(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2019-134595(P2019-134595A)
(43)【公開日】2019年8月8日
(54)【発明の名称】スイッチング回路、半導体装置、DC/DCコンバータ
(51)【国際特許分類】
H02M 1/08 20060101AFI20190712BHJP
H02M 3/155 20060101ALI20190712BHJP
H03K 17/06 20060101ALI20190712BHJP
H03K 17/687 20060101ALI20190712BHJP
H03K 19/0185 20060101ALI20190712BHJP
【FI】
H02M1/08 A
H02M3/155 H
H03K17/06
H03K17/687 A
H03K19/0185 210
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2018-15226(P2018-15226)
(22)【出願日】2018年1月31日
(71)【出願人】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100133215
【弁理士】
【氏名又は名称】真家 大樹
(72)【発明者】
【氏名】新倉 浩樹
【テーマコード(参考)】
5H730
5H740
5J055
5J056
【Fターム(参考)】
5H730AS01
5H730AS05
5H730BB11
5H730BB13
5H730BB57
5H730DD03
5H730DD04
5H730EE08
5H730EE59
5H730FD01
5H730FG01
5H740AA04
5H740BA11
5H740BA12
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5H740JA01
5H740JB01
5J055AX05
5J055AX53
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5J055BX16
5J055CX13
5J055CX19
5J055DX13
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5J055DX56
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5J055GX01
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5J056CC14
5J056CC21
5J056CC29
5J056DD13
5J056DD55
5J056DD56
5J056KK01
(57)【要約】
【課題】LX端子の電圧V
LXが変動した状況においても確実にハイサイドトランジスタを制御可能なスイッチング回路を提供する。
【解決手段】レベルシフト回路600は、入力信号HINを、スイッチング(LX)端子の電圧V
LXをロー、ブートストラップ(BST)端子の電圧V
BSTをハイとする出力信号HOUTにレベルシフトする。ハイサイドドライバ240は、出力信号HOUTに応じてハイサイドトランジスタM
1を駆動する。中間基準電圧生成回路610は、LX端子の電圧V
LXに応じた中間基準電圧V
INTを中間ライン602に発生する。第1シフト回路620は、入力信号HINを、中間基準電圧V
INTをローとする中間信号INTにレベルシフトする。第2シフト回路630は中間信号INTを、BST端子の電圧V
BSTをハイ、LX端子の電圧V
LXをローとする出力信号HOUTに変換する。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力端子と、
スイッチング端子と、
ブートストラップ端子と、
前記入力端子と前記スイッチング端子の間に設けられたハイサイドトランジスタと、
前記スイッチング端子と前記ブートストラップ端子の間に設けられるブートストラップキャパシタと、
入力信号を、スイッチング端子の電圧をロー、ブートストラップ端子の電圧をハイとする出力信号にレベルシフトするレベルシフト回路と、
前記出力信号に応じて前記ハイサイドトランジスタを駆動するハイサイドドライバと、
を備え、
前記レベルシフト回路は、
中間ラインと、
前記スイッチング端子の電圧を受け、それに応じた中間基準電圧を前記中間ラインに発生する中間基準電圧生成回路と、
前記入力信号を、前記中間基準電圧をローとする中間信号にレベルシフトする第1シフト回路と、
前記中間信号を、前記ブートストラップ端子の電圧をハイ、前記スイッチング端子の電圧をローとする前記出力信号に変換する第2シフト回路と、
を含むことを特徴とするスイッチング回路。
【請求項2】
前記中間基準電圧は、接地電圧と前記スイッチング端子の電圧の低い方に応じていることを特徴とする請求項1に記載のスイッチング回路。
【請求項3】
前記中間基準電圧生成回路は、
カソードが接地端子と接続され、アノードが前記中間ラインと接続される第1ダイオードと、
カソードが前記スイッチング端子と接続され、アノードが前記中間ラインと接続される第2ダイオードと、
を含むことを特徴とする請求項2に記載のスイッチング回路。
【請求項4】
前記第1ダイオードはツェナーダイオードであることを特徴とする請求項3に記載のスイッチング回路。
【請求項5】
SOI構造を有する半導体基板に集積化されることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のスイッチング回路。
【請求項6】
前記第1シフト回路は、前記入力信号を、当該入力信号のポジエッジ、ネガエッジの一方に応じてアサートされるセット信号と、それらの他方に応じてアサートされるリセット信号に変換し、レベルシフト後の前記セット信号と前記リセット信号のペアを前記中間信号として、前記第2シフト回路に供給することを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載のスイッチング回路。
【請求項7】
前記第2シフト回路は、ラッチ型であることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載のスイッチング回路。
【請求項8】
スイッチング回路を構成する半導体装置であって、
スイッチング端子およびブートストラップ端子と、
フィードバック信号が目標値に近づくように、ハイサイドトランジスタのオンオフを指示するパルス信号を生成するパルス変調器と、
前記パルス信号を、前記スイッチング端子の電圧をロー、前記ブートストラップ端子の電圧をハイとする出力信号にレベルシフトするレベルシフト回路と、
前記出力信号にもとづいて前記ハイサイドトランジスタを駆動するハイサイドドライバと、
を備え、
前記レベルシフト回路は、
中間ラインと、
前記スイッチング端子の電圧を受け、それに応じた中間基準電圧を前記中間ラインに発生する中間基準電圧生成回路と、
前記パルス信号に応じた入力信号を、前記中間基準電圧をローとする中間信号にレベルシフトする第1シフト回路と、
前記中間信号を、前記ブートストラップ端子の電圧をハイ、前記スイッチング端子の電圧をローとする前記出力信号に変換する第2シフト回路と、
を含むことを特徴とする半導体装置。
【請求項9】
前記中間基準電圧は、接地電圧と前記スイッチング端子の電圧の低い方に応じていることを特徴とする請求項8に記載の半導体装置。
【請求項10】
前記中間基準電圧生成回路は、
カソードが接地端子と接続され、アノードが前記中間ラインと接続される第1ダイオードと、
カソードが前記スイッチング端子と接続され、アノードが前記中間ラインと接続される第2ダイオードと、
を含むことを特徴とする請求項9に記載の半導体装置。
【請求項11】
前記第1ダイオードはツェナーダイオードであることを特徴とする請求項10に記載の半導体装置。
【請求項12】
SOI構造を有する半導体基板に集積化されることを特徴とする請求項8から11のいずれかに記載の半導体装置。
【請求項13】
前記第1シフト回路は、前記入力信号を、当該入力信号のポジエッジ、ネガエッジの一方に応じてアサートされるセット信号と、それらの他方に応じてアサートされるリセット信号に変換し、レベルシフト後の前記セット信号と前記リセット信号のペアを前記中間信号として、前記第2シフト回路に供給することを特徴とする請求項8から12のいずれかに記載の半導体装置。
【請求項14】
前記第2シフト回路は、ラッチ型であることを特徴とする請求項8から12のいずれかに記載の半導体装置。
【請求項15】
請求項8から14のいずれかに記載の半導体装置を備えることを特徴とするDC/DCコンバータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スイッチング回路に関する。
【背景技術】
【0002】
DC/DCコンバータやインバータなどに、スイッチング回路が用いられる。
図1は、スイッチング回路の回路図である。スイッチング回路100は、入力端子(VIN)とスイッチング端子(LX)の間に設けられたハイサイドトランジスタM
1、LX端子と接地端子(GND)の間に設けられたローサイドトランジスタM
2を備える。ハイサイドトランジスタM
1がオン、ローサイドトランジスタM
2がオフの状態では、LX端子はハイレベル(VIN端子の電圧V
INが発生)となり、ハイサイドトランジスタM
1がオフ、ローサイドトランジスタM
2がオンの状態では、LX端子には、ローレベル(GND端子の電圧V
GND)が発生する。なお、ローサイドトランジスタM
2に代えて、ショットキーダイオードなどの整流素子を設けてもよい。
【0003】
ハイサイドトランジスタM
1として、Nチャンネル(あるいはNPN型)のトランジスタを用いることがある。この場合、ハイサイドトランジスタM
1をターンオンするためには、そのゲートに、入力電圧V
INより高いゲート電圧V
HGを与える必要がある。入力電圧V
INより高いゲート電圧V
HGを生成するために、ブートストラップ回路が利用される。
【0004】
ブートストラップ端子(BST)と、LX端子の間には、ブートストラップキャパシタC
BSTが接続される。レギュレータ回路110は、電源電圧V
CCを生成する。電源電圧V
CCは、VCC端子およびダイオードD
1を介して、ブートストラップキャパシタC
BSTに供給される。電源電圧V
CCは、ハイサイドトランジスタM
1のゲートソース間のしきい値電圧V
GS(th)より高く定められる。
【0005】
LX端子がロー(0V)の状態では、ブートストラップキャパシタC
BSTが、ΔV=V
CC−Vfで充電される。VfはダイオードD
1の順電圧である。BST端子にはV
BST=V
LX+ΔVを満たす電圧が発生する。BST端子の電圧V
BSTは、ハイサイドドライバ140の上側の電源端子に供給される。ハイサイドドライバ140の下側電源端子は、LX端子と接続される。
【0006】
レベルシフト回路120は、V
CCをハイ、V
GNDをローとするパルス信号HINを、V
BSTをハイ、V
LXをローとする出力信号HOUTにレベルシフトし、後段のハイサイドドライバ140に供給する。ハイサイドドライバ140は、出力信号HOUTがオン状態であるときにV
BSTを出力してハイサイドトランジスタM
1をオンし、オフ状態であるときにV
LXを出力してハイサイドトランジスタM
1をオフする。
【0007】
ローサイドドライバ104は、ローサイドパルスS
Lにもとづいて、ローサイドトランジスタM
2を駆動する。
【0008】
図2は、本発明者が検討したレベルシフト回路120の回路図である。レベルシフト回路120は、主として、パルス発生器122、シフト回路124を含む。パルス発生器122は、パルス信号HINにもとづいて、セット信号HIN_Edge1およびリセット信号HIN_Edge2を生成する。パルス発生器122は、パルス信号HINのポジエッジに応答してセット信号HIN_Edge1をアサート(ハイ)し、パルス信号HINのネガエッジに応答してリセット信号HIN_Edge2をアサート(ハイ)する。
【0009】
シフト回路124は、初段のインバータのペア126,128と、後段のインバータのペア130,132を含む。セット信号HIN_Edge1がハイとなると、トランジスタM
21がターンオンし、インバータ126の出力であるHVSET_IN信号がローとなる。またリセット信号HIN_Edge2がハイとなると、トランジスタM
22がターンオンし、インバータ128の出力であるHVRESET_IN信号がローとなる。
【0010】
HVSET_IN信号がインバータ130のしきい値Vthより低くなると、インバータ130の出力であるHVSET_OUT信号がハイ(V
BST)となり、HVRESET_IN信号がインバータ132のしきい値Vthより低くなると、インバータ132の出力であるHVRESET_OUT信号がハイ(V
BST)となる。
【0011】
HVSET_OUT信号、HVRESET_OUT信号のペアが、
図1の出力信号HOUTに相当する。
【0012】
ハイサイドドライバ140は、フリップフロップ142、出力バッファ144を含む。フリップフロップ142がHVSET_OUT信号に応じてセットされると、ハイサイドパルスS
Hがハイ(V
BST)となる。フリップフロップ142がHVRESET_OUT信号に応じてリセットされると、ハイサイドパルスS
Hがロー(V
LX)となる。出力バッファ144はハイサイドパルスS
Hに応じてハイサイドトランジスタM
1を駆動する。
【0013】
図3は、
図2のレベルシフト回路120の動作波形図である。図中、Vthはインバータ130,134のしきい値を表す。実際には、HINがハイとなった後、ハイサイドトランジスタM
1がターンオンすると、スイッチング電圧V
LXはV
IN付近まで上昇するが、ここでは図が複雑となるのを避けるため、低い電圧レベルとして示す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2012−70333号公報
【特許文献2】特開2011−014738号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明者は、
図2のレベルシフト回路120について検討した結果、以下の課題を認識するに至った。
【0016】
図4は、
図2のレベルシフト回路120の問題を説明する図である。
図3に示す通常の動作時においては、LX端子の電圧V
LXのローは、接地電圧V
GNDである。したがって、ブートストラップキャパシタC
BSTの下側の電極にV
GND(0V)が印加され、上側の電極にV
CC−Vfが印加されて、ブートストラップキャパシタC
BSTの両端間には、ΔV=V
CC−Vfが印加され、充電される。
【0017】
ところで、LX端子のスイッチング電圧V
LXは、LX端子にはインダクタやトランス、誘導性負荷が接続される場合が多い。したがってLX端子の電圧V
LXは、逆起電力や共振の影響で負(<V
GND)となることがある。
図4には、電圧V
LXが負となったときの動作が示される。この状態では、ブートストラップキャパシタC
BSTの下側の電極に、負電圧−V
Nが印加され、上側の電極にV
CC−Vfが印加されて、ブートストラップキャパシタC
BSTの両端間には、ΔV’=V
CC−Vf+V
Nが印加される。この電位差ΔVは、
図3の電位差ΔVより大きい。
【0018】
ブートストラップキャパシタC
BSTの両端間電圧ΔV’が大きくなると、BST端子とLX端子の電位差が大きくなる。インバータ130,134は、V
BSTとV
LXを電源としており、そのしきい値Vthは、V
BSTとV
LXの電位差ΔV’に応じて変化する。すなわち電位差ΔV’が大きくなると、しきい値Vthが低電位側にシフトする。
【0019】
トランジスタM
21がオンしたときのHVSET_IN信号が、低電位側にシフトしたしきい値Vthを下回ることができないと、HVSET_OUT信号はローのままであり、フリップフロップ142をセットできない。
【0020】
またトランジスタM
22がオンしたときのHVRESET_IN信号が、低電位側にシフトしたしきい値Vthを下回ることができないと、HVRESET_OUT信号はローのままであり、フリップフロップ142をリセットできない。
【0021】
なおこの問題を、当業者の一般的な認識と捉えてはならない。
【0022】
本発明は係る状況においてなされたものであり、そのある態様の例示的な目的のひとつは、LX端子の電圧が変動した状況においても確実にハイサイドトランジスタを制御可能なスイッチング回路の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明のある態様はスイッチング回路に関する。スイッチング回路は、入力端子と、スイッチング端子と、ブートストラップ端子と、入力端子とスイッチング端子の間に設けられたハイサイドトランジスタと、スイッチング端子とブートストラップ端子の間に設けられるブートストラップキャパシタと、入力信号を、スイッチング端子の電圧をロー、ブートストラップ端子の電圧をハイとする出力信号にレベルシフトするレベルシフト回路と、出力信号にもとづいてハイサイドトランジスタを駆動するハイサイドドライバと、を備える。レベルシフト回路は、中間ラインと、スイッチング端子の電圧に応じた中間基準電圧を中間ラインに発生する中間基準電圧生成回路と、入力信号を、中間基準電圧をローとする中間信号にレベルシフトする第1シフト回路と、中間信号を、ブートストラップ端子の電圧をハイ、スイッチング端子の電圧をローとする出力信号に変換する第2シフト回路と、を含む。
【0024】
本発明の別の態様は、半導体装置に関する。半導体装置は、スイッチング端子およびブートストラップ端子と、ハイサイドトランジスタのオンオフを指示するパルス信号を生成するパルス変調器と、パルス信号を、スイッチング端子の電圧をロー、ブートストラップ端子の電圧をハイとする出力信号にレベルシフトするレベルシフト回路と、出力信号にもとづいてハイサイドトランジスタを駆動するハイサイドドライバと、を備える。レベルシフト回路は、中間ラインと、スイッチング端子の電圧に応じた中間基準電圧を中間ラインに発生する中間基準電圧生成回路と、パルス信号に応じた入力信号を、中間基準電圧をローとする中間信号にレベルシフトする第1シフト回路と、中間信号を、ブートストラップ端子の電圧をハイ、スイッチング端子の電圧をローとする出力信号に変換する第2シフト回路と、を含む。
【0025】
本発明の別の態様は、DC/DCコンバータに関する。DC/DCコンバータは、上述の半導体装置を備えてもよい。
【0026】
なお、以上の構成要素の任意の組み合わせや本発明の構成要素や表現を、方法、装置、システムなどの間で相互に置換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0027】
本発明のある態様によれば、スイッチング端子の電圧が変動した状況においても確実にハイサイドトランジスタを制御できる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図2】本発明者が検討したレベルシフト回路の回路図である。
【
図3】
図2のレベルシフト回路の動作波形図である。
【
図4】
図2のレベルシフト回路の問題を説明する図である。
【
図5】実施の形態に係るスイッチング回路の回路図である。
【
図6】LX端子の電圧V
LXが負であるときの、
図5のスイッチング回路のレベルダイアグラムである。
【
図7】第1実施例に係るレベルシフト回路の回路図である。
【
図8】
図7のレベルシフト回路の動作波形図である。
【
図9】第2実施例に係るレベルシフト回路の回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
(実施の形態の概要)
本明細書に開示される一実施の形態は、スイッチング回路に関する。スイッチング回路は、入力端子と、スイッチング端子と、ブートストラップ端子と、入力端子とスイッチング端子の間に設けられたハイサイドトランジスタと、スイッチング端子とブートストラップ端子の間に設けられるブートストラップキャパシタと、入力信号を、スイッチング端子の電圧をロー、ブートストラップ端子の電圧をハイとするハイサイドパルスにレベルシフトするレベルシフト回路と、ハイサイドパルスにもとづいてハイサイドトランジスタを駆動するハイサイドドライバと、を備える。レベルシフト回路は、中間ラインと、スイッチング端子の電圧に応じた中間基準電圧を中間ラインに発生する中間基準電圧生成回路と、入力信号を、中間基準電圧をローとする中間信号にレベルシフトする第1シフト回路と、中間信号を、ブートストラップ端子の電圧をハイ、スイッチング端子の電圧をローとするハイサイドパルスに変換する第2シフト回路と、を含む。
【0030】
この実施の形態では、接地電圧から中間基準電圧へのレベルシフトと、中間基準電圧からスイッチング端子の電圧へのレベルシフトの2段階を経由することにより、スイッチング端子の電圧が変動した場合においても、入力信号を確実に後段に伝えることが可能となる。
【0031】
中間基準電圧は、接地電圧とスイッチング端子の電圧の低い方に応じていてもよい。これにより、スイッチング端子の電圧が正である場合には、接地電圧を基準としたレベルシフトが可能となる。
【0032】
中間基準電圧生成回路は、カソードが接地端子と接続され、アノードが中間ラインと接続される第1ダイオードと、カソードがスイッチング端子と接続され、アノードが中間ラインと接続される第2ダイオードと、を含んでもよい。これにより、スイッチング端子の電圧が接地電圧V
GNDより高いときには、中間基準電圧はV
GND+Vfとなり、スイッチング端子の電圧V
LXが接地電圧より低いときには、中間基準電圧は、V
LX+Vfとなる。
【0033】
第1ダイオードはツェナーダイオードであってもよい。これにより、中間基準電圧をV
GND−V
Zを下回らないようにクランプすることができ、第2シフト回路に流れる電流を制限することができる。
【0034】
スイッチング回路は、SOI構造を有する半導体基板に集積化されてもよい。素子分離をPN接合の逆バイアスによって形成する場合、第2ダイオードにおいて、寄生動作が発生するところ、SOI構造を採用することにより、寄生動作を防止できる。
【0035】
第1シフト回路は、入力信号を、当該入力信号のポジエッジ、ネガエッジの一方に応じてアサートされるセット信号と、それらの他方に応じてアサートされるリセット信号に変換し、レベルシフト後のセット信号とリセット信号のペアを、中間信号として、第2シフト回路に供給してもよい。
【0036】
第2シフト回路は、ラッチ型であってもよい。
【0037】
(実施の形態)
以下、本発明を好適な実施の形態をもとに図面を参照しながら説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、実施の形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0038】
本明細書において、「部材Aが、部材Bと接続された状態」とは、部材Aと部材Bが物理的に直接的に接続される場合のほか、部材Aと部材Bが、それらの電気的な接続状態に実質的な影響を及ぼさない、あるいはそれらの結合により奏される機能や効果を損なわせない、その他の部材を介して間接的に接続される場合も含む。
【0039】
同様に、「部材Cが、部材Aと部材Bの間に設けられた状態」とは、部材Aと部材C、あるいは部材Bと部材Cが直接的に接続される場合のほか、それらの電気的な接続状態に実質的な影響を及ぼさない、あるいはそれらの結合により奏される機能や効果を損なわせない、その他の部材を介して間接的に接続される場合も含む。
【0040】
また、「信号A(電圧、電流)が信号B(電圧、電流)に応じている」とは、信号Aが信号Bと相関を有することを意味し、具体的には、(i)信号Aが信号Bである場合、(ii)信号Aが信号Bに比例する場合、(iii)信号Aが信号Bをレベルシフトして得られる場合、(iv)信号Aが信号Bを増幅して得られる場合、(v)信号Aが信号Bを反転して得られる場合、(vi)あるいはそれらの任意の組み合わせ、等を意味する。「応じて」の範囲は、信号A、Bの種類、用途に応じて定まることが当業者には理解される。
【0041】
図5は、実施の形態に係るスイッチング回路200の回路図である。スイッチング回路200は、ハイサイドトランジスタM
1、ローサイドトランジスタM
2、ハイサイドドライバ240、ローサイドドライバ204、ブートストラップキャパシタC
BST、整流素子D
1、レギュレータ回路210、レベルシフト回路600を備える。
【0042】
スイッチング回路200の構成部品のうち、ブートストラップキャパシタC
BST、ハイサイドトランジスタM
1、ローサイドトランジスタM
2、整流素子D
1は外付けされており、残りの部品は集積回路である制御回路400に集積化される。なお、ハイサイドトランジスタM
1およびローサイドトランジスタM
2を制御回路400に集積化してもよい。
【0043】
入力端子INには、直流の入力電圧V
INが供給される。LX端子には、図示しない負荷やインダクタ、トランスが接続される。スイッチング回路200は、スイッチング端子(LX)に、ハイ(V
IN)とロー(V
GND)の間を遷移するスイッチング信号V
LXを発生する。
【0044】
ハイサイドトランジスタM
1は、入力端子INとスイッチング端子LXの間に設けられる。ローサイドトランジスタM
2は、LX端子と接地端子GNDの間に設けられる。ブートストラップキャパシタC
BSTは、LX端子とBST端子の間に設けられる。
【0045】
この実施の形態では、ハイサイドトランジスタM
1およびローサイドトランジスタM
2をMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)としたがトランジスタの種類は限定されず、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)やバイポーラトランジスタを用いることもできる。
【0046】
レギュレータ回路210は、電源電圧V
CCを生成し、制御回路400のその他の回路ブロックに供給する。またこの電源電圧V
CCは、ブートストラップ回路の充電用の電圧としても利用される。具体的には電源電圧V
CCは、電源電圧(VCC)端子および外付けの整流素子D
1を介して、ブートストラップキャパシタC
BSTに供給される。
【0047】
レベルシフト回路600は、入力信号HINを、LX端子の電圧V
LXをロー、BST端子の電圧をハイとする出力信号HOUTにレベルシフトする。たとえば入力信号HINはロジックレベルを有し、電源電圧V
CCをハイ、接地電圧V
GNDをローとする信号である。ハイサイドドライバ240は、出力信号HOUTにもとづいてハイサイドトランジスタM
1を駆動する。ハイサイドドライバ240の上側電源端子はBST端子と接続され、その下側電源端子は、LX端子と接続される。ローサイドドライバ204はローサイドパルスS
LにもとづいてローサイドトランジスタM
2を駆動する。
【0048】
以上がスイッチング回路200の全体構成である。続いてレベルシフト回路600の構成を説明する。
【0049】
レベルシフト回路600は、中間ライン602、中間基準電圧生成回路610、第1シフト回路620、第2シフト回路630を備える。中間基準電圧生成回路610は、LX端子の電圧V
LXを受け、それV
LXに応じた中間基準電圧V
INTを中間ライン602に発生する。
【0050】
第1シフト回路620は、入力信号HINを、中間基準電圧V
INTをローとする中間信号INTにレベルシフトする。第2シフト回路630は、中間信号INTを、BST端子の電圧V
BSTをハイ、LX端子の電圧V
LXをローとする出力信号HOUTに変換する。
【0051】
中間基準電圧V
INTは、接地電圧V
GNDとLX端子の電圧V
LXの低い方に応じていてもよい。この場合、中間基準電圧生成回路610を、電圧選択回路(最小電圧回路)で構成してもよい。
【0052】
以上がレベルシフト回路600の構成である。続いてスイッチング回路200の動作を説明する。
図6は、LX端子の電圧V
LXが負であるときの、
図5のスイッチング回路200のレベルダイアグラムである。ダイオードD
1の電圧降下を無視するとき、ブートストラップキャパシタC
BSTは、電位差ΔV=V
CC−V
LXで充電される。
【0053】
入力信号HINは、V
GNDをロー、V
CCをハイとするロジック信号である。中間基準電圧生成回路610は、スイッチング電圧V
LXに応じた中間基準電圧V
INTを生成する。ここでは、中間基準電圧V
INTは、スイッチング電圧V
LXよりわずかに高い電圧として示すがその限りでない。
【0054】
前段の第1シフト回路620によって、V
INTをロー、V
CCをハイとする中間信号INTが生成される。この中間信号INTが後段の第2シフト回路630に入力され、V
LXをロー、V
BSTをハイとする出力信号HOUTが生成される。
【0055】
以上がスイッチング回路200の動作である。このスイッチング回路200によれば、接地電圧V
GNDから中間基準電圧V
INTへのレベルシフトと、中間基準電圧V
INTからスイッチング端子の電圧V
LXへのレベルシフトの2段階を経由することにより、LX端子の電圧V
LXが変動した場合においても、入力信号HINを確実に後段に伝えることが可能となる。
【0056】
本発明は、
図5のブロック図や回路図として把握され、あるいは上述の説明から導かれるさまざまな装置、方法に及ぶものであり、特定の構成に限定されるものではない。以下、本発明の範囲を狭めるためではなく、発明の本質や動作の理解を助け、またそれらを明確化するために、より具体的な構成例や実施例を説明する。
【0057】
図7は、第1実施例に係るレベルシフト回路600Aの回路図である。中間基準電圧生成回路610Aは、第1ダイオードZD
11および第2ダイオードD
12を含む。第1ダイオードZD
11は、カソードが接地端子と接続され、アノードが中間ライン602と接続される。第2ダイオードZD
12は、カソードがLX端子と接続され、アノードが中間ライン602と接続される。2つのダイオードZD
11およびD
12は、最低電圧選択回路を形成しており、中間ライン602の電圧V
INTは、2つの電圧V
LXとV
GNDのうち低い電圧を基準にクランプされる。具体的には、V
LX>V
GNDのときV
INT=V
GND+V
Fとなり、V
LX<V
GNDのときV
INT=V
LX+V
Fとなる。
【0058】
第1ダイオードZD
11をツェナーダイオードとしてもよい。トランジスタM
11,M
12はソースフォロア回路であり、それらのゲート電圧Vg1,Vg2はロー側レベルシフタ624の出力のハイ電圧すなわちV
CCであるから、トランジスタM
11,M
12のソース電圧はV
CC−Vgsとなる。このときの抵抗R
12,R
14の両端間電圧は、V
CC−Vgs−V
INTであり、抵抗R
12,R
14に流れる電流は、それらの抵抗値をRとして、(V
CC−Vgs−V
INT)/Rで表される。もし中間基準電圧V
INTが無制限に低下すると、抵抗R
12,R
14に流れる電流が大きくなり、電力損失が大きくなり、場合によっては、許容電流を超えてしまうおそれもある。
【0059】
第1ダイオードZD
11をツェナーダイオードとすることで、中間基準電圧V
INTをV
GND−V
Zを下回らないようにクランプすることができる。中間基準電圧V
INTをV
GND−V
Zに制限することで、抵抗R
12,R
14の両端間電圧を制限することができ、ひいてはそれらに流れる電流を制限することができる。
【0060】
レベルシフト回路600Aを含む制御回路は、SOI構造を有する半導体基板に集積化される。いわゆる素子分離をPN接合の逆バイアスによって形成する場合、第2ダイオードD
12において、寄生動作が発生するところ、SOI構造を採用することにより、寄生動作を防止できる。第2ダイオードD
12を外付けする場合にはその限りでない。
【0061】
第1シフト回路620は、入力信号HINを、当該入力信号HINのポジエッジ、ネガエッジの一方(ここではポジエッジ)に応じてアサートされるセット信号HIN_Edge1と、それらの他方(ここではネガエッジ)に応じてアサートされるリセット信号HIN_Edge2に変換し、レベルシフト後のセット信号Vg1とリセット信号Vgs2のペアを、中間信号INTとして、第2シフト回路630に供給する。
【0062】
第1シフト回路620Aは、パルス発生器622とロー側レベルシフタ624を含む。パルス発生器622は、入力信号HINを受け、その一方のエッジ(たとえばポジエッジ)に応答してアサート(たとえばハイ)されるセット信号HIN_Edge1と、入力信号HINの他方のエッジ(たとえばネガエッジ)に応答してアサートされるリセット信号HIN_Edge2と、を生成する。
【0063】
ロー側レベルシフタ624は、セット信号HIN_Edge1およびリセット信号HIN_Edge2のローレベルを、V
GNDからV
INTにシフトし、シフト後の信号Vg1,Vg2を、中間信号INTとして後段の第2シフト回路630に供給する。
【0064】
第2シフト回路630は、初段のインバータ632,634と、後段のインバータ636,638を含む。初段のインバータ632,634は、セット信号Vg1およびリセット信号Vg2それぞれをレベルシフトし、HVSET_IN信号およびHVRESET_IN信号を出力する。インバータ632は、抵抗R
11、トランジスタM
11、抵抗R
12を含む。インバータ634は、抵抗R
13、トランジスタM
12、抵抗R
14を含む。
【0065】
後段のインバータ636,638は、HVSET_IN信号、HVRESET_IN信号を反転する。
【0066】
ハイサイドドライバ240は、フリップフロップ242、出力バッファ244を含む。フリップフロップ242は、HVSET_OUT信号に応じてセット、HVRESET_OUT信号に応じてリセットされる。出力バッファ244は、フリップフロップ242の出力に応じてハイサイドトランジスタM
1を駆動する。
【0067】
図8は、
図7のレベルシフト回路600Aの動作波形図である。中間基準電圧V
INTを利用したレベルシフトを経由することで、HVSET_IN信号、HVRESET_IN信号のローレベルが、
図4におけるそれよりも低くなり、後段のインバータ636,638のしきい値Vthを確実に下回ることができる。これにより、入力信号HINのレベル変化を、後段のハイサイドドライバ240に確実に伝達できる。
【0068】
図9は、第2実施例に係るレベルシフト回路600Bの回路図である。レベルシフト回路600Bは、ラッチ型で構成される。第1シフト回路620Bは、差動変換回路626と、ロー側レベルシフタ628を含む。差動変換回路626は、入力信号HINを一対の差動信号HINP,HINNに変換する。ロー側レベルシフタ628は、差動信号HINP,HINNを、中間基準電圧VINTをローとする信号Vg1,Vg2に変換し、それらを中間信号INTとして第2シフト回路630に供給する。
【0069】
第2シフト回路630はラッチ型のレベルシフタであり、Vg1,Vg2のハイレベルを、V
BSTにシフトする。
【0070】
(用途)
続いて、実施の形態に係るスイッチング回路を用いたDC/DCコンバータを説明する。
図10は、DC/DCコンバータ500の回路図である。DC/DCコンバータ500は、制御回路400Cと、ハイサイドトランジスタM
1、ローサイドトランジスタM
2、ブートストラップキャパシタC
BST、インダクタL
1、出力キャパシタC
1、抵抗R
11,R
12を備える。制御回路400Cは、ひとつの半導体基板に集積化された機能ICである。
【0071】
このDC/DCコンバータ500は、定電圧出力であり、図示しない負荷に、所定のレベルに安定化された出力電圧V
OUTを供給する。DC/DCコンバータ500の出力電圧V
OUTは、抵抗R
21,R
22からなる分圧回路によって分圧される。分圧後のフィードバック信号V
FBは、フィードバック(FB)端子に入力される。定電流出力のコンバータでは、出力電流に応じたフィードバック信号V
FBがフィードバックされる。
【0072】
パルス変調器410は、フィードバック信号V
FBが目標値V
REFに近づくように、ハイサイドトランジスタM
1のオンオフを指示するパルス信号S
PWMを生成する。ロジック回路420は、パルス信号S
PWMに応じて、ハイサイドトランジスタM
1、ローサイドトランジスタM
2それぞれを制御するためのパルス信号S
PWMH,S
PWMLを生成する。ハイサイドのパルス信号S
PWMHは、上述のレベルシフト回路600によってレベルシフトされ、ハイサイドドライバ240に供給される。パルス信号S
PWMLはローサイドドライバ204に供給される。
【0073】
以上、本発明について、実施の形態をもとに説明した。この実施の形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組み合わせにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。以下、こうした変形例について説明する。
【0074】
(第1変形例)
図7において、パルス発生器622とロー側レベルシフタ624を入れ替えてもよい。すなわち、入力信号HINをレベルシフトした後に、エッジに応じた2つの信号Vg1,Vg2を生成してもよい。
【0075】
(第2変形例)
図9においても、差動変換回路626とロー側レベルシフタ628を入れ替えてもよい。すなわち、入力信号HINをレベルシフトした後に、差動信号に変換してもよい。
【0076】
(第3変形例)
DC/DCコンバータは、ローサイドトランジスタM
2に代えてダイオードを備えるダイオード整流型であってもよい。
【0077】
(第4変形例)
スイッチング回路200の用途は、DC/DCコンバータに限定されない。たとえばスイッチング回路200は、双方向コンバータ、バッテリの充電回路、モータを駆動するインバータ装置などにも適用可能である。
【0078】
実施の形態にもとづき、具体的な語句を用いて本発明を説明したが、実施の形態は、本発明の原理、応用を示しているにすぎず、実施の形態には、請求の範囲に規定された本発明の思想を逸脱しない範囲において、多くの変形例や配置の変更が認められる。
【符号の説明】
【0079】
M
1 ハイサイドトランジスタ
M
2 ローサイドトランジスタ
C
BST ブートストラップキャパシタ
200 スイッチング回路
240 ハイサイドドライバ
242 フリップフロップ
244 出力バッファ
204 ローサイドドライバ
210 レギュレータ
600 レベルシフト回路
602 中間ライン
610 中間基準電圧生成回路
ZD
11 第1ダイオード
D
12 第2ダイオード
620 第1シフト回路
622 パルス発生器
624 ロー側レベルシフタ
626 差動変換回路
628 ロー側レベルシフタ
630 第2シフト回路
632,634,636,638 インバータ
400 制御回路
410 パルス変調器
D
1 整流素子
500 降圧DC/DCコンバータ