【課題】濃縮器、再循環ライン等に残留した腹水等の体腔液を廃棄せず濃縮バッグに回収した場合に、回収予定量との差異が生じるのを回避し、回収液量が所定量となるようにする。
【解決手段】体腔液処理装置1は、体腔液中の特定の物質を除去するろ過器11と、体腔液を濃縮する濃縮器110と、濃縮体腔液を貯留する濃縮体腔液バッグ111と、ろ過器11の出口に連通する送気/送液手段160と、濃縮体腔液を濃縮器110に戻す再循環装置62と、再循環ラインと、濃縮体腔液バッグ111に貯留された濃縮体腔液の液量測定装置150と、原体腔液のろ過および/または濃縮終了後、ろ過器11外側、ろ過ラインFL、濃縮器110内側、再循環ラインの総プライミングボリュームを考慮した分、濃縮体腔液を予め再循環させて除水を実施させてから濃縮体腔液バッグ111にて回収させる制御装置50と、を備える。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記のごときシステムにおいては、腹水処理による治療後における回路または濃縮器中に残留しているろ過腹水の回収時、濃縮器と再循環ライン内に残されたろ過腹水が廃棄されるため無駄が発生し、あるいは回収した場合、回収分が濃縮バッグに加味されるため、予定していた濃縮液の量と差異が生じるという問題があった。
【0007】
そこで、本発明は、濃縮器、再循環ライン等に残留した腹水等の体腔液を廃棄せず濃縮バッグに回収した場合に、回収予定量との差異が生じるのを回避し、回収液量が所定量となるようにした体腔液処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様に係る体腔液処理装置は、患者体腔内または原体腔液バッグに貯留された原体腔液をろ過し、ろ過された体腔液から水分を除去して濃縮体腔液を生成する体腔液処理装置であって、
体腔液中の特定の物質を選択的に除去するろ過部材を備えるろ過器と、
ろ過が行われる際に体腔液が流通するろ過ラインと、
ろ過器によってろ過された体腔液を濃縮する濃縮器と、
濃縮器で濃縮された濃縮体腔液を回収して貯留する濃縮体腔液バッグと、
ろ過器のろ過体腔液の出口に連通する送気/送液手段と、
濃縮体腔液バッグに貯留された濃縮体腔液を濃縮器に戻す再循環装置と、
再循環が行われる際に体腔液が流通する再循環ラインと、
濃縮体腔液バッグに貯留された濃縮体腔液の液量を測定する液量測定装置と、
原体腔液のろ過および/または濃縮終了後、ろ過器外側、ろ過ライン、濃縮器内側、再循環ラインの総プライミングボリュームを考慮した分、濃縮体腔液を予め再循環させて除水を実施させてから濃縮体腔液バッグにて回収させる制御装置と、
を備える、体腔液処理装置である。
【0009】
上記態様の体腔液処理装置においては、原体腔液のろ過および/または濃縮終了後、ろ過器外側、ろ過ライン、濃縮器内側、再循環ラインの総プライミングボリュームを考慮した分、濃縮体腔液を予め再循環させて除水を実施させてから濃縮体腔液バッグにて回収することにより、当初予定していた回収予定量と実際の回収量との間に差異が生じるのを回避することができる。しかも、濃縮器と再循環ライン内に残された濾過腹水を回収することにより無駄を抑制することができる。
【0010】
上記態様の体腔液処理装置において、液量測定装置は、濃縮体腔液バッグの重量を計測する重量計を含むものであってもよい。
【0011】
上記態様の体腔液処理装置は、再循環ラインに配置された気泡検知手段をさらに備えるものであってもよい。
【発明の効果】
【0012】
濃縮器、再循環ライン等に残留した腹水等の体腔液を廃棄せず濃縮バッグに回収した場合に、回収予定量との差異が生じるのを回避し、回収液量が所定量となるようにした体腔液処理装置を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して、本発明の好ましい実施の形態について説明する。なお、同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、限定するものではない。さらに、図面の寸法比率は、図示の比率に限定されるものではない。また、以下の実施の形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明はこの実施の形態に限定されるものではない。
【0015】
図1は、本実施の形態に係る体腔液処理装置としての腹水処理装置1の構成の概略を示す説明図である。腹水処理装置1は、患者から採取されて原腹水バッグ10に収容された原腹水をろ過し、ろ過された腹水から水分を除去して濃縮腹水を生成する装置である。
【0016】
腹水処理装置1は、ろ過器11と、第1のライン12と、第2のライン13と、第3のライン14と、第4のライン15と、第1の圧力測定装置16と、第2の圧力測定装置17と、ポンプ18と、第1の開閉装置19と、上流開閉装置21と、制御装置50、等を備えている。この腹水処理装置1は、ろ過処理を行うろ過システム(ろ過部)2と、濃縮処理を行う濃縮システム(濃縮部)3とに分けられる(
図2参照)。また、本実施形態の腹水処理装置1は、さらに、送気ポンプ160、気泡検知手段170、逆流防止用開閉装置22を備えている(
図1等参照)。
【0017】
ろ過器11は、例えば円筒形状とされており、長手方向の両端部に通液口11a、11bを有し、側面に2つの通液口11c、11dを有している。また、ろ過器11は、例えば細菌やがん細胞などの所定の病因物質を除去し、アルブミンなどの所定の有用成分を通過させるといったように、腹水中の特定の物質を選択的に除去することができる中空糸膜などのろ過膜70を備えている。ろ過膜70の内側領域は、通液口11a、11bに通じ、ろ過膜70の外側領域は、通液口11c、11dに通じている。
【0018】
第1のライン12は、原腹水バッグ10とろ過器11を接続している。第1のライン12の下流側の端部は、ろ過器11の通液口11aに接続されている。
【0019】
第2のライン13は、ろ過器11と濃縮システム3の後述の濃縮器110を接続している。第2のライン13の上流側の端部は、ろ過器11の通液口(ろ過器11でろ過された腹水の出口)11cに接続されている。
【0020】
第3のライン14は、一端がろ過器11の通液口11bに接続されている。第3のライン14の他端は、例えば図示しない排液部に接続されている。
【0021】
第4のライン15は、一端がろ過器11の通液口11dに接続されている。第4のライン15は、他端が大気開放されている。なお、第1〜第4のライン12〜15には、軟質性のチューブが用いられている。
【0022】
ここで、第1〜第4のラインの接続は逆であってもよい。すなわち第1のラインは通液口11cに接続され、第2のラインは通液口11aに接続され、第3のラインは通液口11dに接続され、第4のラインは通液口11bに接続されていてもよい。通常、血液浄化に用いられるろ過器は、プライミングボリュームの観点からろ過膜の内側に血液を流し、外側にろ過することで血液のプライミングボリュームを低減させるが、体腔液処理の場合においては、体腔液の量や組成に応じた処理法を適宜選択すればよい。例えばろ過器11のろ過膜70の内側から外側に向かってろ過を行う場合、膜が詰まった場合に行う膜洗浄(洗浄液をろ過膜70の外側から内側に向かって流通させる)における洗浄効果が期待され、ろ過器11のろ過膜70の外側から内側に向かってろ過を行う場合、ろ過膜70の表面積が内側から外側に流す場合に比べ大きくなるためろ過器11の膜寿命向上に寄与することが期待される。
【0023】
第1の圧力測定装置16は、第1のライン12における圧力を測定できるように設けられ、ろ過器11のろ過膜70の一次側(入口側)の圧力を測定する。ここで第1の圧力測定装置16は、原腹水10とろ過器11の落差圧を利用して圧力値を測定せずとも把握できる場合には省略することもできる。第2の圧力測定装置17は、第4のライン15における圧力を測定できるように設けられ、ろ過器11のろ過膜70の二次側(出口側)の圧力を測定する。第1の圧力測定装置16と第2の圧力測定装置17の圧力測定結果は、制御装置50に出力される。ここで第2の圧力測定装置17は第2のライン13上に配置されていてもよく、ろ過器11のろ過膜70の二次側(出口側)を測定できるものであれば配置を限定するものではない。
【0024】
ポンプ18は、第2のライン13に設けられている。ポンプ18には、例えばチューブを扱いてチューブ内の腹水を圧送する正回転及び逆回転可能なチューブポンプが用いられている。なお、ポンプ18は、停止時に第2のライン13を閉鎖するものでもあり、開閉装置(流量調整装置)としても機能する。
【0025】
第1の開閉装置19は、例えば開閉バルブであり、第3のライン14に設けられている。
【0026】
上流開閉装置21は、例えば開閉バルブであり、第1のライン12に設けられている。
【0027】
逆流防止用開閉装置22は、腹水の再循環処理時、あるいは腹水回収処理時、腹水がろ過器11側へ逆流するのを防止する装置である。本実施形態の逆流防止用開閉装置22は、第2のライン13上の、循環ライン114との合流点よりもろ過器11寄りの位置に配置されている。
【0028】
第4のライン15の他端には、送気ポンプ160が接続されている。送気ポンプ160は、ろ過器11のろ過膜70の出口側等に残存するろ過腹水(ろ過された腹水)を第2のライン13を通じて回収する際に利用可能なものである。送気ポンプ160は、ろ過膜70の出口側に気体(大気)を供給し、ろ過膜70の出口側のろ過腹水を第2のライン13に押し出す。
【0029】
気泡検知手段170は、濃縮ライン112あるいは循環ライン114を流れる腹水中の気泡を検知する気体検出装置で構成されている(
図1等参照)。単一の気体検出装置が濃縮ライン112と循環ライン114に跨るように設けられていてもよい。
【0030】
制御装置50は、例えばCPU、メモリ等を有するマイクロコンピュータである。制御装置50は、ポンプ18、第1の開閉装置19、上流開閉装置21、第1の圧力測定装置16、第2の圧力測定装置17、回収装置のポンプ、濃縮システム3等の各装置の動作、さらには、後述する濃縮ポンプ115等の装置の動作を制御して腹水処理を実行できる。また、制御装置50は、後述する液量測定装置150による測定結果等を受信する。さらに、制御装置50は、後述する液体回収処理を実行する。制御装置50は、例えば予めメモリに記憶されたプログラムを実行して腹水処理を実施できる。
【0031】
濃縮システム3は、濃縮器110と、濃縮腹水貯留部としての濃縮腹水バッグ111と、濃縮ライン112と、排水ライン113と、循環ライン114と、濃縮ポンプ115と、第3の圧力測定装置117と、第4の圧力測定装置118等を有し、さらに、液量測定装置150を有している。なお、特に図示しないが、外部から第2のライン13へエアを送り込むエア取り込み口と該エア取り込み口を開閉する弁が、例えば第3の圧力測定装置117に設けられていてもよい。
【0032】
濃縮器110は、例えば円筒形状を有している。濃縮器110は、長手方向の両端部に通液口110a、110bを有し、側面に2つの通液口110c、110dを有している。例えば濃縮器110の通液口110aには、第2のライン13が接続されている。
【0033】
濃縮器110は、例えば第2のライン13から供給されたろ過腹水から水分を除去してろ過腹水を濃縮する中空糸膜などの濃縮膜120を備えている。濃縮膜120の内側領域は、通液口110a、110bに通じ、濃縮膜120の外側領域は、通液口110c、110dに通じている。なお、本実施の形態において通液口110dは閉鎖されているが排水ライン113と連通していてもよい。
【0034】
濃縮腹水バッグ111は、濃縮器110で濃縮された濃縮腹水を回収して収容可能な容器の一種である。濃縮ライン112は、濃縮器110の通液口110bと濃縮腹水バッグ111を接続している。排水ライン113は、一端が濃縮器110の通液口110cに接続され、他端が図示しない排水部に接続されている。
【0035】
循環ライン114は、例えば濃縮腹水バッグ111と第2のライン13を接続している。循環ライン114は、第2のライン13のポンプ18よりも上流側(ろ過器11側)に接続されている。循環ライン114には、例えば開閉バルブからなる開閉装置119が設けられている。濃縮ライン112、排水ライン113及び循環ライン114には、例えば軟質性のチューブが用いられている。
【0036】
濃縮ポンプ115は、例えば濃縮ライン112の濃縮器110の下流側に配置され、濃縮腹水を濃縮腹水バッグ111に送り出す。濃縮ポンプ115には、例えばチューブポンプが用いられている。
【0037】
第3の圧力測定装置117は、例えば第2のライン13における圧力を測定できるように設けられ、濃縮器110の濃縮膜120の一次側(入口側)の圧力を測定する。第4の圧力測定装置118は、排水ライン113に設けられ、濃縮器110の濃縮膜120の二次側(出口側)の圧力を測定する。第3の圧力測定装置117と第4の圧力測定装置118の圧力測定結果は、制御装置50に出力される。制御装置50は、濃縮システム3の濃縮ポンプ115と、ポンプ18と、第3の圧力測定装置117と、第4の圧力測定装置118等の各装置の動作を制御して腹水処理を実行できる。なお、第4の圧力測定装置118は濃縮器110と排水ライン113の末端との落差圧を利用して圧力値を測定せずとも把握できる場合には省略することもできる。
【0038】
濃縮システム3においては、濃縮腹水バッグ111に貯留された濃縮腹水を濃縮器110に再循環させる装置(再循環装置)が構成されている。例えば本実施形態の腹水処理装置1においては、上述した循環ライン114、濃縮ポンプ115、ポンプ18等によって再循環装置62が構成されている。なお、濃縮ポンプ115は排水ライン113上に配置されていてもよい。
【0039】
液量測定装置150は、濃縮腹水バッグ111に貯留された濃縮腹水の液量を測定する装置である。液量測定装置150の具体的な構成は特に限定されないが、例えば、濃縮腹水が貯留された濃縮腹水バッグ111の重量を計測可能な重量計を備え、該重量計の測定値に基づいて制御された濃縮ポンプ115の流量を元に、ポンプ流量×時間から算出するものであってもよい。
【0040】
液量測定装置150が上記のごとく重量計を備えた装置である場合は、濃縮腹水バッグ111の液量は、当該重量計の測定値を元に制御することができる。
【0041】
あるいは、上記と同様に重量計を用い、濃縮腹水バッグ111の既知の重量と濃縮腹水の体積当たり重量から、濃縮腹水バッグ111に貯留された濃縮腹水の液量を算出することもできる。例えば、腹水貯留バッグ111の容量を計測する(例えば図示はしていない超音波センサや静電容量センサ等を用いる)ことで体積を測定し、重量に換算することもできる。このように重量を元にして濃縮腹水の液量を算出する他、体積測定の結果を利用して容量を算出し、当該算出した容量を元にして制御を行ってもよい。かかる場合、体積の増加/減少量を元に濃縮腹水バッグ111の液量制御を行う。
【0042】
次に、上述の腹水処理装置1を用いて行われる腹水処理の概要について説明する(
図6、
図7等参照)。
【0043】
<ろ過、濃縮工程>
まず、患者から採取した腹水を収容した原腹水バッグ10が第1のライン12に接続される。次に、腹水のろ過、濃縮工程が開始される。第1の開閉装置19が閉鎖され、上流開閉装置21および逆流防止用開閉装置22が開放された状態で、ポンプ18が正回転し、濃縮ポンプ115が作動する(
図1参照)。
【0044】
これにより、原腹水バッグ10の腹水は、第1のライン12を通じてろ過器11に送られる。腹水は、ろ過器11の通液口11aからろ過膜70の入口側(内側領域)に流入し、ろ過膜70を通過して、ろ過膜70の出口側(外側領域)に流出する。このとき、腹水から所定の病因物質が除去される。ろ過膜70の出口側に流出したろ過腹水は、ろ過器11から第2のライン13に流出し、第2のライン13を通って濃縮器110に送られ、濃縮器110の濃縮膜120の入口側に流入する。ここで、ポンプ18と濃縮ポンプ115との間の圧力差(流量差)により、例えばろ過腹水の一部の水分が、濃縮膜120を通過し濃縮膜120の出口側に流出する。これにより、ろ過腹水から水分が除去され、ろ過腹水が濃縮される。濃縮器110で濃縮された濃縮腹水は、濃縮ライン112を通って濃縮腹水バッグ111に収容される。
【0045】
<再濃縮工程>
開閉装置119を開放し、逆流防止用開閉装置22を閉鎖した状態で、ポンプ18と濃縮ポンプ115が作動する(
図2参照)。これにより、濃縮腹水バッグ111の濃縮腹水が、循環ライン114及び第2のライン13を通じて濃縮器110に送られ、濃縮器110から濃縮ライン112を通って濃縮腹水バッグ111に戻され、循環する。こうして濃縮腹水が再濃縮される。なお、開閉装置19および上流開閉装置21を閉塞させ得る構成である場合には、逆流防止用開閉装置22を省略することが可能である。
【0046】
腹水のろ過、濃縮工程において、第1の圧力測定装置16、第2の圧力測定装置17が作動し、ろ過器11のろ過膜70の入口側の圧力、出口側の圧力がモニタリングされている。例えばろ過器11におけるろ過膜70の入口側の圧力P1と出口側の圧力P2の圧力差(P1−P2)(膜間圧力差)が、所定の閾値Dを超えた場合には、ろ過膜70が目詰まりを起こしているとみなし、上流開閉装置21を閉鎖して、腹水のろ過、濃縮工程が停止してもよい。なお、閾値Dは、実験や計算により予め求められ設定される。
【0047】
<回収工程>
本実施形態の腹水処理装置1においては、腹水のろ過処理および/または濃縮処理の終了後、ろ過器11の外側、ろ過ライン、濃縮器110の内側、再循環ラインに残存する腹水を以下のように回収する(
図3、
図4等参照)。
【0048】
ここで、本明細書でいう「ろ過ライン」とは、腹水のろ過処理を実施する際に腹水が流通するラインを意味する。具体的には、ろ過器11の出口(通液口11c)に接続されたラインのことであり、より詳しくは、ろ過器11から濃縮器110を介して濃縮腹水バッグ111までを接続するラインのことである。
図3において、ろ過ラインを太線と符号FLとで示す。
【0049】
また、本明細書でいう「再循環ライン」とは、腹水の再循環処理を実施する際に腹水が流通するラインを意味する。具体的には、循環ライン114と、第2のライン13の一部と、濃縮ライン112とで構成される周回するラインのことである。
図4において、再循環ラインを太線と符号RLとで示す。
【0050】
(フェーズ0(濃縮フェーズ))
まず、本実施形態では、回収工程の前段階における再濃縮工程として、腹水処理装置1の総プライミングボリュームを考慮した分、濃縮腹水を予め再循環させて除水する。この結果、濃縮腹水バッグ111における濃縮腹水の貯留量は、総プライミングボリュームを考慮した分、減少する(
図2参照)。
【0051】
なお、一般に、プライミングボリュームとは、血液透析の血液回路に患者の血液がどれくらいの量入るかを表す指標であり、本実施形態では、回路中の残存腹水のうち、これから実施される回収処理によって濃縮腹水バッグ111に収容される量に相当する。この総プライミングボリュームを考慮した分の量は、あらかじめ制御装置50にインプットされる既知量であってもよく、ユーザーが設定する値でもよい。
【0052】
(フェーズ1(ろ過ライン等の回収フェーズ))
次に、腹水回収処理のフェーズ1として、ろ過器11の外側、ろ過ラインFL、濃縮器110の内側に残存する腹水を回収する(ステップSP1)。具体的には、第1の開閉装置19、上流開閉装置21、開閉装置119を閉鎖し、逆流防止用開閉装置22を開放した状態で送気ポンプ160を駆動し、エアを、通液口11dを通じてろ過器11に送り込む(
図3参照)。これにより、ろ過器11の外側、ろ過ラインFL、濃縮器110の内側に残存する腹水を濃縮腹水バッグ111に回収することができる。
【0053】
残存腹水の回収工程の途中で、気泡検知手段170により、濃縮ライン112中を流れる気泡を検知したら(ステップSP2にてYes)、ポンプ18、濃縮ポンプ115を停止させ、ろ過ラインFL等の回収フェーズを終了する(ステップSP3)。または、ポンプ18、濃縮ポンプ115等を駆動して残存腹水を所定量流し、あるいは回収したところでステップSP2を停止してもよい。
【0054】
(フェーズ2(再循環ラインの回収フェーズ))
続いて、腹水回収処理のフェーズ2として、再循環ラインRLに残存する腹水を回収する(ステップSP4)。具体的には、循環ライン114に濃縮腹水が残存しているので、主としてこの残存濃縮腹水を回収する(
図4参照)。
【0055】
腹水回収処理のフェーズ2として、本実施形態では、少なくとも逆流防止用開閉装置22を閉鎖した状態で、ポンプ18を逆転させる。また、このとき、例えば第3の圧力測定装置117に設けられたエア取り込み口(図示省略)からエアを取り込む。これにより、循環ライン114に残存する濃縮腹水を逆流させて濃縮腹水バッグ111に回収することができる。
【0056】
フェーズ2の回収工程の途中で、気泡検知手段170により、循環ライン114中を流れる気泡を検知したら(ステップSP5にてYes)、ポンプ18を停止させ、再循環ラインRLの回収フェーズを終了する(ステップSP6)。または腹水を所定量流し、あるいは回収したところでステップSP6を終了してもよい。
【0057】
以上により、ろ過器11の外側、ろ過ライン、濃縮器110の内側、再循環ラインに残存する腹水の回収工程を終了する(
図6参照)。
【0058】
(フェーズ2(再循環ラインの回収フェーズ)の別の例)
上記の腹水回収処理のフェーズ2は好適例にすぎず、例えば以下のようにすることもできる(
図5参照)。
【0059】
第1の開閉装置19、第2の開閉装置20、上流開閉装置21を閉鎖し、開閉装置119を開放した状態で送気ポンプ160を駆動し、エアを、通液口11dを通じてろ過器11に送り込む。これにより、循環ライン114に残存する濃縮腹水を逆流させて濃縮腹水バッグ111に回収することができる。
【0060】
フェーズ2の回収工程の途中で、気泡検知手段170により、循環ライン114中を流れる気泡を検知したら、送気ポンプ160を停止させ、再循環ラインRLの回収フェーズを終了する。または腹水を所定量流し、あるいは回収したところでステップSP6を終了してもよい。
【0061】
以上の実施の形態において、腹水処理装置1は、原腹水バッグ10に収容された腹水をろ過し、濃縮して濃縮腹水バッグ111に収容するものであったが、患者から直接第1のライン12に腹水を取り出し、ろ過、濃縮するものであってもよい。
【0062】
以上の実施の形態は、腹水を処理する腹水処理装置1に本発明を適用した好適な一例であったが、本発明は、胸水などの他の体腔液を処理する体腔液処理装置にも適用できる。
【0063】
また、上記の実施形態では、ろ過し、濃縮した腹水を濃縮腹水バッグ111に回収する形態を例示したがこれも好適な一例にすぎない。濃縮腹水バッグ111は、濃縮器110で濃縮された濃縮腹水を回収して収容するための容器の一種であって、このようなバッグ以外の容器を回収用に用いてもよい。
【0064】
また、上述した送気ポンプ160は、気体または液体を送る送気/送液手段(流体供給手段)の好適な一例にすぎない。エアを送る送気ポンプ160の代わりに、生理食塩水などの液体を送るポンプを採用することもできる。要は、回路中に残存する腹水(体腔液)の回収に利用できる流体であればよい。
【0065】
また、上記の実施形態では、ろ過器11の通液口11dに送気ポンプ160を第4のライン15を用いて接続して送気する場合を例示しつつ説明したが(
図1等参照)、これも好適な一例にすぎない。この他、例えば、送気/送液手段(流体供給手段)として上記のごとく生理食塩水などの液体を送るポンプを採用した場合であれば、当該液体がろ過膜70を通過可能であることから、当該送液ポンプをろ過器11の入口側の通液口11aに接続することができる。または原腹水10を生理食塩液などの液体に交換してもよい。
【0066】
また、上記の実施形態では、再濃縮工程時(
図2参照)や、再循環ラインの回収フェーズ(
図4参照)において、第2のライン13に設けられた逆流防止用開閉装置22を閉鎖することによって、腹水がろ過器11側へ逆流するのを防止したが、これも好適な一例にすぎない。逆流防止用のバルブはどこに配置されていても構わないし、逆流防止用のバルブを設ける代わりに、いずれかのポンプを停止させることで逆流を防止する構成としても構わない。
【0067】
また、上記の実施形態では、フェーズ1とフェーズ2の順序は逆でもよく、または同時に実施してもよい。
【0068】
次に
図8を用いて第2の実施形態を記載する。第2の実施形態に係る腹水処理装置1においては、ろ過器11のろ過膜70の一次側(入口側)にポンプ180が設置されており、該ポンプ180によって腹水を加圧し、ろ過器11に向けて押し出す方式となっている。さらにこの形態では、濃縮腹水バッグ111に貯留された濃縮腹水を濃縮器110に再循環させる際、循環ライン114に配置されたポンプ23を用いて加圧し、再循環させる。
【0069】
なお、ここで第2の実施形態として説明したのが、第1の実施形態とは異なる他の好適な一例にすぎないことはいうまでもない。要は、各ラインの接続やポンプの位置に関係なく、残留しているろ過腹水を回収する上で回収液量を所定量にするものであれば、腹水処理装置1の具体的な構成は特に限定されるものではない。