【解決手段】ドライバ回路DRV1は、出力ノード(外部端子T3)を共有するプルアップ回路PU1とプルダウン回路PD1を有する。プルアップ回路PU1に入力される信号DI1(DI2)及びプルダウン回路PD1に入力される信号DI3は相補的に選ばれ、これらの信号の開閉動作に応じて信号DI1(DI2)及びDI3の立ち上がり及び立ち下がりの時間が調整された出力信号が出力ノードから出力する。立ち上がり時間はトランジスタM1,M2及び抵抗R1によって、立ち下がり時間はトランジスタM3,M4,M5及び抵抗R2によってそれぞれ調整される。
出力ノードを共有し、相補的な入力信号の開閉動作により前記出力ノードから出力信号を出力するプルアップ回路及びプルダウン回路を含み、前記プルアップ回路及び前記プルダウン回路は電源端子と基準電位との間に前記出力ノードを介して直列に結合され、前記プルアップ回路及び前記プルダウン回路の少なくとも一方は前記入力信号の立ち上がり及び立下がりのそれぞれに第1の応答及び第2の応答をもって応答するドライバ回路。
前記プルアップ回路または前記プルダウン回路は、主導電路同士が並列に接続されるMOS型の第1のトランジスタ及び第2トランジスタを備え、前記第1の応答は前記第1のトランジスタによって行われ、前記第2の応答は前記第2のトランジスタによって行われる請求項2に記載のドライバ回路。
前記第2のトランジスタのチャネル長Lとチャネル幅Wとの比W/Lは、前記第1のトランジスタのそれらの比よりも小さく設定される請求項4または5に記載のドライバ回路。
第3のトランジスタを備え、前記第3のトランジスタの主導電路は前記第1のトランジスタ及び前記第2のトランジスタの主導電路と並列に接続され、前記第1の応答及び前記第2の応答に遅れて前記第3のトランジスタによる第3の応答を行う請求項3に記載のドライバ回路。
前記プルアップ回路または前記プルダウン回路は、主導電路同士が並列に接続されるバイポーラ型の第1のトランジスタ及び第2トランジスタを備え、前記第1の応答は前記第1のトランジスタによって行われ、前記第2の応答は前記第2のトランジスタによって行われる請求項2に記載のドライバ回路。
前記プルアップ回路と前記プルダウン回路との動作の切り替わり時に両者の動作がオフするデッドタイムが設定される請求項1〜13のいずれか一項に記載のドライバ回路。
スイッチングトランジスタと、前記スイッチングトランジスタのオン/オフ制御により電流が供給されるインダクタと、前記インダクタに蓄積された電磁エネルギーを平滑するキャパシタと、を備え、前記スイッチングトランジスタのオン/オフ制御は請求項1〜14のいずれか一項に記載のドライバ回路で制御されるスイッチングレギュレータ。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(ドライバ回路の第1実施形態)
図1は、本発明に係るドライバ回路の第1実施形態を示す。ドライバ回路DRV1は、プルアップ回路PU1及びプルダウン回路PD1を有する。プルアップ回路PU1及びプルダウン回路PD1は、外部端子T3(出力ノード)を共有し、ドライバの電源電圧VDDDRVが供給される外部端子T2とドライバの基準電位VSSDRVに固定される外部端子T4との間に接続される。プルアップ回路PU1は、外部端子T3の電位を外部端子T2の電位まで持ち上げる。また、プルダウン回路PD1は、外部端子T3の電位を外部端子T4の電位まで引き込む。
【0013】
プルアップ回路PU1は、例えばNMOS型のトランジスタM1、PMOS型のトランジスタM2、及び抵抗R1を有する。トランジスタM1,M2は、省電力化からみるとMOS型が好ましい。しかし、トランジスタM1はバイポーラトランジスタのNPN型に、トランジスタM2はバイポーラトランジスタのPNP型にそれぞれ置き換えてもよい。信号DI1は、インバータINV2の入力側及びトランジスタM2の制御電極(ゲート)に入力される。インバータINV2の出力側は、トランジスタM1の制御電極(ゲート)に接続される。トランジスタM1の第1主電極(ドレイン)は外部端子T2に接続され、第2主電極(ソース)は外部端子T3に接続される。トランジスタM2の第1主電極(ドレイン)は抵抗R1の一端に接続され、第2主電極(ソース)はトランジスタM1の第1主電極と共通接続されて外部端子T2に接続される。抵抗R1の他端は、トランジスタM1の第2主電極と共通接続されて外部端子T3に接続される。したがって、トランジスタM2の主導電路(ソース・ドレイン間)と抵抗R1は、外部端子T2と外部端子T3との間に直列に接続される。
【0014】
抵抗R1は、トランジスタM2の主導電路に介在する抵抗成分の大きさをトランジスタM1のそれよりも大きくする機能を有する。抵抗R1を用いない別の方法として、トランジスタM2のチャネル長Lとチャネル幅Wとの比W/Lを小さくする方法がある。主導電路の抵抗成分の大きさは、比W/Lを小さくすると大きくなり、比W/Lを大きくすると小さくなる。なお、抵抗R1は、トランジスタM2の主導電路の一部としてみることができる。そうすると、トランジスタM1の主導電路及びトランジスタM2の主導電路は、外部端子T2と外部端子T3との間に並列に接続されることとなる。
【0015】
信号DI1がプルアップ回路PU1に入力されると、信号DI1が反転された信号DI2がトランジスタM1のゲートに入力される。信号DI2のレベルがトランジスタM1のゲート・ソース間の閾値電圧を上回ると、トランジスタM1はターンオンする。また、信号DI1は、トランジスタM2のゲートにも入力される。信号DI1のレベルが下がり、トランジスタM2のゲート・ソース間電圧がトランジスタM2の閾値電圧Vt_M2を下回ると、トランジスタM2もターンオンする。トランジスタM2はプルアップ回路PU1のスイッチとして機能し、抵抗R1はスルーレート調整手段として機能する。
【0016】
トランジスタM1,M2のターンオンのタイミングは、マクロ的にみるとほぼ同時である。しかし、トランジスタM1,M2のターンオン後の外部端子T3の電位変化に着目すると、トランジスタM1,M2のターンオン状態の深さによって変化が生じる。即ち、外部端子T3の電位は、抵抗R1の影響を受けないトランジスタM1のターンオンのタイミングに依存する。したがって、外部端子T3の電位は、ドライバの電源電圧VDDDRVよりもトランジスタM1の閾値電圧Vt_M1だけ低い電圧まで急激に上昇する。即ち、トランジスタM1によって、信号DI1(DI2)に対して第1のスルーレートをもった第1の応答が行われる。その後、トランジスタM1の主導電路に電流が流れなくなるためトランジスタM2の主導電路を通して電流が流れ、外部端子T2に供給されるドライバの電源電圧VDDDRVがトランジスタM2及び抵抗R1を介して入力されることで、外部端子T3の電位は電源電圧VDDDRVの近くの電位まで上昇する。このときの上昇の傾きは、抵抗R1の大きさに反比例し、やや緩やかとなる。
【0017】
プルダウン回路PD1は、例えばNMOS型のトランジスタM3〜M5及び抵抗R2を有する。したがって、同じ導電型のトランジスタを採用する。トランジスタM3〜M5は、省電力化からみるとMOS型が好ましいが、バイポーラトランジスタのNPN型に置き換えてもよい。信号DI3は、トランジスタM4,M5の制御電極(ゲート)に入力される。トランジスタM5の第1主電極(ドレイン)は抵抗R2の一端に接続され、第2主電極(ソース)は外部端子T4に接続される。抵抗R2の他端は、外部端子T3に接続される。トランジスタM4の第1主電極(ドレイン)はトランジスタM3の第2主電極(ソース)に接続され、第2主電極(ソース)はトランジスタM5の第2主電極と共通接続されて外部端子T4に接続される。トランジスタM3は、ダイオード接続される。トランジスタM3の第1主電極(ドレイン)及び制御電極(ゲート)は、抵抗R2の他端と共通接続されて外部端子T3に接続される。外部端子T4は、ドライバの基準電位VSSDRVに固定される。なお、トランジスタM3は、トランジスタではなくダイオードに置き換えてもよい。その場合は、ダイオードのアノードを外部端子T3に接続し、カソードをトランジスタM4の第1主電極(ドレイン)に接続する。ドライバの基準電位VSSDRVは、例えば接地電位GNDであるが、外部端子T3の電位より低い電位に設定することができる。
【0018】
抵抗R2は、トランジスタM5の主導電路に介在する抵抗成分の大きさをトランジスタM4のそれよりも大きくする機能を有する。抵抗R2を用いない別の方法として、トランジスタM5のチャネル長Lとチャネル幅Wとの比W/Lを小さくする方法がある。主導電路の抵抗成分の大きさは、比W/Lを小さくすると大きくなり、比W/Lを大きくすると小さくなる。なお、抵抗R2は、トランジスタM5の主導電路の一部としてみることができる。そうすると、トランジスタM5の主導電路及びトランジスタM4の主導電路は、外部端子T3と外部端子T4との間に並列に接続されることとなる。
【0019】
信号DI3がプルダウン回路PD1に入力され、信号DI3のレベルがM4,M5のゲート・ソース間の閾値電圧を上回ると、トランジスタM4,M5はそれぞれターンオンする。トランジスタM5はプルダウン回路PD1のスイッチとして機能し、抵抗R2はスルーレート時間調整手段として機能する。
【0020】
外部端子T3の電位は、トランジスタM4のドレイン・ソース間電圧を無視すると、まずはトランジスタM3のゲート・ソース間の閾値電圧Vt_M3とほぼ等しくなる。即ち、トランジスタM4によって、信号DI3に対して第1のスルーレートをもった第1の応答が行われる。その後、トランジスタM4の主導電路に電流が流れなくなるため、トランジスタM5の主導電路を通して電流が流れ、外部端子T3の電位は外部端子T4の電位まで下降する。このときの下降する傾きは、抵抗R2の大きさに反比例し、やや緩やかとなる。即ち、トランジスタM5によって、信号DI3に対して第1のスルーレートよりも勾配が緩やかな第2のスルーレートをもった第2の応答が行われる。第2の応答に要する時間を第1のそれよりも長くすることで、リンギング発生を抑止することができる。なお、トランジスタM3をダイオードに置き換える場合は、ダイオードの順方向電圧を閾値電圧と称する。
【0021】
ここで、プルアップ回路PU1及びプルダウン回路PD1に入力される信号DI1〜DI3及び外部端子T3から出力される信号HG1について簡単に説明する。信号DI1は、例えば時刻t1で立ち上がり、時刻t6で立ち下がる。信号DI2は、信号DI1の極性が反転した信号であるから、例えば時刻t1で立ち下がり、時刻t6で立ち上がる。信号DI3は、例えば時刻t1より遅い時刻t2で立ち上がり、時刻6より早い時刻t5で立ち下がる。時刻t1〜t2及び時刻t5〜t6の区間は、デッドタイム区間として設定される。こうした信号がプルアップ回路PU1及びプルダウン回路PD1に入力されると、外部端子T3から信号HG1が出力される。
【0022】
信号HG1は、信号DI3が立ち上がる時刻t2で下降を開始し、トランジスタM3の閾値電圧Vt_M3に達する時刻t3まで急激に下降する。時刻t3〜t4の区間は、抵抗R2の効果によって、ドライバの基準電位VSSDRVまで徐々に下降する。したがって、時刻t1〜t4の区間におけるドライバ回路DRV1の挙動は、プルダウン回路PD1によって決定される。
【0023】
信号HG1は、信号DI1が立ち下がり、信号DI2が立ち上がる時刻t6で上昇を開始し、ドライバの電源電圧VDDDRVよりもトランジスタM1の閾値電圧Vt_M1だけ低い電圧に達する時刻t7まで急激に上昇する。時刻t7〜t8の区間は、抵抗R1の効果によって、ドライバの電源電圧VDDDRVまで徐々に上昇する。したがって、時刻t5〜t8におけるドライバ回路DRV1の挙動は、プルアップ回路PU1によって決定される。
【0024】
ここで、ドライバ回路DRV1の特徴を要約すると次のとおりである。トランジスタM1,M2及び抵抗R1で構成されたプルアップ回路PU1は、入力信号の立ち下がりに応じてトランジスタM1による第1の応答とトランジスタM2による第2の応答の2段階で応答する。第1の応答と第2の応答とが切り替わるタイミングは、外部端子T2と外部端子T3との電圧差がトランジスタM1の閾値電圧Vt_M1に達したときである。第2の応答、即ちトランジスタM2及び抵抗R1で設定される応答に要する時間は、第1の応答に要する時間よりも長く設定される。また、プルダウン回路PD1も、第1の応答と第2の応答の2段階で応答する。さらに、第1の応答と第2の応答とが切り替わるタイミングは、外部端子T3と外部端子T4との電圧差がトランジスタM3の閾値電圧Vt_M3に達したときである。
【0025】
ドライバ回路DRV1の特徴を別の視点から要約すると次のとおりである。ドライバ回路DRV1は、外部端子T3を共有し、かつ相補的な信号DI1,DI2と信号DI3の開閉動作に応じて、外部端子T3から信号HG1を出力するプルアップ回路PU1及びプルダウン回路PD1を有する。ここで、「相補的な信号」とは、デッドタイム区間を除いて、プルアップ回路PU1及びプルダウン回路PD1の一方がオン状態のときに他方がオフ状態となる信号同士を指す。また、「開閉動作」とは、「相補的な信号」によって、プルアップ回路PU1及びプルダウン回路PD1をオン状態またはオフ状態に置くことを指す。プルアップ回路PU1及びプルダウン回路PD1は、外部端子T3を介して、外部端子T2と外部端子T4との間に直列に接続される。プルアップ回路PU1及びプルダウン回路PD1の少なくとも一方は、信号DI1(DI2),DI3の立ち上がり及び立ち下がりのそれぞれに時刻t2〜t3(または時刻t6〜t7)の第1の応答及び時刻t3〜t4(または時刻t7〜t8)の第2の応答をもって応答する。
【0026】
(ドライバ回路の第2実施形態)
図2は、本発明に係るドライバ回路の第2実施形態を示す。ドライバ回路DRV2は、プルアップ回路PU2及びプルダウン回路PD2を有する。プルアップ回路PU2及びプルダウン回路PD2は、外部端子T5(出力ノード)を共有し、ドライバの電源電圧VDDDRVが供給される外部端子T8とドライバの基準電位VSSDRVとの間に接続される。プルアップ回路PU2は、外部端子T5の電位をドライバの電源電圧VDDDRVまで持ち上げる。また、プルダウン回路PD2は、外部端子T5の電位をドライバの嬉zy7運電位VSSDRVまで引き込む。
【0027】
プルアップ回路PU2及びプルダウン回路PD2は、出力ノード(外部端子T5)を共有し、外部端子T8(ドライバの電源電圧VDDDRV)とドライバの基準電位VSSDRVとの間に直列に接続される。
【0028】
プルアップ回路PU2は、例えばPMOS型のトランジスタM6〜M8及び抵抗R3を備える。したがって、同じ導電型のトランジスタを採用する。トランジスタM6〜M8は、省電力化からみるとMOS型が好ましいが、例えばPNP型のバイポーラトランジスタに置き換えてもよい。入力信号DI4は、トランジスタM7,M8の制御電極(ゲート)に入力される。トランジスタM7の第1主電極(ソース)は外部端子T8に接続され、第2主電極(ドレイン)はトランジスタM6の第1主電極(ソース)に接続される。トランジスタM6はダイオード接続され、第2主電極(ドレイン)及び制御電極(ゲート)は共通接続されて外部端子T5に接続される。トランジスタM8の第1主電極(ソース)はトランジスタM7の第1主電極と共通接続されて外部端子T8に接続され、第2主電極(ドレイン)は抵抗R3の一端に接続される。抵抗R3の他端は、外部端子T5に接続される。トランジスタM7,M8は、ほぼ同時にターンオンする。外部端子T5の電位は、トランジスタM7のソース・ドレイン間の電圧を無視すると、まずトランジスタM6の閾値電圧Vt_M9とほぼ等しくなる。その後、トランジスタM7の主導電路に電流が流れなくなるため、トランジスタM8の主導電路を通して電流が流れ、外部端子T5の電位はドライバの電源電圧VDDDRVまで上昇する。したがって、トランジスタM8はプルアップ回路PU2のスイッチとして機能し、抵抗R3はスルーレート調整手段として機能する。
【0029】
プルダウン回路PD2は、例えばNMOS型のトランジスタM10、PMOS型のトランジスタM9、及び抵抗R4を有する。したがって、逆導電型のトランジスタを採用する。トランジスタM9,M10は、省電力化からみるとMOS型が好ましい。しかし、トランジスタM9をPNP型のバイポーラトランジスタに、トランジスタM10をNPN型のバイポーラトランジスタにそれぞれ置き換えてもよい。入力信号DI5は、トランジスタM10の制御電極(ゲート)及びインバータINV6の入力側に入力される。トランジスタM10の第1主電極(ドレイン)は抵抗R4の一端に接続され、第2主電極(ソース)はドライバの基準電位VSSDRVに接続される。抵抗R4の他端は、外部端子T5に接続される。インバータINV6の出力側は、トランジスタM9の制御電極(ゲート)に接続される。トランジスタM9の第1主電極(ソース)は抵抗R4の他端と共通接続されて外部端子T5に接続され、第2主電極(ドレイン)はトランジスタM10の第2主電極と共通接続されてドライバの基準電位VSSDRVに接続される。
【0030】
信号DI5のレベルがトランジスタM10のゲート・ソース間の閾値電圧を上回ると、トランジスタM10はターンオンする。また、インバータINV6によって信号DI5を反転させた信号DI6のレベルがトランジスタM9のゲート・ソース間の閾値電圧を下回ると、トランジスタM9はターンオンする。
【0031】
ここで、プルアップ回路PU2及びプルダウン回路PD2に入力される信DI4〜DI6及び外部端子T5から出力される信号LG1について簡単に説明する。信号DI5は、例えば時刻t1で立ち下がり、時刻t6で立ち上がる。信号DI6は、信号DI5の極性が反転した信号であるから、例えば時刻t1で立ち上がり、時刻t6で立ち下がる。信号DI4は、時刻t1より遅い時刻t2で立ち下がり、時刻6より早い時刻t5で立ち上がる。時刻t1〜t2及び時刻t5〜t6の区間は、デッドタイム区間として設定される。こうした信号がプルアップ回路PU2及びプルダウン回路PD2に入力されると、外部端子T5から信号LG1が出力される。
【0032】
信号LG1は、信号DI4が立ち下がる時刻t2で上昇を開始し、ドライバの電源電圧VDDDRVよりもトランジスタM9の閾値電圧Vt_M9だけ低い電圧に達する時刻t3まで急激に上昇する。時刻t3〜t4の区間は、抵抗R4の効果によって、ドライバの電源電圧VDDDRVまで徐々に上昇する。したがって、時刻t1〜t4の区間におけるドライバ回路DRV2の挙動は、プルダウン回路PD2によって決定される。
【0033】
信号LG1は、信号DI5が立ち上がり、信号DI6が立ち下がる時刻t6で下降を開始し、トランジスタM9の閾値電圧Vt_M9に達する時刻t7まで急激に下降する。時刻t7〜t8の区間は、抵抗R3の効果によって、接地電位GNDまで徐々に下降する。したがって、時刻t5〜t8におけるドライバ回路DRV2の挙動は、プルアップ回路PU2によって決定される。
【0034】
以上の説明から明らかになるように、
図2は
図1と同様に、プルアップ回路PU2及びプルダウン回路PD2は、入力信号(信号DI4〜DI6)に応じて第1の応答と第2の応答の2段階で応答する。また、プルアップ回路PU2及びプルダウン回路PD2の少なくとも一方に第1の応答または第2の応答をもって応答させるようにしてもよい。即ち、例えばプルアップ回路PU2のみに第1の応答と第2の応答の2段階で応答させるようにしてもよい。
【0035】
要約すると、
図2のドライブ回路の特徴は、
図1のそれとほぼ同じである。即ち、第1の応答と第2の応答が連続的に、かつこの順で行われるが、両者が切り替わるレベルをMOSトランジスタの閾値電圧またはバイポーラトランジスタのベース・エミッタ間の順方向電圧で一義的に決めることになる。
【0036】
ドライバ回路として、
図1のドライバ回路DRV1を採用するか、若しくは
図2のドライバ回路DRV2を採用するかは、設計的事項の1つであり、ドライバ回路の前段または後段の回路構成に応じて適宜決定すればよい。例えば、ドライバ回路に入力される入力信号の極性やドライバ回路の後段に接続されるスイッチングレギュレータの回路構成に応じて適宜選択すればよい。
【0037】
ここで、
図1及び
図2のドライバ回路の共通点をまとめると次のとおりである。両者のドライバ回路DRV1,DRV2とも、外部端子T3,T5(出力ノード)を共有し、相補的な入力信号の開閉動作により出力ノードから信号HG1,LG1を出力するプルアップ回路(PU1,PU2)及びプルダウン回路(PD1,PD2)有する。さらに、プルアップ回路及びプルダウン回路は、ドライバの電源電圧VDDDRVとドライバの基準電位VSSDRVとの間に出力ノードを介して直列に結合される。さらに、プルアップ回路及びプルダウン回路の少なくとも一方は、入力信号の立ち上がり/立ち下がりのそれぞれに第1の応答と第2の応答の2段階をもって応答させる。
【0038】
図1及び
図2のドライバ回路は、一般的には出力信号に発生するノイズ、リンギング等を低減する回路や、各種インターフェース回路、一般的な波形整形回路、メモリやマイクロプロセッサ等に用いるデータバッファ回路、出力インピーダンス調整回路、さらには各形式のスイッチングレギュレータに適用することができる。
【0039】
(スイッチングレギュレータの第1実施形態)
図3は、
図1のドライバ回路を適用したスイッチングレギュレータの第1実施形態の回路図であり、ブートストラップ回路付の降圧型DC/DCコンバータを示す。
図3のスイッチングレギュレータ300は、半導体装置30、ハイサイドトランジスタPN1、ローサイドトランジスタPN2、ブートストラップキャパシタC11、ブートストラップダイオードD1、インダクタL11、キャパシタC12、負荷RLを有する。インダクタL11は、半導体装置30のドライバ回路HDRV1及び外部端子T3を介してハイサイドトランジスタPN1をオンし、電流が供給されると電磁エネルギーを蓄える。キャパシタC12は、蓄えられた電磁エネルギーを平滑する。さらに、半導体装置30は、少なくとも外部端子T1〜T7を有する。外部端子T1は、ドライバの電源電圧VREGが印加される電源端子である。外部端子T2は、ブートストラップ電圧入力端子である。外部端子T3は、ハイサイド駆動端子である。外部端子T4は、スイッチングレギュレータのインダクタ接続端子である。外部端子T5は、ローサイド駆動端子である。外部端子T6は、帰還端子である。外部端子T7は、接地電位GNDに固定された接地端子である。
【0040】
半導体装置30は、
図1で示したドライバ回路をハイサイドドライバとして用いたドライバ回路HDRV1及びローサイドドライバとして用いたドライバ回路LDRV1を有する。ドライバ回路HDRV1(ハイサイドドライバ回路)は、プルアップ回路HPU1及びプルダウン回路HPD1を有する。ドライバ回路LDRV1(ローサイドドライバ回路)は、プルアップ回路LPU1及びプルダウン回路LPD1を有する。
【0041】
ドライバ回路HDRV1は外部端子T3を介してハイサイドトランジスタPN1を駆動し、ドライバ回路LDRV1は外部端子T5を介してローサイドトランジスタPN2を駆動する。
【0042】
ドライバ回路HDRV1,LDRV1の具体的な回路動作については、
図1で既に説明済みであるので、ここでの説明は割愛する。
【0043】
ハイサイドトランジスタPN1及びローサイドトランジスタPN2は、第1主電極(ドレイン)、第2主電極(ソース)、及び制御電極(ゲート)を有する。ハイサイドトランジスタPN1及びローサイドトランジスタPN2がバイポーラトランジスタの場合、第1主電極、第2主電極、及び制御電極は、それぞれコレクタ、エミッタ、及びベースに相当する。
【0044】
ハイサイドトランジスタPN1及びローサイドトランジスタPN2は、半導体装置30からそれぞれ入力されるハイサイドゲート信号HG1及びローサイドゲート信号LG1によってオン/オフ制御される。ハイサイドトランジスタPN1のドレインはスイッチングレギュレータの入力電圧VINに接続され、ソースはスイッチングノードSWに接続される。ローサイドトランジスタPN2のドレインはスイッチングノードSWに接続され、ソースは接地電位GNDに接続される。ハイサイドトランジスタPN1のゲートとドレインとの間には寄生キャパシタC
PHGDが介在し、ゲートとソースとの間には寄生キャパシタC
PHGSが介在する。さらに、ローサイドトランジスタPN2のゲートとドレインとの間には寄生キャパシタC
PLGDが介在し、ゲートとソースとの間には寄生キャパシタC
PLGSが介在する。こうした寄生キャパシタは、後述する寄生インダクタンスとともに不所望な共振回路を形成することになり、リンギング発生や異常発振の元となる。本発明は、こうした問題点を克服したドライバ回路及びスイッチングレギュレータを提供する。
【0045】
さて、スイッチングノードSWは、コイルL11の一端に接続される。コイルL11の他端は、抵抗R11の一端、キャパシタC12の一端、及び負荷RLの一端に接続される。抵抗R11の他端は、抵抗R12の一端に接続される。抵抗R12の他端は、接地電位GNDに接続される。抵抗R11及びR12の接続点には、フィードバック電圧VFBが生じる。フィードバック電圧VFBは、外部端子T6を介して半導体装置30のエラーアンプERRに帰還される。
【0046】
外部端子T3とハイサイドトランジスタPN1のゲートとの間には、寄生抵抗R
PHGと寄生インダクタンスL
PHGが直列に介在する。こうした寄生成分は、外部端子T3からハイサイドトランジスタPN1のゲートまでの配線距離や、ハイサイドトランジスタPN1の物理的なサイズによって異なる。寄生抵抗R
PHGと寄生インダクタンスL
PHGが最も小さくなるのは、ハイサイドトランジスタPN1を半導体装置30の内部に作り込む場合である。配線材料にもよるが、逆にこれらの寄生成分が無視できなくなるのは、外部端子T3からハイサイドトランジスタPN1までの配線距離が長い場合である。特に、ハイサイドトランジスタPN1を個別部品で構成した場合は、こうした寄生成分の影響が大きくなる。こうした寄生成分は、前述した寄生キャパシタとともに不所望な信号を生じさせる。本発明は、こうした寄生成分の影響を受けないように、ドライバ回路hDRV1から駆動信号HG1を出力する。
【0047】
外部端子T5とローサイドトランジスタPN2のゲートとの間には、寄生抵抗R
PLGと寄生インダクタンスL
PLGが直列に介在する。こうした寄生成分は、外部端子T5からローサイドトランジスタPN2のゲートまでの配線距離や、ローサイドトランジスタPN2の物理的なサイズによって異なる。寄生抵抗R
PLGと寄生インダクタンスL
PLGが最も小さくなるのは、ローサイドトランジスタPN2を半導体装置30の内部に作り込む場合である。配線材料にもよるが、逆にこれらの寄生成分が無視できなくなるのは、外部端子T5からローサイドトランジスタPN2までの配線距離が長い場合である。特に、ローサイドトランジスタPN2を個別部品で構成した場合は、こうした寄生成分の影響が大きくなる。いずれにしても、本発明は、こうした寄生成分の影響を受けないように、ドライバ回路LDRV1から駆動信号LG1を出力する。
【0048】
ハイサイドトランジスタPN1及びローサイドトランジスタPN2の各ゲート側に存在する寄生成分は、不所望なリンギングを生じさせる因子となる。しかし、本発明では
図1及び
図2において既に説明したように、ハイサイドゲート信号HG1とローサイドゲート信号LG1の立ち上がり及び立下りの少なくともいずれか一方にスルーレートが異なる少なくとも2つの勾配を持たせたので、こうしたリンギングの発生を抑止することができる。
【0049】
半導体装置30は、ドライバ回路HDRV1,LDRV1の他にエラーアンプ回路ERR、ランプ回路RAMP、パルス幅変調コンパレータPWM、論理回路LOGIC、及びレベルシフト回路LSを備える。さらに、遅延回路HHDLY1,HDLY2,LDLY1,LDLY2及びインバータHINV1,HINV3,LINV1,LINV3を備える。
【0050】
エラーアンプERRの反転入力端子(−)にはフィードバック電圧VFBが入力され、非反転入力端子(+)には参照電圧VREFが入力される。エラーアンプERRは、両者の電圧差を比較して誤差電圧VERRを出力する。誤差電圧VERRは、パルス幅変調コンパレータPWMの反転入力端子(−)に入力される。
【0051】
パルス幅変調コンパレータPWMは、ランプ回路RAMPから出力されたランプ電圧VRAMPとエラーアンプ回路ERRの出力電圧VERRとを比較し、誤差電圧VERRに応じたパルス幅変調信号VPWMを出力し、論理回路LOGICに入力する。
【0052】
論理回路LOGICには、例えばDC/DCコンバータを駆動するに用いる信号を生成するために発振器やRSフリップフロップ等が内蔵される。論理回路LOGICは、信号DH1,DLを出力する。信号DH1はドライバ回路HDRV1を駆動する信号源(初期信号)となり、信号DLはドライバ回路DRV1を駆動する信号源となる。
【0053】
レベルシフト回路LSは、信号DH1をレベルシフトした信号DH2を生成する。信号DH2は、ドライバ回路HDRV1を駆動するためにブートストラップ電圧VBOOTとスイッチングノードSWとの間の電位にレベルシフトされた信号である。
【0054】
信号DH2は、ドライバ回路HDRV1を駆動させる初期の信号となり、遅延回路HDLY1,HDLY2に入力される。遅延回路HDLY1は、信号DH2の例えば立ち上がりのタイミングを検知して遅延信号DHD1を生成する。この結果、遅延信号DHD1の立ち下がりのタイミングは信号DH2の立ち下がりのタイミングとほぼ同じとなるが、立ち上がりのタイミングは信号DH2の立ち上がりのタイミングよりも遅れる。
【0055】
遅延回路HDLY2は、遅延回路HDLY1とは異なり、信号DH2の例えば立ち下がりのタイミングを検知して遅延信号DHD2を生成する。この結果、遅延信号DHD2の立ち上がりのタイミングは信号DH2の立ち上がりのタイミングとほぼ同じであるが、立ち下がりのタイミングは信号DH2の立ち下がりのタイミングよりも遅れる。
【0056】
以上説明したように、遅延回路HDLY1は信号DH2の立ち上がりのタイミングを、遅延回路HDLY2は信号DH2の立下りのタイミングをそれぞれ検知して遅延信号を生成する。これは、後段のプルアップ回路PU1及びプルダウン回路PD1の動作切替時にデッドタイムをもたせ、外部端子T2(ブートストラップ電圧入力端子)からプルアップ回路PU1及びプルダウン回路PD1を介して外部端子T4(スイッチングレギュレータの出力端子)に向かって流れる貫通電流を抑止するためである。
【0057】
信号DLは、ドライバ回路LDRV1を駆動させる初期の信号となり、遅延回路LDLY1,LDLY2に入力される。遅延回路LDLY1は、信号DLの例えば立ち上がりのタイミングを検知して遅延信号DLD1を生成する。遅延回路HDLY2は、遅延回路HDLY1とは異なり、信号DLの例えば立ち下がりのタイミングを検知して遅延信号DLD2を生成する。信号DLD1はインバータLINV1に入力され、遅延信号DLD2はインバータLINV3に入力される。インバータLINV1の出力信号DLI1及びインバータLINV3の出力信号DLI3は、入力信号としてドライバ回路LDRV1に入力される。
【0058】
遅延回路HDLY1,HDLY2,LDLY1,LDLY2は、プルアップ回路PU1とプルダウン回路PD1との動作切替時にデッドタイムをもたせるために備えられる。
【0059】
図4は、
図3のスイッチングレギュレータ300におけるドライバ回路HDRV1のタイミングチャートである。
【0060】
(a)DH1は、ドライバ回路HDRV1を駆動するための初期信号であり、論理回路LOGICから出力される。信号DH1は、例えば時刻t1で立ち下がり、時刻t7で立ち上がる。
【0061】
(b)DH2は、レベルシフト回路LSの出力信号である。信号DH2は、例えば時刻t1で立ち下がり、時刻t7で立ち上がる。信号DH2は、信号DH1と同論理であり、信号DH1の電位をブートストラップ電圧VBOOTとスイッチングノードSWとの間の電位に電圧変換したものである。
【0062】
(c)DHD1は、遅延回路HDLY1の出力信号であり、信号DH2を遅延回路HDLY1によって遅延させた信号である。遅延回路HDLY1は、例えば信号DH2の立ち上がりのみを遅延させる。したがって、信号DHD1は、例えば時刻t1で立ち下がり、時刻t8で立ち上がる。また、(c)DHI2は、インバータHINV2の出力信号であり、信号DHI1をインバータHINV2によって反転させた信号である。信号DHI2は、結果的に信号DHD1とほぼ同じとなる。
【0063】
(d)DHI1は、インバータHINV1の出力信号であり、信号DHD1をインバータHINV1によって反転させた信号である。信号DHI1は、信号DHD1とは異なり、例えば時刻t1で立ち上がり、時刻t8で立ち下がる。
【0064】
(e)HM1,HM2は、トランジスタHM1,HM2のオン/オフ状態を示す。トランジスタHM1のオン/オフ状態は、信号DHI2のハイレベル/ローレベルに依存し、信号DHI2がハイレベルのときにオンとなり、ローレベルのときにオフとなる。トランジスタHM2のオン/オフ状態は、信号DHI1のローレベル/ハイレベルに依存し、信号DHI1がローレベルのときにオンとなり、ハイレベルのときにオフとなる。したがって、トランジスタHM1,HM2は、同じ区間でオンとなり、オン以外の区間でオフとなる。トランジスタHM1,HM2は、例えば時刻t1〜t8の区間はオフとなり、その他の区間はオンとなる。
【0065】
(f)DHD2は、遅延回路HDLY2の出力信号であり、信号DH2を遅延回路HDLY2によって遅延させた信号である。遅延回路HDLY2は、例えば信号DH2の立ち下がりのみを遅延させる。したがって、信号DHD2は、例えば時刻t2で立ち下がり、時刻t7で立ち上がる。
【0066】
(g)DHI3は、インバータHINV3の出力信号であり、信号DHD2をインバータHINV3によって反転させた信号である。したがって、信号DHI3は、信号DHD2とは異なり、例えば時刻t2で立ち上がり、時刻t7で立ち下がる。
【0067】
(h)HM4,HM5は、トランジスタHM4,HM5のオン/オフ状態を示す。トランジスタHM4,HM5のオン/オフ状態は、共に信号DHI3のハイレベル/ローレベルに依存し、信号DHI3がハイレベルのときにオンとなり、ローレベルのときにオフとなる。したがって、トランジスタHM4,HM5は、例えば時刻t2〜t7の区間はオンとなり、その他の区間はオフとなる。
【0068】
(i)HG1は、ドライバ回路HDRV1の外部端子T3から出力されるハイサイドゲート信号である。ハイサイドゲート信号HG1は、プルダウン回路HPD1がオン、即ちトランジスタHM4,HM5がオンとなる時刻t2まではハイレベルを維持する。ハイサイドゲート信号HG1は、時刻t2から第1のスルーレート(傾き)をもった下降を開始し、トランジスタHM3の閾値電圧Vt_HM3に達する時刻t3まで急激に下降する。時刻t3以降は、トランジスタHM3,HM4には殆ど電流が流れず、トランジスタHM5には抵抗HR2によって制限された電流が流れる。そのため、ハイサイドゲート信号HG1は、時刻t3から第1のスルーレートよりも勾配が緩やかな第2のスルーレートをもった下降を開始し、トランジスタPN1の閾値電圧Vt_PN1に達する時刻t4まで徐々に下降する。ハイサイドゲート信号HG1は、トランジスタPN1がオンからオフに切り替わる時刻t4〜t5は一定のレベルを維持する。時刻t4〜t5の区間は、抵抗HR2の大きさ、即ちトランジスタHM5に流れる電流の大きさとトランジスタPN1のゲート・ドレイン容量C
PHGD、ゲート・ソース容量C
PHGSによって一義的に決められる。ハイサイドゲート信号HG1は、トランジスタPN1のオン/オフ遷移が完了する時刻t5から再び第2のスルーレートをもった下降を開始し、ドライバの基準電位であるスイッチング電圧VSWに達する時刻t6まで徐々に下降する。したがって、ハイサイドゲート信号HG1の挙動は、時刻t2〜t3の区間はおもにトランジスタHM3,HM4によって決定され、時刻t3〜時刻t6の区間はトランジスタHM5によって決定される。
【0069】
(i)ハイサイドゲート信号HG1は、時刻t6にドライバの基準電位であるスイッチング電圧VSWに達し、プルアップ回路HPU1がオン、即ちトランジスタHM1,HM2がオンとなる時刻t8までローレベルを維持する。ハイサイドゲート信号HG1は、時刻t8から第1のスルーレート(傾き)をもった上昇を開始し、ドライバ回路の電源電圧よりもトランジスタHM1の閾値電圧Vt_HM1だけ低い電圧に達する時刻t9まで急激に上昇する。時刻t9以降は、トランジスタHM1には殆ど電流が流れず、トランジスタHM2には抵抗HR1によって制限された電流が流れる。そのため、ハイサイドゲート信号HG1は、時刻t9から第1のスルーレートよりも勾配が緩やかな第2のスルーレートをもった上昇を開始し、トランジスタPN1の閾値電圧Vt_PN1に達する時刻t10まで徐々に上昇する。ハイサイドゲート信号HG1は、トランジスタPN1がオフからオンに切り替わる時刻t10〜t11は一定のレベルを維持する。時刻t10〜t11の区間は、抵抗HR1の大きさ、即ちトランジスタHM2に流れる電流の大きさとトランジスタPN1のゲート・ドレイン容量C
PHGD、ゲート・ソース容量C
PHGSによって一義的に決められる。ハイサイドゲート信号HG1は、トランジスタPN1のオフ/オン遷移が完了する時刻t11から再び第2のスルーレートをもった上昇を開始し、ドライバの電源電圧であるブートストラップ電圧VBOOTに達する時刻t12まで徐々に上昇する。したがって、ハイサイドゲート信号HG1の挙動は、時刻t8〜t9の区間はおもにトランジスタHM1によって決定され、時刻t9〜時刻t12の区間はトランジスタHM2によって決定される。
【0070】
また、(i)HG2は、寄生抵抗R
PHG及び寄生インダクタンスL
PHGの影響を受けたハイサイドゲート信号である。即ち、ハイサイドトランジスタPN1のゲートにはハイサイドゲート信号HG2が入力される。ハイサイドゲート信号HG2は、抵抗及びインダクタの寄生成分を受けたにも関わらず、ハイサイドゲート信号HG1とほぼ同じ信号波形になることを示す。これは、ドライバ回路から出力されるハイサイドゲート信号HG1の立ち下がり/立ち上がりにある程度の勾配をもたせることで、こうした寄生成分の影響が抑止されることを示す。
【0071】
(j)PN1は、ハイサイドトランジスタPN1のオン/オフ状態を示す。ハイサイドトランジスタPN1のオン/オフ状態は、ハイサイドゲート信号HG2に依存し、ハイサイドゲート信号HG2がハイサイドトランジスタPN1の閾値電圧Vt_PN1よりも高いときにオンとなり、低いときにオフとなる。したがって、ハイサイドトランジスタPN1は、例えば時刻t4以前の区間はオンとなり、時刻t4〜t5の区間はオンからオフに切り替わり、時刻t5〜t10の区間はオフとなる。さらに、時刻t10〜t11の区間はオフからオンに切り替わり、時刻t11以降の区間はオンとなる。
【0072】
(k)VDS_PN1は、ハイサイドトランジスタPN1のドレイン・ソース間の電圧である。ドレイン・ソース間電圧VDS_PN1は、ハイサイドトランジスタPN1のオン/オフにほぼ依存する。したがって、ドレイン・ソース間電圧VDS_PN1は、時刻t4以前の区間はローレベル(ハイサイドトランジスタPN1がオン)となり、時刻t4〜t5の区間はローレベルからハイレベルに切り替わり、時刻t5〜t10の区間はハイレベル(ハイサイドトランジスタPN1がオフ)となる。さらに、時刻t10〜t11の区間はハイレベルからローレベルに切り替わり、時刻t11以降の区間はローレベルとなる。
【0073】
図5は、
図3のスイッチングレギュレータ300におけるドライバ回路LDRV1のタイミングチャートである。
【0074】
(a)DLは、ローサイドドライバ回路LDRV1を駆動するための初期信号であり、論理回路LOGICから出力される。信号DLは、例えば時刻t1で立ち上がり、時刻t7で立ち下がる。なお、立ち上がり/立ち下がりのタイミングは設計的事項に過ぎず、時刻t1で立ち下がり、時刻t7で立ち上がるようにしてもかまわない。
【0075】
(b)DLD1は、遅延回路LDLY1の出力信号であり、信号DLを遅延回路LDLY1によって遅延させた信号である。遅延回路LDLY1は、例えば信号DLの立ち上がりのみを遅延させる。したがって、信号DLD1は、例えば時刻t2で立ち上がり、時刻t7で立ち下がる。また、(b)DLI2は、インバータLINV2の出力信号であり、信号DLI1をインバータLINV2によって反転させた信号である。信号DLI2は、結果的に信号DLD1とほぼ同じとなる。
【0076】
(c)DLI1は、インバータLINV1の出力信号であり、信号DLD1をインバータLINV1によって反転させた信号である。信号DLI1は、例えば時刻t2で立ち下がり、時刻t7で立ち上がる。
【0077】
(d)LM1,LM2は、トランジスタLM1,LM2のオン/オフ状態を示す。トランジスタLM1のオン/オフ状態は、信号DLI2のハイレベル/ローレベルに依存し、信号DLI2がハイレベルのときにオンとなり、ローレベルのときにオフとなる。トランジスタLM2のオン/オフ状態は、信号DLI1のローレベル/ハイレベルに依存し、信号DLI1がローレベルのときにオンとなり、ハイレベルのときにオフとなる。したがって、トランジスタLM1,LM2は同じ区間でオンとなり、オン以外の区間でオフとなる。トランジスタLM1,LM2は、例えば時刻t2〜t7の区間はオンとなり、その他の区間はオフとなる。
【0078】
(e)DLD2は、遅延回路LDLY2の出力信号であり、信号DLを遅延回路LDLY2によって遅延させた信号である。遅延回路LDLY2は、例えば信号DLの立ち下がりのみを遅延させる。したがって、信号DLD2は、例えば時刻t1で立ち上がり、時刻t8で立ち下がる。
【0079】
(f)DLI3は、インバータLINV3の出力信号であり、信号DLD2をインバータLINV3によって反転させた信号である。したがって、信号DLI3は、例えば時刻t1で立ち下がり、時刻t8で立ち上がる。
【0080】
(g)LM4,LM5は、トランジスタLM4,LM5のオン/オフ状態を示す。トランジスタLM4,LM5のオン/オフ状態は、共に信号DLI3のハイレベル/ローレベルに依存し、信号DLI3がハイレベルのときにオンとなり、ローレベルのときにオフとなる。したがって、トランジスタLM4,LM5は、例えば時刻t1〜t8の区間はオフとなり、その他の区間はオンとなる。
【0081】
(h)LG1は、ドライバ回路LDRV1の外部端子T5から出力されるローサイドゲート信号である。ローサイドゲート信号LG1は、プルアップ回路LPU1がオン、即ちトランジスタLM1,LM2がオンとなる時刻t2まではローレベルを維持する。ローサイドゲート信号LG1は、時刻t2から第1のスルーレート(傾き)をもった上昇を開始し、ドライバ回路の電源電圧よりもトランジスタLM1の閾値電圧Vt_LM1だけ低い電圧に達する時刻t3まで急激に上昇する。時刻t3以降は、トランジスタLM1には殆ど電流が流れず、トランジスタLM2には抵抗LR1によって制限された電流が流れる。そのため、ローサイドゲート信号LG1は、時刻t3から第1のスルーレートよりも勾配が緩やかな第2のスルーレートをもった上昇を開始し、トランジスタPN2の閾値電圧Vt_PN2に達する時刻t4まで徐々に上昇する。ローサイドゲート信号LG1は、トランジスタPN2がオフからオンに切り替わる時刻t4〜t5は一定のレベルを維持する。時刻t4〜t5の区間は、抵抗LR1の大きさ、即ちトランジスタLM5に流れる電流の大きさとトランジスタPN2のゲート・ドレイン容量C
PLGD、ゲート・ソース容量C
PLGSによって一義的に決められる。ローサイドゲート信号LG1は、トランジスタPN2のオフ/オン遷移が完了する時刻t5から再び第2のスルーレートをもった上昇を開始し、ドライバの電源電圧VREGに達する時刻t6まで徐々に上昇する。したがって、ローサイドゲート信号LG1の挙動は、時刻t2〜t3の区間はおもにトランジスタLM1によって決定され、時刻t3〜時刻t6の区間はトランジスタLM2によって決定される。
【0082】
(h)ローサイドゲート信号LG1は、時刻t6にドライバの電源電圧VREGに達し、プルダウン回路LPD1がオン、即ちトランジスタLM4,LM5がオンとなる時刻t8までハイレベルを維持する。ローサイドゲート信号LG1は、時刻t8から第1のスルーレート(傾き)をもった下降を開始し、トランジスタLM3の閾値電圧Vt_LM3に達する時刻t9まで急激に下降する。時刻t9以降は、トランジスタLM3,LM4には殆ど電流が流れず、トランジスタLM5には抵抗LR2によって制限された電流が流れる。そのため、ローサイドゲート信号LG1は、時刻t9から第1のスルーレートよりも勾配が緩やかな第2のスルーレートをもった下降を開始し、トランジスタPN2の閾値電圧Vt_PN2に達する時刻t10まで徐々に下降する。ローサイドゲート信号LG1は、トランジスタPN2がオンからオフに切り替わる時刻t10〜t11は一定のレベルを維持する。時刻t10〜t11の区間は、抵抗LR2の大きさ、即ちトランジスタLM5に流れる電流の大きさとトランジスタPN2のゲート・ドレイン容量C
PLGD、ゲート・ソース容量C
PLGSによって一義的に決められる。ローサイドゲート信号LG1は、トランジスタPN2のオン/オフ遷移が完了する時刻t11から再び第2のスルーレートをもった下降を開始し、ドライバの基準電位である接地電位GNDに達する時刻t12まで徐々に下降する。したがって、ローサイドゲート信号LG1の挙動は、時刻t8〜t9の区間はおもにトランジスタLM3,LM4によって決定され、時刻t9〜時刻t12の区間はトランジスタLM5によって決定される。
【0083】
また、(h)LG2は、寄生抵抗R
PLG及び寄生インダクタンスL
PLGの影響を受けたローサイドゲート信号である。即ち、ローサイドトランジスタPN2のゲートにはローサイドゲート信号LG2が入力される。ローサイドゲート信号LG2は、抵抗及びインダクタの寄生成分を受けたにも関わらず、ローサイドゲート信号LG1とほぼ同じ信号波形になることを示す。これは、ドライバ回路LDRV1から出力されるローサイドゲート信号LG1の立ち上がり/立ち下がりにある程度の勾配をもたせることで、こうした寄生成分の影響が抑止されることを示す。
【0084】
(i)PN2は、ローサイドトランジスタPN2のオン/オフ状態を示す。ローサイドトランジスタPN2のオン/オフ状態は、ローサイドゲート信号LG2に依存し、ローサイドゲート信号LG2がローサイドトランジスタPN2の閾値電圧Vt_PN2よりも高いときにオンとなり、低いときにオフとなる。したがって、ローサイドトランジスタPN2は、例えば時刻t4以前の区間はオフとなり、時刻t4〜t5の区間はオフからオンに切り替わり、時刻t5〜t10の区間はオンとなる。さらに、時刻t10〜t11の区間はオンからオフに切り替わり、時刻t11以降の区間はオフとなる。
【0085】
(j)VDS_PN2は、ローサイドトランジスタPN2のドレイン・ソース間の電圧である。ドレイン・ソース間電圧VDS_PN2は、ローサイドトランジスタPN2のオン/オフにほぼ依存する。したがって、ドレイン・ソース間電圧VDS_PN2は、時刻t4以前の区間はハイレベル(ローサイドトランジスタPN2がオフ)となり、時刻t4〜t5の区間はハイレベルからローレベルに切り替わり、時刻t5〜t10の区間はローレベル(ローサイドトランジスタPN2がオン)となる。さらに、時刻t10〜t11の区間はローレベルからハイレベルに切り替わり、時刻t11以降の区間はハイレベルとなる。
【0086】
以上、
図4及び
図5のタイミングチャートを用いて、
図3のスイッチングレギュレータ300のおもなノードの信号波形について説明した。スイッチングレギュレータ300で発生するリンギングの抑止は、半導体装置30に内蔵したドライバ回路HDRV1,LDRV1から出力されるゲート信号の立ち上がり/立ち下がりの少なくとも一方に第1のスルーレート及び第1のスルーレートよりも勾配が緩やかな第2のスルーレートをもたせるようにし、かつこれら2つのスルーレートが切り替わるレベルをMOSトランジスタの閾値電圧を利用して一義的に設定することで、比較的簡易な回路構成で達成することができる。
【0087】
(スイッチングレギュレータの第2実施形態)
図6は、本発明に係るドライバ回路を適用したスイッチングレギュレータの第2実施形態の回路図である。
図6の半導体装置60は、
図3に示した半導体装置30と次の2点で大きく相違する。1つ目はドライバ回路の回路構成である。
図6においては、
図3に示したドライバ回路HDRV1をドライバ回路HDRV1Aに置き換え、ドライバ回路LDRV1をドライブ回路LDRV1Aに置き換える。さらに、ドライバ回路HDRV1Aはプルアップ回路HPU1A及びプルダウン回路HPD1Aを備え、ドライバ回路LDRV1Aはプルアップ回路LPU1A及びプルダウン回路LPD1Aを備える。これらの回路は、
図3のものと比較するとトランジスタを1つ追加している点で相違する。例えば、プルアップ回路HPU1Aは
図3のプルアップ回路HPU1よりもトランジスタHM11が追加される。また、プルダウン回路HPD1Aは、
図3のプルダウン回路HPD1よりもトランジスタHM12が追加される。トランジスタHM11は、トランジスタHM1,HM2及び抵抗HR1によるプルアップ動作のスルーレートを所定のタイミングで大きくする機能を有する。また、トランジスタHM12は、トランジスタHM3〜HM5及び抵抗HR2によるプルダウン動作のスルーレートを所定のタイミングで大きくする機能を有する。
【0088】
図6の半導体装置60と
図3の半導体装置30との相違点の2つ目は、遅延回路の段数にある。例えば、
図6の半導体装置60は、プルアップ回路HPU1AのトランジスタHM11のゲート側とインバータHINV1の出力側との間に遅延回路HDLY3を有する。遅延回路HDLY3は、信号DHI1の例えば立ち下がりのみを遅延させる。遅延した信号DHD3によって、トランジスタHM1,HM2がオンした後にトランジスタHM11をオンさせる機能を有する。トランジスタHM11は、スイッチとしての機能の他に、第3のスルーレートを設定する機能を有する。この第3のスルーレートの傾きは、トランジスタHM2による第2のスルーレートよりも大きい。こうした機能をトランジスタHM11にもたせるために、遅延回路HDLY3が用意される。また、プルダウン回路HPD1AのトランジスタHM12のゲート側とインバータHINV3の出力側との間に遅延回路HDLY4を有する。遅延回路HDLY4は、信号DHI3の例えば立ち上がりのみを遅延させる。遅延した信号DHD4によって、トランジスタHM4,HM5がオンした後にトランジスタHM12をオンさせる機能を有する。トランジスタHM12は、スイッチとしての機能の他に、第3のスルーレートを設定する機能を有する。この第3のスルーレートの傾きは、トランジスタHM2による第2のスルーレートよりも大きい。こうした機能をトランジスタHM12にもたせるために、遅延回路HDLY4が用意される。
【0089】
以上、
図6と
図3との相違点について説明した。なお、ドライバ回路LDRV1Aの具体的な回路構成については、ドライバ回路HDRV1Aの回路構成とほぼ同じであるので詳細な説明は割愛する。
【0090】
図7は、
図6のスイッチングレギュレータ600におけるドライバ回路HDRV1Aのタイミングチャートである。
図7の(a)〜(h)の信号DH1,DH2,DHD1,DHD2,DHI1,DHI2,DHI3,HM1,HM2,HM4,及びHM5の立ち上がり/立ち下がりは、実質的には
図4の(a)〜(h)とそれぞれほぼ同じである。したがって、これらの信号についての説明は割愛し、相違する(i)〜(o)について説明する。
【0091】
(i)DHD3は、遅延回路HDLY3の出力信号であり、信号DHI1を遅延回路HDLY3によって遅延させた信号である。遅延回路HDLY3は、例えば信号DHI1の立ち下がりのみを遅延させる。したがって、信号DHD3は、例えば時刻t1で立ち上がり、時刻t14で立ち下がる。
【0092】
(j)HM11は、トランジスタHM11のオン/オフ状態を示す。トランジスタHM11のオン/オフ状態は、信号DHD3のローレベル/ハイレベルに依存する。したがって、トランジスタHM11は、例えば時刻t1〜t14の区間はオフとなり、その他の区間はオンとなる。
【0093】
(k)DHD4は、遅延回路HDLY4の出力信号であり、信号DHI3を遅延回路HDLY4によって遅延させた信号である。遅延回路HDLY4は、例えば信号DHI3の立ち上がりのみを遅延させる。したがって、信号DHD4は、例えば時刻t6で立ち上がり、時刻t9で立ち下がる。
【0094】
(l)HM12は、トランジスタHM12のオン/オフ状態を示す。トランジスタHM12のオン/オフ状態は、信号DHD4のハイレベル/ローレベルに依存する。したがって、トランジスタHM12は、例えば時刻t6〜t9の区間はオンとなり、その他の区間はオフとなる。
【0095】
(m)HG1はドライバ回路HDRV1Aから出力されるハイサイドゲート信号であり、(m)HG2はハイサイドトランジスタPN1のゲートに入力されるハイサイドゲート信号である。ハイサイドゲート信号HG1,HG2の波形は、ほぼ同じとなる。即ち、寄生抵抗R
PHG及び寄生インダクタンスL
PHGの影響を受ける前と受けた後のハイサイドゲート信号の波形はほぼ同じであることを示す。これは、ドライバ回路HDRV1Aから出力されるハイサイドゲート信号HG1の立ち下がり/立ち上がりにある程度の勾配をもたせることで、こうした寄生成分の影響が抑止されることを示す。
【0096】
ハイサイドゲート信号HG1,HG2は、プルダウン回路HPD1Aがオン、即ちトランジスタHM4,HM5がオンとなる時刻t2まではハイレベルを維持する。ハイサイドゲート信号HG1,HG2は、時刻t2から第1のスルーレート(傾き)をもった下降を開始し、トランジスタHM3の閾値電圧Vt_HM3に達する時刻t3まで急激に下降する。時刻t3以降は、トランジスタHM3,HM4には殆ど電流が流れず、トランジスタHM5には抵抗HR2によって制限された電流が流れる。そのため、ハイサイドゲート信号HG1,HG2は、時刻t3から第1のスルーレートよりも勾配が緩やかな第2のスルーレートをもった下降を開始し、トランジスタPN1の閾値電圧Vt_PN1に達する時刻t4まで徐々に下降する。ハイサイドゲート信号HG1は、トランジスタPN1がオンからオフに切り替わる時刻t4〜t5は一定のレベルを維持する。時刻t4〜t5の区間は、抵抗HR2の大きさ、即ちトランジスタHM5に流れる電流の大きさとトランジスタPN1のゲート・ドレイン容量C
PHGD、ゲート・ソース容量C
PHGSによって一義的に決められる。ハイサイドゲート信号HG1,HG2は、トランジスタPN1のオン/オフ遷移が完了する時刻t5から再び第2のスルーレートをもった下降を開始し、トランジスタHM12がオンとなる時刻t6まで徐々に下降する。ハイサイドゲート信号HG1,HG2は、時刻t6から再び急激な下降を開始し、ドライバの基準電位であるスイッチング電圧VSWに達する時刻t7まで急激に下降する。したがって、ハイサイドゲート信号HG1,HG2の挙動は、時刻t2〜t3の区間はおもにトランジスタHM3,HM4によって決定され、時刻t3〜時刻t6の区間はトランジスタHM5によって決定され、時刻t6〜t7の区間はトランジスタHM12によって決定される。なお、トランジスタHM12が存在しない場合は、ハイサイドゲート信号HG1,HG2がドライバの基準電位であるスイッチング電圧VSWに達するまでに要する時間は時刻t8まで延びることになる。即ち、ドライバ回路DRVHDRV1Aを用いることで、プルダウンに要する時間を短縮することができる。トランジスタHM12をオンさせることによるリンギングの発生が懸念されるが、ハイサイドトランジスタPN1はトランジスタHM12がオンとなる前に既にオフ状態であるのでスイッチングレギュレータ600全体としてはリンギングの影響は殆ど受けない。
【0097】
ハイサイドゲート信号HG1,HG2は、時刻t7にドライバの基準電位であるスイッチング電圧VSWに達し、プルアップ回路HPU1Aがオン、即ちトランジスタHM1,HM2がオンとなる時刻t10までローレベルを維持する。ハイサイドゲート信号HG1,HG2は、時刻t10から第1のスルーレート(傾き)をもった上昇を開始し、ドライバ回路の電源電圧よりもトランジスタHM1の閾値電圧Vt_HM1だけ低い電圧に達する時刻t11まで急激に上昇する。時刻t11以降は、トランジスタHM1には殆ど電流が流れず、トランジスタHM2には抵抗HR1によって制限された電流が流れる。そのため、ハイサイドゲート信号HG1,HG2は、時刻t11から第1のスルーレートよりも勾配が緩やかな第2のスルーレートをもった上昇を開始し、トランジスタPN1の閾値電圧Vt_PN1に達する時刻t12まで徐々に上昇する。ハイサイドゲート信号HG1,HG2は、トランジスタPN1がオフからオンに切り替わる時刻t12〜t13は一定のレベルを維持する。時刻t12〜t13の区間は、抵抗HR1の大きさ、即ちトランジスタHM2に流れる電流の大きさとトランジスタPN1のゲート・ドレイン容量C
PHGD、ゲート・ソース容量C
PHGSによって一義的に決められる。ハイサイドゲート信号HG1,HG2は、トランジスタPN1のオフ/オン遷移が完了する時刻t13から再び第2のスルーレートをもった上昇を開始し、トランジスタHM11がオンとなる時刻t14まで徐々に上昇する。ハイサイドゲート信号HG1,HG2は、時刻t14から再び急激な上昇を開始し、ドライバの電源電圧であるブートストラップ電圧VBOOTに達する時刻t15まで急激に上昇する。したがって、ハイサイドゲート信号HG1の挙動は、時刻t9〜t10の区間はおもにトランジスタM1によって決定され、時刻t10〜時刻t14の区間はトランジスタM2によって決定され、時刻t14〜t15の区間はトランジスタHM11によって決定される。なお、トランジスタHM11が存在しない場合は、ハイサイドゲート信号HG1,HG2がドライバの電源電圧であるブートストラップ電圧VBOOTに達するまでに要する時間は時刻t16まで延びることになる。即ち、ドライバ回路HDRV1Aを用いることで、プルアップに要する時間を短縮することができる。トランジスタHM11をオンさせることによるリンギングの発生が懸念されるが、ハイサイドトランジスタPN1はトランジスタHM11がオンとなる前に既にオン状態であるのでスイッチングレギュレータ600全体としてはリンギングの影響は殆ど受けない。
【0098】
(n)PN1は、ハイサイドトランジスタPN1のオン/オフ状態を示す。ハイサイドトランジスタPN1のオン/オフ状態は、ハイサイドゲート信号HG2に依存し、ハイサイドゲート信号HG2がハイサイドトランジスタPN1の閾値電圧Vt_PN1よりも高いときにオンとなり、低いときにオフとなる。したがって、ハイサイドトランジスタPN1は、例えば時刻t4以前の区間はオンとなり、時刻t4〜t5の区間はオンからオフに切り替わり、時刻t5〜t12の区間はオフとなる。さらに、時刻t12〜t13の区間はオフからオンに切り替わり、時刻t13以降の区間はオンとなる。
【0099】
(n)VDS_PN1は、ハイサイドトランジスタPN1のドレイン・ソース間の電圧である。ドレイン・ソース間電圧VDS_PN1は、ハイサイドトランジスタPN1のオン/オフにほぼ依存する。したがって、ドレイン・ソース間電圧VDS_PN1は、時刻t4以前の区間はローレベル(ハイサイドトランジスタPN1がオン)となり、時刻t4〜t5の区間はローレベルからハイレベルに切り替わり、時刻t5〜t12の区間はハイレベル(ハイサイドトランジスタPN1がオフ)となる。さらに、時刻t12〜t13の区間はハイレベルからローレベルに切り替わり、時刻t13以降の区間はローレベルとなる。
【0100】
図8は、
図6のスイッチングレギュレータ600におけるドライバ回路LDRV1Aのタイミングチャートである。
図8の(a)〜(g)の信号DL,DLD1,DLD2,DLI1,DLI2,DLI3,LM1,LM2,LM4,及びLM5の立ち上がり/立ち下がりは、実質的には
図5の(a)〜(g)とそれぞれほぼ同じである。したがって、これらの信号についての説明は割愛し、相違する(h)〜(n)について説明する。
【0101】
(h)DLD3は、遅延回路LDLY3の出力信号であり、信号DLI1を遅延回路LDLY3によって遅延させた信号である。遅延回路LDLY3は、信号DLI1の立ち下がりのみを遅延させる。したがって、信号DLD3は、例えば時刻t6で立ち下がり、時刻t9で立ち上がる。
【0102】
(i)LM11は、トランジスタLM11のオン/オフ状態を示す。トランジスタLM11のオン/オフ状態は、信号DLD3のローレベル/ハイレベルに依存する。したがって、トランジスタLM11は、例えば時刻t6〜t9の区間はオンとなり、その他の区間はオフとなる。
【0103】
(j)DLD4は、遅延回路LDLY4の出力信号であり、信号DLI2を遅延回路LDLY4によって遅延させた信号である。遅延回路LDLY4は、信号DLI2の立ち上がりのみを遅延させる。したがって、信号DLD4は、例えば時刻t1で立ち下がり、時刻t14で立ち上がる。
【0104】
(k)LM12は、トランジスタLM12のオン/オフ状態を示す。トランジスタLM12のオン/オフ状態は、信号DLD4のハイレベル/ローレベルに依存する。したがって、トランジスタLM12は、例えば時刻t1〜t14の区間はオフとなり、その他の区間はオンとなる。
【0105】
(l)LG1はドライバ回路LDRV1Aから出力されるローサイドゲート信号であり、(m)LG2はローサイドトランジスタPN2のゲートに入力されるローサイドゲート信号である。ローサイドゲート信号LG1,LG2の波形は、ほぼ同じとなる。即ち、寄生抵抗R
PLG及び寄生インダクタンスL
PLGの影響を受ける前と受けた後のローサイドゲート信号の波形はほぼ同じであることを示す。これは、ドライバ回路LDRV1Aから出力されるローサイドゲート信号LG1の立ち上がり/立ち下がりにある程度の勾配をもたせることで、こうした寄生成分の影響が抑止されることを示す。
【0106】
ローサイドゲート信号LG1,LG2は、プルアップ回路LPU1Aがオン、即ちトランジスタLM1,LM2がオンとなる時刻t2まではローレベルを維持する。ローサイドゲート信号LG1,LG2は、時刻t2から第1のスルーレート(傾き)をもった上昇を開始し、ドライバ回路の電源電圧よりもトランジスタLM1の閾値電圧Vt_LM1だけ低い電圧に達する時刻t3まで急激に上昇する。時刻t3以降は、トランジスタLM1には殆ど電流が流れず、トランジスタLM2には抵抗LR1によって制限された電流が流れる。そのため、ローサイドゲート信号LG1,LG2は、時刻t3から第1のスルーレートよりも勾配が緩やかな第2のスルーレートをもった上昇を開始し、トランジスタPN2の閾値電圧Vt_PN2に達する時刻t4まで徐々に上昇する。ローサイドゲート信号LG1,LG2は、トランジスタPN2がオフからオンに切り替わる時刻t4〜t5は一定のレベルを維持する。時刻t4〜t5の区間は、抵抗LR1の大きさ、即ちトランジスタLM2に流れる電流の大きさとトランジスタPN2のゲート・ドレイン容量C
PLGD、ゲート・ソース容量C
PLGSによって一義的に決められる。ローサイドゲート信号LG1,LG2は、トランジスタPN2のオフ/オン遷移が完了する時刻t5から再び第2のスルーレートをもった上昇を開始し、トランジスタLM11がオンとなる時刻t6まで徐々に上昇する。ローサイドゲート信号LG1,LG2は、時刻t6から再び急激な上昇を開始し、ドライバの電源電圧VREGに達する時刻t7まで急激に上昇する。したがって、ローサイドゲート信号LG1,LG2の挙動は、時刻t2〜t3の区間はおもにトランジスタLM1によって決定され、時刻t3〜時刻t6の区間はトランジスタLM2によって決定され、時刻t6〜t7の区間はトランジスタLM11によって決定される。なお、トランジスタLM11が存在しない場合は、ローサイドゲート信号LG1,LG2がドライバの電源電圧VREGに達するまでに要する時間は時刻t8まで延びることになる。即ち、ドライバ回路LDRV1Aを用いることで、プルアップに要する時間を短縮することができる。トランジスタLM11をオンさせることによるリンギングの発生が懸念されるが、ローサイドトランジスタPN2はトランジスタLM11がオンとなる前に既にオン状態であるのでスイッチングレギュレータ600全体としてはリンギングの影響は殆ど受けない。
【0107】
ローサイドゲート信号LG1,LG2は、時刻t7にドライバの電源電圧VREGに達し、プルダウン回路LPD1Aがオン、即ちトランジスタLM4,LM5がオンとなる時刻t10までハイレベルを維持する。ローサイドゲート信号LG1,LG2は、時刻t10から第1のスルーレート(傾き)をもった下降を開始し、トランジスタLM3の閾値電圧Vt_LM3に達する時刻t11で急激に下降する。時刻t11以降は、トランジスタLM3,LM4には殆ど電流が流れず、トランジスタLM5には抵抗LR2によって制限された電流が流れる。そのため、ローサイドゲート信号LG1,LG2は、時刻t11から第1のスルーレートよりも勾配が緩やかな第2のスルーレートをもった下降を開始し、トランジスタPN2の閾値電圧Vt_PN2に達する時刻t12まで徐々に下降する。ローサイドゲート信号LG1,LG2は、トランジスタPN2がオンからオフに切り替わる時刻t12〜t13は一定のレベルを維持する。時刻t12〜t13の区間は、抵抗LR2の大きさ、即ちトランジスタLM5に流れる電流の大きさとトランジスタPN2のゲート・ドレイン容量C
PLGD、ゲート・ソース容量C
PLGSによって一義的に決められる。ローサイドゲート信号LG1,LG2は、トランジスタPN2のオン/オフ遷移が完了する時刻t13から再び第2のスルーレートをもった下降を開始し、トランジスタLM12がオンとなる時刻t14まで徐々に下降する。ローサイドゲート信号LG1,LG2は、時刻t14から再び急激な下降を開始し、ドライバの基準電位である接地電位GNDに達する時刻t15まで急激に下降する。したがって、ローサイドゲート信号LG1,LG2の挙動は、時刻t10〜t11の区間はおもにトランジスタLM3,LM4によって決定され、時刻t11〜時刻t14の区間はトランジスタLM5によって決定され、時刻t14〜t15の区間はトランジスタLM12によって決定される。なお、トランジスタLM12が存在しない場合は、ローサイドゲート信号LG1,LG2がドライバの基準電位である接地電位GNDに達するまでに要する時間は時刻t16まで延びることになる。即ち、ドライバ回路LDRV1Aを用いることで、プルダウンに要する時間を短縮することができる。トランジスタLM12をオンさせることによるリンギングの発生が懸念されるが、ローサイドトランジスタPN2はトランジスタLM12がオンとなる前に既にオフ状態であるのでスイッチングレギュレータ600全体としてはリンギングの影響は殆ど受けない。
【0108】
(m)PN2は、ローサイドトランジスタPN2のオン/オフ状態を示す。ローサイドトランジスタPN2のオン/オフ状態は、ローサイドゲート信号LG2に依存し、ローサイドゲート信号LG2がローサイドトランジスタPN2の閾値電圧Vt_PN2よりも高いときにオンとなり、低いときにオフとなる。したがって、ローサイドトランジスタPN2は、例えば時刻t4以前の区間はオフとなり、時刻t4〜t5の区間はオフからオンに切り替わり、時刻t5〜t12の区間はオンとなる。さらに、時刻t12〜t13の区間はオンからオフに切り替わり、時刻t13以降の区間はオフとなる。
【0109】
(n)VDS_PN2は、ローサイドトランジスタPN2のドレイン・ソース間の電圧である。ドレイン・ソース間電圧VDS_PN2は、ローサイドトランジスタPN2のオン/オフにほぼ依存する。したがって、ドレイン・ソース間電圧VDS_PN2は、時刻t4以前の区間はハイレベル(ローサイドトランジスタPN2がオフ)となり、時刻t4〜t5の区間はハイレベルからローレベルに切り替わり、時刻t5〜t12の区間はローレベル(ローサイドトランジスタPN2がオン)となる。さらに、時刻t12〜t13の区間はローレベルからハイレベルに切り替わり、時刻t13以降の区間はハイレベルとなる。
【0110】
(スイッチングレギュレータの第3実施形態)
図9は、本発明に係るスイッチングレギュレータの第3実施形態を示す回路図である。
図9は、前述したスイッチングレギュレータ300(
図3)及びスイッチングレギュレータ600(
図6)とは異なり、ブートストラップ回路を用いない同期整流方式の降圧型DC/DCコンバータである。
【0111】
図9と
図6との相違点は、次のとおりである。第1にハイサイドトランジスタをNMOS型のトランジスタPN1からPMOS型のトランジスタPP1に置き換えること、第2に半導体装置90にレベルシフト回路LSを用いないこと、第3にドライバ回路LDRV1Aを
図2に示したドライバ回路DRV2をベースとした回路構成に置き替えることである。なお、
図9のドライバ回路LDRV2Aは、
図2のドライバ回路DRV2とは異なり、プルアップ回路LPU2AにトランジスタLM13が追加され、プルダウン回路LPD2AにトランジスタLM14が追加される。その他の回路構成はほぼ同じであるので、詳細な説明は割愛する。本発明に係るドライバ回路はスイッチングレギュレータの形式に関わらず適用することが可能となる。
【0112】
(スイッチングレギュレータの第4実施形態)
図10は、本発明に係るスイッチングレギュレータの第4実施形態を示す回路図である。
図10は、前述したスイッチングレギュレータ300(
図3)、スイッチングレギュレータ600(
図6)、及びスイッチングレギュレータ900(
図9)のような同期整流形式とは異なり、ダイオード(非同期型)整流方式の降圧型DC/DCコンバータである。スイッチングレギュレータ1000は、ローサイドドライバが不要となるので、ドライバ回路構成はシンプルとなり、ハイサイド側のドライバ回路HDRV1Bを用意すれば足りる。ドライバ回路HDRV1Bは、プルアップ回路HPU1Bとプルダウン回路HPD1Bを有する。なお、
図9のプルアップ回路HPU1Aとプルダウン回路HPD1Aと比較して明らかなように、
図10のプルアップ回路HPU1B及びプルダウン回路HPD1Bには抵抗HR1,HR2に替えて定電流源HCC1,HCC2を用いる。定電流源HCC1,HCC2の大きさを設定することで抵抗HR1,HR2と等価な抵抗をもたせることができる。定電流源HCC1,HCC2の電流値を小さくすればするほど主導電路に介在する抵抗成分は大きくなる。逆に定電流源HCC1,HCC2の電流値を小さくすればするほど抵抗成分は小さくなる。
【0113】
以上、本発明に係るスイッチングレギュレータについては降圧型のDC/DCコンバータを例示して説明した。しかし、本発明に係るドライバ回路は、降圧型だけではなく、昇圧型、昇降圧型、反転型のスイッチングレギュレータに適用することもできる。さらに、直流電圧を交流電圧に変換するDC/ACインバータのドライバ回路としても適用することもできる。さらに加えて、本発明に係るドライバ回路は、出力波形に発生するノイズを低減することができるインターフェース回路として、また、波形整形回路として、またメモリ、マイクロプロセッサ等のデータ出力バッファ回路としても適用することできる。