【課題】スタイラスが例えば第2の筐体のパネル面において摺動あるいはホバー読み取り高さの範囲でホバー操作されている最中に、スタイラスが第1センサ電極群を介して送信されたアップリンク信号を検出してしまう事態を防ぐ。
【解決手段】センサシステム50は、スタイラスを未検出である場合に、第1センサ電極群100及び第2センサ電極群200のそれぞれを介してアップリンク信号を送信し、アップリンク信号を検出したスタイラスから送信されたダウンリンク信号を、第1センサ電極群100及び第2センサ電極群200のうちいずれか一方のセンサ電極群により検出した場合に、該一方のセンサ電極群を介したアップリンク信号の送信を継続するとともに、第1センサ電極群10及び第2センサ電極群200のうちの他方のセンサ電極群を介したアップリンク信号の送信を停止する。
更に、前記送信を停止した後、前記スタイラスから送信された前記ダウンリンク信号が検出されなくなったときに、前記他方のセンサ電極を用いた前記アップリンク信号の送信を再開する、
請求項1に記載のセンサシステム。
更に、前記アップリンク信号を検出した前記スタイラスから送信されたダウンリンク信号を前記一方のセンサ電極群により検出した場合であって、かつ、前記第1の筐体と前記第2の筐体との位置関係が所定の位置関係にあるときに、前記他方のセンサ電極群を介した前記アップリンク信号の送信を停止する、
請求項2に記載のセンサシステム。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0012】
図1は、スタイラス2を検出するセンサシステムを備える電子機器1の概要図である。同図に示すように、電子機器1は、第1の筐体10、第2の筐体20、連結部30、並びに、
図1には示していないが、ホストプロセッサ40及びセンサシステム50(
図2及び
図3を参照)を含み構成される。
【0013】
第1の筐体10及び第2の筐体20はそれぞれ、スタイラス2及び指3が摺動されるパネル面を備える。第1の筐体10には第1センサ電極群100が固定され、第2の筐体20には第2センサ電極群200が固定される。
【0014】
連結部30は、第1の筐体10に対して第2の筐体20が360°回動するように連結するヒンジである。連結部30には、フレキシブル基板300が備えられる。フレキシブル基板300は、第1の筐体10に対する第2の筐体20の回動に応じた角度で変形する。
【0015】
ホストプロセッサ40は、センサシステム50を用いて、指3またはスタイラス2からの操作を受付け、電子機器1の全体の制御を行う。センサシステム50は、第1センサ電極群100及び第2センサ電極群200に接続され、スタイラス2及び指3を検出し座標を導出してホストプロセッサ40に出力する。
【0016】
図2は、センサシステム50の概念図である。センサシステム50は、第1集積回路120、第2集積回路220、及び、IC間接続線130を含み構成される。
【0017】
第1集積回路120は、第1の筐体10の内部に収まるように設けられた第1ルーティング線101により第1センサ電極群100に含まれるそれぞれの電極に接続されるとともに、ホストプロセッサ40へのインタフェースとなる第1出力線121に接続され、更に、第2集積回路220との間で信号を送受するためのIC間接続線130に接続される。
【0018】
第2集積回路220は、第2の筐体10の内部に収まるように設けられた第2ルーティング線201により第2センサ電極群200に含まれるそれぞれの電極に接続されるとともに、ホストプロセッサ40へのインタフェースとなる第2出力線221に接続され、更に、第1集積回路120との間で信号を送受するためのIC間接続線130に接続される。
【0019】
IC間接続線130は、第1集積回路120と第2集積回路220との間で信号を通信するための信号線である。IC間接続線130は、第1ルーティング線101及び第2ルーティング線201とは異なり、少なくともその一部が連結部30の回動に伴って変形するフレキシブル基板300に設けられる。IC間接続線130は、図では単線で示されているが、後述する検出状況を互いに通知するために必要な複数の信号線を含むものである。
【0020】
図3は、センサシステム50の他の例による概念図である。同図の構成によれば、第1ルーティング線101は連結部30の回転角に対し無関係な角度で固定的に第1の筐体10の内部で折り曲げられ、第1集積回路120にて終端される。同様に、第2ルーティング線は、連結部30の回転角に対し無関係な角度で固定的に第2の筐体20の内部で折り曲げられ第2集積回路220にて終端される。そして、IC間接続線130は、前記ヒンジの回転に伴って折り曲げられる。従って、第1センサ電極群100あるいは第2センサ電極群200の電極を、第1の筐体10あるいは第2の筐体20それぞれのパネル面の端部まで、より広く配置することができ、かつ、多数の電極に接続される第1ルーティング線101及び第2ルーティング線201については、連結部30の折り曲げによる断線の確率を低減することが可能になり、センサシステム50の信頼性を向上することが可能となる。
【0021】
次に、センサシステム50の動作を説明する。
【0022】
図4は、センサシステム50に含まれる、第1集積回路120及び第2集積回路220の動作フロー図である。第1集積回路120及び第2集積回路220はそれぞれ、特許文献1に記載のセンサコントローラのように、アップリンク信号US(後述)を送信し、アップリンク信号USを検出したスタイラス2から送信されたダウンリンク信号DSを検出し、スタイラス2の位置をホストプロセッサ40に出力するものである。第1集積回路120及び第2集積回路220は、IC間接続線130によりスタイラス2の検出状態を共有するが、それぞれのアップリンク信号USの送信等、それぞれの電極群を用いたスタイラス2あるいは指3の位置検出動作自体は、互いに独立に、換言すれば非同期に動作する。第1集積回路120及び第2集積回路220がこのように独立な動作を行うことにより、ホストプロセッサ40が、第1集積回路120あるいは第2集積回路220の一方、あるいは、両方によるスタイラス2または指3の位置検出制御を制御するにあたり、アップリンク信号USの送信タイミング、あるいは座標検出などについて、第1集積回路120及び第2集積回路220の制御タイミングの同期をとる必要がなくなり第1の筐体10と第2の筐体20との独立性を維持することができる。
【0023】
以下、
図4を用いて、指3が第1の筐体10の上で摺動する一方、スタイラス2が第2の筐体20の上で摺動操作されるシナリオを例に、第1集積回路120及び第2集積回路220の動作フローを説明する。
【0024】
大きく分けて、破線枠で示すステップ710はスタイラス2を検出するペン検出処理であり、ステップ720は指3を検出する指検出処理であり、同図に示すように、第1集積回路120及び第2集積回路220はそれぞれ、ペン検出処理と指検出処理とを時分割で実行する。
【0025】
<ペンアップ操作の後からペンダウン操作されるまで>
ステップ711において、第1集積回路120及び第2集積回路220はそれぞれ、他の集積回路(第1集積回路120にとっては第2集積回路220、第2集積回路220にとっては第1集積回路120)におけるスタイラス2の検出状態を取得する。当該検出状態が未検出である場合、すなわちステップ712の判定結果が「未検出」である場合、第1集積回路120及び第2集積回路220はそれぞれ、ステップ713にてアップリンク信号USの送信を継続する。
【0026】
第1集積回路120及び第2集積回路220がそれぞれこの動作を行うことで、センサシステム50は、第1集積回路120及び第2集積回路220のいずれにおいてもスタイラス2を未検出である場合に、第1センサ電極群及び第2センサ電極群の両方を介してアップリンク信号USをそれぞれが送信することになる。
【0027】
図5は、第1の筐体10と第2の筐体20とが第1角度にある状態において、センサシステム50により送信されるアップリンク信号USの到達範囲を示す図である。図中、破線の台形枠で模式する範囲UR1及びUR2は、それぞれ第1集積回路120及び第2集積回路220が第1センサ電極群100及び第2センサ電極群200を介して送信したアップリンク信号USの到達範囲を示す。この範囲は、スタイラス2の内部に備えられた受信回路により、アップリンク信号USを検出することのできる感度に応じて定まる。
【0028】
また、破線の円形枠で模式する範囲DRは、ダウンリンク信号DSの到達範囲である。第1集積回路120あるいは第2集積回路220が、第1センサ電極群100あるいは第2センサ電極群200を介してスタイラス2の送信した信号を検出することのできる感度に応じて定まる範囲をホバー読み取り高さと称する。
【0029】
ここで、アップリンク信号USは、パネル面をなるべく広く覆うように配設された第1センサ電極群100及び第2センサ電極群200を構成する複数の電極の中の複数個を用いて送信される。これに対し、ダウンリンク信号DSは、スタイラス2の先端に設けられた電極1つのみから送信される。従って、アップリンク信号USの検出可能範囲は、一般にホバー読み取り高さに比して広い(高い)。特許文献1に記載の方法などによる構成例を用いた場合は、アップリンク信号USは十cmを越える高さであっても検出可能である。逆に、ホバー読み取り高さは一般に数cmの範囲である。
【0030】
図5に示した(a)または(b)の位置に存在するスタイラス2は、第1センサ電極群100または第2センサ電極群200のいずれか一方のアップリンク信号USのみを検出可能である。しかし、スタイラス2が図中ハッチングで示す範囲UR12に位置する場合は、事情が異なる。第1センサ電極群100を介して送信されるアップリンク信号と、第2センサ電極群200を介して送信されるアップリンク信号とは、同じ波形の信号であり、スタイラス2はいずれのアップリンク信号をも区別なく検出するため、スタイラス2は、第1センサ電極群100を介して送信されたアップリンク信号US及び第2センサ電極群200を介して送信されたアップリンク信号USのどちらをも検出する可能性がある。すると、スタイラス2は、図中破線矢印Pathで示す第2の筐体20のパネル面へのペンダウン操作の最中であったとしても、基準時刻が第1センサ電極群100によるものに設定されてしまい、意図せず第1集積回路120と同期してしまう可能性が生ずる。
【0031】
図6は、第1の筐体10と第2の筐体20とが、第1角度より狭い角度である第2角度にある状態において、センサシステム50により送信されるアップリンク信号USの到達範囲を示す図である。この場合は、
図5の場合に比してより高い確率で第1集積回路120と同期する場合が生じる。
【0032】
図7は第1の筐体10と第2の筐体20とが、第1角度より広い角度である第3角度にある状態において、センサシステム50により送信されるアップリンク信号USの到達範囲を示す図である。この場合、第1センサ電極群100を介して送信されたアップリンク信号US及び第2センサ電極群200を介して送信されたアップリンク信号USがともに検出可能となる範囲UR12は生じない。
【0033】
このように、第1センサ電極群100を介して送信されたアップリンク信号US及び第2センサ電極群200を介して送信されたアップリンク信号USがともに検出可能となる範囲UR12の広さは、第1の筐体10と第2の筐体20との成す角によって異なる。特に、
図6の角度のように第1の筐体10のパネル面と第2の筐体20のパネル面との成す角が狭くなると、範囲UR12が顕著に広がってしまい、第2の筐体10のパネル面において摺動あるいはホバー読み取り高さの高さでホバー操作されているにもかかわらず、スタイラス2が第1センサ電極群100からのアップリンク信号USを検出してしまう可能性が高まることになる。
【0034】
図4に戻る。ここでは、第2集積回路220が、アップリンク信号USを送信した後、ステップ714において、スタイラス2から送信されたダウンリンク信号DSを検出したとする。つまり、第2集積回路220においては、ステップ714の判定がYESとなる。一方、第1集積回路120については、ダウンリンク信号DSを検出せず、ステップ714の判定がNOとなったとする。その結果、第1集積回路120は、後述するステップ715,716を実行することなく、静電容量方式を用いて指3を検出する指検出処理(ステップ720)を実行し、ステップ711に戻る。
【0035】
<ペンダウン操作の後からペンアップ操作されるまで>
スタイラス2が第1集積回路120あるいは第2集積回路220のいずれのホバー読み取り高さDRにも入らない空中で把持されている状態では、第2集積回路220においてもダウンリンク信号DSは検出されず、上述ステップの処理が繰り返される。
【0036】
その後、スタイラス2が、軌跡Pathに示すように、第2の筐体20のパネル面に近付けられ第2センサ電極群200によるホバー読み取り高さDRの内にまでペンダウン操作されると、第2集積回路220はダウンリンク信号DSを検出する。すなわち、ステップ714における判定の結果がYESになる。
【0037】
すると第2集積回路220は、自身がスタイラス2を「検出済」であることを、第1集積回路120に通知する。この通知はIC間接続線130を介し、例えば、複数のIC間接続線130のうち、1本の接続線の電圧をLowからHighにすることで行われる。第2集積回路220によるステップ715の通知により、同じ動作フローで独立に動作する他の集積回路である第1集積回路120では、ステップ712の判定の結果が「検出済」になり、アップリンク信号USの送信が停止されることになる。
【0038】
図8は、
図5に対応する図であり、第2集積回路220によりスタイラス2が検出済となった後の、センサシステム50により送信されるアップリンク信号USの到達範囲を示す図である。
図9は、
図6に対応する図である。
【0039】
図4に戻る。その後、第2集積回路220は、ステップ716において、第2センサ電極群200に含まれる各電極におけるダウンリンク信号DSの検出レベルに基づいてスタイラス2の位置を導出し、ホストプロセッサ40に出力する。
【0040】
ステップ720においては、第1集積回路120及び第2集積回路220のそれぞれが指検出処理を実行する。ステップ715の通知は、スタイラス2が、第2の筐体20のパネル面にて摺動され、スタイラス2が第2センサ電極群200に対してホバー読み取り高さDRの内に存在し続ける限り、繰り返される。
【0041】
その後、スタイラス2が再びホバー読み取り高さDRの外に出ると、第2集積回路220によるステップ715の通知は行われなくなり、第1集積回路120でのアップリンク信号USの送信が再開される。
【0042】
このようにセンサシステム50は、第1センサ電極群100に接続され、第1の筐体10のパネル面におけるスタイラス2の位置を検出する第1集積回路と、第2センサ電極群200に接続され、第2の筐体20のパネル面におけるスタイラス2の位置を検出する第2集積回路220と、第1集積回路120と第2集積回路220とを結合するIC間接続線130とを含み、第2集積回路220がスタイラス2の存在を検出した場合に、IC間接続線130を介して第1集積回路120に検出済を示す通知を行うことで、第1集積回路120による第1センサ電極群100を用いたアップリンク信号USの送信を停止する。
【0043】
センサシステム50は更に、送信を停止した後、スタイラス2から送信されたダウンリンク信号DSが検出されなくなったときに、他のセンサ電極である第1センサ電極群100を用いたアップリンク信号USの送信を再開する。
【0044】
この構成により、特に、第1の筐体10と第2の筐体20とが
図6に示すような角度に近接したとしても、スタイラス2が第2の筐体10のパネル面において摺動あるいはホバー読み取り高さの範囲でホバー操作されている最中には、スタイラス2が第1センサ電極群100を介して送信されたアップリンク信号USを検出してしまう事態を防ぐことが可能になる。
【0045】
<変形例>
図10は、変形例による、第1集積回路120または第2集積回路の動作フロー図である。以下、
図4の動作フローと異なる点のみを説明する。
【0046】
まず、変形例においては、他の集積回路によるスタイラス2の検出状態に基づいた
図4のステップ712の判定に替えて、他の集積回路によるスタイラス2の検出状態とともに第1の筐体10と第2の筐体20との位置関係を判定の基準とする。
【0047】
これにより、例えば、アップリンク信号USの干渉が発生し得ない
図7に示した位置関係のような場合には、例えば第2集積回路220によりスタイラス2が検出された場合であっても、第1集積回路120によるアップリンク信号USの送信を継続することが可能になる。したがって、第1の筐体10及び第2の筐体20の両方のパネル面において、それぞれスタイラス2を検出する動作を実行することが可能になり、センサシステム50の可用性を向上することが可能になる。
【0048】
次に、
図10に示す変形例によるセンサシステム50では、ステップ716においてダウンリンク信号によりペン位置の導出と出力とを行った集積回路は、
図4に示すように指検出処理(ステップ720)を行うのではなく、
図10に示すようにペン検出処理(ステップ710)を続行する。また、
図10のステップ1012において、一方の集積回路は、他方の集積回路がスタイラス2を検出している場合には、ペン検出処理(ステップ710)をスキップし、指検出処理(ステップ720)のみを繰り返し実行する。
【0049】
図11は、この変形例によるセンサシステム50の動作を説明する動作フロー図である。
図11では、第2集積回路220がスタイラス2を検出した場合を例にとって説明する。
【0050】
第2集積回路220はステップ714によりダウンリンク信号DSを検出すると、第1集積回路120に通知する(ステップ715)。
【0051】
この通知を受けている間、第1集積回路120は、ペン検出処理(ステップ710)をスキップし、指3の位置を検出する指検出処理(ステップ720)のみを繰り返す(ステップ1120)。
【0052】
他方、スタイラス2のダウンリンク信号DSを検出した第2集積回路220は、指検出処理(ステップ720)をスキップし、スタイラス2を検出するペン検出処理(ステップ710)のみを繰り返す(ステップ1110)。
【0053】
この変形例に示す動作フローのようにセンサシステム50を動作させることにより、上述した効果に加えて、更に、指3の検出とスタイラス2の検出処理の時分割処理を、第1集積回路120及び第2集積回路220の検出オブジェクトの種別に応じて最適化(高速化)することが可能になる。
【0054】
尚、IC間接続線130は、第1集積回路120と第2集積回路220とを直結する以外に、ホストプロセッサ40、あるいは、第2の筐体20を制御するコントローラが存在する場合にはそのコントローラ等に接続されるものであってもよい。また、通知は、電圧レベルのHighまたはLowがパススルーされるものであってもよいし、所定のデータ信号として通信プロトコル上で転送されるものであってもよい。
【0055】
また、センサシステム50の例として、第1集積回路120と第2集積回路220との2つの集積回路を用いたシステムを説明したが、更に第3の筐体、第4の筐体などを含む、パネル面を3面以上設けた電子機器において、第3の集積回路、及び第4の集積回路を含むシステムに応用することも可能である。この場合、ある1の集積回路がスタイラス2を検出した場合に、他の集積回路の全てにスタイラス2の検出を通知することで、上述実施の形態と同様にアップリンク信号USの干渉を防ぐことが可能となる。
【0056】
以上、本発明の好ましい実施の形態について説明したが、本発明はこうした実施の形態に何等限定されるものではなく、本発明が、その要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施され得ることは勿論である。