【解決手段】抜枠造型機で造型され型合せされた上下鋳型の型ずれ検知装置40は、上下鋳型の側面に光を照射することにより距離を測定する第1距離センサ51と、上下鋳型の側面を第1距離センサ51に走査させるシリンダ46と、走査範囲の測定結果に基づいて上下鋳型の型ずれを検知する制御部48と、を備える。
前記制御部は、前記少なくとも1つの距離センサの高さ位置と測定によって得られた前記距離とを関連付けた前記測定結果に基づいて、前記上下鋳型の型ずれを検知する、請求項1に記載の上下鋳型の型ずれ検知装置。
前記制御部は、前記高さ位置と前記距離とを座標軸とした座標系において、線形回帰分析により前記走査範囲における前記距離の近似線を出力し、前記近似線に基づいて前記上下鋳型の型ずれを検知する、請求項2に記載の上下鋳型の型ずれ検知装置。
前記制御部は、上鋳型に係る前記近似線と前記上下鋳型の見切り面との交点である第1交点と、下鋳型に係る前記近似線と前記見切り面との交点である第2交点と、に基づいて前記上下鋳型の型ずれを検知する、請求項3に記載の上下鋳型の型ずれ検知装置。
前記制御部は、前記走査範囲における測定結果に基づいて前記上下鋳型それぞれの中心座標及び上下方向を回転軸とした上下鋳型のねじれ角度を算出し、前記上下鋳型それぞれの中心座標及び前記上下鋳型のねじれ角度に基づいて前記上下鋳型の型ずれを検知する、請求項1〜8の何れか一項に記載の上下鋳型の型ずれ検知装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の装置及び方法にあっては、型ずれの検知精度を向上させる観点から、改善の余地がある。本技術分野では、上下鋳型の型ずれを精度良く検知することができる装置及び方法が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様は、抜枠造型機で造型され型合せされた上下鋳型の型ずれ検知装置であって、上下鋳型の側面に光を照射することにより距離を測定する少なくとも1つの距離センサと、上下鋳型の側面を少なくとも1つの距離センサに走査させる走査部と、走査部によって走査させた走査範囲の測定結果に基づいて上下鋳型の型ずれを検知する制御部と、を備える。
【0006】
この型ずれ検知装置では、少なくとも1つの距離センサ及び走査部によって上下鋳型の側面が走査される。このため、少なくとも1つの距離センサは、上鋳型の側面形状、下鋳型の側面形状を測定することができる。そして、制御部により、上鋳型の側面形状、下鋳型の側面形状に基づいて上下鋳型の型ずれが検知される。この場合、型ずれ検知装置は、距離センサを固定又は停止させて得られた点データに基づいて型ずれを検知する場合と比べて、例えば上下鋳型が傾いている場合や鋳型側面が荒れている場合であっても、型ずれを検知することができる。よって、この型ずれ検知装置は、上下鋳型の型ずれを精度良く検知することができる。
【0007】
一実施形態においては、制御部は、少なくとも1つの距離センサの高さ位置と測定によって得られた距離とを関連付けた測定結果に基づいて、上下鋳型の型ずれを検知してもよい。この場合、型ずれ検知装置は、距離センサの光出射方向の距離と、高さ方向とを座標軸とする二次元平面において上下鋳型の側面形状を把握することができる。
【0008】
一実施形態において、制御部は、高さ位置と距離とを座標軸とした座標系において、線形回帰分析により走査範囲における距離の近似線を出力し、近似線に基づいて上下鋳型の型ずれを検知してもよい。この場合、型ずれ検知装置は、鋳型側面が荒れている場合や上下鋳型が傾いている場合に検知精度が低下することを抑制することができる。
【0009】
一実施形態において、制御部は、上鋳型に係る近似線と上下鋳型の見切り面との交点である第1交点と、下鋳型に係る近似線と見切り面との交点である第2交点と、に基づいて上下鋳型の型ずれを検知してもよい。この場合、型ずれ検知装置は、例えば上下鋳型を搬送する台車が傾いた場合などであっても、見切り面における上下鋳型の端部を精度良く把握して、上下鋳型の型ずれを検知することができる。
【0010】
一実施形態において、制御部は、第1交点と第2交点との差分に基づいて上下鋳型の型ずれを検知してもよい。この場合、型ずれ検知装置は、差分という1つのパラメータを用いて簡易に上下鋳型の型ずれを検知することができる。
【0011】
一実施形態において、制御部は、走査範囲における測定結果を履歴として記憶部に記憶してもよい。この場合、型ずれ検知装置は、前回差分に基づいて型ずれを検知したり、傾向を把握するためのデータを蓄積したりすることができる。
【0012】
一実施形態において、制御部は、差分と前回差分との比較結果に基づいて、上下鋳型の型ずれを検知してもよい。この場合、型ずれ検知装置は、所定の判定閾値でなく、前回差分との差で型ずれを検知することができる。
【0013】
一実施形態において、制御部は、差分と所定閾値との比較結果に基づいて、上下鋳型の型ずれを検知してもよい。
【0014】
一実施形態において、制御部は、走査範囲における測定結果に基づいて上下鋳型それぞれの中心座標及び上下方向を回転軸とした上下鋳型のねじれ角度を算出し、上下鋳型それぞれの中心座標及び上下鋳型のねじれ角度に基づいて上下鋳型の型ずれを検知してもよい。この場合、型ずれ検知装置は、上下鋳型の中心座標のずれだけでなく、回転方向のずれを検知することができる。
【0015】
一実施形態において、制御部は、上下鋳型それぞれの中心座標及び上下鋳型のねじれ角度を履歴として記憶部に記憶してもよい。この場合、型ずれ検知装置は、上下鋳型の中心座標の変化の傾向や上下鋳型のねじれ角度の変化の傾向を把握するためのデータを蓄積することができる。
【0016】
一実施形態において、型ずれ検知装置は、制御部によって型ずれが検知された場合には異常を報知する報知部をさらに備えてもよい。この場合、型ずれ検知装置は、異常を作業員などに報知することができる。
【0017】
一実施形態において、制御部は、型ずれが検知された場合には異常信号を他の装置へ出力してもよい。この場合、型ずれ検知装置は、他の装置へ迅速に異常を報知することができる。
【0018】
一実施形態においては、上下鋳型は、第1側面及び第2側面を有し、少なくとも1つの距離センサは、第1側面に光を照射する第1距離センサと、第1側面に光を照射する第2距離センサと、第2側面に光を照射する第3距離センサとを含み、走査部は、第1側面を第1距離センサ及び第2距離センサに走査させ、第2側面を第3距離センサに走査させてもよい。この場合、複数箇所の走査結果に基づいて型ずれを検知することができるので、型ずれ検知装置は、上下鋳型の型ずれを更に精度良く検知することができる。
【0019】
本開示の他の側面は、抜枠造型機で造型され型合せされた上下鋳型の型ずれ検知方法であって、上下鋳型の側面に光を照射することにより距離を測定する少なくとも1つの距離センサに、上下鋳型の側面を走査させるステップと、走査範囲の測定結果に基づいて上下鋳型の型ずれを検知するステップと、を含む。
【0020】
この型ずれ検知方法は、上述した型ずれ検知装置と同一の効果を奏する。
【発明の効果】
【0021】
本開示の種々の態様によれば、上下鋳型の型ずれを精度良く検知することができる装置及び方法が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照して、例示的な実施形態について説明する。なお、以下の説明において、同一又は相当要素には同一符号を付し、重複する説明は繰り返さない。
【0024】
(型ずれ検知装置の構成)
図1は、一実施形態に係る型ずれ検知装置を示す平面概要図である。
図2は、
図1におけるA−A矢視図である。
図3は、
図1におけるB−B矢視図である。図中において、XY方向が水平方向、Z方向が鉛直方向(上下方向)である。
【0025】
図1に示される抜枠造型機1は、鋳型砂(本実施形態では生型砂)を用いて上下鋳型を造型した後、該上下鋳型を型合わせし、その後、該上下鋳型を上下鋳型から抜き出し、上下鋳型だけの状態で造型機から搬出される方式の鋳型造型機である。
【0026】
上下鋳型とは、上鋳型2及び下鋳型3の総称である。上下鋳型は、一例として、横断面が略矩形である。上下鋳型は、第1側面及び第2側面を有する。
図1に示されるように、第1側面は、上鋳型2の第1側面2a及び下鋳型3の第1側面3aで構成される。第2側面は、上鋳型2の第2側面2b及び下鋳型3の第2側面3bで構成される。
【0027】
抜枠造型機1に隣接する位置には、鋳型搬入ステーション17が設けられており、定盤台車4が配置される。抜枠造型機1は、上鋳型2及び下鋳型3を型合わせした状態で、シリンダなどによって矢印6の方向(図中の負のX軸方向)に搬出し、定盤台車4上に載置する。
【0028】
図1〜3に示されるように、定盤台車4上に載置された上下鋳型は、連続する鋳型群の状態で、図示されない搬送手段(例えばプッシャー装置及びクッション装置)により1ピッチ分(1鋳型分)ずつ、矢印7の方向(図中の正のY軸方向)に間欠搬送される。矢印7の方向は、型合わせされた上下鋳型の搬送方向である。定盤台車4は、フレーム22に支持された、上下鋳型の搬送路であるレール20上を走行する。これにより、定盤台車4は、鋳型搬入ステーション17、型ずれ検知ステーション18、搬送路30へと順に移動し、後工程を行う装置へと移動する。
【0029】
型ずれ検知ステーション18において、レール20の側方には、上下鋳型の型ずれ検知装置40が配設される。上下鋳型の型ずれ検知装置40は、型合わせされた上鋳型2及び下鋳型3の型ずれを検知する装置である。型ずれ検知装置40は、少なくとも1つの距離センサを備える。図中では、型ずれ検知装置40は、一例として、第1距離センサ51、第2距離センサ52、及び、第3距離センサ53を備える。
【0030】
第1距離センサ51は、上下鋳型の側面に光を照射することにより距離を測定する。一例として、第1距離センサ51は、いわゆる三角測距方式で距離を測定する。第1距離センサ51は、上下鋳型の側面にレーザを照射し、上下鋳型の側面で乱反射した光の一部をレンズで集光し、撮像素子に受光させる。レーザの照射位置(奥行き方向)が変化した場合、撮像素子上の受光位置が変化するため、受光位置と照射位置との関係から、上下鋳型の側面までの距離を計測することができる。第2距離センサ52、及び、第3距離センサ53は、第1距離センサ51と同一構成であり得る。
【0031】
第1距離センサ51、第2距離センサ52、及び、第3距離センサ53は、Y軸方向に延在する昇降フレーム44に設けられる。昇降フレーム44は、Y軸方向に、上下鋳型のほぼ1枠分の長さを有する梁である。
【0032】
第1距離センサ51及び第2距離センサ52は、それらの光の出射方向が上下鋳型の第1側面(上鋳型2の第1側面2a及び下鋳型3の第1側面3a)に向くように、昇降フレーム44に設けられる。上下鋳型の第1側面は、搬送中においては、搬送方向と平行な面となる。つまり、第1距離センサ51および第2距離センサ52は、昇降フレーム44の方向(Y軸方向)に直角な方向(X軸方向)を向いていてもよい。第1距離センサ51は、昇降フレーム44の上下鋳型の搬送方向の後端近くに設けられ、上下鋳型の第1側面までの距離を計測する。第2距離センサ52は、昇降フレーム44の上下鋳型の搬送方向の前端近くに設けられ、上下鋳型の第1側面までの距離を計測する。
【0033】
第3距離センサ53は、その光の出射方向が上下鋳型の第2側面(上鋳型2の第2側面2b及び下鋳型3の第2側面3b)に向くように、昇降フレーム44に設けられる。上下鋳型の第2側面は、搬送中においては、搬送方向と直交する面となる。このため、第3距離センサ53は、第1距離センサ51及び第2距離センサ52と異なり、昇降フレーム44から斜めを向いている。
【0034】
このように、第1距離センサ51、第2距離センサ52および第3距離センサ53は、昇降フレーム44上にほぼ一列に配置され、平面上の(線上ではない)三点までの距離、すなわち位置を計測することができる。そして、型ずれ検知装置40は、搬送される上下鋳型の搬送の障害になることがない。
【0035】
昇降フレーム44は、基礎から立設された支持フレーム42により昇降可能に支持される。
【0036】
型ずれ検知装置40は、上下鋳型の側面を、第1距離センサ51、第2距離センサ52、及び、第3距離センサ53に走査させるシリンダ46(走査部の一例)を備える。シリンダ46は、電動、油圧、水圧、気圧など、いずれのタイプのシリンダであってもよい。シリンダ46は、昇降フレーム44を昇降させるアクチュエータであり、支持フレーム42により支持される。シリンダ46の駆動によって、昇降フレーム44に設けられた第1距離センサ51、第2距離センサ52、及び、第3距離センサ53は一体的に昇降する。このように、シリンダ46は、第1距離センサ51、第2距離センサ52、及び、第3距離センサ53を昇降させることで、上下鋳型の側面を上下方向に同時に走査させる。
【0037】
シリンダ46は、第1距離センサ51、第2距離センサ52、及び、第3距離センサ53を、上下鋳型の見切り面19を跨ぐように移動させながら、所定の走査範囲を走査させる。見切り面19とは、上鋳型2と下鋳型3との接合面である。定盤台車4上面から見切り面19までの高さは、下鋳型3の高さと同じである。下鋳型3の高さは抜枠造型機1における図示されない計測手段(例えば、エンコーダ)で毎回計測される。このため、上述した見切り面19の高さは毎回把握される。
【0038】
シリンダ46による各センサの走査範囲は、上下鋳型の側面に適宜設定することができる。例えば、
図3に示されるように、走査範囲Hは、測定開始高さから測定終了高さまでの上下方向の範囲であり、見切り面19の高さを含むように設定されてもよい。
図3では、測定開始高さH1から測定終了高さH2までの範囲が走査範囲Hとなる。走査範囲は、後述する制御部48によって上下鋳型ごとに設定されてもよい。
図3に示されるように、例えば、上鋳型2に対する第1走査範囲HA、下鋳型3に対する第2捜査範囲HBが設定されてもよい。この場合、走査範囲は、見切り面19の高さを含まない。あるいは、走査範囲は、想定される見切り面19の高さに基づいて予め設定された範囲であってもよい。一例として、走査範囲は、見切り面19を基準として±100mmとなるように設定される。以下では、走査範囲として、測定開始高さH1から測定終了高さH2までの走査範囲Hを例に説明するが、これに限定されない。
【0039】
図4は、測定開始高さH1における計測を説明するための概要図である。
図5は、測定終了高さH2における計測を説明するための概要図である。
図3及び
図4に示されるように、測定開始高さH1においては、第1距離センサ51によって上鋳型2の第1側面2aの計測点2iまでの距離S11が計測され、第2距離センサ52によって上鋳型2の第1側面2aの計測点2jまでの距離S12が計測され、第3距離センサ53によって上鋳型2の第2側面2bの計測点2kまでの距離S13が計測される。
図3及び
図5に示されるように、測定終了高さH2においては、第1距離センサ51によって下鋳型3の第1側面3aの計測点3iまでの距離S21が計測され、第2距離センサ52によって下鋳型3の第1側面3aの計測点3jまでの距離S22が計測され、第3距離センサ53によって下鋳型3の第2側面3bの計測点3kまでの距離S23が計測される。
【0040】
このように、第1距離センサ51は、走査範囲Hにおける走査として、計測点2iから計測点3iまでをライン走査する。第2距離センサ52は、走査範囲Hにおける走査として、計測点2jから計測点3jまでをライン走査する。第3距離センサ53は、走査範囲Hにおける走査として、計測点2kから計測点3kまでをライン走査する。つまり、第1距離センサ51、第2距離センサ52、及び、第3距離センサ53は、上下鋳型の側面の異なる位置を上下方向にライン走査する。
【0041】
型ずれ検知装置40は、制御部48を有する。制御部48は、型ずれ検知処理を全体統括するハードウェアである。制御部48は、演算装置(CPUなど)、記憶装置(ROM、RAM、HDDなど)、ユーザインタフェースなどを備える一般的なコンピュータとして構成される。
【0042】
制御部48は、シリンダ46に接続され、シリンダ46に信号を出力してシリンダ46の駆動を制御する。制御部48は、シリンダ46への出力信号又は図示しない位置検出センサ(エンコーダなど)に基づいて、第1距離センサ51、第2距離センサ52、及び、第3距離センサ53の高さ位置を取得する。制御部48は、第1距離センサ51、第2距離センサ52、及び、第3距離センサ53に接続され、各距離センサにより取得された距離を取得する。
【0043】
制御部48は、距離センサごとに、高さ位置と距離とを関連付けて、測定結果として記憶する。測定結果とは、測定値の集合である。測定値とは、高さ位置と距離とが関連付けられた値である。制御部48は、上述した記憶装置に各距離センサの測定結果を逐次記憶してもよいし、走査範囲Hにおける各距離センサの測定結果を一回分の結果として纏め、履歴として記憶部481に記憶してもよい。
【0044】
制御部48は、シリンダ46によって走査させた走査範囲Hの測定結果に基づいて上下鋳型の型ずれを検知する。走査範囲Hの測定結果は、ライン走査した結果であるため、上下鋳型の側面形状を反映したデータとなる。制御部48は、高さ位置と距離とを座標軸とした座標系において、線形回帰分析により走査範囲Hにおける距離の近似線を出力し、近似線に基づいて上下鋳型の型ずれを検知する。近似線とは、ある範囲の測定データに基づいた回帰分析によって得られた一本の線である。
【0045】
近似線を用いた具体的な一例として、制御部48は、上鋳型2に係る近似線と見切り面19との交点である第1交点を算出するとともに、下鋳型3に係る近似線と見切り面19との交点である第2交点を算出する。第1交点は、見切り面19における上鋳型2の下端部に相当する。第2交点は、見切り面19における下鋳型3の上端部に相当する。制御部48は、第1交点と第2交点との位置関係から、上下鋳型の型ずれを検知する。
【0046】
一例として、制御部48は、第1交点と第2交点との差分に基づいて上下鋳型の型ずれを検知する。制御部48は、差分が所定閾値以上である場合、上下鋳型の型ずれが発生していると判定する。所定閾値は、許容されるずれ量に基づいて適宜設定され得る。あるいは、制御部48は、差分と前回差分との比較結果に基づいて、上下鋳型の型ずれを検知してもよい。前回差分は、前回の測定結果から導出された差分である。前回の測定結果とは、過去に行われた測定結果であり、直前の測定結果のみでもよいし、過去に行われた全ての測定結果であってもよい。制御部48は、演算した差分を記憶部481に格納し、次回以降の判定に利用してもよいし、判定する度に前回の測定結果から前回差分を演算してもよい。制御部48は、差分と前回差分との差が所定値以上である場合、上下鋳型の型ずれが発生していると判定する。
【0047】
制御部48は、走査範囲Hにおける測定結果に基づいて上下鋳型それぞれの中心座標及び上下方向を回転軸とした上下鋳型のねじれ角度を算出してもよい。
図6は、ねじれ角度を説明する概要図である。
図6に示されるように、ねじれ角度θAは、上下方向を回転軸としたときの上鋳型2と下鋳型3との相対的な回転ずれを示す角度である。抜枠造型機1で造型される上鋳型2と下鋳型3の形状は既知であり、第1距離センサ51、第2距離センサ52、及び、第3距離センサ53は、同一水平面上に位置するため、制御部48は、所定高さにおける3つのセンサの測定結果から上鋳型2又は下鋳型3の中心座標C2,C3と、上鋳型2と下鋳型3とのねじれ角度θAを取得することができる。
【0048】
制御部48は、上下鋳型それぞれの中心座標C2,C3及び上下鋳型のねじれ角度θAに基づいて上下鋳型の型ずれを検知してもよい。制御部48は、中心座標C2,C3とを比較して型ずれを検知してもよい。例えば、制御部48は、中心座標C2,C3間の距離を算出し、距離が所定距離以上である場合には、XY平面内の平行方向に型ずれが発生していると判定する。例えば、制御部48は、ねじれ角度θAが所定角度以上である場合には、Z軸を回転軸とする回転方向の型ずれが発生していると判定する。つまり、制御部48は、上下鋳型それぞれの中心座標C2,C3及び上下鋳型のねじれ角度θAを用いることで、XY平面内の平行方向の型ずれ及びZ軸を回転軸とする回転方向の型ずれの両方を検知することができる。制御部48は、上下鋳型それぞれの中心座標C2,C3及び上下鋳型のねじれ角度θAを履歴として記憶部481に記憶してもよい。
【0049】
型ずれ検知装置40は、制御部48によって型ずれが検知された場合には異常を報知する報知部482をさらに備える。報知部482は、制御部48に接続され、音又は映像などを出力することにより、作業員などに情報を報知する機器である。一例として、報知部482は、スピーカやディスプレイなどである。制御部48は、型ずれを検知した場合、報知部482に異常信号を出力する。報知部482は、異常信号を受信した場合に、報知を行う。
【0050】
制御部48は、型ずれが検知された場合には異常信号を他の装置へ出力してもよい。他の装置とは、抜枠造型機1、搬送路30、注湯機(不図示)などである。異常信号とは、型ずれが検知されたことを示す情報である。抜枠造型機1が異常信号を取得した場合、抜枠造型機1は、型ずれが生じないように機器パラメータを調整してもよい。例えば、抜枠造型機1は、鋳型搬入ステーション17への上下鋳型の押し出しの速度を調整してもよい。異常信号には、型ずれ方向が含まれてもよい。この場合、抜枠造型機1は、型ずれ方向から上下鋳型の押し出しが型ずれの原因であるか否かを判定することができる。搬送路30が異常信号を取得した場合、上下鋳型の注湯機への搬送を停止したり、上下鋳型の型合わせを調整したりしてもよい。注湯機が異常信号を取得した場合、型ずれが発生している上下鋳型への注湯をスキップしたり、停止したりしてもよい。あるいは、搬送路の各ポイントに配置された衝撃センサに接続された機器に異常信号が出力されてもよい。この場合、当該機器は、型ずれ方向と衝撃センサとに基づいて、型ずれの原因箇所を特定することができる。
【0051】
(型ずれ検知方法)
型ずれ検知方法は、距離センサを走査するステップと、型ずれを検知するステップとを含む。最初に、距離センサを走査するステップを説明する。
図7は、型ずれ検知方法の測定処理に関するフローチャートである。
図7に示されるフローチャートは、型ずれ検知装置40の制御部48により実行される。例えば、間欠搬送される上下鋳型が型ずれ検知ステーション18に搬送されたタイミング、すなわち型ずれ検知装置40に対して上下鋳型が所定の位置に停止したときに、
図7に示されるフローチャートが実行される。
【0052】
図7に示されるように、制御部48は、移動処理(S10)として、距離センサの原位置(シリンダ46の原位置)から測定開始高さH1へ距離センサを移動させる。制御部48は、シリンダ46に制御信号を出力し、距離センサを測定開始高さH1へ移動させる。
【0053】
つづいて、制御部48は、データ測定処理(S12)として、距離センサを測定終了高さH2へ向けて移動させながら距離を測定する。制御部48は、終了判定処理(S14)として、距離センサを測定終了高さH2まで移動させたか否かを判定する。距離センサを測定終了高さH2まで移動させていないと判定された場合(S14:NO)、制御部48は、データ測定処理(S12)を継続する。距離センサを測定終了高さH2まで移動させたと判定された場合(S14:YES)、制御部48は、終了処理(S16)として、距離センサを原位置(シリンダ46の原位置)へ移動させる。終了処理(S16)が完了すると、
図7に示されるフローチャートは、終了する。
図7に示されるフローチャートが終了すると、一回分の測定結果が取得される。
【0054】
つづいて、型ずれを検知するステップを説明する。制御部48は、
図7に示されるフローチャートを実行することによって得られた測定結果に基づいて、型ずれを判定する。制御部48は、
図7に示されるフローチャートの実行中においても、取得済みデータに基づいて型ずれを判定してもよいし、走査範囲Hの全てのデータの取得が完了してから、型ずれを判定してもよい。
【0055】
図8は、測定結果、及び、近似線を示すグラフである。
図8の横軸は距離であり、縦軸は測定高さである。
図8では、見切り面19が高さ0mmとなるように規格化されている。
図8では、第1距離センサ51の測定結果であるデータR1、第2距離センサ52の測定結果であるデータR2、第3距離センサの測定結果であるデータR3が示されている。制御部48は、データR1について型ずれを判定する場合、上鋳型2のデータに対して近似を行い、近似線L1を得るとともに、下鋳型3のデータに対して近似を行い、近似線L2を得る。つづいて、制御部48は、近似線L1と見切り面19との交点である第1交点P1と、近似線L2と見切り面19との交点である第2交点P2とを算出する。そして、制御部48は、第1交点P1と第2交点P2との差分Dを算出する。制御部48は、差分Dと前回差分とを比較して、その差が所定値以下である場合には、型ずれは発生していないと判定し、その差が所定値を超えている場合には、型ずれが発生したと判定する。また、制御部48は、データR1,R2,R3を用いて、高さごとに上下鋳型の中心座標及び上下鋳型のねじれ角度を得ることができる。さらに、中心座標およびねじれ角度により、型ずれを判定することができる。
【0056】
型ずれの判定結果は、例えば、抜枠造型機1、搬送路30または注湯機(不図示)の制御装置へ送られる。型ずれ検知装置40での型ずれ検知が終了すると、上下鋳型は再び間欠搬送される。その後、注湯前に、上下鋳型にはジャケット(不図示)が被せられ、上鋳型2の上面には錘が載せられる。その後に、注湯機(不図示)から注湯される。
【0057】
(実施形態のまとめ)
本実施形態に係る型ずれ検知装置40では、少なくとも第1距離センサ51及びシリンダ46によって上下鋳型の側面が走査される。このため、少なくとも第1距離センサ51は、上鋳型2の側面形状、下鋳型3の側面形状を測定することができる。そして、制御部48により、上鋳型2の側面形状、下鋳型3の側面形状に基づいて上下鋳型の型ずれが検知される。よって、型ずれ検知装置40は、距離センサを固定又は停止させて得られた点データに基づいて型ずれを検知する場合と比べて、例えば上下鋳型が傾いている場合や鋳型側面が荒れている場合であっても、型ずれを検知することができる。よって、この型ずれ検知装置は、上下鋳型の型ずれを精度良く検知することができる。
【0058】
ライン走査による効果を説明するために、上鋳型2に対して一回の測定(高さを固定した測定)、下鋳型3に対して一回の測定(高さを固定した測定)をした場合の概要を説明する。測定のための高さが固定である場合、上下鋳型が傾いたときに型ずれを正確に検知できないおそれがある。
図9は、上下鋳型の傾きが型ずれ検知に与える影響を説明する図である。
図9の(A)では、傾いた上下鋳型(状態S1)を実線で示し、傾いていない上下鋳型(状態S2)を破線で示している。定盤台車4が水平方向から傾いている場合、上下鋳型も傾いた状態(状態S1)になる。
【0059】
図9の(B)は、
図9の(A)の部分Pの拡大図である。
図9の(B)に示されるように、上下鋳型が傾いていない場合(状態S2)、測定開始高さH1での測定距離と測定終了高さH2での測定距離との差がW2となる。一方、上下鋳型が傾いた場合(状態S1)、測定開始高さH1での測定距離と測定終了高さH2での測定距離との差がW1となり、W2よりも長くなる。このように、上下鋳型の傾きによって測定距離が変化してしまう。このため、実際には型ずれが発生していない場合であっても、上下鋳型の傾きによって、型ずれが発生していると誤検知するおそれがある。
【0060】
これに対して、制御部48は、上鋳型2の側面形状、下鋳型3の側面形状に基づいて上下鋳型の型ずれが検知される。上下鋳型の傾きは側面の傾き角度に影響を与えるが、側面形状には影響を与えない。よって、この型ずれ検知装置40は、上下鋳型の型ずれを精度良く検知することができる。
【0061】
型ずれ検知装置40は、高さと距離とを関連付けた測定結果を得ることで、距離センサの光出射方向の距離と、高さ方向とを座標軸とする二次元平面において上下鋳型の側面形状を把握することができる。
【0062】
型ずれ検知装置40は、高さ位置と距離とを座標軸とした座標系において、線形回帰分析により走査範囲における距離の近似線を出力し、近似線に基づいて上下鋳型の型ずれを検知することで、鋳型側面が荒れている場合や上下鋳型が傾いている場合に検知精度が低下することを抑制することができる。
【0063】
型ずれ検知装置40は、上鋳型2に係る近似線L1と上下鋳型の見切り面19との交点である第1交点P1と、下鋳型3に係る近似線L2と上下鋳型の見切り面19との交点である第2交点P2と、に基づいて上下鋳型の型ずれを検知することで、定盤台車4が水平方向から傾いた場合などであっても、見切り面19における上下鋳型の端部を精度良く把握して、上下鋳型の型ずれを検知することができる。
【0064】
型ずれ検知装置40は、第1交点P1と第2交点P2との差分に基づいて上下鋳型の型ずれを検知することで、差分という1つのパラメータを用いて簡易に上下鋳型の型ずれを検知することができる。
【0065】
型ずれ検知装置40は、走査範囲における測定結果を履歴として記憶部481に記憶することで、前回差分に基づいて型ずれを検知したり、傾向を把握するためのデータを蓄積したりすることができる。
【0066】
型ずれ検知装置40は、差分と前回差分との比較結果に基づいて、上下鋳型の型ずれを検知することで、所定の判定閾値でなく、前回差分との差で型ずれを検知することができる。
【0067】
型ずれ検知装置40は、走査範囲Hにおける測定結果に基づいて上下鋳型それぞれの中心座標及び上下方向を回転軸とした上下鋳型のねじれ角度を算出し、上下鋳型それぞれの中心座標及び上下鋳型のねじれ角度に基づいて上下鋳型の型ずれを検知することができる。また、履歴として記憶部481に記憶することで、上下鋳型の中心座標の変化の傾向や上下鋳型のねじれ角度の変化の傾向を把握するためのデータを蓄積することができる。
【0068】
型ずれ検知装置40は、制御部48によって型ずれが検知された場合には異常を報知する報知部482を備えることで、異常を作業員などに報知することができる。型ずれ検知装置40は、型ずれが検知された場合には異常信号を他の装置へ出力することで、他の装置へ迅速に異常を報知することができるとともに、他の装置に異常回避の対処をさせることができる。
【0069】
型ずれ検知装置40は、3つの距離センサを備えることで、上下鋳型の型ずれを更に精度良く検知することができる。
【0070】
上述した実施形態は、当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した様々な形態で実施することができる。
【0071】
例えば、型ずれ検知の結果、型ずれと判定された場合には、型ずれの状況から型ずれの発生要因を特定して表示してもよい。例えば、抜枠造型機1の鋳型押し出し方向(
図1の矢印6の方向)に対して上鋳型2が下鋳型3より後方にずれている場合は、鋳型押し出し装置(図示せず)により下鋳型3を押し出す際の初速が速すぎることが要因として考えられる。また、搬送路30の進行方向(
図1の矢印7の方向)に対して上鋳型2が下鋳型3より後方にずれている場合は、プッシャー装置(図示せず)が定盤台車4を押す際の初速が速すぎることが要因として考えられる。このように、上鋳型2と下鋳型3のずれの方向によって、要因を特定することが可能である。そこで、この特定された要因を表示することにより、作業者が修繕すべき内容を容易に認識し、型ずれを起こす原因を解消し易い。なお、特定した型ずれの発生要因を表示するのは、型ずれ検知装置40の表示パネルでも、特定の表示パネルでも、他の装置の制御装置であってもよい。
【0072】
また、型ずれ検知の結果、型ずれと判定された場合には、型ずれの状況から型ずれの発生要因を特定して、型ずれの要因となる設備の運転条件を修正してもよい。例えば、抜枠造型機1の鋳型押し出し方向(
図1の矢印6の方向)に対して上鋳型2が下鋳型3より後方にずれている場合は、鋳型押し出し装置(図示せず)により下鋳型3を押し出す際の初速が速すぎることが要因として考えられる。この場合は要因となる設備の運転条件として、鋳型押し出し装置の初速を修正する。具体的には鋳型押し出し装置の初速が遅くなるように、該初速の設定を自動又は手動で修正する。このようにして、次のサイクルからの型ずれの発生を解消する。また、搬送路30の進行方向(
図1の矢印7の方向)に対して上鋳型2が下鋳型3より後方にずれている場合は、プッシャー装置(図示せず)が定盤台車4を押す際の初速が速すぎることが要因として考えられる。この場合は要因となる設備の運転条件として、プッシャー装置の初速を修正する。具体的にはプッシャー装置の初速が遅くなるように、該初速の設定を自動又は手動で修正する。このようにして、次のサイクルからの型ずれの発生を解消する。
【0073】
また、型ずれ検知の結果、型ずれと判定されない場合には、抜枠造型機1または、上下鋳型を抜枠造型機1から注湯位置に搬送する搬送路30に起因する型ずれがないことをデータとして記憶することが好ましい。このようにデータを記録することにより、製品に不良が見つかった場合でも、造型中に型ずれの問題がないことが確認でき、原因の究明が容易になる。なお、データの記憶は、制御部48あるいは他の装置の制御装置であってもよい。
【0074】
また、制御部48で算出された上鋳型2と下鋳型3の型ずれ量が予め設定された許容範囲内であっても、前記許容範囲よりも小さく設定された注意範囲を超えた場合には、型ずれの予兆があることを表示することが好ましい。予兆があることが表示されると、上下鋳型が型ずれで不良になる前に要因となる設備の運転条件を修正し、不良による無駄を防止できる。なお、型ずれの予兆があることを表示するのは、型ずれ検知装置40の表示パネルでも、特定の表示パネルでも、他の装置の制御装置であってもよい。
【0075】
また、距離センサの数は3つに限定されず、少なくとも1つあればよい。距離センサの走査は、上から下に向けて走査したが、逆でもよい。アクチュエータとしては、シリンダ46に限られず、台形ねじ、パンタグラフ等、他の公知の手段でよい。また、支持フレーム42は、基礎から立設されず、フレーム22に固定されてもよい。
【0076】
制御部48は、型ずれ検知装置40に専用の演算手段として備えてもよいし、抜枠造型機1、上下鋳型を搬送する搬送路30、あるいは、上下鋳型に溶湯を注湯する注湯機(不図示)など、他の装置の制御装置に組み込まれてもよい。
【0077】
距離センサは、光を照射することにより距離を測定するセンサに限らず、音波や電波を出力することにより距離を測定するセンサであってもよい。