(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2019-136406(P2019-136406A)
(43)【公開日】2019年8月22日
(54)【発明の名称】車両用シートクッション
(51)【国際特許分類】
A47C 7/18 20060101AFI20190726BHJP
B60N 2/90 20180101ALI20190726BHJP
A47C 27/15 20060101ALI20190726BHJP
【FI】
A47C7/18
B60N2/44
A47C27/15 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2018-24351(P2018-24351)
(22)【出願日】2018年2月14日
(71)【出願人】
【識別番号】000119232
【氏名又は名称】株式会社イノアックコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100147854
【弁理士】
【氏名又は名称】多賀 久直
(72)【発明者】
【氏名】松本 真人
【テーマコード(参考)】
3B084
3B087
3B096
【Fターム(参考)】
3B084CA07
3B084CA08
3B087DE03
3B096AB07
(57)【要約】
【課題】車両用シートクッションを取り付け易くする。
【解決手段】シートクッション10は、座面を構成し、軟質発泡体からなる表層材12と、表層材12と重ねて設けられ、ビーズ発泡体からなる芯材14とを備えている。芯材14は、下面に開口するように設けられ、シートクッション10を取り付けた際に車体に設けられた位置決め部Fが嵌まる固定溝18と、固定溝18の脇に位置して該芯材14の下面に開口するように設けられ、固定溝18を画成する溝壁20における固定溝18を拡開する方向への変形を許容するスリット22とを有している。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用シートクッションの座面を構成し、軟質発泡体からなる表層材と、
前記表層材と重ねて設けられ、前記軟質発泡体よりも単位体積当たりの質量が軽いビーズ発泡体からなる芯材と、を備え、
前記芯材は、
該芯材の下面に開口するように設けられ、車両用シートクッションを取り付けた際に車体に設けられた位置決め部が嵌まる固定溝と、
前記固定溝の脇に位置して該芯材の下面に開口するように設けられ、該固定溝を画成する溝壁における該固定溝を拡開する方向への変形を許容するスリットと、を有している
ことを特徴とする車両用シートクッション。
【請求項2】
前記スリットは、前記溝壁の変形方向の開口寸法が、閉塞端側と比べて開口側が広く形成されている請求項1記載の車両用シートクッション。
【請求項3】
前記スリットは、その深さが前記固定溝の深さと略同じに形成されている請求項1または2記載の車両用シートクッション。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車両の座席において座面を構成する車両用シートクッションに関するものである。
【背景技術】
【0002】
リアシートの座面を構成するリアシートクッションは、軟質ウレタン発泡体で形成されており、内部に挿入された位置決め部を車体に取り付けることで車体に対して固定されている。このようなリアシートクッションには、該リアシートクッションの下面に凹部を設けて、車体から突出するように設けられた移動防止体を凹部に嵌め込んで、車体に固定する構成が提案されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1のリアシートクッションは、車両衝突時等の負荷がかかったとき、移動防止体と凹部との嵌め合いにより、リアシートクッションが位置ずれすることを防止している。
【0003】
車両は、環境性能の向上が常に求められている。それにより、リアシートクッションは、軟質ポリウレタン発泡体の一部を、軟質ポリウレタン発泡体よりも軽いポリスチロール発泡体に置き換えることで、軽量化を図ったものが提案されている(例えば、特許文献2参照)。特許文献2のシートクッションは、座面となる上部を軟質ウレタン発泡体の型成形品で形成し、クッション性が求められない下部をポリスチロール発泡体の型成形品で形成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実用新案登録第2593617号公報
【特許文献2】特開平9−70330号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ポリスチロール発泡体は、収縮などの影響により、寸法精度を高くすることが難しく、ポリスチロール発泡体に凹部を形成すると、車体に設けられた移動防止体が凹部にうまく嵌まらないことがある。
【0006】
本発明は、従来の技術に係る前記問題に鑑み、これらを好適に解決するべく提案されたものであって、車体へ取り付け易い車両用シートクッションを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を克服し、所期の目的を達成するため、本発明の車両用シートクッションは、
車両用シートクッションの座面を構成し、軟質発泡体からなる表層材と、
前記表層材と重ねて設けられ、前記軟質発泡体よりも単位体積当たりの質量が軽いビーズ発泡体からなる芯材と、を備え、
前記芯材は、
該芯材の下面に開口するように設けられ、車両用シートクッションを取り付けた際に車体に設けられた位置決め部が嵌まる固定溝と、
前記固定溝の脇に位置して該芯材の下面に開口するように設けられ、該固定溝を画成する溝壁における該固定溝を拡開する方向への変形を許容するスリットと、を有していることを要旨とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る車両用シートクッションによれば、車両に取り付け易くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の実施例に係るシートクッションを、上側から見た概略斜視図である。
【
図2】実施例のシートクッションを、下側から見た概略斜視図である。
【
図3】実施例のシートクッションを示す断面図である。
【
図4】実施例のシートクッションの車体への取り付け状況を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
次に、本発明に係る車両用シートクッションにつき、好適な実施例を挙げて、添付図面を参照して以下に説明する。
【実施例】
【0011】
図1および
図2に示すように、実施例のシートクッション(車両用シートクッション)10は、車両の後部座席において使用者の下半身を支持する座部を構成するものである。
図3に示すように、シートクッション10は、該シートクッション10の上部を主に構成する表層材12と、表層材12に重ねて設けられ、該シートクッション10の下部を主に構成する芯材14とを備えている。実施例のシートクッション10は、人が着座した際に荷重が加わる上面等が表層材12で構成され、車体側となる下部の大部分が芯材14で構成されている。シートクッション10は、別々に成形した表層材12と芯材14とを接着剤等で接合してもよいが、実施例では、芯材14と接するように成形される表層材12の接着力によって、表層材12と芯材14とが一体化されている。
【0012】
表層材12は、重合反応によって生じるガスや発泡剤などの化学反応を利用する方法(化学反応ガス活用法)や、機械的に攪拌して気体を吹き込むなど、空気を混入させる方法(機械的混入法)等で得られる発泡体が用いられる。表層材12は、芯材14をなすビーズ発泡体と異なる発泡体が用いられ、例えばポリウレタン発泡体が採用される。また、表層材12は、座席に座った使用者側となることから、芯材14よりも柔軟性がある軟質発泡体が用いられている。
【0013】
芯材14は、発泡剤を含んだ発泡ビーズを蒸気等で加熱して発泡および成形することで得られるポリプロピレン発泡体(EPP)やポリスチロール発泡体(EPS)などの弾性を有するビーズ発泡体で構成されている。芯材14は、表層材12を構成する素材よりも単位体積当たりの質量が軽い(密度が小さい)素材が用いられ、シートクッション10の軽量化に寄与している。
図2に示すように、芯材14には、所謂肉盗みとも呼ばれる下方へ開口する凹部16が複数並べて設けられており、凹部16によってより一層の軽量化が図られている。
【0014】
図2および
図3に示すように、芯材14は、シートクッション10において車体に面する下面を構成しており、該シートクッション10を車体へ取り付けた際に車体に設けられた位置決め部Fが嵌まる固定溝18が、下面に開口するように設けられている。固定溝18は、左右に延在する棒状の位置決め部Fに合わせてシートクッション10の左右方向に亘って延在している。固定溝18は、閉塞端が断面円形状の位置決め部Fに合わせて円弧状で、該位置決め部Fと同じ大きさまたはわずかに小さく形成されている。実施例では、位置決め部Fと干渉するように、固定溝18の大きさが設定されている。また、固定溝18は、閉塞端側から開口側へ向かうにつれて、該固定溝18を画成する溝壁20が互いに離れるように形成されている。実施例の芯材14には、前後方向の中央部に固定溝18が設けられ、固定溝18の前および後の両側に、凹部16が固定溝18に沿って並べて配置されている。
【0015】
図2および
図3に示すように、芯材14は、固定溝18の脇に位置して該芯材14の下面に開口するように設けられ、固定溝18を画成する溝壁20における固定溝18の幅を拡開する方向(実施例では前または後)への変形を許容するスリット22を備えている。芯材14には、固定溝18の前側および後側のそれぞれにスリット22が設けられている。実施例では、隣り合う凹部16を仕切る壁を切り欠くようにしてスリット22が形成され、凹部16とスリット22とによって、固定溝18の脇に左右方向へ延在する変形許容空間を設けている。スリット22は、溝壁20の変形方向の開口寸法が、閉塞端側と比べて開口側が広く形成されている。より具体的には、スリット22は、閉塞端から開口へ向かうにつれて前後方向へ開くように形成され、閉塞端の前後寸法を10mm以下に設定することが好ましく、より好ましくは5mm〜7mmである。
【0016】
図3に示すように、スリット22は、その深さを固定溝18の深さと略同じに形成することが好ましい。スリット22は、隣接する固定溝18において位置決め部Fにおける前後の最大寸法部分が配置される部位と同じ深さまで形成してあるとよい。実施例では、固定溝18の閉塞端が円形であるので、固定溝18が円弧状となる部位と同じまたはそれより深くスリット22があることが好ましい。
【0017】
図4に示すように、シートクッション10を車体に取り付ける際に、位置決め部Fが溝壁20に当たることで、固定溝18に隣接して設けられたスリット22によって形成された変形許容空間の存在により、溝壁20が固定溝18を拡開する方向への変形が許容される。このように、固定溝18が広がるので、固定溝18に位置決め部Fを嵌め込み易く、車体に対してシートクッション10を取り付け易くすることができる。また、芯材14に形成された固定溝18がわずかにずれていても、溝壁20を変形させて位置決め部Fを嵌め込むことができ、芯材14に要求される寸法精度を低くすることができる。これにより、芯材14の寸法精度を出すための型改修などの手間を省くことができ、シートクッション10の製造コストを抑えることができる。更に、固定溝18に位置決め部Fを嵌め込み易いので、固定溝18の前後の溝壁20,20で位置決め部Fを挟持するように厳密に寸法設定することができ、位置決め部Fによってシートクッション10をより確実に固定することができる。
【0018】
図4に示すように、溝壁20が変形する際には、スリット22の閉塞端を根元として傾くので、スリット22の開口側を広く形成しておくことで、溝壁20の変形を妨げ難く、変形量を大きくすることができる。また、スリット22の深さを固定溝18と略同じに形成することで、溝壁20が固定溝18の閉塞端近傍まで変形が許容されるから、位置決め部Fを嵌め込み易くすることができる。
【0019】
(変更例)
前述した実施例に限らず、例えば以下のように変更してもよい。
(1)スリットを固定溝に沿って固定溝全体に亘って連続的に形成してもよい。また、固定溝に対して、固定溝に沿って並ぶ複数のスリットを設けてもよい。
(2)肉盗みのために設定する凹部を、スリットとして兼用してもよい。
【符号の説明】
【0020】
10 シートクッション(車両用シートクッション),12 表層材,14 芯材,
18 固定溝,20 溝壁,22 スリット