【解決手段】本発明に係る切除器具は、生体組織を切除するための切除器具であって、本体部と、生体組織を本体部に対して本体軸線方向第1側にて位置決めするように構成された、位置決め部と、1つ又は複数の切開刃を含む、切開刃部と、を備え、生体組織を切除する際、切開刃部は、生体組織の内部を、本体軸線の周りで回転されながら本体軸線方向第1側へ向かうように、切り進むことが可能に構成されている。
生体組織を切除する際、前記切開刃部は、前記生体組織の内部を、前記本体軸線からの距離を一定に維持しつつ、前記本体軸線の周りで回転されながら前記本体軸線方向第1側へ向かって切り進み、その後、前記本体軸線に向かって切り進むことが可能に構成されている、請求項1に記載の切除器具。
生体組織を切除する際、前記切開刃部は、前記生体組織の内部を、前記本体軸線の周りで回転されながら前記本体軸線方向第1側へ向かうように、切り進む間、前記本体軸線から徐々に遠ざかり、その後、前記本体軸線に徐々に近づくことが可能に構成されている、請求項1に記載の切除器具。
生体組織の切開が完了した後、切開が完了した前記生体組織は、前記位置決め部と前記切開刃部とによって保持された状態で、残りの生体組織から引き抜かれることが可能に構成されている、請求項1〜7のいずれか一項に記載の切除器具。
前記切開刃部は、前記1つ又は複数の切開刃のうち少なくとも1つが、切開モードの通電が可能にされた電気メスとして構成されている、請求項1〜8のいずれか一項に記載の切除器具。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、図面を参照しつつ、本発明に係る切除器具の実施形態を例示説明する。
本発明の切除器具は、人間又は動物の外科手術において生体組織を切除するために好適に利用できるものであり、臓器の一部を切除するためにより好適に利用できるものであり、肝臓の一部(例えば、腫瘍)を切除するためにさらに好適に利用できるものである。
【0020】
〔第1実施形態〕
図1〜
図7は、本発明の第1実施形態に係る切除器具10を説明するための図面である。
まず、
図1を参照しながら、本実施形態の切除器具10を備えた手術支援システム1の一例を説明する。
図1の例の手術支援システム1は、本実施形態の切除器具10に加えて、金属製の対極板20と、制御装置30と、画像取得装置40と、を備えている。本例の切除器具10は、電気メスを有するものである。
対極板20は、手術中において、その上に患者(人間又は動物)が横たわるようにされる。切除器具10の電気メスが通電されると、電流が患者を通って対極板20に流れる。
【0021】
制御装置30は、切除器具10を制御するように構成されており、入力部31と、制御部32と、駆動部33と、通電制御部34とを、有している。
入力部31は、操作者(例えば、外科医等の医療従事者)からの操作を受け付けるように構成されている。入力部31からの入力に応じて、切除器具10の種々の動作内容(例えば、電気メスの出力内容等)が設定可能にされている。
制御部32は、CPU等の処理装置から構成されており、ROMやRAM等の記憶装置から構成される記憶部(図示せず)に格納されたプログラムに従って、制御装置30の全体を制御する。また、制御部32は、入力部31からの入力に応じて、駆動部33及び通電制御部34を制御する。
駆動部33は、切除器具10と配線により接続されており、切除器具10に備えられる後述の操作部111の操作に従って、かつ/又は、操作部111を介さない制御部32による自動制御に従って、切除器具10の構成要素(例えば、後述するブレード210、位置決め部120等)を機械的に駆動(回転、直進等)するための駆動信号(駆動電流)を出力するように構成されている。
通電制御部34は、切除器具10及び対極板20とそれぞれ配線により接続されており、切除器具10に備えられる後述の操作部111の操作に従って、かつ/又は、操作部111を介さない制御部32による自動制御に従って、切除器具10の電気メスに、高周波電流を出力し、それにより電気メスを電気的に駆動するように構成される。
【0022】
画像取得装置40は、患者の体内の画像を取得するように構成されている。
図1の例において、画像取得装置40は、撮像部42と、表示部41と、を有している。
撮像部42は、患者の体内の画像を撮像するように構成されている。撮像部42は、仮に患者の身体を切開せずとも患者の体内の画像を撮像できるものであると好適であり、その観点からは、例えば、超音波により撮像するように構成された超音波撮像装置から構成されると、好適である。撮像部42は、切除器具10とは別体に構成されてもよいし、あるいは、切除器具10と一体に構成されてもよい。
表示部41は、撮像部42により撮像された画像を表示するように構成されており、例えば、モニタ又はディスプレイから構成される。表示部41があることにより、切除器具10の操作者は、患者の生体組織の切除を行う前及びその間において、患者の体内における、切除対象部位及びその周辺の血管等の位置や切除器具10の位置を、把握することができる。
なお、
図1の例において、制御装置30と画像取得装置40とは、互いに通信可能にされてはいない。しかし、制御装置30と画像取得装置40とは、互いに通信可能にされてもよい。より具体的には、例えば、制御装置30は、画像取得装置40の撮像部42により撮像された画像のデータを受信するように構成されてもよい。その場合、例えば、制御部32は、撮像部42により撮像された画像のデータに基づいて、駆動部33及び通電制御部34を制御できるように構成されてもよい。
【0023】
ただし、切除器具10は、
図1の例とは異なる構成からなる手術支援システム1に用いられてもよい。
また、切除器具10は、電気メスを有しなくてもよい。その場合、手術支援システム1は、対極板20及び/又は制御装置30を有していなくてもよい。
また、手術支援システム1は、画像取得装置40を有していなくてもよい。
また、切除器具10は、手術支援システム1の一部を構成せずに、単独で使用されてもよい。
【0024】
つぎに、
図2〜
図4を参照しながら、本実施形態の切除器具10の構成について説明する。
図2に示すように、本実施形態の切除器具10は、本体部110と、位置決め部120と、1つ又は複数(
図2の例では4つ)のアームブレード210と、を備えている。位置決め部120とアームブレード210は、本体部110に取り付けられている。なお、以下では、アームブレード210を、単に「ブレード210」ということがある。
図2の例の切除器具10は、操作者が本体部110を手に持った状態で操作されるように構成された、ハンディータイプのものである。
なお、図面上では、便宜のため、各アームブレード210のうち一部のアームブレード210のみに符号を付けている。
【0025】
本体部110は、モータ等の駆動源を有し、位置決め部120とアームブレード210とを駆動するように構成されている。
図2の例において、本体部110には、操作者からの入力を受け付ける操作部111が設けられており、本体部110は、操作部111での操作に応じて、位置決め部120及び/又はアームブレード210を機械的に駆動(回転、直進等)できるように構成されている。
操作部111は、
図2の例では、1つ又は複数のボタン(図の例では、複数)からなるボタン式に構成されているが、これに加えて、又はこれに代えて、レバー式など、任意の方式で操作されるように構成されてよい。ただし、本体部110は、操作部111を有していなくてもよい。
また、
図2の例において、本体部110は、制御装置30の通電制御部34と、配線により接続されており、操作部111での操作に応じて、通電制御部34からの高周波電流を、後述の電気メスに通電させることで、電気メスを電気的に駆動するように構成されている。
ただし、これに加えて、又はこれに代えて、本体部110は、操作部111を介さずに、制御装置30の駆動部33から自動的に出力される駆動信号に従って、位置決め部120及び/又はアームブレード210を機械的に駆動させるように構成されてもよい。また、これに加えて、又はこれに代えて、本体部110は、操作部111を介さずに、制御装置30の駆動部33から自動的に出力される駆動信号に従って、電気メスを電気的に駆動させるように構成されてもよい。
また、これに加えて、又はこれに代えて、本体部110は、CPU等の制御装置から構成される制御部を内部に備えて、この制御部に従って位置決め部120及び/又はアームブレード210を駆動できるように構成されてもよい。ただし、本体部110は、内部に制御部を有しなくてもよい。
【0026】
各アームブレード210は、本体部110が有する所定の本体軸線Oの周りで、回転可能に構成されている。また、本例において、位置決め部120は、本体軸線方向に往復移動可能に構成されている。
ここで、「本体軸線O」は、機械的な軸(シャフト)ではなく、仮想的な直線である。「本体軸線方向」とは、本体軸線Oに平行な方向である。
なお、以下では、便宜のため、本体軸線方向一方側を「本体軸線方向第1側O1」といい、本体軸線方向他方側を「本体軸線方向第2側O2」という。また、以下では、本体軸線Oを中心とする径方向、外周側、内周側を、それぞれ単に「径方向」、「外周側」、「内周側」ということがある。
位置決め部120とアームブレード210は、本体部110の本体軸線方向第1側O1の端部から本体軸線方向第1側O1へ突出するように設けられている。切除器具10が使用される際、切除器具10の本体軸線方向第1側O1は患者に向けられる。
【0027】
図3は、切除器具10を、本体部110の筐体を取り外した状態で示しており、本体部110の内部構成の一例を示している。
図3の例において、本体部110は、各アームブレード210の本体軸線方向第2側O2の端部が固定された回転板115と、回転板115を本体軸線Oの周りで回転させ、それにより各アームブレード210を本体軸線Oの周りで回転(公転)させる回転板駆動部112と、位置決め部120を本体部110の本体軸線方向に駆動させる位置決め部駆動部113と、位置決め部120の後述の槍部材121を本体軸線方向に駆動させる槍駆動部123と、各アームブレード210をそれぞれ自転させるブレード駆動部114と、を有している。
回転板駆動部112は、回転板回転モータ112aと、回転板回転モータ112aの回転によって本体軸線Oの周りで回転される、外筒112bと、を有している。外筒112bの本体軸線方向第1側O1の端部は、回転板115と固定されており、これにより、外筒112bと回転板115は、一体となって本体軸線Oの周りで回転するように構成されている。回転板回転モータ112aは、例えば、減速機付きモータから構成される。本体軸線Oは、回転板115及び外筒112bの中心軸線(回転軸線)と一致している。回転板115が本体軸線Oの周りで回転されると、各アームブレード210も本体軸線Oの周りで回転(公転)される。外筒112bは、支持ブロック124によって、ベアリングを介して支持されている。
位置決め部駆動部113は、位置決め部駆動モータ113aと、位置決め部駆動モータ113aにより回転される回転軸(ネジ軸)113dと、回転軸113dに接続され、本体軸線方向に垂直に延在するとともに、回転軸113dの回転に応じて本体軸線方向に移動するアーム113bと、回転板駆動部112の外筒112bの内部を本体軸線方向に延在するとともに、アーム113bの本体軸線方向への移動に応じて位置決め部120を本体軸線方向に移動させる内筒113cと、を有している。詳細な図示は省略するが、回転軸113dと、アーム113bと回転軸113dとの接続部分においてアーム113bに固定されたナット(図示せず)と、回転軸113dとナットとの間に設けられたボール(図示せず)とにより、ボールネジが構成されている。位置決め部駆動モータ113aは、例えば、減速機付きモータから構成される。
槍駆動部123は、位置決め部駆動部113の内筒113cの内部を本体軸線方向に延在する後述の槍部材121の本体軸線方向第2側O2の端部に設けられており、槍部材121を、本体軸線方向に駆動させるように構成されている。槍駆動部123は、例えば、減速機付きモータ、ソレノイド、あるいは、手動により操作される操作部111から構成される。
ブレード駆動部114は、ブレード回転モータ114aと、ブレード回転モータ114aの出力軸に設けられた第1のギア114bと、外筒112bの周りに配置されているとともに、第1のギア114bの回転に伴い回転されるように構成された第2のギア114cと、ブレード210の本体軸線方向第2側O2の端部を保持するブレード保持部材114eに設けられ、第2のギア114cの回転に伴い回転されるように構成された第3のギア114dと、を有している。第3のギア114dが回転されることによって、ブレード保持部材114e及びブレード210が、一体となって、ブレード210の後述の第1アーム部分151の中心軸線C151の周りで回転(自転)する。
図3では、便宜のため、1つのブレード210に対応するブレード保持部材114e及び第3のギア114dの符号のみを示しているが、ブレード保持部材114e及び第3のギア114dは、ブレード210毎にそれぞれ設けられている。ブレード回転モータ114aは、例えば、減速機付きモータから構成される。
ただし、本体部110は、
図3の例とは異なる任意の内部構成を有してよい。
【0028】
位置決め部120は、生体組織を本体部110に対して本体軸線方向第1側O1にて位置決めする(位置を固定する)ように構成されている。位置決め部120を備えることにより、切除器具10は、生体組織を切除する間、生体組織が切除器具に対して位置ずれするのが防止される。
図2の例において、位置決め部120は、アンカーとして構成されており、槍部材121と板付き管部材122とを有している。槍部材121は、その中心軸線が本体軸線O上にあり、その一部分が本体部110から本体軸線方向第1側O1へ突出している。槍部材121の本体軸線方向第1側O1の端部には、本体軸線方向第2側O2へ突出した返し121fが設けられている。返し121fは、本体軸線方向に対する傾斜角度が小さくされた閉鎖状態と、本体軸線方向に対する傾斜角度が大きくされた開放状態との間で、切り替え可能に構成されている。板付き管部材122は、その一部分が本体部110から本体軸線方向第1側O1へ突出しているとともに、管状に構成されており、槍部材121と同軸状かつ槍部材121の外周側に配置されている。板付き管部材122は、その本体軸線方向第1側O1の端部に、本体軸線Oに垂直な円板を有しており、その円板の本体軸線方向第1側O1の面には、複数の針122nが立設されている。位置決め部120は、使用時において、槍部材121が本体軸線方向第1側O1へ変位して患者の組織を刺した後、本体軸線方向第2側O2へ若干戻るとともに、返し121fが閉鎖状態から開放状態に変わり、それにより、返し121fと板付き管部材122の円板との間で組織が挟まれて固定されるように、構成されている。
ただし、位置決め部120は、
図2の例のものに限られず、生体組織を本体部110に対して本体軸線方向第1側O1にて位置決めするように構成されている限り、任意の構成を有してよい。
図2の例において、回転板115は、位置決め部120と同心軸状の環状に構成されており、その中心穴に、位置決め部120が挿通されている。ただし、位置決め部120は、回転板115と連動して回転されないようにされている。
【0029】
アームブレード210は、それぞれ、回転板115と連動して本体軸線Oの周りで回転されるように、軸線方向第2側O2の端部が回転板115に取り付けられている。本例において、切除器具10は、アームブレード210として、生体組織の切開を行うための1つ又は複数(
図2の例では、2つ)の切開用ブレード211と、生体組織の凝固ひいては止血を行うための1つ又は複数(
図2の例では、2つ)の凝固用ブレード212とを有している。これらのアームブレード210は、位置決め部120の外周側に配置されている。各切開用ブレード211どうしは、本体軸線Oを中心とする直径方向に互いに対向するように配置されている。また、各凝固用ブレード212どうしは、本体軸線Oを中心とする直径方向に互いに対向するよう配置されている。
本例では、アームブレード210が本体部110に対して本体軸線方向に変位しないが、アームブレード210は、本体部110に対して本体軸線方向に変位可能に構成されてもよい。
【0030】
切開用ブレード211は、それぞれ、アーム部材150と、アーム部材150における本体軸線方向第1側O1の端部に設けられた切開刃130と、を有する。切除器具10が備える各切開用ブレード211の1つ又は複数(本例では2つ)の切開刃130は、切開刃部130Pを構成する。本例において、切開刃130は、鋭利な刃先を有しており、物理的に生体組織を切開するように構成されている。切開刃130は、脱着可能にアーム部材150に固定されていることが好ましく、その観点から、ネジ止め等の締結によって150に固定されていると好適である。これにより、切開刃130の交換が簡単になる。
本例において、切開刃130は、切開モードの通電が可能にされた電気メスとして構成されてはいない。この場合、構造の簡単化が可能になる。ただし、切開刃部130Pを構成する1つ又は複数の切開刃130のうち少なくとも1つが、切開モードの通電が可能にされた電気メスとして構成されてもよい。その場合、電気メスとして構成された切開刃130は、鋭利な刃先を有していなくてもよいし、有していてもよい。
【0031】
凝固用ブレード212は、それぞれ、アーム部材150と、アーム部材150における本体軸線方向第1側O1の端部に設けられた凝固刃140と、を有する。切除器具10が備える各凝固用ブレード212の1つ又は複数(本例では2つ)の凝固刃140は、凝固刃部140Pを構成する。凝固刃140は、電極から構成されており、凝固モードの通電が可能にされた電気メスとして構成されている。凝固刃140は、凝固モードの通電がなされると、凝固刃140の近傍の生体組織を凝固させることで止血するように構成されている。
切除器具10は、凝固用ブレード212を有することで、凝固ひいては止血しながら切開することができるので、切開された部位の出血を回避できる。
本例の切除器具10は、生体組織を切除する際、凝固と切開とを交互に行いながら切り進めることが可能に構成されている。ただし、凝固と切開とは、並行して(すなわち同時に)行ってもよい。本例では、凝固と切開とが自動で切り換わるようにされているが、凝固と切開との切り替えは、例えば操作部111を介して手動で行われてもよい。
ただし、切除器具10は、凝固用ブレード212を有していなくてもよい。
【0032】
各アームブレード210のアーム部材150は、絶縁性の膜(図示せず)によって被覆されている。
各アームブレード210のアーム部材150は、本体部110の本体軸線方向第1側O1に取り付けられているとともに、回転板115と連動して本体軸線Oの周りで回転(公転)可能にされている。アーム部材150は、本体部110に対して脱着可能に取り付けられていてもよい。その場合、アームブレード210の交換が簡単となる。
図3の例において、アーム部材150は、それぞれ、本体部110から本体軸線方向第1側O1に延在する第1アーム部分151と、第1アーム部分151の本体軸線方向第1側O1の端部から本体軸線Oに略垂直な方向に延在する第2アーム部分152と、を有している。第1アーム部分151の中心軸線C151は、本体軸線Oに平行である。図の例では、第1アーム部分151と第2アーム部分152との連結部分が、角張っておらず、滑らかに湾曲している。
【0033】
本例において、各アームブレード210のアーム部材150は、回転板115に対して位置が固定された第1アーム部分151の中心軸線C151の周りで、回転(自転)可能に構成されている。また、本例において、各アームブレード210のうちの切開用ブレード211は、切開刃130が、当該切開用ブレード211のアーム部材150に対して位置が固定された切開刃回転軸線R130の周りで、回転可能に構成されている。切開刃回転軸線R130は、本体軸線Oに垂直である。
アーム部材150は、例えば、中空のパイプと、その内部に格納された、アーム部材150(切開用ブレード221の場合は、さらに切開刃130)を駆動するための機構とを、有する。
図4(a)〜
図4(c)は、それぞれ別々の状態にあるときの切除器具10の一部を、軸線方向第1側O1から観た様子を示している。便宜のため、
図4では、アームブレード210のみを示しており、それ以外の構成要素の図示を省略している。
図4からわかるように、本例では、切除器具10を軸線方向第1側O1から観たときに、各アームブレード210の第2アーム部分152及び凝固刃140が、それぞれ同じ曲率半径の円弧に沿って湾曲している。各アームブレード210は、第1アーム部分151の中心軸線C151の周りで回転可能であることにより、それぞれの第2アーム部分152及び凝固刃140が、本体軸線Oを中心とするとともに各第1アーム部分151の中心軸線C151を通る1つの共通の円に沿って延在する状態(
図4(a)及び
図4(b)参照)と、本体軸線Oに向かって(内周側に向かって)突出した状態(
図4(c))との間で、変位可能にされている。
また、各アームブレード210のうちの切開用ブレード211は、それぞれの切開刃130が、それぞれの切開刃回転軸線R130の周りで回転可能であることにより、それぞれの切開刃130の刃先が、本体軸線方向第1側O1を向いた状態(
図4(a)参照)と、本体軸線Oに垂直かつ本体軸線O側(内周側)を向いた状態(
図4(b)及び
図4(c)参照)との間で、変位可能にされている。
【0034】
図4(a)では、各アームブレード210の第2アーム部分152及び凝固刃140が、本体軸線Oを中心とするとともに各第1アーム部分151の中心軸線C151を通る1つの共通の円に沿って延在しているとともに、各切開刃130の刃先が、本体軸線方向第1側O1を向いている。各凝固刃140及び各切開刃130は、当該共通の円の上(円の外縁上)に位置している。
図4(a)の状態で回転板115が回転されると、切開刃部130Pが、生体組織の内部を、本体軸線Oの周りで回転されながら本体軸線方向第1側O1へ向かうように、切り進むことが可能である。より具体的には、
図4(a)の状態で回転板115が回転されると、切開刃部130Pが、生体組織の内部を、本体軸線Oからの距離を一定に維持しつつ、本体軸線Oの周りで回転されながら本体軸線方向第1側O1へ向かって、円筒状に切り進むことが可能である。
図4(b)では、各アームブレード210の第2アーム部分152及び凝固刃140が、本体軸線Oを中心とするとともに各第1アーム部分151の中心軸線C151を通る上記1つの共通の円に沿って延在しているとともに、各切開刃130の刃先が、本体軸線Oに垂直かつ本体軸線O側(内周側)を向いている。各凝固刃140及び各切開刃130は、当該共通の円の上(円の外縁上)に位置している。
図4(c)では、各アームブレード210の第2アーム部分152及び凝固刃140が、本体軸線Oに向かって(内周側に向かって)突出しているとともに、各切開刃130の刃先が、本体軸線Oに垂直かつ本体軸線O側(内周側)を向いている。各凝固刃140及び各切開刃130は、当該共通の円の内部(円の外縁の内部)に位置しており、それぞれ本体軸線Oに対して近接している。
図4(c)における凝固刃140と本体軸線Oとの間の径方向距離は、
図4(a)や
図4(b)における凝固刃140と本体軸線Oとの間の径方向距離よりも、短い。また、
図4(c)における切開刃130と本体軸線Oとの間の径方向距離は、
図4(a)や
図4(b)における切開刃130と本体軸線Oとの間の径方向距離よりも、短い。
切除器具10は、
図4(b)の状態から
図4(c)の状態へ徐々に移行することが可能にされている。
図4(b)の状態から
図4(c)の状態へ徐々に移行する間、回転板115が回転され続けると、切開刃部130Pが、本体軸線Oに向かって(内周側に向かって)、本体軸線Oに垂直な面に沿って、切り進むことが可能である。その間、凝固刃140も、本体軸線Oに向かって(内周側に向かって)、本体軸線Oに垂直な面に沿って、移動することが可能である。
【0035】
さらに、本例においては、切開刃130が第2アーム部分152に対して回転(具体的には、切開刃回転軸線R130の周りで回転)することで、凝固刃140と切開刃130の刃先とが、本体軸線方向に互いに相対移動できるように構成されている。
ただし、凝固刃140と切開刃130の刃先とは、本体軸線方向に互いに相対移動できるように構成されていなくてもよい
【0036】
つぎに、
図5〜
図7を参照しながら、本実施形態の切除器具10の動作の一例を説明する。なお、以下の説明において、切除器具10の各動作は、特に断りがない限り、自動で行われてもよいし、あるいは、例えば操作部111での操作に応じて手動で行われてもよい。
図5〜
図7の例において、切除器具10は、
図1の手術支援システム1に備えられており、開腹手術において患者の肝臓の内部の腫瘍TUを切除するために使用される。
図5〜
図7において示す生体組織BTは、肝臓である。腫瘍TUから所定距離(例えば約1cm)離れた位置を外縁とする部位が、切除対象部位Sである。
予め、患者は、開腹されて肝臓が露出した状態で、対極板20の上に横たわっている。事前に、医療従事者は、表示部41に表示される患者の肝臓の超音波画像を観ながら、切除対象の腫瘍TUの位置や、その周りの血管の位置を確認して、太い血管を回避できるよう、切除対象部位Sまでの切除器具10の挿入経路や、切除対象部位Sの切開経路を定める。
そして、まず、医療従事者によって、切除対象部位Sの近くまで切除器具10の先端を挿入できるよう、メスMで生体組織BTの表面に、例えば直線状の、切り込みIが入れられる(
図5(a))。その後、切り込みIは、医療従事者によって開かれ、それにより、その奥にある切除対象部位Sが露出される。ただし、腫瘍TUがもともと生体組織BTの表面に近い位置にある場合は、切り込みは不要である。
【0037】
つぎに、操作者による操作される切除器具10が、位置決め部120によって、切除対象部位Sを、切除器具10の軸線方向第1側O1にて位置決めする(位置決め工程、
図5(b)〜
図5(c))。
より具体的に、操作者は、表示部41に表示される画像で切除対象部位Sの位置を確認しながら、位置決め部120の槍部材121を、切除対象部位Sのすぐ手前まで挿す(
図5(b))。このとき、返し121fは閉鎖状態にある。次いで、切除器具10は、槍部材121の先端の返し121fを開放状態にし(
図5(c))、槍部材121を本体部110側(本体軸線方向第2側O2)へ若干引っ込めることにより、板付き管部材122の本体軸線方向第1側O1の端部(円板)を切り込みIの奥に押し付けて、針122nを生体組織BTの内部に食い込ませる。これにより、本体部110が切除対象部位Sに近づくとともに、槍部材121と板付き管部材122とで生体組織BTの一部を挟み込んで、生体組織BTをロックする。これにより、切除中に切除対象部位Sが切除器具10に対して位置ずれするのが防止される。このとき、切除器具10の各アームブレード210は、
図4(b)の状態にある。
【0038】
つぎに、切除器具10は、本体軸線方向第1側O1へ向かって、切除対象部位Sを含む生体組織BTを、円筒状に切り進めることで、切除対象部位Sの円筒状側面を切開する(円筒状側面切開工程、
図6(a)〜
図7(a))。本例において、切除器具10は、凝固と切開を交互に行いながら、切り進める。
より具体的に、まず、切除器具10は、各凝固刃140に凝固モードの通電を行いながら、回転板115ひいては各アームブレード210を本体軸線Oの周りで回転させることにより、円状に生体組織BTの凝固を行なう(
図6(a))。
つぎに、切除器具10は、各切開刃130をそれぞれの切開刃回転軸線R130の周りで回転させて刃先を本体軸線方向第1側O1に向けることにより、各アームブレード210を
図4(a)の状態にし、これにより、各切開刃130の刃先を凝固刃140よりも本体軸線方向第1側O1に突出させる。その状態で、切除器具10は、各アームブレード210を本体軸線Oの周りで回転させることにより、凝固された組織CTが円状に切開される(
図6(b))。
以降、切除器具10は、位置決め部120を本体軸線方向第2側O2に徐々に引き込むことによって、各アームブレード210の先端を生体組織Tの深部側へと徐々に移動させながら、上述のごとく凝固及び切開を1周ごとに交互に繰り返す(
図6(c)、
図7(a))。ただし、凝固を行う際には、凝固されていない組織が切開刃130によって切開されないよう、事前に、各切開刃130の刃先が凝固刃140の本体軸線方向第1側O1の端部と同じ本体軸線方向位置又はそれよりも本体軸線方向第2側O2に位置するように、切開刃130の刃先の凝固刃140に対する相対位置が調整される。また、この間、切開刃部130Pと凝固刃部140Pは、本体軸線Oからの距離を一定に維持される。このようにして、切除器具10は、凝固による止血を行いながら、切開刃部130Pによって、生体組織の内部を、本体軸線方向第1側O1へ向かって、円筒状に切り進む。切除器具10は、切除対象部位Sの最下位(底部)に到達するまで、これを続ける。
【0039】
つぎに、切除器具10は、本体軸線Oに向かって本体軸線Oに対して垂直な方向に切り進むことで、切除対象部位Sの底面を切開する(底面切開工程、
図7(b))。
具体的に、切除器具10は、位置決め部120の本体軸線方向第2側O2への引き込みを停止し、各切開刃130を切開刃回転軸線R130の周りで90度回転させて刃先を本体軸線O側へ向けることにより、各アームブレード210を
図4(b)の状態にする。さらに、切除器具10は、回転板115ひいては各アームブレード210を本体軸線Oの周りで回転させながら、各アームブレード210をそれぞれの第1アーム部分151の中心軸線C151の周りで徐々に回転させることで、それぞれの先端(ひいては切開刃130及び凝固刃140)を徐々に本体軸線Oに近づけてゆき、ひいては、各アームブレード210を
図4(c)の状態に近づけていく。これにより、切除対象部位Sの底面を、外周側から内周側へと徐々に切り進める。この間も、切除器具10は、凝固刃140により凝固された組織CTが切開刃130によって切開されるように、凝固と切開のタイミング、ならびに、凝固刃140と切開刃130の刃先との相対的な径方向位置を、適宜調整する。
切開刃130及び凝固刃140の先端が本体軸線Oに最も近接し、各アームブレード210が
図4(c)の状態になると、切除対象部位Sの底面の切開が完了し、腫瘍TUを含む切除対象部位Sが円筒状に切開された状態となる(
図7(b))。
【0040】
その後、操作者が切除器具10を手前側(本体軸線第2側O2)に引くことにより、切除された生体組織BTが、残りの生体組織BTから引き抜かれる(引き抜き工程、
図7(c))。
このとき、各アームブレード210は、
図4(c)の状態にある。切除された生体組織BTは、本体軸線方向第2側O2では位置決め部120により保持され、また、外周側では各アームブレード210の第1アーム部分211により保持され、さらに、底面側では各アームブレード210の第2アーム部分212、切開刃130、及び凝固刃140により保持された状態で、残りの生体組織BTから、切り込みIを介して、引き抜かれる。なお、切り込みIが形成された箇所は、生体組織BTが除去されずに残る。
以上のようにして、切除対象部位Sの切除が完了する。
【0041】
なお、上述の例に限らず、切除器具10は、肝臓以外にも、人間又は動物の任意の生体組織を切除するために使用できる。また、切除器具10は、腹鏡手術によって生体組織を切除する際に用いられてもよい。
また、凝固は、切開と並行して行うようにしてもよい。その場合、切開刃130の刃先が凝固刃140よりも僅かに突出させた状態を維持しながら凝固刃140により凝固を行うようにすれば、切開刃130が、凝固された組織CTに押し付けられながら本体軸線Oの周りで回転される間、凝固された組織CTを切開することができる。
また、切開用ブレード211は、切開刃130が刃先の向きを変えられないように構成されていてもよい。その場合、切開用ブレード211は、例えば、刃先が本体軸線方向第1側O1を向いた状態でアーム部材150の本体軸線方向第1側O1の端部に取り付けられた切開刃130と、刃先が本体軸線Oに垂直かつ本体軸線O側(内周側)を向いた状態でアーム部材150の本体軸線方向第1側O1の端部に取り付けられた切開刃130とを、別々に有していてもよい。この場合、刃先が本体軸線方向第1側O1を向いた切開刃130によって切除対象部位Sの円筒状側面を切開し(円筒状側面切開工程)、刃先が本体軸線Oに垂直かつ本体軸線O側(内周側)を向いた切開刃130によって切除対象部位Sの底面を切開する(底面切開工程)とよい。これにより、切開刃130が刃先の向きを変えられるように構成した場合に比べて、切開用ブレード211を駆動するための機構を簡単化できる。
【0042】
ここで、本実施形態の切除器具10の効果を説明する。
上述のように、従来では、生体組織を切除する際、外科医が、切開された部位を開いて出血等の状況を随時確認しながら、メスで露天掘り式に切開するのが一般的であった(
図25)。しかし、従来の手法においては、外科医にとって切開作業が煩雑であり、また、切開中に生体組織がメスに対して位置ずれする結果、所期した切除対象部位とは異なる部位を切除してしまうおそれがあった。
一方、本実施形態の切除器具10は、生体組織を切除する際、切開刃部130Pが、生体組織の内部を、本体軸線Oの周りで回転されながら本体軸線方向第1側O1へ向かうように、切り進むことが可能に構成されているので、外科医は、切開された部位を開いて出血等の状況を随時確認しながらメスで切り進める必要は無く、簡単に切除を行うことができる。
また、本実施形態の切除器具10は、生体組織を本体部110に対して本体軸線方向第1側O1にて位置決めするように構成された位置決め部120を備えているので、切除する間、生体組織が切除器具10に対して位置ずれするのを防止でき、ひいては、所期した切除対象部位とは異なる部位を切除してしまうおそれを回避できる。よって、切除対象部位を精度よく切除することができる。
なお、一般的に、肝臓は、他の臓器に比べて、非常に柔らかいため、切開される際に動きやすいものである。その上、肝臓は、血管が多く、太い血管もあるため、もともと切開される際に出血しやすく、また、切開される際に動くことによって太い血管が誤って切開されれば、大出血に繋がるおそれがある。そのため、特に、肝臓の一部を切除する場合、位置決め部120によって切除対象部位の位置ずれを防止することは、非常に有利なことである。
【0043】
また、従来の露天掘り式に切除する手法においては、切除対象部位を含む生体組織が、略逆三角形状に切除されるため、切除対象部位以外の正常な生体組織の切除量が多くなる。
一方、本実施形態の切除器具10は、切開刃部130Pが、生体組織の内部を、本体軸線Oからの距離を一定に維持しつつ、本体軸線Oの周りで回転されながら本体軸線方向第1側O1へ向かって切り進み、その後、本体軸線Oに向かって切り進むことが可能に構成されており、ひいては、生体組織を円筒状に切除するように構成されているので、従来の露天掘り式に切除する場合に比べて、切除対象部位以外の正常な生体組織の切除量を低減できる。
【0044】
また、本実施形態の切除器具10は、生体組織を切除する際、凝固と切開とを交互に行いながら切り進めることが可能に構成されているので、止血を行いながら切開することができ、出血量を低減できる。
なお、上述のように、一般的に肝臓は、他の臓器に比べて、血管が多いため、もともと切開される際に出血しやすい。そのため、特に、肝臓の一部を切除する場合、止血しながら切り進めることは非常に有利なことである。
【0045】
また、本実施形態の切除器具10は、生体組織の切開が完了した後、当該生体組織は、位置決め部120と切開刃部130Pとによって保持された状態となり、操作者が切除器具10を手前に引くだけで、当該生体組織が、残りの生体組織から引き抜かれることが可能に構成されている。そのため、操作者は、簡単に、切開された生体組織を引き抜くことができる。
【0046】
〔第2実施形態〕
図8〜
図9は、本発明の第2実施形態に係る切除器具10を説明するための図面である。以下、第1実施形態とは異なる点を中心に、第2実施形態に係る切除器具10について説明する。
第2実施形態の切除器具10は、第1実施形態のアームブレード210に代えて、円筒ブレード220を備えている点が、第1実施形態とは異なる。本体部110と、位置決め部120との構成は、第1実施形態のものと同様である。なお、以下では、円筒ブレード220を、単に「ブレード220」ということがある。
【0047】
図8(a)及び
図8(b)は、第2実施形態に係る切除器具10を、それぞれ別々の状態で示している。
図8の例の円筒ブレード220は、切開と凝固との両方が可能にされたブレードである。円筒ブレード220は、円筒部材160と、1つ又は複数(図の例では2つ)の第1切開刃131と、1つ又は複数(図の例では2つ)の凝固刃140と、1つ又は複数(図の例では1つ)の第2切開刃132とを、有している。
円筒部材160は、回転板115と連動して本体軸線Oの周りで回転されるように、その軸線方向第2側O2の端部が、本体部110の本体軸線方向第1側に取り付けられている。円筒部材160は、その中心軸線が本体軸線O上に位置している。
第1切開刃131は、円筒部材160の本体軸線方向第1側O1の端縁部161に設けられている。ここで、「円筒部材160の本体軸線方向第1側O1の端縁部161」とは、円筒部材160の本体軸線方向第1側O1の円環状の端縁(端面)及びその近傍部分を指す。第1切開刃131は、本例において、鋭利な刃先を有しており、その刃先が本体軸線方向第1側O1を向いている。
第1切開刃131は、本例では、円筒部材160に対して、向きが変えられないように構成されているが、例えば第1実施形態において説明した切開刃130のように、円筒部材160に対して、向きが変えられるように構成されてもよい。
凝固刃140は、凝固モードの通電が可能にされた電気メスとして構成されており、円筒部材160の本体軸線方向第1側O1の端縁部161に設けられている。
本例において、第1切開刃131の刃先と凝固刃140とは、互いに軸線方向に相対移動できるように構成されている。より具体的に、本例においては、凝固刃140は円筒部材160に固定されているのに対し、第1切開刃131は、図示しない機構によって、円筒部材160に対して軸線方向に往復移動可能に構成されている。
図8の例において、第1切開刃131は、刃先が円筒部材160の本体軸線方向第1側O1の端面よりも本体軸線方向第1側O1側に突出した状態(
図8(a))と、刃先が円筒部材160の本体軸線方向第1側O1の端面と同じ本体軸線方向位置又はそれよりも本体軸線方向第2側O2側に引っ込んだ状態(
図8(b))との間で、軸線方向に往復移動可能に構成されている。ただし、第1切開刃131の刃先と凝固刃140とは、本例以外の任意の構成によって、互いに軸線方向に相対移動可能にされてよい。
【0048】
第2切開刃132は、円筒部材160の内部に配置されているとともに、円筒部材160の本体軸線方向第1側O1の端部の近傍で円筒部材160の径方向内側へ突出可能に構成されている。より具体的には、例えば、第2切開刃132は、円筒部材160の径方向内側へ突出しておらず、その本体軸線方向第1側O1の端部が円筒部材160の内部に位置している状態(
図8(a))と、円筒部材160の本体軸線方向第1側O1の端部の近傍で円筒部材160の径方向内側へ突出した状態(
図8(b))との間で、変位可能に構成されている。第2切開刃132は、径方向内側へ突出した状態(
図8(b))において、その本体軸線方向第1側O1の端部が、円筒部材160の内部に位置していてもよいし、あるいは、円筒部材160よりも本体軸線方向第1側O1に位置していてもよい。
例えば、第2切開刃132は、例えば板状又は棒状のばね部材から構成され、自然状態においてその本体軸線方向第1側O1の部分が径方向内側へ突出するような曲がり癖が付いている。第2切開刃132は、径方向内側へ突出していないとき(
図8(a))、例えば、円筒部材160とその内周側に配置された他の部材(例えば、円筒部材160と同軸状に配置された他の円筒部材)との間に介在することによって、自身の曲がり癖に反して本体軸線方向に延在するようにされる。そして、第2切開刃132がその状態から円筒部材160の径方向内側へ突出する際には、円筒部材160とその内周側の他の部材との間から本体軸線方向第1側O1へと繰り出されることにより、その繰り出された部分が、自身の曲がり癖に依って、湾曲されるとともに、円筒部材160の径方向内側へ突出するように延在するようになる。
ただし、第2切開刃132は、これとは異なる構成によって、円筒部材160の本体軸線方向第1側O1の端部の近傍で円筒部材160の径方向内側へ突出可能に構成されてもよい。
第1切開刃131と第2切開刃132は、切開刃部130Pを構成している。第1切開刃131と第2切開刃132は、それぞれ、本例では鋭利な刃先を有する物理的な刃物として構成されているが、これに加えて、又はこれに代えて、切開モードの通電が可能にされた電気メスとして構成されてもよい。
また、本例において、第2切開刃132は、凝固モードの通電が可能にされた電気メスとして構成された凝固刃140でもある。
【0049】
つぎに、
図9を参照しながら、本実施形態の切除器具10の動作の一例を説明する。本実施形態の切除器具10の動作は、基本的に、第1実施形態のものと同様に、位置決め工程、円筒状側面切開工程、底面切開工程、及び引き抜き工程を、この順番に行うものである。本例において、切除器具10は、凝固と切開を交互に行いながら、切り進める。
第1実施形態と同様に位置決め工程まで行った後、円筒状側面切開工程において、切除器具10は、第2切開刃132が径方向内側へ突出していない状態(
図8(a))で、回転板115ひいては円筒ブレード220が回転される。これにより、第1切開刃131が、生体組織BTの内部を、本体軸線Oの周りで回転されながら本体軸線方向第1側O1へ向かうように、切り進む。より具体的には、第1切開刃131が、生体組織BTの内部を、本体軸線Oからの距離を一定に維持しつつ、本体軸線Oの周りで回転されながら本体軸線方向第1側O1へ向かって、円筒状に切り進む(
図9(a))。この間、切除器具10は、例えば、位置決め部120を本体軸線方向第2側O2に徐々に引き込むことによって、円筒ブレード220の先端を生体組織Tの深部側へと徐々に移動させながら、凝固刃140による凝固と第1切開刃131による切開とを1周ごとに交互に繰り返す。凝固を行う際には、事前に、
図8(b)のように、第1切開刃131の刃先が凝固刃140の本体軸線方向第1側O1の端部と同じ本体軸線方向位置又はそれよりも本体軸線方向第2側O2に位置するように、凝固刃140に対する切開刃130の刃先の相対位置が調整される。切開を行う際には、事前に、
図8(a)のように、切開刃130の刃先が凝固刃140よりも本体軸線方向第1側O1に突出するように、凝固刃140に対する切開刃130の相対位置が調整される。このようにして、切除器具10は、凝固による止血を行いながら、切開刃部130Pによって、生体組織の内部を、本体軸線方向第1側O1へ向かって、円筒状に切り進む。切除器具10は、切除対象部位Sの最下位(底部)に到達するまで、これを続ける。
【0050】
つぎに、底面切開工程において、切除器具10は、位置決め部120の本体軸線方向第2側O2への引き込みを停止し、回転板115ひいては円筒ブレード220を本体軸線Oの周りで回転させながら、第2切開刃132を徐々に円筒部材160の径方向内側へ突出させて、第2切開刃132の先端を徐々に本体軸線Oに近づけてゆく。これにより、切除対象部位Sの底面を、外周側から内周側へと徐々に切り進める。この間も、切除器具10は、第2切開刃132は、凝固モードの通電と切開モードの通電が適宜切り替えられることにより、凝固ひいては止血を行いながら切開を行う。
第2切開刃132の先端が本体軸線Oに最も近接した状態になると、切除対象部位Sの底面の切開が完了し、腫瘍TUを含む切除対象部位Sが円筒状に切開された状態となる(
図9(b))。
【0051】
つぎに、引き抜き工程において、円筒ブレード220は、
図8(b)の状態にある。そして、切開された生体組織BTは、本体軸線方向第2側O2では位置決め部120により保持され、また、外周側では円筒部材160により保持され、さらに、底面側では円筒ブレード220の第1切開刃131により保持された状態で、残りの生体組織BTから引き抜かれる。
以上のようにして、切除対象部位Sの切除が完了する。
【0052】
第2実施形態の切除器具10によれば、第1実施形態の効果に加えて、切除器具10の構造を簡単化することが可能になる。
【0053】
〔第3実施形態〕
図10〜
図13は、本発明の第3実施形態に係る切除器具10を説明するための図面である。以下、第1実施形態とは異なる点を中心に、第3実施形態に係る切除器具10について説明する。
第3実施形態の切除器具10は、第1実施形態のアームブレード210に代えて、湾曲ブレード230を備えている点が、第1実施形態とは異なる。第3実施形態の切除器具10は、生体組織を円筒状ではなく球状に切除するように構成されている。なお、以下では、湾曲ブレード230を、単に「ブレード230」ということがある。
なお、ここで、「球状」とは、いわゆる数学的な球の形状に限定されず、たまご形状や楕円体形状等も含んでおり、その軸線方向の一方側に向かうにつれて、外径が徐々に増大し、その後、外径が徐々に減少するような、あらゆる形状を、包括的に指している。
位置決め部120の構成は、第1実施形態のものと同様としてよい。ただし、
図11において、位置決め部120の構成の詳細の図示は、省略している。本体部110の構成は、以下に述べる点を除いては、第1実施形態のものと同様でよい。
【0054】
本実施形態の切除器具10は、1つ又は複数(
図10の例では4つ)の湾曲ブレード230を備えている。湾曲ブレード230は、本体部110の本体軸線方向第1側O1において、位置決め部120の外周側に取り付けられている。各湾曲ブレード230は、本体軸線Oの周りで、回転可能に構成されている。
図10の例において、切除器具10は、切開のみを行うように構成されており、凝固を行うようには構成されていない。各湾曲ブレード230の本体軸線方向第1側O1の端部には、切開刃130が設けられている。湾曲ブレード230のうち本体軸線方向第1側O1の端部のみが被覆されておらず、残りの部分が絶縁性の膜により被覆されている。
【0055】
図11(a)は、
図10の切除器具の一部を示す本体軸線方向の断面図であり、
図11(b)は、
図11(a)に示すばね部材が自然状態にあるときの様子を示す斜視図である。湾曲ブレード230は、それぞれ、ばね部材170と、ばね部材170の本体軸線方向第1側の端部に設けられた切開刃130と、を有する。すなわち、本例において、切除器具10が備える各湾曲ブレード230は、いずれも切開用ブレードとして構成されている。切除器具10が備える各湾曲ブレード230の1つ又は複数(本例では4つ)の切開刃130は、切開刃部130Pを構成する。本例において、切開刃130は、鋭利な刃先を有しており、物理的に生体組織を切開するように構成されている。図の例では、切開刃130が、ばね部材170の一部を構成している。より具体的には、ばね部材170のうち、本体軸線方向第1側O1の、絶縁性の膜により被覆されていない端部が、切開刃130として構成されている。ただし、切開刃130は、ばね部材170とは別体に設けられてもよい。
ばね部材170は、本例では板状に構成されているが、それ以外にも、例えば棒状など、任意の形状に形成されていてよい。
図11(a)に示すように、ばね部材170は、本体部110の内部に収納されているとともに、本体軸線Oの周りで回転されながら本体軸線方向第1側O1へ繰り出されることが可能にされている。より具体的に、本体部110は、その本体軸線方向第1側O1の部分が略円筒状に構成された円筒部110cを構成しており、円筒部110cの内部に、ばね部材170を収容するばね部材用溝119と、めねじ116と、めねじ116の内部に収容されたモータ118及びギア117と、を有している。モータ118は、ばね部材170の本体軸線方向第2側O2の端部から構成される取付部172と固定されている。モータ118が回転されることにより、各湾曲ブレード230が本体軸線Oの周りで回転される。ギア117は、その外周面のおねじが円筒部110cのめねじ116と噛み合った状態で、モータ118の回転に伴い、本体軸線方向に往復移動可能にされている。ギア117の本体軸線方向の移動に連動して、モータ118及びばね部材170も、本体軸線方向に移動される。
図11(b)に示すように、ばね部材170は、その本体軸方向第1側O1の部分が、自然状態において本体軸方向第1側O1に凸に湾曲するような曲がり癖を有する湾曲部171である。ばね部材170は、このような曲がり癖が付いた状態で、円筒部110cのばね部材用溝119に収容されている。一方、ばね部材用溝119は、その本体軸方向第1側O1の端部において、本体軸方向第1側O1に向かうにつれて徐々に外周側へ向かって延在している。
ばね部材170とばね部材用溝119とが上記のように構成されているので、ばね部材170は、
図11(a)に示すように、本体部110から本体軸線第1側へ繰り出されると、その繰り出された部分(湾曲部171)が、本体軸線方向第1側O1に向かうにつれて、本体軸線Oから徐々に遠ざかり(すなわち徐々に外周側へ向かい)、その後、本体軸線Oに徐々に近づく(すなわち徐々に内周側へ向かう)ように、湾曲した形状となるように構成されている。また、このとき、本体部110から繰り出されたばね部材170の湾曲部171は、その最大外径が、円筒部110cの外径よりも大きくなるようにされている。言い換えれば、本体部110から繰り出されたばね部材170の湾曲部171のうち、本体軸線Oから最も離れた部分の、本体軸線Oからの径方向距離が、円筒部110cの外表面の、本体軸線Oからの径方向距離よりも、長くなるようにされている。
【0056】
つぎに、
図12〜
図13を参照しながら、本実施形態の切除器具10の動作の一例を説明する。本実施形態の切除器具10の動作は、位置決め工程、球状表面切開工程、及び引き抜き工程を、この順番に行うものである。すなわち、本実施形態では、第1実施形態の円筒状側面切開工程および底面切開工程に代えて、球状表面切開工程を行う。
図12(a)〜
図12(c)に示すとおり、本実施形態において、位置決め工程までの動作は、第1実施形態と同様である。
【0057】
つぎに、球状表面切開工程において、切除器具10は、本体軸線方向第1側O1へ向かって、切除対象部位Sを含む生体組織BTを、球状に切り進めることで、切除対象部位Sの球状表面を切開する(球状表面切開工程、
図13(a)〜
図13(b))。
より具体的に、切除器具10は、位置決め部120を本体軸線方向第2側O2に徐々に引き込むことによって、各湾曲ブレード230の先端を生体組織Tの深部側へと徐々に移動させながら、本体部110の内部のモータ118を駆動させることによって、各湾曲ブレード230を、本体軸線Oの周りで回転させるとともに、徐々に本体部110から本体軸線第1側O1へ繰り出す。その間、各湾曲ブレード230の切開刃130は、生体組織BTの内部を、本体軸線Oの周りで回転されながら本体軸線方向第1側O1へ向かうように、切り進むとともに、本体軸線Oから徐々に遠ざかり、その後、本体軸線Oに徐々に近づくように移動する(
図13(a))。
各湾曲ブレード230の先端どうしが切除対象部位Sの底部において突き合った状態になると、切除対象部位Sの球状表面の切開が完了し、腫瘍TUを含む切除対象部位Sが球状に切開された状態となる(
図13(b))。
【0058】
つぎに、引き抜き工程において、切開された生体組織BTは、本体軸線方向第2側O2では位置決め部120により保持され、また、側面側では湾曲ブレード230のばね部材170の湾曲部171により保持され、さらに、底面側では湾曲ブレード230の切開刃130により保持された状態で、残りの生体組織BTから引き抜かれる。
以上のようにして、切除対象部位Sの切除が完了する。
【0059】
第3実施形態の切除器具10によれば、第1実施形態の効果に加えて、切除対象部位以外の正常な生体組織の切除量をさらに低減できる。
【0060】
なお、第3実施形態において、切除器具10が備える複数の湾曲ブレード230のうち少なくとも1つを、凝固用ブレードとして構成してもよい。その場合、凝固用ブレードとして構成された湾曲ブレード230は、ばね部材170と、ばね部材170の本体軸線方向第1側の端部に設けられた凝固刃140とを、有する。この場合、切除器具10は、凝固と切開とを交互に行いながら切り進めることが可能に構成されてもよいし、あるいは、凝固と切開とを並行して(すなわち同時に)行いながら切り進めることが可能に構成されてもよい。凝固と切開との切り換えは、自動で行われてもよいし、あるいは、例えば操作部111を介して手動で行われてもよい。
【0061】
〔変形例〕
本発明の切除器具10は、上述した各例のものに限られず、様々な変形例が可能である。以下、本発明の変形例について、
図14〜
図24を参照しながら説明する。
【0062】
例えば、上述した第1実施形態〜第3実施形態において、切除器具10は、
図14の第1変形例のように、切除器具10が備える1つ又は複数の切開刃130のうち少なくとも1つが、凝固モードの通電が可能にされた凝固刃140としての機能も有してもよい。その場合、凝固刃140としての機能も有する切開刃130は、鋭利な刃先を持つ物理的な刃として構成されてもよいし、かつ/又は、切開モードの通電が可能にされた電気メスとして構成されてもよい。
なお、
図14では、第1実施形態におけるアームブレード210に設けられた切開刃130が凝固刃140としての機能も有している場合を示しているが、第2実施形態における円筒ブレード220に設けられた切開刃130や、第3実施形態における湾曲ブレード230に設けられた切開刃130も、
図14の例と同様に、凝固刃140としての機能も有してよい。
【0063】
また、上述した第1実施形態〜第3実施形態において、切除器具10又はこれを備える手術支援システム1は、
図15〜
図16に示す第2変形例〜第4変形例のように、切開刃130及び/又は凝固刃140の周りに液体を供給できるように構成されたイリゲーション部180と、液体を吸引できるように構成されたドレーン部190と、をさらに備えてもよい。液体としては、生理食塩水が好ましい。このとき、切開刃130は、電気メスとして構成されたものであると好ましいが、電気メスとして構成されていない物理的な刃として構成されたものであってもよい。
イリゲーション部180によって切開刃130及び/又は凝固刃140の周りに生理食塩水を灌流しながら電気メスの通電を行えるようにすることで、切開刃130及び/又は凝固刃140の周囲の温度を適切に保つことができ、ひいては、焦げ付きを予防し、広範囲の加熱が可能になる。
ドレーン部190によって切開刃130及び/又は凝固刃140の近傍の液体を吸引できるようにすることで、出血時の湿潤度の調整が可能になる。出血により組織深部において切開刃130及び/又は凝固刃140の周辺が血液で満たされると、通電しても温度が上がりきらず、切開、凝固ができなくなる可能性があるため、出血時の湿潤度の調整は重要である。イリゲーション部180とドレーン部190とを組み合わせて使うことで、切開刃130及び/又は凝固刃140の周囲の組織の洗浄が可能になる。
なお、
図15に示す第2変形例では、第1実施形態における切除器具10又はこれを備える手術支援システム1に、イリゲーション部180とドレーン部190とが搭載されている。より具体的に、
図15の例において、イリゲーション部180は、アームブレード210のアーム部材150の外表面に固定されたパイプからなるイリゲーション用パイプ181と、イリゲーション用パイプ181を介して切開刃130又は凝固刃140に液体を供給する液体供給装置(図示せず)と、を有する。ドレーン部190は、アームブレード210のアーム部材150を構成するパイプに形成した貫通孔からなるドレーン用穴191と、ドレーン用穴191から液体を吸引する吸引機(図示せず)と、を有する。
なお、
図3の例は、イリゲーション部180とドレーン部190とが搭載されている例ではないが、参考のため、
図3には、イリゲーション部180とドレーン部190が搭載された場合に本体部110の内部に設けられ得る構成として、イリゲーション用接続口183とドレーン用接続口194とを、それぞれ点線により示している。イリゲーション用接続口183は、イリゲーション用パイプ181への液体の供給口として構成されており、液体供給装置(図示せず)と接続されるように構成されている。ドレーン用接続口194は、ドレーン用穴191から吸引された液体の吐出口として構成されており、吸引機(図示せず)と接続されるように構成されている。
イリゲーション部180の液体供給装置(図示せず)と、ドレーン部190の吸引機(図示せず)は、切除器具10とは別体に設けられてもよいし、あるいは、切除器具10と一体に設けられてもよい。
図15の例に代えて、
図16(a)に示す第3変形例のように、第1実施形態におけるアームブレード210のアーム部材150を構成するパイプの内部に、液体供給装置(図示せず)と接続されたイリゲーション用パイプ181と、吸引機(図示せず)と接続されたドレーン用パイプ192とを、収容してもよい。
あるいは、
図16(b)に示す第4変形例のように、第1実施形態におけるアームブレード210のアーム部材150を構成するパイプの内部に、仕切板201を設けて、液体供給装置(図示せず)と接続されたイリゲーション用流路182と、吸引機(図示せず)と接続されたドレーン用流路193とを、形成してもよい。
また、第2実施形態や第3実施形態における切除器具10又はこれを備える手術支援システム1にも、
図15〜
図16の各例と同様に、イリゲーション部180及びドレーン部190を搭載してもよい。
イリゲーション部180とドレーン部190との動作の切り替えは、自動で行われてもよいし、あるいは、操作部111等によって手動で行われてもよい。
【0064】
また、上述した第1実施形態〜第3実施形態において、切除器具10は、
図17に示す第5変形例のように、位置決め部120として、ブレード210、220、230の外周側で、本体部110に取り付けられたものを用いてもよい。この場合、位置決め部120は、位置決め工程において、ブレード210、220、230の外周側で生体組織BTを位置決めする。
図17の例において、位置決め部120は、ブレード210の外周側に配置された1つ又は複数(図の例では4つ)の槍部材121を有している。ただし、位置決め部120は、
図17の例とは異なる構成を有していてもよい。
【0065】
また、上述した第1実施形態〜第3実施形態において、切除器具10は、
図18に示す第6変形例のように、ロボットアームにより支持されるように構成されたアーム支持タイプのものであってもよい。すなわち、この場合、切除器具10は、ロボットにより操作される。この場合、切除器具10を備えた手術支援システム1は、全自動で動作するように構成されてもよい。その場合、例えば、手術支援システム1は、撮像部42により撮像された超音波画像等の画像データに基づいて、患者の体内の状況を把握しながら、切除器具10を操作して切り進むようにされる。
【0066】
また、上述した第1実施形態〜第3実施形態において、切除器具10又はこれを備える手術支援システム1は、切開刃130及び/又は凝固刃140の温度および切除抵抗等を監視し、出血の有無や切れ具合を確認しながら切り進めるように構成されてもよい。
【0067】
図19〜
図24は、本発明の切除器具10の第7変形例を説明するための図面である。
図19〜
図24に示す第7変形例は、上述した第1実施形態の一変形例である。以下、この第7変形例について、第1実施形態とは異なる点を中心に説明する。第7変形例は、切開刃130の構成のみが、第1実施形態とは異なる。
第7変形例において、切除器具10が備える1つ又は複数(図の例では、2つ)の切開刃130は、それぞれ、その刃先が、本体軸線方向第1側O1かつ本体軸線Oに向かう側(内周側)を向いている。ここで、切開刃130に関し、「その刃先が、本体軸線方向第1側O1かつ本体軸線Oに向かう側(内周側)を向いている」とは、言い換えれば、切開刃130が、アーム部材150側から当該切開刃130の刃先(先端)に至るまでにわたって、本体軸線方向第1側O1に向かうにつれて徐々に本体軸線O側(内周側)に向かうように、延在することを、指す。
また、第7変形例において、各切開刃130は、それぞれ、その刃先が尖った形状に形成されている。ここで、切開刃130に関し、「その刃先が尖った形状」としては、任意の形状でよいが、例えば、先細り形状(例えば円錐形状)、又は、棒形状(例えば円柱形状や角柱形状)が、好適である。
図19〜
図24において、各切開刃130は、円錐状に形成されている。
また、第7変形例において、各切開刃130は、それぞれ、電気メスとして構成されたものである。各切開用ブレード211は、切開刃130の刃先近傍部分を除き、絶縁性の膜(図示せず)によって被覆されている。切開用ブレード211のうち、被覆されていない部分が電気メスとして機能することとなる。切開刃130の刃先近傍部分のみを絶縁性の膜によって被覆せずに露出させることで、切開刃130に対して切開モードの通電が行われるときに、切開刃130の切開部分(刃先近傍部分)のエネルギー密度を向上できる。ここで、切開用ブレード211における「切開刃130の刃先近傍部分」とは、切開刃130のうちの刃先を含む一部分、切開刃130の全体、又は、切開刃130の全体かつ切開用ブレード211のアーム部材150のうち切開刃130の近傍部分、のいずれかを指す。
【0068】
第7変形例においては、上述した第1実施形態と同様に、各アームブレード210のアーム部材150(ひいては、アーム部材150に設けられた切開刃130や凝固刃140)が、それぞれ第1アーム部分151の中心軸線C151の周りで回転(自転)可能に構成されている。それにより、各アームブレード210は、
図4(a)の例のように、それぞれの第2アーム部分152が本体軸線Oを中心とするとともに各第1アーム部分151の中心軸線C151を通る1つの共通の円に沿って延在している状態と、
図4(c)の例のように、それぞれの第2アーム部分152が本体軸線Oに向かって(内周側に向かって)突出した状態との間で、変位可能にされている。よって、本例の切除器具10は、第1実施形態と同様に、円筒状側面切開工程(
図22(a))と底面切開工程(
図22(b))とを行うことができるようにされている。
ただし、上述した第1実施形態においては、切開刃130が、アーム部材150に対して固定された切開刃回転軸線R130の周りで回転可能に構成されている(
図4)のに対し、第7変形例においては、各切開刃130が、アーム部材150に対して位置及び向きが固定されており、すなわち、切除器具10には、アーム部材150に対して切開刃130を切開刃回転軸線R130の周りで回転させる駆動機能が設けられていない。そのため、第7変形例においては、円筒状側面切開工程(
図22(a))と底面切開工程(
図22(b))とにおいて、アーム部材150に対する切開刃130の回転(向きの変更)は行われず、切開刃130の刃先は、常に、本体軸線方向第1側O1かつ本体軸線Oに向かう側(内周側)を向いた状態に維持される。
【0069】
図22(a)及び
図23は、第7変形例の切除器具10が円筒状側面切開工程を行う様子を概略的に示している。
図22(a)は、
図6(c)に対応する図面である。
図23は、第7変形例の切除器具10における切開刃130が、円筒状側面切開工程において切り進む様子を、本体軸線Oに沿った断面により、概略的に示している。本例において、切開刃130は、その刃先が、本体軸線方向第1側O1かつ本体軸線Oに向かう側(内周側)を向いていることから、円筒状側面切開工程において、各アームブレード210が本体軸線Oの周りで回転される間、切開刃130は、本体軸線方向第1側O1に向かって切り進むこと(
図23(a))だけでなく、本体軸線方向第2側O2に向かって切り進むこと(
図23(b))も可能である。よって、本例の切除器具10は、円筒状側面切開工程において、例えば操作部111(
図2)での操作に応じて、切開刃130によって、本体軸線方向の第1側O1及び第2側O2のいずれの側に切り進むかを選択できるように構成されることが可能となる。本体軸線方向の第1側O1に切り進む場合には、切除器具10は、生体組織BTをロックしている位置決め部120を本体軸線方向第2側O2に徐々に引き込むことによって、各アームブレード210の先端を生体組織Tの深部側(本体軸線方向第1側O1)へと徐々に移動させると、好適である。逆に、本体軸線方向の第2側O2に切り進む場合には、切除器具10は、生体組織BTをロックしている位置決め部120を本体軸線方向第1側O1に徐々に押し出すことによって、各アームブレード210の先端を生体組織BTの表面側(本体軸線方向第1側O1)へと徐々に移動させると、好適である。なお、本体軸線方向第1側O1に切り進む場合と、本体軸線方向第2側O2に切り進む場合とで、各アームブレード210の本体軸線O周りの回転方向は、同じでもよいし逆でもよい。
【0070】
図22(b)及び
図24は、第7変形例の切除器具10が底面切開工程を行う様子を概略的に示している。
図22(b)は、
図7(b)に対応する図面である。
図24は、第7変形例の切除器具10における切開刃130が、底面切開工程において切り進む様子を、本体軸線Oに対し垂直な断面により、概略的に示している。本例において、切開刃130は、その刃先が、本体軸線方向第1側O1かつ本体軸線Oに向かう側(内周側)を向いていることから、底面切開工程において、切開刃130は、本体軸線O周りの回転方向一方側に切り進むこと(
図24(a))だけでなく、本体軸線O周りの回転方向他方側に切り進むこと(
図24(b))も可能である。よって、本例の切除器具10は、底面切開工程において、例えば操作部111(
図2)での操作に応じて、切開刃130によって、本体軸線O周りの回転方向一方側及び他方側のいずれの側に切り進むかを選択できるように構成されることが可能となる。本体軸線O周りの回転方向一方側に切り進む場合には、切除器具10は、各アームブレード210を本体軸線O周りの回転方向一方側に回転させると、好適である。逆に、本体軸線O周りの回転方向他方側に切り進む場合には、切除器具10は、各アームブレード210を本体軸線O周りの回転方向他方側に回転させると、好適である。
【0071】
第7変形例において、切除器具10は、円筒状側面切開工程と底面切開工程とにおいて、凝固と切開とを交互に行いながら切り進めることが可能に構成されてもよいし、あるいは、凝固と切開とを並行して(すなわち同時に)行いながら切り進めることが可能に構成されてもよい。凝固と切開との切り換えは、自動で行われてもよいし、あるいは、例えば操作部111を介して手動で行われてもよい。
【0072】
上述した第7変形例によれば、切開刃130の刃先が、本体軸線方向第1側O1かつ本体軸線Oに向かう側(内周側)を向いているので、アーム部材150に対して切開刃130を切開刃回転軸線R130の周りで回転させる駆動機能が無くても、円筒状側面切開工程(
図22(a))と底面切開工程(
図22(b))とを行うことができる。よって、アーム部材150に対して切開刃130を切開刃回転軸線R130の周りで回転させる駆動機能を用いる第1実施形態に比べて、構造の簡単化や部品点数の低減が可能である。
また、第7変形例によれば、切開刃130の刃先が、本体軸線方向第1側O1かつ本体軸線Oに向かう側(内周側)を向いているので、円筒状側面切開工程において、本体軸線方向の第1側O1及び第2側O2の双方に切り進むことが可能であり(
図22(a)、
図23)、また、底面切開工程において、本体軸線O周りの回転方向の一方側及び他方側の双方に切り進むことが可能である(
図22(b)、
図24)。よって、切除器具10の利便性を向上できる。
【0073】
なお、
図19〜
図24に示す例では、切除器具10が有する各切開刃130が、上述した構成(刃先が、本体軸線方向第1側O1かつ本体軸線Oに向かう側(内周側)を向いている構成や、その刃先が尖った形状に形成されている構成等)を有しているが、切除器具10が有する各切開刃130のうち少なくとも1つのみが上述した構成を有していてもよい。
また、第7変形例において、切開刃130は、上述のように電気メスとして構成されたものであると好ましいが、電気メスとして構成されていない物理的な刃として構成されたものであってもよい。
また、第7変形例において、切開刃130は、上述のように電気メスとして構成されたものである場合、上述のように、その刃先が尖った形状に形成されていると好適であるが、その刃先が尖った形状に形成されていなくてもよい。
なお、第7変形例においても、
図15〜
図16の各例と同様に、イリゲーション部180及びドレーン部190を搭載してもよい。