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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2019-13911(P2019-13911A)
(43)【公開日】2019年1月31日
(54)【発明の名称】複合型多孔性配位高分子の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B01J 20/32 20060101AFI20190104BHJP
   C08G 79/00 20060101ALI20190104BHJP
   B01J 19/00 20060101ALI20190104BHJP
   B01J 20/26 20060101ALI20190104BHJP
【FI】
   B01J20/32 Z
   C08G79/00
   B01J19/00 321
   B01J19/00 N
   B01J20/26 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-135271(P2017-135271)
(22)【出願日】2017年7月11日
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成26年度、国立研究開発法人科学技術振興機構、戦略的創造研究推進事業 さきがけ、研究領域「超空間制御と革新的機能創成」、研究題目「超活性種の自在発生による未知化学種の実現と吸着・物質化学の新展開」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】504139662
【氏名又は名称】国立大学法人名古屋大学
【住所又は居所】愛知県名古屋市千種区不老町1番
(71)【出願人】
【識別番号】504132272
【氏名又は名称】国立大学法人京都大学
【住所又は居所】京都府京都市左京区吉田本町36番地1
(74)【代理人】
【識別番号】100197022
【弁理士】
【氏名又は名称】谷水 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100102635
【弁理士】
【氏名又は名称】浅見 保男
(72)【発明者】
【氏名】松田 亮太郎
【住所又は居所】愛知県名古屋市千種区不老町1番 国立大学法人名古屋大学内
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 哲
【住所又は居所】京都市西京区京都大学桂 国立大学法人京都大学大学院工学研究科内
(72)【発明者】
【氏名】宮原 稔
【住所又は居所】京都市西京区京都大学桂 国立大学法人京都大学大学院工学研究科内
【テーマコード(参考)】
4G066
4G075
4J030
【Fターム(参考)】
4G066AB05A
4G066AB07A
4G066AB21A
4G066AB23A
4G066AC11B
4G066BA05
4G066BA09
4G066BA20
4G066BA22
4G066BA31
4G066DA01
4G066FA03
4G066FA05
4G066FA38
4G066FA39
4G075AA13
4G075AA27
4G075AA39
4G075BA10
4G075BB05
4G075BD15
4G075BD24
4G075DA02
4G075DA18
4G075EB50
4G075FA01
4G075FA12
4J030CA03
4J030CB04
4J030CC15
4J030CD11
4J030CE01
4J030CG01
4J030CG07
4J030CG10
4J030CG29
(57)【要約】
【課題】本発明の課題は、多孔性配位高分子が異なる組成の多孔性配位高分子により被覆されたコアシェル構造を有する複合型多孔性配位高分子を安定して連続的に得ること及びそのための製造方法を確立することである。
【解決手段】上記の課題を解決するために、マイクロリアクターを用いて複合型多孔性配位高分子を製造することにより、安定的かつ連続的に複合型多孔性配位高分子が得られることを見出した。この製造方法によれば、マイクロリアクターを用いて第1の金属イオンと第1の有機配位子を混合することで、第1の多孔性配位高分子分散液が短時間で効率よく合成され、当該分散液に、第2の有機配位子溶液及び第2の金属イオン溶液を混合することで、第1の多孔性配位高分子の表面に第2の多孔性配位高分子を被覆させることができる。これにより、複合型多孔性配位高分子を安定的かつ連続的に製造することが可能となる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の金属イオンと第1の有機配位子が配位してなる第1の多孔性配位高分子が、第2の金属イオンと第2の有機配位子が配位してなる第2の多孔性配位高分子により被覆されたコアシェル構造を有し、
少なくとも前記第1の金属イオンと前記第2の金属イオン、及び/又は、前記第1の有機配位子と前記第2の有機配位子が異なる組成である複合型多孔性配位高分子の製造方法であって、
第1の有機配位子溶液と第1の金属イオン溶液とをマイクロリアクターを用いて混合し、第1の多孔性配位高分子分散液を得る第1の混合工程と、
前記第1の混合工程で得られた前記第1の多孔性配位高分子溶液と、第2の有機配位子溶液及び第2の金属イオン溶液とをマイクロリアクターを用いて混合し、第1の多孔性配位高分子が第2の多孔性配位高分子により被覆された複合型多孔性配位高分子を得る第2の混合工程を含むことを特徴とする、複合型多孔性配位高分子の製造方法。
【請求項2】
前記第2の混合工程は、
前記第1の混合工程で得られた前記第1の多孔性配位高分子溶液と、第2の有機配位子溶液とをマイクロリアクターを用いて混合する第2−1の混合工程と、
前記第2−1の混合工程で得られた溶液と第2の金属イオン溶液とをマイクロリアクターを用いて混合し、第1の多孔性配位高分子が第2の多孔性配位高分子により被覆された複合型多孔性配位高分子を得る第2−2の混合工程を含むことを特徴とする、請求項1に記載の複合型多孔性配位高分子の製造方法。
【請求項3】
前記マイクロリアクターは、流路幅が200μm以下であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の複合型多孔性配位高分子の製造方法。
【請求項4】
前記マイクロリアクターは、中心衝突型マイクロリアクターであることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の複合型多孔性配位高分子の製造方法。
【請求項5】
第1の金属イオンと第1の有機配位子が配位してなる第1の多孔性配位高分子が、第2の金属イオンと第2の有機配位子が配位してなる第2の多孔性配位高分子により被覆されたコアシェル構造を有し、
少なくとも前記第1の金属イオンと前記第2の金属イオン、及び/又は、前記第1の有機配位子と前記第2の有機配位子が異なる組成である複合型多孔性配位高分子であって、
最大粒子径が100マイクロメートル以下の微粒子であることを特徴とする、複合型多孔性配位高分子。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合型多孔性配位高分子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
有機物を基本骨格に持ち、ナノオーダーの空孔を有する有機多孔性物質として、多孔性配位高分子(PCP:Porous Coordination Polymer)又は金属有機構造体(MOF:Metal-Organic Framework)が知られている。これは、有機配位子を金属イオンとの配位結合で集積させた構造体である(以下、総称して「PCP」又は「多孔性配位高分子」と呼ぶ)。
【0003】
PCPは、活性炭やシリカゲル、ゼオライト等のような多孔性材料に比べ、均一な細孔分布を示し、比表面積が大きく、かつ構造設計性に優れることから、さまざまな材料としての応用が期待されている。
例えば、特許文献1には、ガス吸着材料としての多孔性配位高分子が記載されている。また、特許文献2には、医薬品化合物や触媒前駆体を含浸した含浸・貯蔵材料としての多孔性配位高分子が記載されている。また、特許文献3には、二酸化炭素光還元触媒としての多孔性配位高分子が記載されている。さらに、特許文献4には、揮発性有機化合物の検出に用いるセンサーとしての多孔性配位高分子が記載されている。
【0004】
さらに、材料の性能向上等を目的として、材料を複合化することが考えられる。例えば、特許文献5には、それぞれ異なるMOFである第1の配位重合体と第2の配位重合体とによって形成されている配位共重合体が記載されており、また、該配位共重合体は第1の配位重合体と第2の配位重合体がコアシェル構造を有することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2014−28943号公報
【特許文献2】特開2016−17055号公報
【特許文献3】特開2017−71577号公報
【特許文献4】特開2011−256122号公報
【特許文献5】特表2012−519171号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献5にあるように、組成の異なるPCPをコアシェル構造となるよう組み合わせることで、単一組成では実現できない性能を有する可能性のある新規材料が得られることが期待される。
しかしながら、一つの多孔性配位高分子と、もう一つの異なる組成の多孔性配位高分子とがコアシェル構造を有する複合型多孔性配位高分子を安定して連続的に得ること及びそのための製造方法についてはまだ確立されていない。
【0007】
そこで、本発明の課題は、多孔性配位高分子が異なる組成の多孔性配位高分子により被覆されたコアシェル構造を有する複合型多孔性配位高分子を連続的に得るための製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記の課題について鋭意検討した結果、マイクロリアクターを用いて複合型多孔性配位高分子を製造することにより、安定的かつ連続的に複合型多孔性配位高分子が得られることを見出した。
すなわち、本発明は、以下の複合型多孔性配位高分子の製造方法である。
【0009】
上記課題を解決するための本発明の複合型多孔性配位高分子の製造方法は、第1の金属イオンと第1の有機配位子が配位してなる第1の多孔性配位高分子が、第2の金属イオンと第2の有機配位子が配位してなる第2の多孔性配位高分子により被覆されたコアシェル構造を有し、少なくとも前記第1の金属イオンと前記第2の金属イオン、及び/又は、前記第1の有機配位子と前記第2の有機配位子が異なる組成である複合型多孔性配位高分子の製造方法であって、第1の有機配位子溶液と第1の金属イオン溶液とをマイクロリアクターを用いて混合し、第1の多孔性配位高分子分散液を得る第1の混合工程と、前記第1の混合工程で得られた前記第1の多孔性配位高分子溶液と、第2の有機配位子溶液及び第2の金属イオン溶液とをマイクロリアクターを用いて混合し、第1の多孔性配位高分子が第2の多孔性配位高分子により被覆された複合型多孔性配位高分子を得る第2の混合工程を含むことを特徴とする。
【0010】
この製造方法によれば、マイクロリアクターを用いて第1の金属イオンと第1の有機配位子を混合することで、第1の多孔性配位高分子分散液が短時間で効率よく合成され、更に、当該分散液に、第2の有機配位子溶液及び第2の金属イオン溶液を混合することで、第1の多孔性配位高分子の表面に第2の多孔性配位高分子を被覆させることができる。
これにより、複合型多孔性配位高分子を安定的かつ連続的に製造することが可能となる。
【0011】
また、本発明の複合型多孔性配位高分子の製造方法の一実施態様としては、前記第2の混合工程は、前記第1の混合工程で得られた前記第1の多孔性配位高分子溶液と、第2の有機配位子溶液とをマイクロリアクターを用いて混合する第2−1の混合工程と、前記第2−1の混合工程で得られた溶液と第2の金属イオン溶液とをマイクロリアクターを用いて混合し、第1の多孔性配位高分子が第2の多孔性配位高分子により被覆された複合型多孔性配位高分子を得る第2−2の混合工程を含むことを特徴とする。
この特徴によれば、コアとなる第1の多孔性配位高分子の表面近傍に第2の有機配位子を存在させた後に、第2の金属イオン溶液を混合することで、第2の金属イオンが第1の多孔性配位高分子に取り込まれることなく、第2の有機配位子と優先的に反応し、コアシェル構造の形成がより確実となる。
【0012】
更に、本発明の複合型多孔性配位高分子の製造方法の一実施態様としては、マイクロリアクターは、流路幅が200μm以下であることを特徴とする。
マイクロリアクターの流路幅が小さくなると原料溶液の混合効率が向上するため、この特徴によれば、第1の多孔性配位高分子の合成反応を確実に進行させ、その後のコアシェル構造の形成反応も効率的に進行させることが可能となる。
【0013】
更に、本発明の複合型多孔性配位高分子の製造方法の一実施態様としては、マイクロリアクターは、中心衝突型マイクロリアクターであることを特徴とする。
この特徴によれば、上記混合工程において、溶液同士が瞬時に均一混合されるため、より確実に合成反応を進めることが可能となる。
【0014】
更に、本発明の複合型多孔性配位高分子としては、第1の金属イオンと第1の有機配位子が配位してなる第1の多孔性配位高分子が、第2の金属イオンと第2の有機配位子が配位してなる第2の多孔性配位高分子により被覆されたコアシェル構造を有し、少なくとも前記第1の金属イオンと前記第2の金属イオン、及び/又は、前記第1の有機配位子と前記第2の有機配位子が異なる組成である複合型多孔性配位高分子であって、最大粒子径が100マイクロメートル以下の微粒子であることを特徴とする。
本発明の複合型多孔性配位高分子は、複数の多孔性配位高分子がコアシェル構造を有する100マイクロメートル以下の微粒子であり、複数の多孔性配位高分子の特徴を併せ持つ新規材料として利用可能である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、第1の金属イオンと、該第1の金属イオンに配位する第1の有機配位子とが配位してなる第1の多孔性配位高分子が、第2の金属イオンと第2の有機配位子が配位してなる第2の多孔性配位高分子により被覆されたコアシェル構造を有する複合型多孔性配位高分子の製造方法において、それぞれの原料物質の溶液を混合する工程にマイクロリアクターを用いることにより、一定の条件下で連続的に複合型多孔性配位高分子を製造でき、かつ一定の物性を備えた複合型多孔性配位高分子を安定かつ多量に得ることが可能となる。
また、得られた複合型多孔性配位高分子は、新規材料としての利用が可能となるものである。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施例の反応装置の構成を示す概略図である。
図2】本発明の実施例の反応装置の構成の一部である中心衝突型マイクロリアクターの分解斜視図である。
図3】本発明の実施例で得られた複合型多孔性配位高分子のX線回折パターンである。
図4】本発明の実施例で得られた複合型多孔性配位高分子のSTEM−EDX測定結果の写真である。
図5】比較例1の反応装置の構成を示す概略図である。
図6】比較例1で得られた反応生成物のX線回折パターンである。
図7】比較例1で得られた反応生成物のSTEM−EDX測定結果の写真である。
図8】比較例2の反応装置の構成を示す概略図である。
図9】比較例2で得られた反応生成物のSEM写真である
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本発明について詳細に説明する。なお、この実施形態は、本発明を限定するものではない。
【0018】
多孔性配位高分子は、金属イオンと有機配位子との配位結合を利用して多孔性構造を形成するものである。様々な金属イオンとそれらを連結する架橋性の有機配位子を組み合わせることにより、それぞれ特異的な結晶性の高分子構造を作ることができる。また、金属イオンと有機配位子は、2種以上の金属イオン又は2種以上の有機配位子を組み合わせて、多孔性配位高分子を形成することもできる。
【0019】
複合型多孔性配位高分子は、コアとなる第1の多孔性配位高分子粒子の表面に、異なる種類の第2の多孔性配位高分子が被覆されたコアシェル構造を有するものである。なお、異なる種類の多孔性配位高分子とは、多孔性配位高分子を構成する金属イオンと有機配位子の少なくとも一つの種類が異なるものである。複合型多孔性配位高分子は、ガス吸着、物質の含侵・貯蔵の性能の向上や、コアとなる多孔性配位高分子の耐水性・耐溶剤性等の向上などの機能を付与することが期待される。
【0020】
[複合型多孔性配位高分子を構成する物質]
本発明の複合型多孔性配位高分子を構成する金属イオンは、周期表のほとんどすべての金属を使用することが可能である。例えば、Zn2+、Co2+、Co3+、Cu、Cu2+、Mn2+、Mn3+、Pd2+、Pd4+、Mg2+、Ca2+、Al3+、Cr3+、Mo3+、W3+、Fe2+、Fe3+、Ru2+、Ru3+、Rh、Rh2+、Rh3+、Ni、Ni2+、Cd2+等を使用することができる。汎用性に優れるという観点から、特に好ましくは、Zn2+、Co2+、Cu2+、Ni2+である。また、金属イオンは溶媒に溶解した溶液状態で混合するため、溶媒に溶解可能なものとして、金属イオンの無機化合物、有機化合物を使用することが好ましく、特に蟻酸塩、酢酸塩、硫酸塩、硝酸塩、炭酸塩、塩化物などが好ましい。
【0021】
本発明の複合型多孔性配位高分子を構成する有機配位子は、金属イオンを配位する配位部位を2以上有する多座配位子を使用することができる。例えば、芳香族ジカルボン酸類(テレフタル酸類、イソフタル酸類など)、1又は複数のNを含む複素環式化合物(ジピリジン類、トリアジン類、ピラジン類、キノキサリン類、イミダゾール類など)、及びこれらの誘導体、ハロゲン置換誘導体を使用することができる。特に、テレフタル酸類、イソフタル酸類、イミダゾール類が好ましい。
なお、複合型多孔性配位高分子の設計において、必要に応じて、配位部位を1つのみ有する単座配位子を混合してもよい。単座配位子の混合は、金属イオンと多座配位子の反応開始時に混合してもよいし、これらの反応が進行した後に添加してもよい。
【0022】
これらを溶解する溶媒としては、水、メタノール、エタノール等のアルコール系、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、ジクロロメタン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素類、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、アセトン等の有機溶媒等が挙げられる。なお、金属イオン溶液と有機配位子溶液の溶媒は同じであってもよく、異なるものであってもよい。
【0023】
[複合型多孔性配位高分子の製造]
以下、本発明の複合型多孔性配位高分子の製造について説明する。
【0024】
〔反応装置〕
図1は、本発明の複合型多孔性配位高分子の製造に用いる反応装置10を示す概略図である。
反応装置10は、第1の金属イオン溶液を一定流量で吐出する第1定量ポンプ11と、第1の有機配位子溶液を一定流量で吐出する第2定量ポンプ12と、第2の有機配位子溶液を一定流量で吐出する第3定量ポンプ13と、第2の金属イオン溶液を一定流量で吐出する第4定量ポンプ14を備える。第1定量ポンプ、第2定量ポンプは、それぞれ第1の接続管15、第2の接続管16を介して第1マイクロリアクター22に接続されており、第1の金属イオン溶液と第1の有機配位子溶液が第1マイクロリアクター22に供給される。第1マイクロリアクター22では、第1の金属イオン溶液と第1の有機配位子溶液が混合され、第3接続管17から混合液が排出される。
【0025】
第3接続管17は、第2マイクロリアクター23に接続されており、第1マイクロリアクター22で混合された混合液が第2マイクロリアクター23に供給される。また、第2マイクロリアクター23には、第4接続管18を介して第3定量ポンプ13が接続され、第2の有機配位子溶液が供給される。第2マイクロリアクター23では、第1マイクロリアクター22から供給された混合液と、第2の有機配位子溶液が混合されて、第5接続管19から混合液が排出される。
【0026】
第5接続管19は、第3マイクロリアクター24に接続されており、第2マイクロリアクター23で混合された混合液が第3マイクロリアクター24に供給される。また、第3マイクロリアクター24には、第6接続管20を介して第4定量ポンプ14が接続され、第2の金属イオン溶液が供給される。第3マイクロリアクター24では、第2マイクロリアクター23から供給された混合液と、第2の金属イオン溶液が混合されて、第7接続管21から混合液が排出される。そして、第7接続管21から排出された混合液は、貯留槽25に貯留される。
【0027】
第1定量ポンプ11、第2定量ポンプ12、第3定量ポンプ13及び第4定量ポンプ14は、それぞれ溶液が収容されたシリンダCLと、そのシリンダCLに摺動可能に嵌合されてシリンダCL内の溶液を押し出すピストンPと、そのピストンPを一定速度で駆動する駆動装置(不図示)を備えるシリンダ型定量ポンプで構成されているが、これに限定するものではない。単位時間あたりに一定の容積を吐出する他の定量ポンプの構成を用いてもよく、例えば、内接型ギヤポンプ、外接型ギヤポンプなどが挙げられる。
【0028】
〔マイクロリアクター〕
本発明において、原料溶液の混合工程はすべてマイクロリアクターを用いて行う。なお、本発明におけるマイクロリアクターとは、流路幅が1mm以下ものである。マイクロリアクターの流路幅は、好ましくは500μm以下であり、より好ましくは200μm以下である。流路幅が小さくなると、溶液の混合効率が向上するため、第1の多孔性配位高分子を形成する金属イオンと有機配位子の反応が十分に進行する。
【0029】
各マイクロリアクターでは、原料溶液が合流後、第3接続管17、第5接続管19、第7接続管21の内部を流れながら反応が進行するため、各マイクロリアクターを接続する第3接続管17、第5接続管19、第7接続管21の流路長(L1、L2、L3)は、それぞれの反応進行に必要な時間、圧力損失などを考慮して設定する。流路長は、通常1mm以上10m以下であり、好ましくは10〜50cmである。なお、流路長L1、L2、L3は全て同じ長さであってもよく、それぞれが異なる長さとしてもよい。
【0030】
図2は、中心衝突型マイクロリアクターの一実施態様を模式的に示した分解斜視図である。中心衝突型マイクロリアクターとは、略中心部に形成された合流部から放射線状に複数のマイクロ流路が形成された構造を有するものである。なお、図2で示した中心衝突型マイクロリアクターは、図1における第1マイクロリアクター22として以下説明する。
図2における中心衝突型マイクロリアクター30は、円柱形の入力側プレート31、混合プレート32及び出力側プレート33により構成される。そして、これらのプレートを入力側プレート31、混合プレート32、出力側プレート33の順に、互いの側面同士を合わせて円柱状にし、ボルト・ナット等で一体的に固定する。
【0031】
入力側プレート31の混合プレート32に対向する側面には、2本の環状溝34、35が同心円状に形成されており、この2本の環状溝34、35はそれぞれ溶液の流れる流路となる。そして、入力側プレート31の混合プレート32に対向しない側面に、外側の環状溝34に達する貫通孔36と、内側の環状溝35に達する貫通孔37がそれぞれ形成される。例えば、貫通孔36に第1接続管15が連結され、貫通孔37に第2接続管16が連結されると、外側の環状溝34に第1の金属イオン溶液が流れ、内側の環状溝35に第1の有機配位子溶液が流れる。
【0032】
混合プレート32の出力側プレート33に対向する側面の中心には、円形状の合流部38が形成され、この合流部38から放射状に複数本の長マイクロチャネル39と複数本の短マイクロチャネル40が交互に形成される。また、長マイクロチャネル39の先端から混合プレート32の厚み方向にそれぞれ貫通孔41が形成され、この貫通孔41は入力側プレート31に形成されている外側環状溝34に連通している。同様に、短マイクロチャネル40の先端から混合プレート32の厚み方向にそれぞれ貫通孔42が形成され、この貫通孔42は入力側プレート31に形成されている内側環状溝35に連通している。
【0033】
出力側プレート33の中心には、出力側プレート33の厚み方向に混合プレート32の合流部38に連通する貫通孔43が形成され、出力側プレート33の混合プレート32に対向しない側面側に第3接続管17が連結される。
【0034】
なお、本発明で用いるマイクロリアクターは、2種類の溶液を瞬時に均一に混合できるものであればよく、例えば、溶液の接触角度や接触流路の数を適宜調節した他の構造を有するマイクロリアクターであってもよい。より具体的には、上記の中心衝突型以外にも、T字衝突型マイクロリアクターや、Y字平行型マイクロリアクター等が挙げられる。
【0035】
〔製造方法〕
上記マイクロリアクターを備えた反応装置における複合型多孔性配位高分子の製造方法は以下のとおりである。
第1定量ポンプ内の第1の金属イオン溶液と第2定量ポンプ内の第1の有機配位子溶液とを第1マイクロリアクター内で混合、反応させて、コアとなる第1の多孔性配位高分子を形成する第1の混合工程と、第1の混合工程で得られた溶液と第3定量ポンプ内の第2の有機配位子溶液とを第2マイクロリアクター内で混合する第2−1の混合工程と、第2−1の混合工程で得られた溶液と第4定量ポンプ内の第2の金属イオン溶液とを第3マイクロリアクター内で混合して、第1の多孔性配位高分子の表面が第2の多孔性配位高分子で被覆された複合型多孔性配位高分子を得る第2−2の混合工程を含むものである。
【0036】
なお、第2の有機配位子溶液と第2の金属イオンを供給する順は、特に制限されず、第1の多孔性配位高分子を含む溶液に対して、第2の有機配位子溶液と第2の金属イオン溶液を同時に供給してもよいし、第2の金属イオン溶液を先に供給した後に、第2の有機配位子溶液を供給してもよい。
【0037】
また、少なくとも第1の金属イオンと第2の金属イオン、及び/又は、第1の有機配位子と第2の有機配位子とは異なる組成のものとする。
第1及び第2の金属イオンを同じものとし、第1及び第2の有機配位子を異なるものとした場合、有機配位子の組成に起因した物性を有する複合型多孔性配位高分子が得られる。例えば、コア部とシェル部で異なる細孔を有する複合型多孔性配位高分子となることが考えられる。これにより、材料として吸着能及び吸着選択性の向上が図られることが期待される。
また、第1及び第2の金属イオンを異なるものとし、第1及び第2の有機配位子を同じものとした場合、金属イオンの特性に起因した物性を有する複合型多孔性配位高分子が得られる。例えば、同一の有機配位子に対する配位結合力は金属イオンの種類によって異なるため、コア部とシェル部で異なる耐溶媒性や構造安定性を有する複合型多孔性配位高分子となることが考えられる。これにより、水のような溶媒中でも安定に存在できる材料として活用が期待できる。また、触媒活性が失活しにくい材料としての利用も期待できる。
【0038】
また、本発明の複合型多孔性配位高分子は、最大粒子径が100マイクロメートル以下の微粒子を得ることができる。これは、マイクロリアクターを用いることで瞬時に反応が進行し、コアとなる第1の多孔性配位高分子の粒子サイズを10マイクロメートル以下とすることが可能となるからである。
ここで、本発明における最大粒子径とは、粒子の粒度分布内の最大値となる粒子径のことを指すものである。粒子径の測定は、微粒子の分散液を走査型電子顕微鏡(SEM)で撮影し、撮影した微粒子から無作為に少なくとも30個の微粒子を抽出し、その抽出した微粒子の中で最も大きな微粒子の粒子径の値を最大粒子径とするものである。なお、本発明における粒子径とは、粒子の最長径を指すものである。
【0039】
複合型多孔性配位高分子の粒子サイズは、コアとなる第1の多孔性配位高分子の粒子サイズやシェルとなる第2の多孔性配位高分子の層厚をコントロールすることにより制御することができる。コアとなる第1の多孔性配位高分子の粒子サイズやシェルとなる第2の多孔性配位高分子の層厚は、反応時の温度や、用いる金属イオン溶液及び有機配位子溶液の濃度によって調整することが可能である。
【実施例】
【0040】
図1に示す反応装置により、複合型多孔性配位高分子の製造を実施した。
用いたマイクロリアクターの流路幅は100μm、流路長L1、L2、L3は、それぞれ10cm、10cm、30cmとした。
第1及び第2の金属イオンをZn2+とし、金属化合物としてZn(CHCOO)を用い、第1の金属イオン溶液として40mMのZn(CHCOO)水溶液を、第2の金属イオン溶液として5mMのZn(CHCOO)水溶液を調製した。
第1の有機配位子として、5−(3−ヨードプロポキシ)―1,3−ベンゼンジカルボン酸(5-(3-iodopropoxy)-1,3-Benzenedicarboxylic acid;以下、CI)を用い、40mMのCIメタノール溶液を調製した。また、第2の有機配位子として5−ブトキシ―1,3−ベンゼンジカルボン酸(5-butoxy-1,3-Benzenedicarboxylic acid;以下、CMe)を用い、10mMのCMeメタノール溶液を調製した。
【0041】
図1に示した反応装置において、第1の金属イオン溶液として40mMのZn(CHCOO)水溶液を第1定量ポンプから一定流速10ml/minで吐出させ、第1の有機配位子溶液として40mMのCIメタノール溶液を第2定量ポンプから一定流速10ml/minで吐出させ、第2の有機配位子溶液として10mMのCMeメタノール溶液を第3定量ポンプから一定流速20ml/minで吐出させ、第2の金属イオン溶液として5mMのZn(CHCOO)水溶液を第4定量ポンプから一定流速40ml/minで吐出させ、反応生成物を得た。なお、反応はすべて室温で行った。
【0042】
図3及び図4は、上記反応により得られた反応生成物に関する測定結果を示している。
図3は、X線回折パターンの測定結果であり、一番上が得られた反応生成物の測定結果である。なお、図3の真ん中は、ZnとCMeからなる多孔性配位高分子(Zn(CMe))の測定結果であり、図3の一番下は、ZnとCIからなる多孔性配位高分子(Zn(CI))の測定結果である。図3から、本発明により得られた反応生成物は、Zn(CI)及びZn(CMe)の両方に起因するピークを有していることがわかる。
また、図4は、走査透過型電子顕微鏡−エネルギー分散型X線分光分析器(STEM−EDX)を用いて、得られた反応生成物におけるZnとIの存在量について元素分析を行った結果である。仮に、得られた反応生成物が単にZn(CI)とZn(CMe)の混合物であれば、Iが全体的に存在した結果が得られると考えられるが、測定の結果、得られた反応生成物の端のほうではZnが多く存在し、Iの存在量が相対的に低いことがわかる。
図3及び図4の結果から、得られた反応生成物は、Zn(CI)をコアとし、Zn(CMe)がシェルを形成しているコアシェル構造を有する複合型多孔性配位高分子であると結論づけられる。
また、得られた複合型多孔性配位高分子の粒子サイズは10マイクロメートル以下であった。
【0043】
(比較例1)
図5は、比較例1として用いた反応装置50の構成を示している。
図5に示した反応装置50は、本発明の反応装置10と比較して、マイクロリアクター22、23、24の代わりに、流路径1.5mmのY字管51、52、53を用いる点で相違している。他は、上記反応装置と同様に構成されているため、同一の符号を付して説明は省略する。
また、反応に用いる金属イオン溶液及び有機配位子溶液の組成、濃度、並びに定量ポンプの流速などの条件については、上述した本発明の実施例と同様とする。
【0044】
図6及び図7は、比較例1で得られた反応生成物に関する測定結果である。
図6は、X線回折パターンの測定結果であり、一番上が得られた反応生成物の測定結果である。なお、図6の真ん中は、ZnとCMeからなる多孔性配位高分子(Zn(CMe))の測定結果であり、図6の一番下は、ZnとCIからなる多孔性配位高分子(Zn(CI))の測定結果である。図6から、比較例1により得られた反応生成物は、Zn(CMe)に起因するピークをほとんど有していないことがわかる。
また、図7は、走査透過型電子顕微鏡−エネルギー分散型X線分光分析器(STEM−EDX)を用いて、得られた反応生成物におけるZnとIの存在量について元素分析を行った結果である。測定の結果、比較例1により得られた反応生成物には、ZnとIが全体的に存在することがわかる。
図6及び図7の結果から、比較例1で得られた反応生成物は、Zn(CI)のみが生成していると結論づけられる。
これは、Y字管では混合に時間を要した結果、コアとなるZn(CI)の生成反応が第1混合工程で終了せず、反応装置内のすべての工程でZn(CI)の生成反応が起こっているためと考えられる。
【0045】
(比較例2)
図8は、比較例2として用いたバッチ式反応装置60の構成を示している。
図8に示した反応装置60は、本発明の反応装置10と比較して、マイクロリアクター及び定量ポンプの代わりに、ビーカー61とピペット62を用いるものである。
また、反応に用いる金属イオン溶液及び有機配位子溶液の組成、濃度は、上述した本発明の実施例と同様とした。
【0046】
ビーカー内のCIメタノール溶液に、ピペットでZn(CHCOO)水溶液を滴下し、Zn(CI)粒子分散液を生成し、その分散液に、CMeメタノール溶液を混合し、さらにZn(CHCOO)水溶液を滴下した。
【0047】
図9は、比較例2で得られた反応生成物に関する測定結果である。
図9は、走査型電子顕微鏡(SEM)の測定結果であり、比較例2で得られた反応生成物は、一体となったコアシェル構造を有することなく、Zn(CMe)とZn(CI)が、それぞれ別々に形成されていることがわかる。
【0048】
以上の結果から、それぞれの原料物質の溶液を混合する工程にマイクロリアクターを用いることにより、一定の条件下で連続的に複合型多孔性配位高分子を製造でき、かつ一定の物性を備えた複合型多孔性配位高分子を得ることが可能となった。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明の複合型多孔性配位高分子の製造方法は、バッチ式やY字管などでは形成できなかった複合型多孔性配位高分子を一定の条件下で連続的に製造することができるため、吸着材や触媒などの分野において所望される一定の物性を備えた複合型多孔性配位高分子を安定かつ多量に提供する製造方法として有用である。
また、本発明の複合型多孔性配位高分子は、複数の特性を有する多孔性新規材料として、吸着材や触媒などに利用されるものである。
【符号の説明】
【0050】
10…反応装置、11…第1定量ポンプ、12…第2定量ポンプ、13…第3定量ポンプ、14…第4定量ポンプ、15…第1接続管、16…第2接続管、17…第3接続管、18…第4接続管、19…第5接続管、20…第6接続管、21…第7接続管、22…第1マイクロリアクター、23…第2マイクロリアクター、24…第3マイクロリアクター、25…貯留槽、30…中心衝突型マイクロリアクター、31…入力側プレート、32…混合プレート、33…出力側プレート、34…外側環状溝、35…内側環状溝、36…貫通孔、37…貫通孔、38…合流部、39…長マイクロチャネル、40…短マイクロチャネル、41…貫通孔、42…貫通孔、43…貫通孔、50…反応装置、51、52、53…Y字管、60…反応装置、61…ビーカー、62…ピペット、L1、L2、L3…流路長

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9