【実施例】
【0035】
以下、本技術の実施例について説明する。なお、本技術は、これらの実施例に限定されるものではない。
【0036】
<成分A>
タフテックH1221:水素添加スチレン系熱可塑性エラストマー(Mw120000、スチレン比率10%)、旭化成社製
ハイブラー7125:水素添加スチレン系熱可塑性エラストマー(Mw110000、スチレン比率20%)、クラレ社製
タフテックH1041:水素添加スチレン系熱可塑性エラストマー(Mw90000、スチレン比率30%)、旭化成社製
タフテックH1043:水素添加スチレン系熱可塑性エラストマー(Mw110000、スチレン比率67%)、旭化成社製
【0037】
<成分B>
OPE−2St2200:両末端にビニルベンジル基を有する変性ポリフェニレンエーテル樹脂(Mn=2200)、三菱ガス化学社製
SA9000:両末端にメタクリロイル基を有する変性ポリフェニレンエーテル樹脂(Mw1700)、SABIC社製
SA120:両末端に水酸基を有するポリフェニレンエーテル樹脂、SABIC社製
S201A:両末端に水酸基を有するポリフェニレンエーテル樹脂、旭化成社製
【0038】
<成分C>
4032D:ナフタレン型エポキシ樹脂、DIC社製
JER828:エポキシ樹脂、三菱ケミカル社製
YD014:ビスフェノールA型エポキシ樹脂、新日鉄住金化学社製
【0039】
<成分D>
ノバキュア3941:イミダゾール変性体を核としその表面をポリウレタンで被覆してなるマイクロカプセル型潜在性硬化剤、旭化成イーマテリアルズ社製
2E4MZ:2−エチル−4−メチルイミダゾール(潜在性のないイミダゾール)
【0040】
[熱硬化性接着剤組成物の調製]
表1に示す各成分を表1に示す質量となるように秤量し、トルエン及び酢酸エチルを含む有機溶剤中に均一に混合することにより、熱硬化性接着剤組成物(熱硬化性接着層形成用塗料)を調製した。
【0041】
[熱硬化性シートの作製]
得られた熱硬化性接着剤組成物を、剥離処理が施されたポリエチレンテレフタレートフィルムに塗布し、50〜130℃の乾燥炉中で乾燥することにより、ポリエチレンテレフタレートフィルムと、厚さ25μmの熱硬化性接着層とを有する熱硬化性接着シートを作製した。
【0042】
[評価]
<熱硬化性接着層形成用塗料の塗布性(フィルムの状態)の評価>
上述の熱硬化性シートの作製の際、熱硬化性接着剤組成物の塗布性について、以下の基準に従って評価した。結果を表1に示す。
A:接着剤組成物の相溶性が良好であり、フィルム状態で後述する評価を行うことが可能
B:接着剤組成物の相溶性が悪く、フィルム状態で後述する評価を行うことが不可能
【0043】
<誘電率>
実施例及び比較例で作製した熱硬化性接着シート同士をラミネートし、厚さ1mmの試験片を作製した後、この試験片を、160℃、1.0MPaの条件で1時間熱硬化させ、評価用試験片を作製した。この評価用試験片について、誘電率測定装置(AET社製)を用い、測定温度23℃、測定周波数10GHzにおける誘電率を求めた。結果を表1に示す。
A:誘電率が2.3未満
B:誘電率が2.3以上、2.4未満
C:誘電率が2.4以上、2.6未満
D:誘電率が2.6以上
【0044】
<誘電正接>
上述した誘電率の測定と同様の方法で、評価用試験片について誘電正接を求めた。結果を表1に示す。
A:誘電正接が0.002未満
B:誘電正接が0.002以上、0.0035未満
C:誘電正接が0.0035以上、0.005未満
D:誘電正接が0.005以上
【0045】
<剥離強度>
得られた熱硬化性接着シートを所定の大きさの短冊(2cm×5cm)にカットし、そのカットした熱硬化性接着層を2cm×7cm×50μm厚の液晶ポリマーフィルムに100℃に設定したラミネータで仮貼りした後、基材(ポリエチレンテレフタレートフィルム)を取り除いて熱硬化性接着層を露出させた。露出した熱硬化性接着層に対し、同じ大きさの銅張積層板(厚み12μmの圧延銅箔と厚み50μmの液晶ポリマーフィルムとからなるCCL)の圧延銅箔面(粗面化処理を行っていない面)を上から重ね合わせ、160℃、1.0MPaの条件で1時間熱硬化させた。これにより、サンプルを作製した。
【0046】
得られたサンプルに対し、剥離速度50mm/minで90度剥離試験を行い、引き剥がす際に要した力(初期の剥離強度及び信頼性試験後の剥離強度)を測定した。結果を表1に示す。
【0047】
[初期(上述した160℃、1.0MPaの条件での熱硬化後にそのまま測定)]
A:剥離強度が8N/cm以上
B:剥離強度が6N/cm以上、8N/cm未満
C:剥離強度が4N/cm以上、6N/cm未満
D:剥離強度が4N/cm未満
【0048】
[信頼性試験後(85℃、相対湿度85%、240時間(すなわち、上述した160℃、1.0MPaの条件での熱硬化後に、85℃、相対湿度85%の環境に240時間投入し、取り出して3時間後に測定))]
A:剥離強度が7N/cm以上
B:剥離強度が5N/cm以上、7N/cm未満
C:剥離強度が3N/cm以上、5N/cm未満
D:剥離強度が3N/cm未満
【0049】
<耐熱性>
上述のサンプルをトップ温度260℃−30秒となるリフロー工程を3回通過させ、通過後のサンプルの外観を確認し、剥離や膨れが発生していないかどうかを下記基準に従って評価した。結果を表1に示す。
A:3回通過した後も異常なし
B:2回通過で異常なし、3回目で剥離や膨れ等の異常が発生
C:1回通過で異常なし、2回目で剥離や膨れ等の異常が発生
D:1回目で剥離や膨れ等の異常が発生
【0050】
<耐屈曲性>
得られた熱硬化性接着シートを所定の大きさの短冊(1.5cm×12cm)にカットし、そのカットした熱硬化性接着層を1.5cm×12cm×50μm厚の液晶ポリマーフィルムに100℃に設定したラミネータで仮貼りした後、基材(ポリエチレンテレフタレートフィルム)を取り除いて熱硬化性接着層を露出させた。露出した熱硬化性接着層に対し、MIT耐屈試験用のFPC−TEGに重ね合わせ、160℃、1.0MPaの条件で1時間熱硬化させた。MIT耐屈試験用のTEG11の構成を
図3に示す。TEG11は、基材としての液晶ポリマーフィルム(厚み50μm)と、圧延銅箔(厚み12μm)とからなるCCLから銅配線を形成したものである。MIT耐屈試験は、作製した試験片12を、
図4に示す構造のMIT耐折疲労試験機13にセットして行った。折り曲げ角度135°、折り曲げクランプ角度R=0.38、試験速度175cpmの条件で行った。銅配線が破断するまでの折り曲げ回数を確認した。結果を表1に示す。
A:破断までの折り曲げ回数が1200回以上
B:破断までの折り曲げ回数が500回以上、1200回未満
C:破断までの折り曲げ回数が200回以上、500回未満
D:破断までの折り曲げ回数が200回未満
【0051】
<ライフ評価>
熱硬化性シートを常温で4か月保管した後、上述した剥離強度の評価と同様の評価を行った。熱硬化性接着シートを作製した直後に評価を行った剥離強度と比べた場合の低下率を確認した。結果を表1に示す。
A:剥離強度の低下が10%未満
B:剥離強度の低下が10%以上、30%未満
C:剥離強度の低下が30%以上
【0052】
【表1】
【0053】
表1に示す結果から、接着剤組成物の合計100質量部に対して、スチレン系エラストマー(成分A)を75〜90質量部と、末端に重合性基を有する変性ポリフェニレンエーテル樹脂(成分B)を3〜25質量部と、エポキシ樹脂(成分C)及びエポキシ樹脂硬化剤(成分D)を合計で10質量部以下とを含有する接着剤組成物は、熱硬化後も誘電率及び誘電正接が低く、耐屈曲性が良好であることが分かった。
【0054】
実験例6の結果から、変性ポリフェニレンエーテル樹脂の含有量を25質量部超とすると、耐屈曲性が劣ることが分かった。
【0055】
実験例8の結果から、エポキシ樹脂及びエポキシ樹脂硬化剤の合計量を10質量部超とすると、誘電正接を低くするのが困難であることが分かった。
【0056】
実験例11、12の結果から、末端に水酸基を有するポリフェニレンエーテル樹脂を用いると、フィルム状態が悪いか、誘電特性及び耐屈曲性が劣ることが分かった。なお、実験例12では、フィルムの状態が悪かったため、誘電率、誘電正接、剥離強度、耐熱性、耐屈曲性の評価を行うことができなかった。
【0057】
実験例の結果から、変性ポリフェニレンエーテル樹脂の含有量を5〜20質量部とすることにより、誘電率及び誘電正接が低く、耐屈曲性が良好であり、さらに耐熱性も良好であることが分かった。
【0058】
実験例の結果から、スチレン系エラストマーの質量平均分子量を100000以上とすることにより、剥離強度、耐熱性及び耐屈曲性をより良好にできることが分かった。
【0059】
実験例の結果から、スチレン系エラストマーのスチレン比率を30%未満とすることにより、誘電特性、剥離強度、耐熱性及び耐屈曲性をより良好にできることが分かった。
【0060】
実験例の結果から、液状のエポキシ樹脂を用いることにより、剥離強度、耐熱性及び耐屈曲性をより良好にできることが分かった。
【0061】
実験例の結果から、潜在性のあるエポキシ樹脂硬化剤を用いることにより、常温での保管性も良好にできることが分かった。
【0062】
実験例3、7、14の結果から、10GHzにおいて誘電率(Dk)が2.3以下、誘電正接(Df)が0.002未満と非常に低い値を示すにもかかわらず、液晶ポリマーフィルムと粗面化処理を施していない圧延銅箔に対して8N/cm以上の非常に高い接着強度を示すことが分かった。