
このように地区回路11と終端器3とは、終端器3の識別情報を示す信号を授受することによって、回線Wが分岐している場合であっても、回線Wにおける断線の発生を検出できるとともに、終端器3の誤接続を検出できる。
【0048】
図3(a)、図3(b)においては、終端器3は応答要求信号に応じて応答信号を送信するが、応答要求信号によらず応答信号を送信してもよい。この場合には、終端器3は、自身の識別情報を示す応答信号を、所定の時間間隔で回線Wを介して地区回路11へ送信する。
【0049】
図3(a)、図3(b)においては、地区回路11が終端器3と信号を授受することによって回線Wの断線を検出する制御装置として機能しているが、回線Wに接続される火災受信機1又は中継器4が制御装置として機能してもよい。
【0050】
図4(a)、図4(b)は、応答要求信号及び応答信号の模式図である。図4(a)、図4(b)は、それぞれ回線Wに印加されている電圧の時間変化のグラフである。図4(a)は、パルス波を用いて応答要求信号及び応答信号を伝送する例を示す。地区回路11の制御部111は、応答要求信号を送信する際に、応答要求信号を示すパルスになるように回線Wの電圧を制御する。また、終端器3の制御部31は、応答信号を送信する際に、応答信号を示すパルスになるように回線Wの電圧を制御する。
【0051】
パルスは、高電圧(例えば10V)と低電圧(例えば0V)とが交互に出現する状態である。地区回路11の制御部111及び終端器3の制御部31は、例えばパルスの頻度や幅を所定の規則に従って制御することによって、応答要求信号及び応答信号とパルスとの間で情報を変換する。
【0052】
図4(b)は、正弦波を用いて応答要求信号及び応答信号を伝送する例を示す。地区回路11の制御部111は、応答要求信号を送信する際に、応答要求信号を示す正弦波になるように回線Wの電圧を制御する。また、終端器3の制御部31は、応答信号を送信する際に、応答信号を示す正弦波になるように回線Wの電圧を制御する。
【0053】
正弦波は、電圧が正弦関数として記述される周期的な波形となる状態である。地区回路11の制御部111及び終端器3の制御部31は、例えば正弦波の周波数や振幅を所定の規則に従って制御することによって、応答要求信号及び応答信号と正弦波との間で情報を変換する。
【0054】
火災感知器2には、火災を検知した場合に検知状態となり、その後に回線Wが所定の時間以上、所定の電圧(例えば5V)以下に設定されると検知状態を解除して復旧するものがある。そのため、地区回路11及び終端器3は、応答要求信号及び応答信号を示すパルス又は正弦波において連続的に所定の電圧以下になる時間を、火災感知器2が検知状態を解除する所定の時間よりも短くする。これにより、応答要求信号及び応答信号によって意図せず火災感知器2の検知状態が解除されることを防ぐことができる。
【0055】
地区回路11及び終端器3は、図4(a)、図4(b)に示した伝送方法に限定されず、回線Wを介して応答要求信号及び応答信号を伝送可能なその他方法を用いることができる。図4(a)、図4(b)の例では、30秒ごとに地区回路11から応答要求信号が送信され、50ミリ秒の応答要求信号及び応答信号が伝送されているが、信号の送信間隔及び長さは具体的な値に限定されない。
【0056】
図5(a)、図5(b)は、火災報知システムSにおける例示的な配線の模式図である。図5(a)、図5(b)において、視認性のために各地区回路11に接続されている回線Wは1本の線で表されている。終端器3a、3bは、異なる部屋に設置されている。地区回路11aは終端器3aに対応し、地区回路11bは終端器3bに対応する。すなわち、地区回路11aの記憶部113は終端器3aの識別情報を記憶し、地区回路11bの記憶部113は終端器3bの識別情報を記憶している。
【0057】
図5(a)の例では、回線Wを各部屋に接続する部分の誤接続によって、地区回路11aからの回線Wが終端器3bに接続されており、地区回路11bからの回線Wが終端器3aに接続されている。また、図5(b)の例では、回線Wを各地区回路11に接続する部分の誤接続によって、終端器3aからの回線Wが地区回路11bに接続されており、終端器3bからの回線Wが地区回路11aに接続されている。
【0058】
図5(a)、図5(b)において、地区回路11a、11bは、記憶部113に記憶された識別情報を示す応答信号を回線Wから受信できないため、回線Wに断線又は誤接続が発生していることを検出することができる。
【0059】
[断線検出方法のフローチャート]
図6は、本実施形態に係る火災報知システムSが行う断線検出方法のフローチャートを示す図である。まず地区回路11において、制御部111は記憶部113から、地区回路11に接続されている終端器3の数及び各終端器3の識別情報を取得する(S11)。制御部111は、処理対象の番号iを1(初期値)に設定する(S12)。
【0060】
制御部111は、ステップS11で識別情報を取得した終端器3のうち、i番目の終端器3の識別情報を示す応答要求信号を回線Wに送信する(S13)。このとき、制御部111は、終端器3からの応答信号を待つ時間を示す応答待ちタイマーを開始する(S14)。
【0061】
回線Wに接続されている各終端器3において、制御部31は、地区回路11から受信した応答要求信号が示す識別情報が、自身の識別情報に一致する場合に、その識別情報を示す応答信号を回線Wに送信する。
【0062】
地区回路11において、制御部111は、終端器3からの応答信号を受信する(S15)。制御部111は、ステップS15で受信した応答信号が示す識別情報を、ステップS13で送信した応答要求信号が示す識別情報と比較する。応答要求信号が示す識別情報と応答信号が示す識別情報とが一致した場合に(S16のYES)、制御部111はステップS18に進む。このとき、制御部111は、i番目の終端器3について、回線Wに断線が発生しておらず、かつ正しい終端器3が接続されていると判定してもよい。
【0063】
応答要求信号が示す識別情報と応答信号が示す識別情報とが一致しない場合(あるいはステップS14のタイマーが所定時間を経過した場合)に(S16のNO)、制御部111は、i番目の終端器3について、回線Wに断線が発生し、又は誤った終端器3が接続されていると判定する(S17)。そして、制御部111はステップS18に進む。
【0064】
制御部111は、処理対象の番号iに1を加える(S18)。番号iがステップS11で取得した終端器3の数を超えていない場合に(S19のNO)、制御部111はステップS13〜S18を繰り返す。番号iがステップS11で取得した終端器3の数を超えた場合に(S19のYES)、制御部111は処理を終了する。
【0065】
[断線検出方法の通信シーケンスの一例]
図7は、地区回路11と3つの終端器3との間の通信シーケンスを示す図である。3つの終端器3の識別情報は、例えばID:1、ID:2及びID:3である。地区回路11の記憶部113には、識別情報としてID:1、ID:2及びID:3が予め記憶されている。図7においてそれぞれの応答要求信号及び応答信号に付記されている番号は、該応答要求信号及び応答信号が示す識別情報の番号である。図7の例では、地区回路11とID:1及びID:2の終端器3との間の回線Wは正常であり、地区回路11とID:3の終端器3との間の回線Wは断線しているものとする。
【0066】
地区回路11の制御部111は、記憶部113から3つの終端器3の識別情報を読み出す。まず制御部111は、識別情報としてID:1を示す応答要求信号を回線Wに送信する。応答要求信号は回線Wを介してID:1及びID:2の終端器3に到達する。そしてID:1の終端器3の制御部31は、応答信号を回線Wに送信する。応答信号を受信した地区回路11の制御部111は、ID:1の終端器3について、回線Wに断線が発生しておらず、かつ正しい終端器3が接続されていると判定する。
【0067】
制御部111は、ID:2の終端器3についても同様に、応答要求信号及び応答信号を授受することによって、回線Wに断線が発生しておらず、かつ正しい終端器3が接続されていると判定する。
【0068】
次に制御部111は、識別情報としてID:3を示す応答要求信号を回線Wに送信する。応答要求信号は回線Wを介してID:1及びID:2の終端器3に到達するが、断線が発生しているためID:3の終端器3に到達しない。そして制御部111は、ID:3の終端器3からの応答信号を受信できないため、地区回路11とID:3の終端器3との間の回線Wに断線が発生している、又は誤った終端器3が接続されていると判定する。
【0069】
[本実施形態の効果]
本実施形態に係る制御装置(すなわち地区回路11、火災受信機1又は中継器4)及び終端器3は、回線Wを介して終端器3の識別情報を示す信号を授受することによって、回線Wの断線及び終端器3の誤接続を検出する。従来のように終端器を介した電流又は電圧を監視する技術を用いた制御装置は、回線が分岐されると電流又は電圧が設計値から変動するため、正しく断線を検出することができない。
【0070】
それに対して、本実施形態に係る制御装置は、回線Wが分岐されて複数の終端器3が接続される場合であっても、複数の終端器3それぞれからの信号を区別できるため、正しく断線を検出できる。それに加えて、制御装置は、例えば回線Wの取り違え等によって想定と異なる終端器3が回線Wに接続された場合に、正しい識別情報を示す信号を受信できなくなるため、誤接続を検出できる。
【0071】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。例えば、装置の分散・統合の具体的な実施の形態は、以上の実施の形態に限られず、その全部又は一部について、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。また、複数の実施の形態の任意の組み合わせによって生じる新たな実施の形態も、本発明の実施の形態に含まれる。組み合わせによって生じる新たな実施の形態の効果は、もとの実施の形態の効果を合わせ持つ。
【0072】
制御装置(すなわち地区回路11、火災受信機1又は中継器4)及び終端器3のプロセッサは、図6に示す断線検出方法に含まれる各ステップ(工程)の主体となる。すなわち、制御装置及び終端器3のプロセッサは、図6に示す断線検出方法を実行するためのプログラムを記憶部から読み出し、該プログラムを実行して制御装置及び終端器3の各部を制御することによって、図6に示す断線検出方法を実行する。図6に示す断線検出方法に含まれるステップは一部省略されてもよく、ステップ間の順番が変更されてもよく、複数のステップが並行して行われてもよい。
【符号の説明】
【0073】
S 火災報知システム
1 火災受信機
11 地区回路
111 制御部
112 通信部
113 記憶部
2 火災感知器
3 終端器
31 制御部
32 通信部
4 中継器
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7