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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2019-137557(P2019-137557A)
(43)【公開日】2019年8月22日
(54)【発明の名称】糸継ぎ装置
(51)【国際特許分類】
   B65H 69/00 20060101AFI20190726BHJP
【FI】
   B65H69/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【外国語出願】
【全頁数】27
(21)【出願番号】特願2019-19604(P2019-19604)
(22)【出願日】2019年2月6日
(31)【優先権主張番号】10 2018 102 757.5
(32)【優先日】2018年2月7日
(33)【優先権主張国】DE
(71)【出願人】
【識別番号】518264859
【氏名又は名称】ザウラー スピニング ソリューションズ ゲー・エム・ベー・ハー ウント コー. カー・ゲー
【氏名又は名称原語表記】Saurer Spinning Solutions GmbH & Co. KG
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ズィークフリート シャットン
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエラ ヴォルフ
(57)【要約】      (修正有)
【課題】糸端が、糸継ぎ工程中、角柱状の糸継ぎヘッドの糸継ぎ通路内に確実に位置決めされていることが確保されており、継ぎ合わされた糸が、糸継ぎ工程後、角柱状の糸継ぎヘッドの糸継ぎ通路から即座に進出することが保証されている、廉価な糸継ぎ装置を提供する。
【解決手段】糸端同士を空圧式に結合するための糸継ぎ装置10であって、角柱状の糸継ぎヘッド23を備えており、この角柱状の糸継ぎヘッド23が、糸継ぎ工程中に上側に向かって十分に開いた、圧縮空気が供給される糸継ぎ通路を有していて、この糸継ぎ通路内に2つの糸端31,32を位置決めして位置固定するための、規定されて制御可能な糸寄せ器30を備えている。糸寄せ器30が、糸端31,32同士の結合により糸継ぎ工程後に形成された糸に「糸継ぎ通路から進出する」方向で力を加えるための糸出し補助手段13を備えていることを特徴としている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
糸端同士を空圧式に結合するための糸継ぎ装置(10)であって、角柱状の糸継ぎヘッド(23)を備えており、該角柱状の糸継ぎヘッド(23)は、糸継ぎ工程中に上側に向かって十分に開いた、圧縮空気が供給される糸継ぎ通路(19)を有していて、該糸継ぎ通路(19)内に2つの糸端(31,32)を位置決めして位置固定するための、規定されて制御可能な糸寄せ器(30)を備えている、糸継ぎ装置(10)において、
前記糸寄せ器(30)は、前記糸端(31,32)同士の結合により前記糸継ぎ工程後に形成された糸に、前記糸継ぎ通路(19)から進出する方向に力を加えるための糸出し補助手段(13)を備えていることを特徴とする、糸継ぎ装置(10)。
【請求項2】
前記糸寄せ器(30)は、2つの糸案内脚片(35)と、両糸案内脚片(35)とそれぞれ反対の側に位置する、糸出し補助手段(13)を形成する2つのアーム(36)とを有していることを特徴とする、請求項1記載の糸継ぎ装置(10)。
【請求項3】
前記アーム(36)は、前記糸継ぎ工程中、前記糸継ぎ通路(19)内に位置する前記糸端(31,32)よりも下側に位置決めされているように、前記糸寄せ器(30)に配置されていることを特徴とする、請求項2記載の糸継ぎ装置(10)。
【請求項4】
前記糸寄せ器(30)の前記糸案内脚片(35)と、前記糸出し補助手段(13)の前記アーム(36)とは、前記糸寄せ器(30)の組付け状態で前記角柱状の糸継ぎヘッド(23)に対して間隔を置いて配置されていることを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項記載の糸継ぎ装置(10)。
【請求項5】
前記角柱状の糸継ぎヘッド(23)の前記糸継ぎ通路(19)は、該糸継ぎ通路(19)の中心長手方向軸線(41)に対して側方にずらされて配置された糸挿入間隙(20)を有していることを特徴とする、請求項1記載の糸継ぎ装置(10)。
【請求項6】
前記糸挿入間隙(20)の壁が、前記角柱状の糸継ぎヘッド(23)の前記糸継ぎ通路(19)の壁に対して接線方向に配置されていることを特徴とする、請求項4記載の糸継ぎ装置(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、糸端同士を空圧式に結合するための糸継ぎ装置であって、角柱状の糸継ぎヘッドを備えており、この角柱状の糸継ぎヘッドが、糸継ぎ工程中に上側に向かって十分に開いた、圧縮空気が供給される糸継ぎ通路を有していて、この糸継ぎ通路内に2つの糸端を位置決めして位置固定するための、規定されて制御可能な糸寄せ器を備えている、糸継ぎ装置に関する。
【0002】
糸端同士を空圧式に結合するための糸継ぎ装置は、以前から種々異なる実施の形態において公知であり、数多くの特許出願に部分的にかなり詳細に記載されている。
【0003】
角柱状の糸継ぎヘッドの、自体上側に向かって開いていて、空気が供給される糸継ぎ通路が、糸継ぎ工程中、それぞれ特殊なカバー部材によって閉鎖されている糸継ぎ装置だけでなく、カバー部材なしに作業する角柱状の糸継ぎヘッドを備えた糸継ぎ装置、つまり、角柱状の糸継ぎヘッドの糸継ぎ通路が、糸継ぎ工程中、上側に向かって開放されたままである糸継ぎ装置も公知である。
【0004】
独国特許第3935536号明細書(DE 39 35 536 C2)には、例えば、角柱状の糸継ぎヘッドが、円形の横断面を有する糸継ぎ通路を備えた糸継ぎ装置が記載されている。糸継ぎ通路には、接線方向に配置された少なくとも1つの圧縮空気吹込み開口が開口しており、この圧縮空気吹込み開口を介して糸継ぎ通路内に糸継ぎ空気を吹き込むことができる。さらに、糸継ぎ通路はその上側に、継ぎ合わせるべき糸端を糸継ぎ通路内に糸入れすることができる、いわゆる「糸挿入スリット」を有している。角柱状の糸継ぎヘッドのこの糸挿入スリットひいては糸継ぎ通路は、糸継ぎ工程中、特殊なカバー部材によって閉鎖されている。
【0005】
比較対象となる糸継ぎ装置は、独国特許出願公開第19921855号明細書(DE 199 21 855 A1)、独国特許出願公開第10062198号明細書(DE 100 62 198 A1)および/または独国特許出願公開第10230760号明細書(DE 102 30 760 A1)にも記載されている。これらの公知の糸継ぎ装置は、特にそれぞれ中間に配置された糸挿入スリットの幅に関して異なっている。
【0006】
このように形成された糸継ぎ装置では、確かに、糸端が、糸継ぎ工程中、流入した糸継ぎ空気によって糸継ぎ通路から上側に向かって吹き出されることをカバー部材によって阻止することができるが、その代わりに、このような糸継ぎ装置は、流入した糸継ぎ空気が、継ぎ合わせるべき糸端に軸方向で強い負荷をかけてしまうという顕著な危険をはらんでいる。つまり、接線方向の圧縮空気吹込み開口を介して糸継ぎ通路内に流入した糸継ぎ空気が、載置されたカバー部材によって変向させられて、糸継ぎ通路の出口の方向へと流れ、その際、糸端に軸方向の力を伝達してしまう。
【0007】
糸継ぎ空気のこの軸方向の力によって、互いに逆方向に向けられかつ予め設定された分だけ重ね合わされて糸継ぎ通路内に配置された糸端が、糸継ぎ通路の出口の方向に移動させられてしまうことが多い。このことは、形成される継合せ結合部にマイナスの影響を与える。
【0008】
カバー部材なしに作業する糸継ぎ装置、つまり、角柱状の糸継ぎヘッドの糸継ぎ通路が、糸継ぎ工程中、上側に向かって開いたままである糸継ぎ装置も同じく種々異なる工業所有権出願によって公知である。
【0009】
このような糸継ぎ装置は、例えば欧州特許第1118570号明細書の翻訳文(DE 600 09 437 T2)および/または独国特許出願公開第102016200969号明細書(DE 10 2016 200 969 A1)に記載されている。
【0010】
これらの公知の糸継ぎ装置も同じく、それぞれ角柱状の糸継ぎヘッドを有している。この角柱状の糸継ぎヘッドは、空気が供給される、横断面で見て円形の糸継ぎ通路を備えている。この糸継ぎ通路は、継ぎ合わせるべき糸端を糸入れするための糸挿入間隙を有している。
これらの糸継ぎ装置では、継ぎ合わせるべき糸端が、糸継ぎ工程中、上側に向かって開いた糸挿入間隙を通って糸継ぎ通路から吹き出されてしまうことを阻止するために、糸継ぎ空気用の圧縮空気吹込み開口が、しばしば特殊な配置および構成を有しているだけでなく、糸挿入間隙もしばしば極めて特殊に構成もしくは配置されている。つまり、これらの公知の糸継ぎ装置では、糸挿入間隙が、例えば、欧州特許第1118570号明細書の翻訳文に図示されたように、重畳し合った部材を有しているように形成されているか、または糸挿入間隙が、独国特許出願公開第102016200969号明細書から明らかなように、比較的少ない幅と、糸端の糸入れ方向に湾曲させられた経過とを有している。
【0011】
このような形態の糸継ぎ装置は、付加的なカバー部材の省略に基づき、構成上の構造の点で確かに比較的コンパクトであり、また、比較的廉価に製造することができるが、糸継ぎ工程後、角柱状の糸継ぎヘッドの糸継ぎ通路からの継ぎ合わされた糸の糸出しがやや困難に実施されることが多くなってしまうという欠点を有している。
これは、このような糸継ぎ装置が、糸継ぎ工程後、糸が角柱状の糸継ぎヘッドの糸継ぎ通路から自動的に滑り出るのではなく、糸継ぎ通路内にとどまってしまうという顕著な危険を常にはらんでいることを意味している。これによって、通常、糸が損傷を受けるかもしくは再び切れてしまう。
【0012】
前述した形態の糸継ぎ装置から出発して、本発明の課題は、1つには、糸端が、糸継ぎ工程中、角柱状の糸継ぎヘッドの糸継ぎ通路内に確実に位置決めされていることが確保されており、もう1つには、継ぎ合わされた糸が、糸継ぎ工程後、角柱状の糸継ぎヘッドの糸継ぎ通路から即座に進出することが保証されている、廉価な糸継ぎ装置を開発することである。
【0013】
この課題は、本発明によれば、糸寄せ器が、糸端同士の結合により糸継ぎ工程後に形成された糸に「糸継ぎ通路から進出する」方向で力を加えるための糸出し補助手段を備えていることによって解決される。
【0014】
本発明の有利な構成は従属請求項の対象である。
【0015】
糸寄せ器の本発明による実施の形態は、糸寄せ器に配置された糸出し補助手段によって、特に継ぎ合わされた糸に常にアクティブに機械的な力が加えられるという利点を有している。つまり、糸挿入間隙の領域に比較的困難な状況が与えられていたとしても、糸出し補助手段によって、継ぎ合わされた糸が、糸継ぎ工程後、角柱状の糸継ぎヘッドの糸継ぎ通路から常に即座に進出させられることが確実に確保される。
したがって、本発明により形成された糸継ぎ装置は、極めて確実に作業するだけでなく、カバー部材の省略に基づきかなり廉価にもなる。
【0016】
有利な実施の形態では、糸寄せ器が、2つの糸案内脚片と、両糸案内脚片とそれぞれ反対の側に位置する、糸出し補助手段を形成する2つのアームとを有していることが規定されている。
【0017】
構造の点で比較的単純でスペースを節約したこのような構成によって、継ぎ合わせるべき糸端が、糸案内脚片によって角柱状の糸継ぎヘッドの糸継ぎ通路内に問題なく糸入れされ、糸継ぎ工程中、糸継ぎ通路内に位置適正に位置固定されていることが保証されるだけでなく、さらに、糸出し補助手段のアームによって、継ぎ合わされた糸が、糸継ぎ工程後、角柱状の糸継ぎヘッドの糸継ぎ通路から常に即座に糸出しされることも確実に確保される。
【0018】
別の有利な実施の形態では、糸出し補助手段のアームが、糸継ぎ工程中、角柱状の糸継ぎヘッドの糸継ぎ通路内に位置する糸端よりも下側に位置決めされているように、糸寄せ器に配置されている。
このように形成された糸寄せ器によって、1つには、角柱状の糸継ぎヘッドの糸継ぎ通路内に配置された上糸および下糸の糸端に、糸継ぎ工程中、糸出し補助手段のアームによってマイナスの影響が与えられないことが確保され、もう1つには、結合された糸に、糸継ぎ工程後、糸出し補助手段のアームによって有効に力を加えることができ、結合された糸を角柱状の糸継ぎヘッドの糸継ぎ通路から確実に取り出すことができることが保証される。
さらに、このような実施の形態では、糸寄せ器の糸出し補助手段のアームを整然と運動させるかもしくは位置決めするために必要となる制御手間が比較的少なくなる。
【0019】
有利には、糸寄せ器の糸案内脚片と、糸出し補助手段のアームとが、糸寄せ器の組付け状態で角柱状の糸継ぎヘッドに対して間隔を置いて配置されている。この間隔によって、糸案内脚片または糸出し補助手段のアームにより糸継ぎ工程にマイナスの影響が与えられることが確実に阻止される。
【0020】
さらに、好適な構成では、角柱状の糸継ぎヘッドの糸継ぎ通路が、この糸継ぎ通路の中心長手方向軸線に対して側方にずらされて配置された糸挿入間隙を有しており、この糸挿入間隙の壁が、好ましくは、角柱状の糸継ぎヘッドの糸継ぎ通路の壁に対して接線方向に配置されていることが規定されている。
これは、糸継ぎ通路の中心長手方向軸線に対して側方にずらされて配置されたこのような糸挿入間隙によって、糸端が、糸継ぎ工程中、糸継ぎ通路から吹き出されてしまうことが確実に阻止され、さらに、糸挿入間隙の壁を角柱状の糸継ぎヘッドの糸継ぎ通路の壁に対して接線方向に配置することによって、継ぎ合わされた糸の機械的な糸出しが容易になることを意味している。
【0021】
本発明の更なる詳細は、以下に図面に基づき説明する実施例から知ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】自動綾巻きワインダの1つの作業ユニットの概略的な側面図であり、この作業ユニットが糸継ぎ装置を備えており、この糸継ぎ装置の糸寄せ器が本発明による糸出し補助手段を有している。
図2】本発明により形成された糸継ぎ装置、つまり、角柱状の糸継ぎヘッドと、糸寄せ器とを備えた糸継ぎ装置の斜視的な正面図であり、糸寄せ器が、2つの糸案内脚片と、2つのアームにより形成された糸出し補助手段とを有している。
図3】先行技術に係る糸継ぎ装置、この実施例では、糸継ぎ工程中にカバー部材により閉鎖された糸継ぎ通路を備えた角柱状の糸継ぎヘッドと、継ぎ合わせるべき糸端を糸入れするための公知の糸寄せ器との平面図であり、角柱状の糸継ぎヘッドと、糸寄せ器とが、図面をより見やすくするという理由から互いに間隔を置いて示してある。
図4】糸継ぎ工程中に開いている糸継ぎ通路を備えた角柱状の糸継ぎヘッドと、糸出し補助手段を備えた糸寄せ器とを有する、本発明により形成された糸継ぎ装置の平面図であり、ここでも、角柱状の糸継ぎヘッドと、本発明により形成された糸寄せ器とが、図面をより見やすくするという理由から互いに間隔を置いて示してある。
【0023】
図1には、綾巻きパッケージを製造する繊維機械、本実施例では自動綾巻きワインダ1の1つの作業ユニット2が概略的に側面図で示してある。このような形態の自動綾巻きワインダ1はそのエンドフレーム同士の間に、巻取りユニットと呼ばれることが多い複数の同形の前述したような作業ユニット2を有している。これらの、いわゆる「巻取りユニット2」では、好ましくは生産プロセスにおいて上流側に配置されたリング精紡機で生産された精紡コップ9が、大きな体積の綾巻きパッケージ15に巻き返される。この綾巻きパッケージ15はその完成後に、自動的に作業するサービスユニット(図示せず)によって、自動綾巻きワインダ1の機械長さ相当の綾巻きパッケージ搬送装置21に引き渡される。
【0024】
さらに、このような自動綾巻きワインダ1は、通常、ボビン・巻管搬送システム3の形態のロジスティックス装置を有している。図1にコップ供給区間4、逆転駆動可能な蓄え区間5、巻取りユニット2に通じる横方向搬送区間6ならびに巻管戻し区間7だけを示した前述したボビン・巻管搬送システム3では、搬送トレー8上に鉛直方向に向けられた状態で位置決めされて、精紡コップ9もしくは解舒済みの空管が循環する。
供給された精紡コップ9は、それぞれ巻取りユニット2に対する横方向搬送区間6の範囲内に位置する解舒位置39で大きな体積の綾巻きパッケージ15に巻き返される。整然とした巻取り運転を保証することができるようにするために、個々の巻取りユニット2は、公知のように、種々異なる装置、特にサクションノズル12と、グリッパ管25と、好ましくは空圧式に作業する糸継ぎ装置10とを有している。
【0025】
図1に示したように、特に角柱状の糸継ぎヘッド23と、糸寄せ器30とを備えた空圧式の糸継ぎ装置10は、正規の糸走路に対してやや引っ込められて配置されていて、そのスプライサハウジング34でもって作業ユニット2の巻取りユニットハウジング33に取り付けられている。さらに、糸継ぎ装置10は、図2に示したように、上側の糸クランプ・切断装置11と、下側の糸クランプ・切断装置17と、保持・解撚管18とを有している。
【0026】
すでに前述したように、巻取りユニット2の各々は、回動軸線16を中心として制限された範囲内で回動可能に支承された、負圧が供給されるサクションノズル12と、符号26で示した回動軸線を有する、負圧が供給されるグリッパ管25とを有している。
【0027】
図1の実施例によれば、サクションノズル12は、このサクションノズル12が綾巻きパッケージ15から引き戻した上糸31の糸端を糸継ぎ装置10内もしくは付属の機能部材内に丁度糸入れしようとしている。
グリッパ管25は、同時にまたは時間的にややずらして、本実施例では作業ユニット固有の糸テンショナに位置固定された下糸32の糸端を糸テンショナから受け取り、次いで、下糸32の糸端を同じく糸継ぎ装置10内もしくは付属の機能部材内に糸入れする。
【0028】
製造すべき綾巻きパッケージ15は、巻取りプロセス中、巻取り装置24のパッケージフレーム28内に自由に回転可能に保持されていて、このとき、その表面でもって糸案内ドラム14に載置されている。この糸案内ドラム14は摩擦接続を介して綾巻きパッケージ15を駆動し、このとき、同時に糸案内溝によって、巻き上げられる糸をトラバースする。
さらに、このような自動綾巻きワインダ1は、通常、それぞれ中央制御ユニット37を有している。この中央制御ユニット37は、例えば、機械バス38を介して個々の巻取りユニット2の作業ユニットコンピュータ29に接続されている。
【0029】
図2には、本発明により形成された糸継ぎ装置10が、より大きな尺度で斜視的な正面図にて示してある。
明らかなように、糸継ぎ装置10は、空気が供給される角柱状の糸継ぎヘッド23と、保持・解撚管18と、上側の糸クランプ・切断装置11と、下側の糸クランプ・切断装置17と、糸出し補助手段13を有する糸寄せ器30とを備えている。
図2に示した実施例では、巻取りユニット2のサクションノズル12とグリッパ管25とが、それぞれ、いわゆる「糸挿入位置」に位置決めされている。
つまり、サクションノズル12が、上糸31の糸端を綾巻きパッケージ15から引き戻して、糸挿入間隙20を介して角柱状の糸継ぎヘッド23の糸継ぎ通路19内に挿入しているのに対して、コントロールされたクリヤラ切断後に通常では糸テンショナに位置固定されている下糸32の、精紡コップ9に結合されている糸端は、グリッパ管25によって受け取られて、同じく糸挿入間隙20を介して角柱状の糸継ぎヘッド23の糸継ぎ通路19内に挿入されている。
糸継ぎ工程中でも上側に向かって開いた角柱状の糸継ぎヘッド23は、例えばねじ締結部材27を介してベースボディ22に接続されている。このベースボディ22には、さらに、空気が供給される保持・解撚管18が嵌め込まれている。
さらに明らかなように、上糸31の糸端は、さらに、上側の糸クランプ・切断装置11の糸クランプ部材11’と、下方に配置された糸クランプ・切断装置17の糸切断部材17’’とに糸入れされており、相応して、下糸32の糸端は、下側の糸切断・クランプ装置17の糸クランプ部材17’と、上側の糸切断・クランプ装置11の糸切断部材11’’とに糸入れされている。
【0030】
回動軸40を介して旋回運動可能に支承されていて、駆動装置(図示せず)により規定されて制御可能である本発明により形成された糸寄せ器30は、2つの糸案内脚片35と、2つのアーム36から成る、いわゆる「糸出し補助手段13」とを有している。
この糸出し補助手段13のアーム36は、図2から明らかなように、糸寄せ器30が内向きに旋回させられている場合に、角柱状の糸継ぎヘッド23の糸継ぎ通路19内に配置された上糸31および下糸32の糸端よりも下側に位置決めされているように、糸寄せ器30に配置されている。つまり、糸継ぎ工程中に上糸31および下糸32の糸端よりも下側に位置決めされた糸出し補助手段13のアーム36が、外向きへの糸寄せ器30の旋回時に、継ぎ合わされた糸を捕捉し、この継ぎ合わされた糸が、糸挿入間隙20を通って角柱状の糸継ぎヘッド23の糸継ぎ通路19から送り出されるようになっている。その後、露出した糸によって、正規の巻取り工程を問題なく再開することができる。つまり、巻取りユニット2を再び整然と始動させることができる。
【0031】
図3には、先行技術に係る糸継ぎ装置が平面図で示してある。図面をより見やすくするという理由から、糸継ぎ装置10の角柱状の糸継ぎヘッド23と、付属の糸寄せ器30とは、互いにやや間隔を置いて図示してある。
図示の実施例では、糸継ぎ装置10が角柱状の糸継ぎヘッド23を有している。この角柱状の糸継ぎヘッド23は、空気が供給される糸継ぎ通路19を備えている。この糸継ぎ通路19には、好ましくはこの糸継ぎ通路19の中心長手方向軸線41の範囲内に配置された比較的広幅の糸挿入間隙20を介して糸の到達が可能となる。
好ましくは横断面で見て円形の糸継ぎ通路19には、圧縮空気吹込み開口42が開口している。
さらに、角柱状の糸継ぎヘッド23の糸継ぎ通路19は、糸継ぎ工程中、カバー部材43によって閉鎖されている。
このように形成された糸継ぎ装置10では、継ぎ合わされた糸が、糸継ぎ工程後に、つまり、巻取りプロセスの再開時に、糸継ぎ通路19の中心長手方向軸線41の範囲内に配置された比較的広幅の糸挿入間隙20を通って角柱状の糸継ぎヘッド23の糸継ぎ通路19から即座に滑り出ることができる。
これは、糸継ぎ装置10が、公知のように、通常の糸走路に対してやや引っ込められて配置されているため、カバー部材43が離反させられた途端、継ぎ合わされた糸が、正規の糸走路の方向へと自動的に早く戻ることを意味している。
【0032】
しかしながら、公知の糸継ぎ装置10はそのカバー部材43に基づき製造の点でかなり手間を要し、相応して、比較的高価である。
【0033】
図4には、本発明により形成された糸継ぎ装置10の実施例が平面図で示してある。
糸継ぎ装置10は角柱状の糸継ぎヘッド23を有している。この角柱状の糸継ぎヘッド23の糸継ぎ通路19は糸継ぎ工程中に開いている。さらに、糸継ぎ装置10は、本発明による糸出し補助手段13を備えた糸寄せ器30を有している。
ここでも、図面をより見やすくするという理由から、糸継ぎ装置10の角柱状の糸継ぎヘッド23と、本発明により形成された付属の糸寄せ器30とが、互いにやや間隔を置いて図示してある。
【0034】
明らかなように、糸継ぎ装置10は角柱状の糸継ぎヘッド23を有している。この角柱状の糸継ぎヘッド23は、空気が供給される糸継ぎ通路19を備えている。この糸継ぎ通路19には、この糸継ぎ通路19の中心長手方向軸線41に対して側方にずらされて配置された糸挿入間隙20を介して糸の到達が可能となる。
糸継ぎ通路19には、圧縮空気吹込み開口42が開口している。この圧縮空気吹込み開口42は、吹込み空気が糸挿入間隙20の方向にじかに流れてしまうことを可能な限り回避するように配置されている。
糸継ぎ装置10は、組付け状態では、慣用のように、通常の糸走路に対してやや引っ込められて配置されているので、ここでも、糸が、糸寄せ器30の離反後に糸継ぎ通路19から正規の糸走路の方向に即座に進出しようとする。
しかしながら、図示の実施例のように、カバー部材なしで作業し、したがって、中心からずらされて配置された糸挿入間隙20を有する糸継ぎ装置10の場合には、継ぎ合わされた糸が、角柱状の糸継ぎヘッド23の糸継ぎ通路19に張り出した部材に引っ掛かったままとなり、その結果、糸が糸継ぎ通路19から進出することができず、続く巻取りプロセスの開始時に再び断裂されるかまたは損傷を被ってしまう危険が常に存在している。
【0035】
このことを回避するために、糸寄せ器30が本発明による糸出し補助手段13を有している。この糸出し補助手段13は2つのアーム36から成っている。両アーム36は、内向きへの糸寄せ器30の旋回時に、糸継ぎ工程中に角柱状の糸継ぎヘッド23の糸継ぎ通路19内に配置された上糸31および下糸32の糸端よりも下側に位置決めされている。
つまり、糸継ぎ工程の終了後に糸寄せ器30がその出発位置に旋回して戻る際、糸出し補助手段13のアーム36が、継ぎ合わされた糸を捕捉して、この糸を糸挿入間隙20を通して角柱状の糸継ぎヘッド23の糸継ぎ通路19から確実に送り出す。
次いで、巻取りプロセスを問題なく再開することができる。
【0036】
本発明により形成された糸寄せ器を備えた糸継ぎ装置の機能
通常の巻取り運転中には、糸継ぎ装置10の糸寄せ器30は、この糸寄せ器10の構成部材によって、糸の走行も糸継ぎ装置10の角柱状の糸継ぎヘッド23内への糸端の糸入れも妨げない出発位置に常に駐止されている。
つまり、糸寄せ器30の糸案内脚片35が糸走路に隣接して位置決めされており、糸出し補助手段13のアーム36が糸走路よりも下側に位置決めされている。
【0037】
例えば、糸クリヤラが許容不能な糸欠点を発見して、糸クリヤラ切断を開始したため、巻取り中断が生じると、まず、上糸31が綾巻きパッケージ15に巻き上げられるのに対して、下糸32は、通常、巻取りユニット2の糸テンショナに捕捉される。
【0038】
次いで、巻取り中断を記録もしくは開始した作業ユニットコンピュータ29によって、上糸31の糸端がサクションノズル12により再び取り込まれ、下方に旋回したサクションノズル12により糸継ぎ装置10の領域に移送されるようになっている。つまり、サクションノズル12が、糸案内金属薄板により案内される上糸31の糸端を糸挿入間隙20を介して角柱状の糸継ぎヘッド23の糸継ぎ通路19内に糸入れする。
【0039】
次いでまたは同時に、グリッパ管25が下糸32の糸端を糸テンショナから受け取り、同じく糸挿入間隙20を介して角柱状の糸継ぎヘッド23の糸継ぎ通路19内に糸入れする。
【0040】
次いで、上糸31および下糸32の糸端が糸継ぎ工程のために下準備される。これは、糸端31,32が、慣用のように、保持・解撚管18内に吸い込まれ、そこで、糸端31,32の糸撚りが少なくとも部分的に解されることを意味している。その後、下準備された糸が糸寄せ器30によって要求に即して角柱状の糸継ぎヘッド23の糸継ぎ通路19内に位置決めされる。
つまり、該当する巻取りユニット2の作業ユニットコンピュータ29が、制御線路を介して、規定されて制御可能な駆動装置、好ましくはステッピングモータを始動させる。このステッピングモータは、引き続き、糸寄せ器30を内向きに旋回させ、これによって、この糸寄せ器30の糸案内脚片35が、上糸31および下糸32の糸端を角柱状の糸継ぎヘッド23の糸継ぎ通路19内に整然と位置決めするだけでなく、糸出し補助手段13のアーム36が、上糸31および下糸32の糸端よりも下側に配置されるようにもなる。
【0041】
継ぎ合わせるべき糸端は、糸寄せ器30の糸案内脚片35によって確実に位置固定され、続く糸継ぎ工程中、予め設定された位置にとどまっている。
さらに、糸継ぎ工程中、角柱状の糸継ぎヘッド23の糸継ぎ通路19は開いたままであるので、余剰の糸継ぎ空気は糸継ぎ通路19から上方に問題なく逃げ出すことができ、これによって、ほぼ糸むらのない糸結合部が形成される。
【0042】
次いで、作業ユニットコンピュータ29による駆動装置の相応の制御によって、糸寄せ器30がその出発位置に旋回して戻される。この旋回による戻り時に、糸出し補助手段13のアーム36が、継ぎ合わされた糸を捕捉して、糸挿入間隙20を通して角柱状の糸継ぎヘッド23の糸継ぎ通路19から正規の糸走路の方向に押し出す。
つまり、規定通りに継ぎ合わされた糸が、引き続き、角柱状の糸継ぎヘッド23の糸継ぎ通路19から通常の糸走路に滑り戻され、これによって、巻取りプロセスを問題なく再開することができる。
【符号の説明】
【0043】
1 自動綾巻きワインダ
2 作業ユニット
3 ボビン・巻管搬送システム
4 コップ供給区間
5 蓄え区間
6 横方向搬送区間
7 巻管戻し区間
8 搬送トレー
9 精紡コップ
10 糸継ぎ装置
11 糸クランプ・切断装置
12 サクションノズル
13 糸出し補助手段
14 糸案内ドラム
15 綾巻きパッケージ
16 回動軸線
17 糸クランプ・切断装置
18 保持・解撚管
19 糸継ぎ通路
20 糸挿入間隙
21 綾巻きパッケージ搬送装置
22 ベースボディ
23 角柱状の糸継ぎヘッド
24 巻取り装置
25 グリッパ管
26 回動軸線
27 ねじ締結部材
28 パッケージフレーム
29 作業ユニットコンピュータ
30 糸寄せ器
31 上糸
32 下糸
33 作業ユニットハウジング
34 ハウジング
35 糸案内脚片
36 アーム
37 中央制御ユニット
38 機械バス
39 解舒位置
40 回動軸
41 中心長手方向軸線
42 圧縮空気吹込み開口
43 カバー部材
図1
図2
図3
図4
【外国語明細書】