【解決手段】 人が背負うための背負型の運搬装置において、吊下支持部を含む上側部と前記上側部に略直交し人の背中に対応した方向に延在する前側部とを有するフレームと、上側支点部と下側支点部を有する吊下具と、前記吊下具によって前記上側部に吊り下げられ収容物の出し入れが可能な収容ケースと、一端部が前記フレームに連結され他端部が前記収容ケースに連結されると共に前記吊下具を通る進行方向及び前記進行方向に直交する左右方向軸線からオフセットされた位置に配置された一つ又は複数のダンパーとを備え、前記吊下具は前記収容ケースを前記フレームに揺動可能に支持する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のような背負い型の運搬装置にあっては、運搬者の歩行や走行体の走行中の振動や加減速等によって収容物に衝撃が付与されたり、運搬者の姿勢や運搬状態によって収容物が傾いたりしてしまう。その衝撃、傾きや揺動により、特に、収容物が食品の場合には、食品が容器からこぼれ出たり、盛り付け状態が変わってしまうと言う不具合を生じるおそれがある。
【0007】
そこで、本発明運搬装置は、上記した問題点を克服し、運搬中における収容物の安定した収容状態を確保することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1に、本発明に係る運搬装置は、人が背負うための背負い型の運搬装置であって、吊下支持部を含む上側部と前記上側部に略直交し人の背中に対応した方向に延在する前側部とを有するフレームと、上側支点部と下側支点部を有する吊下具と、前記吊下具によって前記上側部に吊り下げられ収容物の出し入れが可能な収容ケースと、一端部が前記フレームに連結され他端部が前記収容ケースに連結されると共に前記吊下具を通る進行方向及び前記進行方向に直交する左右方向軸線からオフセットされた位置に配置された一つ又は複数のダンパーとを備え、前記吊下具は前記収容ケースを前記フレームに揺動可能に支持するものである。
【0009】
これにより、運搬中にフレームに発生する傾きは主に運搬者の姿勢による前傾、加減速による前後方向への力による前後傾、方向転換による左右方向への傾きであるので、吊下具により収容ケースの重みでその床面がフレームから鉛直方向に直交する面に維持されるような傾きを許容すると共にその際に生じる力が支点からオフセット配置されたダンパーによって減衰し、吸収する。
【0010】
第2に、上記した運搬装置においては、前記ダンパーが複数配置されることが望ましい。
【0011】
これにより、複数のダンパーによって衝撃が吸収されるため、収容物の収容状態に関し良好なバランスが保たれる。
【0012】
第3に、上記した運搬装置においては、前記ダンパーが前記吊下具より左方と右方にそれぞれ位置されることが望ましい。
【0013】
これにより、複数のダンパーによって衝撃が吸収されるため、収容物の収容状態に関し左右方向において良好なバランスが保たれる。
【0014】
第4に、上記した運搬装置においては、前記吊下具の左方と右方にそれぞれ位置された前記ダンパーの前記吊下具からの距離が同じにされることが望ましい。
【0015】
これにより、収容ケース等に衝撃が付与されたときの収容ケースの傾きを左右両側において同じにすることが可能になる。
【0016】
第5に、上記した運搬装置においては、前記ダンパーが前記吊下具より前方と後方にそれぞれ位置されることが望ましい。
【0017】
これにより、収容ケースに後方のみならず前方から衝撃が付与されたときにおいても高い衝撃吸収効果を確保することが可能になる。
【0018】
第6に、上記した運搬装置においては、前記ダンパーが前記吊下具より前方に位置されることが望ましい。
【0019】
これにより、フレームの一部を吊下具より後方に設ける必要がないと共にダンパーの荷重が吊下具より前方において発生する。
【0020】
第7に、上記した運搬装置においては、前記ダンパーが前記上側部と前記収容ケースの天面部とに連結されることが望ましい。
【0021】
これにより、ダンパーと吊下具が収容ケースの上側のスペースに位置されるため、ダンパーの配置スペースと吊下具の配置スペースとがともに収容ケースの上側になり、ダンパーと吊下具の双方の配置スペースとして各別の空間を必要としない。
【0022】
第8に、上記した運搬装置においては、前記吊下具としてバネ部材が用いられることが望ましい。
【0023】
これにより、吊下具が収容ケースをフレームに吊り下げる機能に加え、上下方向の振動を許容すると共にダンパーの衝撃吸収機能と相俟って段差等による上下の衝撃も効率的に吸収できる。
【0024】
第9に、上記した運搬装置においては、前記ダンパーとしてエアーダンパーが用いられることが望ましい。
【0025】
これにより、ダンパーの構造が簡素であると共にダンパーの内部が空間にされる。
【0026】
第10に、上記した運搬装置においては、前記収容ケースの前面部における下端を含む少なくとも一部が下方へ行くに従って後方に変位する傾斜面に形成されることが望ましい。
【0027】
これにより、収容ケースがフレームに対して前側に傾斜された状態において収容ケースがフレームの前側部に接触し難くなる。
【0028】
第11に、上記した運搬装置においては、運搬者の肩に装着されるショルダーストラップが設けられることが望ましい。
【0029】
これにより、運搬者の手が解放された状態で収容物を運搬することが可能になる。
【0030】
第12に、上記した運搬装置においては、前記ショルダーストラップが前記フレームに取り付けられることが望ましい。
【0031】
これにより、フレームがショルダーストラップの取付部として機能し、フレームが収容ケースを吊り下げる機能とショルダーストラップを取り付ける機能の双方の機能を有し、ショルダーストラップを取り付けるための専用の部品が不要になる。
【0032】
第13に、上記した運搬装置においては、前記ショルダーストラップが一対設けられ、前記一対のショルダーストラップの一端部が前記吊下支持部の両側に取り付けられることが望ましい。
【0033】
これにより、運搬者の両方の肩に均等に荷重が付与され易くなる。
【0034】
第14に、上記した運搬装置においては、前記ショルダーストラップが肩に装着された状態において運搬者の背中に宛われる背宛てが設けられることが望ましい。
【0035】
これにより、運搬者が運搬装置を背負った状態において背宛てが背中に宛われる。
【0036】
第15に、上記した運搬装置においては、前記収容ケースが布製にされることが望ましい。
【0037】
これにより、収容ケースが変形可能であると共に軽量である。
【0038】
第16に、上記した運搬装置においては、前記フレームに前記収容ケースの下側に位置され設置可能な置き台部として機能する下側部が設けられることが望ましい。
【0039】
これにより、下側部によって運搬装置を机上や台上等の載置面に設置することが可能になる。
【0040】
第17に、上記した運搬装置においては、前記収容ケースに前記収容物が収容される複数の収容部が設けられることが望ましい。
【0041】
これにより、種類の相違や温度の相違等に応じて収容物を各収容部に収容することが可能になる。
【0042】
第18に、上記した運搬装置においては、前記複数の収容部の開口方向が同じにされることが望ましい。
【0043】
これにより、各収容部に対する各別の収容物の出し入れを同一方向から行うことが可能になる。
【発明の効果】
【0044】
本発明によれば、運搬中に収容ケースがフレームに対して重力方向に揺動されると共に少なくとも二つのダンパーによって衝撃が吸収されるため、運搬中における収容物の安定した収容状態を確保することができる。
【発明を実施するための形態】
【0046】
以下に、本発明運搬装置を実施するための形態を添付図面に従って説明する。尚、以下には、運搬装置が運搬者に背負われた状態で使用される例について説明する。但し、運搬装置は走行体である自転車やバイクや自動車等の二輪車乃至四輪車の荷台や荷室等に設置されて用いられてもよい。
【0047】
<運搬装置の構成>
先ず、運搬装置の構成について説明する(
図1乃至
図8参照)。
【0048】
運搬装置1はフレーム2と収容ケース3と吊下具4とダンパー5、5を有している(
図1乃至
図6参照)。
【0049】
フレーム2は、例えば、剛性の高い金属材料や樹脂材料によって形成され、前側部6と上側部7と下側部8を有している。
【0050】
前側部6は上下に延び左右に平行に離隔して位置された垂直部6a、6aと垂直部6a、6aの上端寄りの部分に架け渡された架渡部6bとを有している。架渡部6bは後方に凸の緩やかな円弧状に形成されている。前側部6には垂直部6a、6aの下端部から前方に突出された半円弧状の取付部6c、6cが設けられている。
【0051】
上側部7は垂直部6a、6aの上端部にそれぞれ連続された延設部7a、7aと延設部7a、7aを連結する連結部7bと連結部7bの左右方向における中央部から下方に突出された吊下支持部7cとを有している。延設部7a、7aはそれぞれ垂直部6a、6aの上端部から後方に突出された状態で設けられ、後方へ行くに従って互いに近付く直線状に形成されている。連結部7bは左右方向に延び、左右両端部がそれぞれ延設部7a、7aの後端部に連続されている。
【0052】
下側部8は垂直部6a、6aの下端部にそれぞれ連続された側部8a、8aと側部8a、8aを連結する後部8bとを有している。側部8a、8aはそれぞれ垂直部6a、6aの下端部から後方に突出され前後方向に延びる状態で設けられている。後部8bは左右方向に延び、左右両端部がそれぞれ側部8a、8aの後端部に連続されている。
【0053】
フレーム2は、垂直部6a、6aと延設部7a、7aの連続部分、垂直部6a、6aと側部8a、8aの連続部分及び側部8a、8aと後部8bの連続部分が何れも曲線状に形成されている。
【0054】
このようにフレーム2の各部が曲線状に形成されることにより、運搬時に、万が一、フレーム2が運搬者に接触したときに運搬者にダメージを与え難く、また、フレーム2が机やテーブル等の他の構造物に接触したときにこれらの構造物及びフレーム2の損傷の発生を抑制することができる。
【0055】
また、フレーム2は各部が円柱状又は円筒状に形成されており、フレーム2の各部が円柱状又は円筒状に形成されることにより、フレーム2が運搬者や他の構造物に接触したときの運搬者、構造物及びフレーム2の一層のダメージの抑制と損傷の発生が防止されている。
【0056】
フレーム2は下側部8が置き台部として設けられている。下側部8が置き台部として設けられることにより、下側部8を机上や台上に載置して運搬装置1を机上や台上に設置することが可能にされている。
【0057】
また、フレーム2は上側部7の連結部7bの略真下に下側部8の後部8bが位置されている。従って、上側部7の前後方向における長さと下側部8の前後方向における長さとが略同じにされており、運搬装置1が机上や台上に設置されたときの安定した設置状態を確保することができる。さらに、フレーム2は左右対称な形状に形成されており、運搬装置1が机上や台上に設置されたときの一層安定した設置状態が確保される。
【0058】
収容ケース3は、例えば、布製にされており、天面部9と側面部10、10と底面部11と前面部12と中敷き面部13と開閉面部14、14を有している。尚、収容ケース3は金属材料や樹脂材料によって形成されていてもよい。
【0059】
天面部9は上下方向を向き、略中央部に上方に突出された吊下用突部9aを有している。天面部9は矩形状に形成されている。
【0060】
側面部10、10は上端部がそれぞれ天面部9の左右両端部に連続され、左右方向を向く形状に形成されている。
【0061】
底面部11は上下方向を向き、左右両端部がそれぞれ側面部10、10の下端部に連続されている。底面部11は前後の長さが天面部9の前後の長さより短い矩形状に形成されている。
【0062】
前面部12は、上下両端部がそれぞれ天面部9の前端部と底面部11の前端部とに連続され、左右両端部がそれぞれ側面部10、10の前端部に連続されている。前面部12は上側面部12aと下側面部12bから成り、上側の略半分の部分が上側面部12aとして設けられ、上側面部12aの下側の部分が下側面部12bとして設けられている。下側面部12bは下方へ行くに従って後方に変位する傾斜面に形成されている。
【0063】
中敷き面部13は上下方向を向き、前端部が上側面部12aと下側面部12bの境界部分に連続され、左右両端部がそれぞれ側面部10、10の上下方向における略中央部に連続されている。
【0064】
開閉面部14、14は中敷き面部13を基準として上側と下側に位置されている。開閉面部14は上フラップ14aと横フラップ14b、14bとカバー14cによって構成されている(
図7及び
図8参照)。
【0065】
上フラップ14aは横長の形状に形成され、天面部9の後端部又は中敷き面部13の後端部から突出されている。横フラップ14b、14bは縦長の形状に形成され、それぞれ側面部10、10の後端部から突出されている。上フラップ14aの左右両端部と横フラップ14b、14bの上端部とは連続されている。
【0066】
上フラップ14aは天面部9又は中敷き面部13に対して上下に折り返される方向へ屈曲可能にされ、横フラップ14b、14bはそれぞれ側面部10、10に対して左右に折り返される方向へ屈曲可能にされている。
【0067】
カバー14cは矩形状に形成され、中敷き面部13の後端部又は底面部11の後端部から突出されている。カバー14cの左右両端部における中敷き面部13側又は底面部11側の端部には、それぞれ横フラップ14b、14bの下端部が連続されている。
【0068】
カバー14cは中敷き面部13又は底面部11に対して上下に折り返される方向へ屈曲可能にされている。
【0069】
収容ケース3には天面部9における上面の後端部と下側の上フラップ14aの一方の面とには面ファスナー15、15が貼り付けられている。また、カバー14c、14cの一方の面には中敷き面部13又は底面部11からの突出方向における先端部に面ファスナー16、16が貼り付けられている。
【0070】
収容ケース3には中敷き面部13によって上下に仕切られた上側収容部17と下側収容部18が設けられている。上側収容部17と下側収容部18にはそれぞれ食品等の収容物50を各別に収容することが可能にされている。
【0071】
上側収容部17は天面部9と側面部10、10の略上半部と前面部12の上側面部12aと中敷き面部13によって形成され、下側収容部18は中敷き面部13と側面部10、10の略下半部と前面部12の下側面部12bと底面部11によって形成されている。
【0072】
上側収容部17と下側収容部18は後方に開口されており、各開口17a、18aがそれぞれ上側の開閉面部14と下側の開閉面部14とによって開閉される。
【0073】
上側の開閉面部14による開口17aの閉塞は、開口17aが開放された状態から上フラップ14aを下側に折り返すと共に横フラップ14b、14bを左右方向において互いに近付く方向へ折り返し、カバー14cを上側に折り返し、カバー14cに貼り付けられた面ファスナー16を天面部9に貼り付けられた面ファスナー15に係合させることにより行うことができる。このとき横フラップ14b、14bは上フラップ14aとカバー14cの前側に折り畳まれる。
【0074】
下側の開閉面部14による開口18aの閉塞は、開口18aが開放された状態において上フラップ14aを下側に折り返すと共に横フラップ14b、14bを左右方向において互いに近付く方向へ折り返し、カバー14cを上側に折り返し、カバー14cに貼り付けられた面ファスナー16を上フラップ14aに貼り付けられた面ファスナー15に係合させることにより行うことができる。このとき横フラップ14b、14bは上フラップ14aとカバー14cの前側に折り畳まれる。
【0075】
収容ケース3には天面部9の後端寄りの位置と下側の上ラップ14aとに雌型バックル19、19が取り付けられている。また、収容ケース3には上側のカバー14cと下側のカバー14cとに連結ベルト20、20の一端部が取り付けられ、連結ベルト20、20の他端部にそれぞれ雄型バックル21、21が取り付けられている。
【0076】
従って、面ファスナー16が面ファスナー15に係合されて開口17a、18aが閉塞された状態において、雌型バックル19に雄型バックル21を結合することにより、面ファスナー16の面ファスナー15からの剥がれを防止して上側収容部17と下側収容部18からの収容物50の意図しない飛び出しを防止することができる。
【0077】
尚、運搬装置1においては、雄型バックル21、21の連結ベルト20、20に対する位置を調整することが可能にされている。
【0078】
上記したように、収容ケース3には収容物50が収容される上側収容部17と下側収容部18が設けられているため、上側収容部17と下側収容部18に各別に収容物50を収容することが可能になる。
【0079】
従って、種類の相違や温度の相違等に応じて収容物50を上側収容部17と下側収容部18に収容することにより、収容物50から別の収容物50への臭いの付着や収容物50、50間の相互の影響による収容物50、50の温度の変化を抑制することができる。特に、収容物50が食品等の場合に、上側収容部17に温度の高い収容物50を収容し、下側収容部18に温度の低い収容物50を収容することにより、互いの収容物50、50に対する熱の影響を効果的に抑制することができる。
【0080】
尚、収容ケース3に設けられる収容部の数は二つに限られることはなく、例えば、三つ以上の収容部が収容ケースに設けられていてもよく、一つの収容部が収容ケースに設けられていてもよい。また、複数の収容部が設けられる場合には、上下に仕切られた収容部に限られることはなく、例えば、左右に仕切られた収容部や上下左右や斜め方向において仕切られた収容部であってもよい。
【0081】
また、収容ケース3においては上側収容部17と下側収容部18の開口方向が何れも後方にされ同じ方向にされているため、上側収容部17と下側収容部18に対する各別の収容物50の出し入れを同一方向から行うことが可能になり、収容ケース3に対する収容物50の出し入れ作業を容易かつ迅速に行うことができる。
【0082】
さらに、収容ケース3が布製にされていることにより、収容ケース3が変形可能であると共に軽量であるため、収容ケース3の傷付きを防止した上で運搬装置1の軽量化を図ることができる。
【0083】
尚、収容ケース3には収容物50の運搬時等に衝撃が付与される可能性があるが、収容ケース3が布製にされていることにより収容ケース3が変形可能であり収容ケース3自体で衝撃を吸収することが可能であり、収容ケース3を布製にすることにより、運搬装置1における衝撃吸収機能を高めることが可能になる。
【0084】
収容ケース3は吊下具4によってフレーム2に吊り下げられている。吊下具4としては、例えば、布製の紐や金属材料によって形成されたチェーン等が用いられている。
【0085】
吊下具4は上端部が上側支点部4aとして設けられ下端部が下側支点部4bとして設けられている。吊下具4は上側支点部4aがフレーム2の吊下支持部7cに揺動可能に支持されている。吊下具4の下側支点部4bには収容ケース3の吊下用突部9aが支持され、収容ケース3が下側支点部4bに揺動可能に支持されている。吊下具4は、例えば、下端部が水平面内における全方向に変位するようにフレーム2に揺動可能にされ、収容ケース3は、例えば、下端部が水平面内における全方向に変位するように吊下具4に揺動可能にされている。
【0086】
このように吊下具4が水平面内における全方向に変位するようにフレーム2に揺動可能にされる構成と、収容ケース3が水平面内における全方向に変位するように吊下具4に揺動可能にされる構成は、例えば、玉軸受を用いた構造により実現することも可能である。
【0087】
尚、フレーム2に対する吊下具4の揺動方向は水平面内における全方向に変位する構成に限られることはなく、下端部が左右に変位する方向の構造の他に、下端部が前後に変位する方向の構造であってもよい。また、吊下具4に対する収容ケース3の揺動方向も水平面内における全方向に変位する構成に限られることはなく、下端部が左右に変位する方向の構造の他に、下端部が前後に変位する方向の構造であってもよい。
【0088】
ダンパー5、5は上端部がフレーム2における上側部7の延設部7a、7aに連結され下端部が収容ケース3の天面部9に連結されている。
【0089】
ダンパー5は、例えば、エアーダンパーであり、上端部が剛性の高い上側連結部5aとして設けられ、下端部が剛性の高い下側連結部5bとして設けられている。ダンパー5の中間部は蛇腹部5cとして設けられ、例えば、ゴム材料や樹脂材料によって形成され、上下方向において伸縮可能にされている。蛇腹部5cは上端部が上側連結部5aに取り付けられ下端部が下側連結部5bに取り付けられている。
【0090】
ダンパー5、5は吊下具4の左方と右方に位置されると共に前後方向かつ左右方向において吊下具4と異なる位置に設けられている(
図6参照)。具体的には、吊下具4を通り前後に延びる仮想線(前後方向軸線)Aを考えたときにダンパー5の軸中心は仮想線A上には位置されておらず、吊下具4を通り左右に延びる仮想線(左右方向軸線)Bを考えたときにダンパー5の軸中心は仮想線B上にも位置されていない。例えば、ダンパー5、5は吊下具4の前側において左右に離隔して位置されている。一方のダンパー5は吊下具4より左方に位置され、他方のダンパー5は吊下具4より右方に位置されている。
【0091】
上記のように収容ケース3が吊下具4によってフレーム2の吊下支持部7cに吊り下げられダンパー5、5がフレーム2と収容ケース3に連結された状態においては、収容ケース3の前面部12とフレーム2の前側部6との間に隙間Sが形成されている(
図3参照)。
【0092】
フレーム2には一対のショルダーストラップ22、22が左右に離隔して取り付けられている(
図1乃至
図5参照)。ショルダーストラップ22は肩掛けベルト23と調整ベルト24と調整具25を有し、調整具25が肩掛けベルト23の下端部に結合され、肩掛けベルト23と調整ベルト24が調整具25によって連結されている。ショルダーストラップ22は調整具25を除いて布製にされている。
【0093】
ショルダーストラップ22、22は肩掛けベルト23、23の上端部がフレーム2の連結部7bにおいて吊下支持部7cの両側に取り付けられ、調整ベルト24、24がフレーム2における前側部6の取付部6c、6cに取り付けられている。ショルダーストラップ22においては調整具25の調整ベルト24に対する位置を調整することにより全体の長さを変更することが可能にされている。
【0094】
一方の肩掛けベルト23の下端寄りの位置には雌型の第1のバックル26が取り付けられ、他方の肩掛けベルト23の下端寄りの位置にはアジャストベルト27が取り付けられている。アジャストベルト27には雄型の第2のバックル28が連結されている。第2のバックル28はアジャストベルト27に対する位置を調整することが可能にされている。
【0095】
フレーム2の前側部6には上下に並んで背宛て29、29が取り付けられている。背宛て29は布製にされ、横長の略矩形状に形成された受け部29aと受け部29aの上下両端部に連続された取付ベルト29b、29bとを有している。取付ベルト29bは両端部が受け部29aの左右両端部に連続されている。
【0096】
背宛て29は取付ベルト29b、29bが垂直部6a、6a間に架け渡された状態で巻き付けられることにより前側部6に取り付けられる。背宛て29、29が前側部6に取り付けられた状態においては、受け部29a、29aが垂直部6a、6a間に位置される。このとき上側の背宛て29における受け部29aの後側に、フレーム2の前側部6に設けられた架渡部6bが位置される。
【0097】
<運搬者による運搬状態等>
次に、上記のように構成された運搬装置1を運搬者が運搬するときの状態等について説明する(
図9乃至
図20参照)。尚、フレーム2や収容ケース3の傾斜状態の理解を容易にするために、
図8乃至
図20の必要な図において仮想的な水平面Hを示す。
【0098】
運搬装置1は運搬者100に背負われた状態で運搬されるが、運搬者100に背負われる前の状態においては、フレーム2の下側部8を机上や台上等の載置面60に載置して設置することが可能にされている(
図9参照)。
【0099】
従って、運搬者100は運搬装置1を載置面60に設置した状態で、収容ケース3の上側収容部17と下側収容部18に対する収容物50の出し入れを行うことができる。
【0100】
上側収容部17又は下側収容部18への収容物50の収容は、例えば、開口17a、18aを開放した状態で中敷き面部13又は底面部11にトレー30等を載置し、トレー30上に収容物50を載置することにより行う。
【0101】
上記のように運搬装置1には、フレーム2に収容ケース3の下側に位置され設置可能な置き台部として機能する下側部8が設けられているため、下側部8によって運搬装置1を机上や台上等の載置面60に設置することが可能になり、収容ケース3に対する収容物50の出し入れ作業を容易かつ迅速に行うことができる。
【0102】
収容ケース3に収容物50が収容され開口17a、18aが閉塞された状態において、収容物50は運搬装置1が運搬者100に背負われることにより運搬される。運搬者100はショルダーストラップ22、22の肩掛けベルト23、23を両方の肩101、101に装着することにより運搬装置1を背負うことができる(
図10参照)。運搬装置1を背負った状態において、第1のバックル26と第2のバックル28を連結することにより肩掛けベルト23、23の左右の開きが抑制され、肩掛けベルト23、23の肩101、101からの外れを防止することができる。
【0103】
運搬者100によって運搬装置1が背負われた状態においては、運搬者100の背中102が背宛て29、29の受け部29a、29aに宛がわれ、運搬者100による運搬装置1の安定した運搬状態が確保される。また、運搬者100によって運搬装置1が背負われた状態において、運搬者100の姿勢等によっては運搬者100の背中102が上側の受け部29aを介してフレーム2の架渡部6bに押し付けられるが、架渡部6bが後方に凸の円弧状に形成されているため、背中102が架渡部6bに沿って押し付けられ、一層安定した運搬状態が確保される。さらに、架渡部6bによって上側の受け部29aが必要以上に後方に変位されることがなく、より一層安定した運搬状態が確保される。
【0104】
運搬者100によって運搬装置1が背負われた状態においては、一般に、運搬者100が前傾姿勢になる(
図11及び
図12参照)。このときフレーム2は運搬者100の姿勢に伴って前下がりに傾斜した状態になるが、収容ケース3は吊下具4によって吊り下げられているためフレーム2に対して重力方向に揺動される。従って、収容ケース3はフレーム2の前側部6に近付く方向へ傾動され、収容ケース3に収容されている収容物50は路面(水平面H)等に対して傾かず水平な状態が保持される。
【0105】
運搬者100には運搬装置1の荷重(重量)が付与されるが、運搬者100に付与される荷重はフレーム2の重量の他に、特に、収容ケース3と収容ケース3に収容された収容物50の重量である。収容ケース3と収容物50の重量は、収容ケース3が吊下具4によってフレーム2に吊り下げられているため、吊り下げられた位置において運搬者100に付与される。運搬者100の肩101、101にはショルダーストラップ22、22が装着されているため、運搬者100には肩101の装着位置Pから吊下位置Qまでの距離Lに収容ケース3等の重量を乗じたモーメントによる荷重Mが付与される(
図13参照)。尚、
図13においては、荷重Mの説明を容易にするために、フレーム2が傾いていな状態を示す。
【0106】
上記のように、運搬者100には距離Lに収容ケース3等の重量を乗じた荷重Mが付与されるため、運搬時における運搬者100に対する負荷を軽減するためには、装着位置Pから吊下位置Qまでの距離Lを短くすることが望ましく、距離Lを短くするために吊下位置Qを装着位置Pに近付くように前側に位置させることが好ましい。このとき収容ケース3のフレーム2に対する位置を変更することなく吊下位置Qと吊下具4の収容ケース3に対する支持位置Rとを前側にシフトさせてしまうと、支持位置Rが収容ケース3の前寄りに位置されるため、収容ケース3が後下がりに傾斜してしまい収容物50も傾斜され収容物50の安定した収容状態が確保されない。
【0107】
従って、吊下具4の収容ケース3に対する支持位置Rは天面部9の略中央部に保持した状態で、吊下位置Qを装着位置Pに近付くように前側にシフトさせることが考えられる。
【0108】
しかしながら、この場合には収容ケース3の全体が前方へシフトされて前面部12がフレーム2の前側部6に近付いて隙間Sが小さくなるため、収容ケース3がフレーム2に対して揺動されたときに収容ケース3が前側部6に接触し、接触による衝撃が収容ケース3に収容されている収容物50に伝達されて収容物50が傾き、収容物50が運搬時に動いてしまったり揺れてしまったりするおそれがある。このような収容物50の動きや揺れが大きいと、特に、収容物50が食品の場合には、食品が容器からこぼれ出たり、盛り付け状態が変わってしまうと言う不具合を生じるおそれがある。
【0109】
特に、運搬時には、上記したように、運搬装置100によって運搬装置1が背負われて運搬装置1が前傾されるため、収容ケース3がフレーム2に対して揺動されてフレーム2の前側部6に接近する状態になり易い(
図11及び
図12参照)。
【0110】
そこで、運搬装置1においては、上記したように、収容ケース3の前面部12における下端を含む少なくとも一部が下方へ行くに従って後方に変位する傾斜面に形成されている。具体的には、収容ケース3における前面部12の下側面部12bが下方へ行くに従って後方に変位する傾斜面に形成されている。
【0111】
従って、収容ケース3がフレーム2に対して前側に傾斜された状態において収容ケース3がフレーム2の前側部6に接触し難くなり、収容物50の安定した運搬状態を確保することができる。また、このように収容ケース3がフレーム2に対して前側に傾斜された状態においても収容ケース3がフレーム2の前側部6に接触し難いため(
図14参照)、吊下具4を前側部6に近付くようにして吊下位置Qを前方に寄せて位置させることが可能になり、その分、装着位置Pから吊下位置Qまでの距離Lが短くなりモーメントによる荷重Mが小さくなり運搬者100に対する負荷の軽減を図ることができる。
【0112】
尚、上記には、前面部12の下側面部12bが下方へ行くに従って後方に変位する傾斜面に形成された例を示したが、例えば、前面部12の全体が下方へ行くに従って後方に変位する傾斜面に形成されていてもよい。この場合には収容ケース3がフレーム2に対して前側に傾斜された状態において収容ケース3がフレーム2の前側部6に一層接触し難くなり、収容物50の一層安定した運搬状態を確保することができる。また、吊下位置Qを一層前方に寄せて位置させることが可能になり、モーメントによる荷重Mが一層小さくなり運搬者100に対する一層の負荷の軽減を図ることができる。
【0113】
但し、前面部12の全体が下方へ行くに従って後方に変位する傾斜面に形成される場合には、前面部12のうち下側面部12bのみが下方へ行くに従って後方に変位する傾斜面に形成される場合に比し、上側収容部17が小さくなる。従って、収容ケース3において必要な収容空間の大きさとフレーム2の前側部6に対する接触のし難さとを考慮した上で、前面部12の何れの部分を傾斜面に形成するかを考慮することが望ましい。
【0114】
また、運搬装置1において、収容ケース3がフレーム2に対して揺動されたときに収容ケース3が前側部6に接触しないような十分な大きさの隙間Sが存在する場合には、前面部12に傾斜面が形成されていなくてもよい。この場合には収容ケース3の内部に大きな収容空間を形成することができ収容ケース3への収容物50の収容量を増加させることができると共に収容ケース3の構造が単純化され収容ケース3を容易かつ迅速に形成することができる。
【0115】
上記のように、運搬装置1は運搬者100に背負われた状態で運搬され、運搬は徒歩や駆け足の他、自転車やバイク等の走行体200に乗車して行われる(
図11及び
図12参照)。
【0116】
このように収容物50の運搬は徒歩や走行体200への乗車等によって行われるが、運搬装置1には運搬者100の肩101、101に装着されるショルダーストラップ22、22が設けられている。
【0117】
従って、運搬者100の手が解放された状態で収容物50を運搬することが可能になり、収容物50を容易に運搬することができると共に走行体200の運転に支障を来すことなく収容物50を運搬することができる。
【0118】
また、ショルダーストラップ22、22はフレーム2に取り付けられているため、フレーム2がショルダーストラップ22、22の取付部として機能する。従って、フレーム2が収容ケース3を吊り下げる機能とショルダーストラップ22、22を取り付ける機能の双方の機能を有し、ショルダーストラップ22、22を取り付けるための専用の部品が不要になり、運搬装置1の構造の簡素化を図ることができる。
【0119】
さらに、一対のショルダーストラップ22、22が設けられ、一対のショルダーストラップ22、22の一端部がフレーム2における吊下支持部7cの両側に取り付けられているため、運搬者100の両方の肩101、101に均等に荷重が付与され易くなり、収容物50の安定した運搬状態を確保することができる。
【0120】
さらにまた、運搬装置1には、ショルダーストラップ22、22が肩101、101に装着された状態において運搬者100の背中102に宛われる背宛て29、29が設けられている。従って、運搬者100が運搬装置1を背負った状態において背宛て29、29が背中102に宛われ、運搬者100による収容物50の一層安定した運搬状態を確保することができる。
【0121】
上記のような運搬時には、運搬者100の姿勢や走行体200の走行状態等によって運搬装置1が傾く可能性があるが、収容ケース3は吊下具4によってフレーム2に吊り下げられているため、運搬装置1が何れの方向に傾いた場合においても収容ケース3はフレーム2に対して吊下具4を支点として重力方向に揺動される(
図15及び
図16参照)。具体的には、吊下具4が上側支点部4aを支点としてフレーム2に対して揺動されると共に収容ケース3が下側支点部4bを支点として吊下具4に対して揺動される。従って、収容ケース3に収容されている収容物50は路面(水平面H)等に対して傾かず水平な状態が保持され、収容物50の安定した運搬状態が確保される。
【0122】
例えば、運搬者100の姿勢や走行体200の走行状態等によって運搬装置1が左右方向へ傾く場合には、収容ケース3はフレーム2に対してフレーム2が傾く方向と反対方向へ傾くようにして吊下具4を支点としてフレーム2に対して重力方向に揺動される(
図15参照)。従って、収容ケース3に収容されている収容物50は路面(水平面H)等に対して傾かず水平な状態が保持され、収容物50の安定した運搬状態が確保される。
【0123】
また、例えば、運搬者100の姿勢や走行体200の走行状態等によって運搬装置1が前後方向へ傾く場合には、収容ケース3はフレーム2に対してフレーム2が傾く方向と反対方向へ傾くようにして吊下具4を支点としてフレーム2に対して重力方向に揺動される(
図16参照)。従って、収容ケース3に収容されている収容物50は路面(水平面H)等に対して傾かず水平な状態が保持され、収容物50の安定した運搬状態が確保される。特に、収容ケース3のフレーム2における前側部6との接触が回避されるため、接触による衝撃も生じることがなく、収容物50の安定した運搬状態を確保することができる。
【0124】
一方、収容物50の運搬時には、振動等によって収容ケース3に衝撃が付与される可能性があるが、付与された衝撃はダンパー5、5によって吸収され、収容ケース3の過度の揺れや変動が抑制される。
【0125】
尚、運搬時に収容ケース3等に衝撃が付与されたときには収容ケース3がフレーム2に対して傾く方向への力を受けるが、上記したように、収容ケース3は吊下具4によってフレーム2に吊り下げられているため、吊下具4を支点としてフレーム2に対して重力方向に揺動される。従って、収容ケース3に収容されている収容物50は路面(水平面H)等に対しての傾きが抑制され、収容物50の安定した運搬状態が確保される。
【0126】
運搬時に収容ケース3等に衝撃が付与されたときには収容ケース3がフレーム2に対して傾く方向への力を受けるが、上記したように、収容ケース3は吊下具4によってフレーム2に吊り下げられているため、吊下具4を支点としてフレーム2に対して重力方向に揺動される。従って、収容ケース3に収容されている収容物50は路面(水平面H)等に対しての傾きが抑制され、収容物50の安定した運搬状態が確保される。
【0127】
但し、以下の運搬時に収容ケース3等に衝撃が付与されたときの具体的な説明において参照する図については、衝撃が発生したときのダンパー5、5の機能を理解し易くするために、収容ケース3が水平面Hに対して傾いた状態で示す。
【0128】
例えば、運搬時には収容ケース3がフレーム2に対して吊下具4を支点として左右方向へ傾く状態になる衝撃が付与される可能性があるが、この場合には一方のダンパー5の蛇腹部5cが圧縮され他方のダンパー5の蛇腹部5cが伸張されて衝撃が吸収される(
図17参照)。従って、収容ケース3に収容されている収容物50には大きな衝撃が付与されず、運搬者100による収容物50の安定した運搬状態を確保することができる。
【0129】
また、例えば、運搬時には収容ケース3がフレーム2に対して吊下具4を支点として前方へ傾く状態になる衝撃が付与される可能性があるが、この場合には双方のダンパー5、5の蛇腹部5c、5cが圧縮されて衝撃が吸収される(
図18参照)。従って、収容ケース3に収容されている収容物50には大きな衝撃が付与されず、運搬者100による収容物50の安定した運搬状態を確保することができる。特に、収容ケース3のフレーム2における前側部6との接触が回避され、接触による衝撃も生じることがなく、収容物50の安定した運搬状態を確保することができる。
【0130】
尚、運搬時に収容ケース3がフレーム2に対して吊下具4を支点として後方へ傾く状態になる衝撃が付与された場合には、ダンパー5、5の内部の空気が負圧になり、負圧になった空気が元の気圧(内圧)に戻ろうとする力が生じるため、収容物50に対する衝撃が緩和される。
【0131】
さらに、例えば、運搬時には収容ケース3がフレーム2に対して上方へ変位する状態になる衝撃が付与される可能性がある。例えば、収容ケース3の左右方向における中央から上方への衝撃(力F)が付与されたり(
図19参照)、収容ケース3の左右方向における中央より左方又は右方から上方への衝撃(力F)が付与される(
図20参照)可能性があるが、この場合には一方のダンパー5の蛇腹部5c又は双方のダンパー5、5の蛇腹部5c、5cが圧縮されて衝撃が吸収される。従って、収容ケース3に収容されている収容物50には大きな衝撃が付与されず、運搬者100による収容物50の安定した運搬状態を確保することができる。
【0132】
また、例えば、運搬時には収容ケース3等に前後方向、左右方向及び上下方向以外の斜め方向から衝撃が付与される可能性があるが、この場合には一方のダンパー5の蛇腹部5c又は双方のダンパー5、5の蛇腹部5c、5cが圧縮されて衝撃が吸収される。例えば、収容ケース3に左斜め後方から衝撃が付与されたときには、少なくとも一つのダンパー5によって衝撃が吸収され、フレーム2に対する収容ケース3の右斜め前方への変位が抑制され、運搬者100による収容物50の安定した運搬状態を確保することができる。
【0133】
<まとめ>
以上に記載した通り、運搬装置1にあっては、吊下具4を通る進行方向(前後方向軸線)及び前記進行方向に直交する左右方向軸線からオフセットされた位置に配置された一つ又は複数のダンパー5を備え、吊下具4が収容ケース3をフレーム2に揺動可能に支持している。
【0134】
これにより、運搬中にフレーム2に発生する傾きは主に運搬者100の姿勢による前傾、加減速による前後方向への力による前後傾、方向転換による左右方向への傾きであるので、吊下具4により収容ケース3の重みでその床面がフレーム2から鉛直方向に直交する面に維持されるような傾きが許容されると共にその際に生じる力が支点(前後方向軸線及び左右方向軸線)からオフセット配置されたダンパー5によって減衰され、吸収される。
【0135】
従って、収容物50の運搬中に収容ケース3がフレーム2に対して重力方向に揺動されると共に少なくとも二つのダンパー5、5によって衝撃が吸収されるため、運搬中における収容物50の安定した収容状態を確保することができる。
【0136】
また、吊下具4は上側支点部4aがフレーム2の吊下支持部7cに揺動可能に支持され、収容ケース3は吊下具4の下側支点部4bに揺動可能に支持され、少なくとも二つのダンパー5、5が吊下具4の左方と右方に位置され、少なくとも二つのダンパー5、5が前後方向において吊下具4と異なる位置に設けられると共に左右方向において吊下具4と異なる位置に設けられている。
【0137】
従って、収容物50の運搬中に収容ケース3がフレーム2に対して重力方向に揺動されると共に少なくとも二つのダンパー5、5によって衝撃が吸収されるため、運搬中における収容物50の安定した収容状態を確保することができる。
【0138】
尚、ダンパー5の中心軸Vは、
図6に示すように、吊下具4を通り前後に延びる仮想線(前後方向軸線)A上には位置されていないが、これはダンパー5の中心軸Vが仮想線A上に位置されていると収容ケース3への左右の衝撃に対して衝撃吸収効果が小さくなるためであり、ダンパー5が左右方向において吊下具4と異なる位置に設けられることにより収容ケース3への左右の衝撃に対して大きな衝撃吸収効果が得られることになる。
【0139】
また、ダンパー5の中心軸Vは、吊下具4を通り左右に延びる仮想線(左右方向軸線)B上にも位置されていないが、これはダンパー5の中心軸Vが仮想線B上に位置されていると収容ケース3への前後の衝撃に対して衝撃吸収効果が小さくなるためであり、ダンパー5が前後方向において吊下具4と異なる位置に設けられることにより収容ケース3への前後の衝撃に対して大きな衝撃吸収効果が得られることになる。
【0140】
従って、ダンパー5、5が吊下具4の左方と右方に位置されると共に前後方向かつ左右方向において吊下具4と異なる位置に設けられることにより、収容ケース3への上方への衝撃に対する十分な衝撃吸収効果を確保した上で、収容ケース3への鉛直軸に直交する何れの方向からの衝撃に対しても十分な衝撃吸収効果を確保することができる。
【0141】
また、ダンパー5が複数配置されることにより、複数のダンパー5によって衝撃が吸収されるため、収容物50の収容状態に関し良好なバランスが保たれ、運搬中における収容物50の一層安定した収容状態を確保することができる。
【0142】
さらに、ダンパー5が吊下具4より左方と右方にそれぞれ位置されることにより、複数のダンパー5によって衝撃が吸収されるため、収容物50の収容状態に関し左右方向において良好なバランスが保たれ、運搬中における収容物50のより一層安定した収容状態を確保することができる。
【0143】
また、ダンパー5、5が吊下具4より前方に位置されているため、フレーム2の一部を吊下具4より後方に設ける必要がないと共にダンパー5、5の荷重(重量)が吊下具4より前方において発生する。
【0144】
従って、運搬者100が運搬装置1を背負った状態において運搬者100に対する後傾する側への荷重が小さくなり、運搬者100によるダンパー50の安定した運搬状態を確保することができる。
【0145】
さらに、吊下具4の左方と右方に位置されたダンパー5、5の吊下具4からの距離は同じにされていることが望ましい。
【0146】
このようにダンパー5、5の吊下具4からの距離が同じにされることにより、収容ケース3等に衝撃が付与されたときの収容ケース3の傾きを左右両側において同じにすることが可能になり、収容物50の一層安定した運搬状態を確保することができる。
【0147】
さらにまた、フレーム2の一部が収容ケース3の上方に位置された上側部7として設けられ、ダンパー5、5が上側部7と収容ケース3の天面部9とに連結されている。
【0148】
従って、ダンパー5、5と吊下具4が収容ケース3の上側のスペースに位置されるため、ダンパー5、5の配置スペースと吊下具4の配置スペースとがともに収容ケース3の上側になり、ダンパー5、5と吊下具4の双方の配置スペースとして各別の空間を必要とせず、配置スペースの有効活用による運搬装置1の小型化を図ることができる。
【0149】
加えて、ダンパー5としてエアーダンパーが用いられることにより、ダンパー5の構造が簡素であると共にダンパー5の内部が空間にされるため、運搬装置1における構造の簡素化による製造コストの低減を図ることができると共に運搬装置1の軽量化を図ることができる。
【0150】
<その他>
以下に、各部の他の構成例について説明する。
【0151】
上記には、ダンパー5としてエアーダンパーが用いられた例を示したが、ダンパー5としてバネ部材、例えば、圧縮コイルバネが用いられてもよい。
【0152】
ダンパー5としてバネ部材が用いられることにより、運搬装置1の構造の簡素化及び軽量化を図ることができる。特に、バネ部材として圧縮コイルバネが用いられることにより、収容ケース3に左右方向、下方及び後方から衝撃が付与されたときの高い衝撃吸収効果を確保することができる。尚、ダンパー5としては、例えば、引張コイルバネやゴム等の引張方向への付勢力を有するものを用いることも可能であり、この場合には、例えば、運搬時に収容ケース3がフレーム2に対して吊下具4を支点として後方へ傾く状態になる衝撃が付与されたときに、収容ケース3に付与された衝撃が吸収される。
【0153】
尚、ダンパー5としては、エアーダンパーやバネ部材やゴムの他に、例えば、オイルダンパーが用いられてもよく、また、バネ部材とエアーダンパーとが組み合わされたダンパーシステム等が用いられてもよい。
【0154】
また、上記には、二つのダンパー5、5が吊下具4の前側に位置された例を示したが、運搬装置1においては、少なくとも二つのダンパー5が吊下具4の左方と右方に位置されると共に前後方向かつ左右方向において吊下具4と異なる位置に設けられていればよい。例えば、二つのダンパー5、5が吊下具4の後側において左右に離隔して位置されていてもよい。
【0155】
また、例えば、吊下具4の前側に二つのダンパー5、5が左右に離隔して位置されると共に吊下具4の後側に二つのダンパー5、5が左右に離隔して位置されていてもよい(
図21参照)。この場合には収容ケース3に後方のみならず前方から衝撃が付与されたときにおいても高い衝撃吸収効果を確保することができ、収容物50のより一層の安定した運搬状態を確保することができる。
【0156】
尚、運搬装置1において用いられるダンパー5の数は二つや四つに限られることはなく、吊下具4の左方と右方に位置されると共に前後方向かつ左右方向において吊下具4と異なる位置に設けられていれば三つであってもよく、五つ以上であってもよい。
【0157】
また、ダンパー5、5は、例えば、フレーム2の前側部6と収容ケース3の前面部12とに連結され、蛇腹部5cが前後方向において伸縮可能な構成にされていてもよい(
図22参照)。
【0158】
このような構成により、特に、収容ケース3に後方から衝撃が付与されたときに高い衝撃吸収効果を確保することができる。また、フレーム2の前側部6と収容ケース3の前面部12との間にダンパー5、5が位置されるため、収容ケース3に衝撃が付与されたときに、収容ケース3が前側部6に接触することがない。従って、収容ケース3に前側部6と接触し難くするための傾斜面を形成する必要がなく、収容ケース3への収容物50の収容量を増加させることができると共に収容ケース3の構造が単純化され収容ケース3を容易かつ迅速に形成することができる。
【0159】
また、上記には、収容物50が収容ケース3に対して後方から出し入れされる例を示したが、左方や右方等の後方以外の他の方向から収容物50が出し入れされる構成にされていてもよい。
【0160】
さらに、上記には、二つのショルダーストラップ22、22が設けられた例を示したが、例えば、一つのショルダーストラップ22が設けられ、片方の肩101にショルダーストラップ22が装着される構成にされていてもよい。
【0161】
さらにまた、上記には、吊下具4として布製の紐や金属材料によって形成されたチェーン等が用いられた例を示したが、吊下具4として、例えば、バネ部材が用いられていてもよい(
図23参照)。吊下具4であるバネ部材としては、例えば、圧縮コイルバネが用いられる。
【0162】
吊下具4としてバネ部材が用いられる場合には、吊下具4が収容ケース3をフレーム2に吊り下げる機能に加え衝撃を吸収するダンパーとしても機能する。従って、吊下具4としてバネ部材を用いることによりダンパー5、5の衝撃吸収機能に加えて吊下具4の衝撃吸収機能が付加されるため、部品点数を増やすことなく高い衝撃吸収機能を確保することができる。
【0163】
また、運搬装置1においては、フレーム2を持ち手として用いてもよい。特に、フレーム2の上側部7を持ち手として用いることにより、運搬装置1を持ち運びし易く、運搬時における利便性の向上を図ることができる。
【0164】
さらに、運搬装置1においては、フレーム2の下側部8を自転車やスクーター等の荷台に固定した状態で運搬者100が運搬装置1を背負うことなく自転車やスクーターによって収容物50を運搬することも可能である。
【0165】
運搬装置1には、上記したように、運搬者100の肩101、101に装着されるショルダーストラップ22、22が設けられており、背負い型の運搬装置1として好適である。このように運搬装置1は運搬者100に背負われて使用されることが多く、背負う前後においてはショルダーストラップ22、22を手103で把持して机上や台上等の載置面60から持ち上げたり(
図24参照)載置面60に設置することが行われる場合も多い。
【0166】
従って、運搬装置1においては、ショルダーストラップ22、22が運搬装置1を背負うためや持ち上げるための有用な機能を有しているが、ショルダーストラップ22、22が収容ケース3に取り付けられていると、運搬するときや持ち上げるときにショルダーストラップ22、22から収容ケース3及び収容物50に振動や衝撃が付与され易くなるため、ショルダーストラップ22、22はフレーム2に取り付けられている。
【0167】
このときショルダーストラップ22、22は、例えば、両端部ともフレーム2の前側部6に取り付けられることが考えられる。しかしながら、この場合にはショルダーストラップ22、22のフレーム2に対する取付位置が収容ケース3より前側に存在してしまうため、運搬装置1を背負ったときや持ち上げたときの運搬者100に付与される荷重が大きくなり易く、収容ケース3のフレーム2に対する傾きも大きくなり易い。
【0168】
そこで、運搬装置1にあっては、ショルダーストラップ22、22は肩掛けベルト23、23の上端部がフレーム2の連結部7bに取り付けられている。運搬装置1の全体の重心はフレーム2における上側部7の吊下支持部7cを通る上下に延びる仮想線(上下方向軸線)C上又は仮想線Cの稍前側にあり、ショルダーストラップ22、22のフレーム2に対する上方側の取付位置が前後方向において重心又は重心に近い位置に存在する。
【0169】
従って、例えば、ショルダーストラップ22、22を手103で把持して持ち上げたときに、手103で把持した位置が前後方向において重心に近い位置になるため、持ち上げた状態において運搬者100に付与される荷重が小さいと共にフレーム2に対する収容ケース3の傾きが小さくなる。
【0170】
このようにショルダーストラップ22、22のフレーム2に対する上方側の取付位置が前後方向において重心又は重心に近い位置に存在するようにして、フレーム2に対する収容ケース3の傾きを小さくすることにより、収容ケース3に収容された収容物50の傾きも小さくなり、収容物50の安定した運搬状態を確保することができる。
【0171】
また、ショルダーストラップ22、22の上方側の取付位置がフレーム2の上側部7にされているため、運搬装置1が載置面60に載置された状態においてショルダーストラップ22、22の一部が収容ケース3の上側に必ず存在し、ショルダーストラップ22、22を把持して運搬装置100を持ち上げ易くなる。
【0172】
尚、運搬装置1においては、例えば、ショルダーストラップ22、22のフレーム2に対する上方側の取付位置が重心より後方され、手103で把持した位置が重心の真上になるように構成されてもよい。