【解決手段】制御部1は、インクリボン61のオーバープリント層OPを透過した発光素子30からの光を受光した受光素子31R,31G,31Bのいずれか1つである特定受光素子の出力信号が所定値に達するように発光素子30の発光出力を制御し、特定受光素子の出力信号が所定値に達した状態において、特定受光素子の出力信号と特定受光素子以外の受光素子の出力信号との比を求めて記憶する。制御部1は、発光素子30から出射されインクリボン61を透過した光を受光する受光素子31R,31G,31Bの各々の出力信号のうちの特定受光素子以外の受光素子の出力信号を上記比に基づいて補正し、補正後の出力信号と特定受光素子の出力信号とに基づいてインクリボンの色を判定する。
発光素子から出射されインクリボンを透過した複数の波長域の光をそれぞれ受光する複数の受光素子の各々の出力信号に基づいて前記インクリボンの色を判定する色判定ステップと、
前記色判定ステップの前に、前記インクリボンにおける前記複数の波長域の光を透過可能な透明層を透過した前記発光素子からの光を受光した前記複数の受光素子のいずれか1つである特定受光素子の出力信号が所定値に達するように前記発光素子の発光出力を制御する発光制御ステップと、
前記特定受光素子の出力信号が前記所定値に達した状態において、前記特定受光素子の出力信号と、前記特定受光素子以外の前記受光素子の出力信号との比を求めて記憶する演算ステップと、を備え、
前記色判定ステップでは、前記複数の受光素子のうちの前記特定受光素子以外の前記受光素子の出力信号を前記比に基づいて補正し、補正後の前記出力信号と、前記特定受光素子の出力信号とに基づいて前記インクリボンの色を判定するインクリボンの色判定方法。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(印刷装置の概略構成)
図1は、本発明の印刷装置の一実施形態である熱転写型プリンタ100の概略構成を示す模式図である。熱転写型プリンタ100は、本体部10と、インクリボン61を収容し、本体部10に着脱自在に構成されたインクカセット60と、を備える。
【0012】
本体部10は、全体を統括制御する制御部1と、インクリボン61の巻き出し及び巻き取りを行うためのインクリボン駆動機構2と、インクリボン61の色を判定するために用いられる発光受光ユニット3と、印刷媒体として例えばプラスチックカード40(
図2参照)を搬送するためのカード搬送機構4と、インクリボン61のインク層をプラスチックカード40に転写するためのサーマルヘッド5と、を備える。
【0013】
制御部1は、プログラムを実行して処理を行う各種のプロセッサと、RAM(Ramdom Access Memory)と、ROM(Read Only Memory)と、を含む。各種のプロセッサとしては、プログラムを実行して各種処理を行う汎用的なプロセッサであるCPU(Central Prosessing Unit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)等の製造後に回路構成を変更可能なプロセッサであるプログラマブルロジックデバイス(Programmable Logic Device:PLD)、又はASIC(Application Specific Integrated Circuit)等の特定の処理を実行させるために専用に設計された回路構成を有するプロセッサである専用電気回路等が含まれる。これら各種のプロセッサの構造は、より具体的には、半導体素子等の回路素子を組み合わせた電気回路である。制御部1は、各種のプロセッサのうちの1つで構成されてもよいし、同種又は異種の2つ以上のプロセッサの組み合わせ(例えば、複数のFPGAの組み合わせ又はCPUとFPGAの組み合わせ)で構成されてもよい。
【0014】
図2は、
図1に示す熱転写型プリンタ100の詳細構成例を示す図である。熱転写型プリンタ100は、
図1に示したカード搬送機構4として、2つの搬送ローラ41と、この2つの搬送ローラ41の各々に対向して配置されたピンチローラ42と、2つのピンチローラ42間に位置するサーマルヘッド5に対向して配置されたプラテンローラ43と、を備える。搬送ローラ41は
図1に示す制御部1の制御によって駆動される。
【0015】
また、熱転写型プリンタ100は、
図1に示したインクリボン駆動機構2として、本体部10に装着されたインクカセット60に含まれる巻き出しリール63を駆動するための巻き出し用ローラ21と、本体部10に装着されたインクカセット60に含まれる巻き取りリール64を駆動するための巻き取り用ローラ22と、を備える。
図2に示すように、インクリボン61は、インクカセット60が本体部10に装着された状態において、サーマルヘッド5とプラテンローラ43の間に配置される。巻き出し用ローラ21及び巻き取り用ローラ22は
図1に示す制御部1の制御によって駆動される。
【0016】
図2に示すように、本体部10の発光受光ユニット3は、インクリボン61の巻き出しリール63側からサーマルヘッド5に向かってインクリボン61が通る道筋の途中で、インクリボン61の表面のうち、サーマルヘッド5側の面とは反対側の面に対向して配置されている。発光受光ユニット3に対してインクリボン61を挟んで対向する位置には、後述するプリズム62が配置されている。このプリズム62は、インクカセット60に内蔵されているものである。
【0017】
(インクリボンの構成)
図3は、
図1に示すインクカセット60に収容されたインクリボン61の構成を示す図である。インクリボン61は、
図3の例では、イエローインク層Y、マゼンタインク層M、シアンインク層C、ブラックインク層(黒色層)Kに加えて、印画面を保護するオーバープリント層OPを含み、これら5つの層が長手方向に繰り返し並んで構成されている。インクリボン61において、
図3中の左側が巻き取りリール64側であり、
図3中の右側が巻き出しリール63側である。
【0018】
オーバープリント層OPは、赤色(R)の波長域(第一の波長域)の光(以下、R光という)と、緑色(G)の波長域(第二の波長域)の光(以下、G光という)と、青色(B)の波長域(第三の波長域)の光(以下、B光という)とを透過可能な層であり、可視域の光に対して透明な層となっている。すなわち、インクリボン61は、オーバープリント層OPを無色透明の1色と数えて、合計5色のインク層よりなる。オーバープリント層OPは透明層を構成する。
【0019】
(発光受光ユニットの構成)
図4は、
図1及び
図2に示す発光受光ユニット3の詳細構成を示す模式図である。
図4に示すように、発光受光ユニット3は、発光素子30と、発光素子30を駆動するドライバ30dと、受光素子31Rと、受光素子31Gと、受光素子31Bと、AD変換器32Rと、AD変換器32Gと、AD変換器32Bと、を備える。なお、発光受光ユニット3は、
図3に示したインクリボン61の5色のインク層の境界を検出するために、インクリボン6の搬送方向に沿って2つ設けられている。
【0020】
発光素子30は、R光とG光とB光とを含む光、具体的には白色光を出射するものであり、LED(Light Emitting Diode)又はLD(Laser Diode)等の半導体発光素子により構成される。発光素子30のドライバ30dは、
図1に示す制御部1の指示により発光素子30を駆動する。発光素子30は、出射した白色光がインクリボン61を通ってプリズム62に入射されるように、光の出射方向が調整されている。
【0021】
インクカセット60に内蔵されたプリズム62は、発光素子30から出射されてインクリボン61を透過した光を、インクリボン61を通して受光素子31R、受光素子31G、及び受光素子31Bに入射させるための光学部材である。なお、プリズム62の代わりにミラーが用いられてもよい。
【0022】
受光素子31Rは、R光に感度を持ち、受光したR光の光量に応じた信号を出力する。受光素子31Rは、例えば、R光に感度を持つフォトダイオード、又は、可視域に感度を持つフォトダイオードにR光を透過するカラーフィルタを組み合わせたもの等によって構成される。受光素子31Rの出力信号は、AD変換器32Rによりデジタル変換されて制御部1に入力される。
【0023】
受光素子31Gは、G光に感度を持ち、受光したG光の光量に応じた信号を出力する。受光素子31Gは、例えば、G光に感度を持つフォトダイオード、又は、可視域に感度を持つフォトダイオードにG光を透過するカラーフィルタを組み合わせたもの等によって構成される。受光素子31Gの出力信号は、AD変換器32Gによりデジタル変換されて制御部1に入力される。
【0024】
受光素子31Bは、B光に感度を持ち、受光したB光の光量に応じた信号を出力する。受光素子31Bは、例えば、B光に感度を持つフォトダイオード、又は、可視域に感度を持つフォトダイオードにB光を透過するカラーフィルタを組み合わせたもの等によって構成される。受光素子31Bの出力信号は、AD変換器32Bによりデジタル変換されて制御部1に入力される。
【0025】
発光素子30から出射された白色光は、インクリボン61を透過した後にプリズム62に入射し、ここで反射されてインクリボン61に戻り、インクリボン61を透過して、受光素子31R、受光素子31G、及び受光素子31Bに入射する。このように、発光受光ユニット3は、インクカセット60が本体部10に装着された状態において、発光素子30から出射された白色光がインクリボン61を2回透過してから受光素子31R、受光素子31G、及び受光素子31Bに入射するように構成されている。
【0026】
発光素子30から所定の量の光を出射した状態にて受光素子31R、受光素子31G、及び受光素子31Bの各々から出力される出力信号のレベルは、光が透過するインク層の種別が同一であっても、インクカセット60におけるプリズム62の個体差や取り付け位置の公差、或いはインクリボン61の個体差や種別の差等によって一定とはならない。そこで、熱転写型プリンタ100では、インクリボン61のインク層をサーマルヘッド5によってプラスチックカード40に転写して印刷を行う印刷モードに加えて、受光素子31R、受光素子31G、及び受光素子31Bの出力調整を行うためのキャリブレーションモードを搭載している。熱転写型プリンタ100は、キャリブレーションモードによってキャリブレーションを行った後に、印刷モードに移行する。このキャリブレーションは、例えばインクカセット60が交換されたときや初期化操作がなされたとき等に実行される。
【0027】
(制御部の機能ブロック)
図5は、
図1に示す制御部1の機能ブロックを示す図である。制御部1は、プロセッサがROMに格納されたプログラムを実行して各部と協働することにより、発光制御部11、演算部12、色判定部13、及び駆動部14として機能する。これら発光制御部11、演算部12、色判定部13、及び駆動部14として機能する制御部1と、発光受光ユニット3とにより、インクリボンの色判定装置が構成される。
【0028】
印刷モードとキャリブレーションモードのいずれにおいても、発光制御部11は、発光素子30の発光制御を行う。
【0029】
色判定部13は、印刷モードにおいて有効な機能であり、発光制御部11の制御によって発光素子30から光を出射した状態における受光素子31R、受光素子31G、及び受光素子31Bの各々の出力信号(AD変換器32R、AD変換器32G、及びAD変換器32Bによるデジタル変換後の値、以下同様)に基づいて、インクリボン61の色(発光受光ユニット3上方に位置するインク層の種別)を判定する。
【0030】
駆動部14は、キャリブレーションモードにおいて有効な機能であり、発光制御部11の制御によって発光素子30から光を出射させた状態で得られる受光素子31R、受光素子31G、及び受光素子31Bの各々の出力信号に基づいて、巻き出しリール63側に位置する発光受光ユニット3上方に位置するインクリボン61の層がブラックインク層Kか否かを判定する。そして、駆動部14は、ブラックインク層Kと判定してから、巻き出しリール63側に位置する発光受光ユニット3上方に位置するインクリボン61の層がブラックインク層Kではないと判定するまでインクリボン61を送り出す。そして、駆動部14は、発光受光ユニット3上方に位置するインクリボン61の層がブラックインク層Kではないと判定した時点で、インクリボン61を所定量送り出し、その状態にて、インクリボン駆動機構2を停止させる。このような処理により、2つの発光受光ユニット3上方にオーバープリント層OPが移動される。
【0031】
このような駆動部14の制御によって発光受光ユニット3の上方にオーバープリント層OPが配置された状態において、発光制御部11は、オーバープリント層OPを透過した発光素子30からの光を受光した受光素子31R、受光素子31G、及び受光素子31Bのいずれか1つである特定受光素子の出力信号が所定値に達するように、発光素子30の発光出力を制御する。
【0032】
演算部12は、キャリブレーションモードにおいて有効な機能であり、上記の特定受光素子の出力信号が上記の所定値に達した状態において、この特定受光素子の出力信号と、特定受光素子以外の2つの受光素子の出力信号とのそれぞれの比を求めてROMに記憶する。
【0033】
(キャリブレーションモードの動作説明)
図6は、
図5に示す制御部1によるキャリブレーションモード時の動作を説明するためのフローチャートである。まず、発光制御部11は、ドライバ30dに指示を出して、発光素子30から光を出射させる(ステップS11)。このときの発光素子30の発光出力は予め決められた第一の発光出力に設定される。ステップS11の処理により、発光素子30から出射された光は、インクリボン61を2回透過して受光素子31R、受光素子31G、及び受光素子31Bに入射し、受光素子31R、受光素子31G、及び受光素子31Bの各々からの出力信号が制御部1に入力される。
【0034】
次に、駆動部14は、受光素子31R、受光素子31G、及び受光素子31Bの各々からの出力信号を取得し(ステップS12)、この3つの出力信号に基づいて、発光受光ユニット3上方にブラックインク層Kが位置しているか否かを判定する(ステップS13)。
【0035】
ブラックインク層Kが発光受光ユニット3上方にある状態では、受光素子31R、受光素子31G、及び受光素子31Bの各々には発光素子30からの光はほとんど入射されない。したがって、例えば、駆動部14は、受光素子31R、受光素子31G、及び受光素子31Bの各々の出力信号が予め決められたごく小さい閾値以下となっているか判断し、閾値以下となっている場合に、ブラックインク層Kであると判定する。
【0036】
なお、ステップS13の処理は、受光素子31R、受光素子31G、及び受光素子31Bの出力調整が行われていない状態で実行される。しかし、受光素子の出力が非常に小さくなるブラックインク層Kに対しては、出力調整を行わない状態であっても、その判定は十分に可能である。
【0037】
駆動部14は、ステップS13においてブラックインク層Kではないと判定した場合(ステップS13:NO)には、インクリボン駆動機構2を制御してインクリボン61の送り出しを行う(ステップS14)。その後、ステップS11に処理が戻る。駆動部14は、ステップS13においてブラックインク層Kであると判定した場合(ステップS13:YES)には、インクリボン駆動機構2を制御して、上述したように、インクリボン61を、ブラックインク層Kではないと判定する位置まで送り出し、発光受光ユニット3上方にオーバープリント層OPが位置した状態を得る(ステップS15)。ステップS15において、駆動部14は、ブラックインク層Kではないと判定する位置までインクリボン61を送り出した後、2つの発光受光ユニット3の上方にオーバープリント層OPが位置する状態まで、インクリボン61の送り出しを行う。
【0038】
ステップS15の後、発光制御部11は、ドライバ30dに指示を出して、発光素子30から光を出射させる(ステップS16)。このときの発光素子30の発光出力は、例えば上記の第一の発光出力に設定される。次に、発光制御部11は、受光素子31Rの出力信号(以下、信号Srという)、受光素子31Gの出力信号(以下、信号Sgという)、及び受光素子31Bの出力信号(以下、信号Sbという)を取得する(ステップS17)。
【0039】
発光制御部11は、ステップS17にて取得した信号Sr、信号Sg、信号Sbのうちの最大のものを選択し、選択した信号が予め決められている所定値に達しているか否かを判定する(ステップS18)。以下では、ステップS17にて取得される信号Sr、信号Sg、信号Sbのうち信号Sbが最大になるものとして説明する。ステップS18の判定がNOとなる場合には、発光制御部11は、ドライバ30dに指示を出して、発光素子30の発光出力を増加させた上で(ステップS19)、ステップS16に処理を戻す。
【0040】
ステップS18の判定がYESとなる場合には、演算部12が、信号Sr、信号Sg、信号Sbのうちの最大のものである信号Sbを基準値とし、この基準値に対する信号Srの比BRrを以下の式(1)により求める。また、演算部12は、この基準値に対する信号Sgの比BGrを以下の式(2)により求める。そして、演算部12は、これら比BRrと比BGrをROMに記憶する(ステップS20)。以上の動作により、キャリブレーションモードが終了する。
【0041】
比BRr=Sr/Sb (1)
比BGr=Sg/Sb (2)
【0042】
(印刷モードの動作説明)
図7は、
図5に示す制御部1による印刷モード時の動作を説明するためのフローチャートである。まず、発光制御部11は、
図6のステップS18の判定がYESとなったときにドライバ30dに指示していた発光出力にて、発光素子30から光を出射させる(ステップS21)。
【0043】
次に、色判定部13は、受光素子31Rの出力信号(信号Sr)、受光素子31Gの出力信号(信号Sg)、及び受光素子31Bの出力信号(信号Sb)を取得する(ステップS22)。そして、色判定部13は、取得した信号Srを、キャリブレーションモードにおいてROMに記憶された比BRrに基づいて例えば以下の式(3)にしたがって補正する。また、色判定部13は、取得した信号Sgを、キャリブレーションモードにおいてROMに記憶された比BGrに基づいて例えば以下の式(4)にしたがって補正する(ステップS23)。
【0044】
補正後の信号Sr=信号Sr×(1/BRr) (3)
補正後の信号Sg=信号Sg×(1/BGr) (4)
【0045】
次に、色判定部13は、補正後の信号Srが受光素子31Bに対応する基準値Brefの0.5倍以上であり、且つ、補正後の信号Sgが基準値Brefの0.5倍以上であり、且つ、信号Sbが基準値Brefの0.5倍以上であるか否かを判定する(ステップS24)。基準値Brefの0.5倍は、閾値を構成する。
【0046】
基準値Brefは、キャリブレーションモードのステップS18の判定がYESになった場合における信号Sbの値が設定される。
【0047】
ステップS24の判定がYESであった場合には、色判定部13は、発光受光ユニット3上方にあるインク層の種別がオーバープリント層OPであると判定する(ステップS25)。一方、ステップS24の判定がNOであった場合には、色判定部13は、補正後の信号Srが基準値Brefの0.1倍以下であり、且つ、補正後の信号Sgが基準値Brefの0.1倍以下であり、且つ、信号Sbが基準値Brefの0.1倍以下であるか否かを判定する(ステップS26)。基準値Brefの0.1倍は、閾値を構成する。
【0048】
ステップS26の判定がYESであった場合には、色判定部13は、発光受光ユニット3上方にあるインク層の種別がブラックインク層Kであると判定する(ステップS27)。一方、ステップS26の判定がNOであった場合には、色判定部13は、補正後の信号Srと補正後の信号Sgと信号Sbのうち、信号Sbが最小となるか否かを判定する(ステップS28)。
【0049】
色判定部13は、信号Sbが最小であると判定した場合(ステップS28:YES)には、発光受光ユニット3上方にあるインク層の種別がイエローインク層Yであると判定する(ステップS29)。一方、色判定部13は、信号Sbが最小ではないと判定した場合(ステップS28:NO)には、補正後の信号Srと補正後の信号Sgと信号Sbのうち、信号Sgが最小となるか否かを判定する(ステップS30)。
【0050】
色判定部13は、信号Sgが最小であると判定した場合(ステップS30:YES)には、発光受光ユニット3上方にあるインク層の種別がマゼンタインク層Mであると判定する(ステップS31)。一方、色判定部13は、信号Sgが最小ではないと判定した場合(ステップS30:NO)には、発光受光ユニット3上方にあるインク層の種別がシアンインク層Cであると判定する(ステップS32)。
【0051】
(実施形態の熱転写型プリンタの効果)
以上のように、熱転写型プリンタ100によれば、キャリブレーションモードにおいて比BRrと比BGrがROMに記憶され、色判定部13が色判定を行う際には、受光素子31Rの出力信号がこの比BRrによって補正され、受光素子31Gの出力信号がこの比BGrによって補正され、補正後の信号に基づいて色判定が行われる。このため、インクカセット60に含まれるプリズム62の個体差や取り付け公差、インクリボン61の個体差や種別の違い、又は熱転写型プリンタ100の使用される場所の気温等によって受光素子31R,31G,31Bの出力特性にばらつきが生じる場合でも、このばらつきを補償して、インクリボン61の色判定を高精度に行うことができる。
【0052】
熱転写型プリンタ100は、発光素子30から出射された光がインクリボン61を2回透過してから受光素子に到達する構成である。このため、この光の経路のばらつきやインクリボン61の個体差等による受光素子の出力特性の変化が生じやすい。したがって、上述してきた信号の補正が特に有効になる。また、インクカセット60にプリズム62又はミラーが内蔵される構成であるため、インクカセット60が交換されると、受光素子の出力特性の変化が生じやすい。このため、上述してきた信号の補正が特に有効になる。
【0053】
また、熱転写型プリンタ100によれば、キャリブレーションモードにおいて発光受光ユニット3の上方にオーバープリント層OPを自動で正確に移動させることができる。このため、キャリブレーション処理を高精度に行うことができる。また、自動で移動が行われるため、例えば人がインクリボン61の送り出しを手動で行ってからキャリブレーション処理をスタートさせる等の作業は不要となり、利便性を向上させることができる。
【0054】
また、熱転写型プリンタ100によれば、
図7に示すように、補正後の信号Sr,Sg及び信号Sbと閾値との比較によってオーバープリント層OPとブラックインク層Kを判定し、オーバープリント層OPとブラックインク層Kのいずれでもない場合には、補正後の信号Sr,Sgと信号Sbの大小関係の判断のみでイエローインク層Yと、マゼンタインク層Mと、シアンインク層Cとを判別することができる。このため、色判定にかかる制御部1の処理負荷を軽減することができる。
【0055】
(変形例)
発光受光ユニット3は、
図8に示すように、インクリボン61の一方の面側に受光素子31R,31G,31Bが配置され、インクリボン61の他方の面側に発光素子30が配置された構成であってもよい。この構成であっても、インクリボン61の個体差や種別の差等によって受光素子31R,31G,31Bの出力特性に変化が生じ得るため、上述してきた信号の補正は有効である。また、ここまで説明してきた熱転写型プリンタ100は、受光素子を3つ有する構成であるが、インクリボン61に含まれる色の数に合わせて、2つ又は4つ以上の受光素子を用いてインクリボン61の色判定を行うことも可能である。
【0056】
また、以上の説明では、駆動部14によって自動でオーバープリント層OPを発光受光ユニット3の上方に移動させるものとしたが、この動作は手動で行う構成としてもよい。
【0057】
以上説明してきたように、本明細書には以下の事項が開示されている。
【0058】
(1)
発光素子と、
前記発光素子から出射されインクリボンを透過した複数の波長域の光をそれぞれ受光する複数の受光素子と、
前記複数の受光素子の各々の出力信号に基づいて前記インクリボンの色を判定する色判定部と、
前記色判定部による前記判定の前に、前記インクリボンにおける前記複数の波長域の光を透過可能な透明層を透過した前記発光素子からの光を受光した前記複数の受光素子のいずれか1つである特定受光素子の出力信号が所定値に達するように前記発光素子の発光出力を制御する発光制御部と、
前記特定受光素子の出力信号が前記所定値に達した状態において、前記特定受光素子の出力信号と、前記特定受光素子以外の前記受光素子の出力信号との比を求めて記憶する演算部と、を備え、
前記色判定部は、前記複数の受光素子のうちの前記特定受光素子以外の前記受光素子の出力信号を前記比に基づいて補正し、補正後の前記出力信号と、前記特定受光素子の出力信号とに基づいて前記インクリボンの色を判定するインクリボンの色判定装置。
【0059】
(1)の構成によれば、演算部によって求められた比によって特定受光素子以外の受光素子の出力信号が補正され、補正後の出力信号に基づいてインクリボンの色が判定される。このため、印刷装置の装置構成や使用環境による影響を受けにくく、インクリボンの色判定を高精度に行うことができる。
【0060】
(2)
(1)記載のインクリボンの色判定装置であって、
前記複数の受光素子は、前記発光素子から出射され前記インクリボンを2回透過した光を受光するインクリボンの色判定装置。
【0061】
(2)の構成によれば、インクリボンの違い等によって受光素子の出力特性に変化が生じやすいため、色判定精度の向上の効果が特に大きくなる。
【0062】
(3)
(2)記載のインクリボンの色判定装置であって、
前記発光素子及び前記複数の受光素子は、前記インクリボンの一方の面側に配置されており、
前記発光素子から出射され前記インクリボンを透過した光を前記インクリボンに反射させる光学部材が前記インクリボンの他方の面側に配置されるインクリボンの色判定装置。
【0063】
(3)の構成によれば、インクリボンや光学部材の違い等によって受光素子の出力特性に変化が生じやすいため、色判定精度の向上の効果が特に大きくなる。さらに、発光素子および受光素子をインクリボンの一方の面側に配置しているので、装置を簡易に構成することができ、またインクリボン(カセット)の取り扱いが容易になる。
【0064】
(4)
(3)記載のインクリボンの色判定装置であって、
前記光学部材は、前記インクリボンを収容するカセットに内蔵されているインクリボンの色判定装置。
【0065】
(4)の構成によれば、カセットの違いによって受光素子の出力特性に変化が生じやすいため、色判定精度の向上の効果が特に大きくなる。
【0066】
(5)
(1)から(4)のいずれか1つに記載のインクリボンの色判定装置であって、
前記発光素子から光を出射させた状態で得られる前記複数の受光素子の各々の出力信号に基づいて前記インクリボンに含まれる黒色層を判定し、前記黒色層と判定してから、前記黒色層ではないと判定するまで前記インクリボンを送り出して、前記発光素子からの光が入射可能な位置に前記透明層を移動させる駆動部を備えるインクリボンの色判定装置。
【0067】
(5)の構成によれば、発光素子からの光が入射可能な位置に透明層を自動で且つ正確に移動させることができるため、出力信号の補正精度を向上させることができる。また、印刷装置の使用中であっても任意のタイミングにて補正を実施することができる。
【0068】
(6)
(1)から(5)のいずれか1つに記載のインクリボンの色判定装置であって、
前記色判定部は、前記補正後の前記出力信号及び前記特定受光素子の出力信号と閾値との比較によって、前記発光素子からの光を透過した前記インクリボンの層が前記透明層と黒色層のどちらであるかを判定し、前記透明層と前記黒色層のいずれでもない場合には、前記補正後の前記出力信号と前記特定受光素子の出力信号の大小関係に基づいて、前記インクリボンの層の色を判定するインクリボンの色判定装置。
【0069】
(6)の構成によれば、透明層と黒色層のいずれでもない場合には、補正後の出力信号と特定受光素子の出力信号の大小関係に基づいてインクリボンの層の色が判定されるため、色判定に要する演算量を減らすことができる。また、装置構成や使用環境などの影響を受けにくい。
【0070】
(7)
(1)から(6)のいずれか1つに記載のインクリボンの色判定装置と、
前記インクリボンが着脱可能な本体部と、
前記本体部に設けられたサーマルヘッドと、を備える印刷装置。
【0071】
(7)の構成によれば、インクリボンの色を高精度に判定することができるため、印刷品質を向上させることができる。
【0072】
(8)
発光素子から出射されインクリボンを透過した複数の波長域の光をそれぞれ受光する複数の受光素子の各々の出力信号に基づいて前記インクリボンの色を判定する色判定ステップと、
前記色判定ステップの前に、前記インクリボンにおける前記複数の波長域の光を透過可能な透明層を透過した前記発光素子からの光を受光した前記複数の受光素子のいずれか1つである特定受光素子の出力信号が所定値に達するように前記発光素子の発光出力を制御する発光制御ステップと、
前記特定受光素子の出力信号が前記所定値に達した状態において、前記特定受光素子の出力信号と、前記特定受光素子以外の前記受光素子の出力信号との比を求めて記憶する演算ステップと、を備え、
前記色判定ステップでは、前記複数の受光素子のうちの前記特定受光素子以外の前記受光素子の出力信号を前記比に基づいて補正し、補正後の前記出力信号と、前記特定受光素子の出力信号とに基づいて前記インクリボンの色を判定するインクリボンの色判定方法。
【0073】
(9)
(8)記載のインクリボンの色判定方法であって、
前記発光制御ステップの前に、前記発光素子から光を出射させた状態で得られる前記複数の受光素子の各々の出力信号に基づいて前記インクリボンに含まれる黒色層を判定し、前記黒色層と判定してから、前記黒色層ではないと判定するまで前記インクリボンを送り出して、前記発光素子からの光が入射可能な位置に前記透明層を移動させる駆動ステップを備えるインクリボンの色判定方法。
【0074】
(10)
(8)又は(9)記載のインクリボンの色判定方法であって、
前記色判定ステップでは、前記補正後の前記出力信号及び前記特定受光素子の出力信号と閾値との比較によって、前記発光素子からの光を透過した前記インクリボンの層が前記透明層と黒色層のどちらであるかを判定し、前記透明層と前記黒色層のいずれでもない場合には、前記補正後の前記出力信号と前記特定受光素子の出力信号の大小関係に基づいて、前記インクリボンの層の色を判定するインクリボンの色判定方法。