【解決手段】 元素A、ユーロピウム(Eu)、シリコン(Si)、アルミニウム(Al)、酸素(O)、及び窒素(N)を、下記組成式(1)の原子数比で含有する赤色蛍光体である。
ただし、前記組成式(1)中、前記元素Aは、カルシウム(Ca)及びバリウム(Ba)を含む2族の元素である。前記組成式(1)中のm、x、y、及びnは、それぞれ3<m<5、0<x<1、0.012≦y≦0.10、及び0<n<10を満たす。前記組成式(1)は、Caの原子数比をαとし、Baの原子数比をβとしたとき、下記式(I)を満たす。
PLE(Photoluminescence Excitation)スペクトルにおいて、励起波長450nmにおける最大発光波長の発光強度を1としたときの、720nmの発光強度が0.2以上である請求項1から3のいずれかに記載の赤色蛍光体。
PLE(Photoluminescence Excitation)スペクトルにおいて、励起波長450nmにおける最大発光波長の発光強度を1としたときの、750nmの発光強度が0.1以上である請求項1から4のいずれかに記載の赤色蛍光体。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
発光ダイオードを用いた白色光源に赤色蛍光体が使用される場合には、色域拡大に寄与する700nm以上の長波長の発光強度が大きいこと、及び長時間の使用においても劣化しにくいことが望まれる。
しかし、特許第4730458号公報に記載の技術では、長時間の使用において劣化する場合がある。
【0007】
本発明は、このような従来の実情に鑑みて提案されたものであり、700nm以上の長波長の発光強度が大きく、かつ長時間の使用においても劣化しにくい赤色蛍光体、及びその製造方法、並びに前記赤色蛍光体を用いた白色光源、照明装置、及び液晶表示装置に関する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。即ち、
<1> 元素A、ユーロピウム(Eu)、シリコン(Si)、アルミニウム(Al)、酸素(O)、及び窒素(N)を、下記組成式(1)の原子数比で含有することを特徴とする赤色蛍光体である。
【化2】
ただし、前記組成式(1)中、前記元素Aは、カルシウム(Ca)及びバリウム(Ba)を含む2族の元素である。前記組成式(1)中のm、x、y、及びnは、それぞれ3<m<5、0<x<1、0.012≦y≦0.10、及び0<n<10を満たす。前記組成式(1)は、Caの原子数比をαとし、Baの原子数比をβとしたとき、下記式(I)を満たす。
0.05≦α/(α+β)<1.00 ・・・式(I)
<2> 前記組成式(1)が、更に、下記式(II)を満たす前記<1>に記載の赤色蛍光体である。
0.30≦β/(α+β)<1.00 ・・・式(II)
<3> 前記組成式(1)が、更に、下記式(III)を満たす前記<1>から<2>のいずれかに記載の赤色蛍光体である。
0.50≦(α+β)/(m−x)≦1.00 ・・・式(III)
<4> PLE(Photoluminescence Excitation)スペクトルにおいて、励起波長450nmにおける最大発光波長の発光強度を1としたときの、720nmの発光強度が0.2以上である前記<1>から<3>のいずれかに記載の赤色蛍光体である。
<5> PLE(Photoluminescence Excitation)スペクトルにおいて、励起波長450nmにおける最大発光波長の発光強度を1としたときの、750nmの発光強度が0.1以上である前記<1>から<4>のいずれかに記載の赤色蛍光体である。
<6> 前記<1>から<5>のいずれかに記載の赤色蛍光体を製造する、赤色蛍光体の製造方法であって、
元素A、ユーロピウム(Eu)、シリコン(Si)、アルミニウム(Al)、酸素(O)、及び窒素(N)が、前記組成式(1)の原子数比となるように、元素Aの化合物、窒化ユーロピウム及び酸化ユーロピウムの少なくともいずれかであるユーロピウム化合物、窒化シリコン、窒化アルミニウム、並びにメラミンを混合して混合物とし、前記混合物の焼成と、前記焼成によって得られた焼成物の粉砕とを行う工程を含むことを特徴とする赤色蛍光体の製造方法である。
<7> 前記混合物の焼成と、前記焼成によって得られた焼成物の粉砕とを、繰り返し行う前記<6>に記載の赤色蛍光体の製造方法である。
<8> 素子基板上に形成された青色発光ダイオードと、
前記青色発光ダイオード上に配置されていて赤色蛍光体と緑色蛍光体とを透明樹脂に混練した混練物とを有し、
前記赤色蛍光体は、前記<1>から<5>のいずれかに記載の赤色蛍光体であることを特徴とする白色光源である。
<9> 照明基板上に複数の白色光源が配置されてなり、
前記白色光源が、前記<8>に記載の白色光源であることを特徴とする照明装置である。
<10> 液晶表示パネルと、
前記液晶表示パネルを照明する複数の白色光源を用いたバックライトとを有し、
前記白色光源が、前記<8>に記載の白色光源であることを特徴とする液晶表示装置である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、700nm以上の長波長の発光強度が大きく、かつ長時間の使用においても劣化しにくい赤色蛍光体、及びその製造方法、並びに前記赤色蛍光体を用いた白色光源、照明装置、及び液晶表示装置を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(赤色蛍光体)
本発明の赤色蛍光体は、元素A、ユーロピウム(Eu)、シリコン(Si)、アルミニウム(Al)、酸素(O)、及び窒素(N)を、下記組成式(1)の原子数比で含有する。
【化3】
ただし、前記組成式(1)中、前記元素Aは、カルシウム(Ca)及びバリウム(Ba)を含む2族の元素である。前記組成式(1)中のm、x、y、及びnは、それぞれ3<m<5、0<x<1、0.012≦y≦0.10、及び0<n<10を満たす。前記組成式(1)は、Caの原子数比をαとし、Baの原子数比をβとしたとき、下記式(I)を満たす。
0.05≦α/(α+β)<1.00 ・・・式(I)
ここで、Ca、Ba以外の2族元素の原子数比をγとしたとき、m−x=α+β+γとなる。
【0012】
本発明者らは、元素A、ユーロピウム(Eu)、シリコン(Si)、アルミニウム(Al)、酸素(O)、及び窒素(N)を、下記組成式(1−1)の原子数比で含有する赤色蛍光体において、元素Aをカルシウム(Ca)及びバリウム(Ba)を含む2族の元素とし、且つ、CaとBaとの割合について、Caの原子数比をαとし、Baの原子数比をβとしたとき、下記式(I)を満たすようにしたところ、700nm以上の長波長の発光強度が大きいことに加えて、長時間の使用においても劣化しにくい赤色蛍光体が得られることを見出し、本発明の完成に至った。
0.05≦α/(α+β)<1.00 ・・・式(I)
【化4】
ただし、前記組成式(1−1)中、前記元素Aは、2族の元素である。前記組成式(1−1)中のm、x、y、及びnは、それぞれ3<m<5、0<x<1、0.012≦y≦0.10、及び0<n<10を満たす。
【0013】
なお、元素AがCaのみの場合には、700nm以上の長波長発光強度は増す傾向はあるが、650nm前後の最大発光波長の発光強度が低下し、更に長時間の使用において劣化が生じてしまう。
また、元素AがBaのみの場合には、長時間の使用において劣化は生じにくいが、最大発光波長が短波長側にシフトして長波長発光強度が低下し、更に最大発光波長の発光強度も低下してしまう。
また、元素AがBaとSrのみの組合せの場合には、最大発光波長の発光強度は比較的高く、長時間の使用において劣化は生じにくいが、最大発光波長が短波長側にシフトして長波長発光強度が低下してしまう。
【0014】
前記組成式(1)において、前記2族の元素としては、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)などが挙げられる。
前記元素Aは、カルシウム(Ca)及びバリウム(Ba)を含む2族の元素であり、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、及びバリウム(Ba)を含む2族の元素であってもよい。
【0015】
前記組成式(1)において、mは、3<m<5を満たし、3.5<m<4を満たすことが好ましい。
前記組成式(1)において、xは、0<x<1を満たし、0.1<x<0.3を満たすことが好ましい。
前記組成式(1)において、yは、0.012≦y≦0.10を満たし、0.05<y<0.10を満たすことが好ましい。
前記組成式(1)において、nは、0<n<10を満たし、0.5<n<2を満たすことが好ましい。
【0016】
前記組成式(1)は、前記式(I)を満たす。長時間の使用においても赤色蛍光体がより劣化しにくい点で、前記組成式(1)は、下記式(I−1)を満たすことが好ましく、下記式(I−2)を満たすことがより好ましく、下記式(I−3)を満たすことが特に好ましい。
0.05≦α/(α+β)≦0.50 ・・・式(I−1)
0.05≦α/(α+β)≦0.40 ・・・式(I−2)
0.10≦α/(α+β)≦0.40 ・・・式(I−3)
【0017】
前記組成式(1)は、長時間の使用においても赤色蛍光体がより劣化しにくい点で、下記式(II)を満たすことが好ましく、下記式(II−1)を満たすことがより好ましく、下記式(II−2)を満たすことが更により好ましく、下記式(II−3)を満たすことが特に好ましい。
0.30≦β/(α+β)<1.00 ・・・式(II)
0.50≦β/(α+β)<1.00 ・・・式(II−1)
0.60≦β/(α+β)≦0.95 ・・・式(II−2)
0.60≦β/(α+β)≦0.90 ・・・式(II−3)
【0018】
前記組成式(1)は、下記式(III)を満たすことが好ましく、下記式(III−1)を満たすことがより好ましく、下記式(III−2)を満たすことが特に好ましい。
0.50≦(α+β)/(m−x)≦1.00 ・・・式(III)
0.60≦(α+β)/(m−x)≦1.00 ・・・式(III−1)
0.70≦(α+β)/(m−x)<1.00 ・・・式(III−2)
【0019】
前記赤色蛍光体は、PLE(Photoluminescence Excitation)スペクトルにおいて、励起波長450nmにおける最大発光波長の発光強度を1としたときの、720nmの発光強度が0.2以上であることが好ましい。
前記PLE(Photoluminescence Excitation)スペクトルにおいて、励起波長450nmにおける最大発光波長の発光強度を1としたときの、750nmの発光強度が0.1以上であることが好ましい。
前記発光強度は、例えば、分光光度計を用い、赤色蛍光体を450nmの波長で励起し、波長460nmから780nmまでの発光スペクトルを測定することで確認することができる。
【0020】
前記赤色蛍光体は、赤色波長帯で最大発光波長を有する。前記最大発光波長としては、例えば、640nm〜680nmなどが挙げられる。
【0021】
なお、前記組成式(1)中の窒素(N)の原子数比[12+y−2(n−m)/3]は、前記組成式(1)内における各元素の原子数比の和が中性になるように計算されている。即ち、前記組成式(1)における窒素(N)の原子数比をδとし、前記組成式(1)を構成する各元素の電荷が補償されるとした場合、2(m−x)+2x+4×9+3y−2n−3δ=0となる。これにより、窒素(N)の原子数比δ=12+y−2(n−m)/3と算出される。
【0022】
以上のような前記組成式(1)の赤色蛍光体は、斜方晶系空間点群Pmn21に属する結晶構造で構成された化合物となっている。このような結晶構造において、一部のシリコン(Si)がアルミニウム(Al)に置き換わった構成である。
【0023】
前記組成式(1)で示される赤色蛍光体には、炭素(C)が含有されていてもよい。この炭素(C)は、赤色蛍光体の製造プロセスにおける原材料に由来する元素であり、合成の過程で除去されずにそのまま赤色蛍光体を構成する合成材料中に残されてもよい。炭素(C)が含まれることによって、生成過程での余剰な酸素(O)を取り除き、酸素量を調整する機能を果たす。
【0024】
(赤色蛍光体の製造方法)
本発明の赤色蛍光体の製造方法は、焼成及び粉砕工程を少なくとも含み、更に必要に応じて、その他の工程を含む。
本発明の赤色蛍光体の製造方法は、本発明の前記赤色蛍光体を製造する方法である。
【0025】
<焼成及び粉砕工程>
前記焼成及び粉砕工程においては、混合物の焼成と、前記焼成によって得られた焼成物の粉砕とを行う。
前記混合物は、元素A、ユーロピウム(Eu)、シリコン(Si)、アルミニウム(Al)、酸素(O)、及び窒素(N)が、前記組成式(1)の原子数比となるように、元素Aの化合物、窒化ユーロピウム及び酸化ユーロピウムの少なくともいずれかであるユーロピウム化合物、窒化シリコン、窒化アルミニウム、並びにメラミンを混合して混合物である。
【0026】
前記赤色蛍光体の製造方法に係る一実施の形態を、
図1のフローチャートによって以下に説明する。
【0027】
<原料混合工程(S1)>
図1に示すように、最初に「原料混合工程」S1を行う。この原料混合工程では、まず、前記組成式(1)を構成する元素を含む原料化合物ととともに、メラミン(C
3H
6N
6)を原料として用いて混合するところが特徴的である。
【0028】
前記組成式(1)を構成する元素を含む原料化合物としては、例えば、元素Aの化合物、ユーロピウム化合物、窒化シリコン(Si
3N
4)、及び窒化アルミニウム(AlN)を用意する。そして、用意した各原料化合物に含まれる前記組成式(1)の元素が、前記組成式(1)の原子数比となるように、各化合物を所定のモル比に秤量する。秤量した各化合物を混合して混合物を生成する。
前記元素Aの化合物としては、例えば、元素Aの炭酸化合物、元素Aの酸化物、元素Aの水酸化物などが挙げられ、より具体的には、例えば、炭酸マグネシウム(MgCO
3)、炭酸カルシウム(CaCO
3)、酸化カルシウム(CaO)、炭酸ストロンチウム(SrCO
3)、炭酸バリウム(BaCO
3)、酸化バリウム(BaO)、水酸化バリウム(Ba(OH)
2)などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0029】
またメラミンは、フラックスとして、元素Aの化合物、ユーロピウム化合物、窒化シリコン、及び窒化アルミニウム(AlN)の全モル数の合計に対して所定割合で添加する。
【0030】
前記混合物は、例えば、窒素雰囲気中のグローボックス内で、メノウ乳鉢内で混合することで得られる。
【0031】
<第1熱処理工程(S2)>
次に、「第1熱処理工程」S2を行う。この第1熱処理工程では、前記混合物を焼成して、赤色蛍光体の前駆体となる第1焼成物を生成する。例えば、窒化ホウ素製坩堝内に前記混合物を入れて、水素(H
2)雰囲気中、又は、窒素(N
2)水素(H
2)混合ガス雰囲気中で熱処理を行う。この第1熱処理工程では、例えば、熱処理温度を1400℃に設定し、2時間の熱処理を行う。この熱処理温度、熱処理時間は、前記混合物を焼成できる範囲で、適宜変更することができる。
【0032】
前記第1熱処理工程では、融点が250℃以下であるメラミンが熱分解される。この熱分解された炭素(C)、水素(H)が、元素Aの化合物に含まれる一部の酸素(O)と結合して、炭酸ガス(COもしくはCO
2)やH
2Oとなり、その炭酸ガスやH
2Oは気化されるので、前記第1焼成物から取り除かれる。また、分解されたメラミンに含まれる窒素(N)によって、還元と窒化とが促される。
【0033】
<第1粉砕工程(S3)>
次に、「第1粉砕工程」S3を行う。この第1粉砕工程では、前記第1焼成物を粉砕して第1粉末を生成する。例えば、窒素雰囲気中のグローボックス内で、メノウ乳鉢を用いて、前記第1焼成物を粉砕し、その後、例えば#100メッシュ(目開きが約200μm)に通して、平均粒径が3μmもしくはそれ以下の粒径の前記第1焼成物(第1粉末)を得る。これにより、次の工程の第2熱処理で生成される第2焼成物に成分むらを生じにくくさせる。
【0034】
<第2熱処理工程(S4)>
次に、「第2熱処理工程」S4を行う。この第2熱処理工程では、前記第1粉末を熱処理して第2焼成物を生成する。例えば、窒化ホウ素製坩堝内に前記第1粉末を入れて、窒素(N
2)雰囲気中、又は、窒素(N
2)水素(H
2)混合ガス雰囲気中で熱処理を行う。この第2熱処理工程では、例えば、前記窒素雰囲気を例えば0.85MPaに加圧もしくは常圧とし、熱処理温度を1800℃に設定し、2時間の熱処理を行う。この熱処理温度、熱処理時間は、前記第1粉末を焼成できる範囲で、適宜変更することができる。
【0035】
このような第2熱処理工程を行うことによって、前記組成式(1)で表される赤色蛍光体が得られる。この第2熱処理工程によって得られた第2焼成物(赤色蛍光体)は、組成式(1)で表される均質なものが得られる。
【0036】
<第2粉砕工程(S5)>
次に、「第2粉砕工程」S5を行う。この第2粉砕工程では、前記第2焼成物を粉砕して第2粉末を生成する。例えば、窒素雰囲気中のグローボックス内で、メノウ乳鉢を用いて粉砕し、例えば#420メッシュ(目開きが約26μm)を用いて、前記第2焼成物を、例えば平均粒径が3.5μm程度になるまで粉砕する。
【0037】
前記赤色蛍光体の製造方法により、微粉末(例えば平均粒径が3.5μm程度)の赤色蛍光体が得られる。このように赤色蛍光体の粉末化することにより、例えば緑色蛍光体の粉末とともに透明樹脂に混練したときに、均一に混練されるようになる。
【0038】
以上により、「原料混合工程」S1において混合した原子数比で各元素を含有する前記組成式(1)の赤色蛍光体を得ることができる。
【0039】
(白色光源)
本発明の白色光源は、青色発光ダイオードと、混練物とを少なくとも有し、更に必要に応じて、その他の部材を有する。
【0040】
前記青色発光ダイオードは、例えば、素子基板上に形成されている。
【0041】
前記混練物は、例えば、前記青色発光ダイオード上に配置されている。
前記混練物は、赤色蛍光体と緑色蛍光体とを透明樹脂に混練した混練物である。
前記赤色蛍光体は、本発明の前記赤色蛍光体である。
【0042】
前記緑色蛍光体としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、硫化物系蛍光体などが挙げられる。
前記硫化物系蛍光体としては、例えば、青色励起光の照射により波長530nm〜550nmの緑色蛍光ピークを有する緑色硫化物蛍光体(チオガレート(SGS)蛍光体(Sr
xM
1−x−y)Ga
2S
4:Eu
y(Mは、Ca、Mg、Baのいずれかであり、0≦x<1、0<y<0.2を満たす。)などが挙げられる。
前記硫化物系蛍光体としては、下記一般式(11)〜下記一般式(13)のいずれかで表される硫化物系蛍光体が好適に用いられる。
Sr
1−xGa
2S
4:Eu
x ・・・一般式(11)
(Sr
1−yCa
y)
1−xGa
2S
4:Eu
x ・・・一般式(12)
(Ba
zSr
1−z)
1−xGa
2S
4:Eu
x ・・・一般式(13)
前記一般式(11)〜前記一般式(13)中、xは、0<x<1を満たす。yは、0<y<1を満たす。zは、0<z<1を満たす。
xとしては、0.03≦x≦0.20を満たすことが好ましく、0.05≦x≦0.18を満たすことがより好ましい。
yとしては、0.005≦y≦0.45を満たすことが好ましく、0.05≦y≦0.20を満たすことがより好ましい。
zとしては、0.005≦z≦0.45を満たすことが好ましく、0.20≦z≦0.40を満たすことがより好ましい。
【0043】
前記透明樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂などが挙げられる。
【0044】
本発明の白色光源に係る一実施の形態を、
図2の概略断面図によって説明する。
【0045】
図2に示すように、白色光源1は、素子基板11上に形成されたパッド部12上に青色発光ダイオード21を有している。素子基板11には青色発光ダイオード21を駆動するための電力を供給する電極13、14が絶縁性を保って形成され、それぞれの電極13、14は、例えばリード線15、16によって、青色発光ダイオード21に接続されている。
【0046】
また、青色発光ダイオード21の周囲は、例えば樹脂層31が設けられ、樹脂層31には青色発光ダイオード21上を開口する開口部32が形成されている。開口部32は、青色発光ダイオード21の発光方向に開口面積が広くなる傾斜面に形成されていて、前記傾斜面には反射膜33が形成されている。つまり、すり鉢状の開口部32を有する樹脂層31において、開口部32の壁面が反射膜33でおおわれ、開口部32の底面に青色発光ダイオード21が配置された状態となっている。そして、開口部32内に、赤色蛍光体と緑色蛍光体とを透明樹脂に混練した混練物43が、青色発光ダイオード21を覆おう状態で埋め込まれて白色光源1が構成されている。
【0047】
また、本発明の前記赤色蛍光体は、赤色波長帯(例えば、640nm〜680nmの波長帯)で最大発光波長が得られ、かつ700nm以上の長波長の発光強度が大きい。そのため、青色LEDの青色光、緑色蛍光体による緑色光、そして赤色蛍光体による赤色光からなる光の3原色を利用して色域が広い白色光を得ることができる。また、本発明の前記赤色蛍光体は、長時間の使用においても劣化しにくい。
よって、白色光源1は、色域が広い明るい白色光を長時間安定して得ることができるという利点がある。
【0048】
(照明装置)
本発明の照明装置は、照明基板と、複数の白色光源とを少なくとも有し、更に必要に応じて、その他の部材を有する。
【0049】
前記照明装置においては、例えば、前記照明基板上に複数の前記白色光源が配置されている。
前記白色光源は、本発明の前記白色光源である。
【0050】
本発明の照明装置に係る一実施の形態を、
図3A及び
図3Bの概略平面図によって説明する。
【0051】
図3A及び
図3Bに示すように、照明装置5は、照明基板51上に
図2を用いて説明した白色光源1が複数配置されている。
その配置例は、例えば、(1)
図3Aに示すように、正方格子配列としてもよい。または(2)
図3Bに示すように、1行おきに例えば1/2ピッチずつずらした配列としてもよい。また、ずらすピッチは、1/2に限らず、1/3ピッチ、1/4ピッチであってもよい。さらには、1行ごとに、もしくは複数行(例えば2行)ごとにずらしてもよい。すなわち、白色光源1のずらし方は、限定されない。
【0052】
白色光源1は、
図2を参照して説明したのと同様な構成を有するものである。すなわち、白色光源1は、例えば、青色発光ダイオード21上に、赤色蛍光体と緑色蛍光体を透明樹脂に混練した混練物43を有するものである。
【0053】
また、照明装置5は、点発光とほぼ同等の白色光源1が照明基板51上に、縦横に複数配置されていることから、面発光と同等になるので、例えば液晶表示装置のバックライトとして用いることができる。また、通常の照明装置、撮影用の照明装置、工事現場用の照明装置等、種々の用途の照明装置に用いることができる。
【0054】
照明装置5は、本発明の前記白色光源を用いているため、色域が広い明るい白色光を長時間安定して得ることができる。例えば、液晶表示装置のバックライトに用いた場合に、表示画面において輝度の高い純白色を長時間得ることができ、表示画面の品質の向上が図れるという利点がある。
【0055】
(液晶表示装置)
本発明の液晶表示装置は、液晶表示パネルと、バックライトとを少なくとも有し、更に必要に応じて、その他の部材を有する。
【0056】
前記バックライトは、複数の白色光源を用いてなる。
前記白色光源は、前記液晶表示パネルを照明する。
前記白色光源は、本発明の前記白色光源である。
【0057】
本発明の液晶表示装置に係る一実施の形態を、
図4の概略構成図によって説明する。
【0058】
図4に示すように、液晶表示装置100は、透過表示部を有する液晶表示パネル110と、液晶表示パネル110を裏面(表示面とは反対側に面)側に備えたバックライト120とを有する。バックライト120には、
図3A又は
図3Bを参照して説明した照明装置5を用いる。
【0059】
液晶表示装置100では、バックライト120に本発明の前記照明装置を用いるため、光の3原色を利用して色域が広い明るい白色光で、液晶表示パネル110を照明することができる。よって、液晶表示パネル110の表示画面において輝度の高い純白色を長時間安定して得ることができ、色再現性が良好で表示画面の品質の向上が図れるという利点がある。
【実施例】
【0060】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0061】
(実施例1〜11、及び比較例1〜3)
図1のフローチャートを用いて説明した手順に従って、赤色蛍光体を、以下のように合成した。
【0062】
先ず、「原料混合工程」S1を行った。ここでは、元素Aの炭酸化合物〔炭酸カルシウム(CaCO
3)、炭酸ストロンチウム(SrCO
3)、炭酸バリウム(BaCO
3)〕、酸化ユーロピウム(Eu
2O
3)、窒化シリコン(Si
3N
4)、窒化アルミニウム(AlN)、及びメラミン(C
3H
6N
6)を用意した。用意した各原料化合物を、下記表1に示すモル比に秤量し、窒素雰囲気中のグローボックス内で、メノウ乳鉢内で混合し混合物を得た。尚、メラミンのモル比は、他の化合物の全モル数の合計に対しての割合である。
【0063】
【表1】
【0064】
なお、下記表2に、元素Aに対する各元素(Ca、Sr、Ba)の比率(Ca比率=Ca/A、Sr比率=Sr/A、Ba比率=Ba/A)、α/(α+β)、β/(α+β)、及び(α+β)/(m−x)を示した。
【0065】
【表2】
【0066】
次に、「第1熱処理工程」S2を行った。ここでは、窒化ホウ素製坩堝内に上記混合物を入れて、窒素(N
2)水素(H
2)混合雰囲気中で1500℃、2時間の熱処理を行った。
【0067】
次に、「第1粉砕工程」S3を行った。ここでは、窒素雰囲気中のグローボックス内で、メノウ乳鉢を用いて、上記第1焼成物を粉砕し、その後、#100メッシュ(目開きが約200μm)に通して、平均粒径が3μm以下の粒径の第1焼成物を得た。
【0068】
次に、「第2熱処理工程」S4を行った。ここでは、第1焼成物の粉末を窒化ホウ素製坩堝内に入れて、常圧の窒素(N
2)水素(H
2)混合雰囲気中で1700℃、2時間の熱処理を行った。これにより、第2焼成物を得た。
【0069】
次に、「第2粉砕工程」S5を行った。ここでは、窒素雰囲気中のグローボックス内において、メノウ乳鉢を用いて第2焼成物を粉砕した。#420メッシュ(目開きが約26μm)を用いて、平均粒径が3.5μm程度になるまで粉砕した。
【0070】
以上の赤色蛍光体の製造方法により、微粉末(平均粒径が3.5μm程度)の赤色蛍光体を得た。
【0071】
以上のようにして作製した赤色蛍光体をICPにて分析した。この結果、原材化合物中に含まれる組成式(1)を構成する元素は、ほぼそのままのモル比(原子数比)で赤色蛍光体中に含有されることが確認された。
【0072】
<発光強度の測定>
以上のようにして得られた各赤色蛍光体について、発光スペクトルを測定した。測定は、分光光度計(日本分光社製、FP−6500)を用い、450nmの波長で励起し、波長460nmから780nmまで行った。その結果を下記表3に示す。
【0073】
【表3】
【0074】
表3において、λpは、最大発光波長を表す。また、750nm及び780nmの発光強度は、最大発光波長(λp)における発光強度を1としたときの相対値である。
【0075】
実施例1〜11の赤色蛍光体は、750nmにおける発光強度が0.2以上であり、かつ780nmにおける発光強度が0.1以上であり、700nm〜赤外に至るまでの長波長領域の発光強度が大きく、発光特性が優れていた。
一方、比較例2及び3の赤色蛍光体は、750nmにおける発光強度が0.2未満であり、かつ780nmにおける発光強度が0.1未満であり、十分ではなかった。
【0076】
<LED点灯試験>
赤色蛍光体を、LEDパッケージ内に樹脂(メチル系KER−2910)中に分散させた。そして樹脂を硬化させ、赤色蛍光体を含有するLEDパッケージを得た。このLEDパッケージについて、点灯試験を行った。
試験条件は、60℃90%RH環境下、120mAでLEDを連続通電する事とし、この際の初期光束維持率(lm%)を確認した。
測定の詳細は、以下のとおりである。光測定装置(ラブスフェア社製、システム型名:「CSLMS−LED−1061」、型式:10インチ(Φ25)/LMS−100)を用い、積分球により分光放射束(強度:W/nm)のスペクトルを測定し、全光束(ルーメン:lm)を測定した。また、上記のパラメータの加速環境試験前のデータを取得した後、ある一定時間を経過させた加速環境試験後のサンプルデータを同様に測定する事で、初期値からのlm変動率(%)(光束維持率)を下記の計算から算出した。
・lm変動率(%):(試験後lm/初期lm)×100
試験結果を以下の評価基準で評価した。結果を表4に示した。
〔評価基準〕
◎:連続点灯時間660時間において光束維持率が95%以上
○:連続点灯時間660時間において光束維持率が90%以上95%未満
△:連続点灯時間660時間において光束維持率が60%以上90%未満
×:連続点灯時間660時間において光束維持率が60%未満
また、サンプル1〜5及び14の結果を
図5に示した。なお、サンプル3と5は、グラフが重なっている。
また、サンプル6〜13は、60℃90%RH環境下、240mA〜350mAでLEDを連続通電した結果である。
【0077】
【表4】
【0078】
実施例1〜11の赤色蛍光体は、連続点灯時間660時間において光束維持率が高いこと、即ち劣化が起こりにくいことが確認された。特に、実施例2〜11の赤色蛍光体は、連続点灯時間660時間において光束維持率が95%以上であり、非常に優れており、LEDの連続点灯によっても赤色蛍光体の劣化がほとんど起こっていないことが確認された。
一方、比較例1及び3の赤色蛍光体は、光束維持率が低く、LEDの連続点灯により、赤色蛍光体が劣化していることが確認された。